Geol.Rept.Shimane Univ.,11 P.97〜103(1992)
へいけだいら
島根県仁多郡三井野原一平家平間の新生界
常 陸 了*
Cenzoic between Miinohara and Heikedaira,Nita district,Shimane Prefecture
Ryo Hitachi
1.ま え が き
広島・島根県境近くの三井野原は,中国山地脊梁部 で標高700〜800mに発達する平坦面であり,また,坂 根地区に分布する中新統の西縁部に当たる.三井野原 の東側には,北流する室原川を挟んで平家平と呼ばれ る平担面があり,砂岩・礫岩を主体とした中心統と洪 積世の礫層が分布している.
本論では,三井野原の中新統を中心に述べ,平家平 の中心統との構造的な関係及び洪積礫層の分布などに ついて報告する.
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H.地形・地質概要
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山口県
九州
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島根県5 叉岡山県
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四 国
第1図 位 置 図
*松江市東津田町1249,藤井基礎設計事務所㈱,Fujii Kiso Sekkei Co.1349Higashitsuda,Matsue
1.地 形
冬季にはスキー場としてにぎわう三井野原は,標高
で700〜750mほどの平坦面よりなる谷部と,標高800
m前後の山頂部をもつなだらかな尾根部よりなる.そ の尾根は,細長く延びる平坦面を両側から挟み込むようにほぼ平行して分布する.(第2図参照)
三井野原の平坦地形は,200m〜400mの幅を持ち,
北東方向にやや登り勾配でL4㎞にわたって連続して いる.この平坦面は,室原川を挟んで対岸の平家平及 び,J R第三坂根トンネルを横切り更に東方に続いて いる.そして,標高800m〜900mの痩せ尾根よりなる 分水嶺で平坦面は消滅するが,その総延長はやく3㎞
に達する.
第3図に示すように,この3つの平坦面は以前は連
続していた一連の物と考えられるが,現在は室原川と その支流のV字谷によって分断されており,中でも平 家平はその周囲を浸食され,台地状の地形を成してい る.すなわち以前はA からAに向かって谷川が発達 していたが,その後,河川争奪により南北方向の谷地 形(室原川)が形成され,現在に至っている.2.地 質
三井野原一平家平間の地質は,下位より,白亜紀の デイサイト質火山岩類,新第三紀中新世に対比される 備北層群,および第四系よりなる(第1表).第4図に は三井野原東縁部の新生界の分布を示す.
(1)先中新統
本地域の新生界の基盤は,白亜紀の流紋岩またはデ イサイト質火山岩類である.この火山岩類は,三井野 原から室原川に注ぐ沢筋に硬岩状の露頭として観察で ぎる.三井野原から坂根に下る国道沿いの切土法面に もその露頭がみられるが,そこでは亀裂の発達したデ イサイトや同質火山砕屑岩類よりなり岩質はもろい.
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第2図 坂根地区の平垣面
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三井野原
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500
40 A
平家平
原地形面
バ
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1000
第3図 室原川による解析谷
(2)中新統
本地域に分布する中新統は,備北層群に対比されて いる(島根県地質図編集委員会,1982).本中新統は,
常陸ほか(1987)によて,下位より礫岩層①,炭質頁 岩砂岩互層,礫岩層②および砂岩層に区分され,記載
されている.以下にその概略を述べる 礫岩層①
本地域の中新統においては,後に述べる炭質頁岩砂 岩互層が広く追跡されるので,この互層を対比の基準
にし,互層の下位に分布する礫岩を礫岩層①とした.
本層は基盤であるデイサイト質火山岩類を不整合にお おっているが,堆積盆地縁辺では60。以上の傾斜角を もつ高角不整合面をもって基盤にアバットしている.
本礫岩層は,おもに安山岩,デイサイト,流紋岩お よび花崗岩類の礫と粗粒砂〜細礫の基質からなり,そ の層厚は約40mを有するものと推定される.堆積盆地 縁辺で,本層が高角不整合面をもって基盤にアバット
している付近では,本層の下部はこぶし〜人頭大の角
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第1表 三井野原地区の層序
層 序 地 層 名 地 質 時 代
ク ロ ポ ク 沖 積 層 中積世
火山灰・有機質土 三瓶火山灰 第四紀
上 部 礫 層 三井野原礫層 洪積世
下 部 礫 層 平家平礫層 新生代
礫 岩 層 ②
炭質頁岩砂岩互層 備北層郡 中新世 新第三紀
礫 岩 層 ①
デイサイト質火山岩類 白 亜 紀 中生代
礫を主体としているが,上部に向かってしだいに礫径 は減少して,径3〜20cmの亜円礫を主体とするように なる.他方,盆地中央部では本層は亜鉛礫〜円礫を主
体とし,おもに径3〜10cmの礫からなり,ところどこ ろに径10〜30cmの巨礫を含む.
炭質頁岩砂岩互層
本層は2〜4mの層厚をもち,一般に礫岩層①を整
合に覆うが,堆積盆地縁辺では指交関係をもって礫岩層①に漸移している場合も認められる.この典型例 は,国道314号線改良工事用パイ・ット道路の法面
(第7図)や旧国道314号線沿いで観察される.
本層は一般に黒色の炭質頁岩と灰色の細粒砂岩の互 層からなるが,部分的に泥岩層を挟んでいる.本層を 特徴ずける炭質頁岩は,厚さ1cm前後の葉理をもち,
厚さ1cm程度のレンズ状の炭層をところどころに挟ん でいる.本層は風化して粘土になっていることが多 く,流れ盤になっているところでは,厚さ10cm前後の 地すべり粘土を形成している場合も認められる 第7図のスケッチや第5図の柱状図にみられるよう に,三井野原北東部の地下においては,一般に本層よ り上位の備北層群は浸食されていて,礫岩層①のみが
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第4図
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回平家平礫層
早囮炭質頁岩砂岩互層
囲礫岩①
回デイサイト
O ボーリング位置
地 質 図
図中の破線はボーリングから推定される備北層郡分布域を示す.
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0.5〜LO クロボク・表土
黒しO〜1.5 ローム(吉備土) 黄茶 0.5〜0.8 シルト質細:砂
白灰黄
2.0〜3.0
@ フショク物まじり粘土
5 灰得〜黒
ビート・腐植物 暗褐〜黒
0.5 三井野原礫層
@ 礫岩層①
暗青灰
ゥ茶〜青緑
洪積統一﹁中新統﹂
デイサイト質火山岩類 第5図柱状図A(第4図に位置を示す)
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0.5〜2.0 クロボク・表土
黒1.0〜2.0 ローム(吉備土) 淡黄茶
2.0〜2.5 三井野原礫層 暗黄茶
8.0〜14.0
@ 平家平礫層 青灰色
0.2〜0.3 砂層(砂質粘土)
Q・5〜4』炭質頁岩砂岩互層(中新統1
赤褐色
@黒
頁岩層には1c m前後の葉理が発達し、層厚数mm程度の炭層レンズが見られる
礫岩層①
@亜円〜円礫φ5〜20cm 卜1}【ノハLノけ齪→」_レ」Hト1 }レサ
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以下の各礫を主体とする P
﹁洪積統
第6図
デイサイト質火山岩類
分布している.
礫岩層②
先に述べたように,本層は三井野原地区では確認さ れていないが,平家平に分布する.本層は径2〜10cm の円礫を主体とし,礫種は安山岩,デイサイト,花崗 岩よりなる.露頭では,本層は礫岩①に似た外観を示 すが,円礫を主体とする点や,砂岩層と指交関係をな
柱状図B(第4図に位置を示す)
中新統一﹂
す点で異なる.また,全体に風化が進んでおり,場所 によっては砂礫となっていて,段丘礫との区別が困難 な場合もある.
(3)第4系
三井野原一平家平間に分布する第四系は,下位より 平家平礫層,三井野原礫層,有機質土,火山灰層およ びク・ボクからなる(第5,6図)が,今回は第四系
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第四系
第三系
E:[]礫岩層① 囚 平家平礫層一……11.0〜5.Om
[二重] 炭質頁岩砂岩互層・・12.0〜3.Om 回 三井野原礫層……・0.3・)1.Om
[豆] 凝灰質細粒砂……・・0・2( 0・5m 回 クロボク・火山灰…・O・8〜2・Om
第7図 パイロット道路露頭スケッチC(第4図に位置を示す)
の主体を成す2枚の礫層についてのみ述べる.
洪積統の礫層は,第7図に示すように,くさり礫を 含む厚い下部の礫層と,くさり礫をほとんど含まない 上部の礫層とに区分できる.なおこの2枚の礫層は岩 相が若干異なるだけでなく,その分布域がずれている ため,今村(1959,猪木・坂本,1977より)による三 井野原礫層は2分されるとした.本論では,下部の礫 層を平家平礫層と,上部の礫層を三井野原礫層と再定 義する.
平家平礫層は,平家平周辺と三井野原東縁の山腹斜 面にだけ分布する.本層は主にデイサイトおよび安山 岩質火山岩類と,花崗岩のくさり礫からなり,新鮮な 露頭においては全体に明るい青灰色を呈する.平家平 礫層は,最下部に前述の凝灰質砂岩層を伴い,下位の 備北層群を激しく浸食し,浸食によるへこみ部を埋め ている.この礫層は,径10〜50㎜の円礫〜亜円礫と粘
土まじり砂の基質からなる.
三井野原礫層は,第7図に示すように下部礫層,備 北層群あるいはデイサイト質火山岩類を薄くおおい1 m以下の層厚をもつ.ボーリングによれば,本層は,
三井の原地区一帯に広く分布している.本礫層は,主 にデイサイト,あるいは安山岩質火山岩類の円〜亜円 礫からなり,基質は粘土分に富むため,ボーリングの 記載では粘土混じり砂礫とされることが多い.なお,
平家平礫層と異なって本層はくさり礫をほとんど含ま ず,新鮮な露頭では褐色を呈している.
皿 考 察
(1)備北層群の堆積盆地の復元
坂根一三井野原間の中新統の断面図を第8図に示
す.中新統はいくつかの断層により40〜50mの落差を もってずれている.また,室原川によって中新統の連800 700 600 500 400
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図礫岩層①
第8図 坂根地区備北層郡の模式断面図
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『OOO第9図 中新統の層序断面図
本地域の中新統が谷地形を埋積しているのが見られる
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第10図
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圃礫岩◎図礫岩①
中新統形成後の構造運動及びその後の侵食地形
続性を分断されている.しかし,炭質頁岩砂岩互層を 鍵層にして断層による転位をもどすと,第9図の様な 堆積盆地が復元される.この堆積盆地の縁辺には高角 不整合面と不淘汰角礫が発達することから,この盆地 は基盤の陥没によって形成されたと考えられる.この 盆地は,少なくとも2㎞の幅と200mの深さをもち,
そこに礫岩と砂岩を中心とした堆積物が埋積したと考 えられる.
(2)平家平礫層の意義
備北層群堆積後で三井野原礫層堆積前に,50m前後 の落差を持つ断層により東側が陥没した構造が形成さ
れた.第四紀に入って三井野原礫層堆積期には,河川 は平家平東方から平家平,三井野原を南流する.三井 野原の火山灰や有機質土を主体とする第四紀層はこの 時期に形成された物であり,この平坦面は平家平まで 連続していたものと考えられる.谷勾配は第10図に示
した様に単傾斜であり,第2図のA からAの方向に
傾斜している.その後,北流する室原川による浸食が激しく進行
し,三井野原を南流する西城川の上流域は,河川争奪 により水流を奪われ第8図に示す様な現地形が形成さ れた.(第11図参照)第12図には,坂根地区に分布する︑︑\論難.痂 △蘇.
禰睡響臨
B:被争奪河川 C:争奪河川 E:争奪の肱 W:風除 〔Davis,Wl M.1912を…部改変〕
第11図 河 川 争 奪
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基 盤
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第12図 地質断面図(第2図にその位置を示す)
記号は第10図に従う
中新統を中心とした東西方向の地質断面図を示した.
IV ま と め
この報告書では,三井野原地区の中心統を中心にま とめたが,それに関連する三井野原礫層や国道314号 線のループ橋周辺地域の地質構造についても一考察を 述べた.第11図に示した河川争奪の模式図は地形学辞
典からの引用であるが,今年4月に開通した当 奥出
雲オロチループ 周辺の地形図と極めて良く似てお
り,そのまま利用させていただいた.最後に,この報 告書作成に当たり現地調査にも同行していただきなが らご指導いただいた山内靖喜教授に厚くお礼申し上げる.