卒業論文
「就職活動」という経験が持つ意味
――当時を振り返った若者の語りから――
2015 年度入学
九州大学 文学部 人文学科 人間科学コース 社会学・地域福祉社会学専門分野
2019 年 1 月 提出
要約
本研究は、大学生の就職活動に焦点を当てたものであり、多くの学生が就職活動をする中 で感じると考えられる苦しさの本質とその背景にある規範や構造を明らかにしたうえで、
就職活動を行う学生、ひいては現代の若者がどのような苦しさを抱えているのか、それを軽 減させるにはどういったことが必要なのかを考察していくことを目的としている。
研究を進めるにあたって、まずは就職活動の現状と歴史について整理し、日本経済団体連 合会による「採用選考に関する指針」や新卒一括採用方式についても記述した。先行研究に ついては、就職活動をする中で学生が感じるさまざまな苦しさ、採用基準の不明確性、就職 活動においてよく用いられる概念である「やりたいこと」という考え方に関するものを取り 上げた。
調査については、2018 年 7 月から 11 月にかけて、学生時代に就職を志望して就職活動を 行った九州大学文学部の卒業生 6 人を対象者とし、半構造化インタビューを行った。現役の 大学生ではなく卒業生を対象としたのは、当時とは違う視点を持ちつつ適度な距離感を持 って就職活動を振り返ることができ、それによって見えてくるものがあると考えたためで ある。得られた調査結果について、各調査対象者が就職活動についてどのような考えを持ち どのように行動したのか、またその中でどういったことを感じたのか、現在は就職活動とい う経験をどのように捉えているのかなどを中心に分析を行った。
その後、各調査対象者についての分析を踏まえ、それぞれの語りに共通するものや異なる ものを見出しつつ、総合的な考察を行った。その結果、「就職活動」に対する意味付けの変 化が捉えられた。全体として、マイナスの意味付けからプラスの意味付けへと変化していく 傾向があると言える。その背景には、経験と結果に折り合いをつけつつプラスの意味付けを 見出すことで前を向こうとする姿勢があり、そうせざるを得ない状況があるとも考えられ る。また、学生が就職活動中にマイナスの意味付けばかりを見出してしまうのは就職活動に 対する良くないイメージがあるからだと考えられ、その背景には働くことに対する良くな いイメージ、希望の持ちづらさがあると言えるだろう。生きていく中で長い時間を費やすこ とになる「働く」ということに対して前向きになれない状況があることは若者が将来に対し て前向きな姿勢を持つことの妨げになる。当然、就職活動に対しても前向きになれない状況 が存在し、学生の均質化やさまざまな規範はそれを助長するだろう。若者は前向きになりづ らい社会を生きており、意識的であれ無意識的であれ、その中で自ら自分の経験にプラスの
意味を見出すことでなんとか前を向こうとしているのではないだろうか。
以上のように結論付け、最後に反省と今後の課題を示して本論文の結びとした。
目次
1 研究の背景 ... 1
1.1 問題意識 ... 1
1.2 研究の目的 ... 1
2 就職活動の現状と歴史 ... 2
3 先行研究の整理 ... 5
3.1 学生が感じるさまざまな苦しさ ... 5
3.2 採用基準の不明確性 ... 7
3.3 「やりたいこと」という考え方 ... 8
4 調査概要 ... 10
5 分析 ... 11
5.1 A さんについて ... 11
5.1.1 就職活動の捉え方... 11
5.1.2 「否定された」という感覚 ... 12
5.1.3 看護師を目指すという選択 ... 14
5.1.4 「一番いい道」 ... 16
5.1.5 小括 ... 18
5.2 B さんについて ... 18
5.2.1 就職活動の捉え方... 19
5.2.2 「就職活動」の重み ... 19
5.2.3 地方という限界 ... 20
5.2.4 就職活動という経験 ... 22
5.2.5 小括 ... 24
5.3 C さんについて ... 24
5.3.1 就職活動の捉え方... 24
5.3.2 「やりたいこと」への意識 ... 26
5.3.3 なりたい像としての「働く女性のロールモデル」 ... 29
5.3.4 就職活動のつらい側面 ... 31
5.3.5 小括 ... 32
5.4 D さんについて ... 33
5.4.1 就職活動の捉え方... 33
5.4.2 「選ぶ」・「選ばれる」立場 ... 34
5.4.3 振り返って考える「就職活動」 ... 36
5.4.4 学歴と「挫折」 ... 38
5.4.5 小括 ... 40
5.5 E さんについて ... 40
5.5.1 就職活動の捉え方... 40
5.5.2 「楽しかった」就職活動 ... 42
5.5.3 「なるようになった」就職活動 ... 44
5.5.4 学歴と選択肢 ... 47
5.5.5 小括 ... 49
5.6 F さんについて ... 49
5.6.1 就職活動の捉え方... 49
5.6.2 振り返って語る「就職活動」 ... 50
5.6.3 「求められるもの」 ... 52
5.6.4 「やりたいこと」への意識 ... 54
5.6.5 小括 ... 55
6 考察 「就職活動」という経験が持つ意味 ... 56
6.1 「就職活動」の重み ... 56
6.2 結果の捉え方 ... 58
6.3 「やりたいこと」という考え ... 59
6.4 就職活動に臨む姿勢 ... 61
6.5 学生の均質化 ... 62
6.6 総括 ... 63
7 今後の課題 ... 65
参考文献 ... 66