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地力窒素の分子実体は何か - J-Stage

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Academic year: 2023

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(1)

化学と生物 Vol. 50, No. 4, 2012 239

今日の話題

よって,それぞれAMPKやPPAR

α

  の活性化などを介 して,インスリン抵抗性や耐糖能障害が改善されること を示している(5)

筆者らは臨床応用も試みている.高分子量Adが高活 性型であることを見いだし,その測定法を共同で開発 し,メタボリックシンドロームの診断法として有用であ ることを初めて示した.治療法としては,同定したAd- ipoRの作動薬や増加薬の開発が,糖尿病・メタボリッ クシンドローム・動脈硬化症の根本的な治療法開発の道 を切り拓くものと強く期待される.筆者らはPPAR

γ

 活 性化剤が高活性型高分子量Adを,またPPAR

α

  活性化 剤がAdipoRを増加させることを,さらに野菜・果物に 含まれるオスモチンがAdipoRの作動薬となり得ること を見いだしている.

さらに最近では,組織特異的AdipoR欠損マウスの解 析から,各組織におけるAd /AdipoR作用の解明に取り 組んでいる.骨格筋特異的AdipoR1欠損マウスにおい てAd投与実験を行なったところ,骨格筋でのAMPK のリン酸化は骨格筋特異的AdipoR1欠損マウスでは低 下していた.骨格筋特異的AdipoR1欠損マウスの骨格 筋では,PGC-1

α

 (peroxisome proliferator activated re- cep tor 

γ

 coactivator-1) の発現低下が認められ,さら に,PGC-1

α

  の脱アセチル化も抑制され,活性化した PGC-1

α

 量が低下していた.それらに伴ってミトコンド リアDNA含量が低下しており,Err

α

 (estrogen-related  receptor 

α

),CytC (cytochrome C) も低下していた.

ま た,ATPase染 色 (pH 4.3) に て 骨 格 筋 特 異 的Adi- poR1欠損マウスの骨格筋ではtype1 fiberの低下が認め られ,運動負荷試験では持久力の低下が認められた.酸 化ストレスの消去に関わるSOD2,カタラーゼも低下 し,酸 化 ス ト レ ス マ ー カ ー で あ るTBARS (thio-

barbituric acid reactive substances) が上昇していた.

また,脂肪酸燃焼に関わるMCAD (medium-chain acyl- CoA dehydrogenase) の発現低下が認められ,骨格筋で の中性脂質含量が増加していた.糖負荷試験において は,糖負荷後の血糖値およびインスリン値は有意に上昇 しており,インスリン抵抗性,耐糖能障害が認められ た.グルコースクランプ試験においては糖取り込みの有 意な低下が認められた.

C2C12骨格筋細胞を用いた検討と合わせて,Adが骨 格筋ではAdipoR1を介して,細胞内カルシウム濃度の 上昇とAMPK/長寿遺伝子SIRT1 (sirtuin1) の活性化の 両方をもたらし,PGC-1

α

 とミトコンドリアの量と活性 の制御を司るなど,運動を模倣する作用を有しているこ とが明らかとなった(6).Ad/AdipoR1シグナルを増強す ることが,運動を模倣するという新しい視点で,肥満 症,2型糖尿病の新規治療法となる可能性が示唆された

(図1

AdipoRアゴニストの開発に関しては,ランダムスク リーニングによる内服可能な低分子量化合物の開発や,

抗体創薬,全長Ad・globular Ad・オスモチンなどの既 知のアゴニストとの結合のあるなしの状態での立体構造 解析のデータに基づく低分子量化合物の設計およびスク リーニングなどが戦略として考えられ,その実現が世界 で大いに期待されている.

  1)  T. Yamauch  : , 30, 221 (2002).

  2)  T. Yamauch  : , 8, 1288 (2002).

  3)  T. Yamauch  : , 7, 941 (2001).

  4)  T. Yamauch  : , 423, 762 (2003).

  5)  T. Yamauch  : , 13, 332 (2007).

  6)  M. Iwabu  : , 464, 1313 (2010).

(山内敏正,門脇 孝,東京大学大学院医学系研究科)

地力窒素の分子実体は何か

土壌には多様な分子量の有機態窒素が存在する

作物は土壌から主として無機態の窒素を吸収する.そ の窒素は,化学肥料に含まれている無機態窒素だけでは なく,土壌に含まれている有機態窒素から徐々に分解生 成する無機態窒素にも由来する.この土壌から生成し作 物に供給される窒素を「地力窒素」あるいは「可給態窒 素」と言う.土壌中には,生物活動や化学反応から生み

出される様々な窒素含有有機物が存在する.それらの有 機物が主に生物的に分解されて,生成した無機態の窒素 が作物に供給される.地力窒素の発現量を知ることは,

作物の生育予測や施肥設計に大変重要であることから,

その推定手法が研究されてきた.現在,作物の生育量と 生物学的あるいは化学的分析の結果得られた測定値との

(2)

化学と生物 Vol. 50, No. 4, 2012

240

今日の話題

相関から地力窒素量が推定されている.代表的な方法と しては,温度・水分条件を一定にして土壌を培養して発 現する無機態窒素量を測定する「培養窒素法」と,地力 窒素の給源となる有機物を選択的に抽出することを目的 とした「熱水抽出法」,「リン酸緩衝液抽出法」などが挙 げられる.しかし,「どのような物質が地力窒素の給源 なのか?」という問いに対しては,未だに明確な答えが 得られていない.

土壌中には作物の残渣分解物や微生物の代謝物など多 様な生化学物質が存在するほか,化学構造の不明な「腐 植物質」と呼ばれる暗色物質が存在する.そのため,今 のところ各々の物質の動態を把握するのは困難であり,

地力窒素の給源を特定するのは難しい.しかし,近年,

固体 15N-NMR, 高速液体クロマトグラフィーなどの機器 分析法の進歩により,土壌有機態窒素に関する新知見が もたらされ,地力窒素の実体を解明しようという試みが 始まっている.

従来,土壌を加水分解すると全窒素量の20 〜 40%の アミノ酸態窒素が生成されることが知られていたが,土 壌の固体 15N-NMRスペクトル分析結果などから全窒素 量の少なくとも2/3以上の有機態窒素がペプチド態であ ることが明らかになった(1).この結果とペプチドのC/

N比が約4であることを考慮すると,C/N比10程度の一 般的な土壌有機物では,有機態炭素の30 〜 40%がペプ チド起源と推測され,タンパク質様物質は土壌有機物の 主成分ということになる.しかし,土壌に添加されたペ プチドやタンパク質は,直ちに微生物に分解利用されて しまうため,それらが土壌中にフリーな形で安定的に存 在するとは考えにくく,何らかの方法で土壌中に固定さ れていると推察される.タンパク質様物質がどのような 形態で土壌中に存在しているかについては,①メソポア 仮説:アミノ酸や小さなペプチドが鉱物表面および 10 nm以下の鉱物表面の穴へ吸着(2),②タマネギ層モデ ル:陰イオン性のカルボキシル基と陽イオン性のアミノ 酸が粘土表面で結びつくことにより有機物の多重層を形 成(3),③タンパク質リグニン複合体,④タンパク質タン ニン複合体,⑤カプセル化モデル:ペプチドを高分子有 機物により包含(4),⑥超分子モデル:分子量の小さな有 機物の水素結合などによる超分子の形成(5)  などの様々 なメカニズムが考えられている.また,ペプチドグリカ ンなどの微生物に分解されにくい生体物質があることも 知られている.これらの土壌中のタンパク質様物質の分

解抵抗性メカニズムについては,実験的に実証されてい るものもあるが(2),土壌中にどのような形態のタンパク 質様物質あるいはその複合体が,どのくらいの割合で含 まれているのかはわかっていない.Matsumotoら(6) 

は,化学的地力窒素推定法の一つであるリン酸緩衝液抽 出によって得られる有機物を,高速液体サイズ排除クロ マトグラフフィー (HPSEC) により分離しUV280 nmで 検出すると,8,000 Daのほぼ均一の分子量をもつピーク のみが見られたことから,これが地力窒素の給源物質だ と推察した.UV280nmの吸収をもつ物質が必ずしも窒 素を含んでいるとは限らないため,この分析は有機態窒 素全体を捕えているものではないが,地力窒素の実体を 捕える試みとして示唆に富んでいる.

最近,筆者らは,地力窒素の推定法として信頼性が高 いとされている80℃・16時間水抽出法(7) の抽出物を対 象として,化合物の窒素を直接検出する方法を用いて分 子量分布を測定した.すなわち,高分解能サイズ排除カ

図1土壌の80℃・16時間水抽出物のサイズ排除クロマトグラ ム

化学発光窒素検出器 (CLND) では,有機物中の窒素を特異的に検 出できる.窒素は広い分子量の有機物に含まれる. 0:排除限 界, t:全浸透容限界,

:標準タンパク質の溶出時間(数字は 分子量).無機態窒素はカラムとの相互作用により,NO3は早め に,NH4は遅れて溶出される.

(3)

化学と生物 Vol. 50, No. 4, 2012 241

今日の話題

ラムで分子量分画した試料を化学発光窒素検出器に送り 込み,窒素の分子量分布を測定する方法(サイズ排除高 速液体クロマトグラフィー/化学発光窒素分析法;HP- SEC-CLND)である.その結果から,土壌の水抽出物 の有機態窒素の分子量は,数千Da 〜数十万Daの広い 範囲に分布しており,分子量毎にUV280 nm吸収やフル ボ酸様蛍光 (Ex. 340 nm, Em. 440 nm) の強さが異なっ ていることが明らかになった(図1.したがって,土 壌の80℃・16時間水抽出物は分子量と分光学的性質が 異なる複数の有機態窒素集団から構成されていると考え られる(8).また,地力窒素の高い堆肥連用土壌と地力窒 素の低い化学肥料連用土壌の抽出物を比較すると,数万 Da程度の有機態窒素が堆肥連用土壌に多く含まれてい ることもわかってきた.一方,河川の溶存有機物につい ても,液体クロマトグラフィー/有機態炭素分析/有機態 窒素分析法 (LC-OCD-OND) によって,分子量の異なる 複数の有機物が存在していることが報告されている(9). 今後は,これらの有機態窒素集団の個々の土壌中での分 解・蓄積特性を明らかにすることによって,地力窒素の

動態を知ることが可能となるであろう.また,有機態窒 素のアミノ酸組成やそれに結合する有機物・無機物の組 成の解析により,その存在形態や起源物質の実体が明ら かになることが期待される.

  1)  森泉美穂子,松永俊朗:日本土壌肥料学雑誌,80,  304 

(2009).

  2)  X. C. Wang & C. Lee : , 44, 1 (1993).

  3)  M. Kleber, P. Sollins & R. Sutton : , 85, 9 

(2007).

  4)  H.  Knicker  &  P.  Hatcher : , 84,  231 

(1997).

  5)  A. Piccolo : , 75, 57 (2002).

  6)  S.  Matsumoto,  N.  Ae  &  M.  Yamagata : , 46, 139 (2000).

  7)  上薗一郎,  加藤直人,  森泉美穂子:日本土壌肥料学雑誌,

81, 39 (2010).

  8)  M. Moriizumi & T. Matsunaga : , 57,  185 (2011).

  9)  S. A. Huber, A. Balz, M. Abert & W. Pronk : ,  45, 879 (2011).

(森泉美穂子,松永俊朗,農業・食品産業技術総合研 究機構中央農業総合研究センター)

病原真菌 Candida glabrata におけるステロール輸送の生理的役割

血清からのコレステロール取り込みが病原性に必須か?

生物にとってステロールは,細胞膜を形成し様々な生 理活性をもつ必須な脂質であるが,合成過程において酸

素が必要である.出芽酵母 は,

好気条件ではエルゴステロール(哺乳類でのコレステ ロールに相当する)を合成し,細胞外にステロールが存 在しても取り込んで利用することはないが,嫌気条件下 でエルゴステロール合成が抑制されると,細胞外ステ ロールの取り込みが観察されるようになる.

は,ステロール合成が可能な条件では「栄養」とな りうる細胞外ステロールを排除して,自身のステロール 合成のみで生育するという戦略でステロール恒常性を維 持していると考えられる.

人間に感染症をひき起こす病原真菌

は と遺伝的に近縁種であるとされており,

遺伝子やステロール代謝機構に関しても多くの共通性が 認められるが,筆者らは が自身のエルゴス テロール合成が可能な状態でも血清を添加すると血清由 来 の コ レ ス テ ロ ー ル を 取 り 込 む こ と を 見 い だ し

(1).ここでは, 固有のステロール取り込 み機構と,生理機能との関連について考察する.

で は,嫌 気 条 件 で 特 異 的 に 発 現 す る ATP-binding cassette (ABC) タンパク質スーパーファ ミリーに属するAus1pまたはPdr11pが細胞外ステロー ルの取り込みに必須であることが示されている.また,

Aus1pおよびPdr11pによるステロールの取り込みが ATP依存的であることから,これらのタンパク質は他 の基質排出型のABCタンパク質 (floppase) とは反対 に,細胞外由来のステロールを細胞膜外葉から細胞膜内 葉に能動的に移動させる (flippase) と推測される(2). 細胞膜内葉まで到達した細胞外由来ステロールは,Osh 

(oxysterol binding protein homolog) タンパク質によっ て小胞体に輸送され,アセチル化,エステル化などの修 飾を経て,その後の輸送経路が決定されるが,小胞体ま でのステロール輸送経路と比較して小胞体以降のステ ロール輸送については未解明な部分が多い.

筆者らの研究グループは,① 感染患者か

参照

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