2002 経済原論Ⅱ 2002.5.13
再生産のしくみ:景気変動を考える 7.
0.はじめに
○前回は資本の拡大再生産のメカニズム、及びその遂行に不可欠な労働力商品の再生産のメカニズム(相 対的過剰人口)について考察した。そこでは生産過程に焦点を当て、流通過程における売買の成否(価 値の実現=価値的補填、使用価値の実現=素材的補填)については不問に付していた。つまり、個別資 本あるいは社会的総資本における「 −G W−G…G''…G'''」が正常に行われるものと仮定していた。
○しかし年間総生産物の各要素がどこへどのように流通し、価値的・素材的に補填されるのかが明らかに されなければ、資本の再生産の分析は完成しない。価値的・素材的補填の問題を考察するためには、個 別資本や社会的総資本という設定ではなく、社会の総生産物の各要素を生産する諸部門への区分が必要 になる。
※テキスト 頁を参照 1.自然生態系の物質代謝と社会の「物質代謝」 86
自然生態系の物質代謝 (1)
・植物群の内部における代謝
・動物群の内部における代謝
・植物群と動物群との間の代謝
・両群と外部環境との間の代謝
→各々の代謝のバランスによって生態系が維持され再生産される
→不断の動揺の中で一定の比率的構造を編み上げる=自然法則の貫徹 社会の「物質代謝」
(2)
資源→生産(加工)→流通→消費→廃棄→処理
・広義=
生産と消費(需要と供給)が各生産要素の内部及び相互間で取り結ばれる関係
・狭義=
2.単純再生産の成立条件 社会的総生産物の構成 (1)
W' C V M
・価値的構成 = + +
・素材的構成 W'=生産手段+消費手段
社会的総資本を生産手段生産部門(Ⅰ)と消費手段生産部門(Ⅱ)に区分
→
価値的構成 素材的構成
Ⅰ部門 C1+V1+M1=W'1 生産手段商品
Ⅱ部門 C2+V2+M2=W'2 消費手段商品 4000C+1000V+1000M=6000 2000C+ 500V + 500M=3000 補填のあり方
(2)
・価値的補填 市場での売買を通じた商品の貨幣への転化
・素材的補填 生産手段商品=各部門の生産過程で消費された生産手段Cを補填
消費手段商品=各部門の労働者の賃金Vと資本家の個人的消費 M として消費 された消費手段を補填
供給 「C1+V1+M1」→生産手段として
「C2+V2+M2」→消費手段として
需要 「 」と「 」→生産手段としてC1 C2
「V1+M1」と「V2+M2」→消費手段として
①「 」の生産手段としての部門内交換
→ C1
②「V2+M2」の消費手段としての部門内交換
③「V1+M1」と「 」との部門間交換C2
単純再生産の成立条件 (3)
「 + 」=「 」
①基礎条件 V1 M1 C2
※資本家が投下した貨幣額はそのまま同じ資本家に還流しなければならない
②貨幣還流条件
(Ⅱ部門での労賃支払いとそれによる消費手段の購入)
・2K→2A→2K
(生産手段の購入とその販売代金による消費手段の購入)
・2K→1K→2K
(Ⅱ部門の剰余価値による消費手段の購入)
・2K→2K
(Ⅰ部門での労賃支払いと消費手段の購入、その販売代金による生産手段の購入)
・1K→1A→2K→1K
(Ⅰ部門の剰余価値による消費手段の購入とその販売代金による生産手段の購入)
・1K→2K→1K
(生産手段の購入)…
・1K→1K
※不変資本 のうち固定資本部分の回転様式の独自性
③固定資本の補填条件 C
・固定資本と流動資本の区別(*)
・一回の生産過程では消滅せず、耐用期間中は何回も何年も機能しつづけるが、その間、価
(減価償却)
値の一部ずつしか価値移転しない
・この価値移転額は生産物の販売によって貨幣に転化(W→G)した後、減価償却基金とし て積み立てられるため、すぐに現物補填(G→W)されない
・この減価償却基金積立は耐用期限が終わるまで続けられ、耐用期限終了後にはじめて消却 基金を一挙に投下して現物補填が行われる
耐用期間中(G積立)での「需要なき一方的供給」
×
→ 固定資本の購入・更新時点(G→W)での「供給なき一方的需要」
Ⅱ部門で の消費手段の販売→ の生産手段更新と の積立→Ⅰ部門
ex. 2000 1800 200
で200の生産手段の売れ残り→貨幣が還流せず
このギャップは社会的総資本レベルでは「解決」される。すなわち、一方的需要と一方
→
「償却基金積立額=償 的供給との相殺。したがって単純再生産が成立するための条件は
却基金投下額」
3.拡大再生産の成立条件 社会的総生産物の構成 (1)
価値的構成 素材的構成
Ⅰ部門 C1+V1+M1(mc1+mv1+mk1)=W'1 生産手段商品
Ⅱ部門 C2+V2+M2(mc2+mv2+mk2)=W'2 消費手段商品
※拡大再生産の前提=「V1+M1>C2」 (設備投資の先行)
4400C+1100V+(440mc+110mv+550mk)=6600 1600C+ 400V+(160mc+40mv+200mk)=2400 補填のあり方
(2)
供給 「C1+V1+M1」→生産手段として
「C2+V2+M2」→消費手段として
需要 「C1+mc1」と「C2+mc2」→生産手段として
「V1+mv1+mk1」と「V2+mv2+mk2」→消費手段として
①「 + 」の生産手段としての部門内交換
→ C1 mc1
②「V2+mv2+mk2」の消費手段としての部門内交換
③「V1+mv1+mk1」と「C2+mc2」との部門間交換 拡大再生産の成立条件
(3)
「 + + 」=「 + 」
①基礎条件 V1 mv1 mk1 C2 mc2
②貨幣還流条件
③蓄積基金
・剰余価値が追加的不変資本および追加的可変資本として投下しうる一定の大きさに達する までのタイムラグ
蓄積期間中(G積立)での「需要なき一方的供給」
×
→ 蓄積基金の投下(G→W)時点での「供給なき一方的需要」
このギャップは社会的総資本のレベルでは「解決」される。すなわち社会的相殺。し
→
たがって「貨幣的蓄積(一方的供給)=現実的蓄積(一方的需要 」) が条件。
④固定資本の補填条件
・拡大再生産では蓄積するにつれて固定資本額も拡大していくから 「償却基金積立額>償, 却基金投下額」となる傾向。
→この差分(供給過剰)を吸収するだけの外部からの追加投資が必要 単純再生産から拡大再生産への移行過程
(4)
・Ⅰ部門の先行的拡大
( ⇒ + + )
・Ⅰ部門内での再配分 1000m 400mc 100mv 500mk
( + ⇒ + + , ⇒ )
・Ⅱ部門の縮小 1000v 1000m 1000v 100mv 500mk 500v 400v
(Ⅰ: + + ,Ⅱ: + + )
・拡大再生産の開始 4400c 1100v 1100m 1600c 400v 400m 資本再生産の成立条件が意味するもの
(5)
・成立諸条件の微妙なバランスによって資本主義的生産関係が維持され再生産される
*価値増殖と蓄積という資本の本性に導かれながら、資本間の競争と共生が展開
→不断の動揺の中で一定の比率的構造を編み上げる=価値法則の貫徹
・・・・条件の不成立=需給の不一致→価格の変動→資本の移動→(需給の一致=条件の成立=価値どおりの価 格)→条件の不成立=需給の不一致→価格の変動→資本の移動→・・・・
矛盾の蓄積
・たんに「不断の振動と波動」が繰り返されるだけではない→
4.景気変動(産業循環)
好況から繁栄へ (1)
・市場シェアの獲得と利潤の拡大をめぐって競争が展開
・資本の加速度的蓄積
その一方で、①第Ⅰ部門と第Ⅱ部門との不均等発展(設備投資の先行)
②資金調達コスト(利子率)の上昇
③キャピタルゲイン目当ての投機熱の拡大
・過剰生産(過剰供給)による生産と消費の矛盾の拡大
・表面化を遅らせる諸要因→矛盾のさらなる拡大
①見込み需要の継続⇒拡大再生産の継続
②過剰化する固定資本需要への追加投資=投資規模の拡大⇒貸付資本への依存
③流通部面における在庫プールとしての滞留
④信用取引による貨幣還流の「円滑化 (信用による還流と現実の還流との乖離)」
恐慌 (2)
・需要と供給の逆転→過剰生産の表面化と全面化
・価格の全面的低落と生産の縮小
・貨幣還流の滞り=支払い連鎖の中断→金融不安と信用恐慌
・生産が支払い能力ある需要水準に引き戻される(生産と消費の強制的適合)
(3)不況
・産業と商業の収縮・停滞の累積的継続
①生産過程にある資本の価値的・物理的破壊=工場の閉鎖や弱小企業のスクラップ
②商品形態にある資本の価値的・物理的破壊=過剰在庫の処分
③賃金率の低下(←膨大な過剰人口=失業者=産業予備軍の存在)
④利子率の低下(←貸付可能な遊休貨幣資本の増加)
回復から好況へ (4)
・停滞局面での新たな競争の開始
①生産コスト(原材料価格、賃金率、利子率)の低下をテコとした競争の回復
②新しいニーズと製品開発、市場開拓、技術改良による設備投資需要 恐慌回避と財政出動
(5)
・ケインズ型有効需要政策
(ex.公共事業→企業の生産活動の喚起→雇用増と賃金支払→所得増による需要の喚起)
・ケインズ政策の限界
不況にもかかわらずインフレが進行=スタグフレーション
→