46 兵庫県病院薬剤師会 会報 兵病薬会報 2017.9-№152
私たちの研究室は10年前に兵庫医科大学姉妹校として 設立時に設立され、満十年を迎えております。以下、研 究室の現状について紹介させていただきます。
<研究室構成員:2017年2月1日現在>
教授:田中明人(前職、アステラス製薬)、講師:清水 忠(前職、理化学研究所(袖岡研究室)、博士研究員:
所(馬渕)美雪(前職、アステラス製薬薬理研究所、神 戸大学医学部薬剤部)、博士課程:3人(内2名は兵庫医 科大学薬剤部)、学部学生:5人
<研究室の特徴>
創薬化学は、有機化学の応用と考えられがちですが、
テーマ不足の現在の創薬化学に求められる能力は、良質 なテーマ創出、見極め能力、複雑化する開発過程の俯瞰 など多岐にわたっており、当研究室では化学系の田中、
清水に加え薬効薬理プロ(所氏)を招聘し、研究室内で 合成、薬理評価 invitro および invivo、薬物動態、医 師との連携を含め製薬企業のニーズに対応可能な創薬過 程全般を小さな組織で一応運用しています。また、創薬 テーマ不足の現代では、ブラックボックス・スクリーニ ングに代表される薬効重視の創薬が重宝されますが、ア フィニティ樹脂に関する基盤技術開拓をハーバード大学 の Schreiber 教授留学経験を活かし1991年から継続して きており、製薬企業が有するターゲット未解明の開発(候 補)品のメカニズム解明を行っております。
また、清水は独自に薬学教育研究を展開しており、医 療職の中において薬剤師だけの武器となる「化学構造 式 」、 薬 剤 師 と 医 療 職 と の 共 通 言 語 と な り う る
「Evidenced-basedmedicine」を臨床現場で活かせるこ とを目指し、学部教育のみならず生涯研修にも応用可能 なアクティブラーニングを取り入れた効果的な学習プロ グラムの方法論の開発を、近畿圏の大学・病院・薬局と 連携しながら進めております。
<研究テーマの概要>
①創薬化学
・抗がん剤を目指した研究1(PCA-1阻害剤) 大阪大 学・辻川教授が見つけられたがんの予後因子の一つで あ る PCA-1に 対 し、 低 分 子 で 阻 害 す る 化 合 物 HUHS015を創製し、HUHS015が期待された抗がん活 性を示し、しかも副作用が少ないことを明らかとし、
これまで AMED などの支援を受けて更なる化合物ブ ラッシュアップを行い、医師主導臨床を通じた POC inhuman 取得、および企業への導出を計画中です。
・抗がん剤を目指した研究2(ナフトピジル関連) 東
京大学・本間教授らがナフトピジル服用患者において は前立腺肥大~前立腺癌への進行が抑制されることを 報告し、我々は連携して当該薬の検討を行い、代謝物 が薬効本体であることを同定しました。現在、当該薬 効本体を中心に医師主導臨床を通じた POCinhuman 取得、および企業への導出を計画中です。
・その他 アレルギー関係のテーマとして Th2細胞の 活性化抑制を示す化合物のターゲット探索を通じ、ア レルギー関連の創薬を目指し、愛媛大学と共同研究を 行っています。
・その他、地元企業と共同で、既存薬の問題点を改善し た医薬品開発や、地方大学が持つ独自資産を創薬研究 に活用できるよう依頼を受けバックアップなどもして おります。
②アフィニティ樹脂関係
これまで、10種類以上の特許を保有し(特許管理会社 KOBEChemicalGenetics 経営)、アフィニティ樹脂に 関する基盤技術開拓はほぼ完成域にあるが(成果物の一 つは家田化学より AquaFirmus として販売中)、技術の ブラッシュアップの意味もこめ、これまでアステラス製 薬、エーザイ、科研製薬、オフテクスなどの製薬企業が 有する化合物のターゲット探索を行ってきました。開発 に関わる機密情報であるため発表機会が制約されてきま し た が、 よ う や く1件 発 表 し ま し た(NatureChem.
Biol.,13,675(2017))。
③薬学教育研究
・化学構造式学習 学部教育では「化学・物理系演習の チーム基盤型教育法の構築」を摂南大学と共同で進 め、生涯学習では「構造式再学習ワークショップ形式 プログラムの構築」をぼうしや薬局と進めておりま す。
・ EBM 学習 学部教育では、「TBL & PBL ハイブリッ ド型の EBM 学習プログラムの構築」について大阪薬 科大学と共同研究を行っております。生涯研修では、
グランフロント大阪で「武庫川・ポーアイ EBM 倶楽 部」を隔月で実施しながら、「生涯研修用 EBM 学習 プログラム」の評価を進めております。
当研究室の現状を概説させていただきました。田中、
所が所属した藤沢薬品工業は過去にセファロ系抗生物 質、タクロリムス、ミカファンギンと大型ヒットを飛ば し、個性的な人物が多く在籍していましたが、山之内製 薬 と の 合 併 後 多 く の 先 輩 や 同 僚 は 退 社 さ れ、 現 在 AMED、PMDA などを含め我が国の創薬産業の隅々に 拡散し活躍されておられます(我々を含め“藤沢難民”
と自称)。現在、創薬への注目が高い反面、ビジネスと 兵庫県下薬科大学・薬学部教室紹介 №64
兵庫医療大学 薬学部創薬化学研究室
47 兵庫県病院薬剤師会 会報
兵病薬会報 2017.9-№152
しての創薬活動が優先され、創薬マインドをもつ基礎研 究にとっては厳しい時代ともなっておりますが、困った ら多方面に旧藤沢の方が大抵おられるため、細々とです が創薬活動をポートアイランドの小研究室で続けてきて
おります。創薬マインドのある先生方との連携を模索し ておりますので、今後ともよろしくご指導をお願いしま す。
研究室メンバーと仲間たち(2017年3月撮影、兵庫医療大学敷地内)
左下2人(兵庫医科大学勤務の大学院生)、右下(当日マカオで不在学生)