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モスクワ国際関係大学との定期協議(第 3 回 JIIA-MGIMO 会合)

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Academic year: 2023

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モスクワ国際関係大学との定期協議(第 3 回 JIIA-MGIMO 会合)

2012年10月18日、モスクワ国際関係大学(MGIMO)と第3回目となる定期協議を日 本国際問題研究所にて開催した。本会合では、①アジア太平洋地域における地域統合、② 東アジアにおける安全保障環境、③極東シベリア開発と日露関係の展望、をテーマに日露 双方の専門家が議論した。本会合参加者は以下の通り。

日本側:

野上義二    日本国際問題研究所理事長 浅利秀樹    日本国際問題研究所副所長

伊藤庄一    日本エネルギー経済研究所戦略研究ユニット研究主幹 金野雄五    みずほ総合研究所主任研究員

下斗米伸夫  法政大学法学部教授

兵頭慎治    防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長 久野和博    外務省総合外交政策局国連企画調整課課長 中村亮      外務省総合外交政策局政策企画室室長 鈴木弘之    外務省官房総務課外交記録・情報公開室 高橋洋江    外務省第四国際情報官室課長補佐 鶴田純平    外務省国際協力局国別開発第三課 岡田美保    日本国際問題研究所研究員 伏田寛範    日本国際問題研究所研究員

ロシア側:

S.チュグロフ      MGIMO国際ジャーナリズム学科教授

A.パノフ      MGIMO外交学部教授(元駐日ロシア大使)

D.ストレリツォフ  MGIMOアフリカ・アジア学科長

以下、各報告の要旨を記載する。

第1セッション  アジア太平洋地域における地域統合

<日本側有識者報告>

  ロシアの東方シフト政策を経済面から検討すると、ロシアには 2 つの目的があることが 指摘できる。一つは極東シベリアの開発であり、いまひとつは天然資源の輸出販路の確保 である。

まず極東シベリアの開発についてだが、プーチン政権は極東シベリアの発展のための政

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2 府プログラムを策定し、極東開発への連邦政府の支出を増加させている。こうした政府の 積極的な投資により、極東地域の深刻な経済社会状況の克服が目指されている。とりわけ、

APEC ウラジオストク・サミットは極東地域のインフラ整備を促進する役割を一定程度果 たしたといえる。

  次に資源輸出の拡大についてだが、ロシアの資源産業は今、転換点を迎えつつあること を強調したい。ウラル地方や西シベリア等の在来のガス田や油田の生産量が減る一方、ロ シア国外ではシェールガスに代表される新しい生産方法による資源開発が進んでいる。ま た、ヨーロッパでは景気低迷が長引き、ロシア産の石油やガスへの需要が減少している。

こうしたなか、新たな産地(東シベリア)と販路(アジア太平洋諸国)を求めて、ロシア は東へのシフトを目指している。

  しかし、ロシアの東方シフトの実現には解決すべき課題が残されていることも指摘した い。一つはインフラの整備の問題である。APEC を機に、極東シベリアのインフラの一部 は改善されたものの、手付かずのままとなっているものも多い。また、インフラ関連の投 資は雇用創出の面では効果は限定的であることにも注意すべきだ。インフラの整備に続い て、外資がどれだけ進出するようになるのかが問われる。

  もうひとつの解決すべき課題は、どのようにして資源をアジア太平洋地域に供給するの かという問題だ。ウラジオストク近郊にLNG基地が建設されたが、その基地までどこ(の 産地)からガスを運んでくるのかが問題となっている。

  報告を終えるにあたり、アジアの経済統合とロシアの戦略について述べておきたい。こ れまでロシアは、ニュージーランドおよびベトナムとFTA交渉を進めてきたが、この2国 以外に同様の交渉を進めようとする動きは見られない。製造業に強みを持つアジア諸国と FTA を結ぶことにロシアは利益を見出していないからだと思われる。ただし、サービスや 投資部門での協定を目指す動きはありうるかもしれない。ロシアはFTA締結よりもむしろ WTOを優先している。ロシアは今年(2012年)の8月にWTOに加盟を果たしたが、ま ずWTOのルールを国内に徹底させてゆくことのほうがロシアにとっては重要であろう。

<ロシア側有識者報告>

  近年、東アジアにおいて顕著な現象三点、ナショナリズム、二極体制、経済統合につい て述べたい。まず、東アジアにおけるナショナリズムについてだが、これは①経済的な下 地によって支えられ、②各国の歴史の記憶と結びつき、③政治性をますます帯びるように なっている。例えば、経済成長を背景とする中国でのナショナリズムの高揚は、過去の中 国の偉大な歴史と第二次世界大戦までの苦い経験に結び付けられ、時には政治家の権力闘 争にさえ利用されている。ナショナリズムが大衆の自国政府への不信感とも結びつき、い つどこで爆発するか分からない状況となっていることも、この地域のナショナリズムの特 徴であろう。

  次に、東アジアにおいて米中の二極体制が生じつつあることを指摘したい。この二極性

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3 は、米中両国の海軍力の増強レース、アメリカの同盟国である日本との領土紛争、朝鮮半 島での南北の対立などに見出せる。米中の対立は両国国内に(米ソ)冷戦時代と類似する メンタリティを植えつけている。またこの二極性は、西洋と東洋の価値観の対立という形 でも現れている。近年のヨーロッパの経済不振に見られる欧米諸国の相対的な国力の低下 は、西洋的な価値観の魅力の低下につながり、非西洋的な独自の道をアジア諸国が模索す る契機となっている。

  今日アジアにおいて生じつつある米中両国を中心とする二極体制の新しい側面は、両国 の対立が危険な一線を越える決定的なものとはなりえないという点にある。米中両国をは じめアジア諸国はいずれも経済的に密接な関係にあり、いかなる国も決定的な対立を望ま ないのである。その結果、アジアにおいて米中両国の影響力が強まる一方で、アジア諸国 は米中いずれとも良い関係を維持しようとするバランス戦略がとられるようになるだろう。

また、アジア地域においては包括的な軍事・安全保障機構は形成されないだろうが、経済 的な結びつきの深化が域内各国の軍事的な対立を抑制するように機能するだろう。

  最後に、アジア地域における経済統合について、より具体的には日本のTPP参加につい て述べたい。現在、アジア地域における経済統合には、アメリカの主導するTPPと日中韓 を主体とする自由貿易圏の創設を目指す動きの2つの大きな流れがある。日本にとっては、

アメリカとの同盟関係を踏まえ、中国とのバランスを考えれば、TPP に参加することがプ ラスとなることは言うまでもない。しかし、同時にアメリカに偏りすぎるのも好ましくは ない。経済大国となった中国を無視することはできないからだ。TPP だけが自由貿易を促 進するメカニズムではないことは日本もよく理解しているはずだ。

日本のTPPへの参加は国内の反発からなかなか進まないだろうが、TPPへの参加を目指 しつつ、中国や韓国とのFTA締結やアセアン諸国との関係強化を同時に追求する全方位の 外交が日本には求められている。

第2セッション  東アジアにおける安全保障環境

<日本側有識者報告>

  東アジアの安全保障環境について、日露両国の視点から考えたい。今日、東アジアにお いては、軍事に代表される伝統的な安全保障問題に加え、天災等の非伝統的な脅威にどの ように対処するかが課題となっている。このうち伝統的な安全保障(軍事面)に関してい えば、最大の問題は中国と北朝鮮であろう。

中国の台頭が顕著となるにつれ日露両国の対中認識に差は見られなくなっているが、中 国へのアプローチには依然として違いが認められる。とくに、自国の安全保障に中国をど のように位置づけるのかについては、日露間で温度差があるだろう。近年、ロシアの安全 保障政策では中国ファクターが増大しており、ロシア自身が中国への警戒心を率直に表明 するようにすらなっていることは注目に値する。

(4)

4 ロシアの対北朝鮮政策についても近年、変化が見られるようになっている。従来、ロシ アの北朝鮮へのアプローチは傍観者的で中国よりのものであったが、近年はロシア独自の コミットメントを模索しているように感じられる。例えば、2010年の朝露首脳会談や朝鮮 半島横断ガスパイプラインの建設案、軍事交流の再開などが好例として挙げられる。ロシ アの政策が変化した背景には、中ロ関係の変化が影響していると考えられる。

さて、今年(2012年)のプーチン政権発足とともにロシアは「東方シフト」を打ち出し ているが、この背景には何があるだろうか?  ロシアの「東方シフト」を支えるのは、① 経済成長に必要なエネルギー資源の輸出先の確保、②多極世界の極の一つである中国への 対応、という 2 つの政策的課題がある。とくに②の中国にいかに対応するのかという課題 はますます切実になってきている。近年、中国は北極航路の開拓を進めており、これはロ シアに戦略面で大きなインパクトを与えた。この中国の動きに対し、ロシアはオホーツク 海で軍事演習を実施するなど中国への警戒を強めるようになった。

このように東アジアをとりまく戦略的環境が大きく変化しつつあるなかで、この地域に どのようなフォーマットがありうるのかを述べて、本報告のまとめに代えたい。ロシアは

EASやAPEC、SCOといったアジア地域における多国間のフレームワークを重視し、その

なかでロシアの存在感を高めようとしている。また、見逃せない変化として、ロシアが日 米同盟の価値について理解を示すようになってきていることを指摘したい。こうしたロシ アのスタンスを踏まえれば、これまでの 2 国間プラス多国間のフレームワークに加え、日 米露三カ国による協力体制を模索すべきではないだろうか。

<ロシア側有識者報告>

東アジアの安全保障にかかわる最大の懸案は朝鮮半島問題である。新政権発足後の北朝 鮮は何らかの(穏やかな)変化が起きていることはうかがえるが、その方向性は依然とし て不透明である。南北間に何らかの衝突が起きることはありうるが、大規模なものにはな らないだろう。

  北朝鮮の核問題の解決をめざして、これまで数回にわたって 6 カ国協議が開催されてき た。北朝鮮の権力移行が終わった今、本協議が再開されるのかが注目されているが、率直 に言って、このフォーマットは失敗だったと認めざるをえない。これまでのやり方では成 果が得られなかったことを踏まえ、新しいアプローチを探らなくてはならない。

まず、6カ国間での協議という形を修正し、国連事務総長や安全保障理事会なども参加す る国際会議にする必要があるだろう。また、新しいフォーマットでは核問題に限定されず、

地域の安全・平和にかかわる問題全般を議論すべきだ。生物・化学兵器の管理の問題や、

日本・アメリカと北朝鮮との国交樹立の問題なども議論されてしかるべきだ。そして新し いフォーマットを準備するのと並行して、北朝鮮に前もって議論のできる環境を整えるこ とも必要だろう。

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5 第3セッション  極東シベリア開発と日露関係の展望

<日本側有識者報告>

  日露関係は東日本大震災を機に「リセット」され、新たな局面へと入った。ロシア側か らみれば、日露関係のリセットは、ロシアの東方シフト「脱欧入亜」という趨勢のなかに 位置づけられている。日露関係がリセットされることにより、両国の経済協力の可能性は 高まっており、かつて構想された環日本海ネットワークが実現味を帯び始めるようになっ た。こうした変化のなかで、日本とロシアが真の意味で「近い隣人」になるにはどうすれ ばよいのかを探りたい。

  福島原発事故は日本のエネルギー安全保障の問題を浮き彫りにした。震災後、これまで のような原子力エネルギーの利用が困難となるなかで、ロシアからの原油・ガスの輸入量 が大きく伸びている。どの程度までロシア産エネルギーに依存してもかまわないのかにつ いては日本国内で様々な議論があるものの、長期的なエネルギー政策を考える上でロシア が重要なファクターとなっていることに異論をはさむ者はいない。

  震災後、ロシア・ファクターの重要性が高まりつつある一方で、日露両国の人的交流は 依然として乏しく、両国関係発展のネックとなっている。単に両国民の行き来が少ないだ けでなく、日露双方の専門家が高齢化し払底しつつあることや、政治家同士のコンタクト も極めて稀であることといった憂慮すべき状況が生じている。日本とロシアを「近い隣人」

とするための人材がいないことが最大の問題となっている。

  一方、原発事故後、日露関係がリセットされ、新たな協力のビジョンが現れつつある。 

例えば、エネルギー供給にかんして多角的なグリッドを構築するプランがあるが、これを 北東アジア全域を網羅したスマートグリッドとすることで、エネルギーを通じたアジアの 統合が実現され、日本のエネルギー安全保障にも大きく寄与するだろう。また同時に、こ うした構想の実現が阻まれている原因に、日本国内全体を網羅するエネルギーの輸送網(た とえばガスパイプライン)が存在しないことを指摘したい。こうした問題が解決しなけれ ば、エネルギー分野における日露間の協力が大きく前進することは期待できない。

  最後に、日露関係は歴史的に見て良好であった時期のほうが長かったが、とりわけ冷戦 期を通じて形成された「ステレオタイプ」や「神話」によって、また戦後の処理の仕方を 誤ったために、両国関係は長く対立しているという誤解が生じてしまっていることを指摘 したい。日露両国民のメンタリティの面でもリセットされることを望む。

<日本側有識者報告>

  極東シベリアの開発を成功させるには、日露間の二国間レベルだけの協力では不十分で あり、多国間のフレームワークを活用することが重要である。日露両国がマルチのフレー ムワークをどのようにデザインし、こうした枠組の実現のためにイニシアティブを発揮す るのかが問われている。

  ここ数年、ロシアを含めた北東アジア地域間での貿易は急拡大し、様々な経済協力が試

(6)

6 みられるようになっている。このうちロシア関連のプロジェクトはそのほとんどが資源・

エネルギー開発にかかわるものであり、日本の関心もこの分野に集中している。エネルギ ー開発が、極東シベリアと日本を含めたアジア地域を結びつける鍵となっている。例えば、

日本はロシアからエネルギーを購入することで中東諸国に偏っていた供給源を多角化する ことができ、ロシアは成熟市場のヨーロッパに代わる新たな成長市場をアジア太平洋地域 に確保することができるというように、双方が戦略的利益を一致させているのである。

  エネルギーと一口に言っても、石油と天然ガスとでは事情が少々異なる。そこで、それ ぞれの抱えている問題について簡潔に触れておきたい。まず、石油についてだが、太平洋 パイプラインが完成したことにより、北東アジア地域への供給量は飛躍的に増大した。し かしその一方で、パイプラインの能力をフルに生かせるだけの石油が供給できていない。

西シベリア等、従来の産地での産出量がピークに達しており、今後新たな油井を開発する 必要があるが、そのための資金をどのようにして調達するのかが課題となっている。

  ガスについては、サハリン・ハバロフスク・ウラジオストクを結ぶパイプラインが完成 したが、その他のパイプラインについてはまだ計画途上にある。日露両国が協力して、ウ ラジオストクにLNG基地を建設したが、どこ(の産地)からガスを運び込み、どこへ売る のかという根本的な問題が解決されていない。また将来、アメリカやカナダ(あるいは中 国)でのシェールガスの生産が本格化し、アジア太平洋地域に安価なガスが大量に供給さ れるようになると、ロシアの持つポテンシャルが生かしきれなくなることもありうる。ア ジア太平洋地域のガス市場は、需要と供給の両面で不確実性が高い。

  以上のような不確実な要素はあるものの、当面、ロシアはエネルギーを通じてアジア太 平洋地域に統合されてゆくことになるだろう。その際に解決されるべきいくつかの課題が ある。まず、外資をはじめ投資を誘致するには社会経済インフラの整備が決定的に重要で ある。政策面について言えば、これまでいくつもの極東シベリア開発にかかわるプログラ ムが作成され(一部は修正され)てきたが、こうしたプログラムに具体性を持たせ、同時 にそれぞれ同士に十分な整合性を持たせることが必要である。投資家に対しては、政府の 誰がプログラムを管轄しているのか、どこにアクセスしたらよいのかを明瞭にすべきであ る。また、極東シベリア地域への投資リスクが高いことを踏まえれば、特定のプログラム や地域に対して優遇策をとることが必要であろう。

  極東シベリア地域の持つポテンシャルは誰もが認めるところだが、実際に開発してゆく となるとあまりにもリスクが大きい。いまやどの国も一国で極東シベリア地域を開発する ことはできない。多国間で協力しあうことでリスクを分散することができるのだ。また、

多国間協力の枠組を作ることで、ある特定の国の影響力が著しく高まることを防ぐことが できるだろう。これはロシアの地政学的な関心に合致する。

  今日、北東アジアでは外交問題が加熱化しているが、こうしたときこそお互いが協力し 合える分野を見出すことが重要であり、ロシアは極東シベリア地域という各国の協力にふ さわしい場を提供しうることを認識すべきだ。

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<ロシア側有識者報告>

  日露関係は基本的には良好だが、真のパートナーにはなりきれていない。日露双方とも にお互いの戦略的意義を見出せず、両国関係をより高度なレベルに引き上げようとする突 破口が見つけられていないのが問題だ。プーチンは「はじめ」と述べたが、これが新しい 対話のきっかけとなり、両国間の問題解決につながることを期待している。

日露関係発展の障害に北方領土問題があることは日露双方ともに認識しているが、より 大きな障害として相互に不信感を抱いていることを指摘したい。日本側のロシアに対する 不信感は19世紀末のロシアの満州進出や第二次世界大戦中の日ソ中立条約のソ連側による 破棄、戦後のシベリア抑留といった歴史的な記憶と結びついている。他方、ロシア側の日 本に対する不信感は、日露戦争での敗北、ロシア革命後のシベリア出兵、ノモンハン事件、

ソ連政府による世論形成、などによって募ってきた。こうした相互の不信感が両国関係の 発展を抑え続け、ひいては領土問題の解決をも阻んできたのである。

  日露両国間に平和条約が締結されていないことは、両国の関係発展にマイナスになって いることは否定できない。平和条約が締結されたからといって、日本の対露投資が急増す るとはいえないが、日本企業のロシア進出モチベーションを低下させている可能性はある だろう。それは日本人がなによりも信頼関係を重視するからである。信頼関係のないとこ ろに日本人は投資することはない。ロシア人ビジネスマンはそのことを十分には理解でき ていない。法律の整備やビジネス慣習の改善など、ロシアがすべきことはまだ多い。

同時に日本側にも問題があることを指摘したい。今日、日本人の間で極東ロシアに対す る関心と並んで領土問題解決への意欲が高まってはいるが、感情論や間違った民族意識に 基づいているケースが見受けられる。日露双方が態度を改めない限り、平和条約締結の道 は遠いだろう。日露双方に真にこの問題を解決したいと考える政治グループが現れ、双方 が受け入れられる妥協点を探ることが重要だ。

  戦略的な見地からは、本来ロシアは日本にとってアメリカと並ぶパートナーになりうる ことを日露双方が認識すべきである。急速に成長する中国に対応してゆくためには、ロシ アは潜在的同盟国を求めており、日本ともアメリカとも中国ともバランスの取れた関係を 結びたいと考えている。日本からみても、ロシアは外交・政治面での重要な国となりうる。

たとえば、朝鮮半島問題で中国に対する失望が広がるなか、一部の日本人の間にロシアに 期待する向きが出てきていることは見逃せない。

  経済的な観点からは、エネルギーをはじめ両国が協力しうる分野が多岐にわたることを 強調したい。とくに経済協力を活性化させてゆくことで、両国間の関係を改善してゆき、

領土問題の解決や平和条約の締結に弾みがつくことになるだろう。領土問題の解決には、

まず両国関係が十分に発展し、対話のための良い空気が醸成されなくてはならない。そし て、問題の解決に向けて強い政治的意思が必要であることは言うまでもない。幸い今日、

日露双方ともに問題解決への十分な政治的意思があるように思われる。

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8 以上

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