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ストリゴラクトン様化合物カロラクトンの新たな生合成経路

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化学と生物 Vol. 51, No. 5, 2013

ストリゴラクトン様化合物カロラクトンの新たな生合成経路

植物分子生物学と生化学の融合による新たな発見

ストリゴラクトン (SL) は植物ホルモンの一つであ り,植物体内において分枝の成長を抑制する働きをも つ(1, 2).もともとSLは根寄生植物ストライガ (

) などの種子発芽を誘導する物質として発 見され(3),多くの植物の根浸出液から単離・同定され た.2005年にはミヤコグサの根浸出液からSLの一つで ある5-デオキシストリゴールが同定されたが,この物質 はアーバスキュラー菌根菌の菌糸分岐を誘導することが 示された(4).このようにSLは植物のみならず複数の生 物間で情報伝達物質として働いており,その構造と受容 体について多くの研究が進められている.これまで突然 変異体の解析などを通して,SL生合成にかかわるとさ れるいくつかの酵素が発見されていたが,詳細は不明な ままであった.2012年にSL生合成経路の起点となる反 応が明らかとなったので紹介する.

天然のSLは複数同定されており,多様な構造をもつ が,ラクトン環を含む三環系のテルペノイド(ABC環)

にさらにもう一つラクトン環(D環)がエノールエーテ ル結合した四環性の共通した基本骨格をもつ(図1A) ABC環の骨格部分はアブシジン酸 (ABA) のものと相 似であり,SLもABAと同様にカロテノイドを合成初発 基質としていることが予想された.実際,カロテノイド

合成阻害剤を処理した植物体からの根浸出液をストライ ガの種子に与えると,非処理個体からの根浸出液を与え た場合に比べ,発芽割合は減少する.また,種々のカロ テノイド代謝系変異体の根浸出液を与えた場合も同様に 減少する.このことからSL生合成反応における初発基 質はカロテノイドであることが推測され,2005年に単 純な経路が想定された(5) (図1B).その後,突然変異体 を用いた実験によりSL生合成への理解が進んだ.シロ イヌナズナの分枝過剰変異体  ,    に合成 SL 

(GR24) を投与すると分枝が減少して表現型が野生型と 同程度に回復することから,これらはSL生合成変異体 だと考えられた.原因遺伝子が同定され,カロテノイド 酸 化 開 裂 酵 素 (Carotenoid Cleavage Dioxygenase ;   CCD) である CCD7, CCD8 をそれぞれコードしている ことが明らかとなった(6).また,イネやエンドウの分枝 過剰変異体においてもCCDをコードする遺伝子変異に 原因があることが報告され,SLの初発基質がカロテノ イドである可能性がより強まった(図1C).一般的に植 物ではトランス型

β

カロテンのみが特異的に選択され,

カロテノイド合成経路の初発基質として用いられること が知られている(6).カロテノイド蓄積型大腸菌株に CCD7を発現させると,トランス型 

β

 カロテンが代謝さ

図1A ストリゴラクトンの基本 骨格,(B)〜(D ストリゴラクトン 合成経路

これまでに提唱されていた経路 (B) 

(C), 今回新たに証明された経路 (D).

(2)

今日の話題

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れること,またその代謝産物がCCD8により分解される ことが明らかとなった(7).以上の結果を踏まえ,図1C に示す新たなSL生合成経路が提唱された(6).この経路 もBの経路と同様,

β

 カロテンがCCDsによって代謝さ れ,ABC環が合成された後にD環が付加してSLが合成 されると予想された.

しかし2012年にこれまでのSL合成経路研究を覆す大 きな進展があった(8).AlderらはSL合成にかかわる遺 伝子の組換えタンパク質にトランス型 

β

  カロテンを含 む,種々の基質を与え,その反応を調べた.図1Dに示 すようにCCD7組換えタンパク質に9シス 

β

 カロテンを 基質として与えた場合には9シス 

β

10′  カロテナールへ の代謝が確認されたが,それ以外の基質ではCCD7によ る触媒反応が見られなかった.すなわちCCD7の直接の 基質は9シス 

β

 カロテンのみであることが示された.こ の結果から,SL生合成経路において,トランス型 

β

 カ ロテンを代謝し,9シス 

β

 カロテンへ異性化するほかの 酵素の存在が示唆された.この酵素の候補として考えら れたのがD27である.D27は2009年にイネの分枝過剰 変異体 の原因遺伝子として同定された遺伝子で,葉 緑体に局在し,植物固有のタンパク質をコードする(9). また ではSL合成量が低下しており,SL処理によっ て表現型は野生型と同程度に回復した.以上の結果から D27はSL合成に関与することが示唆されていたが,生 合成経路のどの位置で機能するかは不明であった.そこ で,AlderらがD27組換えタンパク質とトランス型 

β

 カ ロテンとを酵素反応させたところ,トランス型 

β

  カロ テンが可逆的に9シス 

β

  カロテンとなることが示され た.すなわち,D27はトランス型 

β

  カロテンの異性化 酵素であることが明らかとなった.また,CCD7による 代謝産物9シス 

β

10′  カロテナールとCCD8組換えタン パク質を用いて酵素反応を行ったところ,未知の化合物 が得られた.この化合物について質量分析やNMR解析 を行ったところ,ラクトン環を有し,SLに類似の構造 をもつことが明らかとなった(図1D).初発基質が 

β

  カロテンであり,ラクトン環構造を保持することから,

この物質はカロラクトンと名づけられた.イネのSL生 合成変異体である  ,  ( ),   ( )  と,SL情報伝達変異体である にカロラクトンを投与 すると, ,  ,  では表現型の回復が見られ,

では回復しなかった.またストライガの種子にカロラク トンを処理したところ,GR24に比べて10分の1程度の

効率ではあるものの濃度依存的な発芽誘導効果の上昇が 観察された.このようにカロラクトンはSLと同様の生 理作用をもつことが示された.しかし植物体からは検出 されていないことから,カロラクトンそのものが分枝の 抑制や,根寄生植物の種子発芽誘導にかかわっているの か,あるいはSLの一前駆体であるのかについての詳細 は定かではない.現在カロラクトンからSLに至る経路 は明らかにされていないが,少ないステップで完了する と予測されている.また,シロイヌナズナ分枝過剰変異 体の一つである はシトクロムP450をコードして おりSL生合成にかかわるとされているが,SL生合成経 路における位置づけは明らかでない(図1C).今回の発 見がその位置づけと役割の解明の糸口となることが期待 される.SLの基本骨格(図1A)を保持していないカロ ラクトンにSL様効果が認められたことから,簡易構造 のSL類縁体でも十分に効果を発揮する可能性は高いと 推測される.天然のSLは植物からの分泌量も微量で分 解されやすいため,SL生合成経路の全貌を明らかとす ることによって,人工的に機能的なSLを少ないステッ プで合成することが求められている.すでに合成が簡便 でSLとしての効果の高いSLアゴニストの創製も進めら れており(10),今後,より安価で安定性の高いSL(また はそのアゴニスト)による根寄生植物の防除など多分野 への利用が期待される.

  1)  V.  Gomez-Roldan,  S.  Fermas,  P.  B.  Brewer,  V.  Puech- Pagès, E. A. Dun, J. P. Pillot, F. Letisse, R. Matusova, S. 

Danoun, J. C. Portais  : , 455, 189 (2008).

  2)  M.  Umehara,  A.  Hanada,  S.  Yoshida,  K.  Akiyama,  T. 

Arite, N. Takeda-Kamiya, H. Magome, Y. Kamiya, K. Shi- rasu, K. Yoneyama, J. Kyozuka & S. Yamaguchi : ,  455, 195 (2008).

  3)  C. E. Cook, L. P. Whichard, B. Turner, M. E. Wall & G. H. 

Egley : , 154, 1189 (1966).

  4)  K. Akiyama, K. I. Matsuzaki & H. Hayashi : , 435,  824 (2005).

  5)  R. Matusova, K. Rani, F. W. Verstappen, M. C. Franssen,  M.  H.  Beale  &  H.  J.  Bouwmeester : , 139,  920 (2005).

  6)  Y. Seto, H. Kameoka, S. Yamaguchi & J. Kyozuka : , 53, 1843 (2012).

  7)  S. H. Schwartz, X. Qin & M. C. Loewen : ,  279, 46940 (2004).

  8)  A. Alder, M. Jamil, M. Marzorati, M. Bruno, M. Verma- then, P. Bigler, S. Ghisla, H. Bouwmeester, P. Beyer & S. 

Al-Babili : , 335, 1348 (2012).

  9)  H.  Lin,  R.  Wang,  Q.  Qian,  M.  Yan,  X.  Meng,  Z.  Fu,  C. 

Yan, B. Jiang, Z. Su, J. Li & Y. Wang : , 21, 1512 

(2009).

(3)

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  10)  K. Fukui, S. Ito, K. Ueno, S. Yamaguchi, J. Kyozuka & T. 

Asami : , 21, 4905 (2011).

(上原奏子,芦苅基行,名古屋大学生物機能開発利用 研究センター)

プロフィル

上原 奏子(Kanako UEHARA)   

<略歴>2011年名古屋大学農学部応用生 命科学科卒業/同年名古屋大学農学部研究 生/2012年名古屋大学生命農学研究科博 士課程前期課程入学<研究テーマと抱負>

野生イネの研究を通して世界の食糧問題 を解決する<興味をもっていること>AM

(腋芽) とSAMの制御機構の違いについて 芦苅 基行(Motoyuki ASHIKARI)   

<略歴>1999年九州大学大学院農学研究 科博士後期課程修了(農博)/2007年名古 屋大学生物機能開発利用研究センター,現 在に至る

参照

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