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都市の創造性指標の研究動向

第 2 章 日本における都市間競争の議論と都市の創造性指標

3. 都市の創造性指標の研究動向

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市間競争を巡る議論は高まったが,未だ理論的,または実証的な論考が蓄積されてきたと は言えない状況である。廣瀬(2013)は,近年の都市間,地方間競争に関する報告書等を 整理して,具体的な都市名を挙げて論じているものは数少ないということ1,競争の対象に ついて観光,文化,空港・港湾,建築物など特定のテーマを挙げている例も少ないという こと,その結果,「大方の議論は都市間競争・地域間競争に打ち勝たねばならないという問 題意識が抽象的に語られている段階にとどまっている」と指摘している。

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スーパー・クリエイティブ・コアを中心として,その周りに位置するのがクリエイティブ・

プロフェッショナルで,ハイテク,金融,法律,医療,企業経営などを行う地域集約型産 業で働く人々とされる。この人々は,標準的なやり方を応用したり組み合わせたりするが,

実用的な方法や製品を考案することが基本的な職務はではないという。

職業分類はアメリカの2000年標準職業分類(Standard Occupation Classification)に 基づいており,アメリカ労働統計局の統計データに用いて,アメリカの都市に対する推定 が行われた。Florida(2005)では世界各国のクリエイティブ・クラス人口を推定すべく,

国際的に比較可能なデータである国際労働機関(ILO)の統計を用いて測定作業が行われた。

労働力人口に占めるクリエイティブ・クラス人口の比重が最も高いのはアイルランドの

33.47%であり,アメリカは 11位で 23.55%となっている。しかし,日本については必要な

データが得られなかったということで,数値が示されていない。

また,アメリカについては都市別に測定されているが,世界については国別の数値しか 計算されておらず,都市別の数値が示されていない。

表1 クリエイティブ・クラスの定義

ク リ エ イ テ ィ ブ・クラス

スーパー・クリエイテ ィブ・コア

「コンピュータおよび数学」「建築およびエンジニアリング」「生命科学,

物理学,社会科学」「教育,訓練,図書館」「芸術,デザイン,エンタテイ メント,スポーツ,メディア」

クリエイティブ・プロ フェショナル

「マネジメント」「業務サービスおよび金融サービス」「法律」「医療」「高 額品のセールスおよび営業管理」

ワーキング・クラス 「建設および採掘」「設置,保守管理,修理」「製造」「輸送および資材運 搬」

サービス・クラス

「医療支援」「調理および飲食サービス」「建物および土地の清掃および保 守管理」「介護」「低価格のセールス」「事務および業務補助」「コミュニテ ィおよび社会福祉」「保安サービス」

(出所)フロリダ(2008)より作成

フロリダは,国や都市が国際競争に勝ち抜くには,「3つのT」が揃っていることが重 要であると説く。「3つのT」がうまく機能してはじめて,都市や地域は Global Talent

Magnetとなることができるという。フロリダは国際的にクリエイティブな競争力を評価す

るために,グローバル・クリエイティビティ・インデックス(GCI)という指標を考案した

(表2)。フロリダの一連の研究において,国際比較のためのクリエイティビティ・インデ ックスが紹介されているが,著書によって指標の元になるデータの記述に若干の相違が見 られるため,ここでは日本でよく引用されるFlorida(2005)の記述を紹介する。

GCIは「3つのT」を示すタレント・インデックス(才能),テクノロジー・インデック ス(技術),トレランス・インデックス(寛容性)の各指数を標準化し,同じ加重で合算し て求められる。

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表2 グローバル・クリエイティビティ・インデックスの定義

タレント・インデックス

クリエイティブ・クラス 人口比率

1の定義による(日本はデータが得られていないの で,人的資本指数と理工系指数の平均で充当)

人的資本指数 人口に占める大学卒業者の割合(OECD)

理工系指数 人口100万人当たりの科学研究者と技術者の割合(ユ ネスコ)

テクノロジー・インデックス

R&D指数 GDPに占める研究開発投資の比率(世界銀行)

イノベーション指数 人口100万人当たりの取得積み特許件数(アメリカ特 許商標局)

トレランス・インデックス

価値指数 現代的で非宗教的な価値観が国の文化に影響を与え ている程度(ワールド・バリュー・サーベイ)

自己表現指数 個人の権利や自己表現にどの程度の価値が置かれて いるかという程度(同上)

(出所)フロリダ(2008)より作成

3.2 吉本光宏「創造産業の潮流」(2003年,2009年)

勝見(2007)によると,日本において都市の創造性を指標化しようと試みられたのは,

吉本(2003)の調査研究が初めてだとされる。ここでは,創造産業という概念はイギリス 労働党が1997年の選挙キャンペーンで用いた「クール・ブリタニア」が発端であり,1998 年にイギリスの文化・メディア・スポーツ省によって13の産業分野が創造産業と位置づけ られ,調査研究が実施されたことが最初の調査だという。

イギリス政府の調査研究はその後も続けられ,世界各国で同様の調査研究が行われるよ うになった。吉本(2003)は,イギリス政府が規定した13産業分野を日本標準産業分類(平 成5年改定)に照らし合わせて,創造産業群とされる産業小分類を抽出した。ここでは,

全国ベースでの推計で,創造産業群の従業者は1996年で174万人(全産業の2.8%),2001 年で188万人(3.2%)となることが示されている。

吉本(2009)は,日本標準産業分類(平成19年改定)においてアニメーション制作業,

ゲームソフトウェア業などが単独産業として独立し,日本の特徴的な創造産業の動態をよ り把握しやすくなったことから,創造産業群に属する産業の分類を組み替えた。新たな分 類は,①広告,②建築設計,③工芸,美術・骨董品,生活分野,④デザイン,⑤映画・映 像・写真,⑥音楽,⑦舞台芸術,⑧芸術家,学術・文化団体,⑨出版,⑩コンピュータ・

ソフトウェア,⑪テレビ・ラジオの11分野で,属する産業小分類は33である。

この調査では平成18年事業所・企業統計調査のデータを用いて創造産業群の従業者数が 測定された。創造産業群の従業者数は,2006年で250万人(全産業の4.0%)であり,2001 年から2006年にかけて,全産業の従業者数が1.3ポイント減少する中,創造産業群は2.7

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ポイントの増加であったことが示されている。さらに,政令指定都市(東京特別区を含む)

について創造産業群の従事者数が測定され,政令指定都市合計では131万人となり,これ

は全国の59.5%を占めることになる。

この調査は,創造産業を最初に数量調査したイギリスの調査に準拠しており,日本の創 造産業の実態を都市別に初めて明らかにしたという点で価値のあるものである。

しかし,創造産業が喧伝されるようになったイギリスでの経緯からもうかがえるように,

創造産業を主に芸術,デザイン,広告,コンピューターなどの文化を中心にとらえている ため,フロリダが創造産業の核の1つとした学術・研究機関,医療機関,金融機関はその 範囲に含められていない。

3.3 北海道未来総合研究所「地域創造性開発指標」(2007年)

北海道未来総合研究所(2007)では,地域問題研究所,とっとり政策総合研究センター と共同して実施された調査研究において,地域の豊かさを測定する指標が独自に開発した。

指標の提唱者である西部(2013)によると,リチャード・フロリダや佐々木雅幸による地 域の創造性研究を参考にした上で,創造性を地域の豊かさの基本とした。地域の創造性は,

人的資本(HC),社会資本(SC),環境資本(EC)の 3指標で評価され,3指標を合成した のが地域創造性開発指標(Regional Creative Development Index:RCDI)である。

HC指標は先に見たフロリダの創造性指標をほぼ踏襲しているが,その中の寛容性項目は 日本ではデータが得にくいので,住民基本台帳人口における転入者と転出者の割合と外国 人登録者率を代理変数としている。

SC指標は,現代では人間が欲求する豊かさについて社会的関係性や自己のあり方が重視 されるようになってきたことを踏まえて,人々の社会参加の程度や社会参加支援の程度を 評価するデータが含まれている。

EC指標は,環境問題が深刻化する現代では持続可能な循環型社会を形成することが社会 的コンセンサスとなってきたことを踏まえて,自然がもたらす居住空間と物質循環の状態 を評価するデータが含まれている。

指標化に当たっては,3 指標を構成するデータを標準得点化し,それらを単純平均して 各指標の得点を計算し,3指標を幾何平均したものがRCDIとなる。この報告書では,この モデルに基づいて,47都道府県と113主要都市(政令指定都市と人口20万人以上の市)

についてRCDIが計測され,指標のランキングについての考察や指標間の関係性に関する分 析が行われた。