第 4 章 導関数と不定積分 61
4.2 有界変動関数
定義4.2.1 f(x)を[a, b]⊂R上の関数とする.f(x)が [a, b]上有界変動で あるとは,正数M が存在して,[a, b]の任意の分割 ∆
∆ :a=x0≤x1≤ · · · ≤xn=b に対して
V(f; ∆) = Xn i=1
|f(xi)−f(xi−1)| ≤M の成立することをいう.このとき
sup
∆
X
i
|f(xi)−f(xi−1)|= sup
∆
V(f; ∆) =Tf(a, b) を f の [a, b]における総変動量という.
補題4.2.1 f(x)を[a, b]上有界変動とする.a < c < bとするとき Tf(a, c) +Tf(c, b) =Tf(a, b)
が成立する.
証明:任意の≤ >0 に対して,[a, b]のある分割∆があって V(f; ∆)> Tf(a, b)−≤
とできる.c が分点でなければc を分点に加えてそれを改めて∆ で表すと,
一般に分点を増やすときV(f; ∆)は非減少であるから上の不等式はそのまま 成立する.∆ :a=x0 ≤x1 ≤ · · · ≤c=xn ≤xn+1≤ · · · ≤xm=bとする とき明らかに
Tf(a, c) +Tf(c, b)≥ Xn
i=1
|f(xi)−f(xi−1)|+ Xm i=n+1
|f(xi)−f(xi−1)|
=V(f; ∆)> Tf(a, b)−≤ が成立する.≤ >0は任意であったからTf(a, c) +Tf(c, b)≥Tf(a, b)が従う.
逆向きの不等式も同様にして証明される.(証終)
4.2. 有界変動関数 67
定理 4.2.1 有界変動関数は2つの非減少関数の差として表される.逆に,2
つの非減少関数の差で表される関数は有界変動である.
証明:x∈[a, b]に対してT(x) =Tf(a, x)とおこう.いま f(x) =T(x)−(T(x)−f(x))
とおくとこれが非減少関数の差を与える.実際補題 4.2.1を区間 [a, x]で適 用するとa≤y≤xとして
T(x) =T(y) +Tf(y, x)≥T(y)
となり T(x)が非減少であることが分かる.T(x)−f(x)が非減少であるこ とをみるには
T(x)−f(x) =T(y)−f(y) +Tf(y, x)−(f(x)−f(y))
と書いて Tf(y, x)≥ |f(x)−f(y)| ≥f(x)−f(y)に注意すればよい.逆は明 らかである.(証終)
この定理においてもちろん他の分解も可能である.たとえば P(x) =1
2(T(x) +f(x))−1
2f(a), N(x) =1
2(T(x)−f(x)) +1 2f(a) とおくとf(x) =P(x)−N(x)でありP(x),N(x)は非減少関数である.P(x), N(x)はf(x)の[a, x]における正の変動量および負の変動量とよばれる.実 際正,負の変動量は以下のように定義されるものと一致する.∆ :a=x0 <
x1,· · ·< xn =b を[a, b]の任意の分割とするとき V+(f; ∆) = X
i;f(xi)−f(xi−1)>0
(f(xi)−f(xi−1)), V−(f; ∆) =− X
i;f(xi)−f(xi−1)<0
(f(xi)−f(xi−1))
とおくとき
P = sup
∆
V+(f; ∆), N= sup
∆
V−(f; ∆)
が f(x)の[a, b]における正,負の変動量を与える.このとき次の関係式が成
り立つ.
V =P+N, f(b)−f(a) =P−N.
この2式から P,N を求めれば再び上に述べた分解が得られる.
定理 4.2.2 有界変動関数は殆ど至る所有限確定な微分係数を有す.
証明:定理4.2.1とLebesgueの定理4.1.1から明らかである.(証終)
68 第4章 導関数と不定積分 定理4.2.3 f(x)を [a, b] 上有界変動とする.T(x) =Tf(a, x)とおくとき,
殆ど至る所
T0(x) =|f0(x)| が成立する.
証明:T =T(b)はf(x)の[a, b]上の総変動量である.
∆n:a=x(n)0 < x(n)1 <· · ·< x(n)pn =b
を[a, b]の分割の列であってV(f; ∆n)> T(b)−2−nを満たすものとする.さて 関数fn(x)を以下のように定義しよう.まずfn(a) = 0とする.各[x(n)i−1, x(n)i ] 上では±(f(x(n)i )−f(x(n)i−1))≥0に応じて±f(x)+cとする.ここでcは定数 で分割点においてfn(x)が連続になるように選ぶ.特にfn(x(n)i )≥fn(x(n)i−1) である.このとき
V(f; ∆n) =
pn
X
i=1
(fn(x(n)i )−fn(x(n)i−1)) =fn(b)−fn(a) =fn(b)
である.
次にT(x)−fn(x)が非減少であることを示そう.x < ξ として[x, ξ]内に ある分点をx≤x(n)i <· · ·< x(n)j ≤ξとする.このとき
T(ξ)−T(x) =Tf(x, ξ)≥ |f(ξ)−f(x(n)j )|+· · ·+|f(x(n)i )−f(x)|
=|f(ξ)−f(x(n)j )|+fn(x(n)j )−fn(x(n)j−1) +· · · +fn(x(n)i+1)−fn(x(n)i ) +|f(x(n)i )−f(x)|
が成り立つ.|f(ξ)−f(x(n)i )| ≥fn(ξ)−fn(x(n)i ),|f(x(n)i )−f(x)| ≥fn(x(n)i )− fn(x)であるからT(ξ)−T(x)≥fn(ξ)−fn(x),すなわちT(x)−fn(x)は非減 少である.T(x)−fn(x)≤T(b)−fn(b)≤2−nであるからP1
n=1(T(x)−fn(x)) は任意のx∈[a, b]で収束する.Fubiniの定理4.1.2よりP1
n=1(T0(x)−fn0(x)) は殆ど至る所収束する.従って特に殆ど至る所でT0(x)−fn0(x)→0,n→ 1 である.ところで f0(x) =±fn(x) a.e. であるから T0(x)≥0 に注意すると T0(x) =|f0(x)|a.e. である.(証終)
定理4.2.4 f(x)を[a, b]上有界変動とする.T(x) =Tf(a, x)とおく.この とき任意のxに対して
T(x)−T(x−0) =|f(x)−f(x−0)|, T(x+ 0)−T(x) =|f(x+ 0)−f(x)|
である.従ってT(x)と f(x)の連続点,不連続点は一致する.
4.3. 不定積分の微分と総変動量 69