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多変数の連続関数

ドキュメント内 数学解析 - 明治大学 (ページ 38-42)

3.3 “ 多項式関数 ” 、有理関数の連続性

4.6 多変数の連続関数

ここは授業では、かなりはしょって (「同様」の嵐で) 説明しました。

4.6.1 多変数の連続関数

多変数ベクトル値関数の連続性の定義は、1変数実数値関数の場合と同様である。

定義 4.2 (多変数ベクトル値関数の連続性)Rn, f: ΩRm とする。

(1) aΩ で f が連続とは、lim

xaf(x) = f(a) が成り立つことをいう。

(2) Ωで f が連続とは、任意の aΩで f が連続であることをいう。

f = (f1, . . . , fm)T とするとき、

fa で連続であるためにはfi (i= 1, . . . , m) が a で連続であることが必要十分。

f が Ω で連続であるためにはfi (i= 1, . . . , m) が Ω で連続であることが必要十分。

連続関数の和、差、積 (スカラー倍、内積、ベクトル積)、商(実数値関数の逆数の積)が連 続であること、連続関数の合成関数が連続になることなども同様である。

多項式関数、有理関数が連続であることも同様であるが、これは一応説明しておこう。

講義ノートの前の版では、n 変数で説明をしていて、ところどころ、おかしな式も書いてい ました。以下では授業でしたように n = 2 の場合で説明しています。

一般にn 変数の多項式, n 変数の有理式というものと、それが定める多項式関数、有理関数 を導入できるが、以下では式を簡潔に書くため、n= 2 の場合に限って説明する。

4.6.2 多変数の多項式

P(x, y) =x2+ 2xy+ 3y2+ 4x+ 5y+ 6 のように、変数 x, y と実数の定数から掛け算、足 し算だけで作られる式、つまり一般に

N i=0

N j=0

aijxiyj (ここでN N, aij R)

の形に書ける式を変数 xy の(実係数)多項式と呼ぶ。これから自然に関数 f: R2 R, f(x, y) =P(x, y) ((x, y)R2)が定義できるが、f のことを多項式 P(x, y)が定める多項式関 数と呼ぶ。以下誤解のない限り、fP はどちらか一つの文字で表す(f のことを P と書く とか)。

2個の変数 x, y の実係数多項式全体をR[x, y] と表す:

R[x, y] :=

{ N

i=0

N j=0

aijxiyj

N N, aij R (0≤i≤N, 0≤j ≤N) }

. R[x, y] には自然に環の構造が入り、R[x, y] は多項式環と呼ばれる。

4.6.3 多変数の有理式

R(x, y) = x2+ 2xy+ 3y2 + 4x+ 5y+ 6

7x+ 8y+ 9 のように、分母と分子が2変数xy の(実係数) 多項式であるような式を、つまり一般に

R(x, y) = Q(x, y)

P(x, y) (P(x, y), Q(x, y)R[x, y]) の形に書ける式を 2変数xy の(実係数)有理式と呼ぶ。

2変数 x,y の実係数有理式全体をR(x, y) と表す:

R(x, y) =

{Q(x, y) P(x, y)

P(x, y)R[x, y], Q(x, y)R[x, y], P(x, y)̸= 0 }

.

R(x, y) には自然に体の構造が入り、R(x, y) は有理関数体と呼ばれる。

4.6.4 多項式関数と有理関数

fn 変数の (Rn 上の) 多項式関数であるとは、ある P(x1,· · · , xn)R[x1,· · · , xn] が存 在して、

f: RnR, f(x1, . . . , xn) =P(x1, . . . , xn) (x= (x1, . . . , xn)T Rn) であることをいう (つまり多項式関数とは、多項式の定める関数である)。

fn 変数の有理関数であるとは、ある Q(x1, . . . , xn), P(x1, . . . , xn)R(x1, . . . , xn) が存 在して、

Ω :={(x1, . . . , xn)Rn|P(x1, . . . , xn)̸= 0} とおいたとき、

f: ΩR, f(x1, . . . , xn) = Q(x1, . . . , xn)

P(x1, . . . , xn) ((x1, . . . , xn)T Ω)

であることをいう (つまり有理関数とは、有理式の定める関数である。ただし定義域は分母の 多項式が 0 にならない点全体の集合とする。)。

多項式関数も有理関数も定義域全体で連続である。特に多項式関数の定義域は Rn 全体で、

Rn 全体で連続である。このことは以下の命題から分かる。

命題 4.3 n N とする。

(1) Rn 上の定数関数は Rn で連続である。

(2) i∈N, 1≤i≤n とするとき、

φi(x1, . . . , xn) = xi ((x1, . . . , xn)T Rn) で定義される第i 座標関数 φi: Rn R は、Rn で連続である。

(Cf. 1変数のときは、(2) に相当するのは、恒等写像 φ(x) =x の連続性であった。)

証明

(1) f を定数関数とする。すなわち(∃c∈R) (xRn)f(x) =cと仮定する。任意のaRn, 任意の ε > 0 に対して、δ := 1 とおくと、δ > 0 であり、|xa| < δ を満たす任意の xRn に対して、

|f(x)−f(a)|=|c−c|=|0|= 0< ε.

ゆえにfa で連続である。a は任意であったから f は Rn で連続である。

(2) aRn とする。任意の正数 ε に対して、δ:=εとおくと、δ > 0で、|xa|< δ を満た す任意のxRn に対して

i(x)−φi(a)|=|xi−ai| ≤ |xa|< δ =ε.

ゆえにφia で連続である。a は任意であったから φi は Rn で連続である。

授業では、上の (2)を、n = 2の場合にx= (x, y)T,a= (a, b)T として説明をざっと書いた。

φ1(x) =x, φ2(x) =y, φ1(a) =a, φ2(a) =b であるから、

1(x)−φ1(a)|=|x−a| ≤ |xa|,

2(x)−φ2(a)|=|y−b| ≤ |xa|

となり、xa のとき φ1(x),φ2(x) がそれぞれφ1(a), φ2(a) に収束する、と板書半分、口半 分で説明した。

微積分で扱う多くの関数は、定義域全体で連続である。そのことを経済的に証明する方法を 学ぼう。

連続関数を組み立てたものは連続である

連続関数を “組み立てたもの” は連続関数(実は微分可能な関数を組み立てたものは微分可 能な関数、のように他での「応用」がある考え方)

f: ΩR, g: ΩR がともに連続ならば、f+g,f−g,f g はいずれもΩ から Rへの 連続関数。g ̸= 0 (on Ω) ならば f /g も Ω からR への連続関数。

連続関数の和、差、内積、ノルム、実数値連続関数倍、実数値連続関数による商f⃗+⃗g, f⃗−⃗g,

(f , ⃗⃗ g )

, f⃗,k ⃗f, 1 k

f⃗(ただし = 0) も連続である。

f⃗=



 f1 f2 ... fm



について、f が連続 ⇐⇒ すべての i∈ {1, . . . , m} についてfi が連続。

連続関数の合成関数 ⃗g◦f⃗は連続関数。

n 変数実係数多項式は Rn 上の連続関数を定める: f(x1, . . . , xn)R[x1, . . . , xn]ならば、

Rn (x1, . . . , xn)7→f(x1, . . . , xn)R は連続である。

簡潔のため、多項式 f(x1,· · · , xn)が定める関数を f と書くことを約束し、多項式の定 める関数を「多項式関数」と呼ぶことにする。

高校生以来知っている(切れていないグラフが思い浮かべられる) 指数関数 ex = expx, ax (ただしa >0,= 1)、対数関数logx(x >0)、三角関数cosx, sinx

x(x≥0),冪 乗関数 x7→xα (ただし α∈ R, 定義域は x >0), n 乗根 n

x (x∈R または x∈ [0,∞)) 絶対値 |x| は、それらの定義域上で連続である。

大学に入ってから教わった逆三角函数tan1x= arctanx, sin1x= arcsinx(x∈[1,1]), cos1x= arccosx (x∈[1,1]) もそれらの定義域上で連続である。

これらの関数の多くは C 級であることが分かり、証明も同様である(ただし

xC 級であるのは、x > 0 の範囲で、x = 0 を含めると成り立たなくなる、などの注意は必要で ある)。

4.4 f(x, y) = x2+ 2xy+ 3y2+ 4x+ 5y+ 6 は2変数の多項式関数であるから、R2 上の関 数として連続である。

φ(x, y) = sin(x2+ 2xy+ 3y2+ 4x+ 5y+ 6) は、g(z) = sinz とすると、φ=g◦f. fg も連続関数であるから、合成関数 φは連続である。

43. 次の各関数がR2 で連続であることを示せ (理由を述べよ)。

(1) f(x, y) =x2 +

2xy+ (log 3)y2+ π4x+e5y+ 6 (2) g(x, y) = exp (3x+ 2y+ 1) (3) h(x, y) = x2+ 2x+ 3

x2+y2+ 1 (4) φ(x, y) = log (

1 +√

x2+y2 )

(5) F(x, y) = (

x3 3xy2 3x2y−y3

)

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