3.3 “ 多項式関数 ” 、有理関数の連続性
5.1 区間縮小法
(5) f(x, y) =
xy
x+y (x+y̸= 0) 0 (x+y= 0).
解答(結果のみ) (1) 連続である (2) 連続である (3) 連続でない (4) 連続である
(5) 連続でない
(最後の (5) は y=kxに沿った極限は、k によらず 0 であるが、 lim
(x,y)→(0,0)f(x, y) は存在し ない、という微妙な例である。分子が2次同次、分母が1次同次で、分子の次数が分母の次数 よりも大きいから、0に収束しそう、という粗い直観にも反している。)
Intermission ( 休憩時間 ): 目標の再確認
この講義では、初回のイントロダクションで目標をかなり明確に述べたつもりであるが、実 際に講義してみて、目標を修正することにした。
関数列の極限 (例えば一様収束) を解説するという野望を持っていたが、他の講義 (例えば 複素関数)にまわすことにする。その代わりに多変数関数の極限について解説した。微積分段 階の解析を説明する方が重要である、と判断したためである。
以下、しばらくは連続関数の持つ、3つの有名かつ便利な性質 (1) “Weierstrass の最大値定理”
(2) 中間値の定理
(3) コンパクト集合上の一様連続性
のうちの二つを目標にする(最後の一つは、積分の議論が重要な応用で、そこまで話をする余 裕がないと判断した)。
5 数列 , 点列の極限 (2) 極限の存在条件
何らかの意味で数列(点列)の極限が存在することを保証する定理を3つほど述べる。論理 的には積み木になっていて、最初の区間縮小法の原理自体が、Rの連続性を本質的に用いてい
るので(ここでは命題 2.14 から導く)、どれもR の連続性のおかげで成り立つ定理と言える。
最初に数列について述べてから、点列の場合に言及する。
命題 5.1 (区間縮小法の原理) {In}n∈N を縮小するR の閉区間列とする。すなわち任意の n∈N に対して In は R の閉区間で
I1 ⊃I2 ⊃ · · · ⊃In⊃In+1 ⊃ · · · を満たすとする。このとき ∩
n∈N
In̸=∅ が成り立つ。[an, bn] := In とおくとき、lim
n→∞(bn−an) = 0 が成り立つならば、
(∃c∈R) lim
n→∞an= lim
n→∞bn=c (そして ∩
n∈N
In ={c}).
言葉で表すと「縮小する閉区間の列の共通部分は空でない,幅が 0 に収束するならば共通 部分は1点のみからなる」。
念のため復習: ∩
n∈N
In ={x|(∀n ∈N)x∈In}.
∩∞ n=1
In とも書く。
実際に証明をするには、次のように述べた方がやりやすいと思われる。
命題 5.2 (書き直し) {an}n∈N は単調増加数列、{bn}n∈N は単調減少数列で (∀n∈N) an< bn
を満たすならば、次の(1), (2)が成り立つ。
(1) {an}n∈N と{bn}n∈N は収束列である。そして A:= lim
n→∞an, B := lim
n→∞bn とおくとき、
A≤B, (∀n ∈N) an ≤A≤B ≤bn. (2) lim
n→∞(bn−an) = 0 ならば、lim
n→∞an= lim
n→∞bn.
(証明に用いるのは、命題 2.14 と、命題 2.10 (の系) くらいである。)
証明
(1) ∀n ∈N に対して an ≤bn ≤b1 であるから、{an}n∈N は上界 b1 を持つので上に有界であ り、単調増加であるから、{an}n∈N は収束し、極限は上限に等しい: A= sup{an|n ∈N}. 同様に、∀n ∈ N に対して bn ≥ an ≥ a1 であるから、{bn}n∈N は下界 a1 を持つので 下に有界であり、単調減少であるから、{bn}n∈N は収束し、極限は下界に等しい: B = inf{bn |n∈N}.
任意のn ∈Nに対して an ≤bn であるから (極限でも順序は保たれ) A = lim
n→∞an≤ lim
n→∞bn =B.
また
an ≤sup{an |n∈N}=A, B = inf{bn|n ∈N} ≤bn. (2) lim
n→∞(bn−an) = 0 と仮定すると B−A= lim
n→∞bn− lim
n→∞an = lim
n→∞(bn−an) = 0 であるから A=B.
区間の記号 [A, B] は、普通 A < B の場合にのみ用いるが、次の証明では、A =B の場合 も [A, B] ={A} という意味で使うと約束する。
命題5.1の証明 In= [an, bn] で {an},{bn} を定めると、命題5.2 の仮定が満たされる。
A:= lim
n→∞an, B := lim
n→∞bn とおくと、∀n∈N に対して an≤A≤B ≤bn であるから、
[A, B]⊂[an, bn] =In. ゆえに [A, B]⊂ ∩
n∈N
In である。
一方、x ∈ ∩
n∈N
In とするとき、任意の n ∈N に対して、x ∈ In であるから、an ≤x ≤ bn. n → ∞として、A ≤x≤B. すなわち x∈[A, B]. ゆえに ∩
n∈N
In⊂[A, B].
ゆえに ∩
n∈N
In= [A, B]. 特に
∩∞ n=1
In̸=∅. A=B ならば c:=A=B とおくと、lim
n→∞an=A=c, lim
n→∞bn =B =c,
∩∞ n∈N
In={c}. 余談 5.1 上の証明では用いなかったが
(∀m, n∈N) an < bm
が成り立つ。実際 n ≥m のときは、an < bn ≤bm. n < m のときは an ≤am < bm であるか ら、いずれの場合も an< bm.
(次の例は、後で中間値の定理を証明すれば、もっと簡単に議論できるので、授業では飛ば すと思う。)
例 5.3 (正数 p の m 乗根 m√
p の存在) p >0, m∈ N とするとき、p の m 乗根が存在する、
すなわち
(∃x >0) xm =p
が成り立つことを証明する19。
a1 := 0, b1 :=
{
1 (p≤1) p (p >1) とおくと、0< a1 < b1, am1 < p ≤bm1 .
n ∈N, 0< an< bn, amn < p < bmn とするとき、x:= an+bn
2 とおく。xm < p ならば
an+1 :=x, bn+1 :=bn, xm ≥p ならば
an+1 :=an, bn+1 :=p とおくと、
0< an≤an+1 < bn+1 ≤bn, amn+1 < p≤bmn+1, bn+1−an+1 = (bn−an)/2.
ゆえに数列 {an}, {bn}で、
0< a1 ≤a2 ≤ · · · , b1 ≥b2 ≥ · · · , (∀n ∈N) an < bn∧amn < p ≤bmn,
nlim→∞(bn−an) = lim
n→∞
b1−a1 2n−1 = 0 を満たすものが作れる。区間縮小法の原理から
(∃c∈R) lim
n→∞an = lim
n→∞bn=c.
このとき
cm = (
n→∞lim an
)m
= lim
n→∞(amn)≤p, cm = (
n→∞lim bn
)m
= lim
n→∞(bmn)≥p.
ゆえに
cm =p.
問 47. 自然数mと正数p, εを入力したとき、例5.3の a1,b1,a2,b2,a3,b3,· · · をbn−an < ε となるまで計算するプログラムを作成せよ(ε は「要求精度」で、10−6 や 10−15 のような “小 さい”数を入力すると m√p の近似値が高精度で求まる)。
19後で、連続関数を定義して、中間値の定理を証明して、色々な方程式の解の存在を示すことになるが、f(x) =xm については、連続性に相当することが、命題2.7からすぐに導けるので、現時点で (連続性を定義することなし に)m乗根 m√pの存在証明が出来る。これは杉浦[1]に載っている例であるが、なかなか面白い。もちろん、中 間値の定理を知っていればその系になってしまうので、スキップしても問題はない。