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ホシウスバカゲロウ幼虫(蟻地獄)の記載について-香川大学学術情報リポジトリ

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香川生物(KAGAWA SEIBUTSU),aQ):65−68,1982

ホシウスバカグロウ幼虫(蟻地獄)の記載について

田 中 俊 彦

香川大学教育学部附属坂出中学校

Same Questions on the Takonomic Description ofAnt Lion,

Glenuroides j叩Onicus(MAC LACHLAN),made byKinoshita

(1932)and Baba(1934,1953)。

Toshihiko nNAKA,Sakaide Secondary Schoo1

4〝一宜gゐ≠βd紬沌β 蝕%g£汐0′ β血¢αわ0彿, 励gα卿α[加宜γβγβ五柑,Aoあα,ぶ虎α宜dβ 762,ノ如αれ 著者は,馬場(1953)の記載に−・致するホシ ウスバカゲpウ幼虫を採集飼育した。〉その結果, ホシウスバカゲロウGgβ彿≠γ0宜dββJαpOサー宜¢≠8 ではなく,ウスバカゲロウ励gβれ押切宜α仇宜¢α一 朋の羽化を観察した。しかし,馬場(私信) は著者が飼育した幼虫を,同氏が記載した種で あると判断す−ることは,類似した幼虫が多いだ けに危険であることを指摘した。また,馬場 (1953)の記載したこの幼虫は,著名(1959) が記載したリュウキュウホシウスバカゲロウ幼 虫主は,形態,生態,行動等の面で著しい違い を示すことから,筆者は馬場(1953)記載のホ シウスバカゲロウ幼虫を再検討する必要が生じ てき牢。そこで,これまでに記載されたウスバ カゲロウ科の幼虫の形態,生態,行動等の知見 を整理し,上述した問題に対して考察する。 ウスパカゲロウ科の幼虫の分類の現状 ウスバカゲロウ科Myr・eleontidaeは,脈相の 立場からDendr.01eontir)ae とMyr・meleor】tinae の2亜科に分類され,わが国では18種のウスバ カゲpウが知られている(第1表)(Kuwaya− ma,1962,1964).このうち,幼虫の記載∼ま第 2表に示す8種である。 現在のところ,この8種の行動の知見のうち, 営巣性の幼虫としては,ホシウスバカゲロウ, ウスバカゲロウ ,コウスバカゲロウ,およびハ マベウスバカゲロウの4種がある。これら4種 はすべて後ずさり歩行のみを行い,前進歩行を しないとされている(第2表)。 これに対して,非営巣性の幼虫のグル・−プの うち,コマダラウスバカゲロウ幼虫は前進歩行 のみを行い,リーウキュウホシウスバカゲpウ, コカスリウスバカゲロウ,およびオオウスバカ ゲロウの幼虫は前進と後ずさり歩行の両方を行 う(第2衰)。また,著者の観察によれば,営 巣性の幼虫は,逃げる小動物に,大顎または頭 部を使って砂を投をヂて掃える行動(砂投をヂ行動) を示すのに対して,非営巣性の幼虫はこの行動 を解発しない。馬場(1953)は,この8種の幼 虫のうち,コマダラウスバカゲロウとリュウキ ュウホシウスバカゲロウ幼虫を除く6種の幼虫 の分類検索表を作成している。そこでは,体の 側突起の発達;大顎の形状,大顎の体と鈎の境 界,巣穴の南無,歩行の仕方;体長,体下面の 色;頭部のW字紋,鍬形紋;後胸背前縁の中列 紋を分類の観点としている。その後はまだ,新 しい知見による幼虫の分類法は掟示されていな い。したがって,現在のところ,幼虫から成体 を羽化させずに,幼虫だけを用いた種の同定の 際には,幼虫の形態,生態(巣穴の有無),行 動(歩行の仕方)の面で同定が行れているとい える。 ホシウスパカゲロウ幼虫の記載の経違 ホシクスバカゲロウ幼虫の初めての記載は, 木下(1932)による。ここでは「老熟セル幼畠 ハ髄長一L五粍内外二達ス。頭ハ割合小ク長サハ 幅ヨリモ明カニ大ナリ。前廣ク後方二栴ホソル, 前外角二億キ突起在リテ,六個の単眼ヲ据フ。 ・・・鰻ハ淡キ褐黄色ニシテ歪形ノ淡色斑ヲ見 ル。」と形態を中心に述べ,さらに「春夏ノ候砂 −65−

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第1表 わが国におけるウスバカゲロウ科18種(Kuwayama,1962,1964)

和 名

種 名

Dendroleontinae

Dendroleon pupillaris(Ger・staeCker・)

Dendroleon jezoensis okamoto

Glenuroides japonicus(Mac Lachlan)

Ggβ彿WO宜dββ(沌省外αWβ朋ゐOkamoto

Pseudofb珊icaleo jacobsonivan der・Weele

劫励油御用両肌血糊(Okamoto)

Distoleon contubernalis(Mac Lachlan)

刀ゐわね07もpαγγ弘払8(Okamoto) βゐ紬gβ0乃dけ門柑(W五1ker・)

Distoleon b妙毎atus(Rambur・)

Distoleon bo71iT!enS由 Adams Myrmeleontinae

励genomyiamioans(Mac Lachlan)

〟yγ肌βJβ0花∫b仇宜のわ%βLinn占

Grocus bore Tjeder

GγOe≠ぷ∂Og訂β(Ⅵな1ker・)

勿αCα耽≠ん郎Jゐゐ仇0宜wα′柁α(Okamoto)

GγOC%βαCβγ(Walker)

Heoclisis japonica(Mac Lachlan)

マダラウスバカゲロウ コマダラウスパカゲpウ ホシウスバカゲpウ リュウキュウホシウスバカゲロウ ヒメウスバガゲロウ カスリウスバカゲロウ コカスリウスバカゲロウ リュウキュウヒメウスバカケざロウ ダイワソカスリウスバカゲロウ リュウキュ.ウカスリウスパカゲpウ (和名なし) ウスバカゲロウ コウスバカゲpウ クロコウスバカゲロウ ハマベウスバカゲpウ モイワウスバカゲpウ (和名なし) オ・オウスバカゲPウ 第2表 わが国で記載された8種のウスバカゲロウ科の幼虫の主な生態・行動の比較 種 名 巣穴の有仙 (幼 虫) 無H 歩行行動 主な生息場所 文 献 前 進 前 進 後ずさり 前 進 後ずさり 前 進 後ずさり + 後ずさり + 後ずさり + 後ずさり + 後ずさり 地衣類 朝・ 比枝 奈重 ︵ ︵ 947954 1 1 ︶︶ 場 馬 コマダラウスバカゲロウ リ ュウキュ.ウホシウスバ カゲロウ コカスリ ウスバカゲロウ オオウスバカゲロウ ホシウスバカゲロウ ウスバカゲロウ コウスバカゲPウ ハマべウスバカゲロウ 海岸の安定帯 田中(1979) 海岸(定着砂 馬場(1933,1953) 丘),山地 海岸の砂地 馬場(1933,1953) (雑草の相生) 木木の板蔭, 木下(1932),馬場 樹蔭の崖下等 (1934,1953) 仏閣,人家の 馬場(1932,1953) 縁の下等 海岸砂丘,河 馬場(1933,1953) 川の砂洲等 移動性海岸砂 馬場(1935,1953) 丘 このことをうけ,馬場(1934)は「私の飼育に 徹して見ても,その図と記載がホシウスバカゲ ロウのものであることは誤のない所と思う。然 し細かい点を比較す−ると,私の研究と同書の図 及び記載に多少の相違点を見出すので,ここに 中二捨鉢状ノ巣ヲ作り底二蹄居シテあり其他ノ 小義ヲ描食スJと生態のことにもー・部ふれてい る。この幼虫の図(第1図A)と記述は,馬場 への私信によれば,岸田久書によって飼育され たものにもとづくとされている(馬場,1934)。 ー66−

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第1図 木下(1932)㈱,馬場(1934)㈲,馬場(1953)(C)の記載したホシウスバカゲロウ幼虫の図. 各国ともそれぞれの著作より転写 があったのではないかと考えている。かりに, 馬場(1934,1953)の記載する幼虫ホシウスバカ ゲpウであったとしても,同属の2種の間には, 生態的に著しい差異がみられることになる(第 2表)。現在までのところ,ウスバカゲロウ科 の幼虫の記載が少ないけれども,近似3種ウス バカゲロウ,コウスバカゲロウ,およびハマベ ウスバカゲロウの幼虫は,巣穴の有無,歩行行 動が同じである(第2表)。したがって,同属 2種の幼虫において,分類の重要な因子となる 巣穴の有無,歩行行動が全く違っていることは 疑問を提示するものといえる。 こうしたことから,馬場(1934,1953)の記載 した幼虫が,もしホシウスバカゲロウのそれで ないのなら,新たにホシウスバカゲロウ幼虫が 捜し出されなくてはならない必要性が生じる。 著者ほ,もしホシウスバカゲロウ幼虫が非営 巣性のものであるとするなら,ウスバカゲロウ 幼虫の生息するようなところで,巣穴を造らず, 砂の中に潜って生活していると考えた。そこで 五/色台(香川県坂出市,綾歌郡,高松市)およ び周辺の神社を調べ,側突起が発達した,現在 まで未記載の幼虫を数個体採集した(第2図)。 この幼虫は,巣穴を造らず,動きの鈍い,前進 重ねて記述する事も無意味でもないかと思う。」 として,その幼虫(第1図B)の大胆,頭,胸, 腹及び脚,前期幼虫について記載している。ま た「其他」の欄では「各地に極めて普通なる種 類にして,主として大樹の根蔭,樹蔭の崖下等 に多し,ウスバカゲpウ幼患と混在する事も多 く,噴火口状の孔を作りて他患を描食する種類 に属す。」とし,営巣性の幼虫であることを指摘 している。同様の記述は馬場(1954)にもみら

一れるが,幼虫の図において,頭部背面,頭部腹

面の図がはぶかれている(第1図C)。 ホシウスバカゲロウ幼虫についての論議 馬場(1934,1953)は木下(1932)の記載する ホシウスバカゲロウ幼虫をより精密に記述した といえる。しかし,著者は,馬場(1934,1953) の記載する幼虫を採集し,その幼虫からホシウ スバカゲロウの成虫をみなかった。この事実は 幼虫の種の同定(馬場,1934,1953)に問題が あったことを意味していよう。というのは,木 下(1932)の記載が岸田久書の飼育した材料に もとづいたこと,また馬場(1932,1953)の記載 は,木下による教示に依処していることから, 著者は岸田久書の飼育の過程に過誤を生む原因 −67−

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虫を調べていくことは,木下(1932),馬場 (1934,1953)のホシウスバカゲロウとされて いる幼虫の記載における問題点への解明の一助 となろう。 引 用 文 献 朝比奈正二郎.1947.地衣上に生活する蟻地獄 に就いて.動物学雑誌 57:38. 馬場金太郎.1933。アリヂゴク研究第一報,ア リヂゴク四種の分類.自然研究 2:18−28. 1934.アリヂゴク研究第2報,ホ シウスパカゲロウの記載.自然研究 3:6− 9. .1935.アリヂゴク研究第3報,角 田種アリヂゴク(仮称).自然研究 4:16−17.

【州¶

.1953.蟻地獄の生物誌.越佐昆虫 同好会,新潟−107pp・ ・枝重忠夫。1954.コマダラウスバ カゲロウの形態及び生態学的知見.昆虫 21 :51−59. 木下周太.1932.日本昆虫図鑑.北隆館,東京. 2193p・ KIWayama,S・1962。A revisionalsynosis of the NeuropteralinJapar).飽c宅βc J常β.4:325−412. 第2図 未記載ウスパカゲPウ幼虫.五色台座, 1目盛は1mmを示す(著者原図). と後ずさり歩行をする。そのうえ,この幼虫が つくったまゆ(砂団子)からホシウスバカゲロ ウが羽化した。しかしながら,−齢幼虫から羽 化までの完全飼育ができていないこと,この幼 虫の生態や行動が十分に明らかにされていない こと,および観察例が少ないので,今後この幼 虫の詳細な観察記録とデータを必要としよう。 ともあれ,この未記載のウスバカゲロウ科の幼

1964・On the Neuroptera of the Ryukyus・Ins・Ahtsum。27:38 −48. 田中俊彦.1979.リュウキュウホシウスバカゲ pウGZβれ%γ0五dββ 0ゐ宜†捌β九βゐOkamoto の幼虫について.昆虫 47:213−221. −68−

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