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有機イソシアナート触媒によるメタクリル酸メチル重合物の電気伝導

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Academic year: 2021

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(1)

有 機 イ ソ シ ア ナ ー ト 触 媒 に よ る

メタクリノレ酸メチル重合物の電気伝導

岡 本 省 三 水

I

, 小 嶋 憲 三

*1

前 田 昭 徳

*1

岡本

*29

稲 垣 慎 二

*2

,尾之内千夫

*2

E

l

e

c

t

r

i

c

a

l

Conduction P

r

o

p

e

r

t

i

e

s

o

f

P

o

l

y

(Methyl

Methacrylate) S

y

n

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h

e

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i

z

e

d

by Organic I

s

o

c

y

a

n

a

t

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C

a

t

a

l

y

s

t

.

Shozo OKAMOTO

Kenzo KO

]

I

M A

Akinori MAEDA

H

i

r

o

s

h

i

OKAMOTO

S

h

i

n

j

i

INAGAKI

Yukio ONOUCHI

要 旨 これまで筆者らの一部の者が従来の過酸化ベンゾイル (BPO)を開始剤に用いるポリメタクリル 酸メチル (PMMA)に対して,有機イソシアナート類 (R-N=C=O)を触媒とするメタクリル酸メチル の重合物がはるかに高い分子量と軟化温度を有することを明らかとした])2)本報では乙れらの重合物の電 気伝導機構について検討した結果,本法による重合物では低電界伝導での活性化エネルギーがガラス転移

i

調 度以上では常法のものに比べて約 10Kcal/mol高い値を示しフそのミクロ構造との関係を述べた.さらに 0.2M V / c凹までの電流一電界特性はSinh則が成立し,低電界から高電界にわたってイオン伝導機構で説明で きることを示した.

1

.

緒 言 表

1

試 料 の 性 状

1

7

3

最近内外で電力事情が高電圧イじするのに伴って有機絶 縁物の高電界伝導現象に対する関心がたかまり活発な研 究が行なわれている.しかし特に高分子材料では試料の 精製が困難なために伝導機構の本質についての解明のさ またげとなっている.電気伝導機構を知る上でまず電荷 :tE!体が何であるかということが問題となるが,近年その 光電導性等から多くのポリマーで道子性の伝導が確めら れつつある.またこれに対し導電率の圧力依存性等から イオン性の伝導を積筏的に支持する結果も得られてい るお. 試 料 触 媒 分子量

x

lO-4 軟化温度

C

C

)

このような点から筆者らは,有機イソシアナート類を 触媒としたメタクリル酸メチル重合物の電気伝導につい て検討した.

2

.

実 庫会 本法で用いた重合触媒はフェニJレイソシアナート (P 1), トルエン-2,4ージイソシアナート (TDI)および フュニルイソチオシアナート (PTI)の三種で,これに 触媒の活性剤としてトリエチルアミン (TEA) を添加 した共触媒系である.表

u

乙試料の性状を示す.

*

1

愛 知 工 業 大 学 電 気 工 業 教 室

日 同

応用イじ学教室 A BPO 7.1 110~130 B PI-TEA 19.0 150~170 C TDI-TEA 12.3 150~170 D PTI←TEA 31.0 180~200 また測定説料は表1の軟化温度を参考にして約 1600C ~2500C の範間で真空ホットプレスで約 0.511l1i1の厚さに成 型したのち金蒸着をほどこした.電流測定は川口電気社 製の振動容量型微小電流計ModelMMA II -17を用い て, 2KV/ cm 以下の低電界で600C~1400C の範囲で温度特 牲を測定した.

2

.

結果および考察

2

.

1

低電界電気伝導 一般に固体絶縁物では図

u

こ示すように時間toで直流 電圧V を印加すると,電子および原子分極が瞬時lこ生じ て大きな充電電流 (Ico)が瞬間的に流れる. つづいて 双極子やイオンの配向分極が形成されるに伴って時間と

(2)

ともに減衰する吸収電流

(

Id

)

を生ずる. ζの

I

d

は直接 に双極子配向に基づくものであるから分子運動の情報を 提供してくれる. ところがガラス状態にあるポリマーの

I

d

の平均緩和時 間では数時聞から数週間におよぶ場合もあるため,真の 平衡もれ電流 (h)を測定することが非常に困難となる. このため本報ではガラス転移温度 (Tg)以下では電圧印 加後120分値を採用し, 60"C以下ではほとんど江dを測定 しているものと考えられたので省略した. Ico O 小

l

v

o

V to t-ー+

1

吸収電流と平衡もれ電流の模式図 低電界ではイオンが電荷担体と考えられており,この 場合にはオームの法則が成立する.いま導電率を σ,イ オンの密度と電荷を夫々 n とqとし,その移動度を μと すると σ=q11μ (1) また1対の正負のイオンを生成する解離エネルギーを Wとすると, 11は次式で示される.

{

-

2 ' : T } ω 2kT 乙ζで110はまがゼロの時のイオン密度, kおよび T は ボルツマン定数と絶対温度を夫々示す. パ1)ヤー理論によればσは次式で近似される. σ _ q2110À2~ p.Yn

f

-u

1

kT

-

-

-

r

I kT

r

=σo己xP1一- E - } ( 3 ) l kT I ただし σ0=q2no ,12~/kT で, Aはイオンの平均移動 (ジャンプ〕距離, νはイオンの安定位置における振動 数である.また Uは見掛けの活性化エネルギーと呼ばれ U=2W+L1Hの関係がある .L1Hはイオンが移動する際 の真のポテントシャルパリヤーである. 図

2K"

ー す 特 性 を 示 す す べ て の 制 問 、 て log σは 2-本の直線で表わされ.式(3)にしたがう乙とが わかる.それを次式に示すと σ=σOLexp! -l kT

.

E

_

;

:

1+σOHexp[ J' -

~!

l

(4) ~..---rL kT J となり,ここでσOL,ELは屈曲点より低温側での直線の b 13 A B C D -@ O @ A 斗 & F h J U 1 畠 1 i ︹ T E J q ︺ bD

寸 16 17 18 2. 4 2. 5 2. 6 2. 7 2. 8 十lQ'[ポ

r

'

2

導電率の温度特性 Tが無限大における極限導霞率と見掛けの活性化エネル ギーを示し, σOHとEHは夫々屈曲点以上の高温領域にお ける極限導電率と見掛けの活性化エネルギーを示す. また図中の屈曲点 (Tc)は多くのポリマーで、比容一温 度曲線から得られた

T

gとほぼ一致するζとが確められ ており,イオン伝導が自由体積の増大と関連の深い乙と を示している.したがって本報では以後この屈曲点(Tc) をガラス転移点 (Tg) として取り扱う乙とにする. 表2!と式仏)の諸定数およひ~Tc をまとめて記載する. 図 2から明らかえEようにσの大きさは試料 A にくらべ て,本法で得た試料は 1~2 ケタ大きな値を示してい る. ζのことは表2のσOL,σOHの値を見れば一層明瞭で‘ あり,式μ)において後述のイオンジャンプ距離λを考慮 すると

l

/

T

がゼロでのイオン密度110の差が主な原因と 考えられる. 表

2

極限導電率と活性化エネルギー 読料

1

2

1

0

/

c

m

(

E

f

a

l

/

0

1

)

(

2

3

/

d

(

E

1

1

/

E

O

I

T

1

3

C

)

A 9.3

1020 62.8 4.6

103 35.3 106.5 B 2.4

102マ 73.8 6.8

104 34.5 101.0 C 9.9

1026 72.8 8.6

103 34.8 87.4 D 6.9

1025 73.0

1

.

8

104 33.5 114.6 しかしポリマーではイオン結晶体におけるほど電荷担 体の種類は明確にされておらず,一般的にいって系内の 低分子物質, 触媒残査および不純物等と考えられてい る. ζのようとE観点から noの差は一応イソシアナート

(3)

有機イソシアナート触媒によるメタクリル酸メチル重合物の電気伝導

1

7

5

触媒の未反応分が電荷担体として作用している可能性が 考えられる.

表21ζ示された読料

A

(J)

E

Hと

EL

の値は,例えば

Munick

4) が plexiglaダでイ号Tこ値 (EH=63~69Kcul/mol , EL=

33.4Kca1/皿01)や

Fowler

Farmer

5)等の値 (EL=

36.8Kc

叫ん

01) とほぼ一致しており. 標準試料として 妥当な値を有するものと考えられる. しかし

T

gについては誌料

A

では

p

l

e

x

i

g

l

a

s

l

乙比べて約 30'C高い 106.5"Cという値が得られている.ところが普 通

BPO

で重合した

PMMA

は数十パーセントのシンジオ タクチック部分を含み,その

T

gは約105じであると報告 されていることを考えると試料AのTcは妥当な値とい える .4 種の誠料から得られた Tc は 80C~115'C と約30

O

c

の巾を持っており,重合触媒とミクロ構造との関連と いう点で興味深いζとである.いまガラス転移温度に影 響をおよぼす因子として考えられることは (1)分子量の 差, (2)立体規則性および (3)架橋効果の三つがあげられ る. (1)については試料Aと同程度の分子量を持つものを 選んだが表 1に示したように, Aの7万から Dの35万まで 変化している.斉藤によると平均重合度で850~11000の 変化に対する Tgは 93'C~107'C と高々 15'C の変化巾にす ぎず,本報の測定結果の説明には不十分である.図31ζ 斉藤の測定値13) (比容温度曲線から求められたもの) と比較して,分子量と

T

gの関係を示した. 120 110 ρ ~100 b.O

90 80 つ 7 10' 2 4 7 10' 平均分子量 ]Vlv 図

3

分子量と

Tg

の関係 次に(2)については高度にシンジオタクチック化した

PMMA

T

gは約115'C,アイソタクチックが主なもの は45'Cで両者のステレオブロックコポリマーでは 60aC~ 950

C

T

gが報告されており6)7),本測定結果は乙の範 囲内で変化しているのでかなり有力と考えられるが,赤 外線吸収スペクトJレの結果からは立体規則性の差は認め られなかった.(3)については話料 Aではあり得ないこと であるが,特に話料

B

C

については窒素を介した

l

o

n

g

c

h

a

i

n

の架橋を示唆するような結果が元素分析から得ら れている. (ζの点については別の機会に誘電挙動を通

MMA

の商品名

(Ro

:lJ

mand HadS

社)

じて報告する予定である. ) さらに表2の高温側での活性化エネルギ{が本法の触 媒を用いた試料では一様に大きくなっており,主鎖のミ クロブラウン運動が架橋によって阻害され,その効果が イオンの移動 K対する電位障壁lζ影響をおよぼすためと 考えられる.

2

.

2

高電界電気伝導 乙こでは粉末状の

PMMA

をベンゼンに溶解して,テ フロン台上で厚さ約50ρのフィルムを作成した.測定試 料は約80'Cで2昼夜保ったのちに 10-5

Torr

の真空中に 1昼夜おいて十分ベンゼンをとばしてから金蒸着をほど こした.測定は各試料のガラス転移領域で,約0.2M V/cm 以下の電界を印加して気中で行なった.またうfラス状態 での測定は吸収電流が長時間残留するために,電圧印加 後10分値を採用した. 0.04 0.08 0.12 0.16 0.20 E (刊耳石

1

4

誠料Aの電流ー電界特性 7

11 <0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.20 E (吹~l 図

5

話料Cの電流ー電界特性

(4)

図4,5 I乙電流密度logJと電界Eの関係を示した.図 中の点線は各温度における低電界(図1)での導電率 (σ) からオーム則に従って計算した値である.その結果,各 誌料とも約 104V

/

c

田の電界以上ではオーム則からはず れ,電界と共に急激に電流は増大する.また一方乙の傾 向は温度が低下するにつれて著しくなり,図

5

の試料

C

の800Cではオーム則からのずれは最も大きく, log J

I Eでプロットしてみるとオーム則(J∞E) , 2乗則 (J∞E2) を経て更に高次の電界依存性が電界の増大に 伴って観測される.この場合のようにガラス状態では電 子性伝導を示唆するような結果が得られたが,ガラス転 移領域を通じて電流ー電界曲線は Sinh別によく適合 し, Sinh則で統一的に解釈する方が自然であろう. 絶縁物の低電界伝導はイオンの移動が伝導の主体をな すものと考えられており3),Munick41はplexiglasの低 電界伝導 (8正V/ c皿〕について導電率 (σ)の温度特性か らσoと活性化エネルギーの大きさからイオン伝導を支持 している. イオン伝導の電界依存性は電流密度を

J

,イオンの密 度と電荷を夫々 n,qとし,電界Eの下での移動度を μ とすれば

J

=nqpE (5) また一回のジャンプで電位障壁Uを越えて,イオンが 平均距離λだけ移動するモデルによると,

J

は最終的l乙 次式で示される. J=νqAn e

I kT -1-l2Sinhi

J --

-

-

-

-

-

2kT

(6) したがって JocSinhqEA/2kTとなり, J-E曲線の 高電界領域での傾きからイオンジャンプ距離1が求めら れる.図6KAの温度依在性を示す. ζ ζで BPO触媒 による読料Aを除いた3つの試料のAは図中矢印で示し たガラス転移点を中心に大きく変イむしており,主鎖の分 子運動が活発になるにつれて自由体積の場所的,時間的 な変化が増大し,イオンは連続的に移動が可能とえEるこ とを物語っている. ︹ ︿ ︺ 120 A A 口 U 円 u n u e @ O @ べ 80

l~←千」ふナ「乞

60 80 100 120 140 温度 ('C) 図

B

イオンジャンプ距離入の温度特性 しかし乙れまでにポリエチレンテレフタレート(PET) 自)やポリ塩化ビニル (PVCl9)等で得られた A-Tの関 係は高温になるにつれてAが増大する,本報とは逆の結 果が報告されている.乙の点については現在Aの物理的 意味(イオンカト

C-C

ー結合に沿って移動するかどうか) が不明であり,今後の資料の集積を待つ必要がある.ま た先i乙述べ

T

こMunickの0.03M V/cm以内のJ-E曲線から 家田等によって計算された値はガラス点以下の760C(Tc =84OC)で190Aであった.乙の値はTcも共l乙本報の試 料Cと類似している. 図61乙示したAは平均電界を用いて計算されたもので あるが,式(6)中のEは局所電界E'={3ε')"/(2

ム+l)}・

E を用いて電界の補正をしてやると測定温度領域では比誘 電率ε(Ir) は主に側鎖の緩和が原因で3.5~5.2の変化を するために Aの値は表 3に示すようになる.ただし Aは 転移点上下の温度に依容しない一定値をんとλLと記し た. 表

3

電界補正後のλ値

h

(A)

試 料 AH (A) A 33 24 B 42 22 C 108 54 D 78 32 さらに表4に参考としてこれまで多くの研究者達によ って得られた代表的なポリマ{のA値をあげておく 表

4

λの 測 定 例 物質 温度 (OC) 電界 (MV/ cm) λ(A) 文献 PMMA 76 三0.03 190 4 PET -30~ 20 三三4 2.8~3.4 10 PET 130~190 三0.2 69~81 8 PVC 40~120 三二1.0 12~31 9 PP 55 ぎ0.16 200 11 PE 55~ 85 三三1.5 20 12 以上の諸結果から低電界および 0.2M V/cmまでの高電 界 を 通 じ てPMMA(本法で重合した試料も含めて)の 電気伝導はイオン伝導機構が主体と考えてよいだろう. さらに今後誘電挙動との関連において分子運動と電気 伝導を詳しく検討する予定である. (昭和48年4

3日,昭和48年電気学会全国大会講演発 表)

(5)

有機イソシアナート触媒によるメタクリル酸メチル重合物の電気伝導 引 用 文 献 1) 岡本,稲垣,尾之内:中部化学関係学協会支部連合秋季大会予稿, P 15(1971) 2) 岡本,稲垣,尾之内:日化24年会予稿, 4 2169(1971) 3) S. Saito etal :

J

.

Polym. Sci.. A-2

6

1297(1968) 4) R.J.Munick :

J

.

Appl. phys., Vo.l28,11, 1302(1957) 5) J.F. Fowler and F. U. Farmer : Natur,巴1 ~5 , 516(1955) 6) T. G. Fox and Others :

J

.

Am. Chem. Soc., 80, 1768 (1958)

7) J.D. Stroupe and R.E.Hugh巴s: J.Am. Chem固 Soc..80

2341 (1958)

8) L. E. Ambroski : J.Polym. Sci.. 62

331(1962) 9) M. Kosaki etal : J.Appl.Phys.. 42. 3388 (1971) 11) Y. lnuishi etal : J.Appl.Phys.. 28

1017(1959) 11) 井出:高分子化学.23

865 (1966)

12) W. G. Lawson : Brit.J.Appl. Phys" 16

1805 (1965) 13) S. Saito : Res. Electrotechnical Lab.. 648

(1964)

表 2 1 ζ 示された読料 A ( J ) E H と EL の値は,例えば Munick
図 4 , 5  I 乙電流密度 l o g J と電界 E の関係を示した.図 中の点線は各温度における低電界(図1)での導電率 ( σ ) からオーム則に従って計算した値である.その結果,各 誌料とも約 1 0 4V / c 田の電界以上ではオーム則からはず れ,電界と共に急激に電流は増大する.また一方乙の傾 向は温度が低下するにつれて著しくなり,図 5 の試料 C の 8 00 C ではオーム則からのずれは最も大きく, l o g  J 一 、 I E でプロットしてみるとオーム則(J∞E) ,  2

参照

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