166 香川大学農学部学術報告 暗キョ排水の機能増進に関する研究
Ⅰ 研究手法の検討
田地野直哉、弥永孝一・、高野晴男
Ⅰ は し が き 暗キョ排水の施工改良に関する諸問題についてはこれまで研究を重ね，数次匿わたって報告して来たが（1・2・3・4，5，8・7）その 間多くの施工現地を見て釆た結果，最近の施工の機械化および新暗キョ材料の使用にともない。討画から施工にわたる全 般について更に検討を加えなければならないと考．え．る紅到ったので機能増進に焦点をおいて研究を進めることにした．． 研究の対象とすべき問題は多いが圃場整備事業による圃場の大型化のため土の大壷移動にともなって施工が機械化さ れ，圃場全体の透水性が破壊されている状態であるい このような条件のところに機械施エによる暗キョ排水組織を設け る場合は計画設計・材料選択・施工・管理保持を十分考えなければ暗キヨ排水本来の機能を期待することはむずかしいい したがって，施工現地で当面の問題とされている暗キョ排水組織の改良および管理保持について−検討を加えようとす るもので，まづ施工後の現場調査から始め，暗キヨ排水組織の改良，暗キョ管内の堆積土砂および保護材料などの目詰 まりの除去，暗キョ内通気による効果について研究を進める．． ⅠⅠ暗キョ排水施工後の現場鵠査 暗キョ排水施工後の排水機能を左右するのは周辺土壌の透水性の良否以外に．施工上の問題として施工時の土砂の管内 流入堆殻，施工後初期の排水にともなう土砂の管内流入堆積および保護爾料の目詰まりであるい したがって土壌の透水 性および暗キヨ材料の問題以外について考えると，噌キョ排水吸水管列の凹凸が重要である 暗キョ排水吸水管列の凹凸はこれまでの資料（1・8，9，10）から干拓地や泥炭地などの軟弱地盤に蘭著である小 これらの凹 凸は通水時に水理学的粗度係数を高めるので，管径を大きぐするか，管列延長を短くするか，管列勾配を急にしなけれ ばならないと言う不利が生ずる． 塩ビ管畷キョの管路としてのManningの粗度↓系数（n）の値は0‖00S（濁流で流速02∼1い5m′／secの範囲）（6）であり， 土管暗キョの蔚路としての限度係数の値鳩十・般に0015と言ほれているい しかし今後各種条件におけるnの値を求める 必要があるいFig”1Theimplements used for searchingthe position Fig2 Field view of searching the p〇Sition of Of drain pipeh From theleft side，Water jet， draiコplpe uSed by fibe；SCOpe” pump，generatOr and fiber scope”
塩ビ吸水管列で凹凸がある場合ほ細管密閉の状態またほ空気が管内で部分的に閉じ込められることによる通永の障害 がある．このような管列の凹部には流水が停滞し，土砂が堆積する． 暗キョ排水施工後，土管暗キョ吸水管列の凹凸の調査には鉄棒の買入によって，その手ごたえから実施できる．（1）し かし最近の塩ビ管暗キヨの場合にほ鉄棒の買入による方法でやると，その手ごたえ．が不明瞭であって，しかも管を破損 するおそ・れがある。．滋賀屈大中の潮干拓地区に‥おける調査（10）では吸水管列延長120mを掘り起して管列の凹凸を測定し ている… このような全長掘削による調査は時日と費用を要し，再施工も必要とな。てくる．
このため，figl，fig2に．示すようにWater jetで土中に孔を開け，この孔にfiber scopeを挿入して昭キョ管の位置 を探る方法を開発した．なおこの方法で保護胡料の状態を観察し，またfiberscopeによ′って一写真撮影も可能である。 ⅠⅠⅠ暗キョ排水組織の改良 透水性の土壌において−ほ噸キヨ排水の機能を発揮しその効果を期待することができるが，粘土質土壌や土工による透 水性の破壊された土壌などの難透水性土壌においては暗キヨ排水の機能・効果ほ期待できない．． このような難透水性土壌においてはモグラ暗キョによって表層部に亀裂を促進させ，そのモグラ暗キヨと管暗キヨと の複合式暗キョ（11）にするか，惜キョ掘削部に砂やモミガヲなどを詰めて排水機能を増強しなければならない小 難透水性土塊を透水性土壌粧改良することも必要であって，土層を破砕・切開（12）するか，地表からの乾燥亀裂あるい ほ．吸水管列からの強制乾燥亀裂も必要であるり 吸水管列からの強制乾燥亀裂について−ほ今後の研究課題であるが，後述するように管内通気によるものであって吸水 管保護材料の目詰まり除去にも利用される．． ⅠⅤ 堆積土砂および目詰まりの除去 前述したように暗キョ排水の機能増進について施工上の問題として吸水管の堆敲土砂および保護桐料の目詰まりの除 去がある‖ 大別するとおよそつぎの8項目であって研究をそれぞれ進めている… 1… 水甲操作による方法： 現在「・般におこなわれている方法で，中干し時や落水時に暗キョ排水組織の下流側から順に水甲を一気に開け，または 開閉の急激な繰返えしによって堆積土砂を排除する．．香川県寒川町天王地区における現地試験では20∼40％の排水壷 の増加が見られたい この方法についてほ今後各施工現地における調査研究が必要であるい
Fig．3 Test equipment of water hummer within Fig‖4 Measurement recorder of changeiII PVC drain pipe．（at30meterlength） hydraulic pressurein a drain pipe．
香川大学農学部学術報告 168 2．洗井戸を設けて注水し，急流およぴwater hammerによる方法： 吸水管列上流末端に設ける洗井戸は既に富田甚平が1905年に．考案しているが（18），ここ．から連続注水し急流速紅よって 堆積土砂を除去する． なお吐口または注水ロに急開閉のValveを設けて一，この操作によって管内にWater hammerを生ぜしめてその圧力 変化により堆積土砂および保護材料などの目詰まりを除去する方法である．． fig。3，fig4に示すように，塩ビ管の上下流末端に急開閉sluicevalveを設け，その操作に．よる無Slit塩ビ管（幽57nm） の管内圧力の変化を測定したところ管内満流で実水頭0．7mの場合に下流末端において水頭10∼20mのWater hammer
を生ずることがわかった．塩ビ吸水管すなわちSlit開き塩ビ管の場合は2∼5mの Water hammerを生じている， 前記，無slit管の場合はJaukowskyによるWater hammeIの計算式とよく一・致するが，Slit開き管すなわち吸水管 の場合は′Joukowskyの計算式そのままでは使え．ないのでSlit開きの条件を加え．た計算式を求めなけれはならない． 31．洗井戸からの圧力水流入に．よる方法： 圧力水を洗井戸から連続あるいは間歌的紅．注水して堆積土砂を除去する… 4．加減圧力水の強制循環に．よる方法： 塩ビ吸水管を細管として−水理的紅連続させたpistonの操作を考えた場合，管内に急流速・急圧力変化が生ずること を利用して堆積土砂および保護材料などの目詰まりを除去する1．
5り Water jet flushingおよびair entrained water jet flushingによる方法：
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＿→」20⊥20」10」．35一⊥25」5
Fig．5Jet nozzle for wateIflushingwithin a drain pipe
fig。5に示すjet nozzleをhoseの先端庭．とりつけpower pumpでjettingすれはその堆カによって■hoseを吸水 管内紅引込み，jettingしながら引きもどせば堆積土砂を除去することができる．なおWater jet flushingほ．既に都市 下水管のflushingに使われでいるが，暗キョ排水吸水管ほ延長が長い細管なので今後の研究が必要である．．つぎにそ の可能性について検討を加える Waterietの推力をP，hose引き込みの摩擦拡抗力をFとすれば， P＝V2＿＿空⊥d2×103 12g （m一昭単位） Ⅴ：hose内平均流速（m／SeC） d：boseの内径（m） ただしVほflushingする吸水管内径の大きさに・よってつぎのように変る。 Ⅴ＝J （m−SeC単位） 4い5十0．02りd H‡d′−（d＋2t）〉〈d′2−（d＋2t）212 0．021十〈d′−（d＋2t）さ h＝ 〈（5．5＋0 ．021／d）／（4．5＋0．02しd）〉id′−（d＋2t）〉 〈d′2−（d＋2t）2）じ 4．5十0．．021／d 0．021＋ 〈d′−（d十2t）‡ g：重力の加速度（9．8m／SeCり H：pOWer pumpの有効水圧（m） d′：flushingする吸水管の内径（m）
t：boseの肉犀（m） F＝〟nl （m一喝単位） 〝：摩擦係数（≒1） n：hose満水1m当たり水中歪（極／m） 1：nOZZle先端到達距離（m） ここでP＝Fなるときの1が到達限界であって，今H＝82．6m（8気圧），d＝0．024m，d′＝0”05m，nylon hoseの n＝53×10．8Eg／mなるとき上式から1＝18m，（全量後方jetのとき43m）が得られる．′しかしfig”5に．示すjet nozzleの 構造に．よって上記PおよびⅤを求める式の係数値が変ってくるので，このことについては実験にまたなければならない なおairentrained water jet flushingの場合は更に到達距離が増加するものと考える
6．．強制圧気吸気による方法： 圧力空気と空気吸引を交互に管内に対して強制的におこない主として保護材料および周辺土壌の目詰まり除去ある いほ二透水性の増強を期待する方法である 7．通気に．よる方法： 吸水管内に洗井戸を利用して通気し，堆積土砂を乾燥させて除去しやすくしたり，保護材料などの目詰まりに亀裂を 生ぜしめて透水惟を増強させる．通気にほfig…6に示す風力利用のもの，または動力による強制通風・熱風がある 8．薬品処理による方法： 鉄やマンガンの酸化沈積物を薬品で除去する方法である． Ⅴ 通気賭事ヨによる効果 壷粘土地における暗キョ排水の場合ほ土壌そのもの が不透水性のために排水機能がゼロであることが多 い 前述のように地表からの乾燥亀裂を待つ以外に冬期 の管内通気によって管周辺からも亀裂を生ぜしめよう とする考えである， この場合に．暗キョ吸水管材料の違いによってその効 果に大きい影響を与える。fig、7，fig・8，fig」・9，fig・10 を見ると判るように蒸発率（14）の大きい管が撃ましい 蒸発率とは湿潤ガ−ゼの単位両横からの未発塁100 に対する各種昭キョ崩料の管内単位面積からの未発患 を％で示す…またfig．8に蒸発率とそれぞれの透水性を
Fig．6 The ventilationthroughdrain pipe used by
Wind． 対比するために吸水率（6）の値を示したが，吸水率とは それぞれの暗キョ材料と同一外径の150メッシュ金網 管からの排水畠100に対する各種暗キョ材料の排水塁 を％で示す。なおCOrrugatepipeの借75∼85％は管凹 部に1．2×12丁肌孔1364個／mを開け，その上にポリク ラル繊維束を巻いた場合である小このポリクラル繊維 束のかわりに塩ビ吸水管のようにクラレVDFlOlのゲ ・−トル巻きにすると95∼100％の吸水率を示す．． 管内通気による土層乾燥の問題としてほつぎの4点 が考えられる。． 1、．暗キョ管近傍の土壌水分の移動速度より高速を もって管内通気による連続乾燥が可能か． 2．土壌水分中の塩類が吸水管および保護材料に集
Fig．7 Measurement of evaporation effectiveness Of drain plpeS一
潰して，このための蒸発率低下によって土壌の乾燥亀裂が不可能にならないか 3．管内蒸発面と土壌水分とが水理的に不連続にならないか
香川大学農学部学術報告
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Fig．8 Drain pipes．From theleft side，fiber pipe4・60mm，drain hose ￠55mm，COrrugate pipe4）45mm，PVC pipe4）45mm小
FiberpipelDrainhoselcoIrugatepipe t PVCpipe
EvapoIation （14）
effectiveness 11％ 4％
Drainage （6）
effectiveness 90∼100％ 89∼97％ 75∼85％ 88∼95％
FigL．10 The conditionafter220hoursby Ventilation．
Fig…9 Applied silt（HACHIRO GATA recla− mationland）5mm thickr）eSS tO the each pipes，and elapsed timeis 50houIS． 4．施工上の問題として管列に．凹部があると停滞水によって通気が不可能に・なる。また保護材料の葡ることが不利に ならないか． 今までの資料（1牝よれば土壌条件・地下水条件紅よって暗キョ吸水管周辺に作物根が多く集まると言はれており作物 根が管内に侵入して通水の場合の障害になると考．え．られていたが，これをうまく利用すれほ暗キョ排水は土層改良以外 に作物植生に直接好結果を与えるものと思われる． すなわちミカンなどの果樹園における暗キョ排水は地下水が高く過湿のときに排水し，普段は通気昭キョとして根群 を暗キョ管周辺近傍阻集めておき早魅時に暗キョ管から潅水し，また液肥を有効に与えると言う考えである0 この場合の吸水管ほ前記蒸発率の高い材料であることが望ましい・ 通気暗キョと作物植生との問題についてほ四国農試土地利用部のミカン園紅おいて福岡事弘室長が試験を実施中で ある。 ⅤⅠま と め 暗キョ排水の機能増進についてほ暗キョ排水の目的および土壌条件・地下水条件・暗キョ材料および施工法の違い
などによって−多くの問題を残しているので，一つ一つ研究解明する考えである． 最近の施工機械化紅ともなって暗キョ材料も各種の新らしいものが市販されているので，どのような条件のもとに・ど の材料を使うのが良いかと言う研究，機械営農のための地耐力強化に噌キョ排水を実施する場合の合理的計画に・ついて の研究などを進めなければならない…これらの研究も考慮しながら当面の研究課題として前記Ⅱ∼Ⅴの研究を進める◇ 今回はその研究封画と予備試験の結果を示した なお，この研究に．要した費用の−・部は文部省科学研究費（総合研究・農学・分担．・一・般研究C・農業土木，代表）に よって支払うことができた。ここに記して謝意を表わす． 参 考 文 献 田地野直哉：農兼技術研究所報告F（11），65∼83（1959） 】岬−−− ：土地改良10（5），18∼24（1960） ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ ︶ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 1 1 1 1 1 1 ：農業技術研究所報告F（13），137∼163（1961） 〝 〝，165′・・193（1961） ：農業土木試験場報告（1），157∼167（1963） 〝 （3），119∼124（1965） 〝 （5），87′・一97（1967） 五．十嵐隆司：虚業土木研究，35ト8），9∼12（1967） 浪瀬 信義ご 〝 ，31（3），11∼21（1963） 滋賀県大中の湖新選封建設事務所：43年度調査報告書，（1969） 山崎不二夫はか‥農業土木学会論文集（16），1∼8（1966） 山崎不二夫はか：農業土木研究，鋸＝8），1∼8（1963） 東爛精一・，小川誠ほか：日本戯業発達史，1，283（1953） 田地野患哉：農業土木試験場42年度専門別総括検討会議資料，88∼89（1968）
RoE and AYRES：EngineeIing for Agr・iculturalDrainage，Mc Graw−Hill，350（1954）
STUDIES OF ENLARGED PROPERTY OF UNDERDRAINAGE
I Discussion of the methods
Naoya TAJINO，KoichiIYANAGA and Haruo TAKANO
Snmmary
Theaffair ofimproved execution techniques of underdrainage have yet a numbeIOf subjects．
InthispapeI，thetest planof thesesubjects weresummarizedas follows：
1．The field tests of after execution techniques of underdrainage
2．Improvement of underdrainage system
3．Removalof heaped soilwithindIain pipe and plastics fibermat． 4．The effective points of ventilationthroughdrainpipe．
