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(81.5%), 後半の巻四から巻五にわたる紀行部分で10 例 (18.5%) と, 気色 用例の出現数は前半に偏る 巻ごとの数と出現箇所を以下に示す 巻一 20 例 気色 8 例 :Ⅰ212.05,Ⅰ227.02,Ⅰ228.14,Ⅰ246.09,Ⅰ247.11,Ⅰ248.07, Ⅰ251.02,Ⅰ

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『とはずがたり』における「気色」の意味の定量

丸山

ま る や ま

け ん

一郎

い ち ろ う 同志社大学大学院博士課程後期課程 [email protected] キーワード けしき,きしょく,きそく,御気色,語義の定量 要旨 本稿は,鎌倉時代後期成立とされる『とはずがたり』に見られる「気色」の全用例につ いて調査し,意味分類の結果を示すものである。『とはずがたり』本文中に「気色」は54 例出現しており,内訳は「気色」27例,「御気色」26例,「気色づく」1例である。『と はずがたり』における用例は,語義が人や自然の外形的な表象と人の内面的な表象の双方 にわたっており,平安時代初期からの呉音読みの語の特徴を残している。 1.はじめに 本稿では,後深草院二条(ごふかくさいん・にじょう,1258正嘉二年-没年未詳,久我 雅忠の娘)の著作で鎌倉時代後期成立とされる『とはずがたり』註 1本文中に出現する「気 色」の全用例を抽出し,意味による分類の結果と考察とを示す。また古代から平安前期に 至る「気色」の歴史的変遷に関する研究を踏まえて,『とはずがたり』の用例の位置付け を検討する。 2.調査 2.1.調査の内容と対象 『とはずがたり』に出現する「気色」の全用例を抽出し,意味による分類を行う。接頭 辞を伴う「御気色」,動詞「気色づく」も対象とする。 用例の出現箇所は,久保田1999の本文箇所を巻・頁数・行の順で記す。 例)…揉み伏するに、すでにと見ゆる御気色あるに力を得て、いとど煙も立つほどなる。 (Ⅰ211.15) 上記 (Ⅰ211.15) は,「御気色」の用例が底本である宮内庁書陵部所蔵5冊本の巻一に あり,久保田1999では211頁の15行目にあたることを示す。 2.2.調査資料 『とはずがたり』の本文は,久保田1999に拠る。辻村1992a・1992bを適宜,参照する。 2.3.用例数と分布状況 『とはずがたり』全体で「気色」は54例みられた。内訳は「気色」27例,「御気色」26 例,「気色づく」1例である。前半,巻一から巻三にわたる宮中生活の回想部分で44例

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(81.5%),後半の巻四から巻五にわたる紀行部分で10例(18.5%)と,「気色」用例の出 現数は前半に偏る。巻ごとの数と出現箇所を以下に示す。 巻一 20 例 「気色」8 例:Ⅰ212.05,Ⅰ227.02,Ⅰ228.14,Ⅰ246.09,Ⅰ247.11,Ⅰ248.07, Ⅰ251.02,Ⅰ279.05 「御気色」12 例:Ⅰ199.12,Ⅰ209.11,Ⅰ211.03,Ⅰ211.05,Ⅰ211.07,Ⅰ211.15, Ⅰ214.03,Ⅰ215.13,Ⅰ216.08,Ⅰ217.01,Ⅰ218.03,Ⅰ271.05 巻二 10 例 「気色」3 例:Ⅱ300.03,Ⅱ309.12,Ⅱ328.02 「御気色」7例:Ⅱ289.03,Ⅱ291.14,Ⅱ315.03,Ⅱ320.04,Ⅱ341.13,Ⅱ341.15, Ⅱ343.13 巻三 14 例 「気色」8 例:Ⅲ372.07,Ⅲ379.04,Ⅲ380.11,Ⅲ389.04,Ⅲ396.04,Ⅲ410.11, Ⅲ410.12,Ⅲ421.11 「御気色」5 例:Ⅲ354.11,Ⅲ375.12,Ⅲ380.07,Ⅲ400.06,Ⅲ405.14 「気色づく」1 例:Ⅲ351.09 巻四 6 例 「気色」5 例:Ⅳ433.09,Ⅳ448.07,Ⅳ454.09,Ⅳ465.12,Ⅳ470.14 「御気色」1 例:Ⅳ472.09 巻五 4 例 「気色」3 例:Ⅴ488.09,Ⅴ507.10,Ⅴ532.05 「御気色」1 例:Ⅴ507.02 2.4.原表記の様相とよみの確定 「気色」には「けしき」「きしょく」「きそく」の3通りの訓が考えられ,語史研究で は,4.に後述のとおり,意味変化との関連や意味範疇の分担についても指摘がなされて いる。西沢1985a・1985bおよび辻村1992a・1992bに拠り全54例の表記を確認した。「気色」 27例中では,漢字表記「氣色」が7例(25.9%),ひらがな表記「けしき」が20例(74.1%) とひらがな表記が多い。また漢字表記「氣色」7例は後半(巻四と巻五)に6例(85.7%) 出現しており偏りが見られる。 「御気色」26例中では「御氣色」10例(38.5%),「御氣しき」4例(15.4%),「御け しき」10例(38.5%),「御きしょく」1例(3.8%),「御きそく」1例(3.8%)であり, 「御」はすべて漢字表記である。漢字表記「御氣色」10例はすべての巻で見られる。「御 けしき」10例と「御きそく」1例と「御きしょく」1例は前半(巻一から巻三)に偏る。 「御気色」の「御」を除く部分の表記では,漢字表記「御氣色」10例(38.5%)とひらが な標記「御けしき」10例(38.5%)が拮抗するが,「御きしょく」「御きそく」を加える とひらがな表記は計12例(46.2%)である。交ぜ書き表記「御氣しき」4例(15.4%)は巻

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一にのみ見られる。「気色づく」1例はひらがな表記「けしきつく」1例として見られる。 原表記の数と出現箇所を以下に示す。 「氣色」7 例:Ⅰ251.02,Ⅳ448.07,Ⅳ454.09,Ⅳ465.12,Ⅳ470.14,Ⅴ488.09,Ⅴ507.10 「 け しき 」 20 例: Ⅰ 212.05, Ⅰ 227.02, Ⅰ 228.14, Ⅰ 246.09, Ⅰ 247.11, Ⅰ 248.07, Ⅰ 279.05, Ⅱ300.03,Ⅱ309.12,Ⅱ328.02, Ⅲ372.07,Ⅲ379.04,Ⅲ380.11, Ⅲ389.04,Ⅲ396.04,Ⅲ410.11,Ⅲ410.12,Ⅲ421.11, Ⅳ433.09,Ⅴ532.05 「御 氣色 」10 例 :Ⅰ199.12, Ⅰ211.03, Ⅰ216.08,Ⅱ291.14,Ⅱ320.04,Ⅱ341.13,Ⅱ 341.15,Ⅱ343.13,Ⅳ472.09,Ⅴ507.02 「御氣しき」4 例:Ⅰ214.03,Ⅰ215.13,Ⅰ218.03,Ⅰ271.05 「御けしき」10 例:Ⅰ211.05,Ⅰ211.07,Ⅰ211.15,Ⅰ217.01,Ⅱ289.03,Ⅲ354.11, Ⅲ375.12,Ⅲ380.07,Ⅲ400.06,Ⅲ405.14 「御きしょく」1 例:Ⅱ315.03 「御きそく」1 例:Ⅰ209.11 「けしきつく」1 例:Ⅲ351.09 上記を踏まえ,分類の便宜上,本稿の方針としてよみを以下の通り確定する。 ①「氣色」7 例「けしき」20 例は,「けしき」とよむ。 ②「御氣色」10 例「御氣しき」4 例「御けしき」10 例は,「みけしき」とよむ。 ③「御きしょく」1 例は,「ごきしょく」とよむ。 ④「御きそく」1 例は,「ごきそく」とよむ。 ⑤「けしきつく」1 例は,「けしきづく」とよむ。 2.5.分類 三角・小町谷2006は,「け-しき【気色】」の項で語義を以下の8種類に分けている註 2 すなわち,「①(人の)表情。面もち。顔色。態度。そぶり。②(自然の)景色。情景。 ありさま。眺め。③兆候。兆し。前ぶれ。④意向。意中。内意。考え。⑤機嫌。気分。⑥ 愛情。寵愛。⑦事情。わけ。内情。⑧いささか。ほんの少し。一部分。」である。 以下,『とはずがたり』の「気色」全54例を,三角・小町谷2006の語義分類に拠り分類 する。本文と解釈は,久保田1999に拠る。全用例について本文を挙げ,久保田1999での出 現箇所を示す。抽出にあたり「気色」部分には下線を施す。 2.5.1.けしき ①(人の)表情。面もち。顔色。態度。そぶり。11 例 01. 階下には公卿着座して、皇子御誕生を待つ気色なり。陰陽師は庭に八脚を立てて、 千度の御祓を勤む。(Ⅰ212.05) 02. 笑めるを見ては百の媚ありと思ふ。愁へたる気色を見ては、ともに嘆く心ありて、 十五年の春秋を送り迎へて、今すでに別れなむとす。(Ⅰ227.02) 03. 心ばかりはつれづれをも慰めむなど思ひたる気色にて、物語して、年寄りたる尼た ち呼び集めて(Ⅰ247.11)

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04. すこしのどかに見たてまつるにつけても、むせかへりたまふ気色、心苦しきものか ら、明けゆく音するに(Ⅱ300.03) 05. 「心地わびし」とて起き上がらず、泣く泣く出でたまひぬる気色は、げに袖にや残 し置きたまふらむと見ゆるも(Ⅱ309.12) 06. 『三界無安、猶如火宅』と口ずさみて、出でたまひし気色こそ、常ならむ人の、恋 し、悲し、あさまし(Ⅱ328.02) 07. うちそそく春の雨、糸帯びたるほどなるを、厭ふ気色もなく、このも彼のもに並み 居たる有様、いつまで草のあぢきなく見渡さる。(Ⅲ410.12) 08. 暮れぬれば行啓に参りたる掃部寮所々に立明しして還御急がしたてまつる気色見ゆ るも、やう変りておもしろし。(Ⅲ421.11) 09. 夕日は御殿の上にさして、峰の梢に映ろひたるに、若き巫子二人御あひにて、たび たびする気色なり。今宵は若宮の馬道の通夜して聞けば(Ⅳ454.09) 10. その御姿ははばかり申せども、くたびれたまひたる気色も、神も許したまふらむ」 とて、内へ入れて(Ⅳ465.1) 11. 山科の中将入道そばに立たれたり。墨染の袖も絞るばかりなる気色、さこそと悲し。 (Ⅴ507.10) ②(自然の)景色。情景。ありさま。眺め。9 例 12. をりふし雪いみじく降りて、風さへ烈しく、吹雪とかやいふべき気色なれば、「あ な堪へがたや。(Ⅰ248.07) 13. 神無月のころになりぬれば、なべてしぐれがちなる空の気色も袖の涙に争ひて、よ ろづ常の年々よりも心細さもあぢきなければ(Ⅲ372.07) 14. 女房たちの中に、糸綿にて山滝の気色などして参らす。男たちの中へ、色革・染物 にて柿作りて(Ⅲ379.03) 15. かくは物は思はざらましと思ふに、今宵しも村雨うちそそきて、雲の気色さへただ ならねば、なべて雲居もあはれに悲し。(Ⅲ389.04) 16. 所のさまは男山の気色よりも、海見はるかしたるは、見所ありとも言ひぬべし。 (Ⅳ433.09) 17. 八月の初めつ方にもなりぬれば、武蔵野の秋の気色ゆかしさにこそ、今までこれら にもはべりつれと思ひて(Ⅳ448.07) 18. 空ろに覆ひたる中、海にて、船をさし通すなり。海漫々たる気色、いと見所多くは べりき。(Ⅳ470.14) 19. 十三夜の月、御殿の後ろの深山より出づる気色、宝前の中より出でたまふに似たり。 御殿の下まで潮さし上りて(Ⅴ488.09) 20. 時々申し通ひはべるに、文遣はしたりしついでに、彼より、 都だに秋のけしきは 知らるるを幾夜伏見の有明の月(Ⅴ532.05) ③兆候。兆し。前ぶれ。4 例

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21. 「河原院の長老浄光房といふ者に沙汰せさせよ」としきりに言ひなして、それにな りぬ。「変る気色あり」と告げたれども、急ぎも見えず。(Ⅰ228.14) 22. 如月の十日、宵のほどに、その気色出で来たれば、御所ざまも御心むつかしき折か ら、私もかかる思ひのほどなれば(Ⅰ251.02) 23. いとど慰む方なきに、里へだにえ出でぬに、今宵は東の御方参りたまふべき気色の 見ゆれば、夜さりの供御果つるほどに(Ⅰ279.05) 24. 身を変へたる心地せしほどに、八月二十日のころ、その気色ありしかども、先の度 までは、忍ぶとすれども言問ふ人もありしに(Ⅲ396.04) ④意向。意中。内意。考え。1 例 25. 「何事ならむ」と尋ね申せば、「その身をこれにて、『女院もてなして、露見の気 色ありて、御遊さまざまの御事どもあると聞くこそ、うらやましけれ。(Ⅲ380.11) ⑧いささか。ほんの少し。一部分。2 例 26. 暁の行ひに出づる尼どもの何としも思ひ分かぬが、あやしげなる衣に真袈裟などや うの物、気色ばかり引き掛けて、「晨朝下がりはべりぬ。(Ⅰ246.09) 27. 後に机を退けて、舞を奏す。気色ばかりうちそそく春の雨、糸帯びたるほどなるを (Ⅲ410.11) 2.5.2.みけしき ①(人の)表情。面もち。顔色。態度。そぶり。7 例 28. 御所へ申したれば、入らせおはしましたるに、いと弱げなる御気色なれば、御験者 近く召されて、御几帳ばかり隔てたり。(Ⅰ211.05) 29. 大御室御伺候ありしを、近く入れまゐらせて、「かなふまじき御気色に見えさせた まふ。いかがしはべるべき」と申されしかば(Ⅰ211.07) 30. 御灸いしいしとひしめきけれども、さしたる御験もなく、日々に重る御気色のみあ りとて、年も暮れぬ。(Ⅰ214.03) 31. いと取り分きたる物の音もなく、新院御対面ありて、かたみに御涙所せき御気色も、 「よそさへ露の」と申しぬべき心地ぞせし。(Ⅰ215.13) 32. さるほどに、十七日の朝より、御気色変るとて、ひしめく。御善知識には経海僧正、 また往生院の長老参りて(Ⅰ216.08) 33. 懺悔の言葉に道をまどはして、つひに教化の言葉にひるがへしたまふ御気色なくて、 文永九年二月十七日、酉の刻、御年五十三にて崩御なりぬ。(Ⅰ217.01) 34. 御直衣の御袖にて御涙を払はせおはしましし御気色、さこそと悲しく見まゐらせて、 やがて京極面より出でて御車の後に参るに(Ⅴ507.02) ③兆候。兆し。前ぶれ。2 例 35. 誰々も肝心をつぶしたるに、いかにとかや、「変る御気色見ゆる」とて、御所へ申 したれば、入らせおはしましたるに(Ⅰ211.03) 36. 玄応擁護の利益、空しからむや」と、揉み伏するに、すでにと見ゆる御気色あるに

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力を得て、いとど煙も立つほどなる。(Ⅰ211.15) ④意向。意中。内意。考え。14 例 37. 聞かせおはしまして、「よし、ただ寝させよ」と言ふ御気色なりけるほどに、起こ す人もなかりけり。(Ⅰ199.12) 38. 「いまだ幼きほどなれば、ただおしなべたる色にてありなむ。取り分き染めずとも」 と、院の御方御気色あり。(Ⅰ218.03) 39. 「ことさらなることもはべらず」と返事あり。隆顕の卿に、九献の式あるべき御気 色ある。夕方になりて、したためたるよし申し(Ⅰ271.05) 40. 「宇治の僧正の例あり。その家より生れて、いかがもだすべき。切るべき」よし、 僧正に御気色あり。固く辞退申す。仰せたびたびになる折(Ⅱ289.03) 41. わが身には不憫にもさぶらはねば、不孝せよの御気色ばしさぶらはば、仰せに従ひ さぶらふべくさぶらふ」よしを申さる。(Ⅱ291.14) 42. 今参りは女三の宮とて、一定上にこそあらめと思ひながら、御気色のうへはと思ひ て、まづ伏見殿へは御供に参りぬ。(Ⅱ320.04) 43. 白拍子少々申して、「立ち姿御覧ぜられむ」といふ御気色あり。「鼓打ちを用意せ ず」と申す。そのわたりにて鼓を尋ねて、善勝寺これを打つ。(Ⅱ341.13) 44. まづ、若菊舞ふ。その後、「姉を」と御気色あり。捨てて久しくなりぬるよし、た びたび辞退申ししを(Ⅱ341.15) 45. 「若菊をとく帰されたるが念なければ、明日御逗留ありて、今一度召さるべし」と 御気色あり。うけたまはりぬるよしにて後、御心ゆきて(Ⅱ343.13) 46. 『ゆらぐ玉の緒』と情けを残したまひしかば、すなはち一念の妄執を改めたりき。 この御気色、なほざりならぬことなり。心得てあひしらひ申せ。(Ⅲ354.11) 47. 新院の御前にさぶらふよし申されたれば、この御声にて参るべきよし御気色あれば、 新院は畏まりてさぶらひたまふを(Ⅲ375.12) 48. 「ひしひしとして還御なりぬる御あとも寂しきに、今日はこれにさぶらヘかし」と 大宮院の御気色あれば、この御所にさぶらふに、東二条院よ(Ⅲ380.07) 49. ただ泣くよりほかのことなくて、暮れゆけば、御所ざまの御気色なればこそかかる らめに、またさし出でむも恐れある心地すれども(Ⅲ400.06) 50. 思ひよらざりし御物語も今一度」など、こまやかに御気色あるよし申したりしを見 し心の内、我ながら以下ばかりとも分きがたくこそ。(Ⅳ472.09) ⑤機嫌。気分。1 例 51. 「さるべき御事にてはさぶらへども、御所ざま悪しざまなる御気色にて里住みしさ ぶらふに、何のうれしさにか(Ⅲ405.14) 2.5.3.ごきしょく ④意向。意中。内意。考え。1 例 52. 「竜頭鷁首の舟を造りて、水瓶を持たせて、春待つ宿の返しにてや」と御気色ある

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を、「舟、いしいしわづらはし」とて(Ⅱ315.03) 2.5.4.ごきそく ⑤機嫌。気分。1 例 53. などいふ凶害ども出で来て、いつしか女院の御方ざま、快からぬ御気色になりもて ゆくより、いとどものすさまじき心地しながら(Ⅰ209.11) 2.5.5.けしきづく ③兆候。兆し。前ぶれ。1 例 54. 如月も半ばになれば、大方の花もやうやう気色づきて、梅が香匂ふ風訪れたるも飽 かぬ心地して(Ⅲ351.09) 3.調査結果と考察 3.1.意味の定量 上記2.の調査結果を表1)として示す。表作成にあたり三角・小谷野2006の語義分類 を以下のように略称で示す註 3 ①(人の)表情。面もち。顔色。態度。そぶり。→①人の様子 ②(自然の)景色。情景。ありさま。眺め。→②自然の情景 ③兆候。兆し。前ぶれ。→③兆候 ④意向。意中。内意。考え。→④思考 ⑤機嫌。気分。→⑤感情 ⑥愛情。寵愛。→⑥愛情 ⑦事情。わけ。内情。→⑦事情 ⑧いささか。ほんの少し。一部分。→⑧些少 意味による分類の結果,『とはずがたり』において「気色」全54例は6種類の語義で現 れていることが分かる。①人の様子を表す意味での使用が18例(33.3%)と全体の三分の 一を占め,④思考を表す意味での使用が16例(29.6%)がそれに続く。以下,②自然の情 景の意味での使用が9例(16.7%),③兆候の意味での使用が7例(13.0%)⑤感情の意味で の使用が2例(3.7%),⑧些少の意味での使用が2例(3.7%)である。⑥愛情と⑦事情を表 す意味での使用はみられない。 「けしき」27例中では,①人の様子を表す意味での使用が11例(40.7%)と最も多く, 次いで②自然の情景を表す意味での使用が9例(33.3%),③兆候を表す意味での使用が4 ①人の様子 ②自然の情景 ③兆候 ④思考 ⑤感情 ⑧些少 合計 けしき 11 9 4 1 0 2 27 みけしき 7 0 2 14 1 0 24 ごきしょく 0 0 0 1 0 0 1 ごきそく 0 0 0 0 1 0 1 けしきづく 0 0 1 0 0 0 1 合計 18 9 7 16 2 2 54 表1)『とはずがたり』における気色の意味分類結果

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例(14.8%),⑧些少を表す意味での使用が2例(7.4%),④思考を表す意味での使用が1 例(3.7%)の順で,5種類の語義にわたって現れている。 「みけしき」24例中では,④思考を表す意味での使用が14例(58.3%)と六割近くを占 め,①人の様子を表す意味での使用が7例(29.1%),③兆候を表す意味での使用が2例 (8.3%),⑤感情を表す意味での使用が1例(4.2%)の順で,4種類の語義にわたって現れ ている。 「ごきしょく」1例は④思考を表す意味での使用,「ごきそく」1例は⑤感情を表す意味 での使用がみられる。「みけしき」と併せて接頭辞「御」が付属する語形26例中では,① 人の様子を表す意味での使用と④思考を表す意味での使用と⑤感情を表す意味での使用が 計24例(92.3%)で九割以上を占め,②自然の情景を表す意味での使用と⑧些少を表す意 味での使用がみられない。「けしき」の出現状況と比べて,接頭辞「御」が付属する語形 では,用例が人の外面と内面を表す語義に偏って出現しており,待遇表現としての接頭辞 「御」の性質に照らして妥当ではあるものの,特徴的な結果といえる。 「けしきづく」1例は③兆候を表す意味での使用がみられる。 3.2.出現箇所と意味の分布 2.3.で示した『とはずがたり』における「気色」の巻ごとの出現状況に,意味分類 の結果を重ね,出現箇所(用例番号,語義番号)の形で示す。 巻一 20 例 「気色」8 例:Ⅰ212.05(01,①),Ⅰ227.02(02,①),Ⅰ228.14(21,③),Ⅰ246.09(26, ⑧),Ⅰ247.11(03,①),Ⅰ248.07(12,②),Ⅰ251.02(22,③),Ⅰ279.05(23,③) 「御気色」12 例:Ⅰ199.12(37,④),Ⅰ209.11(53,⑤),Ⅰ211.03(35,③),Ⅰ211.05 (28,①),Ⅰ211.07(29,①),Ⅰ211.15(36,③),Ⅰ214.03(30,①),Ⅰ215.13(31, ①),Ⅰ216.08(32,①),Ⅰ217.01(33,①),Ⅰ218.03(38,④),Ⅰ271.05(39,④) 巻二 10 例 「気色」3 例:Ⅱ300.03(04,①),Ⅱ309.12(05,①),Ⅱ328.02(06,①) 「御気色」7例:Ⅱ289.03(40,④),Ⅱ291.14(41,④),Ⅱ315.03(52,④),Ⅱ320.04 (42,④),Ⅱ341.13(43,④),Ⅱ341.15(44,④),Ⅱ343.13(45,④) 巻三 14 例 「気色」8 例:Ⅲ372.07(13,②),Ⅲ379.04(14,②),Ⅲ380.11(25,④),Ⅲ389.04(15, ②),Ⅲ396.04(24,③),Ⅲ410.11(27,⑧),Ⅲ410.12(07,①),Ⅲ421.11(08,①) 「御気色」5 例:Ⅲ354.11(46,④),Ⅲ375.12(47,④),Ⅲ380.07(48,④),Ⅲ400.06 (49,④),Ⅲ405.14(51,⑤) 「気色づく」1 例:Ⅲ351.09(54,③) 巻四 6 例 「気色」5 例:Ⅳ433.09(16,②),Ⅳ448.07(17,②),Ⅳ454.09(09,①),Ⅳ465.12(10, ①),Ⅳ470.14(18,②)

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「御気色」1 例:Ⅳ472.09(50,④) 巻五 4 例 「気色」3 例:Ⅴ488.09(19,②),Ⅴ507.10(11,①),Ⅴ532.05(20,②) 「御気色」1 例:Ⅴ507.02(34,①) 上記をまとめ,表2)として掲げる。 全体の分布状況をみると,巻一および巻三で6種類の語義にわたって使用されている。 巻二・巻四・巻五では用例数が少ないこともあり,2-3種類の語義での使用にとどまる。 巻二では「気色」が①人の様子を表す意味での使用,「御気色」が④思考を表す意味での 使用のみであり,出現状況にやや偏りが見られる。語義では①人の様子のみが全巻を通じ て現れており,これは「気色」の用例での出現状況に拠るところが大きい。 3.3.原表記と意味の分布 2.4.で掲出した『とはずがたり』における「気色」の原表記の出現状況に,意味分 気色 巻一 巻二 巻三 巻四 巻五 合計 ① 3 3 2 2 1 11 ② 1 0 3 3 2 9 ③ 3 0 1 0 0 4 ④ 0 0 1 0 0 1 ⑤ 0 0 0 0 0 0 ⑧ 1 0 1 0 0 2 合計 8 3 8 5 3 27 御気色 巻一 巻二 巻三 巻四 巻五 合計 ① 6 0 0 0 1 7 ② 0 0 0 0 0 0 ③ 2 0 0 0 0 2 ④ 3 7 4 1 0 15 ⑤ 1 0 1 0 0 2 ⑧ 0 0 0 0 0 0 合計 12 7 5 1 1 26 気色づく 巻一 巻二 巻三 巻四 巻五 合計 ① 0 0 0 0 0 0 ② 0 0 0 0 0 0 ③ 0 0 1 0 0 1 ④ 0 0 0 0 0 0 ⑤ 0 0 0 0 0 0 ⑧ 0 0 0 0 0 0 合計 0 0 1 0 0 1 全体 巻一 巻二 巻三 巻四 巻五 合計 ① 9 3 2 2 2 18 ② 1 0 3 3 2 9 ③ 5 0 2 0 0 7 ④ 3 7 5 1 0 16 ⑤ 1 0 1 0 0 2 ⑧ 1 0 1 0 0 2 合計 20 10 14 6 4 54 表2)各巻での語義別出現状況

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類の結果を重ね,出現箇所(用例番号,語義番号)の形で示す。 「氣色」7 例:Ⅰ251.02(22,③),Ⅳ448.07(17,②),Ⅳ454.09(09,①),Ⅳ465.12 (10,①),Ⅳ470.14(18,②),Ⅴ488.09(19,②),Ⅴ507.10(11,①) 「けしき」20 例:Ⅰ212.05(01,①),Ⅰ227.02(02,①),Ⅰ228.14(28,③),Ⅰ 246.09(26,⑧),Ⅰ247.11(03,①),Ⅰ248.07(12,②),Ⅰ279.05(23,③), Ⅱ300.03 (04,①),Ⅱ309.12(05,①),Ⅱ328.02(06,①),Ⅲ372.07(13,②),Ⅲ379.04(14, ②),Ⅲ380.11(25,④),Ⅲ389.04(15,②),Ⅲ396.04(24,③),Ⅲ410.11(27,⑧), Ⅲ410.12(07,①),Ⅲ421.11(08,①), Ⅳ433.09(16,②),Ⅴ532.05(20,②) 「御氣色」10 例:Ⅰ199.12(37,④),Ⅰ211.03(35,③),Ⅰ216.08(32,①),Ⅱ 291.14(41,④),Ⅱ320.04(42,④),Ⅱ341.13(43,④),Ⅱ341.15(44,④),Ⅱ 343.13(45,④),Ⅳ472.09(50,④),Ⅴ507.02(34,①) 「御氣しき」4 例:Ⅰ214.03(30,①),Ⅰ215.13(31,①),Ⅰ218.03(38,④),Ⅰ 271.05(39,④) 「御けしき」10 例:Ⅰ211.05(28,①),Ⅰ211.07(29,①),Ⅰ211.15(36,③),Ⅰ 217.01(33,①),Ⅱ289.03(40,④),Ⅲ354.11(46,④),Ⅲ375.12(47,④),Ⅲ 380.07(48,④),Ⅲ400.06(49,④),Ⅲ405.14(51,⑤) 「御きしょく」1 例:Ⅱ315.03(52,④) 「御きそく」1 例:Ⅰ209.11(53,⑤) 「けしきつく」1 例:Ⅲ351.09(54,③) 上記をまとめ,表3)として掲げる。 表3)を見る限り,少なくとも「気色」については,筆記者が『とはずがたり』本文の 書写に際して表記ごとに固有の語義を担わせて書き分けを行ったというような傾向は見出 し難い。ただし,「氣色」3種類に対して「けしき」5種類,「御氣色」3種類に対して 「御けしき」4種類というように,「気色」部分を漢字表記した用例よりもひらがな表記 した用例の方が多くの語義にわたることは指摘できる。また,⑧些少を表す意味での使用 は「けしき」の用例のみで見られる。後半(巻四と巻五)に偏って出現する「氣色」,巻 一にのみ出現する「御氣しき」については,特に固有の語義との結び付きは見られない。 4.研究史における『とはずがたり』の用例の位置付け 4.1.「気色」研究の現状 氣色 けしき 御氣色 御氣しき 御けしき 御きしょく 御きそく けしきつく 合計 ① 3 8 2 2 3 0 0 0 18 ② 3 6 0 0 0 0 0 0 9 ③ 1 3 1 0 1 0 0 1 7 ④ 0 1 7 2 5 1 0 0 16 ⑤ 0 0 0 0 1 0 1 0 2 ⑧ 0 2 0 0 0 0 0 0 2 合計 7 20 10 4 10 1 1 1 54 表3)原表記ごとの語義別出現状況

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従来の研究によれば,漢語「気色」の呉音読みによる語「けしき」は,自然の有様や人 の様子や気持ちを表す語として平安時代初期から和文中に使用され,和語化が進んだとさ れる。その特徴としては,顔色や言動といった一時的な外面を表すことに重心があるとさ れ,鎌倉時代以降に人の感情や思考など内面を表す意味を漢音読みによる語「きしょく」 とその直音化による語「きそく」に譲り,もっぱら自然の有様を表すようになり,近世期 に至って「景色」の表記があてられるようになったとされる。また平安末期より「きそく」 の使用がみられ,「きしょく」の出現は鎌倉時代以降とやや遅れるものの多用され,それ に伴い「きそく」の使用が徐々に減ったとみられている註 4 近年,辛島2004に始まる一連の研究が辛島2010bとしてまとまり,「けしき」に関する 先行研究と問題点の整理がなされた。辛島2010bでは10世紀頃までの「けしき」の用法の 分析に加えて,古記録にみられる定型的文言の中で「気色」が「仰」や「仰旨」と通用し て具体的な命令内容を示す意味で使用された例から「気色」の意味・用法の変化の一つの 契機が示されている。 〈けしき〉が〈内面や隠された状態の表れ〉から〈内面そのもの(あるいは内面・外 面が一体化したもの)〉へと変化した初期の状況を示す例である。この用法が、奉書 の定型的文言での使用を経て、以後、どれほどの社会的な広がりを持ったかは、今後 の調査で明らかにすべき課題であるが、政治・文化の中枢部における用語の影響力は おそらく弱くはなかったと推察される。(辛島2010b: p.174,l.16-p.175,l.3) 4.2.『とはずがたり』の「気色」の用例 3.に示した通り『とはずがたり』における「気色」の用例は6種類の語義にわたって 出現している。「きしょく」「きそく」の用例もみられるが,全体の使用傾向としては平 安時代初期からの呉音読みの語である「けしき」の特徴を残したものと位置づけられる。 「けしき」は,①人の様子を表す意味,②自然の情景を表す意味,③兆候を表す意味, ⑧些少を表す意味,④思考を表す意味の順で多く,5種類の語義にわたって現れており, 自然の有様を意味する用例だけに特化した語とはいえない。 「みけしき」は,④思考を表す意味,①人の様子を表す意味,③兆候を表す意味,⑤感 情を表す意味の順で,4種類の語義にわたって現れており,むしろ人の様子や感情を意味 する用例が多い。 「ごきしょく」は④思考を表す意味,「ごきそく」は⑤感情を表す意味で出現し,人の 感情や思考など内面を表す意味での使用傾向が確認される。ただし1例ずつの出現であり, 読みの問題を考慮して「御氣色」を除いた「御氣しき」と「御けしき」の表記例から抽出 した④思考を表す意味7例と⑤感情を表す意味1例の合計8例と比較しても,少ない。 動詞「けしきづく」は③兆候を表す意味で出現している。 5.おわりに 以上,『とはずがたり』における「気色」の全用例を抽出し意味分類の結果と考察を示

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した。以下に要約する。 『とはずがたり』に「気色」は54例みられ,その内訳は「気色」27例,「御気色」26例, 「気色づく」1例である。出現箇所は,前半(巻一から巻三)44例(81.5%),後半(巻四 から巻五)10例(18.5%)と前半に偏る。三角・小町谷2006の語義に拠る分類の結果,6種 類の語義で現れていることが分かり,すなわち①人の様子18例(33.3%),④思考16例 (29.6%),②自然の情景9例(16.7%),③兆候7例(13.0%)⑤感情2例(3.7%),⑧些少 2例(3.7%)である。⑥愛情と⑦事情での使用はみられない。語義が人や自然の外形的な 表象と人の内面的な表象の双方にわたっていることから,『とはずがたり』全体では平安 時代初期からの呉音読みの語である「けしき」の特徴を残した使用傾向と考えられる。 「けしき」の出現状況と比べて,接頭辞「御」が付属する語形「みけしき」「ごきしょく」 「ごきそく」26例中では,①人の様子と④思考と⑤感情が計24例(92.3%)で九割以上を 占め,用例が人の外形と内面を表す語義に偏って出現する。比較的に用例数の多い巻一 (20例,37.0%)と巻三(14例,25.9%)では,6種類すべての意味での使用が見られ,逆 に巻二(10例,18.5%)では「気色」が①人の様子のみ,「御気色」が④思考のみ,と出 現状況にやや偏りが見られる。また,④思考で出現する「御きしょく」1例と⑤感情で出 現する「御きそく」1例および⑧些少で出現する「けしき」2例註 5以外では,「氣色」と 「けしき」や「御氣色」「御氣しき」「御けしき」の表記ごとに固有の語義を担わせて書 き分けを行ったというような傾向は見出し難い。 『とはずがたり』の語法の研究としてまとまったものでは,岩井1983が早い。近年の研 究で『とはずがたり』の語彙を対象にしたものでは,異なりで253語の形容詞を抽出し動 詞・名詞との結びつき様相を示した岡田1998,異なりで734語の複合動詞を収集し中世王 朝物語『あきぎり』の複合動詞の様相と比較検討した岡野2000,異なりで1378語におよぶ 動詞のうち「時」の助動詞と結びつきのみられる592語2492例を扱った岡田2005がある。 また個別の語の意味や用法を対象としたものとして,副助詞「バカリ」119例について些 少性・局限性を表す〈単限定〉の用法がほぼ全般的に守られていることを示した田中 2005a,副助詞「ノミ」101例について集中的専一性の意義が「定型的表現を除くほとんど 総ての用例において」註 6認められ「バカリ」との役割分担が保たれていることを示した 田中2005b,動詞「為(す)」697例について意義の偏りの具体例を数値で示した石井2010 註 7,動詞「聞く」103例について検討し「訊く。質問する」の意味を単独では充分に持ち 得ていなかった旨を指摘した磯部2012,「言ふ」442例について用法の分類を試みた入江 2013がある。 本稿は,石井2010や入江2013の驥尾に付し,多義多用法の語についてその意義・用法の 出現の偏りを明らかにすべく企図されたものである。『とはずがたり』における「気色」 には意義の出現に偏りがみられ,呉音読みの語「けしき」の特徴を保つことを示した。

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【註】 1 『とはずがたり』伝本は内庁書陵部所蔵の写本5冊のみが孤本として知られる。成立は1307徳 治二年頃と推定されている。久保田1999附録の「とはずがたり年表」に拠れば,記事は1271文永 八年から1306徳治元年に及び,これは作者が数えで14歳の正月から49歳の秋までの期間にあたる という。 2 三角・小町谷2006,p.486,中段-下段参照。なお,三角・小町谷2006には「けしきづく」 (p.487,上段-中段)および「きしょく」(p.413,下段-p.414,上段)が立項されているが,本稿 では全体の傾向をみるため,「けしき」の項の8種の語義分類により整理する。 3 三角・小町谷2006では,最重要語については語義の解説にあたって赤線の囲みを設けており, ①語義が多いものは、《 》で概念を示して語義を一覧できるように示した。 (三角・小町谷 2006,p.6 下段,ll.7-8) という措置が取られている。ここでの語義分類の略称は,p.486 中段の「け-しき【気色】」の 語義概念の記述を参考にしたものである。 4 『日本国語大辞典』ジャパンナレッジ版(www.japanknowledge.com/body/display 参照。本稿 への引用箇所は 2013.02.25,15:07 現在のデータに拠る)では「け-しき」と「き-しょく」を立 項して以下のような語誌を載せている。 「け-しき【気色】」の項,「語誌」 (1)「気色」の呉音読みによる語。和文中では、はやく平安初期から用いられているが、 自然界の有様や人の様子や気持を表わす語として和語化していった。 (2)類義の「けはひ(けわい)」が雰囲気によって感じられる心情や品性といった内面的 なものの現われを表わすことに傾くのに対し、「けしき」は顔色や言動といった一時的な 外面を表わすことにその重心がある。 (3)鎌倉時代以降、人の気分や気持を表わす意は漢音読みの「きそく」「きしょく」に譲 り、「けしき」は現在のようにもっぱら自然界の様子を表わすようになった。それによっ て表記も近世になって「景色」があてられるようになる。→けしき(景色)。 「き-しょく【気色】」の項,「語誌」 (1)「気色」は、呉音「けしき」と、漢音「きしょく」及びその直音化の「きそく」の三と おりの読みがなされる。「きそく」は平安末期以降用いられ、さらにやや遅れて「きしょ く」が中世以降盛んに使用されたが、「きしょく」の多用に伴い、「きそく」は徐々に用 いられなくなっていった。 (2)中世以降、〔二〕の用法で「けしき」と「きしょく」(「きそく」は「きしょく」よ りさらに意味が限定される)が併用されるが、「けしき」は中古の仮名文学に多用された ため、和語のように意識され、外面から観察される心の様子について用いられる傾向があ るのに対し、「きしょく」は漢語的な性質をもち、人の内面の状態そのものを表わすこと が多いというおおよその違いがある。 5 ⑧些少の語義の「けしき」2 例はともに副助詞「ばかり」と結びつき,「けしきばかり」の形

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で出現している。 26. 暁の行ひに出づる尼どもの何としも思ひ分かぬが、あやしげなる衣に真袈裟などや うの物、気色ばかり引き掛けて、「晨朝下がりはべりぬ。(Ⅰ246.09) 27. 後に机を退けて、舞を奏す。気色ばかりうちそそく春の雨、糸帯びたるほどなるを (Ⅲ410.11) 田中 2005a では,ここでの副助詞「ばかり」を限定用法の中でも機会や時点を狭く限って 〈単限定〉はたらくものとしている。 こうしてこれらのバカリは、程度表現化したものを含みつつも、基本的には、局面を狭 く限って〈単限定〉にはたらくものと見ることができるのではないかと思われる。 (田中 2005a: p.153 下段,l.21-22) 6 田中 2005b,p.135,ll.5-6 参照。 7 石井 2010 は発表資料であり広く巷間に流布したものではないため,一部を以下に引用する。 ともかくも,まず,「す」の全体約 700 件を見ます。表1として整理し,この表がこの報 告の要約・結論となります。結論というのは,「す」は,本動詞・実質動詞としての用法が 当然にあり,しかしそれとしての出現量は少なく,動詞ないし名詞等に動詞性を与える形式 的用法でよく出現する,ということです。判っていることであってつまらないと思われるか もしれませんが,感覚的な多い少ないでなく,数値として具体的な一例を示したところがこ の報告の趣旨です。(石井 2010:p.1,ll.10-15) この報告は多義語における意義の出現の偏りを明らかにしようとする研究の一端を担いま す。多義語の意義が対等に現れるのではなく,よく現れるものがあり,あまり現れないもの もあると,われわれは直感的に知っています。辞典で多義語の意義を排列するのに,原義か ら転義へ展開させる方法のほかに,多用するものを初めに置く方法があり,その方法はこの 直感によるものでしょう。ただ,われわれは,意義の出現の偏りかたがどのようなものであ る か ,詳 細を 知っ て いま せん 。こ の報 告 は, それ に着 手す る もの です 。( 石 井 2010:p.1,ll.20-25) 【参考文献】 石井 久雄 2010「『とはずがたり』における動詞「す(為)」の意味・用法の定量分析」語彙研究 会 2010 年大会(2010 年 9 月 4 日,愛知学院 楠本校地 法人本部会議室)口頭発表資料。 磯部 佳宏 2012「『とはずがたり』における「聞く」の意味用法」『山口大学文学会誌』62,pp.19-29。 入江さやか 2013「『とはずがたり』における「言ふ」の用法」とはずがたり辞典研究会(2013 年 1 月 12 日,同志社大学今出川図書館 地下 1 階グループ学習室 2)口頭発表資料。 岩井 良雄 1983『とはずがたり語法考』笠間書院。 岡田袈裟男 1998「『とはずがたり』の形容動詞語彙について―基礎の部分をなすいくつかのことが ら―」『立正大学國語國文』36,pp.横 16-28。

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―――――2005「『とはずがたり』動詞と「時」助動詞の結びつき(1)―使用動詞の形態論的基礎 調査の中で―」『立正大学國語國文』43,pp.横 1-22。 岡野 幸夫 2000「『とはずがたり』の複合動詞―数量的概観―」『鎌倉時代語研究』23,pp.741-755。 辛島 美絵 2004「「けしき」をめぐって―「けしき」の研究史と問題のありか―」『九州産業大学 国際文化学部紀要』28,pp.1-24。 ―――――2006「「けしき」をめぐって(二)―古代の「気色」の特色-」筑紫国語談話会 2006,pp.297-313。 ―――――2007a「古代の「けしき」―平安前期までの〈気色〉の特色―」『国語と国文学』84-4,pp.55-69。 ―――――2007b「古代の「けしき」の用法―情報としての「けしき」と鑑賞する「けしき」―」 『国学院雑誌』108-11,pp.61-72。 ―――――2008「古文書の〈けしき〉―10 世紀以前の古文書に見られる「気色」の特色―」『九州 産業大学国際文化学部紀要』40,pp.15-34。 ―――――2010a「「気色」と「仰(旨)」―古記録・古文書等に見る〈けしき〉の用法の展開―」 月本・藤井・肥爪 2010,pp.293-315。 ―――――2010b『古代の〈けしき〉の研究―古文書の資料性と語の用法―』青文堂。 久保田 淳 1999『建礼門院右京大夫集 とはずがたり 新編日本古典文学全集 47』小学館。 田中 敏生 2005a「『とはずがたり』における副助詞バカリの諸相―限定用法を中心に―」『四国大 学紀要 A人文・社会科学編』23,pp.149-160。 ―――――2005b「『とはずがたり』における副助詞ノミ―集中的専一性の意義の確認―」『四国大 学紀要 A人文・社会科学編』24,pp.135-145。 筑紫国語談話会 2006『筑紫国語学論叢Ⅱ―日本語史と方言―』風間書房。 月本雅幸・藤井俊博・肥爪周二 2010『古典研究の焦点 武蔵野書院創立 90 周年記念論集』武蔵野書院。 辻村 敏樹 1992a『とはずがたり総索引 本文篇 笠間索引叢刊 98』笠間書院。 ―――――1992b『とはずがたり総索引 自立語篇 笠間索引叢刊 99』笠間書院。 西沢 正二 1985a『とはずがたり 上 勉誠社文庫 134』勉誠社。 ―――――1985b『とはずがたり 下 勉誠社文庫 135』勉誠社。 日本国語大辞典第二版編集委員会 2000『日本国語大辞典 第2版』小学館。 三角洋一・小町谷照彦 2006『最新全訳古語辞典』東京書籍。

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【附記】

本稿は以下の科学研究費補助金による研究に基づく研究成果の一部である。

参照

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