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Microsoft Word - Fund News 海外不動産_v3.2 体裁済みv2

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2014 年 1 月

はじめに

近年、日本の大手不動産会社などによる欧米主要都市での不動産取得やアジアを中心とした新興国における開発案 件への関与、ファンド・オブ・ファンドを通じた日本の投資家による海外リートへの投資、J リートや私募ファンドを通じた海 外投資家による国内不動産への投資など不動産マーケットのグローバル化が進展しています。諸外国のリートでは、自 国外の不動産へ投資を行っているものも多数あります。わが国においても、2008 年に必要な環境整備が行われ、制度 上、J リートによる海外不動産への投資は可能となっていますが、これまで投資事例はありませんでした。 2013 年 11 月に大手小売りグループをスポンサーとする投資法人が東証に上場しましたが、J リートとして初めて海外 不動産の組入れを予定しています。加えて、2013 年度の投信法改正により J リートによる海外不動産取得の促進が期待 されています。そこで、今回は、J リートによる海外不動産投資について、これまでの動向、投信法改正および会計・税務 上の取扱いの概要について解説します。

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リートによる海外不動産投資に関するこれまでの動向

時 期 動 向 2008年1月 国土交通省が「海外投資不動産鑑定評価ガイドライン」を公表 2008年5月 東証の上場規程改正により、海外不動産への投資制約が解除 2012年12月 金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」が最終報告を 公表し、海外不動産取得促進のため、投信法による50%以上議決権保有制限の見直しの方向 性が示される 2013年6月 投信法改正により、特別目的会社を通じた海外不動産の間接取得(50%以上)が可能となる 従前より、所轄官庁の審議会などでJリートによる海外不動産投資の実現に向けた提言が行われてきました。Jリートに よる海外投資が可能となることにより、日本企業が海外で保有する不動産をJリートが保有・運営できるようになり、デベ ロッパーのみならず、製造業・小売業・物流業といった日本企業のグローバル展開を支えることが可能となります。また、 投資商品の多様化、新興国の成長の取り込みによりJリート市場の魅力を高め、Jリート市場の国際競争力の強化につな がることが期待されています。 J リートによる海外不動産投資の実現に向けた環境整備のために、国土交通省は、2007 年に海外不動産の鑑定評価 のあり方に関するワーキング・グループを設置し検討を開始し、その後、2008 年 1 月に海外投資不動産鑑定評価ガイド ラインを公表しました。これを受け、東証の上場規程の改正が行われ、J リートによる海外不動産投資を行うことが制度上 可能となりました。Jリートが海外不動産への投資を行う場合、現地での外資による不動産保有規制やリスクを限定するな どの必要性から、現地設立の特別目的会社などを通じて不動産を保有するという間接所有スキームが検討されました。 この点改正前の投信法では、他法人の株式の取得について、50%以上の議決権保有に制約があり、また、税制上の導 管性要件にも類似の規制が存在するため、J リート以外に持分を 50%超保有してくれるパートナーを探す必要があるな ど、事実上、J リートによる海外不動産の取得が困難な状況が続いていました。2013 年度の投信法改正により、海外不

ファンドニュース

Jリートの多様化(2)~Jリートによる海外不動産投資について

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動産取得を目的とする現地設立の特別目的会社の株式を取得するような場合には、この 50%以上の議決権保有制限が 撤廃され、税制上もこれに対応する形で改正が行われました。

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リートによる海外不動産投資に関連する改正等の概要

(1) 海外投資不動産鑑定評価ガイドライン J リートによる海外不動産投資が東証の上場規程で禁止されていた背景として、海外不動産の標準的な鑑定評価 手法が確立していないことが、一つの要因として挙げられていました。このような海外不動産投資に向けた阻害要因 に対処し、海外不動産の鑑定評価についての標準的手法を示すために海外投資不動産鑑定評価ガイドライン が公表されました。このガイドラインは、日本の不動産鑑定士が海外不動産の鑑定評価を行う場合に、投資家保護 および鑑定評価の信頼性の向上の観点から適正な鑑定評価が行われるよう、海外現地の不動産鑑定人との連携・ 共同作業のあり方、鑑定評価の手法などを示しています。 海外不動産の鑑定評価においては、現地の市場動向などに精通している現地の不動産鑑定人を補助員・共同 作業員として行うことが合理的かつ現実的であるとし、連携・共同作業の方式として以下の2つの方式を示していま す。 ① 現地鑑定補助方式 現地鑑定人に、鑑定評価を行うために必要となる基礎資料などの収集・提供その他の不動産鑑定士が行う鑑定 評価の補助作業を依頼し、不動産鑑定士が現地鑑定補助作業にかかわる役務の提供を受けて鑑定評価を行う方式 ② 現地鑑定検証方式 現地鑑定人に、鑑定評価の報告を依頼し、現地鑑定人が行った鑑定評価を不動産鑑定士が検証することにより 鑑定評価を行う方法 現地鑑定人との連携・共同作業の役割分担は、以下の図表1のとおりですが、現地鑑定検証方式であっても、海 外不動産に対する鑑定評価全体に対する責任は、日本の不動産鑑定業者が負います。また、現地基礎資料など、 または現地鑑定報告書の検証を行い、その結果、日本の不動産鑑定評価基準に照らして必要性があるときは、 追加・補完調査(たとえば、土壌汚染、アスベストなど環境関連の調査など)が必要となります。 図表1 現地鑑定人との連携・共同作業の役割分担 現地鑑定補助方式 現地鑑定検証方式 不動産鑑定業者 ① 現地鑑定人の選任 ② 鑑定評価書全体(品質管理) ① 現地鑑定人の選任 ② 鑑定評価書全体(品質管理) 不動産鑑定士 ① 現地基礎資料等の検証 ② 鑑定評価書全体 ① 現地鑑定評価書の検証 ② 現地鑑定評価書の鑑定評価検証報告書 ③ 現地鑑定評価書の日本語による翻訳文 現地鑑定人 ① 現地基礎資料等 ① 現地鑑定評価書 (出所:海外投資不動産鑑定評価ガイドライン)

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(2) 東証の上場規程の改正 続いて 2008 年 5 月に東証の上場規程の改正が行われ、海外不動産が J リートの投資対象に追加されるとともに 海外不動産投資に関連する情報開示の規制も整備されました。 図表 2 東証上場規程の主な改正内容 項 目 改正内容 対象不動産の範囲 の拡大 海外における不動産等及び不動産関連資産をリートの保有資産となる不動産等及 び不動産関連資産の対象にそれぞれ含められた。 運用体制等に関する 報告書記載事項の 追加 海外不動産への投資を行うリートは、「不動産投資信託証券の発行者等の運用体制 等に関する報告書」において、海外不動産への投資姿勢(投資を行う理由含む)、海 外不動産に投資する際の指針(投資する地域、投資する割合、投資の形態等)、海外 不動産への投資に対する運用体制及びリスク管理態勢並びに海外不動産に係る情 報の適時開示体制等について記載。 リートの適時開示に 係る軽微基準の追加 規約または投資信託約款の変更を決定した場合及び金融商品取引法に基づき内閣 総理大臣等への届出を行うことを決定した場合の適時開示について、軽微基準が設 けられた。 (出所:東証 HP を基に PwC 作成) (3) J リートによる海外不動産投資における情報開示 国土交通省主催の「投資家に信頼される不動産投資市場確立フォーラム」において、J リートによる海外不動産投 資の解禁に向けて、海外不動産投資における情報開示の基本的なあり方、投資スキーム、課題などが検討されまし た。2008 年 6 月に公表された報告書では、海外不動産の開示について、金商法、投信法、東証の上場規程による 開示規制を踏まえて、実務上の運用の中で個別に検討がなされるべきであり、海外不動産についても国内不動産と 同様の項目が当然に開示されること、また、J リートによる海外不動産投資に関して、投資家の投資判断の要素とし て考えられる特有の事由として、以下のようなものが考えられ、原則、これらはいずれも現行の開示規制の枠内で関 連する項目にて開示するという方向性が示されました。  海外不動産の権利関係  海外不動産への投資に関する仕組みや契約の概要  海外不動産の所在地国における不動産市場の動向に関する情報(統計資料等)  海外不動産にかかわる鑑定評価の概要(日本における鑑定評価制度との相違)  海外不動産投資に関する投資法人(資産運用会社)の運用・管理にかかわる方針、体制およびその能力  海外不動産投資にかかわる会計・税務上の取扱い  為替リスク、当該不動産の所在地国の政治・経済・市場リスク

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投信法改正による海外不動産の間接投資スキームの概要

図表 3 J リートによる海外不動産の間接投資のスキーム図 (出所:「投資家に信頼される不動産投資市場確立フォーラム」とりまとめを基に PwC 作成(J リートによる海外不動産の間接投資のス キームをイメージしやすくするために便宜上作成したものであり、実際このようなスキームを構築できるか法的側面などから詳細に確認 したものではありません。)) 2013 年 6 月の投信法改正により、J リートが、海外不動産の所在する国の法令の規定その他の制限により、その取得 などができない場合において、もっぱらこれらの取引を行うことを目的とする法人の発行する株式を取得するときは、50% 以上の議決権保有制限の対象外となりました。詳細規定については政令公布を待つ必要がありますが、投信法改正お よびそれに対応する税制改正1によって、J リートが海外不動産へ投資を行う場合、50%以上の投資持分を有したうえで、 LPS2などの組合や米国リートなどの法人を経由して行うことが可能となります。以下において J リートが海外不動産投資 を行う場合に、想定される主な会計、税務上の取扱いの概要を解説します。 (1) 会計上の取扱い J リートが、組合に対する出資または法人株式を通じて間接的に海外不動産へ投資を行った場合、Jリートの個別 財務諸表上、これらの投資に関する評価および損益の認識は、金融商品会計基準に準拠して会計処理されるため、 直接不動産を保有する場合と異なります。また、金融商品会計基準における有価証券の保有目的区分や投資ス キームを組合とするか会社とするかによっても、会計上、投資の評価、損益の認識方法が異なりますのでスキーム組 成時には留意が必要です。現行制度上、J リートについては、投信法および金商法において連結計算書類および 連結財務諸表の作成が要求されていないと解されますが3、今後、これらの取扱いが変更される可能性もあります。 海外不動産投資に関連する取引は、原則として外貨建てで行われ、それらについて換算替えが行われます。その ため、換算が損益に与える影響や税会不一致が生ずるリスクの有無の確認、さらに為替リスクについてデリバティブ などによりヘッジを行う場合には、会計上、ヘッジ会計の適用について検討が必要となります。 (2) 税務上の取扱い LPS などの組合を通じたスキームの場合、LPS は、一般的に導管体として機能するので現地国で外国法人税は 課税されず、LPS の構成員である J リートに対して現地国で外国法人税が課税されます。 法人を通じたスキームの場合、現地国の法人に対して、現地国で外国法人税が課税されます。ただし、現地国の 法人が米国リートなどであって一定の要件を満たす場合、現地国において法人税が課税されません。また、現地国 の法人から J リートへの配当に対して、一般的に、現地国において源泉税が課されます。 1 投資法人に係る課税の特例について、投資法人が海外不動産の取得等のみを目的とした海外の特別目的会社の株式等を取得した場合には、そ の取得が実質的にその投資法人が海外にある不動産を取得する場合と同視できるものとして一定の要件を満たす場合に限り、他の法人の発行済株 式又は出資の総数又は総額の 50%以上を有していないこととする要件を適用しないこととされました。 2リミテッド・パートナーシップ(LPS)とは、一般的に、無限責任を保持し、業務執行権を有する一人以上のジェネラル・パートナー(GP) と有限責任を保持し、業務執行権を有しない一人以上のリミテッド・パートナー(LP)からなる共同事業体です。 3投信法において連結計算書類の作成義務が規定されていないこと、金商法におけるJ リートの開示を規定する特定有価証券の内容等の 開示に関する内閣府令においても連結財務諸表の作成様式が規定されていないことから、連結計算書類及び連結財務諸表の開示について 現状、要求されていないと解されています。

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組合スキーム、法人スキームいずれの場合でも、J リートが支払った外国税金に関して控除制度を適用することが 出来ます。通常の会社の場合、会社が負担した外国税金について、課税所得および税額から控除限度額を算定し、 会社の納付税額から控除されます。しかしながら、J リートの場合、2008 年度税制改正により、投資家に支払う配当 金にかかわる源泉税額から、外国税金(配当に関する現地国における源泉税含む)が控除されることになりました。こ の税務上の取扱いに関し、控除額の計算などを含めた源泉徴収のオペレーションの実務上の適用について検討が 必要となります。

おわりに

J リートによる海外不動産への投資では、対象不動産のディーデリジェンス、現地の規制、法律、税制の把握、資産運 用会社における海外不動産投資に関連する運用体制の構築や上述のような J リートの会計、税務処理の事前検討、海 外不動産に関連するディスクロージャーへの対応など留意すべき事項が多岐にわたることが予測されます。その際、日 本の外部専門家との連携はもちろんですが、現地専門家(鑑定、法務、税務、会計等)との連携が重要なポイントになる と考えます。 これまでの一連の制度改正により、Jリートによる海外不動産の投資について基本的な枠組みが整いましたが、2013 年 度投信法改正による特別目的会社を通じた海外不動産取得に関する詳細内容については、政令公布を待つ必要があ ります。今後、政令公布により明らかになる制度が、実務上、有効に運用されるものとなることが期待されます。 文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) マネージャー 鈴木 伸也 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) お問い合わせフォーム 本冊子は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本冊子の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本冊子に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本冊子に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされ たり、起こされなかったことによって発生した結果について、あらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認められる範 囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。

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