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包括型を裏付け資産とする証券化案件の分析手法については 2010 年 9 月 29 日付 格付け規準 ストラクチャード ファイナン格付け規準 ABS: 国内クレジットカード 消費者ローン債権証券化の格付け手法と想定 を参照されたい また ローン提携販売契約や割賦販売契約にも原則として 同様の考え方お

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--- 【編集注】本格付け規準は、2014 年 10 月 9 日付「Criteria | Structured Finance | ABS: Global Methodology And Assumptions For Assessing The Credit Quality Of Securitized Consumer Receivables」により、取って代わら れています。 --- 【編集注】 本稿において、定期的な格付け規準見直しプロセスの一環として、日本におけるショッピング・ロー ン ABS の格付け手法がアップデートされています。本稿は、2007 年 10 月 15 日付「日本のストラクチャード・フ ァイナンス|格付け規準:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定」について内容が古くなった部 分を削除し、また一部の箇所を明確にしたものです。同格付け規準は、本稿により取って代わられています。 1. 本稿は、2007 年 10 月 15 日付「日本のストラクチャード・ファイナンス|格付け規準:シ ョッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定」について、内容が古くなった部分を 削除し、また一部の箇所を明確にしたものである。2009 年の法改正に関する S&P の考え方 については、2009 年 12 月 1 日付「改正割販法施行と証券化商品の信用力分析――ショッピ ング・クレジットおよびクレジットカード債権を裏付けとする ABS 案件」を参照されたい。

ショッピング・ローンの種類

2. ショッピング・ローンは、貸し手と借り手の契約形態によって、1)信用購入あっせん契約、 2)ローン提携販売契約(提携ローン契約)、3)割賦販売契約(自社割賦契約)――の 3 種類 に分類される。さらに、利用形態の上からは、「包括信用購入あっせん」(以下「包括型」)と 「個別信用購入あっせん」(以下「個別型」)に大別される*1(段落 7 参照)。 *1:包括型の場合、クレジットカードに割賦の利用が許容されていれば、加盟店にカードを呈示し、返済方法を割 賦にすると伝えて分割払いで購入することが可能である。改正割販法では、個別のローン提携販売は個別型に 含まれる。 3. スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」)は、本稿では特 に信販会社(クレジット事業者)がオリジネーターを務めているショッピング・ローン債権、 すなわち「個別信用購入あっせん取引」に主眼を置いている。クレジットカードを利用する

スタンダード&プアーズ

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2013 年 11 月 7 日

【旧版】格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:

ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定

アナリスト: 西川弘之、東京 電話 03-4550-8751 山本武成、東京 電話 03-4550-8656 クライテリア・オフィサー: 山岡隆正、東京 電話 03-4550-8719 「スタンダード&プアーズ・レ ー テ ィ ン グ ズ ・ サ ー ビ シ ズ (Standard & Poor’s Ratings Services)」が発行した本リポ ートに記載されている格付け 規準は、スタンダード&プア ーズ・レーティング・ジャパン 株式会社において採用されて おります。 また、本格付け規準は、日本 スタンダード&プアーズ株式 会社においても採用されてお ります。

The criteria in this report issued by “Standard & Poor’s Rating Services” is adopted by Standard & Poor’s Ratings Japan K.K. This criteria is also adopted by Nippon Standard & Poor’s K.K.

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包括型を裏付け資産とする証券化案件の分析手法については、2010 年 9 月 29 日付「格付け 規準|ストラクチャード・ファイナン格付け規準|ABS:国内クレジットカード・消費者ロ ーン債権証券化の格付け手法と想定」を参照されたい。また、ローン提携販売契約や割賦販 売契約にも原則として、同様の考え方およびリスク分析手法が準用可能である。自動車購入 を目的としたショッピング・ローンである「オートローン債権」は、資産担保証券(ABS) 案件の主要な裏付け資産カテゴリーの 1 つであることから、独立した裏付け資産の種類とし て、本稿の対象外とする。オートローン ABS 案件の分析手法については、2007 年 11 月 26 日付「日本のストラクチャード・ファイナンス 格付け規準:オートローン ABS の格付け分 析の手法と想定」を参照されたい。

ショッピング・ローン債権の特徴

4. ショッピング・ローン債権の一般的な特徴は、以下のとおりである。 ショッピング・ローンの商品性 5. ショッピング・ローンは、個人向けローン商品として、以下のような商品性を有する。 資金使途 6. 家具、家電、自動車など高額な耐久消費財や、呉服・貴金属など高級嗜好品の購入目的の 利用が多い。このほかに、英会話教室、エステティックサロンなど、長期間の役務提供を受 けることで一定の効果に見合う対価を支払う、いわゆる「継続的役務取引」にも利用される。 ショッピング・ローンを利用して購入される物品および役務取引は、大部分が割賦販売法の 対象となる(段落 52-53 参照)。 貸し付け方式 7. ショッピング・ローンには、1)商品購入時に販売店(加盟店)を通じてクレジット申込書 に記入し、審査で承認されれば購入が可能な「個別型」、2)商品ごとの審査はないが、クレ ジットカードを所持できるか否かの審査があり、クレジットカードを所持していれば利用で きる「包括型」――の 2 種類がある。 8. 本稿で主眼を置いている個別型の個別信用購入あっせん取引の仕組みは、図 1 のとおりで ある。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 2

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9. 「個別信用購入あっせん取引」とは、顧客が信販会社と契約している加盟店で商品等を購 入する際、信販会社が顧客に代わって加盟店に代金の支払い(立て替え払い)を行い、後日、 顧客が代金を分割で信販会社に支払いを行う取引である。 10. 個別信用購入あっせん取引は加盟店にとって、購入資金の乏しい顧客に対する販売促進手 段となっている。 11. ローン提携販売契約(提携ローン契約)では、顧客が信販会社と金銭消費貸借契約を締結し て、加盟店から購入する商品等の代金を借り入れる。顧客が信販会社に分割返済することを条 件に、加盟店は顧客と、売買契約および顧客の債務を保証する保証委託契約を締結する。信販 会社と加盟店の間では保証契約が結ばれ、信販会社は加盟店に保証料を支払う仕組みになって いる(図 2 参照)。 12. このほか、ローン契約には割賦販売契約がある。同契約は、物品販売・サービス提供主体 自らが顧客との間でローン契約を直接締結する方式を取る。 返済方式 13. 返済方式には、通常の長期分割払いのほかに、リボルビング払い、1 回払い、ボーナス一 括払いなど、さまざまな方法がある。本稿の主な対象は、割賦販売法の規制対象となりうる ボーナス一括払いも含め、「完済までの期間が 2 カ月以上のすべての分割払い契約」の債権 である。 14. 実際の返済回数は、商品を購入する時点で選択され、それ以降、月次で一定金額(元利金) を分割で支払う。分割払いの返済回数は利用金額によっても異なるが、月々の返済負担を軽 減するために多めの回数を選択することが多い。60 回払い程度までが一般的であるが、高額 利用の場合、72 回、84 回といった長期的な返済回数の選択が許容されているケースもある。 さらに、ボーナス時期には、月次の返済に加えて、一定額を上乗せして返済するボーナス併 用が可能なことも多い。また、商品購入後、一定の支払い猶予期間を設け、一定期間経過後 から支払いを開始するスキップ払いといった返済方法が選択可能なケースもある。 貸付金利(分割手数料) 15. ショッピング・ローンの金利、すなわち分割手数料は、一般に専業消費者金融会社などが 提供する無担保消費者ローンの金利より低く、大手信販会社の中心的な金利帯は 5-15%程 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 3

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度に設定されている。金利は、購入する商品、加盟店、および返済回数によっても異なる。 なかには「ゼロ金利債権」と呼ばれ、債務者側からは一切金利を取らない代わりに、加盟店 が信販会社に当該金利分を支払う仕組みのものもある。 16. ショッピング・ローンで採用される金利計算方法には、1)アドオン方式、2)実質年率方 式、3)78 分法がある。 17. 一般的にはアドオン方式が用いられる。「アドオン方式」とは、返済が終了するまで当初 の借入金額(元本)に利率をかけて利息計算をして、元本と総利息を返済回数で除し、毎月 の返済額を決める方式である。 18. 「実質年率方式」とは、当初借入金額ではなく借入残高に対して、毎月計算された金利を 年率換算する手法である。アドオン方式は、手数料が計算しやすい反面、実質年率と比較す ると、見かけ上の利率が低くなるため、割賦販売法では手数料率を実質年率で表示するよう 義務付けている。また、あらかじめ計算した総利息を分割回数で除した額を毎月支払い、最 後まで指定された分割回数で支払うことを前提に金利計算されているため、途中で繰り上げ 返済する際には「利息の戻し」が発生する。 19. 戻し利息は、「78 分法」と呼ばれる計算式を用いて算出されることが多い。78 分法は、当 初想定された利息合計額を返済回数の総和数(例:10 回払いであれば 55、12 回払いであれ ば 78)で除したものを 1 単位(平均的利息としての概念)とし、当該単位に返済総回数をか けた金額が、1 カ月経過するごとに 1 単位ずつ減少していくという考え方で、ある時点で一 括(繰り上げ)返済した場合、残りの単位が未到来債務残高の累計とみて、当該単位分の割 合から戻し利息を算出する方法である。 20. 数式は以下のとおり。 戻し利息=支払い利息総額 × [ n × (n+1) ] / [ N × (N+1) ] 注:n は残存支払い回数、N は総支払い回数 1 件当たりの貸付金額 21. クレジットカードを利用した包括型では、クレジットカードで許容された与信限度額が利 用可能なことから、貸付金額の上限はクレジットカードの限度額となる。一般的には、50 万 -100 万円の限度額が主流となっている。一方、個別型においては、個別の商品購入に際し、 申し込みおよび審査をするため、包括型よりも高額利用になる傾向が強く、場合によっては、 1 回の利用金額が 300 万円以上に上るケースも見受けられる。 申し込みの経路 22. クレジットカードを利用した包括型の場合、信販会社から発行されたカードを保有してい れば、加盟店でカードを呈示し、カードに許容された限度額の範囲内で、商品が購入できる。 一方、個別型の場合は、加盟店で商品を購入する際の支払い方法として、店員からショッピ ング・ローンを勧められるケースが多い。特に、宝飾品や呉服などの高級嗜好品を販売する 加盟店で、顧客の手持ち資金以上の高額な商品を販売する際、ショッピング・ローンによる 支払いを勧めることで販売促進および販売機会の拡大効果があることから、加盟店による積 極的な勧誘が展開される。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 4

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23. 個別型では、販売者が店舗を保有せず、セールスマンが顧客宅を訪問し、訪問先で物品・ 役務の販売活動を行う、訪問販売の形態を取る場合がある。健康関連商品や寝具(羽毛布団 など)、浄水器などの物品は、訪問販売経由で申し込まれることが多い。 与信審査 24. 個別型の場合、加盟店経由の申し込みの都度、与信審査を行う。審査方法としては、申し 込み内容の確認、本人書類(運転免許証など)による本人確認、個人信用情報機関(CIC、JICC など)による過去の他社取引実績の照会等が行われ、債務者属性をもとに独自のスコアリン グ・システムが活用されることも多い。 25. 各社とも過去のパフォーマンス・データと債務者の属性との相関を参考に、有意な債務者 属性を数値化し、スコアリング・システムとして使用しており、限度額付与・途上与信管理 を実施する際の基準の 1 つとしている。そのほか、購入商品種類の確認、支払い回数と毎月 の支払金額をもとに試算した購入者の年収に占める返済額負担なども考慮して、総合的な審 査が実施されている。 26. クレジットカードを利用した包括型の場合は、クレジットカードの限度額の範囲内での利 用を許容することになるため、信販会社では通常、基本的な入会審査に加え、限度額に応じ た与信基準を設けている。そのため、スコアリング・システムを利用している信販会社が多 く、審査方法全般において個別型と共通する部分が多い。 27. なお、個別型の場合、商品を購入する債務者だけでなく、商品を販売する加盟店の審査も 実施されている。加盟店の内訳は、1)店頭販売加盟店(小売り店舗を持ち、消費者と対面で 商品やサービスの提供を行う)、2)通信販売加盟店(主にカタログショッピングや通信販売 を行う)、3)インターネット通信販売加盟店(インターネットを利用してオンラインショッ ピング販売を行う)、4)訪問販売加盟店――などである。 28. 加盟店審査項目は、業態(上記 1-4 のどれに該当するか)、加盟店の規模・売り上げ動向、 借入残高の有無などだが、零細企業の場合は経営者の信用状況についても審査される。また、 信販会社は、入会後の加盟店に対し、架空売り上げを計上するなどの詐欺的行為や悪徳商法 等を防止するため、継続的に加盟店管理を実施している。 返済方法 29. 債務者からの返済方法は、一般的には口座振替契約を設定した口座からの自動引き落とし になる。支払日は、包括型、個別型ともに月中の特定の日が指定されることが多いため、返 済日は特定日に集中する傾向がある。債務者が指定日に約定支払額(元利合計)を返済でき ない場合、延滞債権扱いとなる。 延滞債権の回収 30. 個別型、包括型ともに、90-120 日延滞の債権(支払い回数カウントで 3-4 回延滞)が「長 期延滞債権」としてデフォルト認識の基準とされることが多い。延滞発生時には、信販会社に より電話や書面による通知、督促がなされる。また、継続的役務の利用では、督促などに加え て、役務提供の一時停止などもなされる。証券化案件を組成する際の仕組み上、上記デフォル ト基準にあわせた形で長期延滞債権をデフォルト債権の定義に含めることが多い。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 5

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31. さらに、30 日延滞など、初期延滞の段階から一定程度、オリジネーターによる当該債権の買 い戻しが可能となっている仕組みが多い。この仕組みは、1)証券化案件における延滞債権の 累積を緩和すると同時に、2)初期延滞時点における適切な回収督促がデフォルト債権の増加 防止に効果的であることから、なるべく早い段階で延滞債権を買い戻し、自ら債権者として、 オリジネーター独自のノウハウに基づいた回収行為を実施することにより、当該債権がデフォ ルトに至るのを最大限防止するのが目的である。

証券化プールとしての特徴

32. ショッピング・ローンを裏付け資産とする証券化案件におけるローン・プールを格付け分 析の視点から見た場合、一般に以下のような特徴がある。 • 個人を債務者とする小口分散プールである。 • 消費者金融会社の無担保ローン商品などと比べて、利回りは比較的低い。 • 本稿で対象とする個別型のショッピング・ローンはリボルビング契約ではないため、 債権の追加譲渡を行わない限り、基本的に証券化案件期間中に債権プールの金額が増 加することはない。したがって、証券化案件にリボルビング期間(債権残高維持期間) を設定しない場合には、予定返済スケジュールをもとに債権プール金額の推移を予測 できる。 • コミングリング・リスクとして想定される最大コミングリング・ロスが比較的大きく なりやすい。 • ショッピング・ローン契約は、原因となる売買契約の解除に起因して、債務者側から のキャンセル(契約解除)が可能な契約であるため、キャンセル・リスクを考慮する 必要がある(キャンセルの詳細な定義については段落 75-83 参照)。役務提供契約(エ ステ、英会話など)に基づくローンや訪問販売により募集したローンのキャンセル率 は、比較的高い場合が多い。 • 債権プールにおいて、特定の加盟店にローン残高が集中する傾向がある。 33. 本稿で対象とするショッピング・ローンは、当初契約締結時点で返済総額や 1 回当たりの 返済金額、返済期日などを含む返済スケジュールが確定する債権であり、リボルビング方式 (限度枠貸し付け)ではない。したがって、消費者ローンを裏付けとする証券化案件で見ら れるように、追加貸し出しに伴って発生する将来債権を証券化の時点で譲渡するなどの対応 を考慮する必要がないことが特徴の 1 つである。 34. ショッピング・ローンを裏付け資産とする債権プールは一般的に、個人を債務者とする多数 の小額債権で構成されており、債務者の分散は十分に図られている。一方、物品等の販売を行 い、実際にショッピング・ローンをオリジネートする窓口となる加盟店については、特定の加 盟店にローン残高が集中する傾向が見られ、この点に留意が必要である。特に、エステなどの 施術代金や英会話学校の授業料に関する割賦債権など、いわゆる「役務提供の対価」としての 債権においては、大口の債権残高を持つ加盟店の倒産によって役務提供の全部もしくは一部停 止、あるいは何らかの理由による役務提供内容の質の低下などの事態が発生した場合、当該案 件への影響が大きいと思われる。大口加盟店についてそのような事態が発生した場合、割賦販 売法上の抗弁権の接続に基づいて(段落 53 参照)、当該加盟店に関連する債務者の多くが一 斉にキャンセルを申し立てるリスクがあると考えられ、証券化案件にネガティブな影響を与え る恐れがあることも大きな特徴の 1 つである(段落 52-53 参照)。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 6

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35. 債務者は加盟店と合意した一定の金額(元本および利息)を支払うことを期待されており、 各回の支払いが約定全額に満たない場合は延滞認識されることから、正常債権においては原則 として、予定どおり元利合計の支払いが行われていると想定される。ショッピング・ローンを 裏付けとする一般的な証券化案件では、オリジネーターから提出される証券化案件期間中の回 収予定スケジュール表に基づいて、将来の予定キャッシュフローを想定する。ショッピング・ ローンの返済方法として、ボーナス併用払い(一括払いではない)を利用する債務者が存在す るため、予定キャッシュフローにおいて案件期間中の特定月(ボーナス払い適用月として指定 される月)の予定返済額が極端に多くなっているケースもある。このような場合、当該債権プ ールにおいて、サービサー倒産時のコミングリング・リスクとして想定される最大コミングリ ング・ロスが大きくなる傾向がある。 36. 債務者の支払いには加盟店手数料が含まれている場合があるが、加盟店の取り分となる手 数料は証券化対象外であることから、加盟店手数料は対象債権プールから除外される。 37. なお、消費者金融会社の無担保ローンと比べた場合、ショッピング・ローンのポートフォ リオ・イールドは比較的低金利であることが多く、近年の特徴として、低下傾向が著しいケ ースが散見される。その理由として、金利手数料を加盟店が負担することで、ローン債務者 が支払う金利をゼロとする「ゼロ金利債権」が増加していることが挙げられる。

証券化スキームの特徴

38. ショッピング・ローンを裏付け資産とする証券化案件の特徴として、1)利息回収金で格付 け対象債券(信託受益権やローンなども含む;以下同様)の元本償還を補う仕組み(デフォ ルト・トラップ)が備わっていることが多い、2)ボーナス併用払いなどの影響により、コミ ングリング・リスクとして想定される最大コミングリング・ロスが比較的大きいケースが多 く、かつ月ごとの予定回収額の変動が大きいため、コミングリング・リスクへの対応策で、 アドバンス方式(回収金の前払い)が仕組みとして採用されることが多い、3)案件の仕組み 上、リボルビング期間を設定することも可能であるが、一般的には設定せずに、スタティッ ク型プールを想定し、案件開始直後から格付け対象債券の償還を開始するケースが多い―― といった傾向が挙げられる。 39. 以下、ポイントとなる点について、詳細に解説する。 基本的な仕組み 40. ABS 案件の一般的な仕組みの例として、図 3 のスキームが挙げられる。ショッピング・ロ ーンを裏付け資産とする証券化案件においては、信託を利用したスキームや SPV(特別目的 事業体)を利用したスキームなどが採用されているが、手続きが簡易で利便性が高いことか ら、最近では信託を利用したスキームが多用されている。本稿においては、特段の記載がな い限り、原則として図 3 のようなスキームを「信託方式」の仕組みとして解説する。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 7

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デフォルト・トラップ 41. 「デフォルト・トラップ」とは、デフォルト債権が発生した場合に、ローン・プールが生み 出す超過収益により当該損失を補填する仕組みである。超過収益は、裏付け資産であるショッ ピング・ローン債権の利息回収金から、ABS の投資家クーポン、案件コスト(信託報酬、バッ クアップ・サービサー手数料など)を差し引いたものである。 42. 具体的には、一旦利息回収金として収受したもののうち、当該回収期間内に発生したデフォ ルト債権額相当額を信託勘定内で利息勘定から元本勘定へ振り替えることで、元本回収金とし ての利用を可能にする。その結果、劣後配当として流出するはずであった超過収益を ABS の元 本償還の原資として取り込むことが可能になる。この仕組みは、いわば法人が資産の劣化・毀 損による損失(貸倒損失や有価証券の評価損)を事業収益で吸収し、最終損益で黒字を確保す るのと類似している。 43. なお、デフォルト債権自体は、劣後部分保有者(一般にはオリジネーター)に配当として 現状有姿交付されることが多い。 アドバンス(回収金の前払い) 44. 前述したように、ショッピング・ローンを裏付け資産とする証券化案件では、コミングリ ング・リスクとして想定される最大コミングリング・ロスが比較的大きいケースが多い。コ ミングリング・リスクへの対応については、さまざまな方法が考えられる。「コミングリン グ・リスク」とは一般に、サービサー(通常はオリジネーターが兼任)が証券化対象債権に 関する毎月の回収金を SPV に引き渡す前に倒産した場合に、当該回収金が破産財団などに組 み込まれてしまい、SPV から見て回収金引き渡し請求権が一般破産債権等に分類されるリス クをさす。 45. コミングリング・リスクへの対応策は、1)超過担保として他のリスクとともに劣後部分に 含める、2)最低セラー持ち分額として設定する方法のほかに、3)回収金の前払い(アドバ ンス方式)で対応する方法がある。 46. ショッピング・ローンにおいては、先に述べたとおり、ボーナス併用払いなどの影響で、 月ごとの予定回収額の変動が大きいことから、コミングリング・リスクへの対応策として、 「アドバンス方式」が仕組みに採用されることが多い。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 8

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47. アドバンス方式では、具体的には、債務者からの回収予定額*2 を前もって見積もり、サ ービサーが当該金額をあらかじめ SPV へ送金しておくことで〈当該案件開始時点で初回回 収分を送金し、以降は回収期間ごと(月次・週次など)に送金する〉、実際の回収金がサ ービサーの倒産手続きに巻き込まれたとしても、SPV がすでに当該回収金相当額を確保し ているため、コミングリング・ロスの補填が可能になる。実際に回収された金額と前払い 金額との差額はその都度精算され、同時に次回回収予定額の前払い送金が実施される仕組 みになっている。 *2:コミングリング・ロスが発生する可能性がある期間に対応する回収予定額を用いる。原則として、期限前返済 に起因する回収額も一定量見込んでいる。 48. 債務者からの回収日や回収金引渡日などのスケジュールは案件ごとに異なることから、個 別の状況に応じた適切な内容と方式でアドバンス送金を行うことが、コミングリング・リス クに対応する上で肝要である。 早期償還事由 49. 証券化案件においては、一般に早期償還事由の仕組みが設定される。「早期償還」とは、 裏付け資産のパフォーマンスの悪化や外部環境の変化が一定水準で発生した場合、ABS の投 資家クーポンおよび案件コスト支払い後の元利回収金すべてを ABS の元本償還に充当する こと(ターボ償還)によって ABS の償還ペースを速める仕組みで、このような早期償還開始 を促すのが早期償還事由である。 50. 早期償還事由を設定することにより、格付け水準に応じて想定したストレスの範囲内で ABS が償還される可能性が高まる。ショッピング・ローン債権を裏付け資産とした証券化案 件における代表的な早期償還事由は、以下のとおりである。 • サービサー交代事由が発生した場合 • 裏付け資産のデフォルト率が一定水準を上回った場合、あるいはデフォルト発生累積 額が一定水準を上回った場合 • 予定償還スケジュールどおりに償還できない場合 • タックス・イベントが発生した場合 法的枠組み 51. 裏付け資産であるショッピング・ローン債権に大きな影響を及ぼすとみられる重要な法律 は、割賦販売法、および特定商取引に関する法律(以下「特商法」)である。割賦販売法お よび特商法は 2009 年に改正されている。2009 年の法改正に関する S&P の考え方については、 2009 年 12 月 1 日付「改正割販法施行と証券化商品の信用力分析――ショッピング・クレジッ トおよびクレジットカード債権を裏付けとする ABS 案件」を参照されたい。 割賦販売法 52. 2009 年 12 月 1 日付で、「特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律」 が施行された。改正前は、規制の対象は 1976 年に制定された特定商取引に関する法律(それ 以降の政令で定める指定商品・役務等)で規定された特定商品・役務に限定されていたが、 改正割賦販売法により、基本的にすべての商品・役務に規制が適用されることとなった。本 稿が対象とするショッピング・ローンのほぼすべてが同法の対象取引となる。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 9

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53. また、割賦販売、信用購入あっせん、およびローン提携販売などの三者間契約において購 入商品に瑕疵が見つかった場合、もしくは契約締結時に強要や詐欺などがあった場合には、 消費者は加盟店への支払いを拒否できるとともに、加盟店との問題が解決するまでの間、オ リジネーターからの請求に対しても支払いの拒否が認められている(支払い停止の抗弁、抗 弁権の接続)。 特定商取引に関する法律(特商法) 54. 割賦販売法の改正と同時に、特定商取引に関する法律にも改正がなされた。特定の商品(指 定商品)または役務(指定役務)についてのみ適用されるとの規制方法から、改正により原 則として、すべての取引に本法が適用されることとなった。 55. 特商法では、1)通信販売を除き、クーリングオフが認められる*3 、2)加盟店による不実 告知や重要事項の故意の不告知など一定の要件を満たした場合には、クーリングオフ期間経 過後も解約が可能となる、3)消費者が中途解約する際などに加盟店が請求できる金額は、損 害賠償額の制限(例えば、役務提供開始後に解約した場合は、それまでに提供された役務の 対価相当額)および法令で上限が定められた金額に限定される――などの特徴がある。 *3:通信販売においても、返品の可否及び条件について広告に記載がない場合には、8 日間、契約の解除ができる (特商法第 15 条の 2)。 56. ショッピング・ローン債権については、上記のようなクーリングオフ制度や抗弁権の接続に より消費者保護が図られる一方、このような権利が行使される一定の蓋然性を含んだ債権プ ールの証券化に際しては、債務者側からローン契約がキャンセルされた場合に債権プールが 毀損するリスクを考慮する必要がある。キャンセルは通常、契約後の経過期間が浅い段階で 発生する傾向があるが、物品の販売手法によっては長期間にわたって高いキャンセル率を示 す場合もある。また、継続的役務提供の対価に関するローン契約の場合、対象加盟店の破綻 等のトラブルに起因して、債務者の一斉延滞や大量のキャンセル発生などの問題をもたらす 可能性が比較的高いと言えよう。

格付け上のリスク分析

57. ショッピング・ローンを裏付け資産とする証券化案件を格付けする際には、まず、オリジ ネーターから提出された過去データや属性データなどに基づいて、デフォルト率、キャンセル 率、期限前返済率、適用金利分布などの各要素を検証する。一般的には、過去の傾向値から将 来のパフォーマンスを予測するアプローチが中心となる。 58. 将来予測に際しては、データの持つ意味を正しく理解し、対象となるローンの特徴など定性 的な要素を適切に判断するために、オリジネーターとのデューデリジェンス・ミーティングを 実施する。最終的には、上記の各要素に加え、サービサー交代のタイミングなど、各案件の個 別事情にあわせたシナリオを想定し、格付け水準に応じた必要信用補完率を算出するべく、キ ャッシュフロー分析を行う。以下、各種データの利用方法とともに、個別の要素について分析 の際の考え方を解説する。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 10

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(1) 属性データの分析

59. 属性データは、ある一時点における、債権プールの項目別構成比率データを意味する。男 女別、年齢別、債務者所在地(都道府県)別、購入商品種類別、適用金利別など、各項目に ついて、当該債権プール内の債権・債務者の分布状況を把握するのに役立つ。S&P では、主 に以下の項目に着目し、証券化対象であるショッピング・ローン債権および債務者の属性デ ータを分析している。 • 購入商品種類 • 分割返済回数 • 債権残高 • 適用金利 • 契約年月 60. これらの項目に関するデータを検証することにより、当該証券化対象プールの主な特徴を 把握できる。S&P は、1)当該オリジネーターが保有する同種の債権全体(母体債権プール) と比較してどのような違いがあるのか、2)他のオリジネーターが保有する債権プールと比較 してどのような特徴があるのか――を中心に分析を行う。これら属性データの分析結果は、 最終的にキャッシュフロー分析を行う際に適用するデフォルト率、キャンセル率、期限前返 済率などを決定する際の参考資料となる。 加盟店リスク 61. S&P は、債務者が商品を購入する加盟店別データを入手し、特定の加盟店への集中率も検 証している。 62. 前述のとおり、ショッピング・ローン債権の実際の営業窓口は加盟店であり、加盟店が物 品販売等を行う際に勧誘することによってローン営業が行われている。したがって、加盟店 がどのような販売もしくは勧誘を行うかによって、後に発生するキャンセル率にかなりの影 響を及ぼすものと思われる。加盟店の詐欺的行為や悪徳商法等により、当該加盟店を経由し たローン債権からキャンセルが大量発生する可能性がある。 63. また、加盟店においてローン申込書に虚偽記載などの不正があった場合も、当該加盟店経 由のローンで延滞やデフォルトが大量発生する可能性がある。格付け分析の観点からは、オ リジネーターである信販会社において、入会時にどのような加盟店審査が行われているのか、 入会後も継続的な審査が実施されているのかなど、厳格な加盟店管理が遂行されていること が重要である(段落 27-28 参照)。 64. 特に、債権プールにおいてローンが特定の加盟店に集中している場合、当該加盟店の破綻 や不正等のトラブルに起因して発生する債務者によるキャンセルや延滞・デフォルトが、債 権プールに与える影響が甚大になる可能性がある。このような特定加盟店に起因するリスク を緩和するために、証券化案件上、債権プールにおける加盟店集中率に上限を設けるなどの 工夫がなされるのが一般的である。 65. 特定の加盟店に過度の集中が見られる場合、S&P は通常、分析上適用するデフォルト率や キャンセル率を決定する際に当該要因に応じて相応のストレスを加えている。なお、継続的 役務提供契約を取り扱う加盟店が多い場合に考慮を要するリスク・ファクターについては、 段落 79 を参照されたい。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 11

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(2) 過去データの分析

66. 過去データとは、あるオリジネーターが過去もしくは現在に保有する債権プールについて、 過去数年間にわたるパフォーマンスの推移を示すデータを意味する。過去データには、1)あ る一時点において発生した債権のその後の時系列のパフォーマンス推移を示すスタティッ ク・データ、2)対象となる債権の残高が変動する状態(新規貸し出しによる増加、あるいは 返済による減少がある状態)で、特定のオリジネーターが各時点で保有している債権の時系 列のパフォーマンス推移を示すダイナミック・データなどがある。 67. 特定のオリジネーターについて、月次デフォルト率、キャンセル率、期限前返済率などの 各要素が過去にどのようなパフォーマンスを示していたのか、直近はどのような傾向にある のか把握する上で有用である。S&P では、主として以下の要素に着目し、証券化対象のロー ン債権のオリジネーターが保有する母体債権プールなどの過去データを分析している。 A.デフォルト率 68. S&P は、オリジネーターから提供された過去データ(主として、母体債権に関する月次ダ イナミック・データ)を検証して、ベース・デフォルト率を決定する。 69. 「デフォルト」の定義はオリジネーターの回収方針によって異なるが、証券化案件におい ては一般に、以下のいずれかの条件を満たす債権と定義される。 • 90-120 日以上の延滞(今後の継続支払いが不能と判断される延滞日数) • 債務者の法的破綻(破産、民事再生) • その他、オリジネーターの与信回収方針に従って管理債権と見なされるもの(金利減免、 返済期間延長などの条件変更も含まれることが多い) 70. 上記で定義されるデフォルト金額を分子に、デフォルト債権を除く総債権残高を分母に置 いて算出されるのが、デフォルト率である。ローン債権残高が急速に増加している場合など は、分母が大きくなるために一見デフォルト率が低く見えることから、S&P では、6 カ月前 などの残高を分母に用いてデフォルト率を補正することがある。また、同種案件のサーベイ ランス・データがある場合は、それらも参考にして、ベース・デフォルト率を決定する。 71. ベース・デフォルト率が決定された後、格付け水準に応じたストレス倍率が決定される。 ショッピング・ローン債権のデフォルト率に関する標準的なストレス倍率は、表 1 のとおり である。 表 1 ショッピング・ローン債権のデフォルト率に関する標準的なストレス倍率 格付け ストレス倍率 AAA 3.5 倍 AA 3.0 倍 A 2.5 倍 BBB 2.0 倍 72. 最終的に適用されるストレス倍率は、個別案件ごとに諸事情を勘案して調整のうえ決定さ れることから、上記の標準的なストレス倍率とは異なる場合がある。ストレス倍率の調整が 必要な具体的な事由は、以下のとおりである(デフォルト率に関するストレス倍率は、値が 大きくなるほど、より強いストレスとなる)。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 12

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• 債務者所在地(都道府県)が経済規模の小さいエリアに極端に集中している。 → 地域集中のリスクにより、ストレス倍率の上昇要因となる。 • 特定の加盟店に債権が集中している。 → 特定加盟店の詐欺的行為等のトラブルに起因して、当該加盟店を経由したローン債 権に集中的に延滞等が発生するなど債権プールのパフォーマンスに大きな影響を 与える恐れがあるため、ストレス倍率の上昇要因となる。 • 当該オリジネーターのサーベイランス・データが蓄積されている。 → 同じオリジネーターが保有する同種のアセットを裏付け資産とする証券化案件の サーベイランス・データが長期間にわたり蓄積されており、パフォーマンスに一定 の安定性が見られる場合には、ストレス倍率の低下要因となる。 73. S&P は、ベース・デフォルト率に格付け水準に応じたストレス倍率を乗じたデフォルト率 (ストレス後デフォルト率)を最終的なキャッシュフロー分析において採用し、必要な信用 補完の水準を決定している。 74. なお、案件上一定のリボルビング期間を設定する場合は特に、デフォルト率に関する早期 償還トリガーを、当該案件において有効に機能するように、ベース・デフォルト率とストレ ス後デフォルト率を勘案した適切な位置に設定することが重要である。 B.キャンセル率 1) キャンセルの定義 75. 「キャンセル」とは、原則として、購入した商品または提供されたサービスの内容に瑕疵 があるなどの理由から債務者が商品を購入後に返品する、もしくは継続的役務を途中で解約 するのに伴い、信販会社に対して債務者が支払い停止の抗弁を主張することによりショッピ ング・ローン契約が将来に向かって解除された状態であるが、一般にはクーリングオフによ る契約解除も含まれる。クーリングオフ制度のもとでは、購入商品に瑕疵があるなどの特段 の理由がない場合でも、所定の期間内においては、債務者からショッピング・ローン契約の 解除(遡及効あり)が可能であることから、厳密には狭義のキャンセルとは意味を異にする が、本稿では、特段の記載がないかぎり、「キャンセル」にはクーリングオフ制度による契 約解除を含むものとする。 76. ショッピング・ローンでは、クーリングオフ制度を含めて、物品の販売手法によっては長 期間にわたって高いキャンセル率を示す場合もある。キャンセルが発生すると、当該債権に ついては以降の支払いが停止され、キャッシュフローが途絶えることから、同債権において デフォルトが発生した場合と同様の影響をもたらす。したがって、キャンセル率は、証券化 案件の格付け分析上、デフォルト率と並んで非常に大きな影響を持つ、重要な要因である。 2) キャンセルの発生傾向 77. 一般的に、キャンセルの発生は債務者の支払い実績(シーズニング)と密接な関係を持ち、 シーズニングが浅い債権のキャンセル率は高く、シーズニングが進むとキャンセル率は低く なっていく。一般にキャンセルは、契約締結から最初の支払いまでに発生することが最も多 く(物品販売のクーリングオフ期間が原則 8 日間であることにも起因している)、3 カ月目 以降(返済実績 2 回)のキャンセル発生率は極端に低下する傾向が見られることから、一定 以上の返済実績がある場合、債務者が購入商品に対して支払いを続行する強い意思が認めら 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 13

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れると考えられる。したがって、すでに一定回数以上のシーズニングが進んだ債権を証券化 する場合、キャンセル・リスクは相当程度軽減されていると言えよう。 78. しかしながら、前述のように、キャンセルの発生率はローン対象物品の販売手法(販売経 路)や商品種類とも相関があることから、オリジネーターから提供される同種債権の過去の スタティック・データなどを参考に、対象債権プールから将来発生するキャンセル量を想定 することは非常に有用である。一般に、訪問販売形態で販売された物品に関するローンや、 継続的役務提供の対価に関するローンについては、長期間にわたって高いキャンセル率を示 す傾向が強い。 3) 継続的役務提供契約とキャンセル・リスク 79. 継続的役務提供の対価に関するローンにおいては、役務提供を行っている加盟店が破綻し た場合、将来的に当該サービスを受けられなくなることから、対価の支払いを拒むために債 務者がキャンセルする可能性は非常に高いだろう。ただし、ショッピング・ローン期間の方 がサービス提供期間よりも長く設定されており、サービスの提供がすでに完了しているよう な場合においては、その後に加盟店が破綻したことを直接の原因として、当該債務者がキャ ンセルを申し立てる可能性は比較的低いと言えよう。 80. 証券化案件において一定のキャンセル・リスクが認められる場合、上記の諸事情および当 該証券化案件の条件(適格基準など)を考慮して、ベース・キャンセル率が決定された後、 格付け水準に応じたストレス倍率が決定される。ショッピング・ローン債権のキャンセル率 に関する標準的なストレス倍率を表 2 に示すが、デフォルトのストレス倍率と同様である。 表 2 ショッピング・ローンのキャンセル率に関する標準的なストレス倍率 格付け ストレス倍率 AAA 3.5 倍 AA 3.0 倍 A 2.5 倍 BBB 2.0 倍 81. 最終的に適用されるストレス倍率は、個別案件ごとに諸事情を勘案して調整した上で決定 されることから、上記の標準的なストレス倍率とは異なる場合がある。ストレス倍率の調整 が必要な具体的な事由は、以下のとおりである(キャンセル率に関するストレス倍率は、値 が大きくなるほど、より強いストレスとなる)。 • 近年、継続的役務提供契約や長いクーリングオフ期間が認められている契約が増加し ており、対象債権プールにも当該契約が多く含まれている。 → 過去データの実績値に比べて、キャンセル率が大幅に高くなる可能性があるため、 ストレス倍率の上昇要因となる。 • 当該オリジネーターのサーベイランス・データが蓄積されている。 → 同じオリジネーターが保有する同種のアセットを裏付け資産とする証券化案件の サーベイランス・データが長期間にわたり蓄積されており、パフォーマンスに一定の 安定性が見られる場合には、ストレス倍率の低下要因となる(ただし、対象購入商品 や上位加盟店などがサーベイランス対象プールと異なる場合には、サーベイランス・ データの実績値とは異なる傾向を示す可能性があるので、注意を要する)。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 14

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82. S&P は、ベース・キャンセル率に格付け水準に応じたストレス倍率を乗じたキャンセル率 (ストレス後キャンセル率)を最終的なキャッシュフロー分析において採用し、必要な信用 補完の水準を決定している。 83. なお、案件上一定のリボルビング期間を設定する場合には特に、キャンセル率に関する早 期償還トリガーを、当該案件において有効に機能するように、ベース・キャンセル率とスト レス後キャンセル率を勘案した適切な位置に設定することが重要である。ただし、適格基準 などにより、案件上のキャンセル・リスクが有効に排除・緩和される仕組みになっている場 合は、この限りではない。 C.期限前返済率(プリペイ率) 84. 「期限前返済(プリペイ)」とは、分割返済の途中で、最終回の返済を待たずに一括して 代金の返済をすることである。分割返済を途中で繰り上げて全額返済するため、将来に支払 うべき分割手数料(金利)は一括返済をする時点で消滅する。一般に、債権プールの平均金 利が比較的高く、かつ適用金利分布にばらつきが見られるような時、高い金利が付された債 権からより多くの期限前返済が発生すると想定した場合、当該案件が余剰金利のメリットを 十分に取り込めず、期限前返済が一定量発生すると仮定したケースが格付け分析上の最悪シ ナリオとなる可能性がある。 85. S&P は上記の観点から、1)キャッシュフロー分析の中で期限前返済を一定量(過去平均 レベル、過去最大レベルなど)見込むパターン、2)全く見込まないパターンの両方を前提と してキャッシュフロー・テストを実施し、個別案件ごとに最悪シナリオを検証している。 D.他ローンのグレーゾーン金利に関する問題(ダイリューション・リスク) 86. ショッピング・ローン債権は、一般的に現行の利息制限法の上限金利以下で貸し出されて いることが多く、出資法と利息制限法の上限金利の差額部分に相当する、いわゆる「グレー ゾーン金利」にかかる過払い金返還請求の問題は生じない。 87. 一方で、信販会社を通じたショッピング・ローン債権の債務者の中には、過去に当該信販 会社から別途、グレーゾーン金利付きローンを借り入れていた可能性もある。また、個別型 においても、信販会社が個別信用購入あっせん取引と抱き合わせでクレジットカードの入会 を勧誘するケースが多いことから、グレーゾーン金利付きローン借り入れの可能性を排除で きない。そこで、当該債務者が当該グレーゾーン金利付きローンに関連して、過去に支払っ たグレーゾーン金利部分について当該ローンの元本に充当してもなお過払い金がある場合、 当該過払い金のショッピング・ローン債権への元本充当が主張される(詳細は、「補足 1」 を参照)、または当該過払い金返還請求権とショッピング・ローン債権の返済債務とが相殺 される可能性がある(詳細は、「補足 2」を参照)。 88. 多くの証券化案件においては、対象債権の譲渡時に債務者から異議をとどめない承諾は取 得しておらず、上記のような元本充当や相殺の抗弁は切断されていない。通常、このような 過払い金に関連する損失負担については証券化案件上、オリジネーターである信販会社に損 失補填義務が課せられているものの、オリジネーターが破綻した場合は当該補填義務が履行 されると期待することは困難である。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 15

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89. このようなリスクについては格付け分析上、懸念対象となっているグレーゾーン金利適用 債権の母体の過去データを参考に、格付けレベルに応じた一定のストレスを加えた過払い金 返還発生率を想定し、これに起因する相殺権の行使等により一定程度債権プールが毀損する (ダイリューション)というシナリオのもと、必要信用補完に関する分析を行っている。 補足 1 90. ショッピング・ローンの場合、当該ローン自体にグレーゾーン金利が含まれていることは 稀である。しかし、当該債務者が他のローンについてグレーゾーン金利を支払っており、当 該グレーゾーン金利部分を当該他のローンの元本に充当してなお過払い金がある場合には、 その影響を考慮する必要がある。譲渡対象となっているショッピング・ローンとは別のグレ ーゾーン金利付きローンに関する過払い金が当該ショッピング・ローンに与える影響として、 第 1 に、当該過払い金のショッピング・ローン元本への充当が考えられる。まず、当該過払 い金をショッピング・ローンに充当する特約がある場合は、当該過払い金はショッピング・ ローンの元本に充当される〈最判 1968 (昭和 43).10.29〉。 91. そのような特約がない場合でも、当該過払い金のショッピング・ローンへの弁済を指定し たと推認される場合には、当該過払い金がショッピング・ローンに充当される。過去の判例 によれば、同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸し付けが繰り返される場 合、基本契約が締結されていない場合であっても、基本契約が締結されているのと同様の貸 し付けが繰り返されているような場合には、そのような弁済指定が推認される可能性がある 〈最判 2003 (平成 15).7.18、最判 2007 (平成 19).2.13〉。 92. ショッピング・ローン債権では、貸主と借主間で基本契約は締結されていないと思われる ものの、個別ローンの事情によっては弁済指定が推認される可能性がある。グレーゾーン金 利付きローンの過払い金のショッピング・ローンの弁済への指定が推認されない場合でも法 定充当により当該過払い金のショッピング・ローンへの充当が認められるか否かについては、 否定説が有力のようだが、肯定説と解される見解もないわけではない〈最判 1964 (昭和 39).11.18 奥野健一裁判官補足意見〉。したがって、法定充当が認められる可能性は低いと考 えられるものの、今後の判例、学説における議論の推移を見守る必要がある。 93. 仮にグレーゾーン金利付きローンの過払い金のショッピング・ローン元本への充当が認め られた場合、通常案件では債務者による異議なき承諾を取得しないことから、当該ショッピン グ・ローンの譲受人は、かかる充当を抗弁として債務者から対抗されることになる(民法第 468 条第 2 項)。なお、名古屋地裁 1972(昭和 47)年 7 月 22 日判決によれば、過払い金の元 本充当については、債務者が異議なき承諾をした場合でも譲受人に対抗できる可能性がある。 補足 2 94. グレーゾーン金利付きローンの過払い金がショッピング・ローン元本に充当されない場合、 債務者は当該過払い金に関する返還請求権を有することになる。この過払い金返還請求権が 譲渡時に存在する場合、債務者から異議なき承諾を取得しない通常のケースにおいては、シ ョッピング・ローンの譲受人は当該過払い金返還請求権との相殺の抗弁を債務者から主張さ れる可能性がある(民法第 468 条第 2 項)。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 16

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(3) その他の分析事項

案件コスト 95. 各証券化案件の運営にかかる諸費用(信託報酬、サービシング手数料、投資家クーポンな ど)は、契約書で確認のうえ、キャッシュフロー分析の際に必要コストとして織り込まれて いる。バックアップ・サービシング手数料については、当初よりバックアップ・サービサー が任命されている場合においても、案件期間途中に当該バックアップ・サービサーが何らか の事情により交代する可能性を勘案し、新たなバックアップ・サービサーにとって魅力ある 水準としてマーケット標準に見劣りしない一定の料率を想定し、分析に織り込んでいる。 96. 具体的には、主要なサービサー業者を中心にヒアリングを行った結果、マーケットの状況 や個別案件の特色(件数、債権総額、予定している回収方法など)に応じて、当該裏付け資 産の回収の対価として標準と思われる手数料率と、実際に契約上規定しているバックアッ プ・サービシング手数料率との間で原則、いずれか高い方を「想定コスト」として採用し、 必要信用補完水準を決定している。 コミングリング・リスク 97. コミングリング・リスクへの対応策としては、信用補完水準に織り込むことで超過担保に含 める、最低セラー持ち分額として設定する、回収金の前払い(アドバンス)を実施する――な どの方法が存在する。 98. S&P では、債務者からの回収日、回収金引渡日などのスケジュールをもとに、将来発生する 可能性があるコミングリング・ロスを想定し、コミングリング・リスクへの対応に必要な信用 補完率を決定している。 99. ショッピング・ローン債権の証券化案件においては、アドバンスによる対応が行われること が多い(詳細は、段落 44-48 を参照)。

(4) 信用補完比率の決定

100. S&P は上記(1)から(3)の分析を行い、各案件に特有の仕組みやリスクなどを分析した 上で、キャッシュフロー分析を行うことで、最終的な必要信用補完比率を決定する。分析に 用いる主要な変数は、以下のとおりである。 サービサー交代シナリオ 101. 原則として、各案件にとって「ワースト・ケース」となるようなサービサー交代のタイミン グを、ストレス・シナリオとして想定する。案件によって、回収金の配分方法(ウォーターフ ォール)や償還方法が異なることから、サービサー交代のタイミングも個別に判断することに なる。多くの案件において、案件スタート直後、もしくはリボルビング期間が設定されている 場合には、リボルビング期間終了直後のサービサー交代がワースト・ケースとなりやすい。 想定キャッシュフロー 102. 本稿で対象とするショッピング・ローンは、当初契約締結時点で、返済総額、1 回当たり の支払金額、返済期日などを含む予定返済スケジュールが確定する債権であり、リボルビン グ方式(限度枠貸し付け)のローンではない。したがって、案件上でリボルビング期間が設 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 17

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定されていない限り、オリジネーターから提出される予定返済スケジュール自体がそのまま 分析のベースとなる。 103. 証券化案件においてリボルビング期間が設定される場合、同期間中にプール内の債権構成 の変化に伴って、債権プールの予定返済スケジュールも変更される。特に、債権プールの加 重平均年限が延び、その結果、債権プールから発生する累積貸倒総額が増加する可能性や債 権プールの約定平均金利が低下する可能性があることから、追加債権の適格基準等を参照し て、保守的な予定キャッシュフローを想定することが重要である。 キャッシュフロー・モデル上の各種変数の設定 104. デフォルト率:一般的には、案件当初より、ベース・デフォルト率に格付け水準に応じたス トレス倍率を乗じたストレス後デフォルト率をもとに、デフォルトが発生するというシナリ オを採用している(ベース・デフォルト率に格付け水準に応じたストレス倍率を乗じたスト レス後デフォルト率格付け水準の詳細は、段落 72-73 を参照)。余剰金利のメリットを考慮 する場合、総量としては同じデフォルト額が発生するとしても、発生するタイミングによっ て、当該案件にメリットとして取り込める余剰金利の量や効果が異なってくるため、数通り のデフォルトの発生パターンをシミュレートしている。具体的には、案件期間中、1)毎月均 等割合でデフォルトが発生する、2)デフォルトが案件期間の前半で多く発生する、3)デフ ォルトが案件期間の後半で多く発生する――といった 3 通りのシナリオを想定して、シミュ レーションを実施している。 105. キャンセル率:原則として、上記デフォルト率と同様のシミュレーションを実施している。た だし、前述のように、多くの場合において、案件開始から数カ月経過するとキャンセル発生が 激減すると想定されることから、シーズニングの効果が十分考慮できるような案件の場合は、 キャンセル率がキャッシュフローの分析結果に及ぼす影響度は極めて軽微であることが多い。 106. ポートフォリオ・イールド:一般的には、案件上でリボルビング期間が設定されていない限 り、オリジネーターから提出される予定返済スケジュールによって、案件期間中のポートフ ォリオ・イールドの大体の推移を想定することができる。リボルビング期間が設定されてい る場合には、追加債権の適格基準などをもとに保守的な約定平均金利を想定することが重要 である。キャッシュフロー分析を実施する上では、債権プールの約定金利分布表をもとに、 「高い金利が付けられた債権のデフォルトや期限前返済が発生し、ポートフォリオ・イール ドが次第に低下していく」というシナリオを採用している。 107. 期限前返済率:前述のとおり、期限前返済は一般に、余剰金利のメリットを減少させるとい うネガティブな効果をもたらす可能性がある。したがって、S&P では原則として、キャッシ ュフロー分析をする際、期限前返済を一定量見込むパターンと全く見込まないパターンの 2 つの前提のもと、シミュレーションを実施している。具体的には、1)過去データ上の最大発 生率で期限前返済が発生する、2)過去データ上の平均発生率で期限前返済が発生する、3)期 限前返済が全く発生しない――といったシナリオを想定し、シミュレーションを行う。 108. キャッシュフロー分析では、上記のようなさまざまな変数を用いてシミュレーションを実 施することで、格付け水準に応じた必要信用補完比率を算定している。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 18

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(5) 流動性補完

109. ショッピング・ローン債権について、超過担保による信用補完に加え、流動性補完につい て別途考慮が必要な点は、他のアセットを裏付け資産とする証券化案件と同様である。証券 化案件においては、サービサーが何らかの事情により証券化対象債権に関する契約上のサー ビシング義務を果たせないような場合に備えて、あらかじめバックアップ・サービサーが任 命されていることが多い。サービサーの交代には相当な時間を要する可能性があり、交代完 了までの間、案件のキャッシュフローが一時的に中断するリスクがある。このリスクはクロ ージング時点で、数カ月分の利息と費用の支払いをするのに十分な額の現金準備金を信託勘 定等 SPV に留保することによって軽減される。

格付け後のサーベイランス

110. S&P では、格付けを付与したすべての証券化案件について、サーベイランスを実施してい る。サーベイランスは案件期間中、案件関係者から定期的に提出される回収状況に関する報 告書および交付状況に関する報告書に基づいて行われ、主に、債権プールのパフォーマンス、 債券の償還状況、契約上定められている各種準備金の積み立て状況、および早期償還などの トリガーの抵触状況などが確認される。スキーム関係当事者の信用状態(当該信用状態が追 加補完のトリガーとなっているなど、案件の格付けに何らかの影響がある場合)や、役割の 遂行状況のモニタリングもサーベイランスの対象である。 111. 当該格付けに影響を与える事象が発生した場合、速やかに格付け変更を検討する体制が構 築されている。ショッピング・ローン債権が裏付け資産の場合は、特に以下の点に留意して サーベイランスを行うことが重要と考えられる。 裏付け資産のパフォーマンス 112. ショッピング・ローン債権プールのサーベイランスでは、信用補完比率の算出に用いられ る主な変数(デフォルト率、キャンセル率、ポートフォリオ・イールド、期限前返済率)の 推移に重点が置かれ、当初想定した水準との乖離が、各格付けレベルで設定しているストレ スの範囲で吸収可能かどうかに注目する。また、延滞率、債権プールの残高推移(返済ペー ス)なども、今後のデフォルトの発生を予測する上で重要な指標である。案件上、リボルビ ング期間を設定している場合は、追加債権 1 件当たりの残高、ゼロ金利債権の割合など、プ ールの構成要素を変化させる要因にも注目している。 113. ショッピング・ローン債権プールは、ボーナス併用払いなど、債務者の支払い方法が月次均 等払い以外の債権を含むケースも多い。したがって、債権プールを見るタイミングによっては、 当該月における各種変数の月率が他の回収月と大きく異なる可能性があるため、注意を要する。 114. また、何らかのイベントを契機に、債務者の返済状況が大きく変化する可能性もある。サ ーベイランス上重視するのはパフォーマンスの中長期的な傾向であり、ある月のパフォーマ ンスの変化が何らかのイベント的な要因に基づいた一時的なものであるのか、それとも一定 期間にわたって今後とも変化の継続が見込まれるのか見極めることが重要となる。その分析 にあたっては、同じオリジネーターの他案件の状況、他社の同種案件の全般的な傾向、業界 全体の動向など、入手可能なさまざまな情報を用いて総合的な分析がなされる。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|ABS:ショッピング・ローン ABS の格付け分析の手法と想定|スタンダード& プアーズ 19

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