アームミトン
~シャント、グラフトを持つ
患者様・透析穿刺中に使えるミトン~
大 久 保 病 院
大久保病院 テーマ名
アームミトン
~シャント、グラフトを持つ患者様・透析穿刺中に使えるミトン~
サークル名「Tailor(仕立屋)」 メンバー名 ◎○ 南 耶衣子 嶺井 智子 鹿島 美冬 大澤 浩子 1 テーマ選定理由 患者様が安全に入院生活を送ることができるよう看護していくことは、どの科に属する看護 師、コメディカルも第一に考え、日々対策を行っていることである。そのような中で、透析患 者様に関わる私達が共通して対策に苦労してきたことは、「ブラットアクセスとして上肢にシャ ントやグラフトを持つ患者様が、様々な種類のカテーテルが留置され、なお且つ見当識障害や せん妄がある場合の自己抜去」である。私達は、数々の患者様の危険な行動に対応しなければ ならず、ミトンや抑制具の使用を行わざるを得なくなるが、そこで新たに発生するのが「抑制 による、シャント、グラフトの閉塞の危険性」である。この、「シャント、グラフトの閉塞の危 険性」を回避する為に、以前考案したミトンを更に改良し、病棟だけでなく、「透析の穿刺中に 使用できるもの」として作成し使用してみることにした。 2 現状と問題点 自己抜去防止の為従来のミトンを使用する場合、通常の使用法ではシャント閉塞の危険性が 発生する。シャント閉塞に配慮しゆるめにミトンを使用した場合は、簡単にミトンが外れてし まいミトンとしての効果が得られない。ミトンと寝衣の袖を粘着テープで繋げるようにして固 定する方法は、粘着テープを顔でこすったり、歯を使うことで外れてしまう。シャントの観察 をする際に毎回粘着テープをはがし、そのあとは固定をし直す必要があり、時間がかかる。ま た、コストもかかる。不穏のある患者様には、透析穿刺中など、付き添いが必要な状態となる ことも多く、業務負担が増える。 3 改善策 腕全体を包むことのできる筒状のアームカバーと抑制用のミトンを縫い付け、シャントの観 察がしやすいように、ファスナーを取りつけた。アームカバーの肩側には長い紐を取りつけ、 反対側の肩で襷掛けにするようにし患者様自身では外すことができないミトン(アームミトン) を作成した。オープンファスナーを取り付けたことで透析中にも使用可能となった。 4 結果 「アームミトン」を使用した患者様にかかわった、9階病棟、透析室看護師、他部署計15 名にアンケートを実施した。その結果、多くのスタッフから、「アームミトン使用により、シャ ント肢を圧迫せず、患者様のシャント閉塞の危険防止しながら安全を守ることができたと感じ た」、「業務負担の軽減もできた」という回答を得ることができた。 - 45 -大久保病院 テーマ名
アームミトン
~シャント、グラフトを持つ患者様・透析穿刺中に使えるミトン~
サークル名「Tailor(仕立屋)」 メンバー名 ◎○ 南 耶衣子 嶺井 智子 鹿島 美冬 大澤 浩子 1 テーマ選定理由 患者様が安全に入院生活を送ることができるよう看護していくことが重要であるということ は、私達腎センターの看護師だけでなく、どの科に属する看護師、コメディカルも第一に考え 日々対策を行っていることである。 例えば、歩行に不安のある患者様には転倒の事故が無いよう「付添歩行」「歩行器での見守り 歩行」患者様の同意が得られれば「離床センサー対応」、ベッド上で臥床される患者様には転落 の危険が無いよう「ベッドの柵を四点柵」、同意が得られれば「体動センサー」「体幹抑制」の 使用。点滴、経鼻胃管カテーテル、ドレーン等がある患者様には自己抜去が無いよう「固定の 工夫」、さらに、不穏、見当識障害のある患者様には同意が得られれば「ミトンの装着」などを 行っている。 医療現場では、いくつものリスクを目の当たりにし、体感し対策を実践している。 特に高齢の患者様は、身体状況・身体機能などの問題以外にも、認知症など様々な問題を抱 えている。見当識障害やせん妄などで、自分では安全に配慮した行動を取ることができなかっ たり、説明に対する理解が得られない場合も少なくない。 そのような中で、透析患者様に関わる私達、腎センター看護師、透析室看護師が共通して対 策に苦労してきたことがある。それは、「維持透析のブラットアクセスとして上肢にシャントや グラフトを持つ患者様が、様々な種類のカテーテルを留置し、なお且つ、見当識障害やせん妄 のある場合に起こる自己抜去」である。留置されているカテーテルの一例として「経鼻胃管カ テーテル」や「中心静脈カテーテル」等があるが、これらは自己抜去されることで、出血の危 険性はもちろん、断裂したカテーテルが体内に残ってしまうというリスクもある。透析中の留 置針抜去においては、大量出血に繋がる危険がある。 これらの理由から、私達は、数々の患者様の危険な行動に対応しなければならず、患者様、 御家族の同意を得て、ミトンや抑制具の使用を行わざるを得なくなる。そしてそれらの事で新 たに発生するのが「抑制による、シャント、グラフトの閉塞の危険性」である。 この、「シャント、グラフトの閉塞の危険性」を回避する為に、以前考案したミトンを更に改 良し、病棟だけでなく、「透析の穿刺中に使用できるもの」として作成し使用することにした。2 現状と問題点 (1) 自己抜去防止の為、従来のミトン(写真1)を使用しているが、通常の使用法では、シャ ント閉塞の危険性が発生する。 (2) シャント閉塞に配慮しゆるめにミトンを使用した場合は、手を振る、口に咥えるなどで簡 単にミトンが外れてしまいミトンとしての効果が得られない。 (3) ルート類を、患者様の視界に入らないよう寝衣の下から通したり、包帯やテープで固定す ることは、確実な抜去予防にはならない。 (4) ミトンと寝衣の袖とを粘着テープで繋げるようにして固定する方法(写真2)は、粘着テ ープを顔でこすったり、歯を使うことで外れてしまう。シャントの観察をする際は毎回粘 着テープをはがし、そのあとは固定をし直す必要があり、とても時間がかかり業務負担が 増える。 (5) 不穏のある患者様には、透析穿刺中など、付き添いが必要な状態となることも多く、業務 負担が増える。 (6) ミトンと寝衣の袖とを粘着テープで繋げるようにして固定する方法(写真2)では、観察 の度にテープをはがすため、不要な診療材料を使うことになりコストがかかる。 3 改善策 シャント肢の腕は締め付けてはいけないため、腕全体を包むことのできる筒状のアームカバ ーと抑制用のミトンを縫い付け、シャントの観察がしやすいように、ファスナーを取りつけた。 アームカバーの肩側には長い紐を取りつけ、反対側の肩で襷掛けにするようにし患者様自身で は外すことができないミトン(アームミトン)を作成した。(写真3) テープでミトンと袖をとめるより簡単に観察ができるようになり、オープンファスナーを取 り付けたことで透析中にも使用可能となった。(写真4) これにより手首やその他シャント吻合部を含む上肢を圧迫することなく、手指の動きを制限 することができるようになった。(写真5) 4 結果 「アームミトン」を使用した患者様にかかわった、9階病棟、透析室看護師、他部署計15 名にアンケートを実施した。使用対象となった患者様に対しては、認知症や不穏がある患者様 であったためアンケートは実施しなかった。アンケート結果概要は以下の通りであった。(詳細 は添付資料参照のこと) (1) アームミトン使用によって自己抜去がなく患者様の安全を保つことができたかを聞いた。 結果、できたと回答したスタッフは80%であり、アームミトン使用により自己抜去がな く患者様の安全が確保できたと考える。 (2) シャント肢を圧迫せず患者様の安全を保つことができたかを聞いた。結果、できたと回答 したスタッフは93%であり、アームミトン使用によりシャント肢を圧迫せず、患者様の シャント閉塞の危険防止につながったと考える。 - 47 -
(3) シャントの観察は容易にできたかを聞いた。結果、できたと回答したスタッフは73%で アームミトン使用により、シャントの観察や、透析中の静脈圧上昇時等の接続部の観察や 操作等も容易にでき、業務短縮ができたと考える。 (4) 使用感で患者様に不快がなかったかを聞いた。結果、なかったと回答したスタッフは6 0%であり、アームミトン装着による痛みや不快感は少なかったのではないかと考える。 (5) 視覚的に患者様に不快がなかったかを聞いた。結果、なかったと回答したスタッフは6 7%であり、アームミトン使用による患者様に与える精神的不安、不快感は少なかったの ではないかと考える。 (6) テープ固定、ルートを寝衣内を通すなど以前の自己抜去予防と比べ着脱時間等は短縮でき たかを聞いた。結果、短縮できたと回答したスタッフは67%であり、業務負担が軽減し たと考える。 (7) 自分の一回の勤務帯でどの位の時間が短縮されたと思うかを聞いた。結果、1~20分と の回答があり、着脱時間の短縮だけでなく、抑制の確実性から付き添い時間が短縮したこ となども含め、業務負担が軽減したと考える。 (8) その他、意見を聞いた。「付け方によってはプラスチックパーツが背中や肋骨にあたって しまう。」「患者様の腕の長さによって長さ調節が必要だが、うまくできなかった。」など、 肩ひもに関する意見があったので、今後の改善に活かしていきたい。 5 まとめ 今回の QC 活動で作成したアームミトンは、シャント閉塞などのトラブルを起こすことなく、 透析穿刺中にも患者様の安全を確保できたという結果を得ることができた。また、視覚的にも 患者様の不安を軽減でき、看護師の業務負担の軽減に繋げることも出来た。 看護師も、患者様も、今回のミトンのような抑制具を付けることを望んではいない。しかし ながら、患者様の安全を考え、やむを得ず使用しなければならない場合が多く、使用時は少し でも患者様の不安や不快感が軽減できるように努力していかなければならない。 今回の QC 活動を通して、これまで当たり前に実施してきたことの改善点を見つけ、行動した ことで、患者様の安全の向上と、看護師の業務負担の軽減に繋がる結果を得られ、とてもやり がいを感じた。この経験を活かし、今後も患者様、スタッフの要望をキャッチし、より良い改 善を提案、実践し、安全な医療を提供していきたいと考える。 《添付資料》 添付 1 アンケート用紙 添付2 アンケート結果 添付3-①② 写真
添付資料1
透析室
病棟
他部署
できた
どちらとも
いえない
できない
できた
どちらとも
いえない
できない
できた
どちらとも
いえない
できない
なかった
どちらとも
いえない
あった
なかった
どちらとも
いえない
あった
短縮した
どちらとも
いえない
短縮しな
かった
2.シャント肢を圧迫せず患者様の安全を
保つことができましたか?
4.使用感で患者様に不快はなかったと
思いますか?
5.視覚的に患者様に不快はなかったと
思いますか?
6.テープ固定、ルートを寝衣内を通すな
ど以前の自己抜去予防と比べ着脱時間
等は短縮されましたか?
9階・透析室QC係よりアンケートのお願い
平成23年11月12日
所属はどちらですか?
3.シャントの観察は容易にできました
か?
9階透析室QC係
1.使用によって自己抜去がなく患者様
の安全を保つことができましたか?
・シャント、グラフトを持つ患者様に対して、不穏時に行う、これまでの自己抜去防止の方法(通 常のミトン使用、テープ固定時等)と比較し、回答お願いします。今年度のQCのテーマは透析室と連携し、「不穏な患者様に対して、抑制を使用す
る際、『シャント閉塞の危険がなく、透析穿刺中にも使用できるミトン』の作成」活
動を行ってきました。
お忙しいところ恐れ入りますが、今年度作成したミトンを使用したスタッフの皆さん
を対象とした下記アンケートにご協力をお願いいたします。
ご協力ありがとうございました。
おそれいりますが11/18(金)12時までに回答お願いいたします。
8.その他、ご意見がございましたら、ご
自由にご記入ください。
(6.で短縮したと答えた方)7.自分の一回の勤務帯でどの位の時間
が短縮されたと思いますか。
分
- 49 -添付資料2 できた
80%
どちらともいえない20%
できない0%
できた93%
どちらともいえない7%
できない0%
できた73%
どちらともいえない20%
できない7%
なかった60%
どちらともいえない27%
あった13%
なかった67%
どちらともいえない27%
あった6%
短縮した67%
どちらともいえない27%
短縮しなかった6%
5.視覚的に患者様に不快はなかったと
思いますか?
6.テープ固定、ルートを寝衣内を通すな
ど以前の自己抜去予防と比べ着脱時間
等は短縮されましたか?
(6.で短縮したと答えた方)7.自分の一回の勤務帯でどの位の時
間が短縮されたと思いますか。
1~20分との回答様々
8.その他、ご意見がございましたら、ご
自由にご記入ください。
・患者さんの腕の長さによって、紐の長さの調節がうまく出来な かった。動きの激しい人はきつくなってしまうかもしれない。 ・圧迫だけでなくミトン脱を防げたので良かった(シャント圧迫を気 にしてミトン装着が甘くなって自己で脱いでしまうことがあったの で)。 ・ロックのプラスチックが背中や肋骨にあたりいたくないかなと 思った。いろいろ改良されて使いやすくなりました。 ・物品を取りに行ったり包帯を巻く手間がない。4.使用感で患者様に不快はなかったと
思いますか?
アンケート結果
対象 15名 (透析室:6名 病棟:8名 リハビリ科:1名)
1.使用によって自己抜去がなく患者様
の安全を保つことができましたか?
2.シャント肢を圧迫せず患者様の安全
を保つことができましたか?
3.シャントの観察は容易にできました
か?
添付資料3-①
写真(1) 従来のミトン
写真(2) ミトンと寝衣の袖を粘着テープで固定
写真(3) アームミトン
添付資料3-②
写真(4) 透析用留置針穿刺後の観察