平成
26 年度共同研究
国境をまたいだ
地域協力の在り方についての比較研究
平成
26 年度共同研究
国境をまたいだ
地域協力の在り方についての比較研究
沖縄県
※ 本 書 に 掲 載 さ れ た 論 文 な ど の 内 容 は 、全 て 執 筆 者 の 個 人 的 見 解 で あ り 、沖 縄 県 お よ び 執 筆 者 が 所 属 す る 機 関 の 公 式 的 見 解 を 示 す も の で は あ り ま せ ん 。 ※ 本 書 の 一 部 を 引 用 す る 場 合 に は 、必 ず 出 所 を 明 示 し て く だ さ い 。 無 断 転 載 は お 断 り し ま す 。 ※ 本 書 の 内 容 は 、も と と な る 調 査 研 究 が 行 わ れ た 当 時 の も の で す 。
目次
序章
「沖縄を取り巻く国際環境と地域協力の意義」
青山学院大学国際政治経済学部
教授 羽場 久美子
...
1
第
1章 アジアの地域統合と越境的な地域社会の変化
∼メコン地域における境界地域における人の移動から∼
法政大学大原社会問題研究所
兼任研究員
法政大学社会学部
兼任講師 渋谷 淳一
...
7
第
2章 防災分野での地域協力の研究
EU 市民保護からのインプリケーション
知事公室
地域安全政策課 調査・研究班
主任研究員 中林 啓修 ...
25
執筆者一覧 ...
39
序章
沖縄を取り巻く国際環境と地域協力の意義
青山学院大学国際政治経済学部 教授 羽場 久美子 1.沖縄を取り巻く国際環境 現代社会では歴史的なパワーシフトが展開している。それは、端的には欧米から アジアへの力の移行という形で進んでいる。この移行の過程で、先進国型の近代と いうものが様々な形で揺さぶられ、21 世紀の新しい国際秩序が生み出されようとし ている。 パワーシフトを提起した代表的な研究者の一人であるトフラー(Toffler, Alvin) はパワーを軍事力・経済力・知力という 3 つの側面で説明した。ここでいう知力と はおおよそ科学技術力と捉えることができる。 領土不安の根源に先進国型の近代が揺さぶられていることによる不安定化があり、 そしてその背景にパワーシフトがある。先進国が頭打ち状態になり、新興国がそれ を凌ぐ形で成長している。中でも中国は、有り余る経済力を軍事力の向上や世界へ の投資へと振り向けている。最近では米国主導による資本主義経済の拡大を指すワ シ ン ト ン ・ コ ン セ ン サ ス と い う 言 葉 に 対 し て 中 国 主 導 の 経 済 政 策 と い う 意 味 で 北 京・コンセンサスというようなことがいわれている。実際に中国は、アジアやアフ リカ諸国そして最近ではウクライナなどに対して積極的な投資や資金提供を行って いる。 グローバル時代の新興国が先進国に挑戦しつつあり、その挑戦を受ける側には精 神的不安が発生し両者の間で政治的緊張関係が起きている。これに対してナイ(Nye, Joseph S.)はある講演で、「恐れるな。恐れは緊張を生み、そしてそれが安全保障の 悪化に繋がる。我々は恐れるのではなくそれをチャンスと据えるべきだ」と発言し ている。事実、米国は、アジアの成長をチャンスと据えてアジアに接近し中国と繋 がり、そこから利益を得ようと試みているように見える。 グローバリゼーションという現象は現代にのみ当てはまるものではないが、21 世 紀のグローバリゼーションの特徴は競争力(competitiveness)にあると考えられる。 EU は 2000 年にリスボン戦略として競争力と教育力の強化を打ち出している。とこ ろで、欧米が近代化した頃から競争力は重要な要因だったが、現代では競争力を構
2 成する内容が変化している。かつて競争力を構成する要素といえば、強い軍事力、 国家経済、そして技術力であった。しかし、現在の競争力の内容は安い賃金、安い 商品、そして巨大市場の 3 つだと言える。賃金と商品が安いことに加えて市場が広 がることで利益が発展していくのである。巨大市場はとりもなおさず巨大人口を意 味するが、安い労働力、安い商品、巨大な人口というのは 20 世紀においては貧困の 象徴であった。しかし、トフラーが言うところの知力による科学技術の発展が、か つて貧困の象徴であったこれら 3 つの要素を競争力に転化した。 その意味で、競争力が最重視される現代のグローバリゼーションは、時代として は、いわば「知の時代」だと考えることができる。この時代に我々に求められてい ることは、技術力・地域協力・そして FTA の推進であって、軍事的敵対と不安定化 を促進することではない。米国もまたこのことをよく理解しており、経済面では中 国と結びつきつつ、友好国とは軍事面で結びつくというある種の「ダブルスタンダー ド」をとっている。オバマ大統領は 200 万人雇用、輸出倍増の二つを第二期の最大 の公約として掲げているが、これを実現できるのは軍事協力ではなく中国との経済 協力だと考えているからである。 2.新興国の成長と日本の課題 事実、中国経済は大きな成長を続けている。2010 年の段階で、中国の GDP は 5 兆 8,000 億ドルであったのに対して日本は 5 兆 4,000 億ドルであった。日本は中国 に追い抜かれたとはいえ、そこまで大きなひらきはなかった。しかし、2014 年 6 月 に発表された 2013 年の GDP は、2012 年の 5 兆 9,000 億ドルから 1 兆ドル下がっ た 4 兆 9,000 億ドルであったのに対して、中国は、2012 年と比べ約 1 兆 5,000 億ド ル増の 9 兆ドルという数字が出ていた。2010 年においては微々たる差だった日本と 中国の GDP が、2013 年には中国の GDP は米国(約 17 兆ドル)の半分を超えるほ どにまで成長しており、日本との間に大きな差が生じている。 中国を含む新興国のリーマンショック以降の成長は驚異的である。2008 年∼2009 年に米国や EU、日本やイギリスがマイナス成長をしている中で、中国やインドは 7%台の成長を維持した。その後も成長を続け、EU や米国が 3%台の成長を続けた 2010 年には、中国とインドはそれぞれ 10%、8%の成長率を記録した。成長に伴う 社会階層の変化も重要である。ここ 10 年ほどでアジアの中間層は 1 億人から増え続 け、2010 年時点で 10 億人に達している。また、中国では家計の 1/4、GDP の半分 程度が貯蓄とされ、これらが投資にまわっている。こうした中間層の拡大を含む成 長の結果、2015 年にはアジアの地域協力関係は経済面では EU や米国を超えていく と考えられる。すなわち、アジアは生産市場としてだけでなく世界の消費市場にな
ると考えられている。 目を日本に転じると、尖閣諸島、竹島・独島、北方領土などをめぐり、ほとんど の隣国と対立している状況をどのように解決していくかが課題となる。これを克服 していかなければアジアの成長を武器に経済的な復活をとげることは難しくなるか らである。 ここで重要なのは地域の安定と協力であり、相互に協力していくことで ASEAN+ 日中韓は米国に並ぶだけの経済力がある。ある研究では、アジアの域内貿易が欧州 連合(EU)の 65%とほぼ変わらない 60%台になってきているということがわかった。 すなわち、アジアの経済協力関係は EU 並みに発展している。 北京と東京、つまり政府と政府とだけで協議を続けることでどうしても対立が生 まれてしまうのならば、地域こそがセンターになるべきではないだろうか。その際、 ハブとしての沖縄の役割は極めて重要である。台湾、韓国、朝鮮半島に近いところ で地域経済圏を発展させることができれば、アジアは世界のトップに立つことがで きるという自負をもって協力を促進していくべきだと考えられる。既述の通り、ア ジアには今や 10 億の中産層が存在しているが、その一割は将来富裕層になるといわ れている。つまり、日本の人口とほぼ同じ 1 億人の人々がアジアの富裕層になり、 世界の様々な物を買い漁ることができる時代がくるのである。こうした 10 億人の中 間層を基盤としながら、日本は周辺諸国と協力関係を結んでいくべきではないだろ うか。 3.東アジアの地域協力と日本・沖縄の可能性 先述のとおり、アジアの地域協力関係は進行してはいるが、先行しているとされ る欧州とはだいぶ異なった発展となっている。欧州の地域統合は非常にシンプルで ある。一例として、EU で経済協力関係を固め、安全保障では米国やカナダも参加す る NATO がある。一方、アジアの地域協力は、それに該当するものはないといわれ ながらも ASEAN をはじめとした 13 の組織がある。その内の 6 つの枠組み(APEC、 ARF、6 者協議、ASEAN+10、ASEAN+8、EAS)には米国も参加しており、そのほ とんどが 21 世紀に作られている。米国だけでなく、EU やロシアもこれらアジアの 地域協力には積極的に参加している。ロシアは自らをユーロアジアであるといい、 米国はリバランス政策をとるなど急速にアジアに接近してきている背景として、ア ジアと結びつくことが自国にとって有利になるという考えがあるからである。 欧州とアジアでの地域協力をめぐるもうひとつの違いは、欧州は内側に向けて分 野別に機構化していることが挙げられる。ユーロゾーンや、パスポートがなくとも 国境間を移動できるシェンゲンエリア、経済領域などはすべて EU の内側にある。
4 これに対して、アジアは域外に広がり米国や EU、ロシアと結びついている。 筆者はこれを 21 世紀型の地域協力だと据えている。米国、ラテンアメリカや EU などは外と繋がることで自国の経済発展を実現しようとしている。そのため、今後 あらゆる地域がアジアとの結びつきを重要視していくと思われる。そうした中でア ジア型の地域協力発展というのは、今後研究に値する分野であろう。 具体的な方向性として、多元的な地域協力関係を進めていくことが極めて重要だ と考える。政治統合ではなく経済統合を進めていくことで、アジアの安定と発展・ 繁栄を実現していくことが重要だからである。 問題点は、13 ある組織の中にアジアがプロパーとなる組織が ASEAN、ASEAN+ 日中韓、南アジア地域連合の三つしかないことである。そのほとんどが米国やヨー ロッパ、ロシアにリードされているなか、アジアがプロパーとなる協力機構を強化 していくべきではないだろうか。2015 年には ASEAN+10 は、ASEAN の政治協力 にまで踏み込んでいく。日中韓はアジアの地域協力関係の中でも、もっとも険悪で あると思われるが、それを安定化させるだけで、米国型の経済圏を形成できること を認識すべきであろう。 今や日米同盟かアジアかという時代ではない。米国自身がアジアと結びつくこと で経済復興を図ろうとしている中で、日本が同じような政策をとって米国が反対す るだろうか。米国の場合、経済と安全保障を使い分けるダブルスタンダードのスタ ンスをとっているが、中国と韓国間、そして中国と台湾間でも同じようなスタンス が見られる。ならば、日本もそれにならうと良いのではないだろうか。東西に橋を 架けることを日本が、沖縄が可能としている。 日中で対立するのではなく、中国や韓国と経済共同を進め、沖縄が地域経済を復 興させ文化や芸能などのソフトパワーを活用しながら、共同関係を発展させていく ことこそが、米国や欧州が地域協力の中で目指していることでもある。パワーシフ トの時代に対立するのではなく、共存・共栄することが重要なのである。 4.日本の役割と本研究の意義 では、そのような時の日本の役割として何が考えられるのだろう。その答えの一 つはパワーシフトの三つ目に挙げた知力を強化し、シンクタンクとソフトパワーの 強化を図ることではないだろうか。欧州や米国では数千のシンクタンクがあり、大 学や地域、官僚やメディアが協力し、自国が発展していくために何が必要なのか議 論している。アジアの人々は非常に勤勉で賢いにもかかわらず、共同のシンクタン クがない。自国や地域の発展のために中国や台湾などと協働し、考えていくことが 必要なのではないだろうか。つまり、アジアシンクタンクのネットワークを市民側
から作っていくのである。 また、経済協力とともに、非伝統的安全保障といわれる食の安全・災害対策・伝 染病などに対して日本の技術力を活かしながら中国や地域の国々と協力していくこ とも重要であろう。これらは早急に行う必要がある。中国の成長スピードに追い抜 かれ、軍事力も経済力も科学技術力も中国が日本より優位に立ってしまえば、日本 の存在は不要になってしまうからである。だからこそ今、日本ができることを提案 していくことは極めて重要なのである。 国際社会のパワーシフトとそれに伴うアジア地域協力の可能性を考えた時、本共 同研究「国境をまたいだ地域協力の在り方についての比較研究」は沖縄と日本のこ れからを考える上で非常に示唆に富んだ研究と言える。 本共同研究では 2 本の研究論文が書かれている。東南アジアの地域協力について 書かれた渋谷論文では、メコン川を挟んだラオス―タイ国境における地域の経済的 発展とそれを取り巻く地域協力の進展や様々な課題について論じている。論文中で はラオスが工業国として台頭しつつある中で貧しいラオスと豊かなタイという関係 が徐々に変化し、これに伴う人の移動も「ラオスからタイへ」という一方的なもの からラオス国内での移動もうまれつつある姿が描かれている。こうした劇的な地域 の発展はここまで論じてきたパワーシフトやアジアのダイナミズムの証左とも言え る現象であろう。渋谷論文では、一方でそうしたダイナミズムのもう一つの側面で ある様々な課題についても言及している。ヒューマン・トラフィッキング(人身売 買)や移民労働者をめぐる諸課題は地域で共有し解決の道を探るべき課題であり、 今後の研究の深化が望まれる領域でもある。 もう一つの論文である中林論文では、大災害等に際して市民の生命や財産を守る ための取り組みである市民保護分野について、EU の制度的な発展と政策の内容が描 かれている。ある機能に特化した地域協力は、本稿でも指摘したとおり欧州の得意 とするところである。同時に、中林論文が扱っているテーマは、非伝統的安全保障 領域という今後アジアでの協力の深化が望まれる分野における欧州の先行事例であ り、今後のアジアでの地域協力を考える上で示唆的である。 両論文に共通するのは、地域協力の多元性に言及している点である。渋谷論文で は、タイとラオスの両国政府だけでなく、両国国境を行き交う人々の属性や両国を 取り巻くメコン川流域の経済協力、そして ASEAN という多様なアクターについて 言及されている。中林論文でも、EU 自身の市民保護機能だけでなく、地元自治体や ボランティア組織の育成を含む多様な主体による市民保護能力の発展が EU 自身の 市民保護の柱となっている点を指摘している。 また、論文の対象地域と沖縄県とを取り巻く環境の類似性について言及している 点も両論文に共通するポイントである。一見、規模も状況も違うように見える沖縄
6 と東南アジアあるいは欧州も、視点を絞り込み、専門家のフィルターを通すことで 様々な類似性が見出される。そこには沖縄が東アジア地域の中で発展し、独自の立 場と役割を獲得していくためのヒントが包含されている。 本研究が沖縄県の地域協力研究を発展させる一つのきっかけとなることを願い、 共同研究の緒言としたい。
第1章
アジアの地域統合と越境的な地域社会の変化
∼メコン地域における境界地域における人の移動から∼
法 政 大 学 大 原 社 会 問 題 研 究 所 兼 任 研 究 員 法 政 大 学 社 会 学 部 兼 任 講 師 渋 谷 淳 一 は じ め に ア ジ ア の 地 域 統 合 は 、 し ば し ば 比 較 さ れ る 欧 州 の ケ ー ス と 異 な り 、 様 々 な 枠 組 み が 重 層 的 に 存 在 し 、 そ の 総 体 と し て 理 解 さ れ る べ き で あ ろ う 。 そ れ は 多 国 間 で の 統 一 さ れ た 取 り 組 み で あ る こ と も あ れ ば 、2 国間での覚書の束として形成されることも あ る 。 こ う し て 形 成 さ れ た ア ジ ア の 地 域 統 合 で あ る が 、 政 府 間 の 政 治 的 な 協 力 や 経 済 圏 形 成 等 の 地 域 開 発 へ の 関 心 に 比 べ 、 そ の 結 果 と し て ど の よ う な 越 境 的 な 地 域 社 会 が 形 成 さ れ て い る か と い う 社 会 的 な 側 面 に 関 し て は 十 分 な 関 心 が 払 わ れ て い る と は 言 い 難 い の が 現 状 で あ る 。 か つ て は ア ジ ア の 地 域 統 合 と い う と 、 冷 戦 時 代 の ASEAN(東南アジア諸国連合、以下 ASEAN)のようなそれぞれの国民国家統合を 促 進 す る た め 、越 境 的 な 地 域 社 会 の 登 場 を 敬 遠 す る 特 徴 を 持 っ て い た 。し か し 、1990 年 以 降 の グ ロ ー バ ル 化 や 通 貨 危 機 を 経 る 中 で 、 デ ・ フ ァ ク ト な 地 域 化 と 呼 ば れ る よ う な 、 地 域 規 模 で の 経 済 ・ 社 会 の 統 合 が 政 府 間 の 協 力 や 制 度 の 有 無 に 関 係 な く 成 立 し た 地 域 と 見 な さ れ て い る 。 本 稿 で は 、ア ジ ア の 地 域 統 合 の 中 で もCLMV(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ ベ ト ナ ム ) と 呼 ば れ る 低 開 発 地 域 に あ た る 国 々 を 含 む メ コ ン 地 域 の ケ ー ス か ら 、 こ う し た 統 合 に よ り 地 域 社 会 と で も い う べ き 越 境 的 な 空 間 が 生 ま れ 、 ど の よ う な 変 化 が 生 じ た の か を 、 人 の 移 動 を 中 心 に 考 察 す る も の で あ る 。 具 体 的 に は タ イ と ラ オ ス の 境 界 地 域 を 軸 に 検 討 を 行 う 。両 国 国 境 に は 1990 年代以 降 、 国 際 協 力 ・ 地 域 協 力 に よ り 、 国 際 橋 が 設 け ら れ 現 在 ま で に 4 本が開通した。そ し て 、 脆 弱 な 状 況 に あ っ た 交 通 イ ン フ ラ は 整 備 さ れ 、 域 内 都 市 間 を 繋 ぐ 3 つの経済 回 廊 と 呼 ば れ る 道 路 網 が 構 築 さ れ ( 図 1)、人やモノの移動を促している。現在、メ コ ン 地 域 へ の 経 済 的 関 心 は 極 め て 高 く 、 こ う し た 境 界 地 域 で ビ ジ ネ ス に 成 功 し た 富 裕 層 も 登 場 し て い る 。 し か な が ら 、 一 方 で 非 正 規 移 民 や 彼 ら に よ る 労 働 、 ヒ ュ ー マ ン ・ ト ラ フ ィ ッ キ ン グ 、 越 境 的 な 犯 罪 と い っ た 問 題 へ の 懸 念 が 高 ま っ て い る 。8 ま ず 、 こ う し た 地 域 開 発 の 根 幹 と な っ た 地 域 協 力 枠 組 み で あ る 大 メ コ ン 地 域 経 済 協 力 の 概 観 を 把 握 す る 。そ の 上 で 、境 界 地 域 に お け る ビ ジ ネ ス 、出 稼 ぎ 労 働 、観 光 、 ト ラ フ ィ ッ キ ン グ 等 々 の 様 々 な 人 の 移 動 に つ い て 検 討 す る 。主 要 な 関 心 は 、1 つはこ う し た 人 の 移 動 の 実 態 と 、 地 域 社 会 へ の 社 会 ・ 経 済 的 な 影 響 で あ る 、 も う 1 つは、 そ う し た 地 域 化 に 対 し て ど の よ う な 政 府 間 で の 交 渉 や 、 政 府 の 制 度 の 取 り 組 み が な さ れ て い る か と い う 点 で あ る 。 以 上 を 総 括 し ア ジ ア の 地 域 統 合 が 地 域 社 会 や 境 界 地 域 に あ た え る イ ン パ ク ト を 検 討 し 、 わ れ わ れ は 何 を 学 び う る か 考 察 し た い 。 図 1 メ コ ン 地 域 と 経 済 回 廊 ( 筆 者 作 成 )
1 . ア ジ ア の 地 域 統 合 と 地 域 社 会 ア ジ ア の 地 域 統 合 は 、 か つ て は 地 域 協 力 程 度 の も の と し て 重 要 視 さ れ て こ な か っ た が 、1990 年代以降においては地域秩序を構成する不可欠の要素となっている。従 来 、 ア ジ ア の 地 域 統 合 が 重 視 さ れ て こ な か っ た 第 1 の理由は、地域統合を超国家的 な 組 織 を 志 向 す る も の と 捉 え 、 い わ ゆ る 欧 州 型 の 地 域 統 合 の よ う な 主 権 の 部 分 的 な 移 譲 を 含 む 政 治 統 合 が 主 眼 に お か れ 、 そ う し た 動 き が ア ジ ア で は ほ と ん ど 見 ら れ て こ な か っ た こ と に よ る と こ ろ が 大 き い 。 こ れ は 第 次 世 界 大 戦 後 の ア ジ ア 諸 国 の 多 く が 脱 植 民 地 化 と 近 代 国 民 国 家 形 成 と い う 難 題 の 中 で 国 際 社 会 と の 関 係 を 形 成 し な け れ ば な ら な か っ た こ と を 考 慮 す れ ば 、 当 然 の 結 果 で あ っ た 。 政 治 統 合 の 遅 れ 、 換 言 す れ ば 徹 底 し た 内 政 不 干 渉 は 、 現 在 も 色 濃 く 残 る も の で あ る が 、 次 の 点 に お い て は ア ジ ア の 地 域 統 合 は 無 視 で き な い も の と な っ た 。 ひ と つ は 事 実 上 の 経 済 統 合 が 進 ん だ こ と で あ る 、 具 体 的 に は ア ジ ア を 規 模 と し た 貿 易・生 産 の ネ ッ ト ワ ー ク が 1980 年代にはじまるアジアの経済成長の中で構築され た こ と で あ る 。 こ れ は 、 政 府 や 政 府 間 に よ る 意 図 、 あ る い は 政 策 が 不 在 と い う 意 味 で デ ・ フ ァ ク ト な 地 域 化 と 呼 ば れ る も の で あ る1。 ふ た つ 目 は 、 重 層 的 、 多 層 的 と 呼 ば れ る よ う な 政 府 間 に よ る 地 域 主 義 の 乱 立 で あ る 。 こ れ は 2 つの意味を持つ、1 つは地域の創出という側面で、アジア、東南アジ ア 、 東 ア ジ ア 、 南 ア ジ ア 、 ア ジ ア 太 平 洋 と い っ た 形 で 様 々 な 地 域 の 規 模 で 地 域 主 義 が 生 ま れ て い る 点 で あ る 。も う 1 つは主に機能面に注目したもので、ASEAN のよう に 包 括 的 な 統 合 を 目 指 す も の も あ れ ば 、ARF(ASEAN 地域フォーラム、以下 ARF) の よ う な 安 全 保 障 に 特 化 し た も の や 、APEC(アジア太平洋経済協力、以下 APEC) や GMS(大メコン圏経済開発、以下 GMS)のように経済統合のみを念頭に置くも の も あ り 、 そ れ ら は 重 複 す る 場 合 も あ る 。 各 々 の 地 域 主 義 は 基 本 的 に 独 立 し た も の で あ り 、 相 互 に 補 完 す る こ と を 企 図 す る も の で も な か っ た 、 そ の 意 味 に お い て は 大 小 含 め て 十 数 を 超 え る ア ジ ア の 地 域 主 義 は 乱 立 し 、 地 域 統 合 を 主 導 す る 核 の よ う な も の は 実 質 的 に も 、 理 念 的 に も 存 在 し な い の が 現 状 で あ る 。 し か し な が ら 、 冷 戦 後 こ の 地 域 で 国 家 間 戦 争 が 生 じ な か っ た と い う 点 と 、 い ず れ の 国 に お い て も 経 済 成 長 が 進 み ア メ リ カ 、 欧 州 に 並 び ア ジ ア が 世 界 経 済 の 3 極として勃興した点2を 踏 ま え 、十 分 に は モ デ ル 化 は さ れ て い な い が 、欧 州 と は 別 の 地 域 統 合 の 在 り 方 と し て 評 価 す る 声 も 大 き い 。 こ う し た 中 で 当 然 、 社 会 統 合 も 進 む 。 地 域 統 合 に お け る 社 会 統 合 は 政 治 ・ 経 済 ・
1 Hettne, Björn and Söderbaum, Fredrik, 2000, “Theorising the Rise of Regionness",
Contribution to New Political Economy, Vol 5, No 3(Retrieved February 10, 2015, http://gup.ub.gu.se/records/fulltext/191487/191487.pdf 最終閲覧:2015 年 3 月15 日)
10 安 全 保 障 と 統 合 の 主 要 な 4 領域の一角を占めるものである。これは国境が相対化さ れ る 中 で 、 社 会 間 が 統 合 さ れ 地 域 規 模 で 社 会 空 間 が 編 成 さ れ る こ と で 、 人 々 の 活 動 範 囲 の 変 化 し 、共 通 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ 、共 通 の 問 題 が 意 識 さ れ る 状 況 を 意 味 す る 。 地 域 統 合 に お い て 、 あ る 領 域 の 統 合 の 深 化 は 他 領 域 の 統 合 を 促 す も の で あ る と は 必 ず し も 言 い 切 れ な い が 、経 済 統 合 の 深 化 は 不 可 避 的 に 社 会 統 合 を も た ら す 。例 え ば 、 経 営 者 か ら 労 働 者 に 至 る ま で 越 境 的 な 移 動 が 生 じ 、 そ う し た 移 動 が も た ら す 新 た な 課 題 と そ れ に 対 す る 対 処 を 求 め ら れ る か ら で あ る 。 欧 州 で は 人 ・ モ ノ ・ サ ー ビ ス ・ 資 本 の 域 内 移 動 の 自 由 化 を 進 め る 一 方 で 、 労 働 者 や 社 会 的 弱 者 と い っ た 取 り 組 み も 統 合 の 社 会 的 な 側 面 と し て 同 時 に 進 行 し 、 経 済 成 長 は 社 会 的 結 束 を 強 め る も の で な け れ ば な ら な い と さ れ た 。 ア ジ ア で は 対 照 的 で 、 社 会 ・ 経 済 の 統 合 が 政 府 間 の 地 域 主 義 に 先 行 し て い る た め 、 こ う し た 側 面 へ の 取 り 組 み は 後 手 に 回 っ て い る 。 後 述 す る よ う に 、 数 百 万 人 規 模 で の 非 正 規 移 民 を 生 み 出 し 、 多 く は 受 け 入 れ 国 で 不 法 就 労 者 と し て 3K(3D)労働に従事するが、多くは十 分 な 収 入 も な く 法 に よ っ て も 保 護 さ れ な い 、 い わ ゆ る 脆 弱 な 状 態 に あ る 人 々 を 生 み 出 し て い る 。 ま た 、 各 国 政 府 の 伝 統 的 な 内 政 不 干 渉 主 義 の 障 害 と ア ジ ア に お け る 全 体 的 な 社 会 政 策 整 備 の 遅 れ も あ り 、 地 域 レ ベ ル で の 社 会 問 題 へ の 取 り 組 み も 遅 れ が ち で あ る 。 し か し な が ら 、 ア ジ ア の 地 域 統 合 は 決 し て 社 会 統 合 の 側 面 を 無 視 し て い る わ け で は な い 。 今 後 の 雛 形 と な り う る 東 南 ア ジ ア の ASEAN においては、後述す る よ う に そ の 憲 章 と 2015 年末に迫った共同体形成の中で、統合がもたらす新たな課 題 に 取 り 組 む 姿 勢 を 明 確 に 示 し て い る 。 こ の よ う な 大 き な 動 き の 中 で 登 場 し た 越 境 的 な 地 域 社 会 は 、 地 域 化 、 政 府 間 の 地 域 主 義 、 各 国 政 府 の 取 り 組 み 、 従 来 の 各 々 の 社 会 が 持 っ た 特 長 が せ め ぎ 合 う 中 で 構 成 さ れ て い る 。 本 稿 で は 様 々 な 移 動 を 通 し て 、 断 片 的 で は あ る が ど の よ う に 地 域 社 会 が 構 成 さ れ て い る か 検 討 し て い き た い 。 2 . 地 域 経 済 開 発 と 地 域 社 会 タ イ ‐ ラ オ ス 間 に お い て は 19 世紀から 20 世紀にかけてのタイの前身であるシャ ム 王 朝 と 当 時 ラ オ ス を 領 し た 植 民 地 フ ラ ン ス と の 境 界 を め ぐ る 対 立 の 中 で 、 メ コ ン 川 本 流 そ の も の が 国 境 と し て 位 置 づ け ら れ た 。 大 河 川 は そ の 両 岸 を 単 一 の 権 力 が 統 治 す る 場 合 、 交 易 の 要 衝 や 中 心 地 と な り 発 展 と 遂 げ る 場 合 が あ り 、 東 南 ア ジ ア の 前 近 代 国 家 の 多 く は そ う し た 性 質 を 持 っ た が 、 こ の 地 域 に お け る 近 代 の 訪 れ は メ コ ン 川 を 現 実 的 に も 象 徴 的 な 意 味 に お い て も 社 会 を 分 断 す る も の と な っ た 。そ し て 、第 2 次 世 界 大 戦 後 は ア ジ ア の 冷 戦 の 中 で 資 本 主 義 陣 営 と 社 会 主 義 陣 営 の 両 者 の 防 波 堤 と し て 機 能 す る こ と で 、 さ ら に そ う し た 性 格 を 色 濃 く す る 。
ラ オ ス や ベ ト ナ ム の 社 会 主 義 経 済 は 、 周 知 の よ う に 隣 国 の 資 本 主 義 国 家 タ イ の 経 済 成 長 に 大 き な 遅 れ を と っ た 。 ま た 、 タ イ 内 部 に お い て も メ コ ン 川 流 域 に あ た り 、 イ サ ー ン と 呼 ば れ る タ イ 東 北 部 は 、 何 度 か の 開 発 計 画 に も か か わ ら ず 、 中 心 部 に 当 た る バ ン コ ク と の 大 き な 格 差 が 生 じ て い る 。 さ ら に 、 東 南 ア ジ ア と い う 視 点 か ら 見 る と タ イ を 除 く と ASEAN 後期加盟国に当 た り 、1980 年代には経済発展を遂げた原加盟国との様々な格差は、ASEAN デバイ ド と し て 認 識 さ れ て い る 。 政 治 体 制 の 違 い は と も か く 、 経 済 格 差 は 是 正 す べ き 課 題 と し て 捉 え ら れ て い る 。 1980 年代後半以降のメコン地域各国の市場の開放、国際社会への編入は、上述し た よ う に 課 題 と し て 認 識 さ れ る 一 方 で 、 冷 戦 後 の 新 し い 地 域 秩 序 に 向 け 、 政 治 的 に も 経 済 的 に も 新 し い フ ロ ン テ ィ ア に 切 り 込 む チ ャ ン ス で も あ っ た 。 こ の よ う な 状 況 下 で 1990 年代前半には様々な経済協力枠組みが検討され、いくつかの会合がなされ た が3、ア ジ ア 開 発 銀 行( 以 下 、ADB)が 1992 年に提唱した大メコン圏経済開発(the
Greater Mekong Sub region project)に収斂される結果となった。
当 時 ほ と ん ど の 枠 組 み が 中 国 と ミ ャ ン マ ー を 除 い た メ コ ン 川 下 流 域 の 諸 国 を 対 象 と し た も の で あ り 、 そ の 基 幹 事 業 も メ コ ン 川 の 豊 富 な 水 資 源 利 用 、 す な わ ち 大 ダ ム 開 発 が 多 か っ た が 、 こ の 計 画 で は 中 国 西 南 部 ( 雲 南 省 等 ) を 含 む 5 カ国および 1 地 方 の 地 域 経 済 圏 の 構 築 が 目 的 と さ れ 、そ の 扱 う 重 点 分 野 も 農 業・エ ネ ル ギ ー・環 境 ・ 人 材 開 発・投 資・通 信・観 光・貿 易・輸 送・マ ル チ セ ク タ ー の 10 分野と、水資源開 発 に 拘 る も の で は な か っ た 。GMS はメコン地域 6 カ国すべてがメンバーであり、そ の う ち 2 か国以上が合意もってプロジェクト化するという、柔軟なプラグマティズ ム の 下 で 運 営 さ れ て い る4。 現 在 で は 、 こ の 協 力 を 経 て GMS サミットと呼ばれる、 首 脳 会 議 も 行 わ れ る に 至 っ て い る 。 こ れ ま で の 成 果 と し て 、 特 に 強 調 す べ き は 交 通 網 の 整 備 で あ る 。 タ イ を 除 く こ の 地 域 の 道 路 は 、2000 年当時においても舗装もままならず、雨季(5 月から 10 月) に は 泥 道 と な り 大 変 な 悪 路 と な る こ と で 有 名 で あ っ た が 、約 20 年かけてこれを整備 し 、 ほ ぼ 東 西 、 南 北 の 回 廊 を 整 備 、 タ イ と ラ オ ス 間 の メ コ ン 川 を 跨 ぐ 国 際 橋 も 4 本 建 設 し た 。 こ れ に よ り 中 国 雲 南 省 か ら ラ オ ス ・ タ イ を 経 て マ レ ー シ ア に 抜 け る 南 北 の ル ー ト 、 ベ ト ナ ム か ら ラ オ ス を へ て タ イ 、 将 来 的 に は ミ ャ ン マ ー ・ イ ン ド に 抜 け る 東 西 の ル ー ト が よ う や く 構 築 さ れ た こ と に な る 。 こ れ ま で の 小 規 模 な 貿 易 関 係 か ら 、 地 域 規 模 の 貿 易 ・ 生 産 ネ ッ ト ワ ー ク と 生 む 土 台 と な る こ と が 期 待 さ れ 、 す で に
3 この時期の過程については拙稿を参照。渋谷淳一、「「メコン」地域主義と「公共圏」: 開 発 と 環 境 問 題 の 視 点 か ら 」『 法 政 大 学 大 学 院 紀 要 』65号、2010年、89-100頁。 4 小笠原高雪、「メコン地域における開発協力と国際関係」石田正美 編『メコン地域開 発 残 さ れ た 東 ア ジ ア の フ ロ ン テ ィ ア 』 ア ジ ア 経 済 研 究 所 、2005 年、47 頁。
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そ の 片 鱗 を 見 せ て い る 。 表 1 はメコン地域の概況をまとめたものである。1 人当た り の GDP を地域全体で見ると、アジア通貨危機による大きな失速があったものの、 こ こ 15 年で約 2 倍の成長を遂げている。
表 1 メ コ ン 地 域 の 概 況
IMF Data and Statistics よ り 作 成 ( 1 部 推 計 値 を 含 む )、 タ イ 東 北 部 に 関 し て は Office of the National Economic and Social Development Board よ り 作 成 。 3 . ラ オ ス の 経 済 の 変 貌 ― ― 農 林 水 産 業 の 後 退 と 新 し い 産 業 構 造 こ の よ う に 地 域 規 模 で の 経 済 開 発 の 機 運 が 高 ま る 中 で 、 ど の よ う な 経 済 ・ 社 会 の 変 化 が 生 じ て い る の か 、 南 北 に 細 長 い 国 土 の ほ ぼ 全 体 が メ コ ン 地 域 に お け る 境 界 地 域 に 当 た る と い っ て も 過 言 で は な い ラ オ ス の 経 済 成 長 を 見 て い く 。 市 場 開 放 後 の 経 済 が ア ジ ア 通 貨 危 機 に よ り 通 貨 の 急 落 で い っ た ん は 低 成 長 に 落 ち 込 む が 、2000 年以 降 年 率 6%以上の成長率を達成し、8%に迫る勢いである。かつては GDP の半分を 占 め 主 要 産 業 で あ っ た 農 林 水 産 業 も 、2000 年の 52.1%から 2014 年には 23.5%にま で に そ の 割 合 を 減 ら し 、製 造 業 が22.7%から 33.2%、サービス業が 22.4%から 37.4% へ と 成 長 し て い る5。 表 2 ラ オ ス 経 済 の 概 況 IMF Outlook 2014 よ り 筆 者 作 成 。
5 Lao Statistics Bureau(http://www.nsc.gov.la/ 最終閲覧:2015 年 3 月 15 日)
年 1995 2000 2005 2010 2014
G D P(U S億ドル) 18.8 15.72 27.17 68.42 117.07 G D P成長率 7.045 6.324 6.767 8.131 7.368 一人当たりのG D P(U Sドル) 385.837 291.735 469.187 1,069.75 1,697.06
し か し な が ら 、 こ う し た 変 化 に も か か わ ら ず 、 農 林 水 産 業 人 口 は 依 然 と し て 労 働 人 口 の 8 割から 7 割を占めるとされ、2005 年のセンサスにおいても 82.4%6を 占 め て い た ( 次 回 の セ ン サ ス は 2015 年である)。仮に農林水産業から製造業やサービス 業 へ と 労 働 人 口 が 移 行 し て な い と す る な ら ば 、GDP の多くを占めるようになった第 2 次・第 3 次産業の経済成長の利益は国民全体で享受されていないことになる。ま た 、ラ オ ス 農 業 は 焼 畑 に よ る 稲 作 生 産 を 中 心 と し た 自 給 自 足 の た め の 農 業 で あ っ た 。 し か し 、 市 場 開 放 の 中 で 商 品 経 済 が 浸 透 し 生 活 が 変 化 す る こ と で 、 現 金 収 入 が 必 要 と な っ た こ と で 伝 統 的 な 農 家 は 変 化 を 迫 ら れ る 方 向 に あ る 。 近 年 で は 同 じ 農 家 の 中 で も キ ャ ッ サ バ 、 ト ウ モ ロ コ シ 、 コ ー ヒ ー 豆 等 の 換 金 作 物 の 生 産 へ と 切 り 替 え を 進 め る 農 家 が い る 一 方 で 、 こ れ ま で 通 り の 伝 統 的 な 農 業 を 行 う 農 家 も あ り 、 換 金 作 物 の 生 産 に 成 功 し た 農 家 と そ れ に 失 敗 し た 農 家 や 伝 統 的 な 農 家 の 間 に 経 済 的 な 差 が 生 ま れ て き て い る 。 ま た 近 年 で は コ ー ヒ ー を は じ め と し た 商 品 作 物 、 有 機 ・ 無 農 薬 野 菜 の 生 産 や 天 然 ゴ ム 生 産 を 目 的 と し た 外 国 か ら の 投 資 も 増 え て い る 。 で は 、 第 2 次産業はどのように勃興しているのか。多くの発展途上国と同じく外 国 か ら の 投 資 に よ り そ の 端 緒 を 開 く が 、 鉱 業 と 電 力 の 割 合 が 高 い の が ラ オ ス の 特 徴 で あ る 。 鉱 業 は 銅 の 採 掘 で あ り 近 年 の 調 査 で は ボ ー キ サ イ ト 等 の 豊 富 な 鉱 物 資 源 の 埋 蔵 の 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 電 力 は メ コ ン 川 お よ び そ の 支 流 の 水 資 源 を 利 用 し た 大 ダ ム 開 発 で あ る 。工 業 化 や 人 口 が 乏 し い ラ オ ス で は 電 力 需 要 は 限 定 的 で あ る が 、 タ イ ・ ベ ト ナ ム に お け る 電 力 需 要 は 大 き く 、 ラ オ ス か ら 2 国へ送電すること企図し て い る 。 こ の 意 味 に お い て 、 ラ オ ス は 周 辺 国 へ の 売 電 を 行 う ASEAN のバッテリー を 目 指 し て お り 、 そ の 中 で 大 ダ ム 開 発 は 国 家 プ ロ ジ ェ ク ト の 中 核 を 占 め て い る 。 現 在 、ダ ム 21 基で約 3,000MW の発電施設を持ち7、建 設・計 画 中 の 電 力 事 業 を 合 わ せ る と 約 20,000MW に達する。しかしながら、鉱山やダム開発に必要な莫大な資金を 自 国 で ま か な え な い ラ オ ス に お い て は 、 基 本 的 に 外 資 が 開 発 を 主 導 し 、 鉱 業 と 電 力 を 中 心 と し た 経 済 成 長 が そ の 利 益 を 国 民 全 体 へ の 波 及 さ せ る 効 果 は 限 定 的 で あ る 。 例 え ば 、大 ダ ム 開 発 に は 莫 大 な 融 資 を 受 け た り 、BOOT 方式8の よ う な 運 営 権 を 外 国 資 本 に 委 ね る こ と で 開 発 が 可 能 と な る も の で あ り 、 タ イ や ベ ト ナ ム か ら 得 ら れ る 売 電 収 入 は 10 年単位で返済や、外国資本の回収に当てられることとなる。 一 方 で 製 造 業 の 成 長 は ど の よ う に な っ て い る の か 。 従 来 、 ラ オ ス の 製 造 業 や 木 製
6 ラオス統計局 (http://www.nsc.gov.la/en/PDF/update%20Population%20%202005.pdf 最終閲 覧 :2015 年 3 月 15 日) 7 ラオスエネルギー鉱山省エネルギービジネス局 (http://www.poweringprogress.org/new/power-projects 最終閲覧:2015 年 3 月 15 日) 8 工事費用を民間のダム開発企業が負う代わりに、ダムの運営権を開発企業に一定期間 譲 渡 す る 方 式 。
14 品 や ビ ー ル な ど 一 部 の 例 外 を 除 い て 存 在 感 が 薄 く 、 工 業 製 品 は タ イ や 中 国 か ら の 輸 入 品 に 専 ら 依 存 す る と い う の が 一 般 的 な 評 価 で あ り 、 そ の 意 味 で バ ー ツ 経 済 圏 、 元 経 済 圏 と い う 従 属 的 な 市 場 と し て 扱 わ れ て き た 。 し か し な が ら 、 第 2 次産業も波は あ る も の の 成 長 を 続 け 、 近 年 で は 10%以上の成長率を示している。ラオスの輸出品 目 を 見 る と 鉱 物 、 電 力 に 次 ぐ 品 目 と し て 衣 類 が あ り 、 縫 製 産 業 が 製 造 業 の 中 心 で あ る 。 特 に タ イ に 縫 製 工 場 を 多 く 持 つ 日 本 企 業 の 進 出 の 機 運 が 高 ま っ て い る 。 こ う し た 中 で 、 ラ オ ス は 新 た な 工 場 建 設 地 と し て 注 目 が 集 ま っ て い る 。 こ れ に は 様 々 な 背 景 が 複 合 的 に 交 錯 し て い る が 、 第 1 にメコン地域の東西・南北の経済回廊が整備さ れ た こ と に よ り 、 内 陸 に あ り 港 を 持 た な い ラ オ ス で も タ イ や ベ ト ナ ム や 中 国 へ 工 業 製 品 を 安 定 し て 移 動 さ せ る こ と が 可 能 と な っ た こ と ( メ コ ン 川 は 自 動 車 を 運 ぶ よ う な 大 型 船 舶 も 運 行 可 能 で あ る が 、 ラ オ ス か ら 下 流 へ の 航 路 に コ ー ン ・ パ ペ ン と い う 滝 が あ り 、 実 質 的 に 海 へ の ア ク セ ス を 持 た な い 。 ま た 乾 季 に な る と 大 幅 に 水 量 が 減 少 す る た め 年 間 通 し て の 安 定 し た 輸 送 が 不 可 能 で あ る )。第 2 に、周辺工業国におけ る 労 働 者 不 足 と 、 最 近 で は タ イ で の 最 低 賃 金 の 大 幅 な 引 き 上 げ9に 見 ら れ る よ う に 、 周 辺 工 業 国 で の 賃 上 げ が は じ ま っ て お り 、 賃 金 が 安 い ラ オ ス に 注 目 が 集 ま っ て い る こ と 。 第 3 に、特にタイに進出済みの企業にとっては、タイ語とラオス語の近似性 か ら 、 タ イ で 育 て た 従 業 員 を そ の ま ま ス ラ イ ド さ せ る こ と も 可 能 で あ る の で タ イ ・ プ ラ ス ・ ワ ン と し て 進 出 に 前 向 き に 考 え る 方 向 に あ る こ と で あ る 。 こ う し た 流 れ を 受 け 、2010 年より急速に経済特区の建設が、タイとの国境地域に も あ た る 首 都 ビ エ ン チ ャ ン と 、 タ イ か ら ベ ト ナ ム へ の 中 継 地 に 当 た る カ ム ア ン 県 で 進 ん で い る 。 そ も そ も ラ オ ス の 工 業 化 は 、FTA や関税や様々な貿易障壁が解消され て も 、 ラ オ ス 人 口 が 約 650 万人と限定的であり、一方で周辺工業国の多くの人口を 擁 す る こ と か ら 危 ぶ ま れ て き た 。 し か し 、 上 述 し た よ う な 事 情 か ら 、 現 在 ま で の と こ ろ 成 長 が 期 待 さ れ る 傾 向 に あ る 。 ま た タ イ 側 で も 、 こ れ ま で 東 北 部 で は ほ と ん ど 建 設 さ れ て こ な か っ た 工 業 団 地 が 整 備 さ れ つ つ あ り 、 こ れ ま で 中 央 や 東 部 へ 出 稼 ぎ に 行 っ て い た タ イ 東 北 部 住 民 だ け で は な く 、 ラ オ ス か ら の 出 稼 ぎ 労 働 者 を 期 待 し た も の で あ ろ う 。 第 3 次産業は、各部門堅調な成長を遂げているが、中でも小売・卸売り部門が全 体 を 牽 引 す る 形 と な っ て い る 。2000 年前後までの首都ビエンチャンの印象は、首都 機 能 を 持 つ 町 村 と い う も の で あ っ た が 、 こ れ ま で 見 ら れ な か っ た 高 層 大 型 複 合 商 業 施 設 や 外 資 系 大 型 ス ー パ ー が ビ エ ン チ ャ ン に も 登 場 し て い る 。 ま た 、 富 裕 層 の 登 場
9 2010 年には 170∼206 バーツであった 1 日当たりの最低賃金は、2014 年から全国一 律 300 バーツ(約 900 円)に引き上げられた。なおラオスの最低賃金は月額約 78 ド ル 程 度 (2015 年 3 月末日まで 4 月からは約 110 ドルに値上げ)。タイとラオスの賃金 格 差 は 最 低 賃 金 水 準 で 2∼3 倍異なる。
と モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン が 急 速 に 進 ん で お り 、2012 年に中古車販売の規制もあり、ピッ ク ア ッ プ ト ラ ッ ク 型 の 新 車 販 売 台 数 が 急 速 に 伸 び て い る 。 ま た 携 帯 電 話 の 普 及 率 も 100%を超えている。こうした傾向は地方都市でも同様であり、2014 年 8 月に訪れ た カ ム ア ン 県 タ ー ケ ー ク で も 、 町 並 み は 依 然 と し て こ れ ま で の 高 層 建 築 物 が ほ と ん ど な い ラ オ ス 地 方 都 市 で あ っ た が 、 道 路 の 両 脇 に 新 車 が 横 付 け さ れ 、 自 動 車 販 売 店 が 軒 を 連 ね 、 ア ッ プ ル や サ ム ソ ン を は じ め と し た ス マ ー ト フ ォ ン を 操 作 す る 人 々 が 往 来 す る と い う 風 景 が 見 ら れ た 。 ま た 、 こ う し た 第 3 次産業の躍進の背景には外国人観光客の大幅な増加も見逃せ な い 。1995 年にはわずか約 35 万人程度だった入国者数が、2005 年には 100 万人を 超 え 、2009 年には 200 万人を早くも突破し、2013 年には約 378 万人にも上った10。 国 別 で 見 る と タ イ か ら の 入 国 者 が 圧 倒 的 に 多 く 約 206 万人である、これは国境通行 証 な ど の 整 備 に よ り 越 境 が 簡 易 化 し た こ と に よ る と こ ろ が 大 き い と 見 ら れ る 。 同 様 に 国 境 通 行 書 証 が 利 用 で き る ベ ト ナ ム と 中 国 か ら の 入 国 者 数 が 続 く 形 と な っ て い る 。 域 内 か ら の 旅 行 者 の 平 均 滞 在 期 間 は 2 日であり、小旅行や買い物、あるいは短期的 な ビ ジ ネ ス 等 が 主 流 で あ る と 考 え ら れ る 。 域 外 に 目 を 向 け る と 、 ヨ ー ロ ッ パ か ら は 約 21 万人が訪れ、アメリカからは約 6 万人となっている。観光資源としては世界遺 産 と な っ た 古 都 ル ワ ン ・ パ バ ー ン が あ り 、 欧 米 の メ デ ィ ア で 高 評 価 さ れ た こ と が 近 年 の 旅 行 者 の 増 加 に 繋 が っ て い る 。 ま た 景 勝 地 や ト レ ッ キ ン グ ・ ツ ア ー の 対 象 と な る 地 域 が 随 所 に あ る こ と も 強 み で あ る 、 こ れ ま で は 雨 季 に お け る 道 路 事 情 の 悪 化 に よ る ア ク セ ス の 問 題 が あ っ た が 、 こ れ は 回 廊 整 備 の 中 で 解 消 さ れ る 傾 向 に あ る 。 ま た 、 域 外 か ら の 観 光 客 の 滞 在 期 間 は 延 び る 傾 向 に あ り 、 現 在 は 8.4 日である。こう し た 中 で 手 狭 に な っ た ビ エ ン チ ャ ン の ワ ッ タ イ 国 際 空 港 の 拡 張 工 事 が 日 本 の 援 助 の 下 で 行 わ れ て お り 、2018 年には完成する予定である。 現 在 ま で の と こ ろ 、 域 外 か ら の 旅 行 者 の 多 く は バ ッ ク パ ッ カ ー で あ る 。 よ っ て 、 ホ テ ル も 彼 ら に 向 け た 1 泊 10 20 ドル程度のゲストハウスが主流であり、中級、高 級 ホ テ ル は 少 な い 。そ れ 故 に GDP に占めるホテル・レストラン産業のシェアは 1% に 満 た な い の が 現 状 で あ る 。 空 路 が 整 備 さ れ る 中 で よ り 広 い 層 に 向 け た 観 光 産 業 の 成 長 が 期 待 さ れ る 。
10 ラオスの観光関連の統計に関しては以下を参照。ラオス統計局 (http://www.nsc.gov.la/en/Tourism2.php 最終閲覧:2015 年 3 月 15 日)
16 4 . メ コ ン 地 域 社 会 と 様 々 な 人 の 移 動 ― ― ラ オ ス か ら タ イ へ 4 ‐ 1 . 非 正 規 移 民 と 出 稼 ぎ 前 項 で み た よ う に 、 ラ オ ス の 経 済 は メ コ ン 地 域 の 地 域 開 発 を 受 け て 、 大 き な 変 貌 を 遂 げ て い る 。 こ う し た 内 部 の 変 化 の 一 方 で 、 ラ オ ス 人 の 外 へ の 流 れ も ま た 重 要 で あ る 。 そ れ は 主 に タ イ へ の 出 稼 ぎ と い う 形 で 1990 年代以降顕著に現れている。 ラ オ ス か ら タ イ へ の 出 稼 ぎ に お け る 業 種 は 、 工 場 で の 非 熟 練 労 働 、 農 業 や 漁 業 関 係 で の 労 働 、 住 み 込 み の ハ ウ ス メ イ ド が 主 で あ る 。 現 在 で は 後 述 す る 登 録 制 度 が で き た が 、多 く は 密 入 国 や 短 期 滞 在 許 可 か ら の オ ー バ ー ス テ イ 状 態 に あ る 人 々 で あ り 、 い わ ゆ る 非 正 規 移 民 で あ り 労 働 許 可 を 持 た な い 出 稼 ぎ 労 働 者 で あ る 。 出 稼 ぎ の 理 由 と し て は 、 ラ オ ス 側 の 要 因 と し て は 、 教 育 レ ベ ル が 低 い 農 村 出 身 者 で も タ イ に 行 け ば ラ オ ス で 働 く よ り も2 倍から 3 倍以上の高収入を得られる点、1990 年 代 以 降 の タ イ か ら の 衛 星 放 送 や 商 品 の 流 入 の 中 で タ イ 文 化 に 親 し み を 持 ち 、 憧 れ を 持 つ 若 年 層 が 増 え て い る 点 、 す で に 述 べ た よ う に 言 語 的 な 近 似 性 、 民 族 的 な 親 し み と い っ た 点 、 ラ オ ス 内 で の 労 働 力 需 要 が 乏 し い 点 、 タ イ へ の 密 入 国 や 仕 事 を 斡 旋 す る ブ ロ ー カ ー が 根 付 い て い る 点 な ど が 上 げ ら れ る 。 ラ オ ス の 伝 統 的 な 農 村 は 半 自 給 自 足 的 な 農 業 と 、 山 や 川 で の 採 集 に よ り 決 し て 飢 餓 に 陥 っ て い る わ け で は な い が 、 現 金 収 入 は 低 く 、 市 場 経 済 が 浸 透 し 現 金 が 必 要 と な る 中 で 相 対 的 に 不 利 な 状 況 に 陥 っ て お り 、 そ う し た 生 活 に 見 切 り を つ け た 若 年 層 が タ イ へ の 出 稼 ぎ に 出 て い る 。 多 く は メ コ ン 川 両 岸 で 活 動 す る ブ ロ ー カ ー に 手 数 料 を 払 い 、 用 意 さ れ た 船 で 国 境 警 備 の 目 を か い く ぐ り な が ら メ コ ン 川 を 渡 河 し 、 タ イ 側 で ト ラ ッ ク 等 に 載 せ ら れ 指 定 の 町 ま で 運 ば れ て い く こ と に な る 。 タ イ 側 の 要 因 と し て は 、1980 年代後半には本格化する経済成長、とくに海外から の 直 接 投 資 に よ る 工 場 建 設 に よ る 労 働 者 需 要 が 高 ま っ た 点 、 一 方 で タ イ 人 労 働 者 の 海 外 へ の 出 稼 ぎ が は じ ま っ た こ と で 、労 働 者 不 足 に 陥 っ た 点 、タ イ 人 労 働 者 が 3K 労 働 と 呼 ば れ る よ う な 農 業 、 漁 業 、 建 設 業 、 工 場 で の 過 酷 な 非 熟 練 労 働 な ど が 敬 遠 さ れ る よ う に な っ た 点 が 挙 げ ら れ る 。 こ う し た 労 働 需 要 に こ た え た の は 、 当 時 す で に タ イ の 難 民 キ ャ ン プ で 生 活 し て い た ミ ャ ン マ ー 人 難 民 や 先 述 し た よ う な ラ オ ス や カ ン ボ ジ ア か ら の 非 正 規 移 民 で あ り 、 彼 ら が タ イ 経 済 の 低 層 を 支 え る 構 造 が 構 築 さ れ 、 そ れ が 現 在 ま で 続 い て い る 。 規 模 と し て は 域 内 の 移 民 が 約 200 万から 400 万人とされ、そのうちタイでの移民労働者 が 約 200 万人以上に上ると考えられている。ラオスからの移民労働者も約 20 万人か ら 30 万人と予測され、約 640 万人の人口のラオスにとっては人口の約 3%∼5%近 く が タ イ へ 出 稼 ぎ を し て い る 計 算 と な る 。 タ イ 政 府 は こ う し た 非 正 規 移 民 に 対 し て 当 初 は 黙 認 し て き た が 、 増 え 続 け る 非 正
規移民に対して 1992 年以降取り組みが始まるが、不十分で場当たり的なものであり11、 本 格 的 な 取 り 組 み は 2004 年の登録制度と呼ばれる政策まで先伸ばしにされた。登録 制 度 の 概 要 は カ ン ボ ジ ア ・ ラ オ ス ・ ミ ャ ン マ ー の 非 正 規 移 民 に 対 し て 一 時 滞 在 ID カ ー ド を 支 給 し 、2 年間(更新が 1 回まで可能、最大 4 年)の労働許可を与え、さ ら に パ ス ポ ー ト を 持 た な い 非 正 規 移 民 に 対 し て 送 り 出 し 国 と 協 力 し て 国 籍 証 明 を 行 う も の で あ っ た 。 登 録 機 会 は 紆 余 曲 折 の 中 で 2011 年まで設けられたが、約 200 万 人 以 上 が こ の 制 度 に 登 録 し た 。 ま た 新 た な 労 働 者 を 供 給 す る た め に 3 国と覚書を結 び 、 合 法 的 な 受 け 入 れ の 道 も 開 い た 。 こ れ ら の 政 策 は 一 定 期 間 の 労 働 と 帰 国 を セ ッ ト に し た 政 策 で あ り 、 出 稼 ぎ 労 働 者 と し て 管 理 す る 目 的 が あ っ た 。 し か し な が ら 、 登 録 制 度 は 手 数 料 が 高 額 で あ り 、 こ れ ら の 政 策 に よ り 非 正 規 移 民 を ど こ ま で 管 理 下 に 置 け た か は 不 明 で あ る 。 タ イ で は2014 年 5 月のクーデターにより軍事政権下に入るが、6 月に軍が隣国か ら の 移 民 労 働 者 を 取 り 締 ま る と い う 噂 が 流 布 し 、 カ ン ボ ジ ア 移 民 を 中 心 に 国 境 に 殺 到 す る と い う 事 件 が 生 じ た 。結 局 こ の 騒 動 で 約 20 万人が帰国したとされ、急激な労 働 者 不 足 は 深 刻 な ダ メ ー ジ を 与 え た 。 こ れ に 対 す る 軍 事 政 権 の 対 応 は 素 早 く 、 カ ン ボ ジ ア ・ ラ オ ス ・ ミ ャ ン マ ー の 非 正 規 移 民 の 暫 定 的 な 労 働 許 可 を 認 め 、 身 元 登 録 や 健 康 診 断 を 行 い 、 暫 定 労 働 許 可 証 を 発 行 す る ワ ン ス ト ッ プ セ ン タ ー を 全 県 に 設 け る こ と を 決 定 し 、6 月末にはカンボジア国境沿いの 4 県で開設した。この新たな登録 制 度 に 2014 年 6 月から 10 月までに労働者約 153 万人とその被扶養者約 9 万人が登 録 し た 。 ラ オ ス か ら も 約 21 万人の労働者が登録をした。2004 年当初は 3,800 バー ツ だ っ た 労 働 許 可 証 も 900 バーツまで下がり、かなり高額であった国籍証明(パス ポ ー ト 発 行 ) も 1,500 バーツにまで下がっている12。 こ う し た 動 き は 、 軍 事 政 権 ゆ え に 国 際 社 会 か ら の 人 身 売 買 や 劣 悪 な 移 民 労 働 者 の 環 境 な ど へ の 批 判 に 敏 感 で あ る こ と が 反 映 さ れ て い る と い う 解 釈 も 可 能 で あ る が 、 こ れ ま で 管 理 し 帰 国 を 促 す 対 象 で あ っ た 非 正 規 移 民 を 囲 い 込 む と い う 側 面 も あ る 。 地 域 開 発 、 回 廊 整 備 が 進 む 中 で ラ オ ス を は じ め カ ン ボ ジ ア 、 ミ ャ ン マ ー が 工 場 な ど の 投 資 先 と し て 注 目 が 集 ま る 中 で 、 タ イ へ の 出 稼 ぎ を 抑 制 す る 流 れ も あ る か ら で あ る 。 実 際 に 2015 年 4 月からラオスにおいて 44%という大幅な最低賃金の引き上げ も 成 さ れ る 予 定 で あ る 。
11 タイの移民労働者政策の変遷に関しては拙稿を参照。渋谷淳一、「「メコン」地域の人 の 移 動 と 規 範 形 成──タイにおけるメコン移民の問題を中心に」宮島喬 吉村真子 編 『 現 代 社 会 研 究 叢 書 7 移民・マイノリティと変容する世界』法政大学出版、2012年。
12 IOM Migrant Information Note Issue#25
(http://th.iom.int/index.php/migration-resources/facilitating-migration/migration -information-notes/Migration-Information-25-ENG/ 最終閲覧:2015 年 3 月 15 日)
18 4 ‐ 2 . 女 性 の 移 動 と ヒ ュ ー マ ン ・ ト ラ フ ィ ッ キ ン グ メ コ ン 地 域 の 非 正 規 移 民 の 特 徴 と し て 上 げ ら れ る こ と は 、 全 体 に 占 め る 女 性 の 割 合 の 高 さ で あ る 。 2013 年末のカンボジア・ラオス・ミャンマーに向けた労働許可証保持者(国籍証 明 済 み ) の 数 を 見 る と 、 全 体 の 84 万 7,130 人のうち 34 万 7,588 人が女性であり、 ラ オ ス 人 で は 3 万 4,491 人に対して女性は 1 万 5,001 人であった。これはタイ語と ラ オ 語 の 近 似 性 か ら 家 政 婦 と し て の 需 要 が あ る こ と が 大 き い 。 こ の よ う に ラ オ ス 人 の タ イ へ の 出 稼 ぎ は 男 女 と も に 現 れ て い る 傾 向 で あ る 。 そ し て 、 タ イ で の 滞 在 が 長 期 化 す る 中 で 、ラ オ ス 人 同 士 、あ る い は タ イ 人 と の 国 際 結 婚 、事 実 婚 状 態 に あ る カ ッ プ ル も 増 加 し 、い わ ゆ る 移 民 2 世も登場してきており、一部報道ではそうした移民 2 世 が 約 25 万人以上存在すると報じられている13。 ま た 、 こ う し た 登 録 制 度 の 遡 上 に 載 ら な い ヒ ュ ー マ ン ・ ト ラ フ ィ ッ キ ン グ を 視 野 に 入 れ る と 、 女 性 の 割 合 は さ ら に 高 い も の と な る 。 し ば し ば 、 タ イ は ト ラ フ ィ ッ キ ン グ の 受 け 入 れ 国 と し て 指 摘 さ れ る が 、 ア メ リ カ の 『 人 身 売 買 報 告 書 』 に お い て は こ こ 数 年 監 視 レ ベ ル が 引 き 上 げ ら れ て き た が 、最 新 の 2014 年版ではついに最低レベ ル ( 監 視 レ ベ ル 3)に位置づけられてしまった。2014 年 6 月にはタイの漁港におけ る 人 身 売 買 の 実 態 が 英 紙 ガ ー デ ィ ア ン に よ っ て 明 ら か に さ れ 国 際 社 会 の 批 判 は 高 ま っ て い る 。 具 体 的 に は 、 売 春 を は じ め と す る 性 産 業 、 花 嫁 の 売 買 や 強 制 結 婚 、 違 法 養 子 、 物 乞 い 、 強 制 的 な 3K 労働・家政婦労働など様々なトラフィッキングが行 わ れ て お り 、 そ の 形 態 か ら 女 性 が 主 な タ ー ゲ ッ ト と な っ て い る こ と が 伺 え る 。 最 近 で も 、2015 年 1 月に売春を強要されていた 67 人の 14∼20 歳のラオス人女性が保護 さ れ た 事 件 が あ っ た 。 ト ラ フ ィ ッ キ ン グ や 買 売 春 に つ い て 、2008 年の反人身取引法をはじめとして法制 度 の 整 備 は 近 年 進 ん で い る 。2014 年のヒューマン・トラフィッキングとして認知さ れ た 被 害 者 数 を 見 る と 合 計 は 595 人であり、そのうち 220 人が域内三国からの被害 者 で あ り 、 ラ オ ス 人 は 中 で も 108 人と最も多い14。 政 府 の 取 り 組 み や 国 際 社 会 か ら の 批 判 が あ る も の の 、 こ の 問 題 が 解 決 に 向 か っ て い る と は 言 い 難 い 。 こ の 理 由 と し て は 、 警 察 と 性 産 業 と の 癒 着 、 主 要 産 業 で あ る 観 光 業 と 性 産 業 の 関 わ り 等 、 タ イ 社 会 と 深 く 結 び つ い て お り 、 容 易 な 問 題 で は な い 。
13 Nation 紙 2014 年 7 月 24 日参照。 14 Thailand’s Trafficking in Persons 2014
(http://www.thaiembassydc.org/wp-content/uploads/2015/02/Thailands-Traffickin g-in-Persons-2014-Country-Report1.pdf 最 終 閲 覧 :2015 年 3 月 15 日)
4 ‐ 3 . 富 裕 層 の 登 場 と 越 境 以 上 の よ う な 出 稼 ぎ の 流 れ だ け で は な く 、 ラ オ ス の 経 済 発 展 の 中 で 生 ま れ た 富 裕 層 や 中 間 層 が タ イ へ 越 境 し 消 費 活 動 を 行 う ケ ー ス が 増 え て い る 。 富 裕 層 や 中 間 層 の 形 成 の 分 析 は ま だ ほ と ん ど な さ れ て い な い が 、 都 市 部 に お け る 高 級 車 販 売 や 欧 米 ス タ イ ル の カ フ ェ や レ ス ト ラ ン 群 の 出 店 に 大 き な 変 化 を 感 じ さ せ る 。 表 3 タ イ へ の 入 国 者 数 の 推 移 タ イ 観 光 省 統 計 よ り 作 成 。 2007 年 以 降 の ル ー ト 別 の 入 国 者 は 不 明 。 表 は タ イ へ の 正 規 入 国 者 を 示 し た も の で あ る が 、こ こ10 年でラオスからの入国者 は 約 16 万人から約 98 万人に増加している。当然のことながら非正規移民は含まれ な い の で 、 観 光 や 商 用 が 主 で あ る 。 ラ オ ス 人 が タ イ へ 越 境 す る 要 因 と な っ て い る の は 、 ラ オ ス で は 高 所 得 者 向 け の 産 業 が 乏 し い こ と 、 タ イ 地 方 都 市 で も ビ エ ン チ ャ ン よ り も 都 市 化 が 進 ん で い る こ と 、 タ イ の 方 が 食 料 品 ・ 生 活 必 需 品 か ら 贅 沢 品 ま で 物 価 が 安 い こ と 、 越 境 通 行 証 に よ り 簡 易 な タ イ へ の 入 国 が 可 能 で あ り 、 加 え て 自 家 用 車 の 乗 り 入 れ が 可 能 で あ る こ と な ど が 考 え ら れ る 。 以 上 の よ う に 、 非 正 規 移 民 、 ヒ ュ ー マ ン ・ ト ラ フ ィ ッ キ ン グ 、 消 費 の た め の 越 境 と 、 そ れ ぞ れ 性 質 は こ と な る も の の 、 国 境 は 相 対 化 さ れ 、 メ コ ン 地 域 社 会 と い う 規 模 で そ れ ぞ れ の 人 生 設 計 が 考 え ら れ て い る の が 実 態 で あ る 。 そ の 意 味 で 地 域 化 、 社 会 統 合 は 目 覚 し い 速 度 で 進 展 し て い る と い え る 。
20 5 . 人 の 移 動 と 地 域 制 度 こ う し た 中 で 、 地 域 レ ベ ル に お い て も 移 民 に 対 す る 取 り 組 み が は じ ま っ て い る 。 2008 年の GMS 首脳会議において、移民への取り組みを GMS 内で行うことが合 意 さ れ た 。2009 年の閣僚会議では移民の問題は人的資源開発分野に位置づけられ、 HIV や伝染病対策、トラフィッキングの撲滅などとともに、安全を促進することが 宣 言 さ れ た 。 ま た 、 同 年 の 人 的 資 源 開 発 ワ ー ク シ ョ ッ プ に お い て 、 域 内 の 非 正 規 移 住 労 働 者 の 存 在 と 移 住 労 働 者 と そ の 家 族 の 医 療 や 教 育 と い っ た 社 会 サ ー ビ ス へ の ア ク セ ス の 欠 如 を 指 摘 し 課 題 と し た 。2013 年から 2017 年の GMS 人的資源戦略フレー ム 行 動 計 画 に お い て も 、 職 業 訓 練 、 安 全 な 移 民 労 働 が 盛 り 込 ま れ て い る 。 ま た 、 タ イ と カ ン ボ ジ ア ・ ラ オ ス ・ ミ ャ ン マ ー 間 に お け る 新 規 の 非 熟 練 労 働 者 の 受 け 入 れ に 関 し て 2 国間協定も整備され、正規の移民受け入れと送り出しの制度が で き あ が っ た 。内 容 と し て は 現 在 の 登 録 制 度 に よ る 正 規 化 と ほ ぼ 同 様 で 、2 年(最大 4 年)の労働許可と、終了後帰国し 3 年を経れば再度受け入れが可能となっている。 毎 年 7 万人程度が正規の移住労働者として送り出されている。 GMS の立場としては、そもそも高度人材を養成すること困難な環境にあることと、 正 規 の 移 民 労 働 の 仕 組 み の 情 報 が 伝 わ っ て い な い こ と が 、 非 熟 練 な 非 正 規 移 住 労 働 者 を 生 じ さ せ て い る と し 、地 域 の 問 題 と し て 取 り 組 ま な け れ ば な ら な い と し て い る 。 ま た 、 今 後 の 方 針 と し て は 、2 国間了解覚書15( 以 下 、MOU)を軸として、より 多 く の 情 報 の 提 供 や 、 手 続 き の 簡 易 化 、 非 正 規 移 民 に 関 す る リ ス ク と 正 規 移 民 の 利 点 の 紹 介 、 そ し て MOU の 6 カ国間での拡大などがあげられている。また、非正規 移 民 に 対 す る 正 規 化 の 検 討 や 、 受 け 入 れ 国 に お け る 移 民 の 保 護 と い う 規 範 的 側 面 に つ い て も 言 及 し て い る 。 東 南 ア ジ ア で は 、ASEAN 共同体形成へ向けて 2007 年に ASEAN 憲章が制定され た 。 こ の 憲 章 は こ れ ま で 地 域 で 積 極 的 な 取 り 組 み が な さ れ て こ な か っ た 人 権 に つ い て 深 く 言 及 し 、14 条で ASEAN 人権機構の設置を約束したことで大きな注目を集め た 。ASEAN にとって「メコン」地域は、共同体を推進する上での最も大きな課題の ひ と つ で あ る 域 内 経 済 格 差 問 題 を 内 包 し て お り 、 大 き な 関 心 が 寄 せ ら れ て い る 。 ASEAN では 2000 年に NGO、大衆指導者、活動家、シンクタンク代表など 300 人 が 参 加 し た ASEAN 人民会議が開催され、いくつかの民間研究機関や NGO が提言 を 作 成 し た よ う に 、 有 識 者 レ ベ ル の 地 域 主 義 へ の 参 加 が は じ ま っ て い る 。 憲 章 の 作 成 過 程 に お い て 、ASEAN 首脳会議は有識者による賢人会議を設置し、憲 章 案 の 作 成 に 当 た ら せ た 。賢 人 会 議 が 先 述 し た 民 間 研 究 機 関 や NGO などの提言を受 付 け 、 彼 ら を 会 合 な ど に 招 き 議 論 を 行 い 、 そ の 成 果 を も っ て 憲 章 の 原 案 を つ く り あ
15 法的拘束力を持たない政府間の合意事項文書
げ た 。 ASEAN 憲章は、ASEAN の原則や規範をはじめて成文化したものであり、2015 年 に 創 設 さ れ る と す る ASEAN 共同体の骨格をなすものである。賢人会議の原案は 旧 態 然 と し た 内 政 不 干 渉 主 義 を 乗 り 越 え 、 停 滞 し た 地 域 統 合 を 活 性 化 さ せ 、 再 び 求 心 力 を 獲 得 す る 意 図 が あ っ た 。 こ の プ ロ セ ス の 中 で 移 住 労 働 者 の 権 利 の 保 護 は 賢 人 会 議 の 憲 章 に 盛 り 込 ま れ た 。 こ う し た 背 景 と し て は フ ィ リ ピ ン や イ ン ド ネ シ ア の よ う な 移 民 送 出 国 が 、 積 極 的 に 移 民 を 擁 護 し て き て き た こ と や 、 受 け 入 れ 国 マ レ ー シ ア や シ ン ガ ポ ー ル で も 移 民 を め ぐ る 問 題 を 長 期 に 扱 っ て き て お り 、 移 民 問 題 に 対 す る 関 心 と 一 定 の 共 通 理 解 が あ っ た の で は な い か と 考 え る 。 原 案 で は 、 憲 章 冒 頭 の ASEAN の目的を記した部分に「不利な部門や移住労働者 の 十 分 な 可 能 性 と 効 果 的 な 参 加 を 推 進 し 、 訓 練 や 、 マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス ( 小 規 模 融資)や、情報システムへの彼らのアクセスを増加させる」という項が設けられた。 し か し 、 加 盟 国 政 府 高 官 か ら な る 上 級 作 業 部 会 で は 、 こ の 移 住 者 を め ぐ る 項 は 削 ら れ 、 他 の 点 に お い て も か な り 後 退 し た 憲 章 と な っ た 。 こ れ は 受 け 入 れ 国 側 の 反 発 が あ っ た も の だ と 考 え ら れ 、ASEAN の内政不干渉主義の壁が厚いことを知らしめる 事 と な っ た 。 だ が 、 こ う し た 市 民 社 会 の 要 請 は 、ASEAN 移住労働者委員会 の設置を促すこと に は 成 功 し て い る 。こ の よ う に 一 進 一 退 の 状 況 に あ り 、ASEAN における移民をめぐ る 規 範 形 成 は 、 必 ず し も 悲 観 的 な 状 況 に あ る わ け で は な い 。 6 . 暫 定 的 な 結 論 と 沖 縄 県 以 上 、 ラ オ ス ‐ タ イ を 中 心 に し て 、 地 域 経 済 の 成 長 、 地 域 社 会 の 統 合 に つ い て 見 て き た 。 近 年 よ り 強 い 傾 向 と な っ て き て い る の は 、 統 合 の 深 化 の 中 で 、 こ れ ま で の 貧 し い 農 業 国 ラ オ ス と 豊 か な 工 業 国 タ イ と い う 関 係 が 変 化 し て い る こ と で あ る 。 そ の 中 で も 顕 著 な の は 、 ラ オ ス が 徐 々 に 工 業 国 と し て 台 頭 し つ つ あ り 、 そ の 中 で こ れ ま で の よ う な タ イ へ の ラ オ ス 人 の 一 方 的 な 出 稼 ぎ と い っ た 労 働 力 の 移 動 か ら 、 ラ オ ス 内 で の 労 働 人 口 を 引 き と め る 方 向 に 徐 々 に 移 り つ つ あ る こ と で あ る 。 こ れ は ミ ャ ン マ ー 、カ ン ボ ジ ア で も 同 様 の 流 れ が 生 じ て き て お り 、そ し て タ イ で は 失 業 率 が 1% を 切 る 中 で 、 地 域 の 労 働 力 の 価 値 は 上 昇 す る 傾 向 に あ る 。 こ う し た 中 で 、こ れ ま で 十 分 に 保 護 さ れ て こ な か っ た 移 民 労 働 者 の 社 会 的 保 護 も 、 問 題 は 山 積 み で あ る が 、 前 進 す る 方 向 に あ る の か も し れ な い 。 特 に 送 り 出 し 国 、 受 け 入 れ 国 の 両 方 に 移 民 労 働 者 を 擁 護 す る イ ン セ ン テ ィ ブ が 生 ま れ た こ と は 大 き い 。 そ う し た 流 れ を 受 け て 、GMS や ASEAN 等の政府間の会議の場では移民労働は欠く