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66 山田展久 除菌による胃癌予防効果が明らかとなっている. しかし, 除菌後にも胃癌発生がなくならないことは本邦からも複数報告されており 8,10,11,13), 除菌後にも胃癌に対する留意は必要である. そこで今回我々は, 当院におけるH.pylori 除菌後に診断した胃癌症例について検討した.

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2015 年 10 月 28 日受付 連絡先:〒570-8540 守口市外島町 5 番 55 号 松下記念病院 消化器内科(山田展久) 原  著

Helicobacter pylori除菌療法後に診断された

胃癌症例の検討

山田展久,提中克幸,高山 峻,森本泰隆,世古口悟,原田明子, 谷 知子,松本貴弘,磯崎 豊,長尾泰孝,小山田裕一 松下記念病院 消化器内科 要旨:Helicobacter pylori(H.pylori)感染は胃癌発生の最も重要な因子であり,除菌による胃癌発生 の予防が期待されているが,除菌後も胃癌に留意が必要である.当院のH.pylori除菌後に胃癌を診断 された症例について検討した.2009 年 1 月から 2015 年 1 月までに,当院でH.pylori除菌した 1116 例 のうち,除菌成功後 2 カ月以降に当院で上部消化管内視鏡検査を施行した 294 例について,背景粘膜 の萎縮の程度,胃癌の診断数と特徴,診断までの期間,治療について検討した.内視鏡観察期間 2 カ 月~ 5.9 年(中央値 1.3 年)で,萎縮なし(C-1)7 例,軽度萎縮(C-2/C-3)62 例,高度萎縮(O-1/ O-2/O-3)225 例であった.診断された胃癌は 10 例 11 病変で初発癌 3 例,二次癌 7 例 8 病変で, 診断までの期間は 4 カ月~ 2.6 年(中央値 1.2 年),肉眼形態は 0-IIc型 10 病変,3 型 1 病変であり, 背景粘膜は全て高度萎縮であった.9 病変が粘膜内癌でESDで治癒切除されたが,2 病変は外科的切 除を要した.3 型胃癌の症例は特発性血小板減少性紫斑病で除菌した症例で,除菌前後に上部消化管 内視鏡検査を施行していなかった.除菌後の胃癌は早期で診断されESDで治癒が得られる症例が多い が,そのためには除菌時の内視鏡検査は必須であり,特に高度萎縮性胃炎症例では除菌後も厳重な内 視鏡経過観察が必要である. キーワード:Helicobacter pylori,除菌,胃癌,萎縮性胃炎,特発性血小板減少性紫斑病 はじめに 1994 年にWHOのIARC(International Agency for Research on Cancer)ワーキンググループは, Helicobacter pylori(以下H.pylori)が胃癌の確実 な発癌因子であると規定した.またUemuraら1) の前向きコホート研究をはじめとして,国内外の 多数の報告2-7)でH.pyloriが胃癌の原因であるこ とが明らかにされており,広く認知されるように なった.さらに,2008 年に本邦での多施設無作 為比較試験で,早期胃癌内視鏡治療後の患者にお いて,H.pylori除菌群では非除菌群とくらべ二次 胃癌の発生が有意に抑制されることが示され8) 2010 年には早期胃癌内視鏡治療後の患者に対す る除菌療法が保険適用となった. 一方,初発癌においては,海外のWongら9) 無作為化比較試験(RCT)で,萎縮,腸上皮化生, dysplasiaのない症例では,除菌群で有意に胃癌 の発生が低率であったと報告されており,本邦で も,RCTではないが一次胃癌抑制効果を示した 報告が多い10).Takeら11)は,消化性潰瘍に対す る除菌症例の前向きコホート研究にて,除菌して 1 年以上(平均 9.9 年,最長 17.4 年)フォローさ れた 1222 例のうち,一次除菌成功群では 0.21 %, 一次除菌不成功群では 0.45 %の年率発癌率を認 め,一次除菌成功群で有意に(p=0.049)発癌が少 なかったと報告している.2013 年 2 月にヘリコ バクター・ピロリ感染胃炎に対して,除菌療法の 保険診療が承認され,H.pylori感染「国民総除菌」 時代を迎えた.その後のメタ解析の報告12)でも,

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除菌による胃癌予防効果が明らかとなっている. しかし,除菌後にも胃癌発生がなくならないこ とは本邦からも複数報告されており8,10,11,13),除 菌後にも胃癌に対する留意は必要である. そこで今回我々は,当院におけるH.pylori除菌 後に診断した胃癌症例について検討した. 対象と方法 2009 年 1 月から 2015 年 1 月までに,当院で施 行したH.pylori除菌症例 1116 例のうち,除菌成 功を確認可能であり,かつ,除菌後 2 カ月以降に 当院で上部消化管内視鏡検査を施行した 294 例に ついて,1) 除菌の適応疾患,2) 背景粘膜の萎縮 の程度,3) 胃癌の診断数と特徴,4) 胃癌診断ま での期間,5) 胃癌の治療について検討した. また,除菌適応疾患が特発性血小板減少性紫斑 病の症例とそれ以外の症例とで,除菌前後の上部 消化管内視鏡検査施行率について検討した. 統計的解析は,統計ソフトR(version 3.2.2)を 用い,除菌適応疾患別の上部消化管内視鏡検査施 行率についてはFisherの正確検定,内視鏡治療歴 の有無別の胃癌診断率についてはログランク検定 を行った. 結  果 H.pylori除菌症例 1116 例のうち一次除菌を当 院で施行したのは 1085 例(31 例は他院で一次除 菌施行),二次除菌を当院で施行したのは 174 例 であった.一次除菌成功率は 77.6 %(754 例/972 例,113 例は除菌判定なし),二次除菌成功率は 89.2 %(148 例/166 例,8 例は除菌判定なし)で あった(表 1 ).除菌の適応疾患は,胃十二指腸潰 瘍 476 例,早期胃癌内視鏡治療後 111 例,H.pylori 感 染 胃 炎 387 例,mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫 8 例,特発性血小板減少 性紫斑病 45 例であった(表 2 ). その内,除菌成功,かつ,除菌後 2 カ月以降に 当院で上部消化管内視鏡検査を施行した 294 例の 内訳は,男性 175 例,女性 119 例,年齢は 16 ~ 94 歳(中央値 65 歳)であった.最終の内視鏡もし くは除菌後の胃癌診断までの期間を観察期間とし たが,観察期間は 62 日~ 5.9 年で観察期間中央 値は 1.3 年であった. 1) 除菌の適応疾患は,胃十二指腸潰瘍 136 例, 早期胃癌内視鏡治療後 72 例,H.pylori感染胃炎 77 例,MALTリンパ腫 3 例,特発性血小板減少 性紫斑病 6 例であった(表 3 ). 2) 背景粘膜の萎縮の程度は,萎縮なし(C-1) 7 例,軽度萎縮(C-2/C-3)62 例,高度萎縮(O-1/ O-2/O-3)225 例であった. 3) 診断された胃癌は 10 例 11 病変で,全て男 性であった.全例で背景粘膜に高度萎縮を認めた. 初発癌 3 例,胃癌治療後の異時性胃癌 7 例 8 病変 であり,異時性胃癌の除菌適応は全て早期胃癌内 視鏡治療後であり,初発癌の除菌適応は,H.pylori 感染胃炎 2 例,特発性血小板減少性紫斑病 1 例で あった.肉眼形態は 0-IIc型 10 病変,3 型 1 病変 表 1  全除菌症例の内訳(1116 例) 一次除菌 1085例 成功 754例 不成功 218例 未判定 113例 二次除菌 174例 成功 148例 不成功 18例 未判定 8例 表 2  除菌適応疾患の内訳(1116 例) 除菌適応疾患 胃十二指腸潰瘍 476例 早期胃癌内視鏡治療後 111例 ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎 387例 MALTリンパ腫 8例 特発性血小板減少性紫斑病 45例 不明 89例 表 3 除菌成功 2 ヶ月後以降に上部消化管内視鏡 検査を施行した 294 例の内訳 性別(男/女) 175例/119例 年齢(中央値) 16~94歳(65歳) 観察期間(中央値) 62日~5.9年(1.3年) 除菌適応疾患 胃十二指腸潰瘍 136例 早期胃癌内視鏡治療後 72例 ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎 77例 MALTリンパ腫 3例 特発性血小板減少性紫斑病 6例

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であり,0-IIc型の色調は,発赤調 7 例,褪色調 2 例,正色調 1 例であった.異時性胃癌は全て 20mm以下のm癌であった. 4) 除菌から胃癌診断までの期間は 4 カ月~ 2.6 年(中央値 1.2 年)であった. 5) 9 病変が分化型粘膜内癌でありEndoscopic Submucosal Dissection(以下ESD)で治癒切除で きたが,2 病変は低分化型胃癌で,うち 1 病変が sm深部浸潤癌,1 病変が深達度seの 3 型進行胃癌 であり,それぞれ外科的切除を要した.3 型進行 胃癌の症例は特発性血小板減少性紫斑病で除菌し た症例で,除菌前後に上部消化管内視鏡検査を施 行していなかった(表 4 ). 当院の除菌症例について,除菌 1 年前から除菌 1 年後までの期間の当院での上部消化管内視鏡検 査施行率を検討すると,除菌適応が特発性血小板 減少性紫斑病以外の症例では施行率 90.9 %(974 例/1071 例)なのに対し,特発性血小板減少性紫 表 4  除菌後に診断された胃癌症例の詳細 症 例 除菌時年齢 性別 初発 or 異時 除菌適応 除菌後から 診断までの 期間    UML領域 肉眼型 腫瘍 径 (mm) 色調 組織診断 深達度 萎縮 治療 胃癌の前 治療から の期間  胃癌診断 前の上部 消化管内 視鏡から の間隔  1 66 M 初発癌 胃炎 2年7カ月 M IIc 23 発赤調 tub 1 m O-3 ESD 2年7カ月 2 78 M 初発癌 ITP 2年 M 3型 125 por/sig/muc se O-2 手術 なし 3 56 M 初発癌 胃炎 1年11カ月 L IIc 24 発赤調 sig sm2 O-1 手術 12カ月 4 71 M 異時癌 内視鏡治療後 2年7カ月 L IIc 3 発赤調 tub 1 m O-2 ESD 6年 11カ月 5 78 M 異時癌 内視鏡治療後 1年8カ月 L IIc 15 発赤調 tub1>tub2 m O-2 ESD 1年9カ月 10カ月 6 73 M 異時癌 内視鏡治療後 1年2カ月 L IIc 7 発赤調 tub 1 m O-3 ESD 1年1カ月 3.3カ月 7 65 M 異時癌 内視鏡治療後 10カ月 U IIc 5 褪色調 tub 1 m O-2 ESD 6年9カ月 9カ月 8 66 M 異時癌 内視鏡治療後 6カ月 U IIc 6 発赤調 tub2>por m O-3 ESD 8カ月 6カ月 9 58 M 異時癌 内視鏡治療後 4カ月 L IIc 8 褪色調 tub 1 m O-2 ESD 7カ月 4カ月 10 69 M 異時癌 内視鏡治療後 4カ月 M IIc 13 発赤調 tub1>tub2 m O-2 ESD 4カ月 4カ月

69 M 異時癌 内視鏡治療後 11カ月 L IIc 10 正色調 tub1>tub2 m O-2 ESD

図 1  除菌成功後 2 カ月以降に当院で上部消化管内視鏡検査を施行した症例の胃癌診断率のカプラン・マイヤー曲線 a:全症例  b:胃腫瘍内視鏡治療歴有無別 胃腫瘍内視鏡治療歴あり 胃腫瘍内視鏡治療歴なし p-value =0.94 ※:log-rank test ※2 % 3 4 1 0 6 8 4 0 2 10 15 5 0 5 6 2 3 4 1 5 6 0 2 a b 観察期間(年) 観察期間(年) % 胃癌診断率( %) 胃癌診断率( %) 表 5  除菌後の胃癌診断率のまとめ 全症例 (294例) 治療歴あり(73例) 治療歴なし(221例) 年率胃癌診断率 2.2% 5.9% 0.9% 累積胃癌診断率 3.4% 9.6% 1.4% 観察期間中央値 1.2年 1.4年 1.2年

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斑病の症例では施行率 28.9 %(13 例/45 例)と有 意に低かった(p< 0.001). 対象の 294 例の累積胃癌診断率 3.4 %,年率胃 癌診断率は 2.2 %であり(観察期間中央値 1.2 年), 胃腫瘍(胃腺腫含む)内視鏡治療歴の有無別では, 内視鏡治療歴ありの異時性胃癌の症例では累積胃 癌診断率 9.6 %,年率胃癌診断率 5.9 %(観察期 間中央値 1.4 年),内視鏡治療歴なしの初発癌の 症例では累積胃癌診断率 1.4 %,年率胃癌診断率 0.9 %(観察期間中央値 1.2 年)であったが,ログ ランク検定で有意差は認めなかった(表 5 )(図 1 ). 考  察 当院でH.pylori除菌療法後に診断された胃癌症 例は,早期胃癌内視鏡治療後の異時性胃癌が多く, 初発癌ではH.pylori感染胃炎,特発性血小板減少 性紫斑病にて除菌した症例であり,胃十二指腸潰 瘍で除菌した症例には認められなかった.加藤 は14),除菌前の上部消化管疾患により除菌後発 癌のリスクは異なることを報告しており,早期胃 癌の内視鏡治療後胃,胃過形成性ポリープ,胃 MALTリンパ腫,胃潰瘍,慢性胃炎,十二指腸 潰瘍の順であった.一般にH.pylori感染による慢 性胃炎から萎縮性胃炎,腸上皮化生と進むにつれ て胃癌の発生率が上昇すると考えられているが, 除菌後診断胃癌についても,除菌時の背景粘膜の 萎縮の程度に依存することが示唆されている14) 当院の症例も全例の背景粘膜に全て高度萎縮性胃 炎を認めた. また,除菌後診断胃癌は通常胃癌に比べて陥凹 型が多いと言われており15,16),当院の早期胃癌の 肉眼型は全て 0-IIc型で,既報と合致する結果で あった.既診断の胃上皮性腫瘍症例(早期胃癌と 胃腺腫含む)に除菌治療を行った前向き検討では, 表面隆起型腫瘍が平坦化し陥凹型に変化すること が報告されているが17),その機序として,除菌 による増殖能の低下により腫瘍腺管長が減少する ことや,酸分泌能の改善による腫瘍粘膜への組織 障害が関与していることが考えられている.また, 除菌後に一部の症例では胃癌の境界が不明瞭化す ると言われており,Kobayashiらは18),NBI拡大 観察による後ろ向きの比較検討にて,胃炎様所見 “gastritis-like appearance”と称される,白色境 界,整ったかすかな細血管を伴った単一の乳頭, 管状ピット構造を特徴とした,demarcationが不 明瞭で非癌粘膜に類似した所見が,除菌後群の癌 で非除菌後群より有意に高率に認められたと報告 している. 除菌により,背景粘膜の発赤が改善して相対的 に腫瘍部が発赤調として観察されることが多く, 除菌後の胃癌は発赤陥凹性病変を呈することが多 いといわれている.当院の症例でも,0-IIc型の 10 例中 7 例が発赤調であった.除菌後の胃癌診 断のためには,発赤陥凹面を意識して観察し,さ らにNBI拡大観察で積極的に悪性を疑う所見を認 めなかったとしても,癌の疑いがあれば適宜生検 を行い胃癌発見に努めるべきである. 当院の除菌後診断胃癌は,除菌後の 3 年以内と, 全て早期に診断されている.厚労省科学研究の全 国調査でも同様に14),除菌後 1 ~ 3 年目が多いが, 10 年以上経過(最長 14 年)しても胃癌の発生を認 めたと報告されている. 除菌後の胃癌発生率について検討すると,厚労 省科学研究の全国調査では14),全国 38 施設から の除菌後症例 6225 例(男女比 2.2:1,平均年齢 56.1 歳)に対して平均観察期間 3.9 年で,除菌後 胃癌を 186 例認め,初発癌の発生率は 1.6 %で, 年率発生率は 0.4 %,また,異時性胃癌の発生率 は 10.0 %で,年率発生率 2.9 %であったと報告 されている.当院の集計では,初発癌では発生率 1.4 %,年率発生率 0.9 %,異時性胃癌では発生 率は 9.6 %,年率発生率 5.9 %であった.発生率 は全国調査と同程度の頻度であったが,全国調査 よりも年率発生率は高かった原因として,観察期 間が短かったことが考えられた.言い換えると, 除菌後の早期に診断される胃癌が多いため,観察 期間が短くても全国調査と同程度の発生率であっ たと考えられた.つまり除菌後早期は年率発生率 が高い状態であり,より注意が必要な期間である と言える.分化型胃癌が発生した胃を,全割組織 検査をおこなった加藤らの報告では19),18.3 % に異所性の微小胃癌ないし異型病巣が存在してい るとされており,除菌後早期の年率発生率が高い 理由としては,除菌後早期に発見される胃癌は, 除菌時にはすでに存在しているが診断されておら ず,除菌後に診断された胃癌が多いためと考えら れる.

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また,除菌により腫瘍の増殖能が低下するとも 考えられており,除菌から時間経過を経て発見さ れたとしても,除菌時にすでに発生していた胃癌 ではないとは言えない.このことからも,除菌後 も長期にわたって胃癌のリスクは残存するため, 除菌後も定期的な上部消化管内視鏡検査のフォ ローが必要である.定期的なフォローにより胃癌 を早期の段階で発見することで,ESDによる治癒 切除が期待できる.当院の症例でも,11 病変中 9 病変でESDにより治癒切除が得られている. 当院の除菌後診断胃癌のうち,3 型胃癌で診断 され手術になった症例は,特発性血小板減少性紫 斑病の治療目的に除菌した症例で,除菌時に上部 消化管内視鏡検査が施行されていなかった.特発 性血小板減少性紫斑病で除菌した症例とそれ以外 の症例で当院での上部消化管内視鏡検査施行率を 検討したところ,特発性血小板減少性紫斑病で除 菌した症例で有意に施行率が低かった.現状の H.pylori除菌療法の保険適応は,内視鏡検査又は 造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定 診断,胃MALTリンパ腫,特発性血小板減少性 紫斑病,早期胃癌に対する内視鏡的治療後,内視 鏡検査において胃炎の確定診断,である.造影検 査で胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がされた 場合も,通常は追加で内視鏡検査を行うため,特 発性血小板減少性紫斑病を除菌療法の適応疾患と して除菌を行う場合のみ,内視鏡検査が施行され ないことがある.疾患の特性上,上部消化管内視 鏡検査を必須にすることは,出血傾向がある時期 にリスクを冒すことになりかねないため推奨され ないとは考える.しかし,特発性血小板減少性紫 斑病で除菌した症例も,H.pyloriが胃癌のリスク ファクターであり除菌後も発癌のリスクがあるこ とを踏まえて,出血傾向が落ち着いた時期に上部 消化管内視鏡検査を施行すべきであると考える. 結  語 除菌後診断胃癌は早期で診断されESDで治癒 が得られる症例が多いが,そのためには,除菌時 の内視鏡検査は必須であり,特に高度萎縮性胃炎 では除菌後も厳重な内視鏡経過観察が必要であ る. 文  献 1 ) Uemura N, Okamoto S, Schlemper RJ et al. Helicobacter pylori infection and the devel-opment of gastric cancer. N Engl J Med 2001; 345: 784-789.

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Assessment of gastric cancer diagnosed after Helicobacter pylori

eradication

Nobuhisa Yamada, Katsuyuki Dainaka, Shun Takayama, Yasutaka Morimoto, Satoru Sekoguchi, Akiko Harada, Tomoko Tani, Takahiro Matsumoto, Yutaka Isozaki, Yasuyuki Nagao, Hirokazu Oyamada

Departimen of Gastroenterology, Matsushita Memorial Hospital

Background and Aim:

Helicobacter pylori (H. pylori) infection is the most important risk factor for gastric cancer, and H.

py-lori eradication is considered to be useful for preventing gastric cancer. However, gastric cancer can

sometimes occur after H. pylori eradication. We examined the cases of gastric cancer patients that were diagnosed with gastric cancer after undergoing H. pylori eradication at our hospital.

Methods:

Of the 1,116 patients that underwent H. pylori eradication therapy at our hospital from January 2009 to January 2015, we analyzed the cases of 294 patients who underwent upper gastrointestinal endos-copy at our hospital at least two months after successful H. pylori eradication. We evaluated the atro-phication of the background mucosa, the number of gastric cancer lesions detected, the characteristics of the gastric cancer lesions, the period from H. pylori eradication therapy to diagnosis, and the gastric cancer treatments employed.

Results:

The endoscopic follow-up period ranged from two months to 5.9 years (median: 1.3 years). Seven patients were free from atrophic gastritis (C-1), 62 patients had mild atrophic gastritis (C-2/C-3), and 225 patients had severe atrophic gastritis (O-1/O-2/O-3). Eleven gastric cancer lesions were detected in 10 patients. Three of these lesions were primary tumors, and 8 of them (in 7 patients) were metachro-nous gastric tumors. The period from H. pylori eradication to diagnosis ranged from four months to 2.6 years (median: 1.2 years). Regarding the macroscopic classification of the lesions, 10 were classified as type 0-IIc, and 1 lesion was classified as type 3. All 10 patients had severe atrophic gastritis. Nine in-tramucosal lesions underwent curative resection with endoscopic submucosal dissection (ESD), but 2 lesions required open surgical resection. The patient with the type 3 gastric cancer was treated with

H.pylori eradication therapy for idiopathic thrombocytopenic purpura and did not undergo upper

gas-trointestinal endoscopy before or immediately after the eradication therapy. Conclusion:

Gastric cancer that arises after H. pylori eradication therapy is often diagnosed at an early stage and treated with ESD. To ensure such early diagnosis and treatment, the use of endoscopy during H. pylori eradication therapy and the subsequent follow-up period is essential, particularly in patients with se-vere atrophic gastritis.

Key Words: Helicobacter pylori, eradication, gastric cancer, atrophic gastritis idiopathic thrombocyto-penic purpura

図 1  除菌成功後 2 カ月以降に当院で上部消化管内視鏡検査を施行した症例の胃癌診断率のカプラン・マイヤー曲線  a:全症例  b:胃腫瘍内視鏡治療歴有無別 胃腫瘍内視鏡治療歴あり胃腫瘍内視鏡治療歴なしp-value=0.94※:log-rank test※2%3410684021015505 623415602ab観察期間(年)観察期間(年)%胃癌診断率(%)胃癌診断率(%) 表 5  除菌後の胃癌診断率のまとめ(294例)全症例治療歴あり(73例) 治療歴なし(221例)年率胃癌診断率2.2%5.9%

参照

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