• 検索結果がありません。

自己注目誘発音を用いた注意訓練法の作成と効果の検討 -効果検討のパイロットスタディ-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "自己注目誘発音を用いた注意訓練法の作成と効果の検討 -効果検討のパイロットスタディ-"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-47 214

-自己注目誘発音を用いた注意訓練法の作成と効果の検討

―効果検討のパイロットスタディ―

○甲斐 圭太郎1)、富田 望2)、木甲斐 智紀1)、熊野 宏昭2) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )早稲田大学人間科学学術院 【背景と目的】 社 交 不 安 症 / 社 交 不 安 障 害 (S o c i a l A n x i e t y Disorder: SAD) とは, 他者に注目されるかもしれな い社交場面に対する著明または強烈な恐怖・不安を感 じるものとされている (APA, 2013)。Clark & Wells (1995) が提唱するSADの認知モデルでは, 注意の偏り

である自己注目がSADの症状の維持・促進要因として 考えられている。自己注目とは, 自分に注意を向けて い る 状 態, そ う し や す い 性 格 特 性 と さ れ て い る (Wells & Matthews, 1994)。自己注目には, 社交場面

内と社交場面体験後に起こるものも存在する。自己注 目への介入法として, メタ認知療法 (Metacognitive Therapy: MCT) で は, 注 意 訓 練 法 (Attention Training Technique: ATT) が多く用いられている。 ATTでは, 能動的注意制御機能の獲得・向上を介し て, 自己注目から脱することを目標としており (今 井・今井, 2011), ATTを行うことで, 社交不安症状が 低減したことが報告されている (Schmidt, Richey, Buckner & Timpano, 2009)。ATTでは, 波の音などの 中性音が用いて注意のコンポーネントである「選択的 注意」「転換的注意」「分割的注意」ごとに訓練を行う。 注意のコントロールは, ATT内のみでなくネガティ ブな自己関連刺激と中性刺激が混在する日常生活場面 へ応用が重要となる。訓練中は思考や気分から音へと 注意を戻すことで応用を図っているが, 用いられる音 は中性的な音のみで, 中性音のみを使用する理由も明 確には説明されていない。そこで, ATTに自己注目に 関連した音刺激と中性音の両方を用いることで, 日常 場面での実用により近い形で訓練を行うことが可能だ と考えられる。また, 自己注目に関連した音により, 思考や気分が出てきやすい状況を作ることができるた め, 思考や気分から音へと注意を戻す際の負荷量が大 きくなり, ATTの効果を増強させる可能性がある。 そこで本研究では, 従来の中性音のみを用いている ATT (以下, 通常ATT) に対して, 自己注目誘発音を用 いたATT (以下, 自己注目ATT) を作成し, 従来のATT との効果の差を検討することを目的とする。なお, 今 回は研究の途中経過のデータを探索的に検討する。 【方法】 対象: LSAS-J30点以上の大学生と大学院生10名 (男 性 3 名, 女性 7 名; 平均19.80±1.14歳)。参加者を通 常ATT群 ( 5 名) と自己注目ATT群 ( 5 名) に無作為に 振り分けた。

測定項目: 1) Liebowitz Social Anxiety Scale日本 語版 (LSAS- J ; 朝倉ら, 2002): 社交不安の程度を 測定, 2) 社交不安症における心的視点尺度 (Mental Perspective Scale for Social Anxiety Disorder: MPS; 富田・島・熊野, 2018): スピーチ中及び日常 生活内の自己注目時の視点の取り方を測定, 3) Post -Event Processing Questionnaire 日 本 語 版 (PEPQ: 五十嵐・島田, 2008): スピーチ後のPEPの程 度の測定。 手続き: 来室時に質問紙 (LSAS- J , MPS) への回答 後, スピーチ課題を行なった。スピーチ課題中の注意 の向け方についてもMPSを取った。ATTの教示を行い, 2週間実施後に再度同様の指標を取った。なお, 自己 注目ATTで用いる音は予備研究にて検討し, 聞いた際 の自己注目の程度と聞き取りやすさから, 心拍音, 話 し声, 笑い声を採用した。 使用音声: 通常ATTには「電車, 波, 風鈴, 鳥, ピア ノ, 時計」の音, 自己注目ATTには「電車, 波, 風鈴, 鳥, 心拍音, 話し・笑い声」を使用した。 データ分析: 各指標において, 群間の比較ではpreと postの変化量でWilcoxonの順位和検定, 群内での比較 はpreとpostの平均値でWilcoxonの符号付順位検定を 行った。 実験における倫理的配慮本研究は,「早稲田大学人を 対象とする研究に関する倫理委員会」の承諾を得て実 施された. 【結果】 各指標の 2 時点 (pre, post) の平均値について, Wilcoxonの符号付順位検定で群内の比較を行なった。 その結果, 通常ATT群では, LSAS-J (z = -1.21, p = .23), 日常内のMPSの O 視点 (z = -.95, p = .34) , DM視点 (z = -1.21, p = .23) では有意差 が示されず, 日常内のMPSの F 視点で有意に増加した ことが示された (z = -2.03, p = .04)。また, ス ピーチ中のMPS ( F 視点: z = -.94, p = .35, O視 点: z = -.94, p = .35, DM視点: z = -1.46, p = .14), PEPQ (z =-.45, p = .66) では有意差は 見られなかった。 自己注目ATT群では, 日常生活内のMPS ( F 視点: z = -.41, p = .68, O視点: z = -.18, p = .85, DM視点: z = -.92, p = .36), スピーチ中のMPSの

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-47 215 -O 視点 (z = -.67, p = .50), DM視点 (z = -1.21, p = .23), PEPQ (z = -1.46, p = .14) では有意差は示されなかった。LSAS- J は有意に低下 したことが示され (z = -2.03, p = .04), スピー チ中のMPSの F 視点が有意に増加したことが示された (z =-2.02, p = .04)。 各指標のpreからpostの変化量について, Wilcoxon の順位和検定で群間の比較を行なった。その結果, LSAS-J (z = -.52, p = .60), 日常生活内での MPS ( F 視点: z = -.84, p = .40, O視点: z = -1.05, p = .29, DM視点: z =-1.47, p = .14), スピーチ中のMPS ( F 視点: z = -.95, p = .34, O 視点: z = .00, p = 1.00, DM視点: z = -.52, p = .60), PEPQ (z = -1.06, p = .29) では有意差 が示されなかった。 【考察】 解析の結果, 通常ATT群では, 日常内での自己注目 に有意な変化が示されたが, スピーチ中の自己注目, 社交不安の変化は有意ではなかった。自己注目ATT群 では, スピーチ中の自己注目に有意な変化が示され, 社交不安が有意に低下していた。 しかし, 本研究は試験的な段階にあり, 解析対象者 が少ないため, 統計解析はあくまで参考的な位置づけ にならざるを得ない。そこで, 平均値を見ると, 両群 で社交不安得点は一定の低下が見られる (通常ATT 群: -13.40, 自己注目ATT群: -8.40)。一方, PEPQ の得点は, 通常ATT群ではやや増加 (+3.34) してい るが, 自己注目ATT群では, 有意ではないものの大き く低下し (-32.0), 効果量もr = -.65と大きく, この指標が特に両群の異なる効果を反映している可能 がある。 これらのことから, 現段階では, 通常ATTでは, 本 研究におけるスピーチ場面のような比較的強く自己注 目を喚起する場面やその後の自己注目の変化というよ り, 日常内での自己注目の喚起度の低い場面について 注意制御の向上により社交不安を改善する可能性が考 えられる。反対に自己注目ATTでは, 日常内での自己 注目の改善というよりも自己注目が喚起しやすい場面 やその直後の注意制御機能の向上を通して社交不安を 改善する可能性が考えられる。 今後, 解析対象者を増やし, これらの可能性をより 厳密に検討する必要がある。本研究により, 社交不安 に対するATTの効果機序ならびにその手続きの工夫の 可能性が検討可能となり, 注意制御機能に関連する治 療を発展させる知見が得られることが期待される。

参照

関連したドキュメント

成績 在宅高齢者の生活満足度の特徴を検討した結果,身体的健康に関する満足度において顕著

サビーヌはアストンがレオンとの日課の訓練に注意を払うとは思わなかったし,アストンが何か技を身に

また適切な音量で音が聞 こえる音響設備を常設設 備として備えている なお、常設設備の効果が適 切に得られない場合、クラ

・患者毎のリネン交換の検討 検討済み(基準を設けて、リネンを交換している) 改善 [微生物検査]. 未実施

七,古市町避難訓練の報告会

・難病対策地域協議会の設置に ついて、他自治体等の動向を注 視するとともに、検討を行いま す。.. 施策目標 個別目標 事業内容

Abstract: The Legend Pipe method was researched and developed to reduce groundwater and prevent landslides and liquefaction by utilizing a subsidy from the Ministry of

計算で求めた理論値と比較検討した。その結果をFig・3‑12に示す。図中の実線は