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嗜癖行動に対する「心理的アセスメント」に基づく介入とは?―認知行動療法の最前線―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 108

-嗜癖行動に対する「心理的アセスメント」に基づく介入とは?

―認知行動療法の最前線―

○(企画者)田中 佑樹1,2)(司会者)嶋田 洋徳3)(話題提供者)横光 健吾4)(話題提供者)近藤  あゆみ5)(話題提供者)村瀬 華子6,7)(話題提供者)朝倉 崇文8,9,10)(話題提供者)野村 和孝3)(指 定討論者)神村 栄一11) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )日本学術振興会特別研究員、 3 )早稲田大学人間科学学術院、 4 )立命館大学 総合心理学部、 5 )国立精神・神経医療研究センター、 6 )独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター、 7 )依存症対 策全国センター、 8 )北里大学医学部精神科学教室、 9 )北里大学大学院医療系研究科、1 0 )北里大学東病院精神神経科、 1 1 )新潟大学人文社会・教育科学系 企画主旨 嗜癖行動に対する治療の施策の拡大に伴い、認知行 動療法に対する社会からの期待が高まっている現状に ある。実際の認知行動療法の適用に際しては、多様な 状態像に対する個別化の視点が重要であり(田中ら, 2018)、個人の状態像の「アセスメント」を踏まえた 適切な目標設定と、それに基づく介入が求められる。 そこで本シンポジウムにおいては、プログラムのファ シリテーションの観点から近藤あゆみ先生に、刺激統 制や代替行動の観点から横光健吾先生に、グループ ワークの活用の観点から村瀬華子先生に、社会資源の 活用の観点から朝倉崇文先生に、司法・犯罪分野にお ける実践の観点から野村和孝先生に、それぞれ話題提 供をいただくこととした。そして、神村栄一先生に指 定討論としてご質問いただく予定である。 話 題 提 供 者  近 藤 あ ゆ み1 )・ 今 村 扶 美2 )・ 引 土 絵 未1 ) ・米澤雅子1 ) ・松本俊彦1 ) ( 1 )国立精神・神経医療研究センター、 2 )国立精神・神 経医療研究センター病院) 【アセスメントに基づくSMARPPのファシリテーション】 国立精神・神経医療研究センター病院では、薬物依 存症外来患者を対象に、集団認知行動療法Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program (SMARPP) を 実 施 し て い る。SMARPPは、 主 と し て Marlattらによって提示された認知行動的原理に基づ くリラプス・プリベンション・アプローチに立脚した プログラムであるが、全てのメンバーが一様にリラプ スの防止を治療目標と定めて参加しているわけではな い。薬物使用をやめたいと願いながらも使用を続けて しまうメンバーにとっては、まず短い断薬期間をつく ることが当面の治療目標になるであろうし、薬物使用 をやめる必要性を感じてさえいないメンバーは、日常 生活に与える悪影響をより少なくするハーム・リダク ションを治療目標に設定することを望むかもしれな い。したがって、ファシリテーターには、プログラム 参加に先立ち得られる初診情報や嗜癖重症度指標ASI

(Addiction Severity Index)の結果を念頭に置き、 さらには、プログラムにおけるメンバーの語りも新し い情報として加味しながら、各メンバーの治療目標を 意識した介入が求められる。本話題提供においては、 初診やASIの情報を活用したアセスメントの方法、ア セスメントに基づく目標設定やファシリテーションの 留意点に焦点を当て報告する。 話題提供者 横光健吾 【何のための、刺激統制・代替行動獲得か】 ギャンブル障害をはじめとして、さまざまな嗜癖行 動やその関連疾患に対する認知行動療法では、その中 心的な役割を担うのが、リラプス・プリベンションで ある。ギャンブル障害であれば、ギャンブル行動もし くはギャンブル欲求を生じさせるきっかけを特定する ことは、認知行動療法のスタートであると言え、ギャ ンブラーの生態系を知るうえでも非常に重要である。 そして、そのきっかけを取り除くことができるのであ ればそれを取り除いたうえで生活をしてもらうことは (刺激統制)、第 1 セッションの宿題としても実施しや すい。また、認知行動療法では、不適切な行動の悪循 環を断ち、適切な行動の獲得を目指すこと(代替行動 の獲得)が重要ではあるが、ギャンブル障害において も、それは推奨されている。しかしながら、代替行動 の獲得の達成は、ギャンブル障害においては非常に難 しく、その理由の 1 つとしては、ギャンブル行動の強 化子が、まさにその一瞬に生じる興奮や充足感である ことがあげられる。本話題提供においては、刺激統制 や代替行動獲得を狙っていくなかで、収集すべきギャ ンブラーの情報、及びその後の対応について、事例を ふまえつつ先行研究から論じることとする。 話題提供者 村瀬華子 【心理学的アセスメントに基づいた集団認知行動療法 の実践】 嗜癖行動の治療現場では、しばしば集団での介入や 支 援 が 行 わ れ る。 こ の 理 由 の 一 つ と し て コ ス ト パ 自主企画シンポジウム10

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 109 -フォーマンスの良さや、治療者の負担軽減などが考え られる。また嗜癖問題を抱えるクライエントの多く は、周囲の人々からの理解不足や偏見による孤独や孤 立に悩まされており、集団心理療法を通して他メン バーと繋がる経験は回復に重要な効果を与えると考え られる。メンバー同士が信頼し、受け入れあうことは 凝集性として知られ、これは集団療法が機能するため に必要不可欠な要素である(Bieling et al., 2009)。 そしてグループは凝集性が高まるまでに様々な発展段 階を経るが、このプロセスは各メンバーの特性やニー ズを掛け合わせた結果に影響を受ける。 集団認知行動療法は嗜癖行動への介入法として効果 が認められている(Miller et al., 2003)。集団認知 行動療法では「依存症の再発を防ぎ、依存している物 質や行動に頼らずとも満足できる人生を送るために必 要なスキルを習得する」という認知行動療法の目標 と、先述の「凝集性の達成」という集団心理療法の目 標を同時に目指すことが課題となる。これらの目標を 達成するには、セッション毎に各クライエント及びグ ループ全体の変化を観察し、対応を調節する必要があ る。そこで本話題提供では、グループメンバーの相互 作用を活用しつつ、嗜癖行動への認知行動療法を進行 する際の、心理学的アセスメントのポイント、介入方 法、留意点を検討する。 話題提供者 朝倉崇文 【北里大学東病院ギャンブル障害専門外来/薬物依存症 専門外来における試み】 北里大学東病院は平成26年 6 月から平成28年 3 月ま でギャンブル障害専門外来を設置していた。同外来で は患者との対立を避け、患者の問題解決への動機を高 めるために、診断名に拘ることなく、ギャンブルを行 動と捉え、行動経済学の概念を用いた心理教育を行う とともに、行動随伴性に着目した代替行動や生活スケ ジュールを提案し、行動実験的アプローチにより、問 題の解決を目指した。その結果、通院継続率やギャン ブルの頻度、自助グループの参加率において、比較的 良好な転機を得ることができた。その一方、終診から 3 年後の調査ではギャンブルの頻度が悪化した者は少 数であるものの、自助グループに継続参加をしている 者がいないという課題が明らかになった。平成29年12 月から北里大学東病院ではギャンブル障害専門外来を 再設置し、薬物依存症専門外来を新設した。この外来 では、以前の専門外来で得た嗜癖行動への介入の知見 を活かしながら、事後調査で明らかになった課題を解 決する方法を模索している。現在は、患者が集団への 拒否感を軽減することを目的に集団療法を開始し、自 助グループに継続参加している当事者との接点を持て る場を提供している。本話題提供においては、当院の 試みを紹介するとともに、治療の場で、自助グループ をはじめとした社会資源につなぐ方法について検討し たい。 話題提供者 野村和孝 【心理学的アセスメントに基づいた司法・犯罪分野の 実践】 わが国における司法・犯罪分野の取り組みでは、性 加害と薬物乱用の再犯防止の心理学的アプローチとし て、嗜癖行動の代表的な再発防止モデルであるリラプ ス・プリベンションを軸とした集団認知行動療法プロ グラムが実施されている(法務省法務総合研究所, 2015)。このようなプログラムの実施において、刑務 所などの施設では、犯した事件の内容が被収容者間の 関係性に大きく影響するため、プログラム実施上の ルールを明確にさだめ、その上で、プログラムへの取 り組みを奨励し合う関係性を構築する工夫が重要とな る。 しかしながら、司法・犯罪分野におけるプログラム への取り組みの促進にあたっては、否認、最小化、正 当化(e.g., Langevin et al., 1988)といった、犯 罪性や問題性を否定する反応が課題となりやすい。具 体的には、実施者が反応そのものの変容に終始してし まい、プログラムへの取り組みを促進することなく、 結果的に進行が妨げられてしまうなどの実践上の問題 が生じている。このような問題の解決にあたっては、 否認、最小化、正当化といった反応に対して、認知行 動療法の機能の観点(たとえば、野村,2016)から個々 のアセスメントを行い、反応の機能に応じた心理学的 介入が重要となる。そこで本話題提供においては、司 法・犯罪分野における嗜癖行動の集団認知行動療法の 実践における否認、最小化、正当化の心理学的アセス メントと介入について検討することを目的とする。 自主企画シンポジウム10

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