平成
29 年
修士論文
大規模地震で被災した歴史的組積造建造物の
修復計画に関わる構造調査
指導教員 花里 利一 教授
三重大学大学院工学研究科
建築学専攻
今西 美香
1.1 はじめに 1.2 歴史的建造物の地震被害 1.3 研究目的 1.4 地震の歴史 1.5 既往の研究 第2 章 平成 28 年熊本地震-PS オランジュリ- 2.1 建物の概要 2.2 地震被害 2.3 常時微動測定 2.3.1 測定方法・測定機器 2.3.2 測定位置・目的 2.3.3 測定結果 2.4 構造モデルによる構造解析 2.4.1 解析の概要 2.4.2 2 質点モデルの概要 2.4.3 入力地震波の概要 2.4.4 解析結果 第3 章 東北地方太平洋沖地震-福島市写真美術館- 3.1 建物の概要 3.2 地震被害 3.3 常時微動測定 3.3.1 測定方法・測定機器 3.3.2 測定位置・目的 3.3.3 測定結果 3.4 構造モデルにおける構造解析 3.4.1 解析の概要 3.4.2 地盤バネの概要 3.4.3 入力地震波の概要 3.4.4 解析結果
第4 章 結論 4.1 まとめ 4.2 今後の課題 謝辞 参考文献 付録 付録1 福島市写真美術館における材料力学試験 付録2 PS オランジュリにおける材料力学試験
第
1 章
序論
1.1 はじめに 日本では近年、巨大地震やそれによる津波、また台風や豪雨など多くの自然災害が発生し、 人命や家屋に深刻な被害をもたらしている。それと同時に各県の歴史的建造物にも大きな 被害をもたらしている。特に大きな被害をもたらした近年発生した 2 つの大規模地震につ いて説明する。 2016 年 4 月 16 日熊本県熊本地方にて熊本地震が発生した。M7.3 であり内陸直下型の地 震であった。熊本地震によって、死者約244 名、重軽傷者約 2709 名、住家被害約 196785 棟といった被害であった。また、県民の誇りでもあり、観光のシンボルでもある熊本城や阿 蘇神社も大きな被害を受けた。地震後、復興のため多くのボランティア活動などが行われ、 現在復興作業や修復作業は行われている1)。 2011 年 3 月 11 日に三陸沖にて東北地方太平洋沖地震が発生した。M9.0 であり非常に大 きな地震であった。東北地方太平洋沖地震によって、死者約19575 名、行方不明者約 2577 名、住家被害(全壊のみ)約 121776 棟と甚大な被害であった。東北地方太平洋沖地震の被害 は、最大波9.3m以上と大きな津波が発生したことや M4 以上の余震が多く続いたことによ りさらに悪化した。福島県における地震被害は、死者約 4013 名、住家被害(全壊のみ)約 15224 棟、公共建物約 1010 棟であった4)5)。熊本県と同様、地震後復興計画・作業や修復 作業が進められ、地震発生から6 年経過した現在も続けられている。 1.2 歴史的建造物の地震被害 同章の 1.1 はじめにで述べた 2 つの地震それぞれによって歴史的建造物も多くの被害を 受けた。 2016 年の熊本地震では、歴史的建造物被害件数として、熊本県内で 150 件であり県内全 域に及んでいる。この中で、国指定文化財は41 件、国登録文化財は 55 件、県指定文化財 は54 件であった。被害状況として、全壊や半壊したものや壁の一部崩壊や亀裂などがあっ た2)3)。 国指定 国登録 県指定 登録有形 文化財 重要文化財 史跡 名勝 伝統的建造物群 天然記念物 特別史跡 その他 図1.2-1 熊本地震による歴史的建造物の 被害件数 図 1.2-2 熊本地震による国指定文化財の 被害件数
数は約76 件であり、多数の貴重な財産が被害を受けた。また地域住民に支えられ、地域の 歴史の中に根付いてきた社寺や仏像、史跡、名勝、天然記念物なども被害を受けた。さらに 守り伝えられた祭礼行事や民俗芸能などの担い手が被災し、地域外に避難を余儀なくされ、 無形の文化財も多くの被害を受けた6)7)8)。 1.3 研究目的 上記のことより、地震において多くの歴史的建造物は被害を受けた。この中で歴史的組積 造建造物もいくつか被害を受けた。歴史的組積造建造物は全国的にも数限られており、極め て貴重な建築遺産であるため保存修復をする必要がある。その保存修復計画の立案におい て、構造の特徴や振動特性の把握は必須である。今研究において、それぞれの地震により被 害を受けたPS オランジュリ(熊本県)と福島市写真美術館(福島県)を対象建造物として、 ・構造の特徴や振動特性を把握すること ・保存修復計画に関わる解析を検討・実行していくこと を目的とする。 本論では、それぞれの対象建造物で行った常時微動測定やこれまでに実施されて得られ た材料実験の調査結果を示すとともに、その結果よりそれぞれの建物のモデルを作成し構 造解析を実施し、その結果を示す。 国宝 重要文化財 史跡 名勝 特別史跡 特別名勝 伝統的建造物群 天然記念物 その他 図1.2-3 東北地方太平洋沖地震による歴史的建造物の被害件数
1.4 地震の歴史 これまでの過去に、熊本県と福島県で発生した地震の特徴や被害状況などについて以下 に記す9)10)11)。 熊本県に被害を及ぼす地震は、主に陸域の浅い地震である。この他、日向灘など東方の海 域に発生する地震で被害を受けることがある。阿蘇山の西側、九州山地北西縁には布田川・ 日奈久断層帯が北東-南西方向に走り、地形的にも明瞭である。この断層帯の北側には、別 府-島原地溝帯を埋めるように阿蘇山の火山噴出物などが広く分布し、それ以南には古い 時代の地層が分布している。県内の活断層は、阿蘇山西麓から熊本県付近の別府-島原地溝 帯に沿った地域に分布している。また、布田川・日奈久断層帯では、右横ずれの活断層が分 布する。陸域の浅い被害地震は、主に別府-島原地溝帯に沿った地域と布田川・日奈久断層 帯に沿う地域などで発生している。別府-島原地溝帯に沿って発生する被害地震は、阿蘇山 周辺と熊本市周辺に多い。以下に過去に発生した大規模な地震と被害について表1.4-1 で示 す。表1.4-1 と平成 28 年熊本地震の最大震度 7 であったことから、平成 28 年熊本地震が 過去最大の地震であったことがわかる。 表1.4-1 熊本県周辺における過去の地震 西暦 地域(地震名称) 規模 推定最大震度 被害など 1619 年 肥後・八代 M6.0 震度6 弱 麦島城はじめ公私の 家屋が破壊 1625 年 熊本 M5~M6 震度5 強 熊本城火薬庫爆発 天主付近、城中の石垣 被害 死者約50 名 1707 年 (宝永地震) M8.4 ― 死者2 万名 家屋全壊6 万棟 同流失2 万棟 1723 年 肥後・豊後・筑後 M6.5 震度5 弱 肥後で死者2 名 負傷者25 名 家屋倒壊980 棟 1769 年 日向・豊後・肥後 M7 3/4 震度6 弱 延岡城・大分城で大き な被害 熊本県では死者1 名 家屋倒壊115 棟 1792 年 雲仙岳 M6.4 ― 眉山(前山)東部が崩れ 津波が生じ、津波によ る死者約5000 名、家 屋流失2000 棟以上
被害や津波被害との 区別困難 1889 年 熊本市街地 M6.3 震度5 死者20 名、 家屋全・半壊400 棟以 上と大きな被害 1941 年 日向灘 M7.2 震度5 死者2 名 負傷者7 名 家屋全壊19 棟 1946 年 (南海地震) M8.0 震度5 死者2 名 負傷者1 名 住家全壊6 棟 1975 年 阿蘇山北縁 最大 M6.1 震度5 震源域に最も近い一 の宮三野地区で家屋 や道路に被害 負傷者10 名、 住家全壊16 棟
福島県に被害を及ぼす地震は、主に太平洋側沖合で発生する地震と陸域の浅い地震であ る。福島県太平洋側沖合で過去に発生した大規模地震について表1.4-2 に示す。過去の地震 において、福島県太平洋沖合にて M8を越えるような地震は発生したことはなかった。そ のかわりに比較的M7 程度の地震が続発する傾向があった。 表1.4-2 福島県周辺における過去の太平洋沖地震 西暦 地域(地震名称) 規模 推定最大震度 被害など 1611 年 三陸沿岸および 北海道東岸 M8.1 震度5 津波が発生、相馬領で 死者多数 1938 年 (福島県東方沖地震) M7.5 震度5 死者1 名 負傷者9 名 家屋全壊20 棟 M7 程度の余震が約 2 ヶ月に6 回発生 1978 年 (1978 年宮城県沖地 震) M7.4 震度5 中通り、浜通りの北部 に被害 死者1 名 負傷者41 名 住家全壊3 棟 1987 年 福島県沖 最大6.7 震度5 M6 程度の地震 5 回発 生
た地質となっている。沿岸部の双葉断層を除けば、活断層は少ない。中通りには、阿武隈川 が流れる低地の西側と奥羽山脈との境目に福島盆地西縁断層帯がある。会津地方には、会津 盆地西側に会津盆地西縁断層帯がある。いずれも逆断層で、双葉断層は左横ずれ成分を持っ ている。これらの断層で発生した地震について表1.4-3 に示す。また、福島県では 1960 年 のチリ地震津波のような外国の地震によって津波被害を受けることがある。 表1.4-2 と表 1.4-3、東北地方太平洋沖地震の最大 M9.0、最大震度 7 であったことから、 東北地方太平洋沖地震が過去最大の地震であったことがわかる。 表1.4-3 福島県周辺における過去の断層による地震 西暦 地域(地震名称) 規模 推定最大震度 被害など 1611 年 会津 M6.9 震度6 強~7 会津地方で被害 山崩れ、人家倒壊多 数、死者3700 名、山 崎新湖を生ずる 1659 年 岩代・下野 M6 3/4~ M7 ― 会津、那須に被害 死者39 名 住家倒壊409 棟以上 1683 年 下野・岩代 M7.0 ― 南会津の山崩れによ り、川を堰きとめる 1731 年 岩代 M6.5 震度6 住家全壊300 棟以上 1821 年 岩代 M5.5~ M6 ― 家屋倒壊130 棟 死者あり 1943 年 (田島地震) M6.2 ― M6 程度の余震発生
1.5 既往の研究 既往の研究として、熊本県の PS オランジュリについて、熊本工業大学の村橋によって 1997 年に構造耐力についての研究が行われている12)。以下に結論を示す。 (1)地震時の負担せん断応力度は、煉瓦造の許容せん断応力度を満足し、終局時のせん断応 力度に対する安全率も2.7 倍確保されている。 (2)煉瓦造壁体の圧縮強度は許容圧縮応力度に比べて小さい値を示した。 (3)鉛直力を負担する中央円柱の圧縮応力度は、やや大きめの値を示した。 さらに、1999 年に熊本大学の三井・村上らによって煉瓦の強度調査が行われている 13)。 以下に調査結果を示す。 (1) 煉瓦目地のせん断強度は、1.19~4.66kgf/cm2(平均 2.48kgf/cm2)となり、同年代の建物 の試験結果(平均 5.7kgf/cm2)に比べて低い値となった。 (2) 煉瓦単体の圧縮強度は、45~154kgf/cm2(平均 91kgf/cm2)となり、同年代の建物の試験 結果に比べて値の差が大きくかつ、平均値も1/3 程度と低い値となった。 また、福島市写真美術館については萩原によって材料力学試験が行われている 14)。福島 市写真美術館の躯体からコア抜きされた試験体で行なっている。また、コア抜きされた試験 体とは別に国見石について材料力学試験を行っている。試験の概要や結果について付録に 示す。 さらに、山形大学の三辻、日本大学の狩野、東北大学の佐々木らによって、福島市写真美 術館において、2012 年 11 月に常時微動測定が行われている15)。その設置位置と結果につ いて図1.5-1 と表 1.5-1 に示す。なお、赤い丸印がセンサーである。なお、測定は水平 2 方 向および上下1 方向で行われている。
1 階平面図 2 階平面図 表1.5-1 三辻らによる常時微動測定結果14) 固有振動数(Hz) 東西(長辺)方向 4.80 南北(短辺)方向 3.50 上下方向 1.50 図1.5-1 三辻らによる常時微動測定におけるセンサー設置位置
第
2 章
平成
28 年熊本地震
屋町の交差点に建ち、人々からはランドマークのような存在であった。銀行社屋によく見ら れる重々しい装飾はなく、軽快なアーチを連続する自由な雰囲気の外観である。建築構造は 煉瓦造一部RC 造であり、窓の上下に入れたバンドと床および屋根の RC 造で建物全体を束 ね、地震に脆いという煉瓦造の弱点を補うようにと計画して設計されている。ただし構造の 主体の煉瓦造は無補強である。1998 年から 2001 年にかけて構造補強と改修工事が行われ ており、その時に内部に鉄骨骨組が組み込まれた。また1998 年には国登録有形文化財に登 録された16)。建築構造について図2.1-3 より、橙色が煉瓦造、青色が RC 造、緑色が S 造 となっている17)。 図2.1-1 外観 (南東側より) 図2.1-2 内観 (東側より) B1FL GL 1FL 2FL
2.2 地震被害 2016 年 4 月の熊本地震では、熊本市中央区では震度 5 強を観測した。その地震による被 害として、RC 造構造および内部の鉄骨骨組における致命的な損傷はなかった。しかし、無 補強煉瓦壁などに損傷があった。主な損傷として、煉瓦壁の亀裂や漆喰塗天井の漆喰崩落な どであった。亀裂発生個所として、開口部の周辺および隅角部に多くあった。隅角部に面外 曲げ変形によるものと考えられる亀裂が発生していた18)。 図2.2-1 地震被害 1 図2.2-4 地震被害 4 図2.2-3 地震被害 3 図2.2-2 地震被害 2
測定方法は、測定に東京測振(株)携帯用振動計SPC-51A、センサーに高感度速度計 VSE-15D(12 台)を使用する。1 回あたりのサンプリング間隔 200Hz とする。測定時間は 10 分間 とし連続測定する。 2.3.2 測定位置・目的 測定位置として、下記のような3 つのケースに分けて行った。 ケース 1 では、建物の構造において一体性があるのか把握することを目的とし行う。設 置位置は図2.3-3、図 2.3-4 のようにする。なお、測定方位は東西方向としている。また、 Ch11 は鉄骨骨組みのスラブ最上部に設置している。 ケース 2 において、南北方向の振動特性について把握することを目的とし行う。設置位 置は図2.3-5、図 2.3-6 のようにする。 ケース 3 において、東西方向の振動特性について把握することを目的とし行う。設置位 置は図2.3-7、図 2.3-8 のようにする。また、地盤についても測定を行う。 図2.3-1 振動計 SPC-51A 図2.3-2 センサー(速度計)
図2.3-3 ケース 1 の設置位置(東断面図より) Ch1 Ch2 Ch3 Ch8 Ch7 Ch6 Ch5 Ch4 Ch11 Ch12 Ch10 1FL B1FL 2FL GL
Ch1 Ch2 Ch3 Ch4 (ペントハウス内) (ペントハウス内) 1FL B1FL 2FL GL 図2.3-5 ケース 2 の設置位置(南断面図より)
図2.3-7 ケース 3 の設置位置(東断面図より) Ch2 (ペントハウス内) Ch1 (ペントハウス内) Ch3 1FL B1FL 2FL GL
2.3.3 測定結果 それぞれのケースの結果を以下の図2.3-9 から図 2.3-25 に示す。伝達関数の算定方法と して、50 秒間×4 回の伝達関数を平均化している。ハニングウィンドウは 5 とする。 ケース1 において、1 階部分に対する 2 階や屋上の伝達関数について図 9 から図 2.3-17 より、固有振動数は煉瓦造が約 4.3Hz、RC 造が約 4.3Hz、S 造が約 3.7Hz であった。ま た、煉瓦造とRC 造の振幅について、各階それぞれ数値が近しい。しかし、S 造の振幅は大 きく異なる。そのことから、煉瓦造とRC 造は一体化しているが S 造は構造的に独立して いることが確認できた。 次にケース 2 について、地下階部分に対する屋上の伝達関数について図 2.3-18 から図 2.3-20 より、東西について振幅が大きく異なる結果となった。この結果については、東西に おいて窓の有無により影響し、窓が比較的に多い東側に大きく振れたと考えられる。 ケース3 について、地下階部分に対する屋上の伝達関数について図 2.3-21 から図 2.3-23 より、北側と南側の振幅やピーク値などが一致している。また、Ch1 と Ch2 の波形にハイ パス4.0Hz、ローパス 4.5Hz のフィルターをかけたものを図 2.3-24 に示す。これらより同 位相となっていることが確認できた。 また地盤について、H/V スペクトルを図 2.3-25 に示す。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch6/Ch3 0 0.51 1.52 2.53 3.54 4.55 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch12/Ch3 図2.3-9 ケース 1、Ch3(1 階)と Ch6(2 階)の伝達関数 図2.3-10 ケース 1、Ch3(1 階)と Ch12(屋上)の伝達関数 (2F/1F) (RF/1F)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe Frequency(Hz) (Ch6/Ch3) RF/1F (Ch12/Ch3) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch5/Ch2 0 1 2 3 4 5 6 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch10/Ch2 図2.3-11 ケース 1、煉瓦造の伝達関数 図2.3-12 ケース 1、Ch2(1 階)と Ch5(2 階)の伝達関数 図2.3-13 ケース 1、Ch2(1 階)と Ch10(屋上)の伝達関 (2F/1F) (RF/1F)
0 1 2 3 4 5 6 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) 2F/1F (Ch5/Ch2) RF/1F (Ch10/Ch2) 0 5 10 15 20 25 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch4/Ch1 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch11/Ch1 図2.3-14 ケース 1、RC 造の伝達関数 図2.3-15 ケース 1、Ch1(1 階)と Ch4(2 階)の伝達関数 図2.3-16 ケース 1、Ch1(1 階)と Ch11(鉄骨スラブ)の伝達関数 (2F/1F) (RF/1F)
0 5 10 15 20 25 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe Frequency(Hz) 2F/1F (Ch4/Ch1) RF/1F (Ch11/Ch1) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch1/Ch3 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch2/Ch4 図2.3-17 ケース 1、S 造の伝達関数 図2.3-18 ケース 2、Ch1(屋上)と Ch3(地下階)の伝達関数 図2.3-19 ケース 2、Ch2(屋上)と Ch4(地下階)の伝達関数 (RF/B1F) (RF/B1F)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch1/Ch3 (東側) Ch2/Ch4 (西側) 0 1 2 3 4 5 6 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch1/Ch3 0 1 2 3 4 5 6 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe r Frequency(Hz) Ch2/CH3 図2.3-20 ケース 2、東西の伝達関数比較 図2.3-21 ケース 3、Ch1(屋上)と Ch3(地下階)の伝達関数 図2.3-22 ケース 3、Ch2(屋上)と Ch3(地下階)の伝達関数 (RF/B1F) (RF/B1F)
0 1 2 3 0 2 4 6 8 10 Tr ansfe Frequency(Hz) Ch1/Ch3 (南側) Ch2/Ch3 (北側) -0.0025 -0.002 -0.0015 -0.001 -0.0005 0 0.0005 0.001 0.0015 0.002 0.0025 0 100 200 300 400 Ve lo sity (cm/ s) Time (s) Ch1 Ch2 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0.04 0.08 0.16 0.32 H/ V Spectrum ([ CH2,CH1] /C H3) Period (s) 図2.3-23 ケース 3、南北の伝達関数比較 図2.3-24 ケース 3、Ch1(南側)と Ch2(北側)の波形比較 図2.3-25 地盤における H/V スペクトル (南側) (北側)
2.4 構造モデルによる構造解析 2.4.1 解析の概要 図2.4-1 のような 2 質点モデルを作成し、時刻歴応答解析を行う。この解析によって、建 物における変位や変形角、ベースシア係数などの確認を行う。なお、同章の2.3 常時微動測 定において煉瓦造と RC 造が一体であることを確認したため、本研究ではそれぞれの構造 体を一体としてモデルを作成する。 2.4.2 2 質点モデルの概要 本研究では、地下部分は上部構造に影響しないものと仮定してモデルを作成する。2 質点 モデルを作成するにあたって、剛性は表2.4-1 に示した数値で、同章の 2.3 常時微動測定で 得られた固有振動数を元に算出している。固有振動数は、東西方向で 4.1Hz、南北方向で 3.4Hz である。レイリー減衰は、東西方向のとき 1 次基準振動数 4.1Hz、2 次基準振動数 11Hz、南北方向のとき 1 次基準振動数 3.4Hz、2 次基準振動数 9.6Hz に 5%かける。なお、 (株)清水建設によって構造調査、材料力学試験が行われており、付録に主な調査・試験結果 などを示す。 表2.4-1 各階の剛性 階 剛性 (kN/m) EW NS 1F 1.27×106 8.35×105 2F 1.15×106 9.64×105 図2.4-1 2 質点モデル 2 1 10. 97( m ) 4.85 (m )
表2.4-2 に入力地震波の最大加速度を示す。 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400 500 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Acce le ration (cm/ s 2) Time (s) -600 -400 -200 0 200 400 600 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (cm/ s 2) Time (s) 図2.4-2 大津町における東西方向の地震波 図2.4-3 大津町における南北方向の地震波 PGA=526gal PGA=482gal
0 5 10 15 20 25 30 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 Acce le ration (m/s 2) Period (s) 0 5 10 15 20 25 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 Acce le ration (m/s 2) Period (s) -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (cm/ s 2) Time (s) 図2.4-4 大津町における東西方向の応答スペクトル 図2.4-5 大津町における南北方向の応答スペクトル 図2.4-6 熊本市における東西方向の地震波 h=0.05 h=0.05 PGA=616gal
-800 -600 -400 -200 0 200 0 20 40 60 80 100 Acce le ration Time (s) 0 5 10 15 20 25 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 Acce le ration (m/s 2) Period (s) 0 5 10 15 20 25 30 35 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 Acce le ration (m/s 2) Period (s) 図2.4-7 熊本市における南北方向の地震波 図2.4-8 熊本市における東西方向の応答スペクトル 図2.4-9 熊本市における南北方向の応答スペクトル h=0.05 h=0.05
-1000 -500 0 500 1000 1500 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (cm/ s 2) Time (s) -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (cm/ s 2) Time (s) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 Acce le ration (m/s 2) Period (s) 図2.4-10 益城町における東西方向の地震波 図2.4-11 益城町における南北方向の地震波 図2.4-12 益城町における東西方向の応答スペクトル PGA=1157gal h=0.05 PGA=653gal
表2.4-2 入力地震波の最大加速度 入力地震波 最大加速度 (gal) 大津町 EW 482 NS 526 熊本市 EW 616 NS 827 益城町 EW 1157 NS 653 0 5 10 15 20 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 Acce le ration Period (s) 図2.4-13 益城町における南北方向の応答スペクトル
2.4.4 解析結果 以下の図2.4-14 から図 2.4-31、表 2.4-3 と表 2.4-4 に時刻歴応答解析を行った結果を示 す。 上記の2.4.3 入力地震波の概要で図 2.4-2 から図 2.4-13 において、入力地震波の応答スペ クトルが非常に大きいことがわかる。そのことから図2.4-14 から図 2.4-31、表 2.4-3 のよ うに、質点系の応答加速度や応答変位、ベースシア係数も大きい結果となった。
また、図2.4-32 に「Two approaches for the analysis of masonry structures : micro and macro - modeling」より高さ 2mの煉瓦造建造物における荷重―変位関係を示す19)。この研 究より変位が約 2mm のときに煉瓦壁にひび割れが生じることが示されている。なお、図 2.4-32 上の点線は、各入力地震波による質点 2 の変位位置である。橙色が大津町、赤色が 熊本市、緑色が益城町を示している。以上のことを踏まえて表2.4-4 と図 2.4-32 より、ど の地震波において1/1000 以上であることが確認できた。構造上すべて当てはまるわけでは ないが、解析上では各入力地震波でひび割れが生じると考えられる。 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) 図2.4-14 大津町地震波(EW)における質点 1 の応答加速度 図2.4-15 大津町地震波(EW)における質点 2 の応答加速度 Max=926gal Max=1650gal
-8 -6 -4 -2 0 2 4 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s Time (s) -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) 図2.4-16 大津町地震波(NS)における質点 1 の応答加速度 図2.4-17 大津町地震波(NS)における質点 2 の応答加速度 Max=917gal
0 2 4 6 8 10 12 0 0.01 0.02 0.03 Hei ght (m) Displacement (m) 0 2 4 6 8 10 12 0 0.01 0.02 Hei ght (m) Displacement (m) -15 -10 -5 0 5 10 15 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) 図2.4-19 大津町地震波(NS)における応答変位 図2.4-18 大津町地震波(EW)における応答変位 図2.4-20 熊本市地震波(EW)における質点 1 の応答加速度 Max=1304gal
-25 -20 -15 -10 -5 0 0 20 40 60 80 100 Acce le ration Time (s) -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) 図2.4-21 熊本市地震波(EW)における質点 2 の応答加速度 図2.4-22 熊本市地震波(NS)における質点 1 の応答加速度 図2.4-23 熊本市地震波(NS)における質点 2 の応答加速度 Max=1414gal Max=2032gal
0 2 4 6 8 10 12 0 0.02 0.04 Hei ght (m) Displacement (m) 0 2 4 6 8 10 12 0 0.02 0.04 0.06 Hei ght (m) Displacement (m) -15 -10 -5 0 5 10 15 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) 図2.4-24 熊本市地震波(EW)における応答変位 図2.4-25 熊本市地震波(NS)における応答変位 図2.4-26 益城町地震波(EW)における質点 1 の応答加速度 Max=1202gal
-20 -15 -10 -5 0 0 20 40 60 80 100 Acce le ration Time (s) -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) -30 -20 -10 0 10 20 30 0 20 40 60 80 100 Acce le ration (m/s 2) Time (s) 図2.4-27 益城町地震波(EW)における質点 2 の応答加速度 図2.4-28 益城町地震波(NS)における質点 1 の応答加速度 図2.4-29 益城町地震波(NS)における質点 2 の応答加速度 Max=1923gal Max=2639gal
表2.4-3 各地震における最大ベースシア係数 入力地震波 方向 質点1 質点2 大津町 EW 1.38 1.63 NS 0.73 0.90 熊本市 EW 1.61 1.95 NS 1.72 2.03 益城町(地表) EW 1.34 1.59 NS 2.29 2.63 0 2 4 6 8 10 12 0 0.01 0.02 0.03 Hei ght (m) Displacement (m) 0 2 4 6 8 10 12 0 0.05 0.1 Hei ght (m) Displacement (m) 図 2.4-30 益城町地震波(EW)における 応答変位 図2.4-31 益城町地震波(NS)における 応答変位
大津町 EW 1/300 1/500 NS 1/500 1/1000 熊本市 EW 1/300 1/300 NS 3/500 1/250 益城町 EW 1/300 1/500 NS 1/125 1/200 図2.4-32 煉瓦造建造物(高さ 2m)における荷重―変位関係
第
3 章
東北地方太平洋沖地震
―福島市写真美術館―
造建造物である。また、花見山と美しい福島の自然を全国に紹介された秋山庄太郎氏が、平 成13 年福島市ふるさと栄誉賞を受賞された際に、作品を福島市に寄贈され、その関わりを 象徴した施設でもある。元々この写真美術館は、大正11 年(1922 年)に、当時の逓信省が東 北・北海道などの管轄を目的に電気試験所福島試験所として開設された建物であった。貴重 な大正ロマンあふれる石造りの歴史的建造物として、長年にわたり多くの市民に親しまれ、 平成14 年(2002 年)6 月に市有形文化財に指定された。1 階内部が復元され、正面玄関の造 作、漆喰の天井や、扉のレリーフなどに大正ロマンを感じることができる20)。 福島市写真美術館の周辺には、主要な道路が通っており、中学校や高校がいくつかある地 域に建っている。福島市写真美術館の裏手方向には山がある。 図3.1-1 外観(南東側より) 図3.1-2 内観(北側より)
3.2 地震被害 2011 年 3 月 11 日の東北地方太平洋沖地震では、福島市では震度 5 強を観測した。その 地震による被害として、建物の躯体に致命的な損傷は確認されなかった。しかし、内壁・外 壁に損傷があった。主な被害として、内壁・外壁の欠損、剥落、床の損傷などが確認された。 また、正面のペディメントに大きな損傷があり、危険な状態であった。 図3.2-1 地震被害 1 図3.2-2 地震被害 2 図3.2-3 地震被害 3 図3.2-4 地震被害 4
った。1 回あたりのサンプリング間隔 100Hz とする。測定時間は 20 分間とし連続測定す る。 3.3.2 測定位置・目的 測定位置として、下記のような3 つのケースに分けて行った。 ケース1 において、建物の上下方向の振動特性について把握することを目的として行う。 同時に地盤についての振動特性も把握するため地盤の測定も行う。設置位置は図3.3-1 のよ うにする。 ケース 2 において、東西方向と南北方向の振動特性について把握することを目的として 行う。また、地震後山形大学の三辻らによって常時微動測定が行われて得られた数値との確 認を行うことも目的としている。設置位置は図3.3-2 のようにする。 ケース 3 において、壁の東側と南側それぞれの面外変形について把握することを目的と して行う。設置位置は図3.3-3 のようにする。
センサー 方向 Ch1 南北方向 Ch2 南北方向 Ch3 上下方向 Ch4 南北方向 Ch5 南北方向 Ch6 上下方向 Ch7 上下方向 Ch8 南北方向 Ch9 上下方向 Ch10 南北方向 Ch11 東西方向 Ch12 上下方向 1 階平面図 2 階平面図 屋根裏平面図 Ch1 Ch2 Ch3 Ch4 Ch5 Ch6 Ch7 Ch8 Ch9 Ch10 Ch11 Ch12 N 図3.3-1 ケース 1 の設置位置
1 階平面図 屋根裏平面図 Ch1 Ch2 Ch3 Ch4 Ch5 Ch6 Ch7 Ch8 Ch10 図3.3-2 ケース 2 の設置位置
1 階平面図 屋根裏平面図 Ch1 Ch2 Ch3 Ch4 Ch6 Ch7 Ch8 Ch9 N Ch5 図3.3-3 ケース 3 の設置位置
ニングウィンドウはケース1 で 20、ケース 2、3 で 10 とする。 ケース1 において、図 3.3-4 から図 3.3-9 に示す。上下方向について、概ね伝達関数が数 値1 となり同じ変動であることが確認できた。また、Ch6 と Ch9 の波形にハイパス 3.5Hz、 ローパス4.0Hz のフィルターをかけたものを図 3.3-10 に示す。これより、同位相でありロ ッキングしていないことが確認できた。 ケース2 において、北側と南側(長辺方向)について、図 3.3-11 と図 3.3-12 より、ともに 固有振動数が約 4.6Hz であった。この結果は、地震後に三辻らによって行われた常時微動 測定と近い結果を得られた。また、東側と西側(短辺方向)について、図 3.3-13 と図 3.3-14 より東側が約3.5Hz、西側が約 4.5Hz であった。東西で偏心しており、固有モードに影響 が起きたと考えられる。 ケース3 において、図 3.3-15 から図 3.3-21 に伝達関数、それらより求めた振動モードを 図3.3-22 示す。南東部で面外への変化量において大きくなっている。そのことから南東部 の剛性が小さく、変形は大きくなるのではないかと予想される。 また地盤について、H/V スペクトルを図 3.3-23 に示す。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 0 2 4 6 8 10 T rans fe r Frequency(Hz) Ch3/Ch7 図3.3-4 ケース 1、Ch3(屋根裏)と Ch7(基礎上)の伝達関数 (RF/Foundation)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch3/Ch9 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 0 2 4 6 8 10 T rans fe r Frequency(Hz) Ch3/Ch12 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch7/Ch9 図3.3-5 ケース 1、Ch3(屋根裏)と Ch9(1 階)の伝達関数 図3.3-6 ケース 1、Ch3(屋根裏)と Ch12(地盤)の伝達関数 図3.3-7 ケース 1、Ch7(基礎上)と Ch9(1F)の伝達関数 (RF/1F) (RF/Ground) (Foundation/1F)
0 0.2 0.4 0.6 0 2 4 6 8 10 T ran Frequency(Hz) Ch9/Ch12 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0 2 4 6 8 10 T rans fe r Frequency(Hz) Ch6/Ch9 -0.00004 -0.00003 -0.00002 -0.00001 0 0.00001 0.00002 0.00003 0.00004 0 100 200 300 400 500 Ve lo sit y (cm /s ) Time (s) Ch6 Ch9 図3.3-9 ケース 1、Ch6(北側 1 階)と Ch9(南側 1 階)の伝達関数 図3.3-8 ケース 1、Ch9(1 階)と Ch12(地盤)の伝達関数 (1F/Ground) (北側/南側) (北側) (南側)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch1/Ch5 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 0 2 4 6 8 10 T rans fe r Frequency(Hz) Ch3/Ch7 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch2/Ch8 図3.3-11 ケース 2、Ch1(屋根裏)と Ch5(1 階)の伝達関数 図3.3-12 ケース 2、Ch3(屋根裏)と Ch7(1 階)の伝達関数 図3.3-13 ケース 2、Ch2(屋根裏)と Ch8(1 階)の伝達関数 (RF/1F) (RF/1F) (RF/1F)
0 1 2 3 4 0 2 4 6 8 10 T ran sf Frequency(Hz) Ch4/Ch6 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch1/Ch8 0 5 10 15 20 25 30 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch2/Ch8 図3.3-14 ケース 2、Ch4(屋根裏)と Ch6(1 階)の伝達関数 図3.3-15 ケース 3、Ch1(屋根裏)と Ch8(1 階)の伝達関数 図3.3-16 ケース 3、Ch2(屋根裏)と Ch8(1 階)の伝達関数 (RF/1F) (RF/1F) (RF/1F)
0 5 10 15 20 25 30 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch9/Ch8 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch4/Ch7 0 2 4 6 8 10 12 14 16 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch5/Ch7 図3.3-17 ケース 3、Ch9(屋根裏)と Ch8(1 階)の伝達関数 図3.3-18 ケース 3、Ch4(屋根裏)と Ch7(1 階)の伝達関数 図3.3-19 ケース 3、Ch5(屋根裏)と Ch7(1 階)の伝達関数 (RF/1F) (RF/1F) (RF/1F)
0 5 10 0 2 4 6 8 10 T ran Frequency(Hz) Ch3/Ch7 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0 2 4 6 8 10 T ran sf er Frequency(Hz) Ch6/Ch7 図3.3-20 ケース 3、Ch3(屋根裏)と Ch7(1 階)の伝達関数 図3.3-21 ケース 3、Ch6(屋根裏)と Ch7(1 階)の伝達関数 (RF/1F) (RF/1F)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 3.2 6.4 12.8 H/V S pe ctru m ([ CH11 ,CH1 0]/CH12) Period (s) 図3.3-23 地盤における H/V スペクトル 図3.3-22 ケース 3 における面外の変形モード
って作成されたものを用いる。モデルは、図3.4-1 に示す。このモデルに、地盤バネを設置 し、地盤の動的相互作用を考慮した時刻歴応答解析を行う。また、逸散減衰を表すためにダ ッシュポットも設置する。そして、福島市写真美術館の応答加速度や相対変形などについて 確認する。また、地盤固定モデルとの比較も行う。 解析ソフトについては、TDAP3 を用いる。レイリー減衰は、東西方向で 1 次基準振動数 4.2Hz、2 次基準振動数 4.6Hz、南北方向で 1 次基準振動数 3.5Hz、2 次基準振動数 3.7Hz に5%かける。 なお、モデルは以下の通りに作成されている。 ① 組積造建造物である福島市写真美術館の主たる構造材料である国見石をひとつの要素 と考え、その大きさでFEM メッシュを作成する。節点数は 134225 個である。 ② 外壁は厚さ方向に 6 分割したソリッド要素でモデル化し、面外方向の曲げを評価できる ものとする。 ③ 床はシェル要素でモデル化し、面内剛性を適切に評価する。 ④ 小屋組みのトラスははり要素でモデル化し、剛性および重量を考慮する。屋根(瓦)はシ ェル要素でモデル化するが、剛性は考慮しない。 ⑤ 倉庫および電気室は考慮しない。 ⑥ ポーチ部分の凸部は全体的なせん断変形に影響しないものとし、剛性・重量とも無視す る。
3.4.2 地盤バネの概要 地盤バネにおいて、図3.4-2 に示すように、モデルの底面の節点を赤枠の区画に分けその 中心部に設置している。ダッシュポットも同様である。簡略図として図3.4-3 に地盤バネと ダッシュポットを示す。なお、図3.4-2 における緑色の丸点は解析結果で示す南西点と南東 点の位置である。バネ定数などにおいて、日本建築学会「建物と地盤の動的相互作用を考慮 した応答解析と耐震設計」と日本電気協会「原子力発電所耐震設計技術指針」より以下の式 を参考にし、同章の3.3 常時微動測定で得られた固有振動数になるように算定している21)22)。 基礎幅は1500mm であり、ポアソン比を 0.4 とする。また、表 3.4-1 に福島写真美術館の 敷地内の地盤条件についても示す。表3.4-1 より、工学的判断から深度 2.75~3.70 として 算定を行う。なお、基礎は剛体としている。 算定結果として、表3.4-2 に地盤バネの剛性を示す。ダッシュポットにおける粘性減衰係 数は、算定式から1.7×103である。地盤バネの減衰比は15%とする。 G:せん断剛性(kN/m2) ρ:密度(kN/m3) Vs:S 波(せん断)速度(m/s) K1:水平方向の地盤バネ定数(kN/m) K2:上下方向の地盤バネ定数(kN/m) ν:動ポアソン比 b:基礎幅 Cs:粘性減衰係数の水平成分 hs:地盤バネの減衰比 ω:角振動数(rad/s) Ks:地盤バネの剛性(kN/m)
・G=ρVs
2・K1=1.345∗ 2𝜋Gb/(2-ν)
・K2=1.345∗ 𝜋Gb/(1-ν)
・Cs=(2hs1/w1)Ks
ダッシュポット 水 平 バ ネ と 上下バネ 0.00~0.75 0.75 礫(盛土) ― 400 160 1.84 0.75~1.15 0.40 砂 ― 1.73 1.15~1.80 0.65 粘土 1 1.53 1.80~2.75 0.95 粘土混り砂礫 6 1600 260 1.73 2.75~3.70 0.95 3.70~4.70 1.00 砂 4 180 1.73 3.4-3 地盤バネとダッシュポット簡略図 1 2 3 4 5 12 13 14 15 16 6 7 8 9 10 11 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 図3.4-2 接点区画分け図
表3.4-2 各区画の地盤バネの剛性
EW の固有振動数のとき(kN/m) NS の固有振動数のとき(kN/m) EW NS UD EW NS UD 1 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03 2 2.2E+04 2.2E+04 2.9E+04 1.4E+04 1.4E+04 1.9E+04 3 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03 4 3.5E+04 3.5E+04 4.7E+04 2.0E+04 2.0E+04 2.7E+04 5 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03 6 2.6E+04 2.6E+04 3.5E+04 1.7E+04 1.7E+04 2.2E+04 7 2.6E+04 2.6E+04 3.5E+04 1.7E+04 1.7E+04 2.2E+04 8 2.6E+04 2.6E+04 3.5E+04 1.7E+04 1.7E+04 2.2E+04 9 2.6E+04 2.6E+04 3.5E+04 1.7E+04 1.7E+04 2.2E+04 10 2.6E+04 2.6E+04 3.5E+04 1.7E+04 1.7E+04 2.2E+04 11 2.4E+04 2.4E+04 3.2E+04 1.5E+04 1.5E+04 2.1E+04 12 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03 13 2.2E+04 2.2E+04 2.9E+04 1.4E+04 1.4E+04 1.9E+04 14 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03 15 3.5E+04 3.5E+04 4.7E+04 2.0E+04 2.0E+04 2.7E+04 16 7.2E+04 2.0E+04 2.7E+04 1.3E+04 1.3E+04 1.7E+04 17 2.4E+04 2.4E+04 3.2E+04 1.5E+04 1.5E+04 2.1E+04 18 2.4E+04 2.4E+04 3.2E+04 1.5E+04 1.5E+04 2.1E+04 19 2.4E+04 2.4E+04 3.2E+04 1.5E+04 1.5E+04 2.1E+04 20 2.4E+04 2.4E+04 3.2E+04 1.5E+04 1.5E+04 2.1E+04 21 2.4E+04 2.4E+04 3.2E+04 1.5E+04 1.5E+04 2.1E+04 22 2.4E+04 2.4E+04 3.2E+04 1.5E+04 1.5E+04 2.1E+04 23 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03 24 2.2E+04 2.2E+04 2.9E+04 1.4E+04 1.4E+04 1.9E+04 25 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03 26 3.5E+04 3.5E+04 4.7E+04 2.0E+04 2.0E+04 2.7E+04 27 8.3E+03 8.3E+03 1.1E+04 5.3E+03 5.3E+03 7.0E+03
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 0 50 100 150 200 250 300 Acc ele rat io n ( m/s 2) Time (s) -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 0 50 100 150 200 250 300 Acce ler at ion (m/s 2) Time (s) 図3.4-5 桜木町における南北方向の地震波 図3.4-4 桜木町における東西方向の地震波 PGA=299gal PGA=328gal
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 3.2 6.4 12.8 Acc ele rat io n ( m/s 2) Period (s) 0 2 4 6 8 10 12 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 3.2 6.4 12.8 Acc ele rat io n ( m/s 2) Period (s) -3 -2 -1 0 1 2 3 0 50 100 150 200 250 300 Acce ler at ion (m/s 2) Time (s) 図3.4-6 桜木町における東西方向の応答スペクトル 図3.4-7 桜木町における南北方向の応答スペクトル 図3.4-8 松木町における東西方向の地震波 h=0.05 h=0.05 PGA=257gal
-3 -2 -1 0 0 50 100 150 200 250 300 Acc ele rat io Time (s) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 3.2 6.4 12.8 Acc ele rat io n ( m/s 2) Period (s) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 0.05 0.1 0.2 0.4 0.8 1.6 3.2 6.4 12.8 Acc ele rat io n ( m/s 2) Period (s) 図3.4-9 松木町における南北方向の地震波 図3.4-10 松木町における東西方向の応答スペクトル 図3.4-11 松木町における南北方向の応答スペクトル h=0.05 h=0.05
3.4.4 解析結果 以下の図3.4-12 から図 3.4-29 に時刻歴応答解析を行った結果を示す。なお、時刻歴応答 解析をするにあたって固有値解析を行っており、基礎固定モデルにおける 1 次固有振動数 は、東西方向において約8Hz、南北方向において約 6Hz であった。 地盤バネモデルの固有振動数は、同章の3.3 常時微動測定より得られた結果を用いている ため、東西方向で約4.6Hz、南北方向で約 3.5Hz である。その固有振動数より固有周期は、 東西方向で約0.2s、南北方向で約 0.3sである。そのことから上記の 3.4.3 入力地震波の 概要で示した図3.4-4 から図 3.4-11 より、地盤バネモデルの応答加速度は、桜木町の東西 方向で556 ガル、南北方向で 781 ガル、松木町の東西方向で 835 ガル、南北方向で 746 ガ ルと考えられる。それらを踏まえて、図3.4-14 と図 3.4-15、図 3.4-23、図 3.4-24 より、動 的相互作用を考慮した地盤バネによって応答加速度を低減することができたと考えられる。 桜木町における入力地震波について、図3.4-16 から図 3.4-19 より、地盤バネを入れるこ とによって変位を低減することができたと考えられる。また、南西点と南東点について図 3.4-20 で比較すると、南西点と南東点それぞれ最上部において違いはなかった。同章の 3.3 常時微動測定の図3.3-22 より、南東部の方が面外変形において大きくなると考えられたが、 解析ではあまり変化がないという結果となった。 松木町における入力地震波について、図3.4-25 から図 3.4-28 より、上記で示した桜木町 における入力地震波の結果と同様に、地盤バネによって応答変位を低減できたと考えられ る。なお、EW 方向の変位について、図 3.4-27 より、地盤バネモデルが基礎固定モデルよ り変位が大きくなった。これは、図3.4-21 と図 3.4-23、固有振動数より、地盤バネモデル の応答加速度が基礎固定モデルの応答加速度より大きいため、変位も大きくなったと考え る。また、南西点と南東点について図3.4-29 で比較すると、南東点より南西点の方が、わ ずかに変位が大きくなった。同章の 3.4.3 常時微動測定の図 3.3-22 より、南東部の方が面 外変形において大きくなると考えられたが、解析では反対の結果となった。
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n Time (s) -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n ( m/s 2) Time (s) -6 -4 -2 0 2 4 6 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n ( m/s 2) Time (s) 図3.4-12 基礎固定(南西点最上部)における応答加速度(桜木町 EW) 図3.4-13 基礎固定(南西点最上部)における応答加速度(桜木町 NS) 図3.4-14 地盤バネ(南西点最上部)における応答加速度(桜木町 EW) Max=878gal Max=452gal
-6 -4 -2 0 2 4 6 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n ( m/s 2) Time (s) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.002 0.004 0.006 He ig h t (m) Displacement (m) EW NS 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.001 0.002 0.003 He ig h t (m) Displacement (m) EW NS 図3.4-15 地盤バネ(南西点最上部)における応答加速度(桜木町 NS) 図 3.4-16 南西点の基礎固定における 応答変位(桜木町) 図3.4-17 南西点の地盤バネ(減衰 15%) における応答変位(桜木町) Max=481gal
0 1 2 3 4 5 6 7 0 0.002 0.004 He ig h t (m) Displacement (m) Ground spring Foundation fixed 0 1 2 3 4 5 6 7 0 0.002 0.004 0.006 He ig h t (m) Displacement (m) Ground spring Foundation fixed 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.001 0.002 0.003 He ig h t (m) Displacement (m) 南西 南東 図 3.4-18 南西点の基礎固定と地盤バネ (減衰 15%)における応答変位 (桜木町 EW) 図 3.4-19 南西点の基礎固定と地盤バネ (減衰 15%)における応答変位 (桜木町 NS) 図 3.4-20 南西点と南東点の地盤バネ(減衰 15%)における
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n ( m/s 2) Time (s) -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n ( m/s 2) Time (s) -6 -4 -2 0 2 4 6 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n ( m/s 2) Time (s) 図3.4-21 基礎固定(南西点最上部)における応答加速度(松木町 EW) 図3.4-22 基礎固定(南西点最上部)における応答加速度(松木町 NS) 図3.4-23 地盤バネ(南西点最上部)における応答加速度(松木町 EW) Max=456gal Max=451gal Max=553gal
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 0 20 40 60 80 100 120 140 Acc ele rat io n Time (s) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.001 0.002 0.003 He ig h t (m) Displacement (m) EW NS 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.001 0.002 0.003 He ig h t (m) Displacement (m) EW NS 図3.4-24 地盤バネ(南西点最上部)における応答加速度(松木町 NS) 図3.4-25 南西点の基礎固定における 応答変位(松木町) 図3.4-26 南西点の地盤バネ(減衰 15%) における応答変位(松木町)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.001 0.002 0.003 He ig h t (m) Displacement (m) Ground spring Foundation fixed 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.001 0.002 0.003 He ig h t (m) Displacement (m) Ground spring Foundation fixed 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 0.0005 0.001 0.0015 0.002 0.0025 He ig h t (m) Displacement (m) 南西 南東 図 3.4-27 南西点の基礎固定と地盤バネ (減衰 15%)における応答変位 (松木町 EW) 図 3.4-28 南西点の基礎固定と地盤バネ (減衰 15%)における応答変位 (松木町 NS) 図 3.4-29 南西点と南東点の地盤バネ(減衰 15%)における 応答変位(松木町 NS)
第
4 章
結論
4.1 まとめ 本研究において、大規模地震で被災した歴史的組積造建造物に対して修復計画に関わる 調査を行った。建物の地震被害状況や振動特性、構造体についての把握、またそれらを踏ま えたモデルより、地震時の建物の挙動の確認を行った。さらに、2 つの地震波についても把 握することができた。第2 章平成 28 年熊本地震と第 3 章東北地方太平洋沖地震より、PS オランジュリがある熊本市と、福島市写真美術館の位置に近い福島市松木町と、それぞれの 入力地震波の加速度応答スペクトルを図4.1-1 に示す。図 4.1-1 より、この 2 つの地震波は どちらも約0.2s~0.6s(赤色枠内)で卓越が大きく、短周期の建物には厳しい地震波であっ たことがわかる。PS オランジュリの固有振動数から固有周期は東西方向で約 0.2s、南北 方向で約0.3s、福島市写真美術館も同様に固有周期は東西方向で約 0.2s、南北方向で約 0.3sである。そのことと図 4.1-1 より、どちらの建物においても厳しい地震波であり、歴 史的組積造建造物においても同様であることが確認できた。 さらに下記に、PS オランジュリと福島市写真美術館についてそれぞれで行った調査を建 物ずつに分けてまとめる。 ・PS オランジュリ 建物の地震被害状況について、煉瓦壁の亀裂や漆喰塗装天井の漆喰崩落などがあり、亀裂 発生個所として開口部の周辺や隅角部に多くあることを確認した。 振動特性の把握のため、常時微動測定を行った。常時微動測定の結果より、南側と北側に おいて同位相であることが確認できた。東側と西側においては、伝達関数に違いがあること から偏心している可能性があることを確認した。また、PS オランジュリにおいて煉瓦造と RC 造、S 造があり、それらは測定結果より、煉瓦造と RC 造は一体化しており、S 造は独 立していることが確認できた。 常時微動測定で把握した固有振動数より作成した質点系モデルにおける構造解析につい 図4.1-1 熊本市と福島市松木町の応答スペクトル
ることを確認した。 ・福島市写真美術館 建物の地震被害状況について、内壁・外壁の欠損、剥落、床の損傷などを確認した。また、 正面のペディメントに大きな損傷も確認した。 上記で示したPS オランジュリと同様に、振動特性の把握のため常時微動測定を行った。 その結果より、建物の上下動より地盤においてロッキングしていないことを確認した。また、 偏心の影響により東西によって伝達関数の振動数に少し違いがあることが確認できた。ま た、面外変形について確認を行ったところ、南東部にかけて変形が大きくなる可能性がある ことを確認した。実際に、福島市写真美術館において南東部の壁にひび割れが生じていた。 また木造床組みと常時微動測定の結果より、水平面内剛性が十分に確保されていない可能 性があることが考えられる。 常時微動測定で把握した固有振動数より地盤バネを設定し、地盤との動的相互作用を考 慮した 3 次元モデルを用いて構造解析を行った。時刻歴応答解析より、地盤バネによって 応答加速度の低減を確認することができた。また、建物の応答変位についても把握すること ができた。常時微動測定から、南東部に大きな変形が生じる可能性があると考えられたが、 解析上ではそのような結果にはならなかった。 以上のように、歴史的組積造建造物の修復計画に必須と考えられる建物の振動特性や、建物 の構造体について、さらに地震時の建物の挙動を確認・把握することができた。これらの結 果を踏まえて、より修復計画に活かしていけるように検討していく必要がある。
4.2 今後の課題 以上より修復計画に関わる調査を行ったが、まだ多くの課題が残っている。今後の課題を それぞれの建物に分けて以下に示す。 ・PS オランジュリ 本研究では、解析において地下階について考慮していないため、今後地下階を考慮した質 点系モデルを作成する。さらに、今回線形域内の構造解析を行ったので、非線形構造解析を 行うことが課題である。また、動的相互作用について考慮していく必要があると考える。 ・福島市写真美術館 作成したモデルに対して構造補強をモデルに組み入れて、構造補強の検討を行っていく。 そして、より適切な修復計画を立案していきたい。
取締役平山武久氏、平山禎久氏、中島淑子氏の全面的なご協力とご支援があって実施するこ とができ、心から感謝の意を表します。測定を行う際に、九州大学の山口謙太郎准教授・横 瀬昂氏・小石咲樹氏に測定のご協力をいただき、心から感謝の意を表します。構造体の材料 実験などの結果・資料を提供していただきました清水建設株式会社の皆様に心から感謝の 意を表します。2017 年熊本地震の地震波を提供していただきました国立研究開発法人防災 科学技術研究所の先名重樹氏に心から感謝の意を表します。さらに、福島市写真美術館にお ける調査活動においては、有限会社鈴木設計の皆様に全面的なご協力とご支援をいただき ました、心から感謝の意を表します。また、建物の解析を行う際に、大変ご指導をしていた だきました、株式会社アーク情報システムの佐藤拓也氏に心から感謝の意を表します。最後 に、ご協力していただいた同研究室の研究生にも感謝の意を表します。
参考文献 1) 熊本県危機管理防災課:平成 28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について 2) 熊本県教育庁文化課:熊本震災による被災文化財について、2016.6 3) 日本イコモス国内委員会:2016 年熊本地震日本イコモス調査報告-文化財建造物の被 害状況と復旧への展望-、2016.6 4) 復興庁:復興の現状と課題、2017.11 5) 福島県災害対策本部:平成 23 年東北地方太平洋沖地震による被害状況即報 6) 文部科学省:東日本大震災による被害情報について 7) 福島県文化財保護審議会:東日本大震災からの復興に向けた緊急アピール-ふくしま の文化財の保護・継承と再生のために-、2011.7 8) 福島県:福島県文化復興基本計画-ふくしま文化元気創造プラン-、2013.3 9) 総理府地震調査研究推進本部地震調査委員会編:日本の地震活動-被害地震から見た 地域別特徴、pp103-106,330-333、1997 10) 宇佐美龍夫著:新編日本被害地震総覧、東京大学出版会、1991 11) 村岸純、佐竹健治:九州中部地方の歴史地震 12) 村橋久昭:旧第一銀行熊本支店構造耐力診断書、1997 13) 熊本大学工学部環境システム工学科三井・村上研究室:旧第一銀行熊本支店社屋地 下室内壁-煉瓦の強度調査-、1999 14) 萩原勇亮:東日本大震災で被災した福島市写真美術館の耐震性に関する研究-材 料調査と構造解析-、三重大学工学部建築学科卒業論文、2016.3 15) 三辻和弥、狩野勝重、佐々木達夫:福島市写真美術館 常時微動観測結果報告、 2012.11 16) 熊本産業遺産研究会・熊本まちなみトラスト編:熊本の近代化遺産(上)富士川一裕、 pp31-33、弦書房 17) 旧第一銀行熊本支店設計図書 18) 花里利一:歴史的組積造建造物における建物・資料調査と微動測定、2017
19) Paulo B. Lourenco、Jan G. Rots、Johan Blaauwendraad:Two approaches for the analysis of masonry structures : micro and macro – modeling、1995
20) 花里利一 他:福島市写真美術館再整備工事に係る構造調査・研究 経過報告書、 2016 21) 日本建築学会:建物と地盤の動的相互作用を考慮した応答解析と耐震設計 22) 社団法人日本電気協会電気技術基準調査委員会、電気技術指針原子力編:原子力発 電所耐震設計技術指針、JEAG4601、pp313-333、1987 23) 社団法人日本コンクリート協会、建築・土木分野における歴史的構造物の診断・修 復研究委員会:報告書、pp226-235,238-246、2007.6 24) 公益社団法人 日本建築士会連合会:被災歴史的建造物の調査・復旧方法の対応マ
26) 国立研究開発法人 防災科学技術研究所 HP、http://www.bosai.go.jp/
27) 熊本県HP、http://www.pref.kumamoto.jp/
28) 福島県HP、https://www.pref.fukushima.lg.jp/
た。材料力学試験の概要を示す。 表. 材料単体の材料力学試験の概要 材料種別・寸法 試験内容 試験体番号 試験体数 基礎コンクリート Φ50×100 密度測定 全円柱供試体 3 圧縮試験 ③-2 2 ③-3 1 割裂引張試験 ③-1 1 中性化試験 引張割裂試験後の 試験体を使用 1 はかま石 Φ50×100 密度測定 全円柱供試体 4 圧縮試験 ①-1 2 ②-1 割裂引張試験 ①-2 2 ②-2 吸水試験 圧縮試験後の 試験体使用 2 壁体(国見石) Φ50×100 密度測定 全円柱試験体 6 圧縮試験 1F-① 3 1F-③ 2F-⑤ 割裂引張試験 1F-② 3 1F-④ 2F-⑥ 吸水試験 圧縮試験後の 試験体使用 2 腰壁石材 Φ50×100 密度測定 全円柱試験体 7 圧縮試験 1F-⑦ 3 1F-⑧ 1F-⑨ 割裂引張試験 1F-⑩ 4
1F-⑫ 1F-⑬ 吸水試験 圧縮試験後の 試験体使用 2 煉瓦 Φ30×60 密度測定 (A:4,B:3,C:2) 9 圧縮試験 (A:2,B:2,C:1) 5 割裂引張試験 (A:2,B:2,C:1) 4 吸水試験 圧縮試験後の 試験体使用 (A:1,B:1,C:1) マグサコンクリート Φ50×100 密度測定 全円柱試験体 4 圧縮試験 2F-14② 2 2F-15② 割裂引張試験 2F-14① 2 2F-15① 中性化試験 割裂引張試験後の 試験体使用 2 表. 目地材を含む組積体の材料力学試験の概要 材料種別・寸法 試験内容 試験体番号 試験体数 壁体(国見石)組積 体 Φ100×200 せん断試験 1F-6 4 1F-8 2F-9 2F-11 腰壁部石材組積体 Φ100×200 せん断試験 1F-5 2 1F-7 煉瓦組積体 Φ100×200 圧縮試験 煉瓦-2 1 せん断試験 煉瓦-1 1 表. 国見石(自然石)の材料力学試験の概要 材料種別・寸法 試験内容 試験体番号 試験体数 国見石 25×25×50 密度測定 国見石① 1 圧縮試験 国見石① 1 国見石 30×30×60 密度試験 国見石② 1 圧縮試験 国見石② 1
表. 密度測定の結果 材料種別 平均密度(g/cm3) 基礎コンクリート 2.26 マグサコンクリート 2.23 基礎はかま石 2.05 壁体(国見石) 1.19 腰壁部石材 2.01 煉瓦A 1.83 煉瓦B 1.77 煉瓦C 1.74 国見石 1.12 圧縮試験の結果 それぞれの材料の試験体の圧縮強度と算出したヤング係数を平均化した。また、基礎コン クリート③-2 とマグサコンクリート 2F-14②、基礎はかま石①-1、壁体 1F-①、腰壁部石材 1F-⑧の線形領域内の σ-ε 図を示す。 表. 圧縮強度とヤング係数 材料種別 平均圧縮強度(N/mm2) 平均ヤング係数(kN/mm2) 基礎コンクリート 13.8 21.0 マグサコンクリート 14.3 15.1 基礎はかま石 14.9 8.3 壁体(国見石) 4.1 1.4 腰壁部石材 22.8 6.4 煉瓦A 23.0 - 煉瓦B 15.9 4.7 煉瓦C 5.9 1.7 国見石 2.6 3.6
0 1 2 3 4 5 6 -400 -200 0 200 400 σ( N/ mm 2) με 鉛直方向 水平方向 0 1 2 3 4 5 6 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400 500 σ( N/ mm 2) με 鉛直方向 水平方向 0 1 2 3 4 -600 -400 -200 0 200 400 σ( N/ mm 2) με 鉛直方向 水平方向 図. 基礎コンクリート③-2 の σ-ε 図 図. マグサコンクリート 2F-14②の σ-ε 図 図. 基礎はかま石①-1 の σ-ε 図
煉瓦組積体の圧縮試験の結果 煉瓦組積体の圧縮試験を行った結果を示す。また、σ-δ 図を示す。 表. 煉瓦組積体の圧縮試験結果 Φ(mm) L(mm) 最大荷重(kN) 圧縮強度σ(N/mm2) 99 200 76.5 9.94 0 0.2 0.4 0.6 -1000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 σ( N/ mm 2 με 鉛直方向 水平方向 0 1 2 3 4 5 6 -1500 -1200 -900 -600 -300 0 300 600 900 σ( N/ mm 2) με 鉛直方向 水平方向 図. 壁体 1F-①の σ-ε 図 図. 腰壁部 1F-⑧の σ-ε 図
目地材を含む組積体のせん断試験の結果 組積体のせん断試験に用いた試験体は煉瓦組積体及び 1F-6(国見石)の 2 体を除き目地と 石材の付着はみられなかった。組積体のせん断試験の結果を示す。また、国見石組積体に上 載圧作用時のせん断強度分布(P-Q 図)・τ-σ 関係図を示す。τ-σ 図より摩擦係数を算出した。 表. 組積体のせん断強度・せん断応力度 材料種別 Φ(mm) L(mm) せん断強度 Qmax(kN) せん断応力度 τ(N/mm) 煉瓦組積体 100 203 25.50 1.26 国見石組積体(1F-6) 99 196 7.23 0.37 国見石組積体(1F-8) 97 198 5.82 0.3 国見石組積体(2F-9) 99 198 3.01 0.15 国見石組積体(2F-11) 98 202 2.80 0.14 腰壁部石材組積体(1F-5) 99 195 11.34 0.59 腰壁部石材組積体(1F-7) 100 182 4.32 0.24 0 2 4 6 8 10 12 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 σ( N/ mm 2) δ(mm) 図. 煉瓦組積体圧縮試験 σ-δ 図
表. 摩擦係数 σ(N/mm2) τ(N/mm2) C(N/mm2) α 0.19 0.37 0.07 1.58 0 2 4 0 1 2 3 4 5 6 Q(kN) P(kN) 1F-8 2F-9 2F-11 図. 上載圧作用時のせん断強度分布図 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0 0.1 0.2 0.3 τ( N/ mm 2) σ(N/mm2) 1F-6(目地付着試験体) 1F-8 2F-9 2F-11 図. 上載圧作用時のせん断応力度分布
付録2 PS オランジュリにおける材料力学試験 (株)清水建設によって、PS オランジュリの躯体からコア抜きされた試験体について材 料力学試験を行われた。また、コア抜きされた試験体とは別に煉瓦について材料力学試験を 行われた。材料力学試験結果を示す。さらに、構造調査によって得られた各階の重量につい ても以下に示す。 表. コンクリート圧縮強度試験結果 階 供試体番号 密度 圧縮強度 (N/mm2) 2 2F-1 2.24 25.3 2F-2 2.27 35.1 2F-3 2.25 23.8 平均値 ― 28.1 標準偏差 ― 6.1 1 1F-1 2.30 24.8 1F-2 2.26 25.8 1F-3 2.38 25.1 平均値 ― 25.2 標準偏差 ― 0.5 B1F B1F-1 2.21 11.9 B1F-2 2.28 13.8 B1F-3 2.23 16.2 平均値 ― 14.0 標準偏差 ― 2.2 全体平均値 ― 22.4 全体標準偏差 ― 7.2
煉瓦 2F-1 54.5 100.3 40.1 17.0 11.8 2F-2 54.4 96.9 58.8 24.8 2F-3 54.6 105.0 56.1 24.0 1F-1 53.2 103.6 19.5 8.8 1F-2 54.6 104.3 12.6 5.4 1F-3 54.5 101.1 18.4 7.8 B1F-1 54.5 102.5 12.9 5.5 B1F-2 54.6 98.5 18.5 7.8 B1F-3 54.5 101.1 12.8 5.4 煉瓦 + 目地 2F-1 80.2 86.9 86.1 15.3 10.2 2F-2 80.2 88.1 105 18.7 2F-3 80.2 106.8 66.5 12.46 1F-1 80.2 97.8 35.1 6.4 1F-2 80.2 93.4 37.0 6.7 1F-3 80.2 83.3 38.6 6.7 B1F-1 80.2 87.9 40.4 7.2 B1F-2 80.2 104.3 43.0 8.0 B1F-3 80.2 121.5 54.7 10.4 表. 煉瓦物性せん断力試験結果 試験片 高さ (cm) 幅 (cm) 断面積 (cm2) 破壊荷重 (N) せん断強度 (N/mm2) 平均値 (N/mm2) 2F-1 22.0 13.6 298.4 31700 0.5 0.8 2F-2 20.9 13.4 278.4 29700 0.5 2F-3 10.9 13.3 145.1 23690 0.8 1F-1 18.0 13.1 236.3 64100 1.4 1F-2 21.3 13.1 278.7 71100 1.3 1F-3 20.8 13.3 277.7 45900 0.8 B1F-1 15.4 13.1 201.9 40600 1.0 B1F-2 16.9 13.3 224.8 26200 0.6 B1F-3 17.5 13.3 232.0 33000 0.7
表. 各階の重量 階 重量 (kN) 1F 6245 2F 7228 全体 13473