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4.1 まとめ

本研究において、大規模地震で被災した歴史的組積造建造物に対して修復計画に関わる 調査を行った。建物の地震被害状況や振動特性、構造体についての把握、またそれらを踏ま えたモデルより、地震時の建物の挙動の確認を行った。さらに、2つの地震波についても把 握することができた。第2章平成28 年熊本地震と第 3章東北地方太平洋沖地震より、PS オランジュリがある熊本市と、福島市写真美術館の位置に近い福島市松木町と、それぞれの 入力地震波の加速度応答スペクトルを図4.1-1に示す。図4.1-1より、この2つの地震波は どちらも約0.2s~0.6s(赤色枠内)で卓越が大きく、短周期の建物には厳しい地震波であっ たことがわかる。PS オランジュリの固有振動数から固有周期は東西方向で約 0.2s、南北

方向で約0.3s、福島市写真美術館も同様に固有周期は東西方向で約 0.2s、南北方向で約

0.3sである。そのことと図 4.1-1 より、どちらの建物においても厳しい地震波であり、歴

史的組積造建造物においても同様であることが確認できた。

さらに下記に、PSオランジュリと福島市写真美術館についてそれぞれで行った調査を建 物ずつに分けてまとめる。

・PSオランジュリ

建物の地震被害状況について、煉瓦壁の亀裂や漆喰塗装天井の漆喰崩落などがあり、亀裂 発生個所として開口部の周辺や隅角部に多くあることを確認した。

振動特性の把握のため、常時微動測定を行った。常時微動測定の結果より、南側と北側に おいて同位相であることが確認できた。東側と西側においては、伝達関数に違いがあること から偏心している可能性があることを確認した。また、PSオランジュリにおいて煉瓦造と RC造、S造があり、それらは測定結果より、煉瓦造とRC造は一体化しており、S造は独 立していることが確認できた。

常時微動測定で把握した固有振動数より作成した質点系モデルにおける構造解析につい

図4.1-1 熊本市と福島市松木町の応答スペクトル

ることを確認した。

・福島市写真美術館

建物の地震被害状況について、内壁・外壁の欠損、剥落、床の損傷などを確認した。また、

正面のペディメントに大きな損傷も確認した。

上記で示したPS オランジュリと同様に、振動特性の把握のため常時微動測定を行った。

その結果より、建物の上下動より地盤においてロッキングしていないことを確認した。また、

偏心の影響により東西によって伝達関数の振動数に少し違いがあることが確認できた。ま た、面外変形について確認を行ったところ、南東部にかけて変形が大きくなる可能性がある ことを確認した。実際に、福島市写真美術館において南東部の壁にひび割れが生じていた。

また木造床組みと常時微動測定の結果より、水平面内剛性が十分に確保されていない可能 性があることが考えられる。

常時微動測定で把握した固有振動数より地盤バネを設定し、地盤との動的相互作用を考 慮した 3 次元モデルを用いて構造解析を行った。時刻歴応答解析より、地盤バネによって 応答加速度の低減を確認することができた。また、建物の応答変位についても把握すること ができた。常時微動測定から、南東部に大きな変形が生じる可能性があると考えられたが、

解析上ではそのような結果にはならなかった。

以上のように、歴史的組積造建造物の修復計画に必須と考えられる建物の振動特性や、建物 の構造体について、さらに地震時の建物の挙動を確認・把握することができた。これらの結 果を踏まえて、より修復計画に活かしていけるように検討していく必要がある。

4.2 今後の課題

以上より修復計画に関わる調査を行ったが、まだ多くの課題が残っている。今後の課題を それぞれの建物に分けて以下に示す。

・PSオランジュリ

本研究では、解析において地下階について考慮していないため、今後地下階を考慮した質 点系モデルを作成する。さらに、今回線形域内の構造解析を行ったので、非線形構造解析を 行うことが課題である。また、動的相互作用について考慮していく必要があると考える。

・福島市写真美術館

作成したモデルに対して構造補強をモデルに組み入れて、構造補強の検討を行っていく。

そして、より適切な修復計画を立案していきたい。

取締役平山武久氏、平山禎久氏、中島淑子氏の全面的なご協力とご支援があって実施するこ とができ、心から感謝の意を表します。測定を行う際に、九州大学の山口謙太郎准教授・横 瀬昂氏・小石咲樹氏に測定のご協力をいただき、心から感謝の意を表します。構造体の材料 実験などの結果・資料を提供していただきました清水建設株式会社の皆様に心から感謝の 意を表します。2017年熊本地震の地震波を提供していただきました国立研究開発法人防災 科学技術研究所の先名重樹氏に心から感謝の意を表します。さらに、福島市写真美術館にお ける調査活動においては、有限会社鈴木設計の皆様に全面的なご協力とご支援をいただき ました、心から感謝の意を表します。また、建物の解析を行う際に、大変ご指導をしていた だきました、株式会社アーク情報システムの佐藤拓也氏に心から感謝の意を表します。最後 に、ご協力していただいた同研究室の研究生にも感謝の意を表します。

参考文献

1) 熊本県危機管理防災課:平成28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について 2) 熊本県教育庁文化課:熊本震災による被災文化財について、2016.6

3) 日本イコモス国内委員会:2016年熊本地震日本イコモス調査報告-文化財建造物の被 害状況と復旧への展望-、2016.6

4) 復興庁:復興の現状と課題、2017.11

5) 福島県災害対策本部:平成23年東北地方太平洋沖地震による被害状況即報 6) 文部科学省:東日本大震災による被害情報について

7) 福島県文化財保護審議会:東日本大震災からの復興に向けた緊急アピール-ふくしま の文化財の保護・継承と再生のために-、2011.7

8) 福島県:福島県文化復興基本計画-ふくしま文化元気創造プラン-、2013.3

9) 総理府地震調査研究推進本部地震調査委員会編:日本の地震活動-被害地震から見た 地域別特徴、pp103-106,330-333、1997

10) 宇佐美龍夫著:新編日本被害地震総覧、東京大学出版会、1991 11) 村岸純、佐竹健治:九州中部地方の歴史地震

12) 村橋久昭:旧第一銀行熊本支店構造耐力診断書、1997

13) 熊本大学工学部環境システム工学科三井・村上研究室:旧第一銀行熊本支店社屋地 下室内壁-煉瓦の強度調査-、1999

14) 萩原勇亮:東日本大震災で被災した福島市写真美術館の耐震性に関する研究-材 料調査と構造解析-、三重大学工学部建築学科卒業論文、2016.3

15) 三辻和弥、狩野勝重、佐々木達夫:福島市写真美術館 常時微動観測結果報告、

2012.11

16) 熊本産業遺産研究会・熊本まちなみトラスト編:熊本の近代化遺産(上)富士川一裕、

pp31-33、弦書房

17) 旧第一銀行熊本支店設計図書

18) 花里利一:歴史的組積造建造物における建物・資料調査と微動測定、2017

19) Paulo B. Lourenco、Jan G. Rots、Johan Blaauwendraad:Two approaches for the analysis of masonry structures : micro and macro – modeling、1995

20) 花里利一 他:福島市写真美術館再整備工事に係る構造調査・研究 経過報告書、

2016

21) 日本建築学会:建物と地盤の動的相互作用を考慮した応答解析と耐震設計

22) 社団法人日本電気協会電気技術基準調査委員会、電気技術指針原子力編:原子力発 電所耐震設計技術指針、JEAG4601、pp313-333、1987

23) 社団法人日本コンクリート協会、建築・土木分野における歴史的構造物の診断・修 復研究委員会:報告書、pp226-235,238-246、2007.6

24) 公益社団法人 日本建築士会連合会:被災歴史的建造物の調査・復旧方法の対応マ

26) 国立研究開発法人 防災科学技術研究所HP、http://www.bosai.go.jp/

27) 熊本県HP、http://www.pref.kumamoto.jp/

28) 福島県HP、https://www.pref.fukushima.lg.jp/

29) 東京都防災ホームページHP、http://www.bousai.metro.tokyo.jp/index.html

付録

た。材料力学試験の概要を示す。

表. 材料単体の材料力学試験の概要

材料種別・寸法 試験内容 試験体番号 試験体数 基礎コンクリート

Φ50×100

密度測定 全円柱供試体 3

圧縮試験 ③-2 2

③-3 1

割裂引張試験 ③-1 1

中性化試験 引張割裂試験後の 試験体を使用

1

はかま石 Φ50×100

密度測定 全円柱供試体 4

圧縮試験 ①-1 2

②-1

割裂引張試験 ①-2 2

②-2 吸水試験 圧縮試験後の

試験体使用

2

壁体(国見石)

Φ50×100

密度測定 全円柱試験体 6

圧縮試験 1F-① 3

1F-③ 2F-⑤

割裂引張試験 1F-② 3 1F-④

2F-⑥ 吸水試験 圧縮試験後の

試験体使用

2

腰壁石材 Φ50×100

密度測定 全円柱試験体 7

圧縮試験 1F-⑦ 3

1F-⑧ 1F-⑨

割裂引張試験 1F-⑩ 4

1F-⑫ 1F-⑬ 吸水試験 圧縮試験後の

試験体使用

2

煉瓦 Φ30×60

密度測定 (A:4,B:3,C:2) 9 圧縮試験 (A:2,B:2,C:1) 5 割裂引張試験 (A:2,B:2,C:1) 4

吸水試験 圧縮試験後の 試験体使用

(A:1,B:1,C:1)

マグサコンクリート Φ50×100

密度測定 全円柱試験体 4 圧縮試験 2F-14② 2

2F-15②

割裂引張試験 2F-14① 2 2F-15①

中性化試験 割裂引張試験後の 試験体使用

2

表. 目地材を含む組積体の材料力学試験の概要

材料種別・寸法 試験内容 試験体番号 試験体数 壁体(国見石)組積

体 Φ100×200

せん断試験 1F-6 4

1F-8 2F-9 2F-11 腰壁部石材組積体

Φ100×200

せん断試験 1F-5 2

1F-7 煉瓦組積体

Φ100×200

圧縮試験 煉瓦-2 1

せん断試験 煉瓦-1 1

表. 国見石(自然石)の材料力学試験の概要

材料種別・寸法 試験内容 試験体番号 試験体数 国見石

25×25×50

密度測定 国見石① 1

圧縮試験 国見石① 1

国見石 30×30×60

密度試験 国見石② 1

圧縮試験 国見石② 1

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