理学療法学 第
21
巻第5
号340〜 346
頁 (1994
年)研
究
開発
部
指定 研究
人
工
股
関
節
全
置換術後長期 経
過
例
に
お け る
日
常
生
活
の
実
態
に
つい て
*石
田
和
人
1)浅 井
友
詞
1)水
口静 子
1)堀 場 充 哉
1)野
々垣 嘉 男
1)吉 田 行 雄
2)大 藪 直 子
2)和
田
郁 雄
2) 要旨 変股 症でTHR
を施行し長期経過し た症例が,
生 活の場におい て実際に して い る ADL の実 態 をとら え る目的で,
短期 群 (THR
術 後 経 過 年 数が 1〜3
年 )lO例,
中 期 群 (5〜
8年 ) 9例,
長 期 群 (10〜20
年)9
例の3
群に分類し,ADL
における諸 動 作の特 徴を撮 影し たVTR
より分 析し検 討し た。 結 果,
術後のADL
能 力は比較 的良好に保た れており,
高い満足が得られて い るが,
長期群で は加齢に伴 う活 動性の 低下か ら立 位歩行能力 等に問題 が 生 じ る例も あっ た。 ま た,
術 後 経 過の期 間と無 関 係に,
ADL
上 問 題と な る内容は, 立位歩行, 靴下着脱, 腰を床に降ろすの3
点に集 約さ れ た。 変 股 症 患 者のADL
能力は長期にわ た り,
その時点での股関節機 能 (特に可動性 )に影響さ れ る が,
加えて,
加齢に と も な う活動 性の低 下な ど も影響し う る。 よっ
て,THR
後の長 期 経 過はX
線 単 的 問題のみ な らず,
生 活の場で行っ てい るADL
の実態把握が重要で あ る。 キー
ワー
ド 日常生活動作, 人工股 関節全 置換術,
長 期経過1 .
は じ め に 人工股 関節全 置 換 術 (以 下, THR と略 す)は,
進行 期 及 び末 期の変 形 性 股 関 節 症 (以 ド,
変 股 症 と略 す )に 対する手術法と し て広く行わ れ, 安定し た臨床成績が得 られてい る。 本 手 術 法は変 股 症の症状の 中で も特に訴え の 多い股 関節部の疼痛を劇 的に取り除き, 患者の 日常生 活 動 作 (以下, ADL
と略す)能力 を有 効に改 善さ せ う るもの であ る1)2)。 * Activityof Daily Living in Patients after Total Hip Re
−
placement
1〕名 占屋市立 大学医学 部付属病院リハ ビリ テ
ー
ショ ン部(〒467愛知 県名古屋市瑞穂区 瑞 檍 町字川 澄/)
Kazuto Ishida
,
RPT,
Yuji Asai,
RPT,
Shizuko Mizu・
guchi
,
RPT,
Mitsuya Heriba,
RPT,
Yoshio Nonogaki,
RPT :Dept
.
of Central Rehabilitation Service,
NagoyaCity University Medical School 2)名 占屋 市 立 大 学 医学 部 付 属 病 院 整 形 外 科
Yukio Yoshida
,
MD,
Naoko Ohyabu,
MD,
Ikuo Wada,
MD :Dept
.
of Orthopaedic Surgery,
NagQya City Uni・
versity Medical School
し か し, 長 期 成 績の観 点か ら, 整形 外 科 学的に は
,
疼 痛の出現,
人工関節のゆ る み や沈み込み な どX
線学 的 な問 題が指 摘 さ れて いる3)。 更に我 が 国で は,
本 法 は高 齢 者を対 象と してお り,
長 期 経 過 後の 目常 生 活の実 態は,
股 関 節 以 外の身 体 機 能,
精 神 的 活 動 性,
ま たは高 齢 者 と し て の自立 度な ど多 くの因 子に依 存 する こ と が予 想され る4 )。
した がっ て, THR 施 行例に対する リハ ビリ テー
シ ョ ンは,
術前術 後の積極的な 理学療 法に加え5),
長期フォ ロー
の 観点に立 っ た 日常 生活指導が必 要であ る と考え ら れ る。 し か し, 一
般にTHR
後の長 期成 績はX
線学 的 な検 討が主であり, 日常 生活につ い てはアン ケー
トに よ る調査報告が散 見さ れ るの みであ る6−
9)。 そこ で今回,THR
術後 長期経 過例の 日常生活の実態 を 知 る 目 的で,
患者の 自宅 に訪 問 して,
行っ
て い るADL
の諸動作につ い て観察・
分析し,
その 問 題点に言 及 するべ く検討を行っ
た。人工股 関 節 全 置 換 術 後 長 期 経 過 例に お け る 日常 生 活の実 態につ い て 341
2
.
対 象 表1
間 診 内容 当院整 形外科に て末 期変股 症と診 断さ れ, THR
を施 行し た症例 (再 置換例,
両側例を除 く)の うち,
名古屋 市 内に在 住 し筆 者 らが 家 庭 訪 問 可 能であっ た症 例 を 無 作 為に抽出し,
短期群,
中 期 群,
長期群の 3群 と した。
短 期 群 とは,
THR 術 後 経 過 年 数 が 1〜 3
年 (平 均2
年 4 カ月)と, 比較的短い もので, 10 例, 平 均年齢58,
7± 7.
0
歳,
全例女 性で あっ た。 ま た中期群は,
術後経過年 数が5 〜8
年 (平 均6
年 ), 9
例,
平 均 年齢69.
4
±6.
7
歳,
男 性 2例,
女性 7 例。
長期群は,
術後経過年 数が 10〜
20年 (平 均 15年 6ヵ月 ),
9例,
平 均 年 齢 74.
6± 7.
7 歳, 全例女 性で あっ た。3 .
方 去ADL
の実態を と ら え る た め,
患 者の生活の 場である 自宅に訪 問し,
患 者の訴え, ADL
等を ビデオ撮 影して 記 録し た。 そ の内 容の詳 細を以 下に記 す。 a) 全 身 状 態,
活 動 能 力にっ い て の問 診 現在の全身状態と して, (1)手術を し た股 関節の現 状に つ いて,
〔2
)股関節以外の 身体状況, {3旧常生活の現状・
その他につ いて問診し た。 ま たADL
に影響する と考え ら れ る 全身 状 態やQOL
的な要 素につ い て も尋ね た (表1
)。 加 えて活 動 能 力の指 標で ある老 研 式 活 動 能 力 指 標10)による評価 も行っ た。 b)ADL一
ヒの主な問 題 点につ い て 現在患者が最も問題 と してい る 日常生活上の内容にっ い て詳細に イン タビュー
をし た。
イ ンタビュー
に際 し,
ADL
全般の質 問を後に し, 患者の率 直な訴えを記録し た。 ま たで き る だ け問 題と な る動 作を その 場で再現 して もらい ビ デ オ撮影に より記録し た。 c)ADL .
.
ヒの各 動 作につ いて 表 1の C項にある〜
の内 容 (歩 行,
行 動 範 囲,
衣 服の着 脱,
お風 呂,
トイレ)につ いて,
患 者の訴 えの 有無に関わ らず 全 例に対しイ ンタビュー
と動 作の観 察 を し,
分析を行っ た。
d
)股 関節 機能にっ い て 各症例につ いて,
日整 会 式 変 形 性 股 関 節 症 判 定 基 準 (以下, 股評価と略す)によ る股 関節機能の長期経 時的 推移の検討を行っ た。4 .
結 果 a)全身状態と活 動能力A
) 手術をし た股 関節の現状につ いて 痛み (強い痛み・
軽い痛み・
痛み な し) 動 き,
硬さ (悪い・
まあまあ・
良 好 ) 筋力 (充分・
不十分) その他 (し び れ・
違 和 感・
そ の他 )B
) 股 関 節 以 外の身 体 状 況 体 力の低下 精神 力の低下 内科 的諸間 題 腰 痛,
肩こり 膝 足 部の痛 み その他C
)日常生 活の現状・
その他 歩行 行動 範 囲 衣 服の着 脱 お風 呂 トイ レ 家族の中の役 割 話し相手 毎日 は楽 しいです か 手 術 を 受 けてよ かっ たか.
不 安 はないか.
問診の一
項 目とし て, 体力, 精神 力にっ い て尋ね た が,
全群において 「別に変わ らない」ま た 「老化にともなっ た多 少の低下はある」の 回答が多か っ た。 股 関節以 外の 症状と して,
腰痛 (6 例),
下 肢お よ び膝 痛 (6例 ),
特 にな し (17
例 ) を 認め た。 ま た 内 科 的 問題 も,
高 脂 血 症 (4例 ),
高 血 圧 (3例 )など あっ たが,
ADL に影響 す る ものではなかっ た。 老 研式活動能力 指標で は, 短期 群9.
2 点, 中期群8.
8
点,
長期群7.
2
点であっ た。b
)ADL
上の主な問 題点 患者が訴え る率 直な問題点と して,
「な し」 と答え た 人は短期群3
例,
中期群5
例,
長期群2
例であ り,
訴 え て はい るもの のADL
上の 問題として は自覚 して いない 例 数を加え る と,
短 期 群7例,
中 期 群 8例,
長 期 群 4例,
と問 題 点 を訴えな かっ た症例が短期, 中期群で多かっ た。 何らかの ADL.
.
ヒの問 題 点 を 訴えた症 例は,
短 期 群7 例,
中 期 群 5例,
長 期 群7例で,
内容は,
「立 位歩行」, 「靴ドの着 脱」,
「腰 を 床に降ろすこ と 」 の 3項 目に集 約 された。 c)ADL 上の各 動 作 各 群にお ける基 本 的 動 作 能 力の実 態 を表 2に示 す。
342 理 学 療 法 学 第
21
巻第5
号 表2 各 群におけ る基 本 的動 作 能 力の実 態 歩 行 行 動 範 囲 更 衣 入 浴 ト イ レ 短 期 群・
楽に歩 け る (4)・
階 段も可・
跛 行あ る が不 自 由な し (2)・
外は杖を は な さ ない・
つ ま ず くこと がある・
買い物 (6
)’
旅 行に行く (6)・
仕 事に行 く (2)・
電 車,
バ ス を利 用 す る (2)・
名 占屋 市 内・
病院・
問 題 な し (4)・
靴 下 困難だ が自分で はく (5) ズボ ンがはきにくい・
問題 な し (5)・
浴槽へ の出入 り困 難 で水 道 蛇口や縁につ か まる や や高めの腰 掛 けを 使っ
てか らだ を 洗 う (2)・
浴槽が高 くて入 りに くい・
和 式 も可能 (5)・
洋 式ゆ えに問題 ない (6)・
前方の手すり , 壁に 手をつ く (2) 中 期 群・
問題 なし (4)・
2km 程 歩 く (2)・
シ ルバー
カー
を押し て外 出する (2)・
室 内でも杖が必 要・
買い物・
旅行 (3)・
散歩程度 (2)・
病院 (2)・
仕事で工場 内・
旅行は し な くなっ
た 問題な し (2)・
靴 下 遅いが不 自由は ない・
靴下や や困難 (3)・
孫の手 を使 う は かせてもら う・
問題な し (4) ま あ ま あ 可能 ゆっ
く り と気を付け て入る・
洗い場で高めの椅 干 を使う・
問 題な し・
洋 式ゆえに問 題ない (7)・
洋 式で両 側に設 置 し た棒 をっ かむ・
洋 式で より高くして 座 る・
和式は しゃが め る が 立 ち 上 が れ ない戻れ ない 問 題な し・
遅いが歩ける 長・
杖が必要 (4) シ ルバー
カー
を 押 し 期 て歩く 群・
つ まず く・
介 助を受け て歩く・
室内で も杖が必 要・
閊題な し・
散歩程度 (2)・
2km 程歩く(2) 自動 車に乗せても ら い病院へ行く・
外 出 は少ない・
杖が 2本あ れ ば全国 どこ に で も行け る・
閼 題なし (2)・
靴 下困難を感じ る (2) 自分なりの方 法で・
靴 下は孫の手でひ っ か け る は か せ て も ら う 問題なし (3)・
何とか ひ とりで・
浴 槽 内に台 を 置いた ら楽になる・
縁にっ かまって出入 り・
片足 を一
度 縁に引っ 掛 けて出る・
椅子が低く座 り込 む と起き 上 が れ ない・
浴槽の縁が異常に高 い・
問題 な し・
洋式ゆえ に問題な し・
洋 式に改 装 (2)・
和式は絶対不 可・
前 方の壁に寄 り掛 か る・
洋 式だ が少し低 く立 ちに くい 注 ) ( )内の数 字 は症 例 数 を表 す 「歩 行 」にっ い ては,
「楽に歩け る」, 「跛行はあるが不 自由は ない」 「問 題ない」ま た は 「2km
程歩く」 と答 え た症例が短 期 群巾 期 群で各
6
例あり,
「屋外では杖 を使用する」, 「階段も可能である」 と答え た症 例を含め,
か なりが自立して いた。 しか し中期 群,
長 期 群で 「室 内 で も杖が必要」 と い う例があり, 長期群では,
「いわ ゆ る シ ルバー
カー
を押 して歩く」例や 「介 助 を 必 要とす る」 例 も あっ た。
「行動 範 囲 」につ い て は
,
短 期群,
中 期 群に おい て 「日用 品 等の買い物」,
「仕 事 」 な ど生 活L
の必要 姓か ら く る内 容 が主に挙 げ られ,
また 「旅行」とい う答えも多 く, 自立し ている症 例が多か っ た。 長期 群で は 「散歩程 度」 とか 「外 出は少ない」と答え る症例もあり, 年齢 自 体が高齢でも ある が若 干 活 動 性には欠け る印象であっ た。 しか し,
中に は 「杖 さ え あ れ ば 全 国どこにで も行け る」 とい う症例も あっ た。
「更衣 動作」 につ い ては
,
3
群と も靴 下の着脱に問題 があっ た。
「はかせ ても ら う」 と答え た症例が中期およ び 長 期 群でそ れ ぞ れ1
例あ るのみで そ れ 以外の症例で は 「問 題な し」,
「困難な が ら自立 」であっ た。 「困難ながら 自立 」の場合,
その方 法は図 1の ようなパ ター
ンを用い て個々で使いやすい方 法を とっ て いた。 は膝 関 節を伸 展位に し た ほ うが はきやすい とい う場 合。 (B)は椅 子を用 いて行 う場合。 (C)は股 関節屈 曲内転内施位と し,
自分の 体 幹の後方で はく場合。 Φ〉はいわ ゆ る 「孫の手 」 を用い る場 合である。 「入 浴 動 作 」 につ い ては,
各 群と も 「問題 な し」 も し くは多少の困 難 を有 しな がら も 自立して い た。 問題と な る例で は 「浴 槽に ま たい で入る動 作 」,
「洗い場の椅子 が 低い」に限 られ 前 者にっ い ては 「水道の蛇口 や浴槽につ か まる」。 後 者にっ い ては 「椅 子を高 くする」な どの対 応があっ た。
また公 営 住 宅で は,
ス テ ッ プ が高くつ まず きやすい,
浴 槽 が異 常に高いな どの症 例 もあっ
た。 「ト イ レ動 作 」につ い て は,
短期群で 「和式も可能」 と答え た人 が 5例 あっ た が,
洋 式トイレを使 用 するこ と で全例 自立して い た。 中に は立ち座 りが困 難な例で,
前人工股 関 節 全 置 換 術 後 長 期 経 過 例における日常 生 活の実 態にっ い て 343 図 1 靴下 着脱動作に お け るパ タ
ー
ン 方に手 す りをっ け る,
また,
洋 式の台 を 更に高 くする工 夫 も見 られた。
b) 股 関 節 機 能 股 評価によ る股関節機 能の推 移を示 すと (図2
),
各 群と もTHR
後顕 著な改善を示し,
その後2 〜3
年は や や改善する。 し か し長 期 群で は4
年 頃から機 能 低 下 傾 向 を示し た。5
.
症 例 76歳,
女 性。 右 変形性股関節症 (関節 裂 隙狭 少化,
骨の う腫, double floor形成, 骨頭扁 平化を認め る。) の診断にて1982
年, 65
歳 時にTHR
を施 行し た。 股 評 価は, 術後正年より5
年後まで90
点 台,
その後 も80
点 前 後を維 持し安 定 し た成 績で ある。 また X 線的に も明 か なゆ るみの像 は認められない (図3
)。ADL
は自立 し て い る が, 糖尿 病性網膜症のた め視力低下があ り, その た め, 歩行時の バ ラ ン ス が不安定で室内で も杖を用い て い る。 床に座る, 立 ち ヒが る につ いて は,
使い慣れ たこ たつ を用い,
すぐ後ろにベ ッ ドを置 く事で背 もた れに し たり立ち上が る ときの支えに して行っ て いた (図4−A
)。 トイレは比 較 的 高い の で問 題ないが (図4−
B),
入 浴は 公 営 住 宅であ り設 置 さ れ た 風 呂桶 が 高 く困 難で あっ た (図4−C
)。
点数
(点
)
100
80
60
40
20
0
術 前 0.
5 1 2 34
5
67
8 9 to 11 12■
PAIN
口
ROM
驪
GAIT
口
ADL
経
過 年
数 (
年
)
図2
股 関節機 能の推 移 (長 期 群 )344
理学療法学 第 21 巻第 5 号 点数 10080604020 股評価点 数 術前 02 4 6 経過 年数 (年) 8io126 .
考 図 3 症 例 (76歳,
女 性 ) 察 変股症は,
個 体の老 化を 基盤と して,
関 節 機 構の生体 力学的 不 均 衡 か ら慢 性 的に経 過 し,
著 しい関 節 破 壊をも た ら し, そ れ に よ る疼痛,
可 動 域 制 限 を 主 症 状 と して顕 著な ADL 障害を もた らす1D12 )。 一
般に,
THR は疼 痛 を取り除きADL
能 力を改善さ せ る目的で施 行される が2),
その後長期 経過 し た症例の ADL につ いての報 告 は少ない。川 上 ら6)は
,
高 齢 者の人 工 関 節 手 術 例で疼痛消失,
緩 解に よ り833% が満足で あっ た と報告して い る。 今回 の 我々 の調 査 結 果 におい て も わ か る よ うに,
術 後の ADL 能 力は か な りの改 善 を示 し,
ほとん どの症 例が手 術に対し満足 していた。
しか し長 期 群で は歩 行 能 力 を主 と してADL
能 力低下例も あっ た。 これ らの原 因とし て 膝,
腰な どの痛みを訴え た例が多く,
中井らの 検討13)と も一
致 する。 また長 期 群で はADL
能力の個 人差が大き く,
趣 味を持っ て い る人,
活動能力の高い人で は ADL 能 力の高い例 が 多い。
以 前の筆 者 らの検 討で は9),
術 後 4〜
5 年で ADL 能力が低 下する傾向を指 摘し, そ の理 由 を求める ために中期 群を設け た が, こ の群にお け る特 異性は認め な か っ た。 患者のADL
上の訴え は全群において,
「立位 歩行」,
「靴 下着脱 」お よ び 「腰を床に降ろす 」の3
項目に集約 され困 難な 理由と して は 「立位 歩 行 」で は,
「鼠 径 部の 疼 痛のた め長 距 離 歩 行が困 難 」,
「人工関 節の寿 命を考え る と心 配で無 理が で きない」な どで あり, 「靴 下の着脱」, 「腰を床に降ろすこと」 は,
主に股 関 節の可 動 域 制 限 が 原 因と なっ て い た。 図 4 ADL 上の問 題 点 (症 例 )人工股 関節全置換 術後長期経過例におけ る 日常生活の実態につ い て
345
ま た 更 衣 勤 作で問 題 となるこ とは,
靴 下の着 脱のみ で あり, その対 策に は各 自の使い やすい方法で行っ て い た。 本田 ら15)は靴下着脱のパ ター
ンを, 標準型 (長坐位か ら 股関節 内外旋 中間位で屈 曲し た肢位 ), 半あ ぐら型, 横 坐 り 型,
腹 臥 位型の4
型に分 類して いる。 図1
で示 し た パ ター
ンの うち が横坐 り型であ る。 た だ,
図1
に示 し たパ ター
ンは,
自立 して はいる が や や 困 難 な 場 合によ く 見 られたものである。
こ のパ ター
ンか ら,
靴 下の着 脱に は, 坐位で行うことを 基本と し, いわ ゆる 「孫の手」や 「台」 な ど身近にあるものを利 用するこ とで,
比 較 的 容 易かっ,
いつ でもくり返し行い う る方法を とっ て い ると 考 え られ る。 また,
標準型,
半あ ぐ ら型 は, ADL
上 「問 題ない」 とする症例が行っ て いた。 本圉 ら 15),
小 島 ら14)も述べている よ うに,
これ ら靴 下 着 脱 動 作 能 力 は,
股 関 節の可 動 性…(特に屈 曲) 低 下が動 作の困 難さ に影 響 し て お り,
これに は術後年数の比 較 的 早 期に得られた股 関節機能が その ま ま長期に渡り影響 する。 ま た トイレ動作におい ても洋式トイレを利用 すること でほとん どの症 例が自立 し,
決 定 的な対応方法と な る。 こ の ように更衣,
ト イ レに関 して は ある一
定の形態パ ター
ンを とるので臨 床でのADL
評 価,
指 導に役 立っ と.
思わ れ る。 短, 中,
長期 群の 分 類は THR 術 後 経 過 年 数に よると 同時に年齢の 違い で も あ る。 老研式 活動能 力指標か ら点 数の低下が示すよ うに,
加齢に と もな う活 動性の低下な どもADL
能 力に影 響しうる。 よっ て,
THR
後の長期 経過は X 線学的問題の みな らず,
生 活の場で行っ て い るADL の実 態 把 握 が 重 要であると考 え られる。
7 ,
お わ りに 変股症でTHR
を施 行し長 期経過 し た症例が生活の場 で実 際に して い るADL
の実態 を と ら え る た め に,
患者 の 自宅に訪 問し実 際に行っ て い るADL
の諸 動 作を観 察 分 析し ま と め たQ 謝辞
本 研 究は,
日本 理 学 療 法 士 協 会 平 成4年 度 ADL 継 続 研 究 助 成によ るものであり, こ の場を与え てくだ さっ た 嶋田智 明 研 究 開 発 部 長 をは じめ会員諸氏に対し心 よ り 感 謝の意 を申し上 げます。 文 献 1) 奥 村 秀 雄,
山 室 隆 夫 :Chamley 型 全 人工 股 関節 置 換 術の 術後成績の検討.
整形 外科MOOK 45:88−
97,
1986.
2) 奥 村 秀 雄 :変 形 性 股 関 節 症の手 術 後の ADL.
関節 外 科 11 (3);77−
83,
1992.
3) 島漆 晃,
浅井 莞・
他 :人工股関節に お け る再置換例と その原因に関 する考 察な ら びに今 後の対 策.
整 形 外 科 MOOK 45 ;179−
195,
1986.
4)福井 國 彦,
前 田真 治 ;老 人の リハ ビリ テー
シ ョン.
第4版,
医学書院 1992, pp 188−
192.
5) 野々垣 嘉 男,
浅 井 友 詞・
他 1変 股 症,
人工股 関 節 全 置 換 術 施行例の pT 期 間に お け る股 関節機能と股 関節 外転筋々力 値の推 移.
理 学 療 法 学14(D
:5−
12,
1987.
6)川上 照彦,
中谷 孝:高 齢者人工関節手術の追跡 調査,
日 整 会 誌63(2)(3):S358, 1989.
7)上田陽 之,
畑 重樹・
他:人工股 関節置換術後の追 跡 調 査,
第 18回日本理学療 法 士学会誌p205 , 1983.
8) 水口静 子,
石 田 和 人・
他 :人工関節 置 換 術々後 患者の 日常 生 活 状 況にっ いて.
第7圓 東 海 北陸地 区 理学療法 士学会誌 pp 85−
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1989.
9) 石 田和 人,
小1.
L
[ 樹・
他 :THR 後の股 関 節機能とADL の 長 期 経 過.
第8回 東 海理学 療 法 士 学ftts
pp 70・
一
71,
1992。
10) 柴 田 博,
芳 賀 博 :活動能力.
総 合ワハ 19〔4)1335−
338,
1991.
11)神 中正一
:神中 整形外科,
南光堂,
1982,
pp lO37−
1046.
12) 奥 村 信二 1変 形 性 股 関 節 症.
臨 床 理 学 療 法S
:293−302,
1982,
13) 中 井 保,
鈴 木 健 夫・
他 :変 形 性 股 関 節 症に対 するTHR 後の歩 行能力に影 響を与え る因 子に つ い て.
第23回 日本理 学 療 法 士 学 会 誌pl51,
1988.
14)小 島 肇,
島津 孝・
他:股 関 節 疾患 々者の術 後の ADL にっ いて,
第22回日本理学 療 法 士 学 会 誌p142,
1987.
15)本田明広,
時松 清・
他 :THR 後の靴下 着脱 動 作の分 析.
第22回日木 理 学 療 法 士 学 会 誌p143,
1987.
346
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21
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5
・ag-<Abstract>
Activity ef Daily Living inPatients after Total Hip Replacement
Kazuto
ISHIDA, RPT, Yuji ASAI, RPT,Shizuko
MIZUGUCHI,
RPT,Mitsuya
HORIBA,
RPT,
Yoshio
NONOGAKI,
RPT
Department
QfCentrat
Rehabilitation
Service,
Alingoya
City
UhaiveTsity
hedicag
School
Yukio YOSHIDA, MD, Naoko, OHYABU, MD and Ikuo WADA, MDDopartment
of
OrthopaedicSurgery,NLzgtu,aCity[iniversdyMledicalSchool
It
is
important
toknow
the actual status of thelife
of thepatientswho sufferedfrom
osteo-arthritis and underwent totalhip replacernent
<THR).
We
visited theirhomes
toevaluate theiractivities ofdailyliving
(ADL)
using the video system.The patientswere classified
into
three groups: short-term group(from
1to 3 years afterTHR was performed), middle-term group
(from
5 to 8 years after THR), and long-term group(over
10
yearsafter THR).Post-operativeADL was maintained well inrnost of the patientsand many of them were
also satisfied with their results of operation. However, some of them in
long-term
group had a problem such as aggravated walking abilitydue
toaging.Some
had
troublein
walking, put-tingon and offthe socks as welr as squatting activitiesin
allthegroups.