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維持血液透析患者における心臓血管外科術後の嫌気性代謝閾値強度での運動処方の検討

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 43 巻第 5 号 397心大血管術後の血液透析患者に対する ∼ 403 頁(2016 年) AT 強度の処方心拍数の検討. 397. 研究論文(原著). 維持血液透析患者における心臓血管外科術後の 嫌気性代謝閾値強度での運動処方の検討* 矢 部 広 樹 1)2)# 河 野 健 一 3) 森 山 善 文 4). 要旨 【目的】心大血管術後の透析患者における AT 強度以下の処方心拍数を,Karvonen 法と安静時心拍数に 定数を加算する方法(HRrest +α )から検討した。【方法】心大血管術後の透析患者 16 名に対し心肺運動 負荷試験を実施し,AT 時の心拍数(以下,HRAT)を測定した。そして各処方式の負荷定数を変化さ せて求めた処方心拍数と HRAT の信頼性を級内相関係数(以下,ICC)で検討した。また各定数で求め 【結果】透析群において Karvonen 法で た処方心拍数が HRAT を超える割合(%over AT)も算出した。 k = 0.13,HRrest +α で α = 11 の定数で求めた処方心拍数は,HRAT との ICC がそれぞれ 0.9 と 0.92 であり, %over AT が 36.8% と 15.8% であった。 【結語】α = 11 で求める HRrest +α の処方心拍数は,心大血管術 後の透析患者において,AT 強度を超えない範囲での運動強度になると考えられる。 キーワード 血液透析患者,嫌気性代謝閾値,処方心拍数,カルボーネン法,心大血管術後. 期病棟においては,慢性腎不全とは別の急性疾患へ罹患. 緒   言. した患者や,外科手術後の HD 患者に対して,適切なリ.  近年,維持血液透析(Hemodialysis;以下,HD)患. スク管理の下,運動療法を提供する必要がある。. 者に対する運動効果のエビデンスが多くの研究で示さ.  運動療法は,運動の強度,頻度,時間が基本的な要素. 1‒3). ,HD 患者への運動療法が普及する中,理学療法. となる。しかし,これらの中で頻度と時間は比較的許容. 士には HD 患者に対する適切な運動療法の提供が求めら. 範囲が広く,運動参加者にはおおよそ共通して定めるこ. れる。HD 患者の運動耐容能は健常成人に比べて,嫌気. とができるが,運動強度はそれぞれの対象者によって異. 性代謝閾値(Anaerobic threshold;以下,AT)レベル ˙ O2peak)が,年 の酸素摂取量および最高酸素摂取量(V. なり,より特異性が高いといわれている. 対しても適切な運動強度の設定が必要なのはいうまでも. 齢,性別,体重で補正した基準値の 50 ∼ 60%程度であ. ないが,特に外科手術後で運動療法を開始したばかりの. 4)5). ,HD 患者の体力レベルに. HD 患者に対しては,リスク管理の面からより厳格な管. 合った運動療法を提供しなければならない。さらに急性. 理が必要である。AT を超えない強度の運動は,アシ. れ. ることが報告されており. *. Prediction of Anaerobic Threshold after Cardiovascular Surgery in Hemodialysis Patients 1)聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部理学療法学科 (〒 433‒8558 静岡県浜松市北区三方原町 3453) Hiroki Yabe, PT, PhD: Depertment of Physical Therapy School of Rehabilitation Science, Seirei Christopher University 2)医療法人偕行会 名古屋共立病院リハビリテーション課 Hiroki Yabe, PT, PhD: Department of Rehabilitation, Nagoya Kyoritsu Hospital 3)国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学科 Kenichi Kohno, PT, PhD: International University of Health and Welfare School of Health Sciences at Narita Department of Physical Therapy 4)医療法人偕行会 名古屋共立病院ウェルネスセンター Yoshifumi Moriyama, Diploma, HFP: Depertment of Wellness Center, Nagoya Kyoritsu Hospital # E-mail: hiroki-y@seirei.ac.jp (受付日 2015 年 9 月 4 日/受理日 2016 年 6 月 30 日) [J-STAGE での早期公開日 2016 年 8 月 24 日]. ドーシスが起こらず もないことから. 6). 。HD 患者に. 7). ,血中カテコラミンの著明な増加. 8). ,不整脈の出現や血圧・心拍数の過剰. な増加が起こらない. 9). といわれている。また HD 患者. はアシドーシスに対する重炭酸イオンによる緩衝機構も 不十分であるとの指摘もあるため. 10). ,安全な運動療法. を実施するためにも,AT 以下の負荷強度の設定が必要 となる。  運動強度の設定方法には,呼気ガス分析装置を用いた 心肺運動負荷試験(Cardio pulmonary exercise test; 以下,CPX)があるが,高価な設備が必要であることや, 頻回の測定が難しいという欠点がある。また臨床上は CPX 実施前の患者に対して,離床訓練や歩行訓練等の.

(2) 398. 理学療法学 第 43 巻第 5 号. 表 1 対象者属性 HD(+) 年齢 歳. 60.9 ± 8. 性別 男性 / 女性 身長 cm 体重 kg 2. BMI kg/m. HD(-) 63.8 ± 7. 16/0. 14/2. n.s. n.s.. 166.2 ± 5.8. 165.2 ± 6.7. n.s.. 61.3 ± 8.1. 62.1 ± 11. n.s.. 22.1 ± 2.2. 22.5 ± 2.8. n.s.. 術式 例(%)  CABG. 10(62.5). 10(62.5).  CABG +弁置換. 5(31.3). 1(6.3).  弁置換. 1(6.3). 3(25).  大動脈人工血管置換術. 1(6.3).  大動脈人工血管置換術+弁置換. 1(6.3). 手術時間 min. 287.9 ± 81.9. 268.8 ± 43.8. n.s.. 出血量 ml. 369.6 ± 232.4. 375.2 ± 303. n.s.. CPX 実施日. 17.1 ± 4.0. 18.3 ± 5.9. n.s.. DM 例(%). 10(62.5). 9(56.3). n.s.. HT 例(%). 15(93.7). 8(50). p < 0.05. HL 例(%). 8(50). n.s.. 術前 EF(%). 55.7 ± 11. 4(25). 58.6 ± 11.8. n.s.. 術前 LVDd mm. 52.2 ± 9. 51.8 ± 7.5. n.s.. 術前 LVDs mm. 36.7 ± 9.2. 35.3 ± 8.8. n.s. BMI, body mass index., CABG, Coronary arterial bypass grafting., CPX, cardiopulmonary exercise test, DM, Diabetes mellitus., HT, Hyper tension., HL, hyperlipidemia., EF, ejection fraction., LVDd, left ventricular internal dimension in systole., LVDs, left ventricular internal dimension in diastole., n.s. not significant.. 運動療法を行う場面も多々あるため,CPX による定期. 群として同様に心臓血管外科手術を受けた非 HD 患者を. 的な評価と合わせて,AT レベルの負荷強度を簡易的に. 対象とした(表 1) 。取り込み基準は,心血管疾患にお. 評価する必要がある。運動強度の設定方法として一般的. けるリハビリテーションに関するガイドライン. なものに,対象の心拍予備能から処方心拍数を決定する. 沿った術後介入パスによりリハビリテーションが実施さ. Karvonen 法がある。Karvonen 法による処方心拍数は. れ,退院前に CPX を実施した者とし,また薬剤による. 運動負荷試験にて求めた実測最大心拍数から求める方法. 心拍数への影響を排除するため,β ブロッカーの内服者. と,「220 −年齢」により計算される予測最大心拍数か. は除外した。当院にて心臓血管外科手術を受けた 63 名. ら求める方法があり,両者とも負荷定数 k から負荷強. から HD 患者の 25 名を抽出し,β 遮断薬使用者 4 名,. 度を決定し,処方心拍数を算出する。また近年は,心拍. AT 測定不可の 5 名を除く 16 名を解析の対象とした(男. 予備能を安静時心拍数から求める方法(HRrest +α )も. 2 性 16 名, 年 齢 60.9 ± 8 歳,BMI 22.1 ± 2.2 kg/m )。. 検討されており. 11). ,心血管疾患におけるリハビリテー 12). 12). に. 対照群は,年齢,身長,体重をペアマッチングで,糖尿. にも負荷設定の簡易的. 病の有無を頻度マッチングにて抽出した非 HD 患者 16. な方法として記述されている。いずれの方法において. 名(男性 14 名,年齢 63.8 ± 7 歳,BMI 22.5 ± 2.8 kg/. も,各疾患や病態に合わせて負荷定数を変更し,AT 強. 2 m )とし,各項目で HD 群と差がないことを,対応の. 度の処方心拍数を決定するが,急性期の HD 患者に特異. ない t 検定と χ 二乗検定にて確認した。本研究はヘルシ. 的な負荷定数の報告はない。そこで本研究では,心臓血. ンキ宣言に則って実施され,参加者には事前に研究内容. 管外科術後の HD 患者における AT レベルの処方心拍. ならびに調査結果の取り扱いについて説明し,同意を得. 数の予測式について,適切かつ安全な設定方法を明らか. て実施した。. にすることを目的とした。.  CPX は 退 院 前 に 呼 気 ガ ス 分 析 装 置(MINATO,. ションに関するガイドライン. 対象と方法  当院にて心臓血管外科手術を受けた HD 患者と,対照. AE310s) と 自 転 車 エ ル ゴ メ ー タ( 日 本 光 電,STB1400)を使用し,毎分 10 watt の漸増ランプ負荷法に て実施した。End point は症候限界とし,最高酸素摂取.

(3) 心大血管術後の血液透析患者に対する AT 強度の処方心拍数の検討. 399. 表 2 CPX の結果 HD(+) HR. AT. (bpm) ˙O V. Peak AT. 2. (ml/kg/min). 89.9 ± 12.3. HD(-) 108.2 ± 11. p < 0.05. 108.4 ± 18.7. 125.3 ± 14.4. p < 0.05. 7.6 ± 1.3. 10.1 ± 2.1. p < 0.05. Peak. 10.7 ± 2.2. 14.2 ± 3.3. p < 0.05. Karvonen. k. 0.16 ± 0.06. 0.29 ± 0.1. p < 0.05. HRrest +α. α. 12.8 ± 4.4. 17.9 ± 6.4. p < 0.05. ˙ O2peak)と実測最大心拍数(HRpeak)を決定した。 量(V. 血圧の有病者のみ HD 群で有意に多いという結果となっ. AT は V-slope 法 に て 決 定 し,AT 時 の 酸 素 摂 取 量 ˙ O2AT)と心拍数(HRAT)を決定した。 (V. た(p < 0.05) 。HD 群の CPX の終了時の呼吸商は 1.17.  解析として,AT 時の心拍数を Karvonen 法にあては. 末梢性疲労の運動終了 5 名,息切れ等の中枢性疲労と末. めた場合に求められる負荷定数 k の平均を,予測最大. 梢性疲労の両者による終了 7 名) ,回転数の維持困難に. 心拍数(220 −年齢)と HRAT から算出した。同様に. よる終了が 4 名であった。非 HD 群の CPX 終了時の呼. AT 強度の心拍数を HRrest +α にあてはめた場合に求め. 吸商は 1.14 ± 0.08 であり,自覚的疲労感高値 11 名(中. られる負荷定数 α の平均を,HRAT と HRrest から算出. 枢性疲労による終了 1 名,末梢性疲労による終了 5 名,. し た。 さ ら に, 各 予 測 式 に お け る 処 方 心 拍 数 を,. 両者による終了が 5 名) ,回転数の維持困難による終了. Karvonen 法では負荷定数 k を 0.01 ∼ 0.3 まで 0.01 刻み. が 4 名,血圧高値が 1 名であった。表 2 に対象者の CPX ˙ O2AT は 7.7 ± 1.5 ml/min/ の 結 果 を 示 す。HD 群 の V. で変化させ算出し,同様に HRrest +α では,加算する整. ± 0.1 であり,自覚的疲労感高値 12 名(下肢疲労による. で求めた処方心拍数が,実際の HRAT を超えていた対. ˙ O2peak は 10.7 ± 13.5 ml/min/kg であり,どちら kg,V ˙ O2peak, ˙ O2AT,10.1 ± 21 ml/min/kg,V も 非 HD 群(V. 象者数の割合(% over AT)を算出し,各係数におけ. 14.2 ± 3.3 ml/min/kg)よりも有意に低値を示した(p. る処方心拍数の安全性として検討した(例:Karvonen. < 0.05) 。同様に,HD 群の HRAT(89.9 ± 12.3 bpm)と. 法 k = 0.2 で算出した処方心拍数が,全対象者 16 名中 8. HRpeak(108.4 ± 18.7 bpm) も 非 HD 患 者(HRAT,. 名で HRAT を超えている場合,% over AT は 50%とな. 108.2 ± 11 bpm,HRpeak,125.3 ± 14.4 bpm)よりも有. 数を 1 ∼ 30 まで変化させて算出した。そして各予測式. る)。統計学的検討では,まず対象者属性と CPX の結. 意に低値を示した(p < 0.05) 。HD 群の HRAT における. 果の比較に対応のない t 検定と χ 二乗検定を行った。次. Karvonen 法の k の平均は 0.16 ± 0.06 であり,非 HD 群. に,各係数にて求めた処方心拍数の信頼性の検討とし. の 0.29 ± 0.1 よりも有意に低値を示していた(p < 0.05) 。. て,級内相関係数(Intraclass correlation coefficients;. また,HRrest +α においても,HRAT における α は,HD. 以下,ICC)を求めた。ICC とは 2 つの測定項目間の信. 群で 12.8 ± 4.4 bpm であり,非 HD 群の 17.9 ± 6.4 bpm. 頼性(一致性)を検討する手法であり,従来の Gold. よりも有意に低値を示していた(p < 0.05) 。. Standard に対して新たな測定方法や指標がどれだけ信.  次に,Karvonen 法と HRrest +α の各係数にて求めた. 頼できるかを解析するために用いられる{異なる呼気ガ. 処方心拍数と HRAT との ICC,およびその処方心拍数. ス分析装置で測定した測定機器間の AT の信頼性. 13). や,. 異なる方法で求めた AT(換気性作業閾値と筋電図によ る骨格筋疲労閾値)の信頼性. 14). など}。本研究では,. が HRAT を超える対象の割合(% over AT)の関係を 図 1 に示す。各係数における処方心拍数と HRAT との ICC は上に凸の一峰性を,% over AT は右上がりの直. 実測にて求めた HRAT と,安静時心拍数から予測式で. 線様のグラフを描くが,HRrest +α の方が Karvonen 法. 求めた各係数における処方心拍数との信頼性を求めるた. よりも ICC の最大値が高く,% over AT が低いという. めに,ICC を用いて検討した。さらに,各方法で用いた. 結果となった。各予測式と HRAT との ICC の最大値は,. 予測式の系統誤差について,Bland-Altman 解析にて検. Karvonen 法では k = 0.15 において 0.91,HRrest +α で. 討した。有意水準はすべて危険率 5%とした。. 。k = 0.15 は α = 13 において 0.93 であった(図 1,表 3). 結   果. での処方心拍数は HRAT との ICC が一番高い反面,そ の処方心拍数では AT を超えてしまう対象が 47.4%存在.  表 1 に,対象者の属性を示す。年齢,身長,体重,. し,同様に HRrest +α においては α = 13 において ICC. BMI や出血量と手術時間,CPX の実施日は,すべて. が最も高くなるが,% over AT は 21.1%となる。そこで,. HD 患者と非 HD 患者で有意差を認めず(p > 0.05) ,高. 各 処 方 心 拍 数 と HRAT と の 間 の 系 統 誤 差 を 検 討 し,.

(4) 400. 理学療法学 第 43 巻第 5 号. HRAT との加算誤差を認めない負荷定数の下限を算出し. 考   察. た。 結 果,Karvonen 法 の k の 下 限 は 0.13 で あ り, HRrest +α における下限は 11 であった(表 3)。Bland-.  本研究では,予測最大心拍数を用いた Karvonen 法と. Altman 解析の結果,k = 0.13 と α = 11 における処方心. HRrest +α の 2 つの方法で求める処方心拍数について,. 拍数は,どちらも有意な誤差を認めず(図 2) ,ICC は. HRAT に対する信頼性と,AT 強度を超えない安全性の. Karvonen 法 が 0.9,HRrest +α が 0.92 で あ り, % over. 両面から検討し,k および α の統計学的な許容範囲につ. AT は Karvonen 法が 36.8%,HRrest +α が 15.8%であっ. いて検討した。k = 0.15,α = 13 から求めた処方心拍数. た(表 3) 。. は HRAT に対する信頼性がもっとも高い反面,その定 数にて計算される処方心拍数では,HRAT を超える対象 が多く存在する。そこで ICC と系統誤差の検討から統 計学的な信頼性が担保される下限の k と α を求めた結 果,k = 0.13,α = 11 において有意な信頼性を得ること ができ,AT を超える患者の割合も抑えることができた。  Karvonen 法 に て 用 い る 予 測 最 高 心 拍 数 の 推 定 は, 15). 「220 −年齢」. が一般的である。一方で,心血管疾患. に対するリハビリテーションガイドライン. 12). では,年. 齢から予測される基準値に対する最大心拍数は使用すべ きではないと記述されている。Tanaka ら. 16). によれば,. 351 論文 18,712 名の高齢者を含めた健常人(18 ∼ 81 歳) の最大心拍数のデータをメタ解析し,予測最大心拍数の 回帰式は「208 − 0.7 ×年齢」であったと報告しており, 図 1 各処方式における処方心拍数と HRAT の信頼性と安全性 ICC,Intraclass correlation coefficients.,% over AT,各係 数にて求めた処方心拍数が HRAT を超えている対象の割合. 「220 −年齢」の予測式は年齢が増すにつれて最大心拍 数を過小評価すると報告している。以上を踏まえると, 「220 −年齢」による最大心拍数の推定は,HD 患者をは. 表 3 各係数における処方心拍数と HRAT との ICC および加算誤差 予測式 Karvonen. HRrest +α. 係数(k, α ). ICC. HRAT との差の平均. 95% CI. % over AT. 0.11. 0.87. 2.91. 1.24 ‒ 6.23. 26.3. 0.12. 0.88. 2.91. 0.4 ‒ 5.43. 31.6. 0.13. 0.9. 2.1. ‒ 0.44 ‒ 4.63. 36.8. 0.14. 0.9. 1.27. ‒ 1.29 ‒ 3.84. 47.4. 0.15. 0.91. 0.45. ‒ 2.13 ‒ 3.04. 47.4. 9. 0.88. 3.75. 1.38 ‒ 6.12. 15.8 15.8. 10. 0.91. 2.75. 0.38 ‒ 5.12. 11. 0.92. 1.75. ‒ 0.62 ‒ 4.12. 15.8. 12. 0.93. 0.75. ‒ 1.62 ‒ 3.12. 21.1. 13. 0.93. ‒ 0.25. ‒ 2.62 ‒ 2.12. 21.1. ICC, Intraclass correlation coefficients.,95% IC, tow-sided 95% confidence interval. 図 2 各処方心拍数(k = 0.13, α = 11)における Bland-Altman plot A. Karvonen 法,B. HRrest +α.

(5) 心大血管術後の血液透析患者に対する AT 強度の処方心拍数の検討. じめとした疾患群に対する使用に際し,非常に慎重でな. 401. は負荷の増加に伴う副交感神経の減衰と関連し. 22). ,副. 23)24). 。. ければならない。しかしながら,臨床では CPX 実施前. 交感神経が消失した時点が AT と強く相関する. の患者に対する離床訓練や歩行訓練等,AT レベルの負. CPX では漸増的かつ定量的な負荷が対象者に与えられ. 荷強度を把握しなければならない場面に多々遭遇する。. るため,上記の先行研究は,運動負荷による副交感神経. また CPX による評価を行った後も,その日の患者の調. の消失が安静時の副交感神経の活動レベルに依存するこ. 子に合わせて,負荷量を調整する必要がある。以上のよ. とを示唆するものである。実際に,HD 患者は非 HD 患. うな臨床の状況を踏まえると,効果的な運動療法を実施. 者に比べて,安静時の自律神経活動に障害があるという. するためには,CPX の実施を前提としたうえで,簡易. 報告. 的な方法で負荷強度を設定する必要性も存在する。そこ. 時副交感神経活動は,糖尿病非合併症例と比較して低値. で本研究では,年齢による予測最大心拍数を用いた. であり,副交感神経消失時までの HR 増加量が糖尿病を. Karvonen 法に加え,HRrest +α についても信頼性と安. 合併した症例で低値であったとの報告. 全性について検討した。. 術後 1 ∼ 2 週間は副交感神経活性が著明に低下し交感神.  予測最大心拍数を用いた Karvonen 法における負荷定. 経活性が亢進するために,運動中の心拍数増加が少ない. 数 k に関する先行研究では,健常人で 0.41 ± 0.1,アス. 例が多いという報告があるが. リートでは 0.49 ± 0.12 と報告されており おいても,成人病患者で 0.32 者 で 0.27 ‒ 0.32. 17). ,疾患群に. 17). ,冠動脈バイパス術患. 18). , 急 性 心 筋 梗 塞 患 者 で 0.21 ‒ 0.25 18),. 複数リスク(高血圧・高脂血症・糖尿病等)をもつ患者 19). 25). や,糖尿病を合併した急性心筋梗塞患者の安静. 26). がある。開心. 18). ,心疾患患者の HRAT. と HRrest の間に強い相関関係があるという報告 11)や, AT を規定する運動時心拍応答は,安静時からの心拍数 増加量がもっとも有力な因子として推定される. 27). こと. か ら も, 心 臓 血 管 外 科 術 後 の HD 患 者 に お い て は,. と報告されている。疾患の重症度を画. HRrest が自律神経活動の障害と運動負荷に対する心拍応. 一 的 な 順 序 で 捉 え る こ と は で き な い が,HD 患 者 の ˙ O2peak は健常人の 5 ∼ 6 割であることや 20)21),今回 V. 答の障害を反映することで,HRrest によって HRAT を. の結果から HD 患者は同年代のコントロール群よりも運.  本研究の限界として,本研究は開心術後の退院前に実. 動耐容能が低かったため(表 2),本研究における心臓. 施された少数例の結果を基にしており,心臓リハビリ. 血管外科術後の HD 患者という患者群は,上記の先行研. テーションにおける第Ⅰ相(急性期)から第Ⅱ相(回復. 究よりも重症度の高い対象であるといえる。本研究の. 期)への移行期の結果となる。そのため本研究の結果の. k = 0.13 という結果は,上記の先行研究における患者群. 一般化可能性は,開心術後の低い運動耐容能を有する. の重症度を考慮に入れても妥当な数値であると判断で. HD 患者に対し,本格的な有酸素トレーニングを開始す. き,HD 患者の低い運動耐容能を反映するとともに,運. る場合に限られるが,一方で運動療法の実施により運動. で 0.22 ± 0.08. 動療法で一般的に低強度とされる k = 0.3. 9). を用いても. 予測することが可能であったと考えらえる。. 耐容能が回復していく前段階の,最低値(下限値)に近. AT 強度を超えてしまうという事実を示すものである。. い値とも解釈できる。本研究の臨床への応用は,CPX. さらに本研究では,k = 0.13 を用いても,AT を超えて. 実施直前の急性期における歩行訓練・有酸素運動の実施. しまう対象が 36.8%存在していた。AT 以上の運動では,. 時や,CPX 実施後の運動療法(たとえば,その日の体. 8) 血中ノルエピネフリン濃度が増加し ,乳酸の産生が亢. 調の変化に伴って変化する HRrest に合わせた負荷強度. 7). ,特に手術後で. の設定)におけるリスク管理に限られる。運動療法の継. 運動耐容能の低い HD 患者においては,より厳格に AT. 続と運動耐容能の改善に伴う負荷強度の簡易的な設定方. 強度以下での運動療法の提供が必要であると考えられる。. 法は,今後さらに検討する必要がある。また本研究にて.   本 研 究 で は,HRrest +α の 方 法 に お い て,α = 11 で. 求めた係数にて処方心拍数を定めても,AT を超えてし. Karvonen 法よりも信頼性と安全性の高い処方心拍数を. まう対象が一定数存在する。そのため実際の運動療法の. 設定できることが明らかとなった。HRrest +α の方法は. 場面では,HR 以外の指標も考慮しながら,対象者ごと. 進しアシドーシスが進行することから. ガイドライン. 12). にて処方心拍数設定の簡便法として記. 述され,急性心筋梗塞後の後期第Ⅱ相(外来通院時期) および心不全症例において HRrest + 30 bpm(β 遮断薬 投与例は HRrest + 20 bpm)にて実施すると述べられて. に運動強度を設定する必要があると考えられる。 結   語  本研究では,心臓血管外科術後の透析患者に対し,予. いる。また先行研究では虚血性心疾患患者において. 測最大心拍数を用いた Karvonen 法と,HRrest +α の方. HRrest +20 bpm で安全に運動療法が実施可能と述べら. 法を用いて,AT 強度の処方心拍数を求める係数を検討. 11). 。HRrest から HRAT の予測が可能となる生. した。結果 k = 0.13,α = 11 において AT 強度を超え. 理学的な機序には,運動負荷試験時の自律神経反応が考. ない範囲での信頼性のある処方心拍を求めることができ. えられる。CPX に対する心拍上昇反応は,中等度まで. た。本研究の結果は,CPX 実施前後の急性期における. れている.

(6) 402. 理学療法学 第 43 巻第 5 号. 運動療法の負荷設定を,リスク管理の下で実施するため に,有用であると考えられる。 文  献 1)Smart N, Steele M: Exercise training in haemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis. Nephrology (Carlton). 2011; 16(7): 626‒632. 2)河野健一,矢部広樹,他:血液透析施行中に行うレジスタ ンストレーニングの効果―システマティックレビューとメ タアナリシスによる検討.理学療法ジャーナル.2013; 47: 751‒757. 3)Sheng K, Zhang P, et al.: Intradialytic exercise in hemodialysis patients: a systematic review and metaanalysis. Am J Nephrol. 2014; 40(5): 478‒490. 4)Tentori F, Elder SJ, et al.: Physical exercise among participants in the Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study (DOPPS): correlates and associated outcomes. Nephrol Dial Transplant. 2010; 25(9): 3050‒3062. 5)K/DOQI Workgroup: K/DOQI clinical practice guidelines for cardiovascular disease in dialysis patients. Am J Kidney Dis. 2005; 45(Suppl 3): S1‒S153. 6)Hellerstein HK, Franklin BA: Exercise testing and prescription. Rehabilitation of the coronary patient. Wiley Medical, New York, 1984, pp. 197‒284. 7)Itoh H, Kato K: Short term exercise training after cardiac surgery. In: Wasserman K (ed): Exercise gas exchange in heart disease. Futura publishing company, New York, 1996, pp. 224‒229. 8)Tanabe K, Osada N, et al.: Changes in hemodynamics and catecholamines during single-level exercise at the anaerobic threshold and 120% of the anaerobic threshold in normal subjects. J Cardiol. 1994; 24(1): 61‒69. 9)高橋哲也:実践的な Q & A によるエビデンスに基づく 理学療法(第 2 版)  評価と治療指標を総まとめ 13 心 筋梗塞.内山 靖(編) ,医歯薬出版,東京,2015,pp. 213‒226. 10)松嶋哲哉:透析患者への運動療法.透析会誌.2012; 45(11): 990‒991. 11)髙橋和代,勝木達夫,他:運動処方における安静時心拍数 からの簡易式の妥当性.心臓リハビリテーション.2009; 14(1): 94‒97. 12)心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラ イン(2012 年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/ pdf/JCS2012_nohara_h.pdf(2015 年 8 月 25 日引用) 13)山根主信,千住秀明,他:携帯型呼気ガス分析器の信頼性 と再現性.理学療法探求.2008; 11: 7‒14.. 14)Camata TV, Lacerda TR, et al.: Association between the electromyographic fatigue threshold and ventilatory threshold. Electromyogr Clin Neurophysiol. 2009; 49(6-7): 305‒310. 15)Karvonen MJ, Kentala E, et al.: The effects of training on heart rate; a longitudinal study. Ann Med Exp Biol Fenn. 1957; 35(3): 307‒315. 16)Tanaka H, Monahan KD, et al.: Age-predicted maximal heart rate revisited. J Am Coll Cardiol. 2001; 37(1): 153‒ 156. 17)北見裕史,伊藤春樹,他:アスリート,健常者および成人 病患者における AT 時心拍数:カルボーネン法との比較検 討.体力科學.1966; 45(6): 693. 18)Omiya K, Itoh H, et al.: Impaired heart rate response during incremental exercise in patients with acute myocardial infarction and after coronary artery bypass grafting. ̶ Evaluation of coefficients with Karvonen’s formula. Jpn Circ J. 2000; 64: 851‒855. 19)庄野菜穂子,道下竜馬,他:Multiple Risk Factor 保有者 の運動療法における乳酸閾値に相当する目標心拍数予測式 の検討.体力科學.2003; 52(2): 141‒147. 20)Capitanini A, Cupisti A, et al.: Effects of exercise training on exercise aerobic capacity and quality of life in hemodialysis patients. J Nephrol. 2008; 21(5): 738‒743. 21)Painter P: Determinants of exercise capacity in CKD patients treated with hemodialysis. Adv Chronic Kidney Dis. 2009; 6(6): 437‒448. 22)Yamamoto Y, Hughson RL, et al.: Autonomic nervous system responses to exercise in relation to ventilatory threshold. Chest. 1992; 101: 206S‒210S. 23)Karapetian GK, Engels HJ, et al.: Use of heart rate variability to estimate LT and VT. Int J Sports Med. 2008; 29(8): 652‒657. 24)Kasahara Y, Izawa K, et al.: Influence of autonomic nervous dysfunction characterizing effect of diabetes mellitus on heart rate response and exercise capacity in patients undergoing cardiac rehabilitation for acute myocardial infarction. Circ J. 2006; 70(8): 1017‒1025. 25)Celik A, Melek M, et al.: Cardiac autonomic dysfunction in hemodialysis patients: The value of heart rate turbulence. Hemodial Int. 2011; 15(2): 193‒199. 26)笠原酉介,井澤和大,他:糖尿病を合併する急性心筋梗塞 患者の副交感神経機能と嫌気性代謝閾値との関連につい て.心臓リハビリテーション.2005; 10(1): 54‒57. 27)前田知子,濱本 紘,他:心房細動患者の運動時心拍応 答と運動耐容能.心臓リハビリテーション.2008; 13(2): 313‒317..

(7) 心大血管術後の血液透析患者に対する AT 強度の処方心拍数の検討. 〈Abstract〉. Prediction of Anaerobic Threshold after Cardiovascular Surgery in Hemodialysis Patients. Hiroki YABE, PT, PhD Depertment of Physical Therapy School of Rehabilitation Science, Seirei Christopher University Hiroki YABE, PT, PhD Department of Rehabilitation, Nagoya Kyoritsu Hospital Kenichi KOHNO, PT, PhD International University of Health and Welfare School of Health Sciences at Narita Department of Physical Therapy Yoshifumi MORIYAMA, Diploma, HFP Depertment of Wellness Center, Nagoya Kyoritsu Hospital. Purpose: The purpose of this study was to evaluate the reliability and safety of target heart rate (HR) using Karvonen’s formula and to predict HR max and resting HR + coefficient (HRrest + ) formula in patients undergoing hemodialysis after cardiovascular surgery. These formulae were applied to determine target HR that did not exceed the anaerobic target HReshold (AT) after cardiovascular surgery. Methods: The study included 16 hemodialysis patients after cardiovascular surgery and 16 agematched controls. Patients who were taking β -blockers were excluded. Before hospital discharge, each patient performed a cardiopulmonary exercise test on an electric bicycle ergometer. HR at AT (HRAT) was calculated using the v-slope method. Interclass correlation coefficients (ICC) between HRAT and target HR, calculated using Karvonen’s and HRrest + formulae, varied with Karvonen’s coefficient (k) and, respectively. The coefficient of each formula was changed, and the rate of subjects who reached HRAT in 16 participants was counted. The safety of target HR (% over AT) was then defined. Results: HRAT of the hemodialysis group (89.9 ± 12.3 bpm) was significantly less compared to that of the control group (108.2 ± 11 bpm, p < 0.05). Considering that k was 0.13, ICC and % over AT were 0.9 and 36.8%, respectively. Considering that for HRrest + was 11, ICC and % over AT were 0.92 and 15.8%, respectively. Conclusion: In hemodialysis patients after cardiovascular surgery, target HR calculated using “HRrest + 11” is reliable and safe at exercise loads not exceeding AT. Key Words: Hemodialysis patient, Anaerobic threshold, Target heart rate, Karvonen’s formula, After cardiovascular surgery. 403.

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図 2 各処方心拍数(k = 0.13,  α = 11)における Bland-Altman plot A. Karvonen 法,B. HR rest +α

参照

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謝辞 SPPおよび中高生の科学部活動振興プログラムに

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

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