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台湾の2魚市場で見られた食用甲殻類

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(1)

C A N C E R 18 (2009)

p.31 -41

台湾の 2 魚市場で見られた食用甲殻類

本 尾 洋 ・ 村 岡 健 作 ・飯 塚 栄 一 ・佐藤 晋 中国の旺盛な食文化の流れを汲む台湾はその名 に恥じず,食べることを大いに謡歌するお国柄の ようである台湾は人口およそ

2

280

万人を擁し, 国土の面積は九州 とほぼ同じで約

36

000 k m

2であ るが,周囲を亜熱帯の海に固まれ,島々が点在し て多様な海の幸に恵まれている . その台湾における食用エピ ・カニ類を実地に 見聞する目的で,

2008

11

月下旬に同国の大きな

2

つの魚介類市場を訪れた. それは台湾北部に位 置する基隆市にある碧沙漁港市場と台湾海峡に 浮 かぶj彰湖群島の彫湖魚市場である . ここ では値段 も含めて,庶民向 けに売られてい る食用甲殻類を 紹介する. 魚市場では通常, て篭に盛って値段表示する以外は, 単価は斤 (=

600 g)

当たりで示されている. なお ,値段には サイズ (大型個体ほど単価が高い) や鮮度で大幅 な差があることに留意したい. 種の査定に関し,エピ類は

Holthuis (1980)

Y u

&

Chan (1986)

Perez Farlante

&

K ensley (1987)

Chan

&

Yu (1989)

,三 宅

(199

8a), カ ニ 類 は 激 ・ 陳

(1986)

,陳・ 瀞

(1993)

,黄 .

i

(1997)

,三宅

(1998b)

Shen &

Jeng (2

5)

,そしてシャコ類は

A h

yong

et al. (2

8)

に拠っている. なお,通貨のレートは

2008

11

25

日時点で, 1台湾元 (N

T$)

= 3.4円 であった

結果 と考察

1 碧沙漁港市場 (図1,2 ) 首府台北から高速道路で北へ

30

分余,あるいは 中正 (蒋介石) 国際空港からハイウエ ーで約1 時 間の位置に ある基隆

(Keelung)

市は古くから海 運の要所として発展し ,現在高雄に次ぐ台湾第

2

の大きな港町である (図 1 ). 岡 市は古来,海洋 文化が栄えた地でもあり 海に面して国立台湾海 洋大学があるのもその証左 と言 える . 市の中心か ら車で

10

数分のところに同大学があり,そこから さらに 車で2 ,3 分の海辺近くに平屋建ての碧沙 漁港市場 ( 正式名称は碧沙観光魚市) がある( 図 1, 2 ). そこには大がかりな正面玄関はなく,海 を右手にしたこじんまりとした入口から入ると 一 本の通路が縦にあり,その右側が魚介類市場,左 手がレストラン街となっている

10

軒ほどあ る レ ストランは大概,届先に活魚水槽を 設けており, 飼 って いる魚介類を注文するとその場で食膳 に供 してくれるし,お客が向かい倶IJのよその 売り場で 買った魚介類を持ち込むとそれ も調理し て出して くれる . さて右側の魚介類市場では,長いコの字型の通 路の両側に十数軒のテナントが鮮魚、販売をしてお り,大多数の 庖は主として生かしたエピ ・カニ類 を観光客を 含む一般市民に販売している. 生け賛 に流し込む海水は背後の海から常時ヲ│ いて掛流 し されてい るのではなく ,各庖が循環ポンプと漉過 器を使 って循環使用 されているものであ る. 貴重 十 基 隆 市 5 0 k m 台北rli 台 併 h 湖 公

y

A

柑 -A i宵 q

Hiroshi M O T O H

Kensaku M URAOKA

Eiichi IIZUKA

&

Susumu SATOU

:

Edible crustaceans sold at two

図1

2

魚 市 場 の 位 置 基 隆 市 碧 沙 漁 港 市 場 , 馬 公

(2)

32

台湾の2 魚市場で見 られた食用甲殻類 図 2 碧沙漁港市場 A ,入口付近; B ,市場の主通路と両脇の底舗; C ,甲殻類を生かして展示している様子, 0 ,死んだミナミゾウリエビ (後列左),アサヒガニ (後列右), シマイシガ 二 (中列左右),シマイセエビ (前列 左), カノコイセエビとゴシキエビ (前列右) な海水を

t

から下へまるで状に流して有効に使っているのはその表れで, 徹 底して節約した海水利用の知恵に感心 する . “生 か し " は ま さ に 究 極 の 鮮 度 保 持 販 売 で あ り , 彼 らの美食ぶりに敬服の念を禁じ待ない. そのこと は単に囲内で獲れる種類だけでなく,同行してく ださ った台湾産甲殻類研究の泰斗務祥平国立台湾 海洋大学名 誉教授のご説明によれば,海外とりわ け東南アジアから取り寄せた種類も多く揃 ってお り, なかでも自国の資源が減る 一方の高価なイセ エビ類にその色彩が強い. 訪れたのは

2008

11

26

日で,午後であったた めか客足はさほど多くはなか った. ここでは交渉 次 第 で 値 引 き は あ る が , 基 本 的 に は 表示 価 格 ど おりである 庖の売り子には若 ・中年の男女が多 し、 2 . ) 彰湖魚市場 (図1,3 )

i

itJJ

島 (Penghu) へ は 台 北 の 囲 内 専 用 の 松 山 空港から4杜 が一 日計十数便運行している (馬公 行き,片道

1

790

元). 小型のプロペラ機 (ターボ プロップ) で

50

分ほど乗ると空港に着く . 向 島の 馬公空港棟は離島とは思えないくらい広くて立派 な2階建ての近代ビルである. そこからタクシー で十数分の所に彫湖魚市場がある( 図

1

3).

向 島の中心地馬公市の漁港の一 角に露天市として栄 えたこの市場は,まだ薄暗い早朝から聞かれてい る. 基本的に 休市日はなく

i

毎が時化ると休みと のこと . 魚、市場を同年

11

27

28

29

日 の い ず れ も早朝 午前 中 に 訪 れ た . そ こに は ざ っ と見渡 しただけで

20

庖 が

2

つの通路を挟んで

49

1Jに並ん でいる . い ず れ も 主 に 中 高 年 女 性 が 庖 を 出 し て おり (男性はいても補助的 ),そこにはさながら

(3)

本尾 洋 - 村 岡 健 作 飯 塚 栄一 - 佐藤 普

33

図3 窃湖魚市場. 上,正面入口; 下. 朝の市場の様; 子. “輪島の朝市" 的 雰 囲気が漂っている. ここも魚 介類の中でエピ ・カニ類の占める割合が高くて 品数も豊富で,それらは“商材" として重要な位 置を占めており,魚類に 比べて相対的に “高価" なのは確かで、ある (概して ここ に限 ったことで は ないが).

i

彰j胡魚市場 では循環使用の海水 中に生 かしであるのは高価 なイセエビ類,クルマエビと 大型のイシガニ類ぐらいであり, 他 はすべて水無 しであ って,それに耐える種類の生かしないしは 死んだ新鮮なものが並べてあ った 攻撃的なノコ ギ リガザミ 類や多くのイシカ、、ニ類は海水無しでも 元気 で、,不用 意 に手を出すと挟まれる危険がある くらい “活力良好" であ った. なお,並べられて いる品は 全部が前夜漁獲されたものとは限らない ようで,そのことは前日の売れ残りが並べられて いて, 翌 日見覚えのあるイセエビ類が

3

日間 出て いたことか らも判る . 出されている甲殻類の多く は底曳き網で漁獲されているとのこと. 値段は斤 (= 600

g)

当たりの単価で標示されているが,相 対での交渉により値引きは大いに可能で ,成り行 き次第で, 日本では 一般庶民にはとても手の届か ない伊勢エビ類のような“超高級品" にありつく ことも大いに可能である 田舎であり“産直" の せいか,概してここでは大都会の基隆市に 比べ て 安い 印象を 受 けた . 3. 売られ ていた食用甲殻類 上記の

2

市場で売 られていたのはエピ類

20

種, カニ類14種とシャコ類 4 種の計 3 グループ38種で あ った. 異尾類は皆無で、,“ひょっとしたらヤシ ガニに会えるかも" との甘い期待は夢に終わ っ た. 1 ) エビ類 チヒロエビ干ヰ

Plesiopenaeus armatus ( ミ ッ ト ゲ チ ヒ ロ エ ピ) 台湾名“雄壮類蝦" の仲 間 (図4 A) 深海底曳きで漁獲されており ,量 的には少な く,碧沙漁港市場 (以下,碧沙) で死んだのが砕 氷の上に数匹並べ て売られていた . クダヒゲエビ科

Solenocera alticarinata ( コ ウ ダ カ ク ダ ヒ ゲ エピ) 台湾名“隆脊管鞭蝦¥ “大頭蝦.. (図4 B)

i

彰湖魚、市場 ( 以 下

i

彰湖 ) で ア カ エ ビ 類 (Metapenaeopsis属) に 混 じ っ て 数 匹 が い た 死 んだのが売られており,単価は失念したがエビ類 の中 では安い方であ った. クルマエビ科

Penaeus monodon (ウシエピ) 台湾名“草割 蝦.. (図4 D) エビ養 殖の本場だけあ って,本種の中型サイ ズの養殖ものが碧 沙

i

彰湖両市場で多く並 べら れていた (ただし ,生 かしは皆無). 値段は600元

/斤.

Penaeus semisulcatus ( ク マ エ ビ ) 台 湾 名

i

梓封蝦.. (図4 F) 生かしはなく死んだのが両市場で普通に見られ

Melicertus canaliculatus ( ミ ナ ミ ク ル マ エ ビ) 台湾名“講甲釣蝦. . (図4 C) j彰湖で後述の死んだクルマエピに混 じっ て雌

(4)

34

台湾の2魚市場で見られた食用Ifl殻類

図4 工ビ類. A ,ミットゲチヒロエビ; 8 ,コウダカク夕、ヒゲエビ; C ,ミ ナミクルマ工ビ ; 0 ,ウシ工ビ ; E ,ク ルマエビ; F,クマエビ G,Melicertus longistylus ; H,ヨシエビ; 1,チクコエビ; J,オキサルエビの雄 (上) と雌 (下) ; K,アカエビ ;L, トサエビ ;M, トサ エビのpetasma

(5)

本 尾 洋 - 村 岡 健 作 ・ 飯 塚 栄 一 ・ 佐 藤 晋

35

1匹が見つか った . 同個体はあいにくと額練が破 損していたが,頭胸 甲や腹部 の 黒 褐 色 の 帯 の 形 状のクルマエピとの違いに 加 えて , 外 部生 殖 器

T h

elycumが円筒状でなく二葉状,かつ尾節に 側 赫がないことでクルマエピと区別される

M elicertus latisulcatus (

フトミゾエピ) 台湾 名" 寛溝劉蝦"

i

i

胡で生かしではないが,かなり多くの個体が 見 ら れ た 値 段 は600元/ 斤.

M elicertus longis

'lus (

和名なし) 台湾名“長 枝針蝦" (図4 G)

i

彰湖 でフ トミゾエビの 中の

1

匹の第

3

腹節に, ひときわ鮮やかな赤桃円があり,額角先端部が白 くかっ上向しており,おやっと思って手にとって 見ると頭胸甲背面の溝がフトミゾエピのそれより も更に広くかっ後縁ぎりぎりまで縦走していて, 本種であることが判った . 日本には分布していな いようであるが台湾,東シナ海を含む東南アジ アやオース トラ リアにかけ て広く棲息して お り

(Perez Farfante

&

Kensley, 1887),形態的に 印象 的なエビである. 値段はフトミゾエビと区別して おらず,同等扱いで600元/ 斤.

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α

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古討

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(ク ルマエビ) 台湾 名 台湾でで、もクルマエビ は “最高級品" のようで多 くは生かしで,大きいのは1000元/ 斤内外で売ら れていた( 両市場) . 死んでいる (600元/斤 ) の は多分販売中に死亡したか,入荷時にすでに死亡 していたものであろう. 値段が高いとは言え , 日 本のそれに 比べて相対的にまだ安いことは確かで、 ある .

M etapenaeus ensis

(ヨシエピ) 台湾名“剣角 新封蝦" (図

4 H)

両市場で,生かしでなく新鮮状態で売られてい た. 値段は記録し忘れたが,鮮度とサイズにより

Metapenae

intermedius (

トサ エピ) 台湾名 “中型新封蝦" (図

4 L

M )

j彰j胡で, ヨシエピの中に額角が直線的でかつ尾 扇後端が鮮やかな紫色のエビが

2

3

匹混じ って い た . よ く 見 る と 雄 の 外 部 生 殖 器Petasmaの中 央突起が側突起 よ り高く( 図4 M),そのことか ら近縁種

M .anchistus

ではなく本種であることが 判 った. 値段はヨシエピとは区別 しておらず,そ れらに混じって同額で売られて いる.

Trachysalambria long

es (

オキサルエビ) 台 湾名“鷹爪封蝦" (図4J)

i

i

胡でかなり普通に,時にはアカエピ類に混 じって見られる. 値段は100元/ 斤. 'tJ

Metapenaeopsis barbata (

アカエビ ) 台湾名 “脊赤封蝦" (図4 K) で販売されている. 値段は 小型個体 で

8

元/斤, 大きいので50元/ 斤. こ の属のエピには,現場で もっと詳しく観察すれば アカエビ以外の種が混 じっている可能性がある .

Parapenaeopsis cornu

ω (チ ク ゴ エ ピ ) 台 湾 名“角突千方針蝦" (図41)

i

彰湖でアカエピに混じって ,数は少ないが死ん だ状態で売られている. 値段はアカエビと同額 イセエビ科

Panz

仰t“似

ul

μ

irus hom

α

rus (

ケフブ守 カイセ エビ) 台湾

名 碧沙でで、,僅かながら生かしで販売されており , 値段は次種カノコイセエビとほぼ同額だ‘ったと記 憶している.

Panulirus longipes

(

カノコイセエピ) 台湾名 “長足龍蝦

1

図 5 ) 碧沙で死んだ中サイズのがゴシキエビと合わせ て2匹450元で売られていた.

Panulirus ornatus (

ニシ キエビ) 台湾名“錦 繍龍蝦" (図

2 D )

碧沙では生かしあるいは死んだのが

i

彰湖では 生かした大きいのが1200元/ 斤で売られていた. 台湾でもイセエピの仲間は甲殻類中一番高価であ るが,それでも日本での価格に比べるとまだかな り安いと言える .

Panulirus penicillatus (

シマイセエピ ) 台湾 名“錦繍龍蝦" (図

2 D)

碧沙では生かしあるいは死んだのが( 後者で2

i

彰湖では 生かしたとても大きい のが見 られた( 値段の表示なし)

Panulirus versicolor (

ゴ シ キ エ ピ ) 台 湾 名 “雑色龍蝦" (図

2 D )

(6)

36

台湾の2fl¥市場で、 見 られた食用IjI 殻類

図5 イセエヒ類 左, ウチワエビモドキ,右,カノコイセエビ.

図6 売られている蟹の鉛脚. A , メガネカラ ッパと 卜ラフカラ ッパ; 8 , ヒラ ツメガ ニ ; C , シマイシカ ニ とジャ

(7)

本尾 洋 ・村岡健作・飯塚栄一 ・佐藤 晋 37 碧

i

少で死んでかなり鮮度の落ちた中サイズのが カノコイセエピと抱き 合 わせで

450

元 (計

2

匹) で売られていた. 総じてイセエビ類はご、多分に漏れず、ここでも高 価で1200元/ 斤前後が相場のようである . セミエビ (ウチワエビ ) 科

Parribacus antarcticus

(ミナミゾウリエピ) 台湾名“南極岩礁扇蝦" (図

2 D )

碧沙で死んだのが2匹皿にのせて600元. 300 元/ 斤が相場のようである.

@

Thenus orientalis

(ウチワエピモドキ) 台湾 名 “肩蝦" (図 5 )

i

彰j胡で

3

日間,同じ個体数匹が生かしで,売れ ずに出されていた. 値段は900元/kg. 最終日に 2匹 (700元) を買い上げて接写したのが図5 の 個体である . 本属のエどはインド・西太平洋を 中心に

5

種が分布し,台湾では

T orientalis

T

indicus

2

手重カ対妻息していることにな っている

(Burton & Davie, 2007). 接写した個体は歩脚に 複数の赤斑点がある こと から

T orientalis

である と判断した 上述の ように訪れた

3

日間,市場の 入口近くの同じ場所で 同 じ個体が売られていた 従 って毎日漁獲されるわけではなく,売れ残 った のは翌日,生かしたまま再度並べられていること がわかる. 値段は稀少価値もあ ってか, 900元/ 斤 と安くはない.

r

昔は田畑の肥料にするほど沢山 いた

J

,と毎朝市場に同行してくれた80才代の宿 泊ホテルのご主人が話してくれた. 2 ) カニ類 アサヒガ二平ヰ

Ranina ranina

(アサヒガニ ) 台湾名“蛙型 蟹., (図 2 D) 碧沙で死んだ2匹が売られていた. 本種はどこ でも多産せず,かつ人目を惹く特異 な形態そして 台湾人の好む赤い体色のせいか, 2匹で600元, とエピ類に比べて重い割 には可食部の少ないカニ 類としては良い値がついていた. カラ ッパ科

Cala

a lophos

“巻折鰻頭蟹" (図

6 A)

両市場で見られたが,残念ながらカニ自身の姿 はなく,その大きな紺脚のみが売られていた. カ ニの本体は大きい割に可食部分がほとんど無い一 方,鉛脚は再生すると信じられ,ハサミを自切さ せた後で放流されている由である. 本当かなーと いう気がしなくもない. 値段は

50

元/ 斤.

Calappa Philargius

(メガネカラ ッパ) 台湾 名“遺造鰻頭蟹" (図

6 A)

両市場で. これも前種と 同様にカニ自身は見当 たらず,紺脚のみが売られていた . 本体が大きい 割にさほど食べる部分が多いとは思われず,

r

こ んな物まで売るとは!

J

との思いがする . 値段は 前種同様

50

元/ 斤. ワタリガ二科

O valipes

punctatus (

ヒラツメガニ ) 台湾 名 “細点円駈蟹,. (図 6 B). 碧沙では 1 軒の庖 でボイ ルしたらしい赤 っぽいのが売られていた. 一方, 両市場では複数の庖で本体は見られず,鮒脚のみ が出ていた. ひょ っとすると鮮度が落ちてしま っ たが,未だ可食と判断されるハサミ部分だけを 切り離して売 ってるのかも知 れない. 値段は

50

/斤.

Charybdis amboinensis

(ア ン ボ イ ナ イ シ ガ ニ) 台湾名“安技時" (図7 A )

i

彰湖で他のイシガニ属の仲間に混じ って販売さ れており,近縁種とは区別されていない. 値段は 100元/ 斤.

Charybdis

feriata (

シ マ イ シ ガ ニ ) 台 湾 名 “繍斑時" (図2 D ). 両市場で見られた. 値段は中サイズ4 匹で150 元 (碧沙) ,あるいは巨大な雄で1 匹

250

元 (彰 湖). 台湾では最も普通に市場で見られるワタリ ガニ科の代表的な食用種で,両市場の多くの屈で 生かしあるいは死んだ個体,更にはそれの紺脚だ けが売られていた. イシガニ属中最も大きくなる ようで,巨大な雄では側赫を含めて甲幅177

m m

あった. 値段は100元/ 斤.

Charybdis granulata (

ツブワタ リイシガニ ) 台湾名“頼粒惇, (図7 B ) 両市場で売 られており,次種 C.

natator

とは区 別されていない. ただし 碧沙では本種はごく稀 な一方,

.

i

i

胡ではむしろ本種の方が次種よ り多い 傾向にあ った. 大きい個体で甲幅117

m m

ある.

(8)

38

台湾の2魚市場で見られた食用中殻類

図 7 カニ類 A . アンボイナイシガ ニ ; B . ツブ ワタリイシガニ ; C . ワタリイシガニ D. イポガザミ ;

E .タイワンガザミ; F.ジャノメガザミ; G .アミメノ コギリガザ ミ; H . トゲノコギリガザミ (フル

(9)

本尾 洋・村岡健作 ・飯塚栄一 ・佐藤晋

39

値段は100元/ 斤.

Charybdis nata

ω

r

(ワタリイシガニ ) 台湾名 “善泳時" (図 7 C ) 岡 市 場 で 見 ら れ た 値段 は100元/kg (彰湖 ). 雄で見る限り,本種は近縁のツブワタリイシガニ やアンボイナイシガニよりも大きくなるようで, その巨大な紺脚も販売されていた.

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仰仰nt仰t“仰

us haani

i

(イボガガ、ザミ) 台湾名

1

氏桜子蟹" 生カか、しはなくすべて死蟹でで、,値段は鮮度 ・サイ ズにより異なり

i

彰湖では50- 120元/ 斤とワタ リ ガニ科の中では一番安い. 大型にならず可食部分 が少ないのと,量的に豊富なことが安価の要因の ように思える .

Portunus ρelagicus

( タイワンガザミ ) 台湾 名“遠海綾子蟹. . (図7 E ) 両 市 場 で 死 ん だ の が 並 べ て あ っ た . その和名 から察してさぞかし多いだろうと事前に思ってた 割には個体数は多くな い感 じ 値 段 は100- 250元 /斤.

Portunus sanguinolentus

( ジャノメガザミ) 台湾名“紅星綾子蟹. , (図7 F) 前種より量的に多く ,両 市 場 で 豊 富 に 見 ら れ た 値段は碧沙で中サイズ

6

匹あるいは大

3

匹で 共に150元 (鮮度良くなし ), で

1

O

O

元/ 斤

Scy

II

ω

a p

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ramamo

ωSαiω

n

( トゲノコギギ、 リガガ泊ザザ、ミ) 台湾名 両市場でで、生カか、してあつた . 値段は

1

330

元と カニ類中最高級. 次種も含めて 天然と養殖 ものと で値段が異なり

i

彰湖の場合,養殖蟹500元/ 斤, 天然600元/ 斤. 死んだものは共に極端に安くて80 元/ 斤. ノコギリガザミ類は生かして販売するの が原則の由. 碧沙では大 中小各サイズのが多く見 られた 一方

i

彰湖では量的に多くない 碧沙で, 多分養殖蟹と思われる 小 型 の が200元/ 斤であっ た

Scylla serrata

(アミメノコギ リガザミ ) 台湾 名“鋸縁青時" (図7 G) 大型に成長することが知られているアミメノ コギリガザミは両市場で数的に前種より多い印象 だった. 生かして売られており,取り扱いが危険 なのと逃亡防止のためにいずれも榔子の繊維で鉛 脚を縛 ってあった . 概して 前種 よ り単価は低く, j彰湖で

1

330

元. モクズガニ科

Eri

heir sinensis

(チュウゴクモクズガニ ) 台湾名“毛蟹" “問蟹" (図

8 )

碧沙でのみ売られていた . 台湾には本種は分布 しないことから

(Shen

&

Jeng

, 2005),中国本土 あたりからの輸入品と思われる . 値段は1匹50元 (小型) から ,身入りの良い大きいのはなんと400 元 もする すべて生かしで売られており,逃亡防 止 にいずれもバナナの繊維紐ないしは木綿糸でが んじがらめに縛 ってあった( 図8 B,D ). あとで わか ったことであるが,写真撮影用に購入した1 匹は紐を解くと微かに腐臭があり,既に死んで、い た. 縛 つで あるから 生きてる とは限らな い!

2)

シャコ類 卜ラフシャコ科

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( トラフシヤコ

の一種) 台湾名 碧j沙少でで、生カか、したのと死んだのと両方売 ってい た 本 属 は 台 湾産口 脚類を網羅した A h

yong et

al.

(2008)によると,同国から2 f 霊が知られている. 購入個体では鎌型をした強大な捕脚 (第

2

顎脚 ) に9赫 あ り , 本 種 と 判 断 し た 値 段 は 大 き く て 量 的に少ないせいか1匹650元と非常に高い. シャコ科

Erugosquilla

ω

oodmasoni

(和 名 な し ) 台 湾 名 “鰭蜘蝦" (図9 ) 碧 j少で,砕氷を敷いて鮮度を保 って売られて い た. 値段500元/ 斤

Harpiosquilla ha

ax

( トゲシ ャコ) 台湾名 “鰭郷蝦" (図9) これも砕氷に載せて碧沙で1匹40元で売 られて いた . 大型種のせいか結構良い値段である.

Harpiosquilla raphidea

( トゲシャコの一種) 台湾名“贈郷蝦" (図9 ) 碧j少で砕氷を敷いて死んだ個体が並べてあり, 6匹で150元. また, 他 の庖では生かして1匹45 元で販売していた . 以上エピ,カニとシャコ類を合わせて38種に 上る . わずか2カ所で, しかも 1シーズンでこれ

(10)

40

図8 チ ュ ウゴクモクズガニ . A,雄 背 面 ;8,縛 ってある蟹 ;C,雄腹面 ;0,販売 の様 子 (碧沙漁港市場) 図 9 シャ コ 類 . A , E, トラフ シャ コ の 1種 Lysiosqui/la tridecimden白ta ;8, C, 0, トゲシャ コの1種 Harpiosquil.匂 rahidea

(11)

本尾

i

芋・村岡健作・飯塚栄一・佐藤 晋 41 だけ多くの種類を売っている魚市場は日本のどこ へいってもちょっと見当たらないのではなかろう か. ちなみに似たような 自然環境にある沖縄県那 覇市の有名な牧志公設市場ではこの半数の十数種 類が販売されていた( 本尾,未発表) 今 後,春 夏秋冬の各シーズンに,台湾囲内にある他の魚市 場も含めて ,上記

2

市場を 訪れば,同国で売られ ている食用甲殻類の種類数がもっと増えるであろ う. なお,今回詳しくは観察出来なかったが,精 査 す れ ば ク ル マ エ ビ 科 の 小 型 の

M etapenaeopsis

Parapenaeus,

Parapenaeopsis

属 な ど に 未 だ 複 数 種 が混在していた可能性がある . 種類の多さと丁寧 な扱いに,中国の “医食同 j原" の流れを汲む台湾 だけのことはある,と感心する . なお,上記の種 類は“産直" 的な1彰湖魚市場はさておき ,碧沙漁 港市場では台湾圏内で漁獲されたのか輸入ものな のかはっきりしない種が複数にあるようで,この 辺の事情を確かめたく実際に庖の人に 尋ねても , どれも“国産もの" との答が返ってくるだけだ‘っ た.

謝 辞

今 回 の 調 査 を 行 う に 当 た っ て 事 前 に 訪 問 先 と の 連 絡 ・折衝 に 関 し , 台 湾 大 学 教 授 彦 一 久 博 士 (Dr. 1. Chiu Liao) に 種 々 便 宜 を 図 っていただい た . 国 立 台 湾 海 洋 大 学 名 誉 教 授 瀞 祥 平 博 士 (D r. H siang-ping Y u) には碧沙漁港市場他 を案内して いただいた上に輸入種等について種々ご教示いた だいた 国 立 台 湾 海 洋 大 学 教 授 陳 天 任 博 士 (D r. Tin-yam C h a n) は シ ャ コ 類 の 学 名 を 教 え て く だ さり,かつ研究室での写真撮影に便宜を図 ってく ださった上に ,多数の御高著別刷りを恵与して下 さ っ た 国 立 水 産 試 験 所

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彰湖島海洋生物研究セン ターの祭察高生所長 (Mr. W a n n - S hen g Tsai) ,洗 宜 築 研 究 員 (Mr. Yih-Leh S h e n) , 林 呂 逸 研 究 員 (Mr.Yilin L u), 鄭 静 恰 研 究 員 (M i s s Z h e n g Jing Yi), そ し て

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湖 島 白 沙 郷 在 住 の 林 丙 寅 氏 (Mr.

Ping-Yin Lin) には施設案内他でご足労を煩わし た. ここに記して皆様に 心よ り厚くお礼申し上げ ます.

文 献

A hyong, S. T., C han, T.-Y., & Liao, Y.-c., 2008. A catalog of the mantis shrimps (Stomatopoda) of Taiwan. 190 pp. National Taiwan Ocean University, Keelung. Burton, T. E., & Davie, P. ]. F., 2007. A revision of the

shovel-nosed lobsters of the genus

Thenus

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Chang, C .- M ., 1965. Edible Crustacea of T aiwan. 60 pp. Chinese-American Joint Commission on Rural Reconstruction, Taipei.

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図 4 工ビ類. A ,ミットゲチヒロエビ; 8 ,コウダカク夕、 ヒゲエビ; C , ミ ナミクルマ工ビ ; 0 ,ウシ工ビ ; E ,ク ルマエビ; F ,クマエビ G ,Melicertus longistylus ;  H ,ヨシエビ; 1 ,チクコエビ; J ,オキサルエビの雄 (上) と雌 (下) ;  K ,アカエビ ; L , トサエビ ; M , トサ エビの petasma
図 5 イセエヒ類 左, ウチワエビモドキ,右,カノコイセエビ.
図 7 カニ類 A . アンボイナイシガ ニ ; B . ツブ ワタリイシガニ ; C . ワタリイシガニ D. イポガザミ ; E . タイワンガザミ; F. ジャノメガザミ; G

参照

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