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図 1 死亡別にみた死亡率の年次推移 2 Safety and Health:NIOSH) が 1 発がん性 2 催奇性 3 生殖毒性 4 臓器障害 ( 低用量での ) 5 遺伝毒性 6 危険薬剤に構造あるいは毒性が類似している の 6 項目のうち1つ以上満たしている薬剤のことをいうと定義しています

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■ はじめに

 1981 年以降、悪性新生物は、日本における死因の第 1 位となり、その死亡率は増加傾向にあります(次頁・図1)。 近年、日本において、がん治療における化学療法は目覚ま しい進歩を遂げており、それに伴い、メディカルスタッフ が取り扱う抗がん剤の種類や量も急激に増加しています。 抗がん剤に関する情報はあふれていますが、その多くが抗 がん剤の治療効果のことであり、安全な投与法や曝露によ る影響についてはほとんど(全く)伝えられていません。 がん治療において「生存期間の延長」がひとつの大きな目 標ですが、抗がん剤治療を受けている患者さんに関わるメ ディカルスタッフにとっては安全な抗がん剤治療について も十分に理解している必要があります。そうでなければ、 がん治療に関わっている健康なメディカルスタッフや健康 な患者家族に何らかの悪影響が起こりうる可能性があるか らです。抗がん剤に汚染されている場所は、われわれの目 には見えません。そのため、抗がん剤に関わるメディカル スタッフは知らないうちに、抗がん剤の曝露を受けている 可能性があります。日本において、職業性曝露が健康な身 体にどのような影響を及ぼすかについてはほとんど報告さ れておらず、十分なフォローも受けているとは言えません。 このような現状でわれわれは抗がん剤を扱わなければなら ないのです。最近はかなりがん関連の雑誌で職業性曝露の ことが掲載されるようになり、メディカルスタッフの職業 性曝露に対する意識は少しずつ高まっていますが、個人間、 職種間、または施設間でその差は大きく、実際の現場では 正しい知識が身についておらず、さらに経費がかかること もあり、なかなか必要物品も整備されていないのが現状で はないかと思われます。そこで、今回は「抗がん剤の職業 性曝露とその予防」について考えてみたいと思います。

■ ハザードドラッグとは

 抗がん剤など、人々への健康被害を起こす危険薬剤のこ とをハザードドラッグ(Hazardous Drug:HD)と呼んで います。HD は、米国病院薬剤師会(American Society of Hospital Pharmacists:ASHP)での定義をもとに、米国国 立労働安全衛生研究所 (National Institute for Occupational

がん化学療法におけるメディカルスタッフの

職業性曝露とその予防について

Knowledge Communication Surgical は、医療従事者が術中の感染リスクを軽減するための知識や注意点などを、 専門の先生にわかりやすくレクチャーしていただく情報ツールとして誕生しました。 初回は、抗がん剤の取り扱いに関わるメディカルスタッフが受ける職業性曝露の危険性やその予防について、 時計台記念病院の児玉佳之先生に寄稿していただきました。

児玉 佳之

先生

社会医療法人社団カレスサッポロ 時計台記念病院 法人本部 がん医療推進室 室長 消化器センター 1997年 札幌医科大学医学部卒業 1998年 市立美唄病院 2002年 栗山赤十字病院  2003年 栗山赤十字病院 内科 副部長  2007年 藤田保健衛生大学 外科・緩和医療学講座 助教 2010年 社会医療法人社団カレスサッポロ 時計台記念病院 消化器センター 2012年 社会医療法人社団カレスサッポロ 法人本部 がん医療推進室 室長 日本静脈経腸栄養学会 評議員、指導医 日本緩和医療学会暫定指導医 インフェクションコントロールドクター(ICD) 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士 日本病態栄養学会評議員、NSTコーディネーター 日本肥満症治療学会 評議員 PEG・在宅医療研究会 専門胃瘻管理者、専門胃瘻造設者、 認定胃瘻教育者 北海道胃瘻研究会 世話人

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Safety and Health: NIOSH)が、①発がん性、②催奇性、 ③生殖毒性、④臓器障害(低用量での)、⑤遺伝毒性、⑥ 危険薬剤に構造あるいは毒性が類似している、の 6 項目の うち1つ以上満たしている薬剤のことをいうと定義してい ます。  HD の準備や投与時に医療者が曝露を受けることを「職 業性曝露」と呼んでいます。HD の曝露によって起こる重 大な問題として発がん性や催奇性があります。発がん性と は正常細胞がなんらかの原因によってがん化する性質のこ とで、細胞の度重なる変異や遺伝子要因、細胞のアポトー シス障害、細胞の分化異常などが原因となります。多くの 抗がん剤は DNA に影響し、がん細胞を障害するという作 用をもっていますが、それと同時に正常細胞の DNA や染 色体にも働いて、細胞のタンパク合成に影響を与えること によって突然変異を起こします。突然変異を起こした DNA や染色体の多くは、異常細胞として生体免疫反応に よって取り除かれますが、残存した一部が変異細胞を作り、 がん細胞が発生します。これを二次がんと呼んでいます。 一方、催奇性とは、妊娠中に HD に曝露した場合、胎児の 構造上の障害が起こり、奇形を起こす性質のことをいいま す。また、精子や卵子が影響を受け、流産や不妊の原因に なるというような場合もあります。

■ 抗がん剤の職業性曝露による影響

 発がん性のある薬剤を扱う場合には、その薬剤が自分に どのような影響を及ぼす危険があるかを知っていなければ 職業性曝露を避けることはできません。1979 年にフィン ランドの Falck らが抗がん剤を取り扱った看護師の尿から 正常者より有意に高い変異原性物質が検出されたと報告 し、健康なメディカルスタッフに対する初の毒性報告とし て注目を集めました。その後もがん化学療法を行うメディ カルスタッフの染色体異常や、流産発生率の増加、急性症 状の発症などの報告が続き、職業性曝露に対する予防対策 が注目されるようになりました。抗がん剤の曝露による影 響は、発がん性、催奇性に加え、臓器障害や急性症状(表 表1 抗がん剤の曝露によって起こる急性症状 過敏反応 アレルギー反応、皮疹、眼の刺激など 免疫反応 慢性の咳嗽あるいは喉の刺激、発熱など 消化器症状 食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、 便秘など 循環器症状 息切れ、不整脈、末梢浮腫、胸痛、高血圧など 神経症状 頭痛、めまい、不眠、意識消失など 図1 死亡別にみた死亡率の年次推移 注:1)平成 6・7 年の心疾患の低下は、死亡診断書(死体検案書)(平成 7 年 1 月施行)において「死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態 としての心不全、呼吸不全等は書かないでください」という注意書きの施行前からの周知の影響によるものと考えられる。   2)平成 7 年の脳血管疾患の上昇の主な要因は、ⅠCD-10(平成 7 年 1 月適用)による原死因選択ルールの明確化によるものと考えられる。 0 22 ・ 30 ・ 40 ・ 50 ・ 60 2 7 ・ 17 20 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故 自殺 肝疾患 結核 死亡率︵人 口 10万対︶ 平成・年 昭和‥年

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3 1)などが報告されています。がん化学療法薬の発がん性 を示すデータの多くは動物の HD 曝露による発がん性変異 原性の確認と、HD を扱うメディカルスタッフの尿中に出 現した変異原性物質の検出、がん化学療法を受けた患者さ んでの二次がんの発症についてです。二次がんについては、 白血病、非ホジキンリンパ腫、膀胱がんの報告が多くなっ ています。多種類の抗がん剤に少しずつ長期的に曝露され た場合の慢性的な影響については、現在のところ明らかに なっていません。また、曝露後長時間経過した後に発症し た場合には、これらの症状の原因が職業性曝露であるとは 思いつかない可能性があります。さらに、抗がん剤の職業 性曝露による影響はわれわれだけでなく、子供の世代まで 影響する可能性がありますが、そこまで長期間にわたって 調査された報告はほとんどありません。このような状況で ありながら、抗がん剤治療に関わるメディカルスタッフの 長期間の健康被害を調査できていないのも現状なのです。  ここでは、実際に抗がん剤の職業性曝露が日常のどのよ うな場面で起こるのかを考えてみたいと思います。 1. 抗がん剤の調製時  最近は、薬剤師が安全キャビネット内で調製すること が多くなっていますが、現在も病棟の処置台で看護師や 医師が行っていることもあると思います。抗がん剤がア ンプルまたはバイアルに封入されている場合、調製のた めに薬剤を取り出すときに、薬液が飛び跳ねたり、こぼ れたり、エアロゾルが発生することがあります。バイア ルの抗がん剤が増えていますが、バイアル内が陽圧化し た場合に、トップに開いた穴から溶解された抗がん剤が こぼれたり、エアロゾルが発生することがあるので取り 扱いには注意が必要です。また、注射器内の空気を排出 する時や針を外す時にも、エアロゾルの発生やこぼれを 生じやすくなります。ルアロック式でない注射器や針を 使用すると作業中に接続が外れることもあります。 2. 抗がん剤の与薬時  点滴で投与する時には、輸液ラインを抗がん剤の入っ た薬液でプライミング(ラインを薬液で満たす)すると、 ラインの先端から抗がん剤がこぼれ出ることが考えら れます。また、点滴終了後接続をはずす時に点滴セット の接続部、点滴バックなどから抗がん剤がこぼれ出る可 能性があります。経口の抗がん剤も細粒や顆粒であれば 与薬時に飛散する可能性があります。また、錠剤や軟膏 などでも素手で扱うと、皮膚から抗がん剤を吸収してし まう可能性があります。 3. 抗がん剤の運搬・保管時  抗がん剤がガラス製のバイアルやアンプルに入って いる場合、運搬中の振動などでガラスが破損し、薬剤が こぼれる危険性があります。また、保管する時にも、場 所によっては落下などにより、容器が破損すれば、薬剤 の漏出事故が起こる可能性があります。海外では、製造 過程でバイアル表面に抗がん剤が付着する危険性が指 摘されており、日本でも、使用前のシクロフォスファミ ドのバイアルの表面に薬剤が付着していたことが確認 されています。ということは、抗がん剤による曝露のリ スクは、調製前にすでにあるということを認識する必要 があります。最近は、メディカルスタッフの安全を高め たバイアルも開発されています。オンコテイン TM バイ アルは、①バイアル表面の残留抗がん剤による曝露のリ スクを軽減する、②搬送時、落下時のバイアル破損のリ スクを軽減する、③バイアル破損時のガラス片や薬剤飛 散のリスクを軽減するという特徴をもっており、このよ うな製剤技術を使用した製品を積極的に採用するのも 重要と考えます。また、企業側も積極的にこのようなメ 業務内容 抗がん剤曝露の機会 調製・与薬準備 ・エアロゾルの吸入 ・皮膚への付着 ・眼への飛び散り ・針刺し ・薬剤の付着した手から の経口摂取 ・便、尿、吐物への接触 ・薬剤付着リネン類への 接触 運搬・保管 与薬 (点滴・注射・内服など) こぼれた薬剤の処理 付着物の廃棄 排泄物の取扱い リネン類の取扱い 在宅における看護 表2 抗がん剤の職業性曝露の機会

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4 ディカルスタッフの安全を高めたバイアルの開発に力 を注いで欲しいと思います。 4. 残薬や抗がん剤付着物などの破棄時  抗がん剤の残薬、調製時に使用した器材、使用後の輸 液セット、薬液が汚染したシートやアルコール綿などを 蓋のないゴミ箱に破棄すると、その中で薬剤がこぼれて エアロゾル化するリスクがあります。内服抗がん剤の PTP 包装やスティック包装なども注意が必要です。抗が ん剤が付着したものを破棄する時には容器に必ず抗が ん剤が付着していることを明記すべきであり、廃棄物処 理業者に対する曝露予防に対しても配慮が必要となり ますが、現在のところこれらに取り扱いに関する法的な 強制はありません。 5. 排泄物の取り扱い時    抗がん剤治療終了後 48 時間は体液中に薬剤が残存し ている可能性が高いため、治療を受けた患者さんの排泄 物(尿、便、吐物など)によって、抗がん剤の曝露を受 ける危険性があります。そのため、患者さんのオムツ、 蓄尿バック、ストーマパウチなどを通常の破棄方法で取 り扱うと、抗がん剤の飛び跳ね、こぼれ、エアロゾル化 などにつながる可能性があります。 6. リネン類の取り扱い時  排泄物と同様、抗がん剤治療終了後 48 時間は体液中 に薬剤が残存している可能性が高いため、治療を受けた 患者さんの体液が付着したリネン類を素手で取り扱う と、抗がん剤に曝露する危険性があります。  病棟での抗がん剤の調製や予薬作業、抗がん剤治療患者 のケアはほとんどが看護師の業務であることから、看護師 はメディカルスタッフの中でも抗がん剤に曝露する機会が 最も多い職種といえます。しかし、現場の医師、看護師の 中には抗がん剤曝露の危険すら正しく認識していない人た ちがたくさんいるのが現実です。実際に私も研修医時代に 病棟で眠い目をこすりながら抗がん剤の調製を行っていま したが、今考えると曝露予防対策は全く実施できていませ んでした。残念ながら、その当時抗がん剤の曝露予防教育 は全くされていませんでした。しかし、現在はそれではい けません。抗がん剤治療を行っている患者さんに関わるす べてのメディカルスタッフは職業性曝露のタイミングにつ いてしっかり理解していないと職業性曝露の予防はできま せん。また、すべてのメディカルスタッフは、どの患者さ んが抗がん剤治療中であるのかを、知っていなければなり ません。そして、抗がん剤治療終了後 48 時間は体液の扱 いに注意する必要があるのです。医師、看護師、薬剤師だ けでなく、介護士、リハビリセラピスト、管理栄養士、放 射線技師、臨床検査技師、清掃担当者などすべてのスタッ フが注意する必要があります。抗がん剤治療終了後 48 時 間以内の患者さんがこれらのスタッフがそばにいる時に嘔 吐したらどうするでしょう?そのようなときのマニュアル は皆さんの病院にはあるでしょうか?また、そのようなと きに実際にどうするか訓練などしているでしょうか?

■ メディカルスタッフへのアンケート調査

 実際にメディカルスタッフは現時点でどのくらい抗がん 剤の職業性曝露に対して理解しているのかを知るために、 当院で開催している緩和医療学講座 in 時計台記念病院に 参加したメディカルスタッフ 69 名(医師 4 名、看護師 41 名、薬剤師 10 名、リハビリセラピスト 9 名、管理栄養士 4 名、その他 1 名)に対して「抗がん剤の取り扱いに関す るアンケート」調査を実施しましたのでその一部を紹介し ます。「これまでに、抗がん剤の取り扱いに関する教育を 受けたことがありますか」の質問に「ある」と回答したの は全体の 53%で、「スピルキットを知っていますか」の問 いに「知っている」と回答したのは全体の 7% でした。同 時に看護師(41 名)だけに実施したアンケートでは、「抗 がん剤が入った点滴バッグに輸液セットを接続する際、事 前に輸液セットを生理食塩水などであらかじめプライミン グを行ってから接続を行っていますか。」との問いに「はい」 と回答したのは全体の 27%でした。抗がん剤を投与され た患者の排泄物(便・尿・吐物)の取り扱いに関する現状 についてのアンケートでは「抗がん剤投与後 48 時間(薬 剤によっては 72 時間)までを “ 曝露防止策を実行すべき 時間 ” として認識していますか」の問いに「はい」と回答 したのは 12%で、「患者の排泄物を取り扱うときは防護具 を着用していますか。」の問いには約 20%が「はい」と回 答しました。抗がん剤を投与された患者のリネン類の取り 扱いに関する現状についてのアンケートでは「 防護具を 装着して患者のリネン類を取り扱っていますか」の問いに は「はい」と回答したのは 1 名のみでした。在宅の場合の

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5 アンケートでは、「患者の洗濯物は家族の洗濯物と分ける ように指導していますか」の問いに 10%が「はい」と回 答し、「患者の洗濯物は通常の洗剤で 2 度洗濯するように 指導していますか。」の問いには、1 名のみが「はい」と 回答しました。 1. エアロゾルや空気中の微粒子の吸入  前述のタイミングで発生したエアロゾルや微粒子を 吸入してしまうと、気道の炎症、気管支喘息様症状、頭 痛などを起こすことがあります。 2. 皮膚・粘膜の接触による吸収  抗がん剤が直接皮膚や粘膜に付着することにより、付 着部位の皮膚炎・湿疹などの皮膚障害や経皮的な体内 への吸収が起こる危険性があります。また、抗がん剤 が飛び跳ねて眼に付着し、角膜損傷した報告もありま す。皮膚や粘膜・眼などからの抗がん剤の吸収は、抗 がん剤の付着した手から二次的にもたらされることも 多いです。 3. 抗がん剤の付着した食物による経口摂取  抗がん剤の付着した手で飲食したり、食器を扱うこと により、経口的に抗がん剤を摂取してしまうことがあり ます。抗がん剤を経口摂取すると、腹痛、嘔気・嘔吐な どの消化器症状を生じることがあります。実は多くの研 究結果から、病院内が広範囲に汚染されていることが明 らかになっています。気付かないうちに抗がん剤が付着 した手で飲食し、経口摂取によって曝露している可能性 があります。 4. 注射針の針刺し  抗がん剤の調製・混合時に使用した注射針を誤刺した 場合には、軟部組織の蜂巣炎や組織壊死がおこることが あります。

■ 海外・日本における職業性曝露対策

 欧米諸国では、1970 年代から国家が医療従事者のため の抗がん剤取り扱いガイドラインを作成し、その遵守を法 的に義務づけています。アメリカでは労働者安全衛生法の もと、1970 年に連邦政府の一機関として、労働安全衛生 管理局(Occupational Safety & Health Administration:OSHA) が設置され、1986 年に「職場における細胞障害性治療薬 の管理のためのガイドライン」、1999 年に「テクニカルマ ニュアル(危険な薬への職業被曝のコントロール)」を発 表した。さらに、安全キャビネット(biological safety cabinet:BSC)や個人保護具を整備して、被曝対策を行っ たにもかかわらず、職員の尿から抗がん剤が検出されたこ とから、2004 年に NIOSH は警告を発表しました。これは 「医療環境における抗がん薬と他の危険性医薬品への職業 上の被曝防止」に関するもので、この中で「保健医療現場 において危険性医薬品を使用したり、そのそばで作業をし たりすると、皮膚発疹、不妊症、流産、先天性異常、およ び場合によっては白血病その他のがんを発症する恐れがあ る」と警告しています。これらのガイドラインやマニュア ルにより、アメリカの医療現場では、事業者および労働者 の義務と保護が守られています。多くの施設で曝露対策は、 事業者、労働者ともに義務として実施されています。また、 米国がん看護学会(Oncology Nursing Society:ONS)も Chemotherapy & Biotherapy Guidelines や Safe Handling of Hazardous Drugs などを発行し、看護師の職業性曝露 予防の教育と指針を示しています。  一方、日本ではがん化学療法が頻繁に行われている今日 でも、国策としての抗がん剤の職業性曝露予防対策は明確 とはなっておらず、日本病院薬剤師会や日本看護協会が独 自にガイドラインを発行しているといった状況です。 1991 年に日本病院薬剤師会が「抗悪性腫瘍剤の院内取り 扱い指針」を発表していますが、実際に現場で抗がん剤を 扱っている医師、看護師には普及しませんでした。看護に おいては、1990 年代初期より、抗がん剤の取り扱いに警 告を発する報告がされましたが、2004 年になってやっと 日本看護協会より「看護職の社会経済福祉に関する指針― 表3 抗がん剤の曝露経路 吸 入 エアロゾル化した薬剤の吸い込み、ダストの吸い込み 吸 収 直接触れる、あるいは保存容器などの周囲に付着した薬剤と皮膚や目が接触する 摂 取 汚染された食品、飲料水などと一緒に食 べる(手についたあるいは周辺の機器な どに付着した薬剤を飲食時に一緒に食べ てしまう) 針刺し 薬剤で汚染された針を刺してしまう

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6 看護の職場における労働安全衛生ガイドライン」が作成さ れ、抗がん剤の取り扱いに関する内容が盛り込まれました。

■抗がん剤の安全な取り扱いのために

 抗がん剤の安全な取り扱いの原則を以下に示します。 1. 抗がん剤が人体に侵入する経路は、気道、皮膚、口腔が あり、曝露と拡散を避けることによって、抗がん剤の人 体への侵入を防ぐ。 2. 取り扱いの基本は防護であり、上の三つの経路からの侵 入をバリアによって阻止する。 バリアプロテクションに必要な物品は、手袋、マスク、 ガウン、ゴーグル、キャップである。作業用シートや廃 棄物用容器も必要である。 3. 安全キャビネット内での調製が不可欠である。安全キャ ビネットは、エアーバリアが空気の作業者側への流出を 遮断することで、作業者の安全性確保が保証されてい る。作業者への曝露、感染防止と無菌操作が可能なクラ スⅡの安全キャビネットで行うことが望ましい。 4. 抗がん剤の危険性及び取り扱い方法についての十分な 教育や指導が必要である。

■ PPE(Personal Protective Equipment:

  個人防護具)

 PPE には、手袋、マスク、ガウン、ゴーグル、キャップ、 シューカバーなどがあります。PPE 装着時の動きにくさや、 経済的な問題、曝露予防の不確かな知識から感染防護具な どの代替品を使用している場合もあり、十分な曝露予防効 果が得られていない場合もあります。PPE を装着する必要 があるのは、静脈からの注射針の挿入・抜去、薬液の注入、 アンプルオープン、シリンジのエアー抜き、抗がん剤の投 与、薬剤バッグの交換、チューブのプライミング、容器か らの薬液の漏れ、抗がん剤に汚染された物の処分、48 時 間以内に抗がん剤を投与された患者の排泄物処理、スピル などの行為を実施する場合です。実践に際しては、PPE の 正しい装着方法について日頃から訓練し、意識を高めるこ とも大事と考えます。

■ 手袋

 サイズが合っているもので、薬剤の透過性が低いラテッ

ASTM D6978-05 Standard Practice for Assessment of Resistance of Medical Gloves to Permeation by Chemotherapy Drugs

浸透時間 パープルニトリルエクストラ 240 分以上 硫酸ブレオマイシン 15.0mg/ml ゲムシタビン 8.0 mg/ml ブスルファン 6.0 mg/ml イダルビシン 1.0mg/ml カルボプラチン 10.0 mg/ml イホスファミド 50.0 mg/ml シスプラチン 1.0 mg/ml イリノテカン 20.0 mg/ml シクロホスファミド 20.0 mg/ml 塩酸メクロレタミン 1.0 mg/ml 塩酸シタラビン 100.0 mg/ml メルファラン 5.0 mg/ml ダカルバジン 10.0 mg/ml メトトレキサート 25.0 mg/ml 塩酸ダウノルビシン 5.0 mg/ml マイトマイシン 0.5 mg/ml ドセタキセル 10.0 mg/ml ミトキサントロン 2.0 mg/ml 塩酸ドキソルビシン 2.0 mg/ml パクリタキセル 6.0 mg/ml エピルビシン 2.0 mg/ml リツキシマブ 10.0 mg/ml エトポシド 20.0 mg/ml チオテパ 10.0 mg/ml フルダラビン 25.0 mg/ml トリセノックス 0.1 mg/ml 5- フルオロウラシル 50.0 mg/ml 硫酸ビンクリスチン 1.0 mg/ml 30.7 分 カルムスチン 3.3 mg/ml 図2

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7 クス、ニトリル、ポリウレタンなどの素材を使用すること が望ましいです。ただし、ラテックスは過敏症のリスクも あるので、注意が必要です。手袋に付着しているパウダー は汚染物質を吸収するため、パウダーフリーでディスポー ザブルであることが重要です。抗がん剤を取り扱う全ての 過程において、手袋を 2 重に着用することが推奨されてお り、ガウンの袖口の下と上に1枚ずつ着用し、薬剤との接 触を可能な限り防ぐ必要があります。手袋は行為ごとに交 換することが望ましいですが、薬物が付着あるいは破損、 装着してから 30 分が経過した場合はすみやかに交換する こと、手袋を着用していても極少量の薬液汚染があること を考え、脱いだ後は必ず手洗いすることが重要です。米国 政府はがん化学療法に使用されるために販売されるグロー ブに一定の基準を要求しており、様々ながん化学療法剤に 対する耐浸透テストを実施しています。今後は日本でも明 確な基準を設けるべきと考えます。キンバリークラークの KC500 パープルニトリルエクストラは図 2 の試験をクリ アしており、米国労働安全衛生局(OSHA)、米国医療薬 剤師会(ASHP)、米国腫瘍学看護学会(ONS)などが定め ている薬剤取り扱いガイドラインに適合(図 3)しており、 抗がん剤ミキシング時のダブルグローブアウター用として 推奨できます。また、インナー用としては図 4 の耐浸透テ ストを行っている KC300 スターリングニトリルエクスト ラが適していると考えられます。

■ マスク

 NIOSH は抗がん剤の曝露予防に対して N95 規格を満た すマスクを推奨していますが、装着時の呼吸困難などの使 いにくさの問題や経済的にもすべての行為で使用するには 難しいのが現状です。そのため、抗がん剤ミキシング時と 浸透時間 スターリング、スターリングエクストラ 240 分以上 シスプラチン 1.0 mg/ml 5- フルオロウラシル 50.0 mg/ml シクロホスファミド 20.0 mg/ml イホスファミド 50.0 mg/ml ダカルバジン 10.0 mg/ml ミトキサントロン 2.0 mg/ml 塩酸ドキソルビシン 2.0 mg/ml パクリタキセル 6.0 mg/ml エトポシド 20.0 mg/ml 硫酸ビンクリスチン 1.0 mg/ml ASTM D6978-05 Standard Practice for Assessment of Resistance of Medical Gloves to Permeation by Chemotherapy Drugs

図4 図3 Oncology Nursing Society (ONS)1 American Society of Health System Pharmacists (ASHP)2

Occupational Safety and Health Administration (OSHA)3 パウダーフリー 適 適 適 ラテックスグローブの使用 適 適 適 ガウンのカフをカバーする 長いグローブの使用 適 適 適 ニトリルグローブの使用 適 適 (記述なし) 2 重グローブ 適 適 適 プラスチック、ビニール手袋の使用 不適 不適 (記述なし) グローブ交換 1 時間ごと 30 分ごと 1 時間ごと 手洗い 着用前&着用後 着用前&着用後 着用前&着用後

1 Oncology Nursing Society (ONS): Safe Handling of Cytotoxic Drugs, Independent Study Module 1997.

2 American Society of Health-System Pharmacists (ASHP): ASHP Guidelines on Handling Hazardous Drugs. Am J Health-Syst Pharm. 2006; 63:1172–93.

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8 毒性の強い薬剤がスピルした場合に着用するのが現実的で す。紙マスクの推奨はなく、サージカルマスクではエアロ ゾルや微粉末の吸収防止には十分な効果が得られないとし ています。しかし、状況に応じて、ディスポーザブルで厚 手の不織布タイプやサージカルマスクの 2 枚重ねなどで対 応することもあります。十分に鼻と口を被っていることが 重要です。

■ ガウン

 ポリウレタンでコートされた低浸透性の素材が望ましい です。ガウンは隙間のないように着用する必要があり、長 袖、カフ付きでサイズが合っている、背中が開いていて体 温調節ができるなど、心地よく着られるガウンを選出する ことが大切です。ガウンはディスポーザブル製品を使用し、 明らかな汚染があった場合や破損したとき、行為が終わっ たときなどに交換します。ガウンの装着は患者さんとのコ ミュニケーションの障害となることもあるので、十分な説 明をして着用することが大切です。コンフォート防水ガウ ンは、医療従事者が多量の体液や液体から守ることだけで はなく、特定の薬剤の危険を伴う処置(薬剤の調剤、患者 への投与、処置など)も考慮した製品で、図 5 の化学療法 薬剤浸透試験を行っている商品です。

■ ゴーグル

 ゴーグル、透明プラスチック製フェイスシールド(ディ スポーザブル)などを装着し、薬剤の飛散から目を保護し ます。主に調剤時、薬剤をこぼした時の処置時に着用しま す。もともと眼鏡を使用している場合でも保護メガネを装 着することが推奨されています。

■ キャップ

 頭髪をすべて被うサイズで、ディスポーザブル製品を使 用します。キャップの目的は薬剤の頭髪への飛散防止と頭 髪の落下を防ぐためですが、がん化学療法薬耐性を試験し たものはありません。キャップは調剤、薬剤の漏れが起こっ たときに着用する必要があります。

■ 排泄物処理

 薬剤毎に体外への排泄時間あるいは期間は異なります が、一般的に 48 時間以内に抗がん剤治療を受けた患者さ んの血液、吐物、尿、便などを扱う場合は PPE を着用し、 慎重に処理する必要があります。ただし、抗がん剤の種類 によっては、排泄までの持続時間が長いものがあります。 患者さんの周囲への曝露を最小限にするためにも、可能な 限り治療中の患者さんには直接トイレまで出向いてもら い、排泄してもらうことが望ましいです。トイレは抗がん 剤を服用している患者さん専用のものとして、排泄物を流 すときは 2 回流してもらう。排尿が自立している男性患者 の場合、立位で排泄すると尿が飛び跳ねる危険があるので 座位での排泄としてもらう必要もあります。便器などを清 掃する場合は防護具を装着し、2%次亜塩素酸ナトリウム を用いて行います。清掃担当職員が行う場合は、曝露防止 の必要性と具体的な方法について十分説明する必要があり ます。

■ リネンの処理

 患者さんが使用したリネンに体液が付着した場合は PPE を装着し、パッドなどをして吸収させ、汚染を拡散させな いようにします。リネンを洗濯する場合はグローブを装着 し、ほかの洗濯物とは分別して、通常の洗剤で 2 回洗いま す(洗濯機を使用)。すぐに洗濯ができない場合はナイロ ン袋に入れて、密閉した状態で保管しますが、抗がん剤の 付着した汚染物が入っていることがわかるように、専用ラ ベルを貼った水溶性・不透過性のランドリーバックに入れ 浸透時間 コンフォート防水ガウン 240 分以上 シクロホスファミド 20.0 mg/ml 5- フルオロウラシル 50.0 mg/ml 塩酸ドキソルビシン 2.0 mg/ml パクリタキセル 6.0 mg/ml エトポシド 20.0 mg/ml メトトレキサート 25.0 mg/ml ASTM F739-99a Standard Test Method for Permeation of Liquids and Gases through Protective Clothing Materials under Conditions of Continuous Contact

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9 ます。なお、洗濯担当従業員がいる場合には、その従業員 に対しても曝露防止の具体的方法について十分説明しま す。ちなみに抗がん剤治療を行っている患者さんに適した リネン類は、防水性のあるマットレスカバーや、プラスチッ クでコーティングされた枕、非吸収性のクッションなどで す。失禁・嘔吐している患者さんには、使い捨てのリネン を使用するべきです。廃棄する場合は、がん化学療法薬専 用廃棄ボックスに捨てます。なお、在宅におけるリネン類 の取り扱いの手順としては、患者の排泄物や体液などで汚 染された洗濯物は直接洗濯機に入れ、通常の洗剤を用いて 2 度洗濯します。家庭での洗濯物とは分けて洗います。

■ スピル(漏出)対応

 抗がん剤を取り扱う全過程で薬剤のスピルが起こる可能 性があるため、すぐに利用できるスピルキット(図 6)を 準備しておくことが推奨されます。そして、誰もがスピル への対応ができるように、日頃から訓練しておく必要があ ります。抗がん剤がスピルしてしまった場合には、できる だけ汚染を拡散させないようにすることが大切であり、可 能な限り漏出物の洗浄を行います。また、他者への曝露を 防ぐために、警告ボードで警告する必要があります。

■ 在宅における対策

 がん化学療法は入院から外来にシフトしてきており、外 来で抗がん剤治療を受ける患者さんは増加しています。大 腸がんでは自宅でもインフューザーポンプを使用し、患者・ 家族が抜針を行うこともあります。このような場合には、 自宅でも抗がん剤の漏出や投与終了後の抗がん剤が付着し た廃棄物、患者さんの排泄物などにより、家族への曝露が 起こり得ます。もちろん、これまで話したように、自宅で 家族が患者さんの排泄物や吐物を取り扱う際には、曝露予 防対策を行う必要があります。対策としては、前述のとお りですが、患者・家族に説明する際には不安や誤解を与え ないような配慮が必要であり、正しい知識と対策をきちん と説明することがとても重要となります。そのうえで、患 者さんの生活環境や家族の協力体制などの個別性を考慮す べきです。 図6 スピルキット この他に、密閉可能な危険物廃棄袋、警告表示カード、が必要 グローブ フェイス シールド マスク シューカバー ガウン 吸水シート タオル (ディスポ) ほうき& ちりとり キャップ

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■ 実際の例

 実は私が最近職業性曝露の問題を意識したのは、胃瘻の 患者さんに胃瘻から抗がん剤を投与する際の方法をチェッ クしていた時でした。患者さんはボタン型の胃瘻を使用し ていたため、毎回同じ接続チューブを使用していました。 簡易懸濁法をおこない、カテーテルチップは使い捨てにし ていましたが、看護師は PPE を装着せずに他の薬剤と同 様に簡易懸濁を行い、薬を投与していました。抗がん剤を 投与しているというリスクを全く気にしていない様子でし た。もちろん、接続チューブは個別に次亜塩素酸ナトリウ ムで消毒していましたが、消毒の際の PPE は簡易グロー ブだけでした。では、胃瘻から抗がん剤を投与する場合の 正しい方法について考えてみましょう。まず、胃瘻カテー テルは接続チューブを必要としないチューブタイプのカ テーテルとするのがよいでしょう。それは、抗がん剤が付 着した可能性のある接続チューブを毎回消毒して再利用す ることはかなりのリスクを伴うためです。抗がん剤投与を 開始する前に、胃瘻カテーテルをチューブタイプへ交換す ることを勧めるべきです。次に薬を準備する際には、まず、 準備する前に曝露予防のために PPE(マスク、手袋、ゴー グル、ガウン、キャップ)を装着します。抗がん剤は簡易 懸濁法で投与することになりますが、薬剤を溶解する容器 や投与するカテーテルチップはすべて一度きりの使い捨て とします。

■ 事業者の理解

 安心してがん医療に従事するためにはメディカルスタッ フの安全は最優先に考えられるべきです。しかし、残念な がら現在の日本では大事な情報はあまり伝えられず、自分 の身は自分で守らなければならないのが現状です。少なく ともがん医療を専門にやっているメディカルスタッフは抗 がん剤の職業性曝露の危険性をしっかり認識し、スタッフ 一人一人が声をあげて、病院に対して職業性曝露の問題を 啓蒙していく必要があります。がん医療に関わる医療機関 は抗がん剤の曝露の可能性をしっかり把握し、患者さんへ の影響はもちろん、患者さん家族、メディカルスタッフの 健康を守ることをもっと重視した体制をとるべきと考えま す。大事なことは、がん化学療法チームのリーダーが安全 ながん化学療法の実施について、事業者にきちんと説明し、 理解を得ることです。

■ 医療施設管理部門の役割

 抗がん剤の職業性曝露は、薬剤の混合・調製や与薬に関 わる医師・看護師・薬剤師だけではなく、患者と接する機 会のある管理栄養士、リハビリセラピスト、介護士、臨床 検査技師、放射線技師や医療廃棄物処理を担当する病院職 員、外部の処理委託業者についても危険があり、様々な医 療関係者への配慮も重要となります。現状では国家の施策 がないため、各医療施設管理部門の取り組みが、抗がん剤 の取り扱いに関わるメディカルスタッフの健康に影響しま す。管理部門が「抗がん剤の職業性曝露予防」のために取 り組むべき事項(表 4)を示します。 1. 院内取り扱いガイドライン・マニュアル作成  ガイドラインは、主として基本的注意事項を踏まえた 業務指針のことで、マニュアルは指針を具体的な手順な どで示した手引き書です。施設としてガイドラインを明 確とし、各部署の特徴に応じて、実用性のあるマニュア ルを作成する必要があります。さらに、作成されたガイ ドライン・マニュアルの活用を抗がん剤を取り扱う全職 員に促し、活用の状況についてしっかり確認することが 重要となります。 2. 安全チェックリスト作成  抗がん剤の取り扱いが安全に実行されたかを取り扱 い者が確認できるように、作業ごとにチェックリストを 作成し、チェックリストに基づき作業の確認するように 習慣化できれば有効です。さらに、チェックした結果を 管理者が確認し、安全な作業の遂行を評価する際にも利 用できます。 表4 医療施設管理部門の職業性曝露予防 における役割

1

院内取り扱いガイドライン・マニュアル作成

2

安全チェックリスト作成

3

食職員に対する教育

4

職員の健康管理

5

管理部門による監視体制の整備

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11 3. 職員に対する教育  抗がん剤の職業性被曝から身を守るためには、正しい 知識を持って対策を立てることが重要です。抗がん剤治 療を行う患者さんに関わる全職員に対して、抗がん剤に よる職業性曝露予防のための教育と訓練を定期的に実 施する必要があります。特に、施設外に持ち出される廃 棄物の処理について、その方法を徹底させるための説明 や教育を行う社会的責任が医療施設にはあります。 4. 職員の健康管理  抗がん剤を扱う職員に対しても、放射線の場合と同じ ように職業性曝露に配慮した健康管理がなされるべき ですが、日本では行われている施設はほとんどないのが 現状です。職員の健康管理では特に妊娠への配慮が大切 です。妊娠の可能性のある職員や妊娠中の職員(妻がそ のような場合の男性職員も含む)には、抗がん剤の取り 扱いをさせない人事管理が必要です。妊娠初期の 3 カ 月までは、母体が抗がん剤に曝露すると、胎児の発達や 臓器形成に影響することから、この点は十分に配慮すべ きと考えます。 5. 管理部門による監視体制の整備  抗がん剤の取り扱いや抗がん剤が付着した廃棄物に 関する国策がない日本においては、施設ごとに行う独自 の取り組みが、職員を職業性曝露から守る方策となりま す。施設独自の取り組みには、いろいろな制約があると 考えられますが、この問題は曝露を受ける職員のみなら ず、子孫の代への影響もありえる問題であり、管理者と しての責任はかなり重大です。監視内容や方法は各々の 施設で設定されるものですが、①抗がん剤の職業性曝露 の可能性のある職員の名簿を保管すること、②抗がん剤 を取り扱う職員に対し、抗がん剤への接触時間、PPE の 使用状況の調査、抗がん剤の曝露に関連する健康問題に ついての調査すること、③実際の抗がん剤準備や与薬の 作業状況、作業場所などを定期的に監視すること、抗が ん剤の保管場所や運搬法の確認、④院内の抗がん剤によ る汚染状況のチェック、など実施すべきと考えます。

■ おわりに

 今回この原稿を書くにあたって、抗がん剤の曝露予防対 策の実態を様々なところで調査してみましたが、感染対策 と比べると比較にならないほど遅れていると言わざるを得 ない状況でした。このまま今の状態でがん化学療法を進め ていくのは、非常に問題があると考えます。がん医療に関 わるメディカルスタッフの皆さんは、今一度自分の施設に おける現状を把握し、まずできることから曝露予防対策を おこなっていく必要があるでしょう。ただ、そうのんびり しているわけにもいきません。二人に一人ががんになり、 三人に一人ががんで亡くなる時代です。その中で、今の治 療を行いながら、どの病院においても、さらに在宅に至る まで曝露予防対策を広めるためには、皆さん一人一人や行 政の力も必要となります。また、抗がん剤を扱う製薬会社 は抗がん剤の毒性や取り扱う際の危険因子をしっかり報告 することや、安全な調製方法や投薬方法、職業性曝露の予 防についてもっと啓蒙すべきと考えます。さらに、がん医 療に携わるメディカルスタッフはまず声をあげ、問題点を 指摘し、しっかりとしたマニュアルを整備し、「抗がん剤 の曝露予防」をもっと啓蒙していかなければならないと思 います。それなくして、質の高い安全ながん医療は成り立 ちません。皆で現在の日本のがん医療の問題を解決してい きましょう! 本内容は著者の臨床上の経験に基づき説明されております。製品の取り扱い方法については、必ず添付文書をご確認ください。 社会医療法人社団

カレスサッポロ 時計台記念病院

所 在 地 札幌市中央区北1条東1丁目2-3 診療科目 内科・循環器内科・リウマチ科・消化器内科・整形外科・形成外科・ 眼科・産婦人科・リハビリテーション ホームページ http://www.tokeidaihosp.or.jp

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12 発行元:

キンバリークラーク・ヘルスケア・インク

〒220-8115 横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー Tel. 0800-100-5100(フリーコール) KCJ0094 12SMKT024-T KC500 パープル エクストラ スターリング エクストラKC300 スターリングKC300

参照

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