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(1)

平成

29

年度近畿大学理工学部理学科物理学コース

卒業研究発表会

平成

30

2

7

(

) 09:00

17:40

プログラム

08:55 31号館501教室 全員集合 09:00∼09:05開会の辞:加藤先生

31 号館 501 教室

• 9:05∼10:15 午前の部1 (座長:増井) -01生物物理学研究室(矢野:5名) (10:15∼10:25休憩) • 10:25∼11:50午前の部2 (座長:堂寺先生) -02物性理論研究室(笠松:6名) (11:50∼13:00休憩) • 13:00∼14:10午後の部1 (座長:矢野先生) -03ソフトマター物理学研究室(堂寺:5名) (14:10∼14:20休憩) • 14:20∼16:10午後の部2 (座長:松居先生) -04固体電子物理研究室(増井:4名) -05量子制御研究室(近藤:4名) (16:10∼16:20休憩) • 16:20∼17:30午後の部3 (座長:笠松先生) -06凝縮系物理学研究室(松居:5名)

31 号館 502 教室

• 09:05∼10:15午前の部1 (座長:太田先生) -01宇宙論研究室(井上:5名) (10:15∼10:30休憩) • 10:30∼11:30午前の部2 (座長:井上先生) -02素粒子論・重力理論研究室(太田:4名) (11:30∼13:00休憩) • 13:00∼14:00午後の部1 (座長:石橋先生) -03原子分子物理学研究室(日下部:3名) -04素粒子実験研究室(加藤:1名) (14:00∼14:15休憩) • 14:15∼15:50午後の部2 (座長:加藤先生) -05素粒子・宇宙物理学研究室(千川:7名) (15:50∼16:05休憩) • 16:05∼17:15午後の部3 (座長:千川先生) -06一般相対論・宇宙論研究室(石橋:5名) • 17:30∼17:40総評:近藤先生,日下部先生(31号館501教室) • 17:40閉会の辞:増井 発表時間10分,質疑応答3分。交代30秒。 ベルは発表経過時間8分,10分,13分。ベル係は発表研究室の次の研究室が担当。 発表最後の研究室のベルは発表最初の研究室が担当。 全3,4年生及び教員は8時55分までに501教室に集合。3,4年は終日参加すること。 • 17:40∼ 卒業研究判定会議

卒業研究発表祝賀会 18:30 ∼ 20:00 カフェテリア・ノベンバー

(11 月ホール地下)

• 18:30開会の辞 乾杯: 加藤先生 歓談 • 20:00閉会の辞

(2)

生物物理学研究室

小林 修広

リン脂質を展開した水表面で観測される表面張力の自発振動

流体表面の温度差や表面張力の差によって表面上の物質が移動し対流が発生する。この対流をマランゴニ 対流という。この研究は生物の自発振動(心臓の鼓動など)を理解するために、非生物の自発振動を解明す るという目的で研究されている。先行研究では非生物の自発振動の例として、超純水に非可溶性界面活性剤 を展開させ水中に、可溶性界面活性剤を注入することで表面張力の自発振動(マランゴニ対流)を発生させ、 観測実験を行っている。ここで非可溶性界面活性剤に細胞の構成物質であるリン脂質を使っているのは、生 物の自発振動のモデルとなるからである。本研究では生物の自発振動の理解に近づくために界面活性剤の種 類を変えて、先行研究と違った条件でマランゴニ対流の観測を行った。

小川 雄輔

水表面上リン脂質単分子膜の相変化

リン脂質とは両親媒性をもち、水に全く溶けない脂質のことである。水面上にリン脂質溶液を一滴落とす と、すぐに広がり表面にリン脂質の薄膜ができる。薄膜は薄い極限では二次元的な気体であると考えること ができる。気体に相当する状態である膜のことを気体膜といい、気体膜をさらに圧縮すると液体には2つの 膜、液体拡張膜と液体凝縮膜が存在する。先行研究では、不溶性界面活性剤(リン脂質)を水面に展開し、水 中に可溶性界面活性剤の液滴を作ることで表面張力の自発振動が起きることがわかっている。本研究では表面 張力の自発振動条件を調べるために気体膜である状態からリン脂質膜が崩壊する崩壊膜まで観測した。表面 張力の自発振動が発生するときは水面に展開したリン脂質の膜が液体拡張膜の時、発生することがわかった。 自発振動の条件である、分子が移動できる状態であることと表面張力の差が司用性界面活性剤と比べて大き いという条件にあっている。

吉原 知宏

リン脂質を展開した水表面でのオクタノールの自発運動

液体表面の濃度勾配や温度勾配によって表面張力の局所的な差が生じ、その表面張力の違いにより起こる 対流のことをマランゴニ対流という。可溶性界面活性剤の液滴を水中に保持すると、界面活性剤は水表面に 拡散し、マランゴニ対流が発生する。あらかじめ水表面に少量の不溶性界面活性剤(リン脂質)を展開して おき表面張力を観察すると振動現象がみられる。本研究では表面張力の自発振動の発生メカニズムを解明す るために、リン脂質を展開した水表面に界面活性剤の液滴を付着させ、液滴の自発振動の観察を行った。そ の結果、リン脂質を展開した表面張力とリン脂質を展開した水表面に界面活性剤を付着させたときの表面張 力の差がある時では表面張力の自発振動が起こり、表面張力の差がない時では表面張力の自発振動が起こら ないことが分かった。

多田 昂史

水表面で観測されるマランゴニ対流の流速の測定

超純水中に可溶性界面活性剤の液滴を作るとごく少量の可溶性界面活性剤が溶け出し、液滴を中心に水面 上で広がりをみせる。この際濃度勾配によっておこる流れをマランゴニ対流という。水面上で広がった可溶性 界面活性剤は濃度が高い方から低い方へ拡散する流れが起こり、中心の濃度が低くなると中心に向かって流 れが発生し、また中心の濃度が高くなると拡散する流れの発生を繰り返す。この水面上の流れに注目し、先 行研究では容器の半径が大きければ拡散する流速は大きく、液滴の深さが深ければ拡散する流速は小さくな ることが示されている。本研究では容器の半径,深さ、液滴の深さを一定にし、表面に展開する不溶性界面活 性剤(用いるのはDSPC)の量を変え、流速を観測し関係性を調べた。

川端 ゆり子

赤外分光法による様々な溶媒においてのタンパク質の変性構造の観察

タンパク質の構造には螺旋構造のαヘリックス構造とシート状のβシート構造がある。赤外分光法によっ てタンパク質を測定すると、ペプチド分子内のC=Oの伸縮を測定することができる。ここではC=Oは二 原子分子の調和振動子と捉えることができる。αヘリックス構造とβシート構造はどちらもC=Oが存在す るがその周りに繋がる原子はお互いに違うのでC=O二原子振動子の振動数は異なる。そのため振動エネル ギーも変わる。以上よりαヘリックス構造とβシート構造では吸収する光の波長が異なるため、タンパク質 中の構造解析ができるのである。実験ではαヘリックス構造の含有量が高いリゾチームに変性剤を加え、赤 外分光法によってαヘリックス構造がβシート構造に変化する変性の過程を観測した。また、溶媒として超 純水、水道水、活性水素水を用い比較を行った。        

(3)

物性理論研究室

三野 巧

物性物理学におけるマヨラナ粒子

マヨラナ粒子とは、生成消滅が同一の演算子で表される中性フェルミ粒子を指す。マヨラナ粒子は素粒子 の分野で存在が予言されているが、その観測はいまだされていない。一方、物性の分野でマヨラナ粒子と同 様の性質を示す状況が注目を浴びている。物性で現れるマヨラナ粒子とは、トポロジカル超伝導体の表面で 電子が同様の性質を示すことに対応している。このマヨラナ粒子は非可換統計性や非局所的相関といった性 質があり、量子コンピュータへの応用が期待されているものである。今回はマヨラナ粒子が現れる条件や非 可換統計性、非局所的相関について確認する。さらに量子コンピュータで用いられる量子ゲートをマヨラナ 粒子の交換演算子で表すことを試みる。

森川 理一郎

2 次元アンチドット型周期ポテンシャル中のボース凝縮体における超流動性

京都大学のグループではポテンシャル障壁が規則的に配列し、エネルギー極小が多重連結しあった、「2次 元アンチドット型周期ポテンシャル」内へボース凝縮体を流し込み、非定常状態やより一般には熱的に非平 衡な物理状態を生成させ、量子渦生成などの詳細を解明する試みが行われた。この実験を理論的に明らかに するために数値実験を行った。その際に京都大学の実験を1次元周期ポテンシャルで行った先行研究を練習 として数値実験し、同様の結果が出るかを確認した。本研究では、2次元周期ポテンシャルの場合において ボース凝縮体を流し込んだ時の量子渦の生成から消滅までを観測し、その詳細を調べた。本発表では本研究 の基礎的な部分と自分の計算結果と考察を述べる。

榎本 峻

ボース凝縮体を用いた音響ブラックホールの実現

ブラックホールとは、遠方にいる観測者にいかなる信号も送ることのできない時空領域である。このよう な時空は、無限遠方の観測者と因果関係のないブラックホール領域と因果関係のある外部領域に分けられる。 この二つの領域の境界は事象の地平線と呼ばれている。ブラックホールの外部に物体を置いて自由落下させる と、その物体はブラックホールに向かって落ちていき、やがて事象の地平線を通過してブラックホール領域 に到達する。近年、超流体を用いることによってブラックホールなどの曲がった時空状の量子力学的効果を 実験的に検証できると提唱されてきた。流速が音速を超える点は音波に対する事象の地平線の役割を果たし ていて、例えば、ブラックホールでのホーキング輻射を流体を用いてシミュレートできると考えられる。本 研究では、ラバール管を流れる超流体を用いて以上のことを示す。

阪下 康平

2成分ボース・アインシュタイン凝縮体中における渦格子の蜂の巣構造

先行研究では、2成分のボース・アインシュタイン凝縮体における量子渦状態の構造について議論し、回転 ポテンシャル中の量子渦状態を回転振動数と異成分原子間相互作用を可変パラメータとして調べ、相図を完成 させている。本研究では、2成分ボース・アインシュタイン凝縮体中の量子渦状態の格子形成を述べる。量子 渦状態を回転系における時間に依存しない2次元グロス・ピタエフスキー方程式の数値シミュレーションに基 づいて考察した。量子渦格子構造において、同成分と異成分の原子間相互作用比が1に近い時、渦格子が蜂の 巣構造とストライプ構造となる。先行研究では、三角格子、四角格子が幅広いパラメータ領域で安定になる ことが知られているが、なぜ渦格子が蜂の巣構造とストライプ構造になるのか、計算結果と考察を述べる。

西村 太一

スピン軌道相互作用をもつボース凝縮体における基底状態相

本研究では、レーザー誘起スピン軌道結合を有する2成分(擬スピン1/2)アインシュタイン凝縮(BEC) のパラメータに依存する3つの異なる基底状態相を研究した。原子BECの研究は古くから行われてきたが、 スピン軌道結合をもつBECは全く新しい研究である。実験では、スピン軌道相互作用は原子の異なる超微細 状態間のレーザー誘起ラマン相互作用によって合成することができ、Rashba型スピン相互作用とDresselhaus 型スピン相互作用の等しい組み合わせが実現する。2次元Gross-Pitaevskii方程式の数値シミュレーションか らスピン軌道結合をもつBECの3つの基底状態相として知られるストライプ相、平面波相、混合相が現れ た。これらの相は、ラマンレーザービームの強度に依存するラビ周波数を変化することによって現れること がわかった。

岡 裕樹

量子コンピュータを用いたショアの素因数分解アルゴリズムの検証

RSA暗号は重い素数どうしの積を素因数分解することが古典コンピュータでは困難なことにより守られて いる。しかし量子コンピュータではショアの素因数分解アルゴリズムで効率的に素因数分解を行うことがで きることが知られている。IBMクラウド量子コンピュータを用いれば、このアルゴリズムの実装・検証を行 うことができる。本研究では、実際にIBMクラウド量子コンピュータを動かして「6=2×3」の素因数分解を 行ったほか、IBMの量子コンピュータシミュレータを用いて「15=3×5」や「35=5×7」の素因数分解を行う アルゴリズムを作成してシミュレーションにより素因数分解を行うことができた。これらの結果をもとにこ のアルゴリズムに求められる量子コンピュータのビット接合やゲート配置について考察する。                     

(4)

ソフトマター物理学研究室

築地 佳純

高分子モデルによるミセルの構造形成シミュレーション

2種類のモノマーA、BからなるABブロック共重合体は、AとBの長さの比に応じてラメラ、ジャイロ イド、シリンダー、スフィアなどのミクロ相分離構造を形成することが知られている。これらのミクロ相分 離構造の形成に焦点を置いて開発された格子高分子シミュレーション法が「対角線法」である。本研究では、 「対角線法」を用いたシミュレーション実験による、ダイヤモンド構造の形成条件の発見を最終目標としてい る。ダイヤモンド構造の発見には至らなかったが、条件を探る過程において小さな系でA15構造が出現した。 そこで、出現したA15構造の正確さを調べるため、系の大きさを倍にしてシミュレーション実験を行った。 系に含まれる球状ミセルの数をオイラーの多面体定理を用いて調べた結果、A15構造と同じ数の球状ミセル が確認できた。

太田 勇輝

ハードコア-ソフトショルダー粒子系のつくる黄金樽タイリング構造

準結晶は金属だけでなく、デンドリマーミセルやブロック共重合体ミセルなど多くのソフトマターでも観 察されてきた。そうした研究によって、ミセルが準結晶形成することが明らかになっている。実際に、本研 究室では2つの長さスケールを持つハードコア-ソフトショルダー粒子系のシミュレーションによって、新た な構造を多数報告している。その中で、コアシェル比を黄金比に選ぶと正10角形相が形成されるが、さらに コアシェル比を黄金比の2乗に設定したとき、正5角形の配列からなり、粒子が樽のように並ぶ黄金樽タイ リング構造が発見された。本発表では黄金比と正5角形および2種類(シングル、ダブル)の黄金樽タイリ ング構造との関係を解説し、その熱力学的安定性を確かめるための体積一定および圧力一定のシミュレーショ ン結果を報告する。また、熱力学的観点から黄金樽タイリング構造の相転移について考察する。

北口 有紀

金属比タイリングについて

準周期タイリングは準結晶と深い関連があり、周期的結晶とは違う独特な性質を持つ。本研究では準結晶 の性質に触れた後、黄金比・白銀比・青銅比と呼ばれる金属比に関連する準周期タイリングについて学んだ。 これらはそれぞれ、10回・8回・6回の回転対称性を持つ準周期タイリングであり、まだこの3つの金属比タ イリングしか発見されていない。それぞれ黄金比に関連し10回対称性を持つ『Penroseタイリング』、白銀 比に関連し8回対称性を持つ『Ammann-Beenkerタイリング』、青銅比に関連し6回対称性を持つ『青銅比 タイリング』が知られている。また、タイリングの記述方法をより深く理解するために高次元法についても 学んだ。これらの成果を報告する。

中蔵 丈一郎

青銅比準結晶から派生する非周期的タイリング構造

近年の研究で、2種類の大きさの正三角形と1種類の長方形で構成される青銅比準結晶タイリングが発見 された。ペンローズタイリングが黄金比の自己相似性を示すように、このタイリングは青銅比の自己相似性 を示す。この青銅比準結晶タイリング構造を組み替えると、全く新しい無理数が現れる非周期的タイリング を構築することができる。この組み替えには様々なパターンがあり、それぞれ異なった無理数の自己相似性を 示す。本発表ではこれらの非周期的タイリングについて議論し、その自己相似性について述べる。また、こ れらのタイリングは6次元超立方格子の特定の格子点を平面に射影することで得ることができる。その特定 の格子点を選び出す領域である「窓」の解析も高次元法により試みた。そして、生成されるさまざまな非周 期的タイリングの規則性を発見し、一般式を与えることにも成功した。これらの結果を報告する。

川邉 司

青銅比準結晶タイリングの電子状態

準結晶の構造モデルとなるタイリングの中には、金属比に関係するタイリングが存在する。代表的なのは、 黄金比に関連するペンローズタイリング(PT)である。その電子状態については、これまで多くの数値計算 シミュレーションがなされ、ゆっくりとした減衰をする臨界状態、電子が甚だしく局在した閉じ込め状態・ひ も状態の波動関数が存在することがわかっている。しかし、近年、青銅比に関連する青銅比準結晶タイリン グ(BMQCT)が新たに発見された。本研究ではBMQCTの近似結晶のタイリングの電子状態について、頂 点モデルを採用し、強束縛近似を用いて数値計算を行った。その結果、その波動関数にはPTと同様に臨界 状態の波動関数が確認された。また、そのエネルギースペクトルには縮退がみられ、閉じ込め状態の波動関 数も確認された。直交補空間での波動関数の分布をみることで、閉じ込め状態・臨界状態の波動関数とタイ リングの局所環境との関係性が明らかになった。        

(5)

固体電子物理研究室

田中 将也

YBCO の Ni-Zn 置換効果

YBa2Cu3O7−x(YBCO)は、酸素量を調節することにより最高93Kの転移温度を示す高温超伝導体であ る。YBCOの結晶構造の内、Yサイト、Baサイト、Cuサイトのいずれかを元素置換することにより転移温 度が下がる効果が確認されている。一方で、ある触媒研究では、周期表上でRhの両隣に位置するPdとRu の合金がRhとほぼ等価な電子状態を有しているという研究結果が報告されている。ここから類推して、銅酸 化物でもNiとZnのペアがCuと同様の振る舞いをするだろうという予想のもと、YBCO内のCuサイトを NiとZnの二種と同時に置換させた場合にYBCOの転移温度にどのような変化が現れるかを調査した。Ni とZnの影響範囲の違いから主にNi置換濃度を変えながらYBCO試料を複数作成し、物質の同定のために 粉末X線解析、転移温度の決定のために交流磁化率の測定を行った。

平沼 拓也

銅酸化物高温超伝導体 YBa

2

Cu

3

O

7−δ

(YBCO) の Ni-Mg 同時置換効果

Znは高温超伝導体YBCOで転移温度Tcを下げる代表的な置換元素である。本研究室ではNiとZnを同 時置換する研究を行っているが、ZnとMgとでは対破壊効果が似ていて、それらの元素を単独にYBCOに 置換したときの転移温度の低下のさせ方も似ている。しかし、NiとZnのそれぞれの最外殻電子数の合計は、 NiとMgのそれと全く違っている。そこでNiとMgを同時置換した場合、NiとZnを同時置換した場合と どのような違いが現れるかを確かめた。本研究ではMgの置換量を1.0%に固定し、そこにNiを0.0%から 3.0%まで、0.2%ずつ置換量を増加させた試料を作製した。試料を粉末X線回折測定と交流磁化率測定で評価 した結果、Niの置換量が0.0%から0.6%の範囲では、Mgの置換による転移温度の低下を緩和する効果がみ られなかったが、0.8%から3.0%の範囲でその効果が現れ始めた可能性があるデータが得られた。

沖田 大輝

面外乱れを制御した高温超伝導体 Bi2212 の作製

ビスマス系酸化物超伝導体は1986年に発見されて以来盛んに研究が行われており、現在では線材などに使 用されている。その中の一つであるBi2212は結晶構造中のSrO層に隙間が多く、BiイオンをSrO層に呼び 込みやすい。そのため、化学式はBi2+xSr2−xCaCu2O8+δと表記され、x=0.0∼0.2程度の範囲の不定比性が

ある。SrO層に入り込んだBiイオンは超伝導の役割を果たすCuO2面に影響を及ぼすため、Bi2212の転移

温度は不定比性xの値によって変化する。当初の研究目的はBi2212の置換効果だったが、この不定比性によ り意図した試料を作製できなければ置換効果を調べるのは難しい。なので、本研究では固相反応法(電気炉) によるxの値を制御したBi2212の作製を目的とする。作製した試料を粉末X線回折装置や交流磁化率測定 装置を用いて評価した結果、x ∼= 0.05∼0.20の作り分けに成功した。

北森 風馬

銅酸化物高温超伝導体 Bi2212 の単結晶育成

本研究では塩化ナトリウム(NaCl)をフラックスとしフラックス法を用いて、銅酸化物高温超伝導体Bi2212 の単結晶育成を目指した。NaClを用いる利点として安全であること、安く手に入ること、必要な物質と分離 させやすいことが挙げられる。NaClにBi2212をしっかりと溶かし析出させるために、電気炉内で対流が起 きるように電気炉を作成した。また適切な条件を探るために温度・時間・質量比等を考慮し変更していった。 その結果、焼成後のるつぼ内の構造や、酸化ビスマス・銅化合物が析出されること、最高温度が異なっても時 間条件次第では同じような結果になることがわかった。結晶として析出した物質も存在するがそれはBi2212 ではなく、るつぼの表面に単結晶ではないが膜状のBi2212が析出したと考えられる。               

(6)

量子制御研究室

木下 和哉

分子模型及び力学的エネルギー実験組み立てキットの作成

初めに3Dプリンターを使用して分子模型の作成を行い、3Dプリンターの扱い方を身に付けた。この分子 模型は炭素原子60個で構成されるサッカーボール状の構造を持ったフラーレンで、その構造理解を助けるこ とができる。次に、新たな理科教材『力学的エネルギー実験組み立てキット』の作成を行った。この理科教 材を授業に用いれば、生徒たちの理科に関する興味・関心を引くとともに、生徒自らが考え実践する力を養 うことができる。本研究を通して培った力を、私は今後教育現場で生かしていきたいと希望している。本講 演では3Dプリンターの原理と作成した理科教材について述べる。

金林 広敏

カーボンナノチューブの構造と電気的特性

カーボンナノチューブ(CNT)とは、炭素原子が六方格子構造をとる単層膜のグラフェンシートを巻いて、 筒状にした物質である。CNTの構造はグラフェンシート上での六角形を結ぶベクトルによって3種類に分類 される。本研究では、CNTを構成する個々の炭素原子の座標データを元にCNTの3Dモデルを生成し、3 種類の模型を作成した。また、CNTが金属的な伝導性を持つか持たないかはベクトルの成分を(n, m)とし た時、2n + m = 3p (pは整数)という単純な一次式を用いて判定できる。講演では、作成した模型を使って、 この式の意味をわかりやすく説明する。

笠原 崇史

Global Positioning System の原理

Global Positioning System(GPS)とは受信機の位置情報を手軽に正確に取得する事が可能なシステムで ある。GPSは日々進歩しており、測位手法によっては1 cm精度での位置測定が可能になりつつある。農業で のトラクターの自動運転や無人飛行機の飛行の制御にも使われている。本研究では、GPSはどのようなデー タを衛星から受信しどのような測位手法に従って位置を決定しているのかを調べた。その後、Arduinoを用 いてみちびき対応受信機を制御してGPSデータを取得できるようになった。講演では、準天頂衛星みちびき (Quasi-Zenith Satellites)による測位精度向上の原理について分かりやすく説明する。

堀川 峻平

空中像表示装置の作成

空中に映像を表示するのスターウォーズなどのSFによく出てくる「おもちゃ」であるが、すでに空中映 像は未来の夢物語ではなくなっている。本研究では再帰性反射塗料を塗布した板とハーフミラーを用いた空 中像表示装置を作成した。この講演では、この装置によって、スマートフォンの画面を空中表示するデモン ストレーションを行う。また、物理学への興味を喚起する教材として使えるように、身近な材料で空中像表 示装置を作成するための手引き書を執筆した。               

(7)

凝縮系物理学研究室

仲座 優美

脳神経の Hodgkin-Huxley モデルとメモリスタ

人の脳は、1000億近くのニューロンが互いにシナプス結合したネットワークである。各ニューロンは発 火状態と安定状態を繰り返すが、その電気回路モデルとして電池、抵抗、コンデンサからなるHodgkin-Huxley (HH)モデルがよく知られている。一方、近年では抵抗、コンデンサ、コイルに続く第四の素子(未完成)と 呼ばれる「メモリスタ(memristor: 記憶付き抵抗器)」が理論面からも製品化の面からも注目されている。特 にそこで期待される電流-電圧(I− V)特性(ヒステリシス)がHHモデルのそれと類似しており、メモリ スタを脳型素子として実現する可能性が指摘されている。本研究ではHHモデルとメモリスタのI-V特性を 比較し、その関連を調べる。また、HHモデルの抵抗部分を簡単なメモリスタモデルに置き換え、数値シミュ レーションを行い、仮想的な脳内で働く脳型素子としてのメモリスタの振る舞いを調べる。

市田 宜大

分離脳の非対称 Z(2) ゲージニューラルネットモデル:相構造

本研究の目的は、人の脳のモデルとして右脳、左脳、脳梁からなるニューラルネットモデルを構築し、右脳 と左脳を結ぶ脳梁の結合率及び結合強度が増加することで、脳梁が分断された分離脳に見られる意識の二重 性が次第に統一されていく様子をTononiの統合情報理論にもとづいて調べる事である。本発表では、そこで 使うZ(2)ゲージニューラルネットモデルについて立ち入って紹介する。先行研究ではニューロンAからB へのシナプス結合変数とBからAへの変数が同じ(JAB= JBA=± 1)対称結合モデルが調べられた。今 回はJABとJBAを独立変数とする、より現実的な非対称結合モデルを導入した。また脳梁結合として右脳 左脳を一回結ぶ項(∝ JLR、∝ JRL)の他に2重脳梁結合(∝ JLR· JRL)も導入した。モンテカルロシミュ レーションによりこのモデルの相構造を求め、対称モデルの結果と比較し、2つのモデルの知見を深める。

入江 翔太

分離脳の非対称 Z(2) ゲージニューラルネットモデル:意識の統一

本研究の目的は、人の脳のモデルとして右脳、左脳、脳梁からなるニューラルネットモデルを構築し、右 脳と左脳を結ぶ脳梁の結合率及び結合強度が増加することで、脳梁が分断された分離脳に見られる意識の二 重性が次第に統一されていく様子をTononiの統合情報理論にもとづいて調べる事である。先行研究では2つ のニューロンの結合の向きを考慮しない対称結合モデルを使い、意識の強度を測定する指標である統合情報 量Φの大まかな近似として系の比熱を用いて意識の統一が議論された。本発表では、結合の向きごとに独立 なシナプス結合変数と2重脳梁結合を持つZ(2)非対称ゲージニューラルネットモデルを新たに導入し、その 比熱をモンテカルロシミュレーションにより測定する。先行研究との比較を行うことで結合の非対称性や2 重脳梁結合が相構造や意識の統一のプロセスにどのような影響を与えるのかの知見を得る。

松田 知大

統合情報量の物理学的表現とゲージニューラルネットへの応用

意識についてのTononiの統合情報理論(IIT)は、(1)意識の発現条件として、システム内部で情報が生み 出されていること、それらが強く統合されていること、の二つが必要であることを提案し、(2)これらの条件 を定量的に判断するための意識強度の指標として統合情報量Φを情報理論的に定義している。Φは非常に複 雑で厳密な評価は難しい。先行研究ではΦの大まかな近似として秩序相側での比熱を用いて意識の統一を調 べた。本研究では、(1)情報量としてシステムの熱力学的エントロピー、(2)統合化の指標として磁化等の相 転移における秩序変数、を選び、これら2つの積をΦの近似的、物理学的表現ΦΦとして提案する。例とし て2Dイジングモデルの厳密解を用いてΦΦを計算する。また比熱積分によるエントロピーの評価、秩序変 数の近似としての内部エネルギーの妥当性を調べ、右脳左脳ゲージモデルに応用してΦΦを評価し、意識の 発現を論じる。

山本 祐希

CP1 + U(1) 量子ゲージニューラルネットでの学習と想起

脳のニューロンやシナプス結合も元をたどれば原子・分子といった量子論的な対象である。通常の古典ニュー ラルネットに量子効果を含めたモデルを構築し、その性質を調べることは大切である。先行研究では (1)学 習・想起のZ(2)ゲージニューラルネットに量子揺らぎを含めたU(1)Higgsゲージニューラルネット、(2)水 分子(電気双極子)とそれらの電磁相互作用を考えたCP1+U(1)ゲージニューラルネット、の2つの量子 モデル(またはその格子バージョン)の相構造を使って熱ゆらぎや量子ゆらぎの効果が大局的に評価された。 本研究ではモデル(2)で学習・想起のプロセスをシミュレーションし、学習想起能率を求める。具体的にはメ トロポリス法で非平衡時間発展を行って、ニューロン(CP1)変数に記憶・学習させたパターンがどのように 想起されるかを観測する。また、得られたオーバーラップを各相で比較し、学習・想起能力の優劣を論じる。               

(8)

宇宙論研究室

北山 義大

CMB を用いた宇宙のトポロジーの制限

2次元トーラスのように、空間上にある輪が連続的にある1点に収縮できないものが存在する空間を多重 連結空間と呼ぶ。2次元トーラスを普遍被覆空間に射影すると、基本領域を中心に同じ空間が繰り返し見られ る。多重連結空間に観測者がいる場合、この繰り返される同じ空間を果てしなく無限に広がっている空間で あると捉えてしまう。我々が住む宇宙が多重連結空間であるとすれば、CMBの温度揺らぎのマップ上に2つ の円を設定し、温度揺らぎの相関を取ることで繰り返される同じ空間を発見できるかもしれない。小西氏に よる先行研究により4種類の温度揺らぎのマップで解析が行われた。その結果「nilc」と呼ばれる温度揺らぎ のマップ中に理論値とは異なる特異なズレが観測された。本発表ではこの特異なズレが「nilc」によるマップ のどこに位置しているのかをプログラムを用いて解析した結果について報告する。

鈴木 啓隼

重力レンズクェーサー MG0414+0534 の電波画像解析

重力レンズ効果によって多重像として観測されるクェーサーを重力レンズクェーサーと呼ぶ。その内、 MG0414+0534は4重像として観測され、理論値の位置と明るさのうち、明るさのみ観測値と一致しない「フ ラックス比異常」を示す天体として知られている。フラックス比異常を示す要因の一つとして、可視光では 観測できないレンズ天体中の暗黒矮小銀河の影響が考えられる。先行研究(Inoue et al. 2017)では、高解像 度を持つ電波干渉計ALMAで観測されたMG0414+0534の電波画像中に、暗黒矮小銀河と思われる天体Y からの弱いシグナルが4シグマで検出されている。本発表では、輝線成分の周波数領域を全て取り除くこと により求められたMG0414+0534の連続波画像の解析結果について報告する。

藤田 由希帆

重力レンズの基本構造と時間遅延効果

アインシュタインの一般相対性理論によると、銀河など大きな質量を持つ天体の重力の影響で時空が歪む。 これらの背景にある天体からの光線は歪んだ時空を通過することによって、光線の経路も歪み、明るい像が見 えたり複数の像が見えたりする。これを重力レンズと呼ぶ。中間発表で報告した、弱い重力レンズ効果、強 い重力レンズ効果、重力レンズの基本構造の説明に加え、本発表では、アインシュタインリングやアーク状 の像、点質量による像の形成、特異等温球によるレンズ効果とマイクロレンズ効果について説明する。さら に光線が重力場中を通過する場合、光線が平坦な時空を通過する場合に比べ、光の伝播時間の遅れが生じる 時間遅延作用についても説明する。

谷河 那南

重力レンズ天体の模型の作成

遠方の光源と観測者の間に、重力を及ぼす別の天体があるとき、遠方の光源からの光は天体の重力によっ て曲げられて観測者に届く。この天体を重力レンズという。本研究では、球対称で偏向角が一定(特異等温 球)の重力レンズや現実の銀河に質量分布を近づけた(特異等温楕円体)重力レンズの効果を模型を使って考 える。まず、3Dプリンタでレンズ模型を作成し、それを用いてシリコンで型を取り、樹脂を流すことによっ て透明なレンズを作製する。楕円銀河の重力レンズモデルとして、楕円対称をもつ大きなレンズ、矮小銀河 の重力レンズモデルとして小さな円対称レンズ、視線方向のボイド(空洞)として、円対称な凹レンズを作 製する。本発表では、これらの組み合わせにより、像がどう変化するか調べた結果について報告する。

村上 穂乃香

ニューラルネットワークの学習

ディープラーニングとは多層ニューラルネットワークを用いた機械学習の手法の1つである。多層構造の ニューラルネットワークに大量の画像を入力することで、コンピュータの画像データに含まれる特徴を学習 していき、入力した画像が何であるか正しい答えを出力する。中間発表では画像数字認識を行う大まかなプ ロセスについて報告した。本発表ではニューラルネットワークの学習において重要な意味を持つ2乗和誤差 や交差エントロピー誤差などの損失関数について報告する。この損失関数は、ニューラルネットワークが教 師データに対してどれくらい適合しているかを示すものである。また、重みとバイアスの損失関数が最も小 さくなるようなパラメータを自動で見つけるため、勾配をうまく利用して最適なパラメータを探索する勾配 法という方法についても報告する。        

(9)

素粒子論

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重力理論研究室

中村 仁彦

強い相互作用の理論と現象論

これまで卒業研究では素粒子の標準模型における強い相互作用の理論と現象について学んできた。強い相 互作用は、クォークの間に働くと考えられ、力を伝達するゲージ粒子はグルーオンと呼ばれる。また、この力 は電磁相互作用と比較すると約137倍もの強さがあるが、影響範囲は約10−15mと小さい。標準模型におい て、強い相互作用を記述する場の理論は量子色力学と呼ばれ、SU (3)ゲージ対称性に基づくヤン-ミルズ理論 である。強い相互作用をする素粒子であるクォークとグルーオンは、カラーと呼ばれる量子数を持つ。クォー ク間では距離が小さくなると漸近的自由性を示し、逆に距離が大きくなるとクォークの閉じ込め現象を起こ す。今回の発表では強い相互作用の理論である量子色力学について触れた後、漸近的自由性やクォークの閉 じ込め等の強い相互作用における現象について説明する。

井原 康輔

Glashow-Weinberg-Salam 理論

自然界に働く相互作用は4つあり、電磁相互作用、強い相互作用、弱い相互作用、重力相互作用である。こ れらの相互作用はゲージ粒子によって媒介され、素粒子のレベルでは非常に弱い重力相互作用を除いた残り の3つの相互作用はゲージ理論として理解されている。この理論が素粒子の標準模型と呼ばれる。この中で も今回は、電磁相互作用と弱い相互作用を統一した理論として有名なGlashow-Weinberg-Salam理論につい て紹介する。具体的な流れとしては、まず最初にネーターの定理によりU (1)× SU(2)対称性を体系に課し、 自発的対称性の破れを用いて荷電レプトンやウィークボソンに質量項を持たせたのちに、レプトン場とゲー ジボソン場を結合させて理論を完成させる。最後に、この理論を実験データと照らし合わせて考察し、理論 の正当性を検証する。

加藤 大晶

素粒子の電弱相互作用と質量行列

本発表では標準模型におけるクォークの弱い相互作用について発表する。電弱相互作用の統一を図るため にはレプトンだけでなくクォークにも同じ理論が適用されていなければいけない。その中でもクォークの弱 相互作用を理解するうえで必要な3つの理論を中心に発表する。まず、K粒子の崩壊を説明するために、反 応に関与するd型クォークはdとsクォークの重ね合わせで表されることを説明する。これが「カビボ理論」 である。次に、実験的にわかっていた弱い相互作用でフレーバーを変える中性カレント(FCNC)が非常に 希な過程であることを自然に説明する「GIM機構」を解説し、最後にCPの破れを説明するためにはクォー クの世代が最低三世代必要であることを予言した小林・益川理論と「CKM行列」について発表する。

奥野 真里

素粒子の標準模型とマヨラナニュートリノ

卒業研究では素粒子の標準模型を研究テーマとし、その中でもニュートリノについて勉強した。ニュート リノは、スピン1/2をもつフェルミ粒子で、ディラック方程式に従う。ニュートリノは粒子と反粒子が異な るディラック粒子である可能性と、粒子でも反粒子でもあるマヨラナ粒子である可能性がある。ニュートリ ノ振動実験によって、ニュートリノは質量を持つことがわかっているので、この実験を説明するニュートリ ノの質量と混合について紹介する。またそれがマヨラナ粒子ならば、シーソー機構という理論で、ニュート リノがほかの粒子にくらべて極端に軽いことを記述できることも紹介する。最終的には、ニュートリノがディ ラック粒子なのか、マヨラナ粒子なのかを二重ベータ崩壊の過程を考えながら評価する。               

(10)

原子分子物理学研究室

可部 宏直

オーミック型テルル化カドミウム (CdTe) 検出器のガンマ線検出特性に関する研究

Z物質からなる化合物半導体検出器CdTeは常温でもガンマ線スペクトルの測定が可能であり,近年応 用研究も進みつつある。昨年度の研究では,高電圧が印加可能で高分解能のショットキー型CdTeの特性を 調べたが,分極現象があり長時間測定ができなかった。そこで,本研究では,分解能は劣るが長時間測定可 能なオーミック型のCdTe検出器のガンマ線に対する検出特性を評価した。5種類の密封標準線源(137Cs, 22Na,60Co,133Ba,241Am)からのガンマ線スペクトルをそれぞれ測定し,種々の全エネルギー吸収ピー

クのピーク位置や半値幅を求めて,波高分析器のエネルギー校正の後,エネルギー分解能を評価した。さら に,方トリウム鉱などの岩石やアトムレンズなどの天然のトリウムの入った試料の長時間測定も行い,オー ミック型CdTe検出器の長時間安定動作を確認した。

板垣 智大

核融合プラズマに関わる低速イオンの電荷移行断面積に関する研究

軽元素のLiはプラズマ診断でしばしば使用され,重元素のWは次世代の大型核融合実験装置ITERのダ イバータ板やプラズマ対抗壁の材料として使用される。これらのイオンのプラズマ中での挙動の解明のために は,これらの低速イオンに対する電荷移行断面積の確立が不可欠である。まず,重いWイオンの引き出しに ついては,質量分析器であるウィーンフィルターの質量分解能に問題があり,先行研究に基づきウィーンフィ ルターの入り口スリットをダブルスリットに交換したが,十分な質量分解能を得ることは出来なく,Wイオ ンの測定は断念した。一方,Li+ イオンと希ガスの衝突系については,先行研究以降に成長率法で測定され たデータについて,データ解析を行った。その結果,Ogurtsovらの測定値より大きく,Kikianiらの測定値 よりも小さい結果となった。

川下 裕司

低速硫黄イオンの発生と電荷移行断面積に関する研究

木星の衛星イオの周回軌道に沿って形成されたプラズマ中の硫黄などのイオンが,木星の強い磁場によっ て加速され,高速中性粒子線の生成や木星オーロラの形成に関わっていると考えられている。先行研究で,安 全な六弗化硫黄を用いて,電子衝撃型やPIG型のイオン源で1価の同位体の硫黄イオン(34S+)の発生が試 みられたが,ビーム強度が弱いため,本研究では,電子ビーム入射型イオン源(EBIS)で,硫黄イオンの発 生を試みた。しかし,何らかの2価イオンが混じり合い純粋な34S+イオンの引き出しは出来なかった。そこ で,EBIS型イオン源のパワーを増強した動作をさせたところ,ビーム強度は数10cpsと弱いながらも,3価 のイオン(32 S3+)の引き出しに成功した。これを用いてメタンとの衝突系における1電子および2電子移行 断面積の測定に,keV領域で世界で始めて成功した。断面積値を古典的オーバーバリア模型と比較する。

素粒子実験研究室

栗原 優弥

GEM を用いたガス飛跡検出器での電子増幅率の評価

当研究室ではGEMを用いたガス飛跡検出器の研究を行っている。ガス飛跡検出器とは、内部で発生する 電子からの電気信号を読み取ることで荷電粒子の飛跡を調べる検出器であり、その電子の数を増幅させるた めにGEMを用いている。GEMとは、絶縁体を銅箔ではさみ微小間隔で穴を空けた構造で、銅箔間に高電 場を発生させることで電子の増幅を可能にするものであり、当研究では実際に研究室で用いられているGEM のモデルをシミュレーション上で作成し増幅率の再現を目的としている。先行研究では実際のGEMと同じ 構成でシミュレーションしたにも関わらず増幅率を再現することはできず、その原因として今回は検出器内 での電子の停止や混合気体のペニング効果に着目することで先行研究の問題改善に努めた。        

(11)

素粒子・宇宙物理学研究室

黒田 幸

赤外線データを用いた惑星系デブリ円盤の性質の研究

主系列星の周りには、ダストから成るデブリ円盤が存在することがある。デブリ円盤は、微惑星同士の衝 突によってつくられ、惑星形成活動の名残であると考えられている。本研究では、星にあたためられたダス トによる熱放射を用いて、デブリ円盤の存在頻度や、温度などの性質を知ることを目的とする。画架座β星 運動星団に属する17個の主系列星に対し、主に赤外線天文衛星AKARIの測光値を用いて、SEDを作成し た。その結果、6天体で光球成分に対する中間赤外線の超過を検出した。また、90 µmで超過が検出された 4天体について、赤外超過成分を黒体輻射に近似し、ダストの温度を導出したところ、70∼120 Kであった。 この星団は年齢が約2000万年で、本研究で求めた存在頻度35%は、より年齢の進んだ星団における頻度に 比べて高い。また、4天体について星から円盤までの距離を推定し、約20auでダストが生成されていること が分かった。

諌山 七海

CanSat R&D Raspberry Pi を用いたシステムの構築

 CanSat(カンサット)とは、空き缶サイズの超小型模擬人工衛星のことで、実際の人工衛星と同等の機 能を持っている。本研究の目的は、CanSatのシステムを構築することによって、人工衛星のシステムやプロ グラムの開発技術を習得することである。今回、CanSatを制御するコンピュータにはRaspberry Piを用い る。Raspberry Piは教育系のシングルボードコンピュータのことである。Raspberry PiのPythonには対 話型環境が標準で用意されており、環境の設定をせずにプログラミングを始めることが可能である。今回は Raspberry Piのその特徴を活かし、Pythonで開発を行う。本研究では、実際にCanSatを打ち上げること はないが、打ち上げを想定したシステムの開発を行う。そのため、CanSatを地球周回軌道上にある人工衛星 とみなし、センサーやカメラで観測した気象データや画像データを地上局へと転送し解析を行う。地上局に は他のPCを用い、リモートでCanSatを制御する。本発表では、CanSatのシステムと地上局のシステムに ついて報告する。

七瀧 愛理

IACT における CORSIKA シミュレーション 1 ―gamma 事象解析―

CTA計画では、チェレンコフ光を観測することで間接的にガンマ線の振る舞いをみる。チェレンコフ光 とは超高エネルギーガンマ線が大気中で多重発生した荷電粒子が大気の原子と相互作用し、放射する光であ る。CTA計画でのチェレンコフ望遠鏡はIACT(Imaging Atmospheric Cherenkov Technique)を用いてい る。IACTでは、ガンマ線が入射したときに大気中で電子-陽電対生成、制動放射を繰り返し発達する電磁シャ ワーから生じたチェレンコフ光を観測することにより、間接的にガンマ線を観測する。本研究では、空気シャ ワー実験全般で使用されているモンテカルロプログラムであるCORSIKA(COsmic Ray SImulations for KAscade)を用い、空気シャワーデータ生成を行った。一次宇宙線をgammaとし、入射エネルギーに対し て地上で観測されるphoton数、photonを束ねたbunch数を評価した。

若宮 悠作

IACT における CORSIKA シミュレーション 2 ―proton 事象解析―

 高エネルギーの一次宇宙線が大気に入射した際に、大気中の原子核と相互作用を起こし、高エネルギー の二次宇宙線が発生する。生じた高エネルギーの二次宇宙線も大気中の原子核と相互作用を起こし、さらに 粒子を生成する。こうして大気中で大量の二次宇宙線が発生する現象を空気シャワーという。空気シャワーに よって発生したチェレンコフ光が地上に到達するとライトプールを形成する。CORSIKAを用いて一次宇宙 線がプロトンの時の空気シャワーのシミュレーションを行う。CORSIKAとは高エネルギー宇宙線による大 気エアシャワーシミュレーション用のモンテカルロプログラムの一つである。本発表では一次宇宙線がプロ トンの時で20 GeV∼300 TeVのエネルギー領域時の入射角が0°と 20°の photon数とbunch数、ライト プールの形状について、さらに一次宇宙線がガンマの時との比較について報告する。

              

(12)

長野 渓太

IACT における CORSIKA シミュレーション 3 ―iron 事象解析―

 IACT(解像型大気チェレンコフ技術)は高エネルギーガンマ線を観測対象としている。1次宇宙線が大 気と相互作用し、π0などが生成される。π0はすぐに崩壊し、2つのガンマ線を出す。ガンマ線は電子対生成 をして電子と陽電子を出す。この後制動放射が起こり光子とガンマ線を出す。これを繰り返すことを電磁カス ケードという。電磁カスケード中で荷電粒子の速度が物質中の光速度を超えた時に青白い光であるチェレン コフ光が出る。IACTはチェレンコフ光を観測することで間接的に高エネルギーガンマ線の観測を行う。空気 シャワーシミュレーション用のモンテカルロプログラムCORSIKAを用い、シミュレーションを行った。チェ レンコフ望遠鏡を1台配置し、1次宇宙線をironと設定した。入射エネルギーに対してphoton数とbunch 数を比較した。gammaに対してprotonとironを比較した結果について報告する。

岡本 崚

電磁シャワーによるチェレンコフ光のライトプール形成

宇宙線である高エネルギーγ線(1次宇宙線)が大気に入射すると大気中の粒子と相互作用し、2次宇宙線 の荷電粒子(電子対生成)を生成する。さらに生成された荷電粒子は、制動放射により高エネルギーγ線を 放射する。これに加え、このγ線が電子対生成を起こす。電子対生成と制動放射を繰り返すことで電磁シャ ワーとなる。生成された荷電粒子が物質中の光速より速くなると大気中の粒子と相互作用し、指向性を持った チェレンコフ光を放射する。CTA計画では、大気に吸収されるγ線をチェレンコフ光により間接的に観測す る。このチェレンコフ光が地上に到達することで形成される範囲をライトプールと呼ぶ。本発表では、この ライトプールのγ線の入射角度による形成の違いについて、トイモデルを用いたライトプールを形成する光 子数について研究したことを報告する。

藤原 千賀己

CTA プロジェクトでの CORSIKA による LST 感度の評価

CTA計画において日本コンソーシアムでは大口径望遠鏡(LST)の開発に携わっている。現在、スペインの La Palmaで初号機の建設が行われており、2018年の運用を目指している。また、2024年には北半球と南半 球のフルアレイによる本格観測を目指している。CTA計画は従来の地上望遠鏡H.E.S.S, MAGIC, VERITAS に比べて300 GeV− 3 TeVのエネルギー領域では50時間の観測で1 mCrabの感度を達成することを目指 している。そのためにはこの感度を達成する装置の開発が必要であり、装置のシミュレーションを行う必要が ある。本研究では実際のLa Palmaの配置でLSTを4台用いてgamma, proton, electronのシャワーデータ の生成を行った。また感度曲線を出し、得られた感度曲線が1 mCrabの感度に到達しているのかを比較し、 評価した報告をする。

              

(13)

一般相対論・宇宙論研究室

有川 友悟

宇宙のビッグバンとブラックホールの特異点

高い対称性をもつ一様等方宇宙モデルやシュバルツシルト解にはビッグバン特異点やブラックホール特異 点が存在することが容易に確認できる。時空特異点の発生は厳密解がもつような高い対称性の結果ではなく、 物理的に妥当な条件の下、一般的な状況で起こることを、ペンローズとホーキングによる2つの特異点定理を もとにして解説する。まず、ペンローズの特異点定理は重力崩壊で形成されるブラックホール内部の特異点の 存在を示す。一方、ペンローズの特異点定理の時間過程を逆にしたホーキングの特異点定理は初期宇宙のビッ グバン特異点の存在を証明する。本発表では、レイチャウデューリ方程式と呼ばれる因果的測地線のふるまい を司る方程式とエネルギー条件および時空の因果構造を用いて、これら2つの特異点定理の証明を解説する。

田中 咲好

ブラックホールの熱力学と No-hair 定理

宇宙には約1022以上もの天体が存在することが観測から分かっている。その天体は莫大な物理量をもって 特徴づけられる。またその天体の中でも、太陽質量の約30倍以上の天体は重力崩壊をおこしてブラックホー ルを形成すると考えられている。よって宇宙には莫大な数のブラックホールが存在すると予想される。ブラッ クホールは、熱力学的振る舞いを見せるだけでなく、通常の天体と異なり、質量・角運動量・電荷のたった 3つの物理量で特徴づけることができる。このことをNo-hair定理という。これは、J.A.Wheelerによって 予想され、1970年代のCarterらによる先駆的研究の後、1982年にMazurが完全に証明した。本発表では、 Mazurの研究をもとに、ブラックホールの熱力学的振る舞いとNo-hair定理の証明を解説する。

杉山 幸平

ブラックホールの個性を伝える QNMs

最近、ブラックホール(BH)からの重力波が注目を集めている。その重力波生成の様々な段階で特に重要 なのは合体の最終段階で放出される、準固有振動(QNMs)である。なぜなら、QNMsが合体後のBHの質量 パラメーターなどの個性を教えてくれる重力波形であるからだ。QNMsは複素数の振動数であり、その実数 部分と虚数部分の数値によってQNMsの減衰具合を知ることができ、その重力波がBHからなのか、もしく はBH以外からなのか、そして、どのようなBHから放出されたのかがわかる。また、BHが安定かどうか もQNMsから判定できる。今回はQNMsとは何かについて改めて説明し、QNMsの様々な計算方法の内、 特にWKB近似を用いた解析的方法を紹介する。

海野 こころ

宇宙のブラックホールの不安定性

宇宙に存在するブラックホール(BH)は回転しており、Kerr計量で記述される。そのようなKerrBHか らエネルギーを取り出す現象としてPenrose過程がある。エルゴ領域に入射した粒子が2つに分かれ、一方 がKerrBHへ適切な方法で落ちると、もう一方が元の入射粒子よりも大きなエネルギーを持ち去ることが可 能になる。その波動版として、ボソン場の波動がエルゴ領域において増幅散乱される現象を超放射散乱とい う。興味深いことに、ボソン場が有質量の場合、超放射散乱が繰り返し何度も起こるため、KerrBHは不安定 な状態となる。本発表では、まずKerrBHについて概説し、次にKerrBH上で有質量スカラー場が引き起こ す超放射不安定性について、Detweiler(1980)の研究に基づいて解説する。

木村 優斗

Kerr-AdS ブラックホールの不安定性

 1963年、自転するブラックホール(BH)を記述するKerr計量がRoy Kerrによって発見された。自転 していることにより、KerrBHは周囲にエルゴ領域を形成する。そのエルゴ領域中ではKerrBHからエネル ギーを奪い取る機構が存在する。粒子を入射させてエネルギーを奪い取る方法をPenrose過程といい、ボソ ン場の波動を入射させて奪う方法を超放射散乱という。特にボソン場が質量を持つ場合には超放射散乱が繰 り返し起きることでKerrBHが不安定となることがわかっている。本発表では、スカラー場が質量を持たな い場合でも、小さなKerrBHが負の宇宙項を持つAnti-de Sitter(AdS)時空上にある場合には、やはり超放 射不安定性が起こることを解説する。

              

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