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建築基準法上の2項道路と施行規則の改正に伴う

行政訴訟での要件判断

――信義則に関する 2 つの判例を手がかりに――

田 村 泰 俊

 目次 Ⅰ 問題の所在 Ⅱ 当事者訴訟の利用可能性に関する理論構成 Ⅲ 道路台帳等の整備と建築基準法施行規則の改正 Ⅳ 2項道路と信義則に関する 2 つの判例  (1) 平成 18 年最高裁判所判決  (2) 平成 19 年東京地方裁判所判決 Ⅴ 平成 18 年最高裁判所判決および平成 19 年東京地方裁判所判決の分析 Ⅵ 課題と展望

Ⅰ 問題の所在

 建築基準法第 42 条第 2 項は,その第 1 項が原則として敷地が幅員 4 メート ルの道路に接道していることを求めているのに対し,「この章の規定が適用さ れるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員 4 メートル未満の道で,特定 行政庁の指定したものは,前項の規定にかかわらず,同項の道路とみなし,そ の中心線からの水平距離 2 メートル ・・・・・・(略)・・・・・・ の線をその道路の境界 線とみなす」と規定している。いわゆる,「2項道路」ないし「みなし道路」

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と呼ばれるもので,いずれ,各敷地が中心線から 2 メートルまで後退(セット・ バック)し,いずれかの日に 4 メートル幅の道路が実現することを政策目標(1) としている規定である(2)  ところで,周知のように,この2項道路については,2項道路であるのかど うかを,個々具体的に認定する個別指定方式と,告示により包括(一括)指定 する方法があり,後者の場合は,具体的な道が2項道路かどうかは,後の行政 庁の何らかの有権的な行為(判定等)があってはじめて確定することとなる。  そこで,この包括指定にかかる2項道路については,告示等の過去の「時」 に焦点をあてる理解と,後の何らかの有権的行為といういはば現在という「時」 に焦点をあてる理解の 2 つの立場が存在することとなる。  最高裁判所は,平成 14 年に(3)前者,すなわち過去の告示「時」に処分性を 認める判断を示した(4)。さて,この平成 14 年判決は「抗告訴訟の対象となる 行政処分に当たると解すべきである」と行政庁による包括指定について判示し ているので,一般には,これについては,抗告訴訟たる処分不存在確認訴訟で 争うべきものと解されている(5)  しかし,このような告示等,過去に焦点をあてる手法に問題のあることは, 筆者の一貫した視点となっている。  そこで,むしろ後の有権的行為に焦点をあてるべきこととなるが,この点を, 最近の,2項道路と信義則に関する 2 つの判決を材料として,最近の施行規則 改正との関係で分析を加えてみることとしたい。そして,その結果,2項道路 判定のための法律要件・告示要件を,可能な限りゆるやかに解釈する実務運用 が,行政実務のみならず行政訴訟(平成 14 年判決を基礎とすれば,抗告訴訟,筆者 の見解では当事者訴訟)の審理にとっても必要であることを示してみたい。

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Ⅱ 当事者訴訟の利用可能性に関する理論構成

 筆者は,行政事件訴訟法改正前,平成 14 年最高裁判所判決の下でも,包括 指定にかかる2項道路を当事者訴訟で争う可能性は排除されないとの見解を示 した(6)。その後,行政事件訴訟法が改正され,当事者訴訟に「公法上の法律関 係確認の訴」が明示されることとなったが,それは従来からの理論でも,解釈 上,許容されていたものを「明示」したにすぎないことから(7),包括指定にか かる2項道路についても,この公法上の法律関係確認の訴で争いうることを, 筆者は示しておいた(8)  その後,次のような 2 つの事情を受けて,筆者は,処分性の問題と当事者訴 訟(公法上の法律関係確認の訴)の利用について論稿を発表した(9)  その第 1 の事情は,晴山一穂教授の,次のような指摘である。すなわち「実 質的には当事者訴訟に近い性格の一括指定不存在確認訴訟を形式上は抗告訴訟 の側におきながら,他方で,それとの対比で別途当事者訴訟としての確認訴訟 の可能性も問う,という解答困難な問題設定ということにもなってこよう」(10) との指摘である(11)  第二の事情は,特別区建築審査会委員等連絡協議会による2項道路に関する 道路台帳等の整備をなすべきことの提言が,2007 年に行われ(12),この行政庁 による道路台帳等への記載自体を争う可能性が出て来たことである(この点は, 本稿でも,もう一度,確認的に,この後,述べておくこととしたい)。  このような事情から,筆者は,包括指定(処分)―→その後の何らかの有権 的行為――例えば,建築確認,道路台帳等への記載など――(非処分)との間に,何 らかの違法性の承継を認め,後者を当事者訴訟(公法上の法律関係確認の訴)で 争わせうるとの訴訟法上の理論構成を示した(13)。この着想は,建築基準法の いはば「姉妹法」(14)たる都市計画法の最新の判例(いわゆる林試の森公園事件第1

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審判決(15)が非処分と処分の間を違法性承継論で説明している(16)。)や,最近の小早川 光郎教授の見解が,非処分と処分間(又はその逆も含むと解しうる)にも違法性 の承継を認めている(17)ことから得ることができた。そこで,2007 年発表論文 では,続稿へのいはば伏線として,旧法以来,建築基準法と都市計画法が「姉 妹法」の関係にあることを示した上で(18)小早川光郎教授の文献を引用しつつ, (19)包括指定と後の有権的行政庁の行為との間に「何らかの承継」を認め当事 者訴訟で後者を争いうることを示した(20)  そして,さらにその後,それに続く続稿で(21),すでに述べたように道路台 帳等への記載自体が争われる可能性が生じて来たことから,道路台帳等の整備 に言及した上で,処分間および取消訴訟という平面での従来の承継論を「閉じ られた違法性承継論」,処分以外の行為型式,取消訴訟以外のフィールドでの それを「開かれた違法性承継論」として訴訟法上の法理論の構成とした。そし てこの開かれた違法性承継論の下では,告示(処分)と後の何らかの有権的行 為(非処分)間に何らかの承継を認めうることを示した。  ところで,この「包括指定(処分)」―→「行政庁の後の具体的な有権的行為(非 処分)」との間で「何らかの承継」を認める法理論上の構成とする場合,包括 指定の内容(告示)たる 4 メートル未満―1.8 メートル以上という告示そのも のが違法であるということとはならないことは当然の前提となろう(22)。そこ で,実際には,その告示内容が後の何らかの行政庁の有権的行為により具体的 な道に適用された時点で,そのまさに「具体的な適用それ自体」が違法なのか 合法なのかが争点となるわけである(そこで,筆者は,従来から,平成 14 年判決 を批判的に捉えており,本来は,後の何らかの有権的な行為にこそ処分性を付与すべき であったと考えている)(23)。そこで,平成 14 年判決を,判例変更を期待すること が事実上は困難であることから(24),この判決を前提とせざるを得ない以上,「何 らかの承継」を認めるという法理論の構成を試みたわけである。  そこで,取消訴訟に関し,行政事件訴訟法 14 条の出訴期間との関係で「先

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行処分」の「違法」を前提とする従来の違法性承継論には,その理論それ自体 についても疑問や問題点が指摘されていることから(25),すでに述べたように 「先行行為たる告示」それ自体については違法性のない包括指定にかかる2項 道路問題について「違法性の承継」という文言をそもまま利用してよいのかど うかという点から「何らかの承継」との表現を前々稿では加えている(26)  さらに,すでにかつての論稿以来,指摘して来ているように,2項道路か否 かの判定が実際に紛争として顕在化・具体化するのは,後の何らかの行政庁の 有権的行為(非処分)によることとなるので,ここを捉えて「非処分」を争う ための「公法上の法律関係確認の訴(当事者訴訟)」で争うこととなるが(27),こ のことから,本稿注(21)掲記の論文タイトルを,公法上の法律関係確認の訴 というフィールドで2項道路かどうかの判定がつくという点で「公法上の法律 関係確認の訴での違法性」とした(28)  以上のように,筆者の一貫した研究の流れ(フロー)から明らかなように, 2項道路かどうかの紛争が,現実に顕在化・具体化するのは,包括指定「時」 ではなく,行政庁の後の何らかの有権的行為「時」となっている(29)  そこで,以下,この後の何らかの有権的な行為の最近の動向を再確認した上 で,信義則に関する最近の動向の 2 つの判例を分析することにより,直近の行 政庁の何らかの有権的行為を訴訟の対象として捉えしかも告示要件も含め要件 をゆるやかに解し適用する必要性を論証してみたいと考える。

Ⅲ 道路台帳等の整備と建築基準法施行規則の改正

 筆者は,前稿および前々稿において,「特別区建築審査会委員等連絡協議会 建議案検討委員会『建議案検討委員会報告書』」(30)での「2項道路図」の提言(31) を採りあげた(32)。その主要な理由は,国土交通省が打ち出したものもその方 向性としては同様のものであるものの,特別区の報告書での提言の方がより詳

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細な図面となっていたからに他ならない(33)。筆者も,将来的には特別区の報 告書の方がより望ましい姿と考えるが,当面,建築基準法施行規則改正に添っ た形で現実化してゆくこととなろうから,本稿では,この改正を採り掲げてみ ることとしたい。  さて,国土交通省は,平成 19 年 6 月 19 日「建築基準法施行規則等の一部を 改正する省令」(34)を出した(35)。施行日は,平成 22 年 4 月 1 日を予定している(36)  この改正された施行規則は,その第 10 条の 2 において,次のように規定し ている。すなわち,「特定行政庁は,指定道路に関する図面(以下この条及び第 11 条の 4 において『指定道路図』という。)及び調書(以下この条及び 11 条の 4 にお いて『指定道路調書』という。)を調整し,これらを保管しなければならない。  2 指定道路図は,少なくとも指定道路の種類及び位置を,付近の地形及び 方位を表示した縮尺 2500 分の 1 以上の平面図に記載して調整するものとする。 ・・・・・・(略)・・・・・・。  3 指定道路調書は,指定道路ごとに調整するものとする。  4 指定道路調書には,少なくとも前条第 1 項各号に掲げる事項を記載する ものとし,その様式は,別記第 42 号の 2 様式とする。」と規定している。  調書記載事項については,その第 10 条で,指定に係る道路の種類,指定の 年月日,指定道路の位置,指定道路の延長及び幅員とされており,イメージ図 によれば(37),縮尺 200 分の 1 とされている(38)。我々が,この調書のイメージ 図から知りうるのは,少くとも,具体的な道路の中心線,後退線等が明示され ているということであろう。  さて,国土交通省は,この規則改正の説明会における,「 2 道路の台帳整 備と情報公開の措置の義務付け」において,「既に指定した2項道路等を含め, 特定行政庁が指定した路線毎の位置・種類を明示した台帳(『指定道路図』『指定道 路調書』)の整備を義務付ける。あわせて,これら台帳の閲覧を必須とする」(39) と説明しているので,そこには包括指定にかかる2項道路も含まれることとな

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るのであろう。そうであるとするならば,この「道路図」「調書」への記載自 体が包括指定に係る2項道路であるとの,特定行政庁の直近の有権的意思を示 すものとなる可能性が高いわけである。  確かに,国土交通省の理解は,まさに「情報」の管理・提供(40)に求められ るのであろう。しかし,一方で,国土交通省は,次のようなことも認めている。 少し長いが,その解説をそのまま引用してみることとしたい。  すなわち,「 3 指定道路図及び指定調書の位置づけ《運用指針Ⅱ,4(3)》」 の解説として,「○ 指定道路図等の記載事項については,道路法(昭和 27 年 法律第 180 号)の道路台帳と同様に,指定道路図等の記載事項をもって直ちに 裁判において特定行政庁が行った指定処分の内容を証明する証拠にはならない と解される。 ○ しかしながら,指定道路図等が指定処分の内容を記載するものである以上, 当該図等において指定処分の具体的内容を明示することにより,指定処分の存 否の確認を求める訴訟が提起されるとともに,指定道路図等における誤った記 載により土地取引等に際して被った損害の賠償請求訴訟が提起されることも予 想される。その際には,当然,指定道路図等に記載した根拠(指定処分がなされ ていると判断した根拠)が求められることとなる。(訴訟への流れは,基本的には, 指定道路図等作成前に指定道路への該当を土地所有者等の要請により個別に通知した場 合と同様となる。)」(41)と述べている。  なお,この解説は,参考判例として,平成 14 年最高裁判例を掲げているの で(42),抗告訴訟たる処分不存在確認訴訟を予定していると考えられる。しかし, すでに別稿で指摘して来たように,一般には,当事者訴訟たる公法上の法律関 係確認の訴については,いはばオープン・ザ・クエスチョンだと考えられてい るので(43),この訴訟の可能性には,当事者訴訟も含めて考えるべきであろう(44)  より具体的にこの点を敷衍すれば,以上から理解できるように,「台帳」「調書」 への記載は,情報の管理・提供なので「非処分」であることは明らかなのだか

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ら,非処分たる行為形式を争わせるというのが公法上の法律関係確認の訴(当 事者訴訟)の趣旨であるので(45),記載されたこと自体をモーメントとして提起 される紛争は,これにより争わせるべきこととなろう。  さらに加えて述べれば,国土交通省の 200 分の 1 にしろ,特別区の 100 分の 1 にしろ,告示要件も含め道路の具体的位置それ自体が争点ともなりうると予 想されるので,これを処分の存在・不存在の抗告訴訟でそこまで争わせること には違和感をおぼえざるを得ない(46)とともに,包括指定に係る2項道路は, 後の何らかの有権的な行政庁の行為で顕在化・具体化するものであり,しかも, この行政庁の後の行為は,その時々(例えば,その路線上にある建物のそれぞれの 建築確認)で異なることもあり,直近の最後の行為を捉える必要性があるから に他ならない(まさに,それにピリオドを打とうとするねらいが規則改正であり(47) うであるならなおさら台帳・調書への記載自体を争わせるべきであろう)。  ところで,具体的処分内容について争わせるべきことについては別稿ですで に述べたので(48),時々の判断の変化に本稿では焦点をあててみることにした い。それに参考となるのが,最近の2項道路と信義則に関する 2 つの判例であ る。以下,この 2 つの判例をまず紹介し,次に,これらに分析を加えてみるこ ととしたい(なお,そこからも平成 14 年判決の問題点が浮き上がってもこよう)。

Ⅳ 2項道路と信義則に関する 2 つの判例

(1) 平成 18 年最高裁判所判決  最高裁判所は,2項道路と信義則に関し,平成 18 年 3 月 23 日にその判断を 示している(49)  事実の概要は,以下のようなものであった。それは,X らは,いわゆる行き 止っている道路状の道を,自宅敷地から公道に通じる道として利用していたが,

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Yらがこの道にブロック塀,タイヤ止め,立て看板を設置するなどしてその通 行を妨害するようになったことから,Y らに対し,人格権に基づく妨害排除請 求の訴を提起したというものだった。なお,本件では,X および Y とも,この 道路状の道を,建築基準法 42 条2項道路であるとして,法律上の接道要件を 充足しているとして建築確認を得ている。  これに対し,Yらは,基準時(昭和 29 年 5 月)においては,法律要件たる「現 に建築物が立ち並んでいる」との要件を本件通路上の道は充足していないので, 本件は2項道路ではなく,従来からの通行は何ら妨害されていないとの主張を 行ったというものであった。  第 1 審は,Xらの請求を認容している(50)。第 2 審たる原審は,「公益上の機能」 を重視し(51)この点から本件通路上の道が有用なものとして一般の通行の用に 供されていたと認定することはできないとし,2項道路とは認められないとの 判断を示した(52)。そこで,X らが上告受理申立を行ったというものだった。  最高裁判所は,破棄・差戻の判断を示し,以下のように判示した。  「原審は,本件道路が基準時当時に法 42 条 2 項の要件を充たしていたことの 立証がなく,本件道路が2項道路であるとは認められなとして,上告人らの請 求を棄却した ・・・・・・(略)・・・・・・ 前記事実関係によれば,被上告人らは,被上 告人土地に自宅建物を建築するに際し,本件道路が2項道路であることを前提 に法 43 条 1 項の接道義務を満たすものとして建築確認を得,本件土地に幅員 4 mの道路を開設したというのであるから,上記の法の趣旨に照らせば,本件 土地を含む本件道路は,被上告人らの上記建物のみならず,その周辺に存する 建物やその居住者の安全等にも寄与することが求められているものというべき である。しかも,被上告人らは,平成 6 年以降,5 年以上にわたって本件道路 が2項道路であることを前提に建物を所有してきたことに加え,記録によれば, 本件土地は公衆用道路として非課税とされていることが明らかであることも考

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慮すると,被上告人らが,現に建物を所有しながら本件道路が2項道路である ことを否定することは,本件道路周辺の建物所有者等との関係において著しく 正義に反するものといわなければならない。そうすると,被上告人らが,本件 訴訟において,本件道路周辺の建物所有者である上告人らに対し,本件道路が 2項道路であることを否定する趣旨の主張をすることは,信義則上許されない ・・・・・・(略)・・・・・・ 被上告人らの主張を踏まえ,本件道路が基準時において2項 道路として指定される要件を満たしていたことの立証がないとして本件道路の 2項道路該当性を否定し,上告人らの請求を棄却した原審の判断には,判決に 影響を及ぼすことの明らかな法令の違反があるというべきである。」 (2) 平成 19 年東京地方裁判所判決  東京地方裁判所は,平成 19 年 12 月 26 日,2項道路に関する行政庁の信義 則について判断を示した(53)  事実の概要は,以下のようなものであった。本件は,昭和 50 年 4 月 1 日, 中野区が,包括指定の方式で,告示をもって(54),行った道路位置指定処分に 対して,行政事件訴訟法 36 条に基づき,道路指定処分不存在確認請求がなさ れたというものだった。  なお,本件で信義則が争点とされることとなった理由は,昭和 50 年及び 54 年の建築確認申請に対し,被告(行政庁)は,逆に2項道路には該当しないと していたという事実があったからである(55)  また,その後,行政庁によるこの2項道路か否かの変遷に対し,中野区建築 審査会の裁決は,2項道路ではないとの判断を示している(56)  具体的な道が2項道路に該当するかどうかについては,立ち並び要件,一般 の交通に使用されているか否かについては,それらの要件の充足が認められる としつつ,中心線の明確性の要件については,「以上の事実によれば,本件位

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置指定地は,基準時において,東側は原告宅の壁面及びA宅の板塀等に接して いたと推認され,また,西側においては,平成 19 年にBが被告の指導を受け て 65 センチメートル後退させる前の位置,すなわち,昭和 36 年に立て替えた 当時における北側区道側の建物の壁面の位置及び別棟の壁面の位置にそれぞれ 直線状に接していたと推認され,これを覆すに足りる証拠はない。そうすると, その中心線は,別紙図面 3 に『道路中心線』として記載された線であったと推 認することができ,その位置は明確であるといえるから,本件位置指定地は, 本件告示 3 号本文が定める『中心線が明確である』という要件を満たすという べきである」と判示している。  次に,信義則については,「(1)原告は,本件位置指定地は,長期間にわた り2項道路に該当しないという取り扱いを受けてきたにもかかわらず,本件位 置指定地が2項道路に該当することとなれば,このような状態を根底から覆さ れるから,本件処分は信義則に反し,又は行政権の濫用に該当する旨主張する。 (2)たしかに ・・・・・・(略)・・・・・・ 被告は,昭和 50 年 9 月 1 日に原告らに対し てなされた建築確認処分及び昭和 54 年 7 月 6 日にBに対してなされた建築確 認処分においては,いずれも,本件位置指定地が2項道路に該当しないという 取り扱いをしたことが認められるから,本件位置指定地に関する被告の対応は 本件処分の内容と符合しないものであったというべきである。  しかしながら,前記認定のとおり,本件位置指定地は,基準時において,法 42 条 2 項本文及び本件告示 3 号本文の定める要件を満たす2項道路であった と認められるのであるから,被告が,これに反する誤った対応を行ったことが あるとしても,そのことによって,本来2項道路である本件位置指定地が,信 義則違反あるいは行政権の濫用であるとして,2項道路に該当しない道になる と解することはできないといわざるを得ない」と判示している。  以下,これら 2 つの判決について,若干の分析を試みてみることとしたい。

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 なお,この分析は,2項道路と信義則一般の視点から 2 つの判例に加えられ るものではなく,あくまでも,本稿の問題意識からのアプローチとなっている。

Ⅴ 平成 18 年最高裁判所判決および平成 19 年東京地方裁判所判決

の分析

 すでに本稿で引用した松本論文は,2項道路問題を,施行規則改正の観点か ら,次のように指摘している。これも少し長いが,そのまま引用してみよう。  すなわち,「特に,いわゆる2項道路については,昭和 25 年の建築基準法施 行時に個別の路線の位置を明示することなく指定条件を示して包括的に指定さ れたものが多い。このため,現時点では既に指定当時の状況がわからなくなり つつあり,建築基準法上の道路かどうかの判断や中心線の位置の確認が極めて 困難になってしまっているのである。  2項道路に関して頻繁に見受けられるトラブルとしては,昔家を建てたとき は2項道路でないと言われた(はず)が,今になって2項道路であるのでセット・ バックが必要といわれた(あるいはその逆)というケースや,以前セット・バッ クしたにもかかわらず建替えの際に再度セット・バックを求められたケースな どがある。こうしたトラブルのほとんどは,2項道路の指定に関する情報が適 切に管理されていないことに起因する」(57)との指摘である。  このような指摘を踏まえたうえで,以下,本稿の対象とされる 2 つの最新の 判例に分析を加えてみることとしよう。  第1に,すでに別稿で分析を試みて示したように,平成 14 年最高裁判決は, 路線に焦点をあて,建築基準法制定時や基準時等に包括指定に係る2項道路は, すでに厳然として存在しており,それゆえ処分の存在・不存在の確認訴訟を利 用させれば足りるとの理解を示したと考えられる(58)  しかし,かつて筆者も指摘し(59)松本論文でも,ここで見たように指摘され ているように(60),それは厳然として存在するものではないという現実を,問

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題を捉える前提として確認しておくべきであろう。行政庁の判断が,同一の道 についてその後,2項道路としての取り扱いをしたりしなかったりという事実 は,このことをよく示している。道路台帳・調書等の整備という,規則改正や 東京特別区の案もこのような行政実務の現状と事実から出されているわけであ る。  第2に,それゆえ,筆者などは,後の何らかの有権的な行政庁の行為を捉え るべきと考えてきたが(61),平成 14 年最高裁判所判決と異なり,平成 18 年最 高裁判決,平成 19 年東京地裁判決は,むしろ「現在」に焦点をあてているよ うである。この点,筆者は,平成 18 年判決,平成 19 年判決を積極的に評価し 歓迎するが,平成 14 年判決と平成 18 年・19 年判決は判例理論としては矛盾し, 一貫性を欠くこととなっている。  この点を,さらに具体的に指摘してみることとしよう。平成 18 年最高裁判 決は,「後」の建築確認で2項道路であることを前提に建築基準法上の接道義 務を充足した者が,さらにその後の訴訟で2項道路ではないとの主張を行うこ とが信義則に反するとする。そこで,本判決に関する秋山評釈も「観念的な指 定たる2項道路の一括指定がいわば顕在化する,建築申請の場面とそれ以降の 場面とに焦点を当てたと考えられる」(62)と指摘し,その原因を「基準時におけ る2項道路の要件を正面から立証することが困難であるという上述の問題状況 が,色濃く反映されている」(63)という点に求めている。筆者も,この指摘は, 正しいと考える。  次に,平成 19 年東京地裁判決はどうであろうか。東京地裁判決は,平成 14 年最高裁判決との整合性を何とか保とうと努力したと位置づけることはできる ように思われる。ところで平成 14 年判決は,包括指定に係る2項道路は,基 準時等の「過去」の時点で厳然として存在しているとの理解のうえに立ってい るものと考えられる。しかし一方で,この「過去」の時点に焦点をあてた場合, その立証はきわめて困難となる(64)。その証左として,この平成 19 年判決と同

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一事案を扱っている中野区建築審査会裁決は(65),次のように述べている。  「本件道部分が道状の空地として存在していることは一応認められるものの, その他の証拠をもってしても,本件道部分の基準時における位置を明らかにす る図面,標石及び壁面等の存在は明らかでない。この点,本件道部分の昭和 40 年前後頃の状況を撮影した写真が証拠 ・・・・・・(略)・・・・・・ として提出されて いるものの,その状況を見ても本件道部分の幅員及び道路敷地の範囲は必ずし も一定しない状態であり,写真中の敷石の存在をもってしても,それよりも相 当前の基準時において『中心線が明確である』とまでは認めることができない。  なお,職権調査の結果,本件道部分の南側端付近には 4 個の標石が,本件道 部分の北側端付近には 1 個の標石が,それぞれ現存することが一応認められる が,これらのうちの 2 点を結ぶ線が本件道の中心線ないし道路敷地の範囲を画 する線であるとまでは認める証拠がない」として2項道路ではないという認定 を行なった。  このような状況であるから,東京地裁は,まさしく,中心線については,厳 然としてある(はず?)具体的な2項道路とするために「推認」をせざるを得 なかったのであろう。筆者は,過去の立証は困難なので「推認」手法も評価は できると考えるが,厳然としてあるものなので,平成 14 年判決に照らせば「推 認」は論理矛盾ということになろうか。  ともあれ,「推認」とは「現在」から見た場合の手法であるから,平成 14 年 判決と整合性を保とうとしたことが,むしろ逆に「現在」に焦点をあわせざる を得なくなったと言わざるを得ないであろう。  第3に,平成 18 年最高裁判決は,むしろ具体的な敷地に関する建築確認申 請に焦点をあて信義則違反と構成する。しかし,別稿ですでに指摘したように, 平成 14 年最高裁判決はむしろ路線に焦点をあてていると考えられるので(66)

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この点で,判例間に矛盾が生じたと考えざるを得ないであろう。  なお,2項道路問題は,路線と敷地双方を考慮する必要があるから(67),敷 地にも焦点をあてる理解が示されたことは,一応,評価できようか。なお,東 京地裁平成 19 年判決は,路線・敷地双方に目を向けたという評価も可能かも しれない。  第4に,平成 18 年最高裁判決は,信義則違反を認め,平成 19 年東京地裁判 決は,信義則違反を認めてはいない。  通常は,最高裁判決の結論は常識的であり(68),一方で,私人には信義則上 主張を許さず,行政庁側には,そのたびごとの異なった取扱いを認めるという のでは,法的なバランスを失しているとの感もある。しかし,このいはばアン バランスともとれる 2 つの判決の結論の相違から,2項道路問題の本質を知り うるようにも思われる。以下,具体的に述べてみることとしたい。  そもそも,この 2 つの判決では,根本的なアプローチが異なっている。まず, 最高裁平成 18 年判決は私人間の民事事件であり,金子評釈が,平成 10 年施行 の改正民事訴訟法 2 条での「当事者は,信義に従い誠実に民事訴訟を追行しな ければならない」に言及している(69)ことからも明らかなように民事法的アプ ローチをとっている。  一方で,平成 19 年東京地裁判決は,行政事件訴訟法に基づくケースであり, 行政法的アプローチをとっている。換言すれば,東京地裁判決は,すでに引用 した部分の前提として,次のように述べている。  すなわち,「本件位置指定地は,法 42 条 2 項本文及び本件告示 3 号本文が定 める用件をいずれも満たすものであるから,法 42 条 2 項の道路であるという べきであり」と述べている。  つまり,東京地裁判決は,ともかくも,客観的に2項道路であるのかどうか

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が審理の対象であり,そうであるとするなら,過去にどういう扱いがなされた のかどうかとは別に,現在の時点から法律要件・告示要件に照らし判断すれば 足りるとの理解であろう。  そうであるとするなら,平成 18 年判決の判例時報コメントも認めるように, このケースは「本件の争点は,本件道路が2項道路であるかどうかであり,具 体的には,本件道路が,この地域に建築基準法第3章が適用されるに至った昭 和 29 年 5 月(以下『基準時』という。)に,同法 42 条 2 項にいう『・・・・・・(略) ・・・・・・ 道』であったかどうか」(70)であるから,平成 18 年判決の事案は信義則 という法理を使わずに,客観的に2項道路であるとして処理する方法もあった のではないであろうか(71)  第5に,これら 2 つの判決は,法律要件・告示要件を比較的ゆるやかに解す る可能性を示しているのではないかと思われる。  例えば,平成 18 年最高裁判決の判例時報コメントは,次のように述べている。 それは,「何十年も前の基準時における当該道路の状況を確定しなければなら ず,実際に困難を極めることになる ・・・・・・(略)・・・・・・ 接道義務は ・・・・・・(略) ・・・・・・ 間接的には周辺建物及びその居住者らの安全をも図っていると解され るため,自己の建物敷地が接している土地が建築基準法上の道路であることを 否定するような行動を取ることは,周辺建物の居住者の信頼を裏切る行為であ る」(72)と述べている。つまり,「現在」の居住者の安全が考慮されている。また, すでに述べた,平成 19 年東京地裁判決の「推認」にも,その種の発想が存在 するように思われてならない。  そうであるとするならば,むしろ「現在」に焦点を合わせ,むしろ狭隘道路 の拡幅という点から,法律要件・告示要件を「ゆるやかに解釈」し,「まちづくり」 という政策(73)に生かす糸口を与えた判決と位置付けることもできる可能性が あろう。  例えば,平成 18 年判決の代表的評釈は,「現に建物が立ち並んでいる」との要

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件に関し,厳格な解釈とゆるやかな解釈があることに分析を加えているが(74) 筆者は,当然,ゆるやかに解する説が,今後,有用であろうと考えている。  そこで,むしろ,2項道路か否かの判定を行う行政実務でも行政訴訟実務で も,むしろ「現在」に焦点をあて,道路拡幅により安全性を確保する必要性が あるのかどうかという方向に,法律要件・告示要件をゆるやかに解することや 加えて「推認」することにより少しでもシフトするよう努力する方向性にむか うことが可能であり必要であると考える。

Ⅵ 課題と展望

 平成 14 年判決のように,基準時等の「過去」に焦点をあてる場合,その立 証は困難であるから,その時々で,2項道路であるとされたり,そうではなく, 2項道路ではないとされたり,あるいは主張されたりすることとなる。これが, 信義則が問題とされることとなる理由となっている。  そこで,これにピリオドを打とうとする試みが道路図・道路台帳や調書の発 想となっている。しかし,当然,台帳や調書・道路図への記載自体が有権的行 為として争われることも予想される。しかも,平成 14 年判決を前提とする限 り台帳・図・調書への記載自体は行政処分ではない。その場合,筆者は,公法 上の法律関係確認の訴(当事者訴訟)を許容すべきと従来から主張してきた。  さらに,道路図,調書,台帳へ記載するにあたり,何十年も前の基準時の状 況を確認することは,これもまた困難なことであると言わなければならない。 さて,かつての論稿で筆者は,「2項道路の政策化」との表現で(75),例えば, 本来なら 43 条但書通路であるものを2項道路として扱う実務を紹介したりも した(76)。この点から,本稿で分析を加えた 2 つの判例は,法律要件・告示要 件をゆるめる実務への可能性がありうるから,「2項道路の政策化」に親和性 を有するであろう。

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 もっとも,本来であれば,立法的な解決が求められることはいうまでもな い(77)。ただ,当面は,法律要件・告示要件をゆるく解釈し筆者が言う所の「2 項道路の政策化」を図ることが現実的であろう。  そこで,続稿では(78)2項道路の政策化のツールの 1 つである,協定手法(79) について,自治体からの民事訴訟の提起の可能性を考察することとしたい。  ともあれ,施行規則改正で作成される道路図・道路調書への記載のための判 定では,法律要件・告示要件をゆるやかに解して「推認」して行い,その記載 が抗告訴訟・当事者訴訟等で争われる場合も裁判所も同様にゆるやかな要件で 加えて「推認」して2項道路かどうか判断することを望みたい(80) (1) この建築基準法 42 条 2 項の法律上の目的としては,よく指摘されるように, 昭和 25 年当時,42 条 1 項をそのまま適用したのでは,すでに建っている多くの 建築物が,4 メートル未満の道にしか接道していないことから,それらが違法建 築となってしまうので,4 メートル道路への接道要件を充足しない建築物を「救 済」することに求められている(例えば,建設省住宅局内建築基準法研究会『建築基準 法質疑応答集』3836 頁(第一法規,加除式)参照)。    しかし筆者は,行政実務家の分析(例えば,塩田徳二『建築行政と道路問題(杉並区 狭あり道路拡幅事業とその実態)』(財団法人 杉並区まちづくり公社,1999 年)参照)を 参考に,もう一つまちづくりのための狭隘道路拡幅政策が,旧法たる市街地建築 物法以来存在し,むしろ行政実務では,この「まちづくり」の方に力点のあるこ とを「42 条2項道路の政策化」として示した(田村『建築基準法上の2項道路と行政 事件訴訟法上の処分性再論――当事者訴訟の利用と立法論への要望――』明治学院大学法科 大学院ローレビュー第 7 号 1 頁以下(2007 年))。    なお,感想的なことを述べれば,2項道路問題では,前者の立法時の救済にの み目が向けられて来たのではないかと思われてならない。 (2) 2項道路に関する代表的な文献として,金子正史『2項道路に関する 2.3 の 法律上の問題(上)(下)』自治研究第 78 巻第 2 号 3 頁以下,第 3 号 3 頁以下(2002 年),その後,同『まちづくり行政訴訟』(第一法規,2008 年)所収。 (3) 最(1 小)判平成 14 年 1 月 7 日民集 56 巻 1 号 1 頁,判時 1777 号 40 頁,判タ 1085 号 173 頁。

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(4) 野口和俊弁護士から,この平成 14 年判決については,訴訟法上の「処分性」 を認めたことへの問題点について,最近も,御教示をいただいた。 (5) この点に関する詳細な分析として,晴山一穂「2項道路一括指定を争う訴訟型 式」専修ロージャーナル第 2 号 1 頁以下(2007 年)。また,宮田祥次「建築基準法 上の道路を巡る公法上・私法上の諸問題」中野哲弘=安藤一郎編『新裁判実務大 系 住宅紛争訴訟法』41 頁(青林書院,2005 年)。 (6) 田村「行政事件訴訟法における訴訟ルート選択の混乱と処分性の問題――建築 基準法上の『包括指定』たる2項道路を契機として――」明治学院大学法学研究第 76 号 125 頁以下(2003 年)。 (7) 最も代表的な文献として,小早川光郎=高橋 滋編『詳解 改正行政事件訴訟 法』93 頁以下(第一法規,2004 年),橋本博之『解説 改正行政事件訴訟法』84 頁 以下(弘文堂,2004 年),園部逸夫=芝池義一編『改正行政事件訴訟法の理論と実務』 12 頁(ぎょうせい,2006 年),斉藤 浩『行政訴訟の実務と理論』320 頁以下(三省 堂,2007 年),宇賀克也『行政法概説 Ⅱ』325 頁(有斐閣,2006 年)。    また,行政事件訴訟法に関する最近の文献として,山村恒年編『実践 判例行 政事件訴訟法』(三協法規出版,2007 年)。 (8) 田村「建築基準法上の2項道路と救済――改正行政事件訴訟法と行政不服審査法を めぐって――」慶應義塾大学法学研究第 78 巻第 5 号 271 頁以下(2005 年)。 (9) 田村・前掲論文注 (1)1 頁以下。 (10) 晴山・前掲論文注 (5)25 頁。 (11) なお,晴山教授も「当事者訴訟ととらえた場合,必ずしも一括指定の処分性の 否定を前提とするものと考える必要はない」(晴山・前掲論文注(5)25 頁)ことは 認められている。 (12) 特別区建築審査会委員等連絡協議会建議案検討委員会『建議案検討委員会報告 書』(2007 年)。 (13) 田村・前掲論文注 (1)11 頁。 (14) 塩田・前掲書注 (1)36 頁。 (15) 東京地判平成 14 年 8 月 27 日判時 1835 号 52 頁。 (16) 関連する文献として,日本弁護士連合会行政訴訟センター編『最新 重要行政 関係事件実務研究』89 頁以下(青林書院,2006 年)。 (17) 小早川光郎『行政法講義〔下Ⅱ〕』186 頁(弘文堂,2005 年)。 (18) 田村・前掲論文注 (1)4 頁。 (19) 林試の森公園事件最高裁判所判決,最(2 小)判平成 18 年 9 月 4 日判時 1948 号 26 頁,判タ 1223 号 127 頁の評釈で小早川教授の見解を引用する文献として,佐 藤英世・ジュリスト第 1332 号 50 頁(2007 年)。

(20)

(20) 田村・前掲論文注 (1)11 頁。 (21) 田村「建築基準法上の2項道路と公法上の法律関係確認の訴での違法性――違 法性承継論を手がかりに――」原稿依頼のあった記念論文集掲載予定――原稿提出済。    なお,この違法性に関する論文は,田村・前掲論文注(1)を 2007 年 8 月に脱 稿後,その約 8 割を同 9 月までに書き上げ,残りを 2008 年 1 月に執筆し,電子デー タ上の誤植等を精査し 3 月に出版先に提出された。この経緯をここに示しておく のは,この論文集の出版時期等を筆者の方で把握できないことと,信義則に関す る本稿が,思いのほか早く脱稿され直近の明治学院大学法学研究の原稿提出期限 にまにあうこととなったため,実質後行論文たるこの信義則の論文が,形式的に は日付上先の出版となるため,引用文献等に若干の差異が生じることから,あえ てここでその経緯を示しておくこととした。 (22) 晴山・前掲論文注(5)24 頁。 (23) 田村・前掲論文注(1),(6),(8)。 (24) 判例変更が事実上困難であると考える理由は,最近の最高裁判所の判例理論が むしろ処分性拡大の方向にあると考えられるからである。関連する筆者の論稿と して,田村「建築基準法 43 条 2 項に基づく条例上の『認定』と行政争訟におけ る処分性」明治学院大学法学研究第 81 号 29 頁以下(2007 年)。加えて,2007 年 12 月,最高裁判所は,土地区画整理事業の計画決定につき,第3小法廷から大 法廷への回付を決定した。これにより,かつてのいわゆる青写真判決(最大判昭 和 41 年 2 月 23 日民集 20 巻 271 頁)での処分性否定の判断が変更される可能性が出 てきた(例えば,読売新聞,朝日新聞 2007 年 12 月 6 日)。このように,判例法理が処 分性拡大の方向にあるからなのである。     なお,筆者は改正行政事件訴訟法の下でも,処分性拡大には重要な意義があ ることを認めてきた一人である(田村・前掲論文注(24)46−47 頁)。ただ,包括指 定にかかる2項道路での「包括指定」そのものには処分性を認めるべきではない というのが筆者の立場となっている。 (25) 福井秀夫「土地収用法による事業認定の違法性の承継」西谷 剛他編『政策実 現と行政法』252 頁(有斐閣,1998 年)。 (26) 田村・前掲論文注(1)11 頁。 (27) 田村・前掲論文注(1)参照。 (28) さらに,すでに述べたような意味で「何らかの承継」であるから(田村・前掲論 文注(1)11 頁),「違法性の承継」という文言はサブタイトルにまわし,まさにそ れを手がかりにという意味で「違法性承継論を手がかりに」としたことをおこと わりしておく。 (29) 以上,本文及び注(28)で述べたように,筆者が,違法性の承継を「手がかり」

(21)

として「何らかの承継」という訴訟法上の法理論の構成を採ったのは,平成 14 年判決を前提とせざるを得なかったからである。    つまり,問題ある最高裁判所判決への対応(このようなアプローチについては,阿 部泰隆「宝塚市パチンコ店条例門前払い最高裁判決を受けて,市はどうすべきか」自治実務 セミナー第 42 巻第 10 号 4 頁以下(2003 年),同『続 政策法学講座』(第一法規,2006 年) 参照)としての理解である。 (30) 本稿注(12)掲記の報告書。 (31) 特別区建築審査会委員等連絡協議会建議案検討委員会・前掲報告書注(12)6 − 7 頁。 (32) 田村・前掲論文注(1)7 頁。また,田村・前掲論文注(21)では,「三 行政 実務の動向とその具体例」との項目中「二 道路台帳等の整備」の見出しの中で 取り掲げている。 (33) 特別区建築審査会委員等連絡協議会建議案検討委員会・前掲報告書注(12)7, 34 頁,そこでは,「現地復原性」という表現がとられている。 (34) 平成 19 年国土交通省令第 66 号。 (35) その経緯と内容については,松本 忠「建築基準法の道路に関する図面・調書 の整備及び閲覧について――建築基準法施行規則改正(指定道路関係)の概要――」都 市計画第 269 号 130 頁以下(2007 年)。 (36) なお,行政実務担当者からのヒアリングによれば,この時点までに台帳等の整 備は無理であるとの声が多い。そこで,この平成 22 年 4 月 1 日という施行日は, 微妙となって来ているとの考えもあるようである。 (37) 松本・前掲論文注(35)131,132 頁。 (38) なお,東京特別区のものは,縮尺 100 分の 1 となっている,特別区建築審査会 委員等連絡協議会建議案検討委員会・前掲報告書注(12)34 頁。 (39) 国土交通省『指定道路に関する規則改正について』(2007 年 7 月)。 (40) 松本・前掲論文注(35)130 頁,国土交通省『建築基準法道路関係規定運用指針』 10 頁以下(2007 年 6 月)。 (41) 国土交通省『建築基準法道路関係規定運用指針の解説』12 頁(2007 年 7 月)。 (42) 国土交通省・前掲解説注(41)13 頁。 (43) 代表的文献として,晴山・前掲論文注(5)23 頁,平成 14 年判決の評釈たる, 桐沢秀雄・行政判例百選Ⅱ〔第五版〕337 頁以下(2006 年)。 (44) 筆者が一貫して,当事者訴訟により争いうることの肯定説に立ってきた点につ いては,田村・前掲論文注(1),(6),(8)のそれぞれの文献を参照されたい。 (45) 本稿注(7)掲記の文献を参照されたい。 (46) 田村・前掲論文注(1)8 頁。

(22)

(47) 松本・前掲論文注(35)130 頁。 (48) 田村・前掲論文注(1)8 頁,また,田村・前掲論文注(21)では「四 2項道 路と具体的認定『時』を捉えた訴訟」として項目立てをし論じている。 (49) 最(1 小)判平成 18 年 3 月 231 判時 1932 号 85 頁,判タ 1209 号 72 頁,本判決 に関する代表的評釈として,金子正史・自治研究第 83 巻第 9 号 127 頁以下(2007 年),秋山靖浩・民商法雑誌第 136 巻第 1 号 49 頁以下(2007 年),なお,本稿は, この判決や2項道路と信義則一般を分析の対象とするものではないので,きわめ て代表的な評釈のみを,本稿の趣旨に必要な限りで掲記していることをおことわ りしておきたい。 (50) さいたま地裁平 13(7)392 号,平成 14 年 8 月 20 判決。 (51) 判例集未登載であるから,これらの点については判例時報に掲載されている上 告受理申し立て理由による,判時 1932 号 87 頁以下。 (52) 東京高裁平 14(ネ)5001 号,平成 15 年 8 月 20 日判決。 (53) 判例集未登載,東京地裁平成 19 年(行ウ)122 号。 (54) 「建築基準法第 42 条第 2 項の規定による道路の指定」(昭和 50 年 4 月 1 日中野区 告示第 24 号)。 (55) このように,そのたびごとに2項道路か否かの行政庁の判断が同一の道に対し て分かれるケースのあることは,田村・前掲論文注(1)3 頁。 (56) この中野区の裁決については,田村・前掲論文注(1)の注(17)でも指摘し, その具体的内容は,田村・前掲論文注(21)で裁決書については,処分性の点か ら紹介・言及を行っている。 (57) 松本・前掲論文注(35)130 頁。 (58) 田村・前掲論文注(1)213 頁。 (59) 田村・前掲論文注(1)3 頁。 (60) 松本・前掲論文注(35)130 頁。 (61) 田村・前掲論文注(1)(21)参照。 (62) 秋山・前掲評釈注(49)56 頁。 (63) 秋山・前掲評釈注(49)57 頁。 (64) 具体的な立証方法を摘示し,この困難性を示している代表的な文献として,三 谷 清=石葉光信=島田信次『地方行政をめぐる紛争解決の理論と実際』(関 哲 夫執筆)122 頁(公人社,1971 年),なお,本稿との関係では,秋山・前掲評釈注(49) 57 頁。 (65) 平成 13 年 2 月 7 日中野区建築審査会裁決(9 中建審・請第 6 号審査請求事件) (66) 田村・前掲論文注(1)3 頁。 (67) この点からも,筆者は,直近の行政庁の有権的判断を捉えるべきと考えている,

(23)

田村・前掲論文注(1)参照。 (68) 最高裁平成 18 年判決の結論を支持する見解として,秋山・前掲評釈注(49) 61 頁,金子・前掲評釈注(49)135 頁。 (69) 金子・前掲評釈注(49)135 頁。 (70) 判例時報 1932 号 85 頁。 (71) 判例からは,本件道路にどれだけの建物が接道しているかどうかは不明だが, 仮りに,路線がかなり長く,同様の主張をしうる者が他にも存在する場合にあっ ては,最高裁の判断は一貫性と合理性を保ちうるのか今後,検討してみてもよい であろう。 (72) 判例時報 1932 号 85 − 86 頁。 (73) 「まちづくり」とのコンセプトは,最近,法的・政策的コンセプトとなってい ると言ってよいであろう。このエリアの最近の文献として,芝池義一=見上崇洋 =曽和俊文編著『まちづくり・環境行政の法的課題』(日本評論社,2007 年),金子・ 前掲書注(2)はしがき参照。 (74) 金子・前掲評釈注(49)132 頁以下は,「2戸説」「厳格2戸説」と呼んだが, 平成 18 年判決は「2戸説」を採ったと評価している(金子・前掲評釈注(49)134 頁)。 また,要件をゆるやかに解した従来の判例が存在する点については,秋山・前掲 評釈注(49)57 頁。 (75) 田村・前掲論文注(1)5 − 6 頁。 (76) 田村・前掲論文注(1)6 頁。なお,立ち並び要件について,国土交通省は,「基 準時における状況で判断するものであり,現在の立ち並び状況は2項道路の指定 要件とは直接的には関係ない」(国土交通省・前掲解説注(41))41 頁も,現在の立 ち並びで判定している実務のあることを推測させる表現だが,もしそうであるな ら,その種の行政実務も「2項道路の政策化」と呼んでよいであろう。 (77) 田村・前掲論文注(1)8 頁。 (78) かつての論稿で杉並区の条例上の協定手法による狭隘道路拡幅政策を紹介した が,これにいわゆる宝塚パチンコ条例最高裁判決の適用がないことを論じてみる こととしたい。宝塚パチンコ条例の判決の適用は最近拡大しており(この点の重要 な文献として,阿部泰隆「区と都の間の訴訟(特に住基ネット訴訟)は法律上の争訟にあた らないか(上)(下)」自治研究第 82 巻第 12 号,第 83 巻第 1 号(2006 − 2007)),協定手 法への適用も問題となっている(この点についての詳細な論稿として,山本未来「行政 主体間の争訟と地方自治」が,近く愛知大学法経論集に発表されることと聞いている)。そ こで,建築行政のエリアでこの点を検討してみることとしたい。 (79) 田村・前掲論文注(1)6 − 7 頁。 (80) 秋山・前掲評釈注(49)55 頁も「顕在化」との表現をとる。ただこれは表現の

(24)

問題であるから,本稿で「顕在化」という表現をとっている所で,そのいちいち の引用は行っていない。なお,他の表現上の問題についても同様のスタンスをとっ ている。また,田村・前掲論文注(1)発表後,日本都市センター『自治体訴訟 法務の現状と課題』128−129 頁(2007 年)が,2項道路の法律要件のあてはめを 本来処分ではないので当事者訴訟とする見解に接した。筆者の見解は,田村・前 掲論文注(1)8 頁および本稿で示しているように,法律要件の他に中心線等の 告示要件も含む点で,日本都市センターよりも広く捉えているのに加え,同セン ターの見解は,本質論として後の行為は処分ではないとしているのに対し,後の 後行行為に処分性を許容するのが本来の姿であるとする点(この点から,告示要 件等の処分内容も含め争点としうる抗告訴訟が論理的には正しいと考える)でも, 処分性を広く捉える筆者の見解とは異っている。 【付記】 本稿第3校時点で,規則改正と訴訟に言及する安本典夫『都市法概説』 98 頁以下(法律文化社,2008 年)に接した(6月 30 日)。

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