はじめに
本項では、まず急性呼吸不全の病態、治療、次に早期 経腸栄養を含む栄養療法が適応する病態、最後に疾患 /病態に適合した栄養剤について概説する。呼吸不全 症例への栄養管理の重要性は当然であるが、疾患特異 性を考慮した栄養サポートのデータは未だ限定的である 点には留意する必要がある。1 急性呼吸不全とは
呼吸では、吸う時に空気中の酸素を取り込み、吐く時 に体内で産生された二酸化炭素を排出する。この機能が 著しく障害された状態が呼吸不全である。呼吸不全で は酸素が十分に体内に取り込めず、血液中の酸素が減少 し低酸素血症となる。酸素は生命にとって欠くことはでき ないので、呼吸不全は各組織・臓器に重大な悪影響を 及ぼし、栄養素のミトコンドリア内での代謝にも支障を 来たす。また急性4 4呼吸不全とは症状が1か月以内に起こ る場合いう。血液ガス分析の結果、室内気吸入時 PaO2 <60torr(mmHg)あるいは PaCO2>45torr(mmHg) の値を示せば呼吸不全と診断する。急性呼吸不全の治療は、呼吸不全を起こした原因疾 患の治療と全身に必要量の酸素を供給するための酸素 療法を主体とした全身管理になる。重症例では人工呼吸 管理が必要となる。
*Nutrition Support for the Acute Pulmonary Failure Patient
特集:病態別経腸栄養法~病態別経腸栄養剤をいかに選択し、いかに使用するか?~
各論 エビデンスに基づく病態別経腸栄養法~病態別経腸栄養剤の選び方と使い方~
急性呼吸不全の栄養管理*
keywords:人工呼吸管理、栄養素の役割、至適熱量設定
海塚安郎 Yasuo KAIZUKA ◆社会医療法人 製鉄記念八幡病院 救急・集中治療部Steel Memorial Yawata Hospital, Department of Emergency and Critical Care Medicine
急性呼吸不全は肺酸素化障害が主病態であり、原因は細菌性肺炎、誤嚥性肺炎、間 質性肺炎、刺激性のガスの吸入、敗血症、多発性外傷、ショックなど数多くあり、それら は肺の直接障害によるものと全身性炎症反応の標的臓器となり発症する場合がある。 治療は 、原因への治療と呼吸循環をはじめとする全身管理で構成される。侵襲に伴い 神経‐内分泌‐免疫系が賦活され代謝動態は異化亢進となる。さらに呼吸不全では呼 吸仕事量の増加、挿管による新たな感染症のリスク、広域抗菌薬使用による正常細菌 叢の乱れ、ステロイド使用による高血糖、喀痰力の維持改善の点からも全身管理の一 環として代謝・栄養管理が重要であり、早期からの経腸栄養が推奨される。初期投与設 定では、熱量は25kcal/kg/日(20≦ BMI≦25)とし、使用する栄養剤は1.5~ 2.0kcal/ mL濃度、タンパク質投与量は1.0-1.2g/kg/日、脂質含量15~ 30%を基準とし、血糖値 は120~160mg/dLとする。炭酸ガス産生抑制が必要な病態では脂質含量を増やす。そ の後は血液生化学データの推移を確認し電解質および体液の厳密な管理を行い、その 上で患者の個別性を反映(投与熱量、タンパク質量の調節)した栄養管理を行う。ALI/ ARDS症例への n-3系脂肪酸、γリノレン酸、抗酸化物質を強化した栄養剤は現状では 「考慮すべき」レベルである。
2 呼吸不全の原因疾患
酸素取り込みの場である肺内で起こっている病態は、 換気血流不均衡、シャント、拡散障害、そして肺胞低換気 と説明される。ここでは、臨床で遭遇する頻度の高い3つ の疾患について概説する。1)肺炎
肺炎は、気管支より末梢の酸素と二酸化炭素を交換す る肺胞と呼ばれる部位に起こる感染に伴う炎症、と定義 される。肺胞は気道とつながっているので、同時に気管 支炎も起こす。肺炎では肺胞にまで微生物が侵入し、そ れに対して体の防御機構がはたらき、炎症性の細胞や滲 出液が肺胞内に満たされた状態になる。 肺炎は、主に細菌やウイルスなどの病原微生物により 肺が侵される病気である。肺炎には、感染源を吸い込ん で発病する細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、非定形肺炎な どの感染性の肺炎と、薬剤性肺炎、アレルギー性肺炎な どの非感染性の肺炎がある。いずれにしろ、炎症細胞浸 潤、サイトカイン放出、気道分泌物の増加、気道粘膜の浮 腫により気管支では気流の通過不良が生じ、肺胞では有 効な換気面積が減少する。それゆえ「換気血流不均衡」 が生じ低酸素血症を生じる。炎症反応は肺炎が起こった 局所部位のみならず、その情報が全身に伝達され、その 程度は様々だが全身で炎症反応が惹起され(全身性炎 症反応症候群(Systemic inflammatory response syndrome; SIRS))、生体の代謝動態にも影響を与える。 細菌性肺炎で経気道的に細菌が侵入する場合は誤嚥 (ごえん)を原因とすることが多い。病態改善には、喀痰 のための筋力が重要になる。細菌性肺炎では、起炎菌の 同定、感受性のある抗菌薬投与が第一義的な治療となる。 重症度が高い場合、挿管呼吸管理が必要となる。宿主 が免疫不全/低下状態であれば細菌の駆除は完遂でき ず、新たな細菌感染症を起こすリスクが増加する。2)ALI/ARDS
(Acute Lung Injury/Acute Respiratory Distress Syndrome)
急性肺障害(Acute Lung Injury; 以下、ALIと略) と急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress
Syndrome; 以下、ARDSと略)は先行する基礎疾患を もち、2、3日間の短期間に強い息切れ・呼吸困難が起こり、 急性に進行する低酸素血症で胸部 X線写真上では両側 性の肺浸潤影を認め、かつ心原性肺水腫が否定できるも のである。ALIと ARDSの差異は、PaO2/FiO(動脈2 血酸素分圧/吸入気酸素分圧)の値が300以下であれ ば ALI、さらに PaO2/FiO2の値が200以下であれば ARDSと定義される。 病態は種々の基礎疾患を背景に非特異的炎症が生じ、 肺胞上皮細胞や肺毛細血管内皮細胞が障害され、透過 性亢進型の肺水腫を来たす。原因(基礎)疾患は大きく 直接肺障害(頻度の高いもの;肺炎、胃内容吸引)と間 接肺障害(全身炎症の波及;頻度の高いものは敗血症、 次いで外傷、重症熱傷)に分かれる。それを病歴、画像、 気管支鏡所見、血液生化学データ、血清学的所見、生体 材料の培養などから見極めて診断/治療を行う。 ARDS/ALIに対する薬物療法としては、グルココルチコ イド、シルベスタットがあるが決定的なものでは無い。多 くの呼吸不全で使用されるグルココルチコイド(ex.ソル メドロール、プレドニン)は、(エビデンス上の)臨床的効 果は定かでなくとも、血糖値の上昇などの代謝変動は必 ず来たすので、治療と代謝栄養管理の連携(血糖値測定 の頻度増、インスリン投与の増量等)が重要である。
3)肺水腫
肺の実質(気管支、肺胞)に水分が染みだして溜まった 状態をいう。溜まった水分により拡散障害が起こり呼吸 不全に陥る。肺水腫になるメカニズムには以下の3つが考 えられるが、実際の臨床では2つ以上の病態が絡み合っ ていることも稀ではない。 ①血管内圧の上昇 毛細血管の内圧が上昇して、水分が血管外に押し出さ れる状態。左心不全や過剰輸液などが原因。:この病態 に関しては、循環器疾患、急性心不全の項を参照。 ②血漿膠質浸透圧の低下 血液中のタンパク質(アルブミン)が減少することによ り血管内に水分を留めておけなくなり、血管外に流出す る状態。高度の炎症後や、肝硬変やネフローゼ症候群な どが原因。③血管透過性の亢進 血管壁が水分を通しやすくなり、血管外へ漏出する状 態。上記 ARDS/ALIの主たる病態。 いずれの病態でも生体に加わる侵襲により、神経・内 分泌・免疫系の反応が惹起され、生体の代謝動態が変動 し異化亢進へと向かい、生体内で消費される基質も同様 に変化する。病悩期間における体内タンパク質の喪失を 最低限にし、疾病治療促進に向かう栄養管理法を目指す。
3 人工呼吸管理
1)人工呼吸管理の目的
呼吸不全症例では、鼻カニュラ、マスク、リザーバー付 き酸素マスクによる酸素投与が行われる。これは吸入気 酸素分圧を上げることを目的として行われる。しかし呼 吸が不規則な場合、不穏が見られる場合には吸入器の 酸素濃度は安定しない。酸素投与で効果がない場合に は、非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive Positive Pressure Ventilation; 以下、NPPVと略)、もしくは挿 管による陽圧呼吸管理が選択実施される。その目的は、 以下の3つである。 ①低酸素血症に対する酸素化改善 ②換気の補助;高二酸化炭素血症に対する肺胞換気量の改善 ③努力呼吸に対する呼吸仕事量の軽減 気道管理(開通性、浄化)を患者本人が行える場合で、 マスク装着が受け入れられる場合は NPPVが選択可能 であり、挿管では気道の清浄性の確保、吸気の加湿は医 療者側の管理に委ねられる。 呼吸不全では、呼吸数の増加、肺 コンプライアンス低下、気道抵抗の 上昇により呼吸仕事量が増加してい る。つまり少なくとも呼吸に関する エネルギー所要量は増加している。2)人工呼吸管理における
注意点
陽圧呼吸管理には酸素化改善の 利点があるが、非生理的な換気法で あるため、次の欠点がある。 ①陽圧換気の影響 a)循環器系…胸腔内圧上昇により静脈灌流が減少(心 拍出量低下、血圧低下、尿量減少)、静脈系のうっ血 (肝、消化管うっ血、脳圧上昇) b)肺機能…圧損傷、容量損傷、ズレ応力による障害、炎 症の惹起 ②内分泌系への影響 a)下垂体後葉ホルモンの抗利尿ホルモン(ADH)の分 泌亢進…乏尿 b)副腎皮質ホルモン(アルドステロン)の分泌亢進…体 液(Na)貯留 ③デバイスの影響 a)挿管チューブによる損傷…口腔から気管内の異物で あり、人工呼吸器関連肺炎(Ventilator Associated Pneumonia; 以下、VAPと略)の誘因そのものである b)NPPVマスクによる損傷…マスクによる皮膚損傷、 口腔内乾燥などの問題が起こる可能性あり ④酸素の影響 a)高濃度酸素(FiO2>60%)投与…成人でも酸素中毒 の可能性があり、high PEEP(>12cmH2O)とし可 及的に酸素濃度を下げる対応をするが、これは胸腔 内圧を上げる 以上から人工呼吸管理は、呼吸不全が重症でかつ管 理が長期になるとその弊害が顕在化する。呼吸管理開 始時から抜管に向け原疾患の治療、並びに合目的的な全 身管理が重要になる。なればこそ、その一環として早期 から至適代謝栄養管理を開始する必要がある(表1)。1) 表1 呼吸不全での望むべき人工呼吸管理;的確な診断/病態把握/全身管理 1) 吸気プラトー圧を30cmH2O 以下、吸入気酸素分圧は60%以下 2) 自発呼吸温存の呼吸器モード;使用する呼吸器と患者の病態から選択 3) PEEPレベルは、FiO20.6で PaO270±5mmHgを維持する至適値 4) VAPの対策としてのオーラルケア、腸管管理 5) 体液管理:循環維持し、肺内水分を絞る、目標体重値の設定 6) 入室時栄養アセスメントに基づく至適代謝・栄養管理 7) 厳密な内部環境維持 / 改善;細胞内外電解質、酸塩基平衡 8) 臥床管理の弊害:Kinetic therapy(自動体交ベッド)、半坐位〜坐位、腹臥位 9) 鎮静薬の使用目的の明確化、筋弛緩剤の使用制限(使用しない) 10) 呼吸管理中からの早期リハビリテーション、抜管後の嚥下評価 / 訓練 11) 患者の生活リズムを考慮した睡眠、精神面のサポート 12) 全体を通底したチーム医療の形成3)呼吸管理と経腸栄養管理;
横隔膜を挟んだ胸腔と腹腔
陽圧換気による胸腔内圧上昇での静脈灌流の障害は、 消化管うっ血および横隔膜を介した腹腔内圧上昇により 腸管蠕動を低下させる要因となる。逆に早期経腸栄養に より蠕動改善、排便、排ガスにより腹腔内圧が減少すれ ば、横隔膜の可動性が改善し換気効率および背側無気 肺の改善が期待できる。一方不適切なトリガー感度、呼 吸器モードの設定により呼吸器の設定が合わないと呑 気が起こり、その結果腹部膨満となれば経腸栄養の阻 害因子となる。 一方挿管中には鎮痛鎮静薬が使用されるが、その選 択も経腸栄養の成否に影響する場合がある。塩酸モルヒ ネ、ブプレノルフィンでは使用量により程度の差はあるが 腸管蠕動を抑制する。また鎮静中には、咳嗽反射も抑制 されるため気管内に胃管が誤挿入されても判別し難い場 合が有り、栄養チューブ誤挿入回避、先端位置の確認に は細心の注意が必要である。4 栄養療法の適応と要点
1)積極的栄養介入を考慮する要因
呼吸不全を主訴に入院した症例で、積極的な代謝・栄 養管理介入の対象になるかを考慮する要因を列挙する。 まずどの疾患でも当てはまる項目は、 ①入院前栄養障害;SGA、検査値から判定 ②高齢者;絶対的な年齢より入院前の身体機能、生活歴 ③既往症;糖尿病、心不全、肝障害、腎障害 であり、これに呼吸不全の疾患特異性を考慮すると、 ④入院時の侵襲が過大;炎症所見(CRP髙値、WBC 増多もしくは異常低値)、血小板減少、血液培養陽性、 循環状態不安定(昇圧剤使用、輸液負荷) ⑤経口摂取が不能;3日以上の挿管呼吸管理が予想 される(ALI/ARDS、重症肺炎ではほぼ全例対象と なる)、意識レベルの低下、胃管排液の持続(ex.6時間 で400mL以上)、腹部膨満(呼吸不全では呑気による 腹満に注意) ⑥ NPPV管理で経口摂取によりマスクを外すと酸 素化低下著明;鼻カニュラに変更すると SaO2≦90% ⑦呼吸不全の治療;広域スペクトラム抗菌薬の継続 使用、ステロイドパルス療法 ⑧酸素療法中、抜管後、NPPV実施中の食指不振; 経口食開始後の摂取量目標値の50%以下 などが加わる。 このような項目に該当すれば栄養療法の対象となる。 該当する項目が重複しているほど栄養管理の必要性は 増すが、そのような症例では介入に当たって代謝動態、血 液生化学データのモニタリングなど慎重な対応が必要に なる。 挿管管理をされている重症例では図1の条件を満たし ていることが積極的な栄養療法を開始する重要な要件 になる。下段には要件を満たさない場合の最低限の栄 養法を記載した。2)急性呼吸不全における要点
当然であるが、目的は血液検査データの改善ではない。 目指すべきは、疾患治療のアウトカムの改善である。より 具体的には、救命率改善、挿管期間短縮、ICU在室日数 および在院日数短縮、合併症発生率改善、退院時の ADL維持の程度、再入院率の低下である。それには、至 適栄養管理により、免疫能および創傷治癒機転維持改 図1 呼吸不全症例の栄養療法開始条件;適切な呼吸管理 が実施され、循環が安定している症例の要件、および 満たしていない症例への対応 注)DA:ドーパミン DOB:ドブタミン NA:ノルアドレナリン 循環動態が不安定な状態を脱した場合: 不安定な状態の定義 ・高容量カテコラミン投与時(DA and/or DOB>8γもしく は NA併用時、NA 単独 >0.2γ) ・輸液・輸血にて循環補助を必要としている ・乳酸値(Lac)が髙値持続、乳酸値が改善しない;嫌気性 代謝であり利用障害 この状態が改善すれば栄養療法を開始可能 呼吸不全時の呼吸管理条件: 循環状態が不安定なら;FiO2≦60%で SaO2≧90%、 循環に問題が無い呼吸不全;FiO2<80%で SaO2≧90% 呼吸器の設定がこの条件を満たせば栄養療法を開始可能 循環 /呼吸管理の条件が栄養投与開始条件を満たさない場合 ・入室から24〜48時間以上;主輸液からブドウ糖400〜 kcal/日 +血糖値管理 ・排便があり、胃内逆流(-); 胃内持続投与10mL/ 時(max.480kcal/日) バイタルサインの変動(血圧低下、頻脈、呼吸苦)、 注入以上の胃内逆流、腹満、腹痛があれば中止善、呼吸筋(横隔膜、肋間筋、胸鎖乳突筋、腹直筋、腹斜 筋等)、骨格筋、および内臓タンパクの可及的維持、臓器 障害進展阻止が必要になるが、経過中これを客観的に知 ることは出来ない。 実際の栄養療法の実施に当たり継時的変化を知る指 標として血液生化学データの推移を参考にする。ただし、 侵襲(の継続)時には栄養指標(血清アルブミン、総コレス テロール値、トランスサイレチン等)の改善は多くの要因 により困難であり、それのみを指標に投与エネルギーを 増加すると、相対的な過剰栄養に陥る危険が高い。その 場合には、栄養療法の副作用を評価する血糖値、血中尿 素窒素(BUN)、トリグリセリド値が異常値への推移する ことを回避する投与エネルギー、栄養素投与量を設定す ることで、安全マージンを持った栄養管理が可能である。 重要なことは、重症病態ほど投与エネルギーが多く必要 な訳ではなく、至適栄養投与量の幅が狭いと認識するこ とである。 また、術後症例のような定型的経過を取ることが少な い急性呼吸不全、特に ALI/ARDSでは、現在どの病期 病態(Mooreの説では、障害期、転換期、同化期等)にあ るかを理解する必要があるが、存外に難しい。栄養状態 の改善がない、血糖値の上昇などでおかしいと思ってい ると新たな合併症(障害期の再来)が判明することも少な くない。呼吸不全では抜管し、抗菌薬等の薬剤も中止に なり、充分量の経口摂取が出来るまでは気が抜けない。
5 栄養療法の実際
本項目に関しては既に、「急性呼吸不全による人工呼 吸患者の栄養管理に関するガイドライン」2)を日本呼吸療 法医学会が作成している (人工呼吸 27巻1号,p75-118. 2010年;著者も編集委員として参加)。現在その Ver.1.0版がインターネット上から PDFで自由にダウン4 44 4 4 4 ロード可能4 4 4 44である(http://square.umin.ac.jp/jrcm/ pdf/eiyouguidline.pdf)。 内容は1980年1月~2009年7月の当該論文にランクづ けをし、各項目について推奨度をつけたものである。また 既に対象論文を2010年12月までとしたVer.1.1が作成済 みであり、近日中に学会ホームページ上にアップされる予 定である。呼吸管理を必要とする重症症例の栄養管理に 関し、詳細な項目立てをしてエビデンスに基づく指針、そ の推奨度および解説が記載されている。本邦の医療事情 を考慮し、利益相反にも配慮した日本語のガイドラインで あり参考にされたい。欧米の栄養関連学会ガイドラインよ り作成年度が新しく、その点からもお勧めである。 そこで述べられる急性呼吸不全症例への栄養管理の 基本的な事項を、確認のため抜粋列記する(根拠となる エビデンス、推奨度についてはガイドライン本編を参照さ れたい)。 これを基本に 、各施設の実情に合った、患者の個別性 を考慮した栄養療法を実施することが現実的である。1)栄養療法の開始
治療開始前に、体重減少、栄養歴、病態の重症度、理 学的所見、腸管機能などから栄養評価を行うことを推奨 する。2)栄養療法の選択
栄養療法を必要とする患者には、静脈栄養(PN)より も経腸栄養(EN)を推奨する。3)経腸栄養
①経腸栄養の開始時期; 適切な呼吸管理が実施され循 環状態が安定している症例では、入室時もしくは侵襲後 24~48時間以内の早期に経腸栄養を少量から開始する ことを考慮すべきである。 ②経腸栄養開始時の腸管機能の評価;腸蠕動音、排便 排ガスの確認が取れなくても経腸栄養を開始することを 推奨する。 ③経腸栄養開始時の循環状態の評価;循環状態が不安 定な症例(ショック状態、高容量カテコラミン投与時や、 輸液・輸血にて循環補助を必要としている)では、経腸 栄養は循環状態の安定が得られるまで開始を留保する ことを推奨する。 ④経胃内栄養と小腸内(幽門後)栄養;両投与法とも選 択可能な投与経路である。誤嚥の危険が高い、または胃 内投与が実施できない場合には、小腸にチューブを留置 して経腸栄養を行うことを考慮すべきである。 ⑤経腸栄養と誤嚥の危険性; 経腸栄養実施中には、常 に誤嚥の危険度の評価し、胃内停滞により逆流のリスクが疑われる症例では、リスクを減じる手段を考慮すべき である。その手段には、以下の項目が挙げられる。 a)ベッドの頭部(上半身)を30~45°挙上することを考 慮すべきである。 b)消化管蠕動促進薬の使用を考慮すべきである。 c)誤嚥の高リスク症例や胃内投与不耐症(intolerance) では、持続注入に切り替えることを考慮すべきである。 d)チューブ先端を幽門後へ進めて留置することを考慮 すべきである。 ⑥経腸栄養実施時の投与エネルギー設定;栄養療法開 始に際し、推算式による計算値もしくは間接熱量計によ る測定結果を用いて目標投与エネルギーを設定すること を推奨する。 本編6-2)参照 ⑦投与エネルギー増量計画の実際;開始後は1週間をめ どに目標量(一日投与量)の少なくとも50%以上を目指し 増量することを考慮すべきである。さらに積極的に投与 量増加をはかる場合(少なくとも目標量の80%以上)に は、施設の実情にあったプロトコールの作成を推奨する。 ⑧目標設定エネルギー量に到達できない場合;経腸栄 養開始と同時に静脈栄養を併用するメリットは無い。7 ~10日に至ってもその時点で目指すエネルギーに到達す ることができない場合は、静脈栄養の併用を考慮すべき である。 本編6-2)参照
4)静脈栄養
重症病態では不可避な栄養投与ルートであり、習熟す る必要がある。開始後の栄養投与量は安定しているが、 かえって投与熱量設定に注意を要する。カテーテル類の 管理も重要である。 ①静脈栄養の適応;静脈栄養は経腸栄養が不可能な場 合に考慮すべきである。 ②静脈栄養時の投与エネルギー量; 急性期には設定エ ネルギー投与量の80%をゴールとし、過剰なエネルギー 投与にならないよう考慮すべきである。5)低リン血症の回避
重症患者においては血中無機リン濃度を継続的にモ ニターし、低リン血症を来たさないよう適切に補正するこ とを推奨する。6)血糖値管理
栄養管理中には血糖値管理プロトコールを作成し積 極的な血糖値管理を行う。その場合の血糖管理目標値 は120~160mg/dL とし、180mg/dLを超えることなく 変動幅を少なくし、かつ低血糖の回避に細心の注意を払 うことを推奨する。6 経腸栄養剤の選択
1)栄養素
急性呼吸不全の病態生理から考えられる、各栄養素 の役割、注意点を述べる。 ①炭水化物 主要なエネルギー源として重要であり、経腸栄養剤で は、グルコースが重合したデキストリンとして含有し浸透 圧を調節している。侵襲下ではまず血糖値の上昇が問題 である。上記のごとく管理目標値を設定してインスリン使 用下に血糖値管理を行うが、栄養療法中に陥りやすい高 血糖+高インスリン血症の状態は回避する必要がある。 理由は、血液中にインスリンが多量に存在すると腎臓で のナトリウム排泄機能が低下するので、体内の水分は貯 留傾向となり、呼吸不全の水分管理の原則とは逆行する。 さらに、高インスリン血症は交感神経を緊張させるので 循環状態にも影響する。運動負荷がない重症病態ではイ ンスリンが脂肪細胞、特に内臓脂肪組織の脂肪細胞にブ ドウ糖や脂肪を取り込ませる3)~6)。インスリン投与量の上 限は個々の症例で異なるが、当院では上限を原則100U/ 日(糖尿病既往例では150U/日)としている。炭水化物 投与量の問題は二酸化炭素産生にも関与している7)~11)。 炭水化物燃焼による炭酸ガス産生量は呼吸商(以下、RQ と略)=1.0であり消費酸素量と同等である。しかし炭水 化物投与が過剰になり炭水化物から脂質が合成される (lipogenesisi)場合には、1.0< RQ<8.0の髙値となる (=二酸化炭素の過剰産生)。結果として測定 RQ>1.0 となり、炭酸ガス排出により多くの有効肺胞換気量を必 要とする。挿管中はまだしも、抜管の阻害因子となり注 意が必要である。 以上から、侵襲下投与熱量設定と炭水化物含量が重 要になる。最低投与量は100~150g/日、lipogenesisi 回避のため経静脈栄養時にはグルコース投与速度は4mg/kg/分以下を総投与熱量に占める割合は40~ 60%を推奨する。 ②脂質 2つの考慮すべき点がある。主要熱源としての脂質投 与量設定と機能性脂質の役割を考慮した組成並びに投 与量になる。 熱源としての脂質は1gで9kcalの熱量を産生し、かつ その際 RQ=0.7と低値であり、二酸化炭素産生量が少 なくて済む。またインスリン非依存性にエネルギー産生 が可能である。その点に関し、呼吸不全で炭酸ガス呼出 障害がある場合(COPDの急性増悪後)や、ステロイドパ ルス療法などの高血糖症例に対する高脂肪/低炭水化 物の栄養剤の有効性が報告されている12)~14)。その場合 の高脂質の上限は60%と考えられる。上記病態以外では 総投与熱量に占める割合は15~30%が推奨される。一 方最低投与量は総エネルギーの2~4%である。少量の経 腸栄養が施行出来ている重症患者関しては大豆由来の 脂肪乳剤の積極的投与は不要であろう。 また経静脈投与される脂肪乳剤は、血中で人工脂肪粒 子のリポタンパク化の上限があり高脂血症および、網内系 機能抑制回避のためにも投与速度の上限がある。上限は トリグリセリドに換算して0.1g/kg/時となる15)。TPN症 例での開始時期に関しては、侵襲制御のめどがつき、投 与エネルギー増量を考慮する数日から1週間をめどに使 用を開始し、モニタリングを行い投与速度に注意を払い 漸増し、総エネルギーの15~20%を供給するようにする。 これによりTPNでの必須脂肪酸の補充も可能となる。 次に機能的脂質に関しては、ALI/ARDS症例に対す る魚油由来の n-3系脂肪酸の効果が検討されている。経 腸からの単独投与での有効性を示すデータは無い。一方 n-3系脂肪酸、γリノレン酸、抗酸化物質を強化した栄養 剤オキシーパⓇでのALI/ARDS症例に対する有効性 が報告されている16)~18)が、最近になり同様な組成の栄 養剤を投与した ALI症例での検討で、否定的な報告 (The OMEGA study)がなされ19)今後の動向が注目さ
れる。 魚油(n-3系不飽和脂肪酸)含有の脂肪乳剤(他にもコ コナッツ油(MCT)、オリーブ油(n-9系)由来、およびそ れらを混合した脂肪乳剤等も)は欧州などでは販売され ているが、本邦は未発売であり現状使用できない。 ③タンパク質 侵襲下における異化亢進、窒素バランスを考慮したタ ンパク質量の決定とアミノ酸の中で侵襲下免疫調整の役 割が期待されるアルギニンおよびグルタミンの使用が考 慮される点である。 まず侵襲下のタンパク質投与量は、1.2~2.0g/kg/日 に調整することを考慮すべきである20)~23)。ただし、タン パク質投与により腎臓への負荷が増し、高齢者、腎機能 低下症例では、それによりBUN値の上昇等の腎機能悪 化の可能性があることを念頭に置き、常に検査値の推移 に留意すべきである。侵襲が制御出来なければ、栄養療 法のみでは異化亢進の改善はかなわない。当院では、70 歳以上の高齢者では入院時採血値で腎不全がなくても 初期投与目標(入室4~7日目の達成値)を1.0 g/kg/日と している。その背景には、呼吸管理の一環として肺内水 分減少のため利尿剤により細胞外液を絞り、腎臓に負担 をかける可能性のある抗菌薬その他薬剤を使用すること がある。開始後検査データの推移を確認し、必要に応じ 経腸栄養剤の変更等により個々の症例に合わせタンパク 質投与量を増やしている。その結果として1.2~2.0g/ kg/日に落ち着くと解釈している。 アルギニンは非侵襲下では創傷治癒を高め、リンパ球 を中心とする免疫細胞の機能を高める。一方炎症性メ ディエーターの存在下では一酸化窒素(NO)産生の基質 として働く。NOは生体防御機構の重要因子であるが、 血管拡張作用があり低血圧を誘発する危険がある。アル ギニンを強化した免疫調整栄養剤は術前投与の有効性 などが報告されているが、重症度の高い敗血症患者で死 亡率が増加した報告があり24)25)、呼吸不全では重症敗 血症からのARDS症例などに使用することは奨められ ない26)~ 31)。ただし、これらの報告はアルギニン単独の 効果を比較したものではなく、市販の免疫調整栄養剤を 用いているものが多いため、他の栄養素の影響を考慮す る必要がある。呼吸不全の一部の病態では積極的使用 を控えると理解できる。 次にグルタミンであるが 、その作用は抗酸化反応、免 疫機能維持、熱ショックタンパク産生、核酸合成などに関 与し、侵襲下では筋タンパクから取り崩し(崩壊)により必 要部分に供給され、条件付き必須アミノ酸と呼ばれる。 消化管においては腸上皮細胞の栄養となり、腸管の
integrityを維持する。そのようなグルタミンを強化した 経腸栄養の投与は熱傷や外傷患者で有効性が報告32)~35) されており(その場合の推奨投与量は0.3~0.5g/kg/日) 考慮すべきだが、それ以外の原因による呼吸不全症例 へのグルタミン強化経腸栄養の投与を推奨する十分な データはない36)~39)。 静脈投与は、本邦では未発売だが、グルタミンをアラニ ル‐グルタミンとし安定させた輸液製剤があり、呼吸不 全症例を含む重症病態の静脈栄養時にはグルタミンを 添加することは推奨される40)~44)。ただし栄養を主に経 腸栄養から投与されている場合、グルタミンの経静脈投 与を推奨する十分なデータはない45)。 また静脈栄養時、分岐鎖アミノ酸を強化した製剤の使 用を推奨する十分なデータはない46)~49)。
④電解質(Na, K, Ca, Mg, Cl, P, HCO3−)
充分量の投与により予後を改善する電解質は存在し ない。ただし、細胞内外電解質のモニタリングを適正頻 度で行い、常に生理的範囲に留めるよう補正に務めるこ とは非常に重要である。輸液管理、陽圧呼吸管理、挿管 による呼気中不感蒸泄の喪失 、利尿剤、入院前低栄養、 炎症の持続、低アルブミン血症、貧血は、電解質、体液分 布の撹乱要因である。症例によっては、栄養剤、輸液に よる電解質投与量、尿、便、および体液排液の電解質を 測定し、電解質出納を厳密に管理する必要がある。 ⑤ビタミン類 重症病態での必要量は不明な部分が多く、欠乏症回 避のため RDI(Recommended daily intake)を100% 満たすことが原則である。注意点は、体重が少ない症例 で投与熱量が1000kcal/日以下で維持管理される場合 は、経腸栄養のみではビタミン類の不足を来たす場合が ある。使い慣れた栄養剤の電解質およびビタミン含量を 把握しておくことが望ましい。抗酸化ビタミン(ビタミン C、 ビタミン E、β-カロテン、コエンザイムQ10)では、重症病 態でのビタミン C(PN)+ビタミン E(EN)補充の有用性 が2つの RCT論文で示されている50)51)。ただし2つの論 文ではその投与量、期間とも異なっており推奨投与量の 決定は困難である。急性呼吸不全症例に薬理学的量投 与することで予後を改善することを示すデータは無い。 ⑥微量元素 こちらもビタミン同様重症病態での必要量は不明な部 分が多く、欠乏症回避のため RDIを100%満たすことが 原則である。敗血症症例でのセレン補充(PN)の有効性 が報告されている52)~55)ものもあるが、至適投与量は未定 である。さらに本邦では市販のセレン静注用製剤はなく、 院内調剤および倫理委員会等での承認手続きがいる。
2)栄養剤栄養剤の選択;当院での実際
①濃度 上述した急性呼吸不全の水分管理を必要とする病態、 昇圧薬および抗菌薬溶解液、ルート確保の輸液などの不 可避な水分投与が必要となる等の理由で、栄養投与時の 水分は可及的に制限することが望ましい。ゆえに1.5~ 2.0kcal/mLの濃度の栄養剤が奨められる。各栄養剤 の水分含量は各製剤のパッケージに記載されているので 確認する。 ②投与エネルギー 当院では、3日以上の挿管症例では高濃度酸素暴露下 の症例も含め、間接熱量測定を行いその値(EE)を栄養 療法初期設定値(入室数日~7日目の目標値)として管理 している。頻回に EEを測定しより厳密に投与熱量を設 定する有効性も報告されている56)。当院のデータ解析か らは、急性呼吸不全では推算式を用いる場合、健常時実 体重をもとに、25≧ BMI ≧20では初期設定量は 25kcal/kg/日、BMI>25では理想体重に補正して 25kcal/kg/日、BMI<20では30kcal/kg/日で過不足 ない一定のレンジに入る栄養管理が可能である。その後 の投与熱傷は、侵襲のコントロール状況、血糖値、インス リン使用量、肝腎機能評価に基づき維持、増量、時に減量、 組成の変更を考慮している。また、経腸栄養開始後目標 熱量に達しない場合でも、1週間程度は静脈栄養を併用 は避けるべきである57)。回復期に EEを用いる場合には、 投与熱量を測定値の1.2~1.3倍としている。 病期が転換期から同化期になると代謝動態も異化亢 進状態が戻り、結果、インスリン使用量が減り、血液デー タの栄養指標は、栄養療法成否に応じデータの改善が見 られる。この時期には、挿管の有無に関わらず、ベッド上 で坐位をとらせる等の運動負荷を与え、投与エネルギー 、 タンパク質を増加する。疾病が治癒に向かった後も、手 を抜かず継続して積極的な栄養管理(経口摂取量を把握 することも含めて)を行うことが重要である。この時期に適切な栄養管理が継続できて、初めて 失われた体タンパクと身体機能が改善 する。 ③組成の選択 上記栄養素の組成をベースに、各症 例の病態に合わせ、院内採用の各種栄 養剤を選択使用する。重症呼吸不全 でも、腎機能低下があれば、タンパク質 含量が制限された腎不全用栄養剤を 選択することもあり得る選択肢である。 また各栄養剤の価格を考慮することも 重要である。
7 当院における急性呼吸不全
症例への栄養管理:
単純で効果的栄養量介入
当院 ICUにおけるプロトコールを示 す(表2、図2)。入室時から腸管管理 を行い、腸蠕動を回復促進させ排便を 得た後、一番簡便な胃管からの間歇投 与で経管栄養開始している。人工呼吸 器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia; VAP)対策からも早期 に腸管の順行蠕動を回復し、腸管機能 を維持することは重要である。 呼 吸 不 全 症例では、積極 的に 2.0kcal/mL濃度の一般組成の栄養 剤を選択している。当院では2種類の 製剤(テルミールⓇ2.0α、アイソカルⓇ・ 2K Neo)が採用されており、各々タン パク含量が3.625g/100kcal(43.5g/ 1200kcal)と3.0g/100kcal(36g/ 1200kcal)である。腎機能、水分管理 計画、投与熱量からタンパク投与量を 勘案し選択している。投与開始後には、 腎機能を反映する検査値の推移、尿中 窒素排泄量を測定し、必要であれば乳 清由来のタンパク粉末等の添加、もし くは、よりタンパク濃度の高い製剤へ の変更を行い、タンパク質投与量を調 表2 腸管管理法;入室後から継続して、腸管機能を意識した管理を行う 1)血管内容量を維持する輸液管理(腸管循環の確保、肺内水分量調節) →経腸栄養可能な循環安定、目標 Hb 値設定し輸血、 浸透圧利尿薬(D-mannitol)持続投与 2)強心昇圧薬の選択 →ドブタミン、小容量ノルアドレナリン 3)腹単から胃・腸管ガス像、腸管壁の継時的変化;蠕動、浮腫の有無確認 →小腸ガス、腸管壁浮腫の可能性:消化管蠕動改善処置、アルブミン製剤投与 4)腹腔内圧の正常化(消化管内減圧による胃、腸管血流の改善、横隔膜可動性確保) →セイラムサンプTM管、イレウス管の使用 5)入室初期からの腸内細菌叢管理 →緩下剤効果をもつ腸内細菌叢利用二糖類 D-ソルビトール(ラクツロース)、 乳酸菌製剤の使用 6)その他消化管蠕動促進薬、排便促進薬の使用(胃内排出促進〜排便誘発) →メトクロプラシド(プリンペラン)、クエン酸モサプリド(ガスモチン)、 六君子湯、エリスロマイシン、大建中湯、ジノプロスト(PGF2α)、 バサコジル(テレミンソフト)、グリセリン浣腸、 7)禁忌でなければ、排便後早期経腸栄養の開始;経胃管から、間歇もしくは 持続投与 8)下痢に対しては原因を精査し対応 性状、臭気、便培養、CDトキシン、使用抗菌薬スペクトル・投与期間、 投与薬剤の確認、 →乳酸菌製剤、止痢薬の投与 9)H2ブロッカー、PPI の使用条件設定 →胃液pH <4、消化性潰瘍内服中、抗凝固療法時では使用を考慮する 図2 当院重症患者早期栄養管理基本プロトコール 注)DA:ドーパミン DOB:ドブタミン NA:ノルアドレナリン ・栄養アセスメント(疾患の侵襲度、栄養状態、身体所見) ・腸管機能評価、腸管器質的障害の有無判定 ・腸管機能改善を図る ( 腸管管理) ・経鼻(口)胃管挿入(挿管・意識障害):胃液逆流量の測定 ・胃内 pH の測定(制酸剤の使用の必要性判定) 経管栄養開始時:まず経胃管投与を試みる ・排便確認後注入開始:栄養剤選択(濃度1.5〜2.0kcal/mL、病態別) ・胃管排液:徐々に減少、約250mL/6時間以下等では開始 ・1回100〜200mL から増量 ・初期到達目標熱量:25kcal/kg/日 ・注入条件:速度50〜100mL/ 時、2〜6回 /日、必要時持続注入 ・循環動態:DA and/or DOB8γ以上では、待機、注入量、速度の減量 ・胃管先端の確認(胃液逆流法>注入音法、毎回の確認) ・注入時頭上位(15-45°)、注入終了時右側臥位 経管栄養継続中 ・早期経腸栄養継続可能の要件:中止・見合わせ・減量基準 ・循環動態: DA and/or DOB8γ 以上必要時、NA併用時 ・消化器機能:注入後に嘔吐、腹痛 ・2時間後注入物と同一性状が半分以上が胃管より吸引 ・血糖コントロール:140±20mg/dL、生化学データ確認 ・実注入量の把握、設定熱量への漸増 ・至適熱量、栄養素投与:栄養剤選択、タンパク質量補正 ・嘔吐時:注入体位、速度、薬剤投与 ・下痢:その原因を検索、対応 ・経腸栄養で必要カロリーが一定期間満たされない場合の併用: 末梢(脂肪乳剤を考慮) 、中心静脈栄養(投与熱量は制限) ・中止 ・見合わせ ・減量基準の設定 ・実投与量の把握 ・排便状況 ・合併症対策 ・病態の評価 ・チューブの幽門後留置 ・静脈栄養 胃管栄養困難例 入室時 管理中参考文献
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