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「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」の改定

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1. は じ め に  日本建築学会「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」1) (以下,RC 配筋指針)は,1979 年に初版が刊行されて 以来,日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・ 同解説」2)(以下,RC 規準)と日本建築学会「建築工事 標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事」3)(以下, JASS 5)の間を取り持つ橋渡し的な役割を担ってきた。 RC 規準には応力解析や断面算定の詳細が記述され, JASS 5 には配筋施工の概念的な記述がされているが, 両者だけでは実際の施工に関する情報に不十分なところ が多い。RC 配筋指針は配筋関係の設計と施工に関して RC 規準と JASS 5 を補い,設計図書作成の手引きにな ると同時に,配筋工事の施工方法を解説している。RC 配筋指針は表-1 に示す章立てで構成されている。  図-1 はこれまでに刊行された RC 配筋指針がどの RC 規準と JASS 5 に対応しているかを,線を結んで示して いる。現時点で RC 配筋指針の最新版は 2010 年 11 月に 発行された第 5 版である。本稿はこの 2010 年度版の RC 配筋指針の改定内容について解説する。2010 年版の RC 配筋指針は,2009 年 2 月に改定された JASS 5 と 2010 年 2 月に改定された RC 規準に整合している。JASS 5(2009 年版)は RC 規準(2010 年版)に先行して発行されたが, JASS 5(2009 年版)の改定作業時に RC 規準(2010 年版) の改定内容がほぼ固まっていたため,JASS 5(2009 年版) の配筋工事に関わる部分には,RC 規準(2010 年版)の改 定内容が取り入れられている。  RC 配筋指針の改定作業は材料施工委員会のもとに設 置された鉄筋工事小委員会で行われ,委員会は,設計事 務所や総合建設会社の構造設計者および研究所員,試験 機関の試験所員,都市再生機構の構造設計・監理担当者, 鉄筋工事会社の社員,および大学教員で構成されている。 2. RC 配筋指針改定の概要  ここでは RC 配筋指針 2010 年版の改定点について簡 単に解説する。改定の内容は RC 規準や JASS 5 の改定 に合わせる形で行われているが,よりよい方法として採 用されたり変更されたりした事項もあり,それぞれが配 解説

「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」の改定

小野里憲一

*1

・大野 義照

*2  概 要 2010 年 11 月に「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」が改定された。「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」 は「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」と「建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事」の間を取り持ち, 両者の不足部分を補足し,配筋用の設計図面作成の手引きを示すとともに,鉄筋工事の施工方法を紹介することを目的と している。本報では 2010 年版の「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」の改定の要点を解説する。  キーワード:鉄筋コンクリート,鉄筋工事,配筋指針,計算規準,JASS 5,定着 *1 おのざと・のりかず/工学院大学建築学部建築学科 准教授(正 会員) *2 おおの・よしてる/大阪大学 名誉教授(正会員) 表-1 RC 配筋指針の章立て 1 章 基本事項 2 章 鉄筋とコンクリート 3 章 かぶり厚さ・鉄筋のあき・鉄筋間隔および部材最少寸法 4 章 鉄筋の加工形状および加工・組立 5 章 バーサポート・スペーサー 6 章 定着と継手 7 章 帯筋・あばら筋 8 章 品質管理・検査 9 章 各部配筋 付録 A 配筋設計資料 付録 B 鉄筋関連規格・基準など 付録 C 用語・索引 付録 D 標準配筋要領図 西暦 RC 規準 JASS 5 RC 配筋指針 1953 第 1 版 1957 第 2 版 1965 第 3 版 1969 第 4 版 1971 第 1 版 1975 第 2 版 第 5 版 1982 第 4 版 1984 第 7 版 1988 第 5 版 1991 第 6 版 第 9 版 1993 第 10 版 1997 第 11 版 1999 第 7 版 2001 第 3 版 2009 第 13 版 2010 第 8 版 第 5 版 1979 第 3 版 第 6 版 第 1 版 2003 1986 第 8 版 第 2 版 第 4 版 第 12 版 付着 ・ 定着が未対応 先取り 図-1 JASS 5・RC 規準・RC 配筋指針の変遷

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筋工事の注意点であるといえることから,可能な範囲で 変更の理由を記して解説する。 ( 1 ) 使用できる鉄筋の範囲  RC 規準の改定にあわせ,使用できる鉄筋の種類に SD 490 を追加し,鉄筋径を D 41 まで広げた。 ( 2 ) 部材の記号,柱断面表の表記  施工時に部材寸法や配筋の間違えをなくすための工夫 として,壁記号のように部材記号に部材の情報を盛り込 む方法を示した。  例)B 50:梁せい 50 cm の小梁    S 18:スラブ厚 18 cm のスラブ    S 18 A,S 18 B:厚さ 18 cm で配筋が異なるスラブ  また,施工時に柱主筋の X,Y の向きについて間違えを なくすために,柱断面表を伏図方式で示すことを推奨した。 ( 3 ) 鉄筋のあきと間隔の順序  従来,鉄筋の「あき」と「間隔」を併記する場合は「間 隔」を先に記してきたが,鉄筋の間隔は必要なあき寸法 が確保されていることを確認した上で決定しなければな らないことから,順序を入れ替えた。 ( 4 ) かぶり厚さ  JASS 5 の改定にあわせ,①構造体の計画供用期間を 考慮したかぶり厚さにし,②部材の種類分けを変更,③ 目地底のかぶり厚さはシールがある場合(ただし,維持 管理を行うシール)耐久性上有効な仕上げがあるとして 扱えることを示した。 ( 5 ) 特殊継手の名称  これまで機械式継手と溶接継手を合わせて特殊継手と 呼んできたが,両継手工法とも広く使用され,今では特 殊ではなくなったことから,特殊継手の名称をやめた。 ( 6 ) 打増しコンクリート補助筋の定着長さ  打増しコンクリート補助筋の定着長さは部位により 「300 mm 程度」,「300 mm 以上」,「20 d」などと異なっ ていたが,それらの違いは重要でないことから「20 d 程 度」に統一した。 ( 7 ) スラブ・壁の推奨する最小厚さ  スラブ筋に D 10 のみを使用した場合,施工時に配筋 が乱れやすいことや鉄筋の最外径を考慮するなどの見直 しを行い,推奨する複配筋のスラブの最小厚さを 130 か ら 150 mm へ,複配筋の壁の最小厚さを 150 から 160 mm へ変更した。 ( 8 ) 鉄筋の折曲げ寸法・形状  RC 規準の改定にあわせ,①これまで柱・梁・基礎の 主筋とその他の鉄筋で異なっていた鉄筋の折曲げ寸法・ 形状を統一,② 90° 折曲げの余長を 10 d から 8 d へ変更 した。 ( 9 ) 丸鋼の使用  スラブ筋,壁筋には溶接金網を除き,丸鋼を使用しな いことを追記した。 (10) 鉄筋の加工寸法の許容差  JASS 5 の改定にあわせ,鉄筋の加工寸法の許容差を 計画供用期間によらず統一した。 (11) バーサポート・スペーサー  市販品の状況に合わせ,①鋼製バーサポートの脚部の 防錆処理にエポキシ処理を追加して亜鉛めっき処理を削 除,②バーサポート・スペーサーの寸法を 5 mm 刻みか ら 10 mm 刻みに変更した。  また, バーサポート・スペーサーの配置を端部から 「75~100 mm」としてきたが,これでは 25 mm の誤差 しか認めないとする現場監理が行われるという指摘があ り「150 mm 以下」に改めた。壁の開口部周囲は乱れ防 止のために幅止め筋を多く配置することを推奨した。 (12) 定着長さ  JASS 5 の改定にあわせて定着長さの表を,①SD 295 と SD 345 で区分けをし,②コンクリート強度の区分を 細かくし,③直線とフック付きで定着長さを示す記号を 変え,④大梁と小梁・スラブに限定した定着長さの表を 追加した。また,これらの変更に伴い各部配筋の図等を 大幅に修正した。 (13) 継手長さ  JASS 5 の改定にあわせて継手長さの表を,①SD 295 と SD 345 で区分けをし,②コンクリート強度の区分を細 かくし,③直線とフック付きで定着長さを示す記号を変え た。また,記号の変更に伴い各部配筋の図等を修正した。 (14) 機械式定着  機械式定着を用いた図を追加し,付録に機械式定着工 法による接合部の納まりの検討方法を示した。

Explanation for the Revision of

“Recommendation for Detailing and Placing of Concrete Reinforcement”

By N. Onozato and Y. Ohno

Concrete Journal, Vol.49, No.7, pp.3~8, Jul. 2011

Synopsis “Recommendation for Detailing and Placing of Concrete Reinforcement” was revised in November, 2010.

The aim of this revision is to take the position between “Japanese Architectural Standard Specification JASS 5 Reinforced Concrete Work” and “AIJ Standard for Structural Calculation of Reinforced Concrete Structures”. It provides additional details for both books and show how to make structural drawings for bar arrangement. Also it introduces construction techniques for reinforcement placing. This report describes the key points of the revision.

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(15) 8 章の題名の変更  8 章の題名はこれまで単に「検査」としていたが,検 査には品質管理のために施工者が実施するものと,工事 が設計図書に定められたとおりに行われていることを確 認するために工事監理者が実施するものがあり,前者も 対象であることを強調するために「品質管理・検査」に 変更した。 (16) かぶり厚さの検査  JASS 5 の改定でかぶり厚さの検査が詳述されたこと から,解説を大幅に追加した。 (17) 検査記録の保管  試験や検査の結果の記録は,10 年以上保管すること が望ましいが,デジタルデータ化することにより省ス ペース化が可能となり長期間保存が可能であるなどの解 説を追加した。 (18) 柱の継手位置  従来,柱の継手位置は,施工がしやすい胸の高さで作 業が行えるように柱脚から 500 mm 以上の高さで柱内法 高さの 3/4 を超えない範囲で継ぐこととしてきたが,塑 性ヒンジが形成される箇所で継手を設けることは避ける べきで,特に塑性ヒンジが形成されやすい最下階の柱脚 部では柱脚から柱せい以上離して継手を設けることを推 奨した。 (19) 帯筋の配置  従来,柱脚の第一帯筋(柱梁接合部に最も接近した帯 筋)は,梁または床スラブ天端に配置してきた。しかし, その位置はコンクリートの打ち継面であるため,打ち継 処理が適切にできないこと,鉄筋とコンクリートの付着 力を確保し難いことなどの理由により,柱梁接合部コン クリート内に入った梁筋の上に最初の帯筋を配置し,打 ち継面から 50 mm 程度の高さに次の帯筋を配置するこ ととした。 (20) 柱梁接合部の帯筋  帯筋に高強度の鉄筋を利用することが増えてきたが, 柱梁接合部に配筋する帯筋には低強度の鉄筋を使用する 場合が多い。接合部内の帯筋は補強効果が小さいことが わかっているので設計上は高強度の帯筋を用いる必要が ない。しかし,ACI 352 の規定を考慮して上下柱間の応 力を確実に伝達できるように柱梁接合部内の帯筋も柱の 帯筋と同鋼種の鉄筋を使用することを推奨した。 (21) 梁のカットオフ位置  各部配筋で示される位置に梁主筋のカットオフ(スパ ンの途中で鉄筋を切り止めること)を設けても,付着長 さを満足しないことがある具体例として,内法長さに比 較して梁せいが大きい場合を解説した。 (22) 最上階の柱の突出  RC 規準の改定にあわせ,最上階の柱を梁せいの 1/2 以上の長さを突出させた場合,梁上端筋は一般階と同じ 定着方法としてよいことを追記した。 (23) 貫 通 孔  梁に貫通孔を設けられる範囲を,①スパン方向は端部 から l0/4(l0は梁の内法スパン)以上離れた範囲として きたが,端部から D(D は梁せい)以上離れた範囲に変 更,②高さ方向は梁せいの上下 1/3 を除いた範囲として きたが,貫通孔の上下に貫通孔径以上の躯体を残し,梁 主筋のかぶり厚さを確保できる範囲に変更,③隣接する 貫通孔同士の水平間隔は孔径の平均値の 3 倍以上離すこ とを追記した。 (24) 小梁の連続端の段差  小梁の連続端に段差がある場合,応力伝達が確実に行 えない場合や,断面の欠損が生じる場合があることを解 説に追記した。 (25) 片持梁のカットオフ位置  片持梁の主筋のカットオフ位置は,一般の大梁と同様 に斜めせん断ひび割れによって生じるテンションシフト を考慮したカットオフ位置を採用していたが,片持梁の 設計ではせん断ひび割れの発生を認めるような設計はし ないことを前提にして,テンションシフトを考慮しない カットオフ位置とした。 (26) 柱・梁の増打ちと壁  耐力壁の配筋は柱・梁のコア内(横補強筋で囲われた 内側)へ定着するのが原則であるが,非耐力壁と柱・梁 の取り合いを受けもつ増打ち部分の補助筋の柱・梁への 定着は( 6 )の「打増しコンクリート補助筋の定着長さ」 と同様に 20 d 程度とし,コア外へ定着してよいとした。 耐力壁の鉄筋は柱・梁に直接定着させることを原則とし て RC 配筋指針には耐力壁が取り付く増打ち部分の配筋 方法は示していない。そのような必要が生じた場合は設 計者が適切に判断して配筋方法を決定し,設計図書に示 さなくてはならない。 (27) コーナー筋  壁やスラブ段差部分のコーナー筋は設計者が適切に判 断して決定する必要があることから,「D 13」から「D 13 以上」に変更した。 (28) 床スラブの第 1 鉄筋  床スラブの第 1 鉄筋(スラブ最端部の鉄筋)の位置は 「75~100 mm」としていたが,施工性を考慮して「100 mm」以下にした。 3. 定着長さの改定  RC 配筋指針の最も大きな改定点は,鉄筋の「定着」 に関する内容である。1999 年の RC 規準の改定以前は, 定着長さは仕口面(定着起点)から折曲げ部を含めた鉄 筋の先端までの総長を有効としていたが,1999 年の RC 規準の改定により定着起点からの投影定着長さを有効と するようになった(図-2)。しかし,この投影長さに基 づく定着の規定を小梁やスラブなどの非耐震部材に適用 すると,諸外国の規定と比較して過大な投影長さになる

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ことから,2010 年の RC 規準の改定で非耐震部材の定着 規定が緩和された。また,JASS 5 では 2003 年に RC 規 準の投影長さに基づく定着の規定に従い,定着関連事項 を大幅に改定した。しかし,JASS 5 の定着長さを示す 数値は部位によらず同じ値とされていたため,大梁主筋 等の仕口内定着の長さは過大であった。そこで,2009 年 の JASS 5 の改定では,RC 規準の非耐震部材の定着規定 の緩和を取り入れ,さらに,定着長さは部位によって数 値を分けて示された。以下にこの JASS 5 の定着規定の改 定内容について解説する。なお,RC 配筋指針の定着に関 する改定も JASS 5 の内容と整合しており,その詳しい計 算の根拠は RC 配筋指針の付録に掲載されている。 3.1 定着長さに使用する記号  定着の長さに使用する記号は重ね継手の長さの記号と あわせ L1,L2,L3の 3 種類が用いられてきた。L1は重 ね継手の長さ,L2は定着の長さ,L3は下端筋の定着の 長さである。しかし,定着長さを折曲げ開始点までの長 さと先端までの長さで使い分ける必要性から,フックの 有無によって記号を分け,フック付きの長さの記号に 「h」を添え字として付けることにした。また,一般の フック付き定着長さ L2hの他に大梁の定着長さと小梁・ スラブの定着長さを追加し,新しい記号としてそれぞれ Laと Lbを採用した。これらの記号を整理すると表-2 の ようになる。フック付きの添え字「h」は hook の頭文 字である。 3.2 一般の定着の長さ  表-3 に JASS 5 に記載されている直線定着の長さ L2 とフック付き定着の長さ L2hの数値を示す。JASS 5 の 改定で鉄筋の種類に SD 490 が追加され,SD 295 と SD 345 が区分けされた。コンクリートの強度の区分も Fc21 が追加され,Fc30 と Fc39 の間で区分けされた。本報で は示していないが重ね継手に関する表も同様の区分けが されている。  RC 規準には,定着に部材内定着と仕口内定着がある こと,およびそれぞれに必要な長さの計算方法が示され ている。表-3 に示す定着の長さの数値は部材内定着の 長さと仕口内定着の長さの両方を計算し,両方の必要長 さを満足する数値を 5 d 刻みでまるめている。  部材内定着は RC 規準の 16 条に従い短期損傷制御と 安全性の確保を満足させる長さであることを確認してい る。部材内定着とは RC 規準に「耐震壁等の開口補強筋 を壁内定着する場合のように,曲げ材以外の引張鉄筋を 部材内へ定着する」とあり,仕口内への定着と分けてい る。なお,部材内定着の計算にあたっては,修正係数 K を C=5 d,W=0 とし,次の値を採用している。 フック付き定着長さ フックなし定着長さ フック付き定着長さ 直線定着長さ (b) 1999 年版以降の RC 規準の定着長さ (a) 1991 年版以前の RC 規準の定着長さ 図-2 定着長さの測り方(小梁・スラブの例) 表-2 継手・定着の長さの記号 重ね継手 直   線 L1 フック付き L1h 定    着 引張 直   線 L2 フック付き 一   般 L2h 大梁・片持部材 La 小梁・スラブ  Lb 圧縮 直   線 L3 フック付き L3h 注)  この表では Laと Lbをフック付き定着に分類 しているが,正しくは仕口内への折曲げ定着の 投影定着長さである。 表-3 異形鉄筋の定着の長さ (a) 直線定着の長さ L2 コンクリートの 設計基準強度 F(N/mmc 2) SD 295 A SD 295 B SD 345 390SD SD490 18 40 d 40 d - - 21 35 d 35 d 40 d - 24~27 30 d 35 d 40 d 45 d 30~36 30 d 30 d 35 d 40 d 39~45 25 d 30 d 35 d 40 d 48~60 25 d 25 d 30 d 35 d (b) フック付き定着の長さ L2h コンクリートの 設計基準強度 F(N/mmc 2) SD 295 A SD 295 B SD 345 390SD SD490 18 30 d 30 d - - 21 25 d 25 d 30 d - 24~27 20 d 25 d 30 d 35 d 30~36 20 d 20 d 25 d 30 d 39~45 15 d 20 d 25 d 30 d 48~60 15 d 15 d 20 d 25 d [注](1)  表中の d は,異形鉄筋の 呼び名の数値を表し,丸鋼 には適用しない。   (2)  フック付き鉄筋の定着長さ L2hは,定着起点から鉄筋の 折曲げ開始点までの距離と し,折曲げ開始点以降のフッ ク部は定着長さに含まない。   (3)  フックの折曲げ内法直径 D および余長は,特記のない場 合は RC 配筋指針 表 10.2 による。   (4)  軽量コンクリートを使用する場合の定着長さは特記による。特記が ない場合は,Fc≦36 N/mm2の軽量コンクリートと SD 490 以外の異形 鉄筋を対象として,表-3 の数値に 5 d 以上加算した定着長さとし,工 事監理者の承認を得ること。 定着起点 L2 直線定着の長さ L2 定着起点 定着起点 定着起点 折曲げ開始点 折曲げ開始点 折曲げ開始点 90° フック 135° フック 180° フック 余長 8 d 以上 余長 6 d 以上 余長 4 d 以上 L2h L2h L2h D D D フック付き定着の長さ L2h

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= æèççç + öø÷÷÷÷+ = æèççç + öø÷÷÷÷+ = 0.3 0.4 0.3 5 0 0.4 1.9  ここで,C は鉄筋のあき,またはかぶり厚さの 3 倍の うち小さいほうの値である。C=5 d ということは鉄筋 の間隔を鉄筋径の 6 倍以上とし,かぶり厚さを鉄筋径の 5/3 倍以上にすることが表-2 の数値を用いることができ る条件となる(図-3)。  仕口内定着は RC 規準に短期損傷制御に関する規定が ないため,17 条に従い安全性の確保を満足させる必要 長さになることを計算で確認している。定着の長さの計 算に用いる係数であるαと S は表-4 に示す数値を用い ている。ここで,αは横補強筋で拘束されたコア内に定 着する場合 1.0,それ以外の場合は 1.25 とする係数で, 表-4 に示すように耐震部材はα=1.0 としていることか ら,耐震部材は横補強筋で囲われたコア内へ定着するこ とが必要となる。また,フック付き定着は,RC 規準 17 条の表 17.3 の規定に従い,耐震部材にあたっては側面 かぶり厚さを鉄筋径の 1.5 倍以上かつ 50 mm 以上として, 非耐震部材は側面かぶり厚さを鉄筋径の 2 倍以上かつ 65 mm 以上とする必要がある。なお,表-3 の耐震部材 には片持形式の部材が含まれる。  表-3 で直線とフック付きの長さを比較すると,すべ て直線の L2がフック付きの L2hより 10 d 長くなるよう に統一されている。表-5 に示すように折曲げ開始点か ら鉄筋の先端までの長さは 10 d 以上になるので,フッ ク付き定着の長さの総長を L2として,標準の折曲げ寸 法で加工を行った場合,定着の長さは L2hより多少短く なる。したがって,フック付き長さ L2hの方が直線の長 さ L2より数値が小さいからといって,直線で定着の長 さ L2が足らない場合に先端を折り曲げてフック付きに 変えても,定着長さ L2hを確保することができない。 3.3 仕口内への投影定着長さ  前述のように定着長さ(表-3)は部材内定着と仕口内 定着を計算して大きいほうの数値を満足させる数値を採 用している。両者の数値を比較した場合,仕口内定着の 方が部材内定着に比較して数値は小さい。詳細は RC 配 筋指針の付録 A 3 を参照してほしい。このため,仕口内 定着だけを対象にすれば必要定着の長さは表-3 の数値 より小さくできる。このようにして,耐震部材を仕口内 へ折曲げて定着する場合と非耐震部材を仕口内へ折曲げ 定着する場合について,それぞれ必要な投影定着長さを 計算したのが表-6(a)の Laと表-6(b)の Lbの数値であ る。表-6 の長さは定着起点から折曲げ開始点までの長 さでなく,定着起点から鉄筋外面までの投影定着長さで か ぶ り 厚 さ 5 3 鉄筋間隔 6 以上 例えば, D 13 で間隔 78 mm かぶり厚さ 22 mm, D 16 で間隔 96 mm かぶり厚さ 27 mm, が必要である。 以 上 図-3  部材内定着の長さ 2, 2 を使用できる条件 (重ね継手の長さ L1,L1hの条件も同じ) 表-4 定着長さの計算に用いた係数 α と の数値 部材の種類 直線定着 フック付き定着 α S α S 耐震部材 1.0 1.25 1.0 0.7 非耐震部材 1.25 1.0 1.25 0.5 片持形式の部材の上端筋には耐震部材と同じ係数を用いる 表-5 折曲げ開始点から先端までの長さ 折曲げ 角度 余長 折曲げ内法直径 先端 折曲げ 開始点 左表の 数値 2 3 d 4 d 5 d 90° 8 d 11.1 d 11.9 d 12.7 d 135° 6 d 10.7 d 11.9 d 13.1 d 180° 4 d 10.3 d 11.9 d 13.4 d 表-6 異形鉄筋の仕口内の折曲げ定着の投影定着長さ (a)  梁主筋の柱内折曲げ定着の投影定 着長さ La コンクリートの 設計基準強度 F(N/mmc 2) SD 295 A SD 295 B SD 345 390SD 490SD 18 20 d 20 d - - 21 15 d 20 d 20 d - 24~27 15 d 20 d 20 d 25 d 30~36 15 d 15 d 20 d 25 d 39~45 15 d 15 d 15 d 20 d 48~60 15 d 15 d 15 d 20 d (b)  小梁やスラブの上端筋の梁内折曲 げ定着の投影定着長さ Lb(片持ちの 小梁・スラブを除く) コンクリートの 設計基準強度 F(N/mmc 2) SD 295 A SD 295 B SD 345 390SD 490SD 18 15 d 20 d - - 21 15 d 20 d 20 d - 24~27 15 d 15 d 20 d - 30~36 15 d 15 d 15 d - 39~45 15 d 15 d 15 d - 48~60 15 d 15 d 15 d - [注](1) 表中の d は,異形鉄筋の呼び名の数値を表し,丸鋼には適用 しない。   (2) フックの折曲げ内法直径 D および余長は,特記のない場合は RC 配筋指針 表 10.2 による。   (3) 軽量コンクリートを使用する場合の鉄筋の投影定着長さ Laま たは Lbは,特記による。特記がない場合は,Fc≦36 N/mm2 の軽量コンクリートと SD 490 以外の異形鉄筋を対象として, 表-6 の数値に 5 d 以上加算した投影定着長さとし,工事監理 者の承認を得ること。   (4) 梁主筋を柱へ定着する場合,Laの数値は原則として柱せいの 3/4 倍以上とする。 La La D D L2 L2 梁主筋の柱内折曲げ定着の投影 定着長さ La Lb D L2 L3 梁・スラブの上端筋の梁内折曲 げ定着の投影定着長さ Lb

(6)

あり,表-3 の一般定着の長さ L2とは測り方が違うので 注意してほしい。また,表-6(a)で対象としているのは 大梁(基礎梁を含む)であり,耐震部材であっても耐力 壁は含まれない。壁は壁外面が柱や梁の外面に一致し, コア内定着にならない場合があるため,表-6(a)の La でなく表-3 の L2または L2hの数値を用いる。表-6(b)で 対象としているのは小梁とスラブである。非耐力壁の場 合には表-6(b)の数値を用いることができるが,RC 配 筋指針では混乱を避けるため,耐力壁と非力震壁は壁と して統一して表-3 の L2または L2hの数値を用いること としている。なお,非耐震部材であるが片持形式の小梁 やスラブには表-6(b)の Lbを用いることはできず,表-6 (a)の Laの数値を用いる。  表-6 の Laと Lb数値は RC 規準におけるフック付き定 着長さを満足するよう計算されているため,これらに必 要なフックの余長は表-3 中の図に示すような標準フック の形状・寸法で足りる。すなわち 90° 折曲げであれば必 要な余長は鉄筋径の 8 倍である。しかし,La,Lbを用 いる場合は,まず,定着起点から鉄筋の先端までの長さ で L2(直線定着の長さ)を確保したうえで,投影定着 長さ La,または Lbを確保することとした。これを,折 曲げ定着と呼ぶ(注:Lahはフック付き定着)。これによ り,定着起点から鉄筋の先端までの総長は,図-4 に示 す直線定着,フック付き定着,折曲げ定着のすべてがほ ぼ等しくなるようにしている。  なお,表-6(b)の小梁やスラブの上端筋の梁内への投 影定着長さ Lbは,横補強筋の拘束が十分でない場合を 想定して表-4 に示すように補正係数α=1.25 を採用し て計算している。このため図-5 に示すように小梁やス ラブの上端筋の余長部が,横補強筋で囲われたコア内に 8 d 以上かつ 150 mm 以上入っていれば,α=1.0 を採用 できる。したがって,図-5 の条件を満足すれば小梁や スラブの上端筋の投影定着長さは表-6(b)の数値の 1.0/1.25=0.8 倍としてよい。 4. お わ り に  「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説 2010」につい て,「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 2010」お よび「建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリー ト工事 2009」との関係,2010 年版の改定概要,および 定着長さの改定の要点について解説した。配筋工事に関 わる規準類が整合されていないと工事の混乱を招くこと になるが,前述の 3 冊は現時点で整合が取れている。一 方,定着長さに関する規定は,使用する記号が増え,部 位によって定着長さが異なるなど,内容が複雑になった と感じられると思う。そこで,例えば設計段階で柱梁仕 口内への投影定着長さが梁筋を柱せいの 3/4 以上の見込 ませることで必要長さが確保されていることが確認され ていれば,Laの記号は設計図には表記しないという方 法も考えられる。仮に工事現場で La,Lbを確保できな いことが判明した場合には設計変更が必要となり,大き な問題になることに注意しなければならない。そのた め,現実的に考えても La,Lbが確保できるかどうかは 設計時点で確認し,工事現場では La,Lbを使わずに柱 せいの 3/4 以上の投影定着長さを確保する等の簡単な規 定(図-6)を用いるといった工夫をしてみてほしい。 参 考 文 献 1) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説 2010,2011. 11 2) 日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 2010, 2010. 2 3) 日本建築学会:建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート 工事 2009,2009. 2 4) 小野里憲一:JASS 5 改定の要点 10 節 鉄筋工事,建築技術, No.711,pp.118~121,2009. 4 5) 小野里憲一:[特集:RC 規準 2010]改定ポイント帖⑤ RC 規準 2010 と RC 配筋指針との関連性,建築技術,No.734,pp.160~165,2011. 3 直線定着 フック付き定着 折曲げ定着 2 2 2 図-4 RC 配筋指針の定着長さ(小梁の例) (a)  折曲げ部が完全 にコア内に入ってい る場合 (b)  折曲げ終点がコ ア内に入っている 場合 (c)   余 長 部 が 8 d 以 上コア内に入ってい る場合 8 d 以上かつ 150 mm 以上 8 d 以上かつ 150 mm 以上 8 d 以上かつ 150 mm 以上 図-5 α=1.0 としてよい場合 以上 3 4 以上 3 4 例えば 150 以下 工事現場でこの寸法をおさえれ ば,投影定着長さ が確保でき ることを設計時に確認しておく。 図-6 工事現場での投影定着長さの決め方(大梁の例)

参照

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