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< 財務省財務総合政策研究所 フィナンシャル レビュー 平成 25 年第 3 号 ( 通巻第 114 号 )2013 年 3 月 > ましい組み合わせを実現するポートフォリオとされる 米国株式市場のデータを用いた実証分析でも,CAPM が成立しているかどうかについては否定的な意見が優勢ではある それ

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リスクとリターン

リスクとリターン

*1

本多俊毅

*2 実証研究の在り方をあらためて検証する必要が ある。本稿では,日本の株式市場データを利用 しながら,株式市場におけるリスクとリターン の関係について検討を加えてみたい。 株式市場全体の動きをとらえようとするとき に,時価総額加重のポートフォリオ,すなわち マーケットポートフォリオがよく用いられる。 CAPM においては,マーケットポートフォリ オは効率的フロンティア上に位置するとされ, リスクとリターンのトレードオフの観点から望 ファイナンスの教科書では,リスクとリター ンの間にトレードオフの関係があることを前提 として,理論モデルの説明が始められることが 多い。しかし,日本の株式市場データに関して いえば,長期的な株式市場の低迷もあり,この トレードオフの関係は必ずしも自明なものでは ない。リスクとリターンのトレードオフ関係は, ファイナンス理論が立脚している最も基本的な 直感のひとつであり,この関係が過去データか ら確認できないとなると,ファイナンスの理論・ * 1  倉澤資成先生,論文検討会議出席の方々,および MPT フォーラム 2012 年度国際フォーラム出席者の方々 から頂いたコメントに感謝いたします。 *2 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 email:thonda ○ ics.hit-u.ac.jp(○は @ のことを示す)

要  約

CAPM を背景にして,マーケットポートフォリオが株式運用のベンチマークとして用いら れることが多い。しかし,日本の過去データを前提にすると,マーケットポートフォリオは 効率的フロンティア上に位置するとは言いがたいばかりでなく,リスクに見合ったリターン が得られたかどうかも疑わしい。その一方で,過去データに含まれる情報を適切に用いて, 推定誤差による影響を小さくするようにポートフォリオ構築を行うことによって,マーケッ トリスク以外のリスク要因からリターンが得られたことが示唆される。日本においてマーケ ットポートフォリオをベンチマークに採用し,さらにアクティブ運用を上乗せしてきた投資 家の多くは,リターンの伴わないマーケットリスクをとってきたばかりではなく,リターン を得ることが難しいアクティブリスクを上乗せしてきた可能性が高い。 キーワード : 日本の株式市場,CAPM,平均分散ポートフォリオ,最小分散ポートフォリオ JEL classification: G11, G12

Ⅰ.はじめに

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< 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 25 年第3号(通巻第 114 号)2013 年3月> ましい組み合わせを実現するポートフォリオと される。米国株式市場のデータを用いた実証分 析でも, CAPM が成立しているかどうかについ ては否定的な意見が優勢ではある。それでも, マーケットポートフォリオを保有することに よってある程度のリターンが得られたことは確 認でき,その意味で株式市場への投資を正当化 することができる。 ところが,日本の株式市場データにおいては, マーケットポートフォリオからの収益がほとん どあげられていない。 CAPM が成立している かどうかという議論も重要であるが,それ以前 の問題として,マーケットポートフォリオを保 有すること自体を正当化できない状況である。 つまり,株式市場投資という意味でのマーケッ トリスクをとっても,ほとんどリターンが得ら れなかったことになる。 米国データを用いた初期の実証分析では, マーケットリスクとリターンの間には正の関係 が見られていた。しかし,リターンとマーケッ ト ベ ー タ と の 間 の 関 係 は, Sharpe-Lintner 型 CAPM が予想するほどには強くなかった。具 体的には,縦軸にリターン,横軸にベータをとっ て描かれたグラフにおいて,期待リターンの並 び方が, CAPM が予測するほどには右上がりに なっていないことが指摘されていた。 日本のデータの場合にはさらに状況が深刻 で,縦軸にリターン,横軸にベータをとって描 かれたグラフの形状は,平らというよりも右下 がりになってしまっている。つまり,ハイベー タ(リスク)はローリターンであるし,ローベー タ(リスク)がハイリターンとなってしまって いる。このため,マーケットリスクに対するプ レミアムが正であることも確認できず, Black 型 CAPM の成立も疑わしい。つまり,過去デー タを見る限りにおいては,マーケットポート フォリオへの投資が,リスクとリターンのト レードオフの観点から効率的であるとも考えら れないし,マーケットリスクをとってもリター ンが得られるのかも疑問である。マーケット ポートフォリオが株式市場全体の動きをとらえ ていると仮定すれば,日本の株式市場への投資 を正当化することはできなくなってしまう。 一方で,過去の株式市場データをもとに効率 的フロンティアを描いてみると,平均標準偏差 平面において,効率的フロンティアが一本の水 平な直線に退化しているわけではなく,リスク とリターンのトレードオフ関係の存在は示唆さ れる形状となっている。つまり,マーケットリ スクではない何かのリスクを受け入れれば,そ れに付随したリターンが得られた可能性があ る。実際,日本の株式市場データを用いて,マー ケットポートフォリオとの共分散がゼロとなる ポートフォリオ,すなわちゼロベータポート フォリオのリターンを算出すると,統計的に有 意に正の値が確認できる。過去データを前提に 効率的フロンティアを描くと,日本の株式市場 においては,マーケットポートフォリオ以外の リスク要因からリターンが得られたことにな る。日本の株式市場データに関していえば,マー ケットポートフォリオに注目しているのではリ スクとリターンのトレードオフ関係を見いだす ことができず,より広範に効率的フロンティア を探してゆくことが求められる。 しかしながら,仮にリターンが付随したリス ク要因が存在したとしても,そのリスク要因が 過去時点において認識できていたかどうかは別 の問題である。実際に,平均分散アプローチを 応用して,効率的フロンティア上のポートフォ リオを構築しても,その事後的なパフォーマン スが悪いことが指摘されている。一般に,平均 分散アプローチはその入力パラメータである期 待リターンベクトルと共分散行列の値によっ て,算出されるポートフォリオ比率は大きな影 響を受けてしまう。このため,パラメータ推定 誤差によって,算出されるポートフォリオ比率 が非常に不安定になり,そこから実現するリ ターンのパフォーマンスも悪い。 このような問題点を緩和することを目的とし て,これまでにも多くの方法が提案されてきて いる。たとえば,期待リターンベクトルや共分 散行列の推定精度を向上させるためのさまざま

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リスクとリターン な手法 ([12]),ベイジアンアプローチ ([9]),ま た資産価格モデルの利用 ([14]) などが提案され ている。また,空売り制約など ([8]) を設ける ことによって,結果として推定誤差とポート フォリオ構築にともなうエラーを緩和すること ができる。さらには,ロバスト制御や下方リス クの制御といった手法を用いて,ポートフォリ オのパフォーマンスを向上させることも提案さ れている。 ところが,こういったさまざまな手法を用い ても,パフォーマンスはそれほど改善できない と い う の が, DeMiguel, Garlappi, and Uppal [4] の主張である。様々な方法やデータを網羅的に 試したうえで, N 個の対象資産に等しい比率で 投資する等加重ポートフォリオ (1/N ポート フォリオ ) や,効率的フロンティアの中で最も 分散の小さいポートフォリオ (global minimum variance portfolio, gmvp) といった,期待リター ンの予測を必要としないポートフォリオ戦略の パフォーマンスの方が相対的に良好な結果をも たらすことを報告している。この結果を前提に すると,期待リターンベクトルなどのパラメー タの予測,さらにはリスクとリターンとのト レードオフ関係を事前に把握しようとすること 自体に意味が見いだせなくなってしまう。 この論文では,これらの先行研究において, 接点ポートフォリオが直接用いられていたこと に注目する。期待リターンベクトルなど,パラ メーターを推定する際には推定誤差が避けられ ない。し かし,これらの先行研究では,接点ポー トフォリオが直接的に用いられていたため,パ ラメーター推定誤差がポートフォリオ構築の段 階で増幅されることとなり,結果として実現し たポートフォリオリターンのパフォーマンスを 悪化させた可能性がある。そこで,パラメーター の推定誤差と,ポートフォリオ構築の段階で発 生するエラーを区別し,両者をそれぞれ削減す るようにする方法を提案する。 具体的には,期待リターンベクトルの予測を 用いることなく構築できる最小分散ポートフォ リオをまず考えて,そこからの乖離を制限しな がら,期待リターンの向上を目指すポートフォ リオを構築する。ここで,期待リターンの予測 には,過去 60 ヶ月データの標本平均と, CAPM や FF3 ファクターモデルを前提にして算出さ れる予測値を用いる。これらの予測を用いて接 点ポートフォリオを算出し, gmvp から接点 ポートフォリオ方向への移動を試みることに よって,リスクとリターンの組み合わせが向上 するかどうかを検討する。その結果,単純に過 去データの標本平均を予測として用いるだけで も,リスクとリターンの改善が確認できた。こ の意味において,過去データには効率的フロン ティアの形状を把握するうえでの情報が含まれ ていることが示唆される。 最後に,以上の結果を踏まえて,資産運用の 実務への意味合いを検討してゆく。運用業務を 外部のファンドマネージャーに委託する際に, ファンドマネージャーに対してベンチマークを 提示し,そこからの乖離を制約しながら期待リ ターンの改善を目指すように指示することが多 い。しかし, Roll [15] が指摘しているように, この方法では,ベンチマークの選択がファンド マネージャーの行動に影響を与えず,しかも ポートフォリオ全体のリスク量を増やすような 選択がなされることが多い。そもそも期待リ ターンの予測は難しく,継続的に良いパフォー マンスを示すファンドマネージャーを選択する ことが難しい。( たとえば [6]。) 日本の株式市 場においては,マーケットポートフォリオが効 率的フロンティアであると信じてきた投資家 は,リターンの伴わないマーケットリスクをと り,それにリスクを増加させるだけでリターン を増加させることのないアクティブマネー ジャーを採用して,高い運用手数料を支払い続 けてきたことになる。 以下, 2 節では日本の株式市場データを概観 し, 3 節ではゼロベータポートフォリオを用い て効率的フロンティアの形状を確認する。 4 節 ではこれまでに提案されてきている平均分散ア プローチの改善方法とその結果についての議論 を簡単にまとめる。 5 節で日本の株式市場にお

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< 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 25 年第3号(通巻第 114 号)2013 年3月> - 57 - ける効率的フロンティアの事前把握の可能性に ついて検証する。 6 節では,ベンチマークを提 示して外部のファンドマネージャーに運用を委 託する方法の問題点を整理して,これまで日本 の投資家がおかれてきた状況について検討を加 える。 まず,米国の株式市場データについて,マー ケットポートフォリオ(時価総額加重ポート フォリオ)のリターン,および Fama French 3 ファクターの記述統計量を確認しておこう。表 1 は, Fama and French [7] Table 2 より抜粋した もので, 1963 年 7 月から 1991 年 12 月までが対 象となっている。これを見ると,マーケットポー トフォリオを保有していれば,月次リターンに ついて 4.52% の標準偏差というリスクを受け 入れることによって, 0.97% のリターンが得ら れたことが分かる。超過リターン,つまり安全 資産利子率で借り入れをして,マーケットポー トフォリオに投資した場合には,その統計的有 意性は弱まるものの,依然として 0.43% のリ ターンが得られており,マーケットポートフォ リオに投資してリターンが得られたという主張 には,十分な説得力がある。 SMB ファクターは,時価総額が小さな企業 群のポートフォリオをロングし,大きな企業群 をショートしたロングショート戦略のリターン として定義される。統計的有意性は十分ではな いものの,時価総額が小さい企業群のリターン が相対に大きいといういわゆる小型株効果から も正の収益が得られたことが示唆される。 HML ファクターは,株式簿価 (Book Value) と 株式時価総額 (Market Value) の比率である B/M が大きな企業群のポートフォリオをロング,小 さな企業群のポートフォリオをショートする戦 略のリターンとして定義される。 HML ファク ターに関しては 0.40% という高いリターンが 統計的に有意な水準で確認されている。 Fama や French といった影響力の強い研究者 の論文に示されているこういった数値を前提に すれば,過去データから,株式市場におけるリ スクとリターンの間にトレードオフ関係がある と結論づけることは自然なことであろう。多く のファイナンスのテキストや,資産運用の実務 において,リスクとリターンのトレードオフを 前提にして議論が進められていても不思議では ない。 ところが,日本の株式市場データの場合,話 はそう単純ではない。表 2 は同様の分析を日本 の株式市場データを用いて行ったものである。 すぐにわかるように,マーケットポートフォリ

Ⅱ.日米の株式市場から得られたリターン

表1 米国におけるFF3ファクターの月次超過リターン(%) (1963.7 - 1991.12) 平均 標準偏差 t値 RM 0.97 4.52 3.97 RM-RF 0.43 4.54 1.76 SMB 0.27 2.89 1.73 HML 0.40 2.54 2.91

(出典。Fama and French [7] Table 2より一部抜粋。)

表2 日本におけるFF3ファクターの月次超過リターン(%) (1986.1 - 2011.9) 平均 標準偏差 t値 RM 0.17 5.69 0.52 RM-RF -0.07 5.69 -0.23 SMB 0.03 3.71 0.15 HML 0.67 3.01 3.89 (出典。株式会社金融データソリューションズのデータベース(NPM日本版Fama-Frenchベンチ マーク)から取得。) 表3 FF25の時価総額(10億円)の平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 14.74 15.92 16.42 16.82 16.64 2 34.22 34.09 34.06 33.59 33.22 3 65.51 66.20 66.42 63.99 64.14 4 146.11 144.65 143.18 139.72 134.87 Big 1085.28 966.67 691.94 654.16 610.61 表 1 米国における FF3 ファクターの月次超過リターン (%)(1963.7-1991.12)

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リスクとリターン 表1 米国におけるFF3ファクターの月次超過リターン(%) (1963.7 - 1991.12) 平均 標準偏差 t値 RM 0.97 4.52 3.97 RM-RF 0.43 4.54 1.76 SMB 0.27 2.89 1.73 HML 0.40 2.54 2.91

(出典。Fama and French [7] Table 2より一部抜粋。)

表2 日本におけるFF3ファクターの月次超過リターン(%) (1986.1 - 2011.9) 平均 標準偏差 t値 RM 0.17 5.69 0.52 RM-RF -0.07 5.69 -0.23 SMB 0.03 3.71 0.15 HML 0.67 3.01 3.89 (出典。株式会社金融データソリューションズのデータベース(NPM日本版Fama-Frenchベンチ マーク)から取得。) 表3 FF25の時価総額(10億円)の平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 14.74 15.92 16.42 16.82 16.64 2 34.22 34.09 34.06 33.59 33.22 3 65.51 66.20 66.42 63.99 64.14 4 146.11 144.65 143.18 139.72 134.87 Big 1085.28 966.67 691.94 654.16 610.61 23 表 2 日本における FF3 ファクターの月次超過リターン (%)(1986.1-2011.9) ( 出典。株式会社金融データソリューションズのデータベース(NPM 日本版 Fama-French ベンチマーク ) から取得。) 表1 米国におけるFF3ファクターの月次超過リターン(%) (1963.7 - 1991.12) 平均 標準偏差 t値 RM 0.97 4.52 3.97 RM-RF 0.43 4.54 1.76 SMB 0.27 2.89 1.73 HML 0.40 2.54 2.91

(出典。Fama and French [7] Table 2より一部抜粋。)

表2 日本におけるFF3ファクターの月次超過リターン(%) (1986.1 - 2011.9) 平均 標準偏差 t値 RM 0.17 5.69 0.52 RM-RF -0.07 5.69 -0.23 SMB 0.03 3.71 0.15 HML 0.67 3.01 3.89 (出典。株式会社金融データソリューションズのデータベース(NPM日本版Fama-Frenchベンチ マーク)から取得。) 表3 FF25の時価総額(10億円)の平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 14.74 15.92 16.42 16.82 16.64 2 34.22 34.09 34.06 33.59 33.22 3 65.51 66.20 66.42 63.99 64.14 4 146.11 144.65 143.18 139.72 134.87 Big 1085.28 966.67 691.94 654.16 610.61 23 表 3 FF25 の時価総額(10 億円)の平均値 (1986.1-2011.9) オを保有していた場合のリターンは 0.17% で あるが,統計的に有意な正のリターンが得られ たとは言えない。対安全資産の超過リターンは - 0.07% となっている。さらに, SMB ファク ターのリターンは 0.03% でゼロに近く,小型 株効果による収益も確認できない。 HML ファ クターからは正のリターン 0.67% が得られて おり,統計的有意性も確認できるため,株式市 場から全く収益があげられなかったということ ではない。しかし,全体として考えれば,株式 市場でリスクをとることによってリターンが得 られるということを支持できるほど,十分に説 得力のあるデータとは言いがたい。 CAPM が成立していれば,マーケットポー トフォリオは効率的フロンティア上に位置す る。しかし,日本の株式市場データについては, 効率的フロンティア上に位置するかどうかとい う以前の問題として,マーケットポートフォリ オから正のリターンが得られるのかどうかが疑 われる。マーケットポートフォリオを,文字通 り株式市場全体を表す変数だと考えるのであれ ば,日本の株式市場に投資しても,リスクが増 えるだけで,リターンは得られなかったという ことになってしまう。 CAPM について否定的 な立場をとるのだとしても,米国の場合であれ ば,マーケットポートフォリオからリターンは 得られており,マーケットポートフォリオへの 投資はある程度正当化できる。一方,日本の株 式市場データについては, CAPM の成立を議論 する以前の問題として,マーケットポートフォ リオへの投資自体を正当化することが難しい。 日本の株式市場の特徴を調べるために,株式 会社金融データソリューションズのデータベー ス(NPM 株式日次リターンと NPM 企業財務) から, FF25 ポートフォリオ(時価総額と B/M, それぞれ 5 分位の合計 25 分位)の月次リター ン系列を, 1977 年 9 月から 2011 年 9 月まで作 成した。ポートフォリオのリバランスのタイミ ングやユニバースの決定については,久保田 / 竹原 [17] の FF ファクターの作成手順に準拠 し,ポートフォリオのユニバースは東証 1 部上 場銘柄,ポートフォリオのリバランスは 8 月末

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< 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 25 年第3号(通巻第 114 号)2013 年3月> 表4 FF25のB/Mの平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 0.26 0.48 0.65 0.85 1.34 2 0.26 0.49 0.65 0.85 1.26 3 0.28 0.49 0.65 0.84 1.21 4 0.28 0.48 0.65 0.83 1.22 Big 0.28 0.48 0.64 0.82 1.13 表5 FF25の時価総額比率の平均値(%)(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 0.28 0.21 0.23 0.28 0.40 2 0.49 0.54 0.60 0.67 0.73 3 0.98 1.12 1.25 1.29 1.27 4 2.29 2.90 3.00 2.58 1.93 Big 28.05 23.27 12.36 9.11 4.17 表6 FF25の企業数の平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 42.26 31.86 37.63 49.08 77.08 2 34.51 39.39 46.42 55.31 65.03 3 39.07 45.25 51.76 55.64 49.62 4 45.48 54.70 57.39 49.11 34.77 Big 74.89 70.56 48.52 32.56 15.62 25 表 4 FF25 の B/M の平均値 (1986.1-2011.9) 表4 FF25のB/Mの平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 0.26 0.48 0.65 0.85 1.34 2 0.26 0.49 0.65 0.85 1.26 3 0.28 0.49 0.65 0.84 1.21 4 0.28 0.48 0.65 0.83 1.22 Big 0.28 0.48 0.64 0.82 1.13 表5 FF25の時価総額比率の平均値(%)(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 0.28 0.21 0.23 0.28 0.40 2 0.49 0.54 0.60 0.67 0.73 3 0.98 1.12 1.25 1.29 1.27 4 2.29 2.90 3.00 2.58 1.93 Big 28.05 23.27 12.36 9.11 4.17 表6 FF25の企業数の平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 42.26 31.86 37.63 49.08 77.08 2 34.51 39.39 46.42 55.31 65.03 3 39.07 45.25 51.76 55.64 49.62 4 45.48 54.70 57.39 49.11 34.77 Big 74.89 70.56 48.52 32.56 15.62 25 表 5 FF25 の時価総額比率の平均値 (%)(1986.1-2011.9) に行うこととした。表 3から表 9では,FF25ポー トフォリオのリターンの特徴を示している。こ れらの表は, Fama and French [7] Table 1 に対応 するもので,米国株式市場データとの違いに着 目しながら日本の株式市場の特徴を探してゆ く。表 3 は, FF25 の各ポートフォリオの時価 総額の平均値である。規模の最小分位と最大分 位の差は,米国に比べて日本の方が小さい。し かし,全体的には日本と米国の傾向にそれほど 大きな違いは見いだせない。 表 4 では, 25 の各分位における B/M の平均 値が示してある。基本的には日本データも米国 と同じ傾向が確認できるが, Fama and French [7] Table 1 で示されている米国データの場合, B/M が最も大きな分位では 1.56 (Big) から 1.80 (Small) の間の値をとっているのに対し,日本の最大 B/M 分位では 1.13 (Big) から 1.34 (Small) まで の値となっている。つまり,日本のデータの方 が,最大分位における B/M の値が小さい傾向 が見て取れる。また, B/M での 1 分位と 2 分位 の差が小さく,低 B/M 領域により多く集中し ている。つまり,米国と比べて日本データでは, 低 B/M という意味での割高株が多く,高 B/M という意味での割安株についても B/M の水準 は小さいことが見てとれる。 表 5 は, FF25 の各ポートフォリオの時価総 額合計の比率を各年に計算し,その平均をとっ たものである。この数値によって各 25 ポート フォリオを保有することによって,おおよそ マーケットポートフォリオに近いポートフォリ オが得られると考えることができる。米国デー タと比べると,日本の場合には時価総額分位の 小さい方の比率が小さい傾向がある。特に時価 総額がもっとも小さい分位において,表 5 では 0.21% か ら 0.40% と な っ て い る が, Fama and French [7] Table 1 を見ると,米国データでは 0.46% から 0.69% の水準となっている。最も大 きな時価総額分位については,日米でほぼ同じ ような数値となっている。 時価総額ウエイトにおいて,時価総額が小さ

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リスクとリターン 表4 FF25のB/Mの平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 0.26 0.48 0.65 0.85 1.34 2 0.26 0.49 0.65 0.85 1.26 3 0.28 0.49 0.65 0.84 1.21 4 0.28 0.48 0.65 0.83 1.22 Big 0.28 0.48 0.64 0.82 1.13 表5 FF25の時価総額比率の平均値(%)(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 0.28 0.21 0.23 0.28 0.40 2 0.49 0.54 0.60 0.67 0.73 3 0.98 1.12 1.25 1.29 1.27 4 2.29 2.90 3.00 2.58 1.93 Big 28.05 23.27 12.36 9.11 4.17 表6 FF25の企業数の平均値(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 42.26 31.86 37.63 49.08 77.08 2 34.51 39.39 46.42 55.31 65.03 3 39.07 45.25 51.76 55.64 49.62 4 45.48 54.70 57.39 49.11 34.77 Big 74.89 70.56 48.52 32.56 15.62 25 表 6 FF25 の企業数の平均値 (1986.1-2011.9) い分位の比率が少ないという傾向は,各分位に 位置する企業数を示した表 6 でも確認できる。 日本の場合, B/M の分位に関わらず,企業数は それほど大きな差はない。一方で Fama and French [7] Table 1 を見ると,たとえば最も B/M が小さい分位の中で,時価総額が最も大きな分 位の企業数が 93.6 であるのに対し,時価総額 が最も小さな分位の企業数は 428.0 にまで達し ている。このように,米国データでは時価総額 の小さな分位における企業数がかなり大きく なっている。 次に,表 7 から表 9 で,各 25 ポートフォリ オのリスクとリターン,および t 統計量が示さ れている。日本の株式市場では HML のリター ンが大きく,バリュー効果が顕著に観察されて いる。実際,表 7 で分かるように,高 B/M 分 位と低 B/M 分位とのリターン差は大きく,特 に最も小さい B/M 分位のリターンが低迷して いる。表 8 で分かるように各分位でリスクには 大きな差が見られず,その結果 B/M の低分位 では統計的に有意な正のリターンが確認できて いない。 Fama and French [7] Table 1 でも確認

できる通り,この傾向は米国市場と同様である。 時価総額についての規模効果は, B/M が最も 大きな分位を除けば,小型株のリターンが大型 株よりも高くなる傾向が表 7 で確認できる。し かしながら, B/M が最も大きい分位では規模効 果があまり確認できない。また,表 8 で分かる ように,時価総額が小さい分位のポートフォリ オのリスクは大きくなる傾向がある。 FF25 ポートフォリオの各分位の特徴を見て みると,日米で違いはあるものの,決定的な違 いがあるとは言いがたく,むしろ全体としては, 米国株式市場と比較的似た傾向が得られてい る。リターンについては,時価総額による小型 株 効 果 は そ れ ほ ど 強 く な く, B/M に よ る バ リュー株効果が顕著であることに加えて,やは りマーケットポートフォリオからリターンが得 られていないことが大きな違いである。以下で は,まず CAPM について,伝統的な分析手法 を用いて再度検証を行い,日本の株式市場の特 徴を探り,あらためてリスクとリターンについ て検討してゆく。

Ⅲ.CAPM の再検証と平均分散フロンティア

ここでは,古典的な CAPM の実証分析手法 を用いることによって,日本の株式市場データ において, CAPM がどの程度機能するのかを確

認 し て お く。 具 体 的 に は, Black, Jensen, and Scholes [2] の分析手法を FF25 ポートフォリオ のリターンに当てはめ,ベータと平均リターン

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< 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 25 年第3号(通巻第 114 号)2013 年3月> - 61 - 表7 FF25の平均リターン(1986.1 - 2011.9、月次%) Low 2 3 4 High Small 0.64 0.90 1.02 1.01 1.27 2 0.42 0.60 0.65 0.70 1.03 3 0.10 0.45 0.59 0.80 0.88 4 0.13 0.49 0.54 0.81 0.76 Big 0.11 0.50 0.58 0.85 1.07 表8 FF25リターンの標準偏差(1986.1 - 2011.9、月次%) Low 2 3 4 High Small 8.72 8.09 7.33 7.16 7.04 2 7.60 6.84 6.53 6.36 6.60 3 6.76 6.13 5.77 5.49 6.18 4 6.23 5.53 5.24 5.29 5.98 Big 5.92 5.63 5.38 6.14 7.82 表9 FF25リターンのt統計量(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 1.50 2.25 2.82 2.87 3.66 2 1.12 1.77 2.04 2.22 3.17 3 0.30 1.47 2.07 2.97 2.88 4 0.44 1.80 2.08 3.11 2.59 Big 0.38 1.79 2.18 2.82 2.78 26 表 8 FF25 リターンの標準偏差 (1986.1-2011.9,月次 %) 表7 FF25の平均リターン(1986.1 - 2011.9、月次%) Low 2 3 4 High Small 0.64 0.90 1.02 1.01 1.27 2 0.42 0.60 0.65 0.70 1.03 3 0.10 0.45 0.59 0.80 0.88 4 0.13 0.49 0.54 0.81 0.76 Big 0.11 0.50 0.58 0.85 1.07 表8 FF25リターンの標準偏差(1986.1 - 2011.9、月次%) Low 2 3 4 High Small 8.72 8.09 7.33 7.16 7.04 2 7.60 6.84 6.53 6.36 6.60 3 6.76 6.13 5.77 5.49 6.18 4 6.23 5.53 5.24 5.29 5.98 Big 5.92 5.63 5.38 6.14 7.82 表9 FF25リターンのt統計量(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 1.50 2.25 2.82 2.87 3.66 2 1.12 1.77 2.04 2.22 3.17 3 0.30 1.47 2.07 2.97 2.88 4 0.44 1.80 2.08 3.11 2.59 Big 0.38 1.79 2.18 2.82 2.78 26 表 9 FF25 リターンの t 統計量 (1986.1-2011.9) の関係,および,ゼロベータポートフォリオに ついて確認しておく。 FF25 ポートフォリオの超過リターン rj - rf , j =1, 2, ... , 25, を各 j についてマーケットの超過 リターン rM - rfに時系列回帰してベータの推 定値

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の再検証と平均分散フロンティア

ここでは、古典的なCAPMの実証分析手法を用いることによって、日本の株式市場データにおい

て、CAPMがどの程度機能するのかを確認しておく。具体的には、Black, Jensen, and Scholes [2]

の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rf に時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rf を計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rf にリスクプ レミアム、すなわちβj= Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf = βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 を求める。その上で各

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ここでは、古典的なCAPMの実証分析手法を用いることによって、日本の株式市場データにおい

て、CAPMがどの程度機能するのかを確認しておく。具体的には、Black, Jensen, and Scholes [2]

の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rf に時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rf を計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rf にリスクプ レミアム、すなわちβj= Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf = βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 について,超過 リターンの時系列標本平均 rj - rfを計算し, それを

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ここでは、古典的なCAPMの実証分析手法を用いることによって、日本の株式市場データにおい

て、CAPMがどの程度機能するのかを確認しておく。具体的には、Black, Jensen, and Scholes [2]

の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rf に時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rf を計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rf にリスクプ レミアム、すなわちβj= Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf = βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 にクロスセクショ ン回帰した結果が表 10 と図 1 に示してある。 Sharpe-Lintner 型 CAPM では,資産の期待 リターン E[rj] が,安全資産利子率 rfにリス ク プ レ ミ ア ム, す な わ ち

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て、CAPMがどの程度機能するのかを確認しておく。具体的には、Black, Jensen, and Scholes [2]

の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rf に時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rfを計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rfにリスクプ レミアム、すなわちβj= Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf= βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 8

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ここでは、古典的なCAPMの実証分析手法を用いることによって、日本の株式市場データにおい

て、CAPMがどの程度機能するのかを確認しておく。具体的には、Black, Jensen, and Scholes [2]

の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rfに時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rfを計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rf にリスクプ レミアム、すなわちβj= Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf = βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 8

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て、CAPMがどの程度機能するのかを確認しておく。具体的には、Black, Jensen, and Scholes [2]

の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rfに時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rf を計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rf にリスクプ レミアム、すなわちβj = Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf = βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 8 と

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の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rf に時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rfを計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rf にリスクプ レミアム、すなわちβj= Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf = βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 8 の積を 加えたものとなる。すなわち,

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て、CAPMがどの程度機能するのかを確認しておく。具体的には、Black, Jensen, and Scholes [2]

の分析手法をFF25ポートフォリオのリターンに当てはめ、ベータと平均リターンの関係、およ び、ゼロベータポートフォリオについて確認しておく。 FF25ポートフォリオの超過リターンrj− rf, j = 1, 2, . . . , 25,を各jについてマーケットの超 過リターンrM− rf に時系列回帰してベータの推定値βjˆ を求める。その上で各jについて、超過 リターンの時系列標本平均rj− rf を計算し、それをβ = ( ˆˆ β1, ˆβ2, . . . , ˆβ25)にクロスセクション回 帰した結果が表10と図1に示してある。

Sharpe-Lintner型CAPMでは、資産の期待リターンE[rj]が、安全資産利子率rf にリスクプ レミアム、すなわちβj= Cov(rj− rf, rM− rf)/Var(rM− rf)と(E[rM]− rf)の積を加えたも のとなる。すなわち、 E[rj]− rf = βj(E[rM]− rf) という関係式で表される。このため、リスクはベータで計測されることになり、期待リターンと ベータの間には、正の比例関係が成立することが期待される。ところが、各FF25ポートフォリオ の平均リターンとベータの関係を示した図1を見ると、ハイベータがローリターン、逆にローベー タからハイリターンが得られた傾向が見て取れる。表10では、平均リターンをベータに回帰した 結果が示されているが、傾きが負の値をとり、その統計的な優位性も確認されている。

Black, Jensen, and Scholes [2]など、CAPMの初期の実証研究において、ベータとリターンの

間に正の線形関係が認められたものの、その関係はSharpe-LintnerのCAPMが予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり、各資産(もしくはポートフォリオ)の平均リターンと ベータの間に正の線形関係は見られたものの、その傾きはマーケットポートフォリオの超過リター ンの平均値よりも小さく、Sharpe-Lintner型CAPMの成立については疑問が投げかけられてい た。それでも、マーケットリスクをとることに正のリターンが得られるというBlack型CAPMと の整合性は棄却することができず、CAPMについて一定の評価が与えられることとなった。とこ ろが、日本の株式市場データを見ると、マーケットリスクプレミアムが正であるということ自体が 疑われる結果となっている。ベータリスクをとると、それだけリターンが引き下げられてしまった というのが、表10から読み取れる結果である。 8 という関係式で表される。このため,リスクは ベータで計測されることになり,期待リターン 表7 FF25の平均リターン(1986.1 - 2011.9、月次%) Low 2 3 4 High Small 0.64 0.90 1.02 1.01 1.27 2 0.42 0.60 0.65 0.70 1.03 3 0.10 0.45 0.59 0.80 0.88 4 0.13 0.49 0.54 0.81 0.76 Big 0.11 0.50 0.58 0.85 1.07 表8 FF25リターンの標準偏差(1986.1 - 2011.9、月次%) Low 2 3 4 High Small 8.72 8.09 7.33 7.16 7.04 2 7.60 6.84 6.53 6.36 6.60 3 6.76 6.13 5.77 5.49 6.18 4 6.23 5.53 5.24 5.29 5.98 Big 5.92 5.63 5.38 6.14 7.82 表9 FF25リターンのt統計量(1986.1 - 2011.9) Low 2 3 4 High Small 1.50 2.25 2.82 2.87 3.66 2 1.12 1.77 2.04 2.22 3.17 3 0.30 1.47 2.07 2.97 2.88 4 0.44 1.80 2.08 3.11 2.59 Big 0.38 1.79 2.18 2.82 2.78 26 表 7 FF25 の平均リターン (1986.1-2011.9,月次 %)

(9)

リスクとリターン - 62 - 表10 CAPMベータとリターン rj− rf = γ0+ γ1βjˆ + ej 推定値 tP(>|t|) γ0 2.28 2.75 0.01 γ1 -1.99 -2.32 0.03 Adj. R2 0.16 表11 ゼロベータポートフォリオ R∗Z σ(R∗ Z) t(R Z) r(R∗Zt, R∗Z,t−1) U.S. 1/31-12/65 0.338 4.36 1.62 0.113 U.S. 7/48-3/57 0.782 1.99 4.03 -0.181 U.S. 4/57-12/65 0.997 2.28 4.49 0.414 Japan 9/77-9/12 2.97 17.36 3.46 0.14

(出典。米国データについては、Black, Jensen, and Scholes [2]のTable 5の結果を一部抜粋。)

6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 STD/Month/percent MEAN/Month/percent (1,3) and (1,5) of FF25 tangent 図3 平均分散アプローチの難点 27 表 10 CAPM ベータとリターン 0.90 0.95 1.00 1.05 1.10 −0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 beta mean retur n 図1 CAPM betaと平均リターン 0 5 10 15 20 0 2 4 6 8 0 5 10 15 20 0 2 4 6 8 0 5 10 15 20 0 2 4 6 8

FF25 return Eff Frontier in Japan, 1982/09−2011/09

0 5 10 15 20 0 2 4 6 8 STD/Month/percent MEAN/Month/percent 0 5 10 15 20 0 2 4 6 8 STD/Month/percent MEAN/Month/percent 0 5 10 15 20 0 2 4 6 8 0 5 10 15 20 0 2 4 6 8 0 5 10 15 20 0 2 4 6 8 FF25 VW tangent gmvp 1/N ZeroBeta 図2 FF25ポートフォリオによる効率的フロンティア 図 1 CAPM ベータと平均リターン とベータの間には,正の比例関係が成立するこ とが期待される。ところが,各 FF25 ポートフォ リオの平均リターンとベータの関係を示した図 1 を見ると,ハイベータがローリターン,逆に ローベータからハイリターンが得られた傾向が 見て取れる。表 10 では,平均リターンをベー タに回帰した結果が示されているが,傾きが負 の値をとり,その統計的な優位性も確認されて いる。

Black, Jensen, and Scholes [2] な ど, CAPM の 初期の実証研究において,ベータとリターンの 間に正の線形関係が認められたものの,その関 係は Sharpe-Lintner の CAPM が予想するほどに は強くないことが指摘されていた。つまり,各 資産(もしくはポートフォリオ)の平均リター ンとベータの間に正の線形関係は見られたもの の,その傾きはマーケットポートフォリオの超 過 リ タ ー ン の 平 均 値 よ り も 小 さ く, Sharpe-Lintner 型 CAPM の成立については疑問が投げ かけられていた。それでも,マーケットリスク をとることに正のリターンが得られるという Black 型 CAPM との整合性は棄却することがで きず, CAPM について一定の評価が与えられる こととなった。ところが,日本の株式市場デー タを見ると,マーケットリスクプレミアムが正 であるということ自体が疑われる結果となって いる。ベータリスクをとると,それだけリター ンが引き下げられてしまったというのが,表 10 から読み取れる結果である。 CAPM の成立についてさらに考察を深める ため, Black, Jensen, and Scholes [2] が導入した 2 ファクターモデルと,ゼロベータポートフォリ オ の リ タ ー ン の 性 質 を 確 認 し て お こ う。 Sharpe-Lintner 型の CAPM の成立が疑われるな

(10)

< 財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 25 年第3号(通巻第 114 号)2013 年3月>

- 63 -

か, Black, Jensen, and Scholes [2] は次のような 2 ファクターモデルを提案した。

CAPMの成立についてさらに考察を深めるため、Black, Jensen, and Scholes [2]が導入した 2ファクターモデルと、ゼロベータポートフォリオのリターンの性質を確認しておこう。 Sharpe-Lintner型のCAPMの成立が疑われるなか、Black, Jensen, and Scholes [2]は次のような2ファ

クターモデルを提案した。 rj= rz(1− βj) + rMβj+ wj. (1) このモデルは、j資産のリターンrjが、マーケットポートフォリオのリターンrMと、マーケット との共分散がゼロとなるゼロベータポートフォリオのリターンrzの二つの変数によって定まり、 またrz の係数はマーケットに対するベータから1− βjとして定まるというものである。この2 ファクターモデルの理論的根拠はBlack [1]によって与えられており、安全資産利子率による借入 や貸付ができなくても、危険資産の空売りが可能であれば、マーケットポートフォリオのリターン が効率的フロンティア上に位置するというCAPMの基本的な性質は維持されることが示されて いる。

表11では、Black, Jensen, and Scholes [2]のTable 5の結果を一部抜粋し、同時に日本の株式

市場データを用いて同様の分析を行った結果を示している。ここではrzの対安全資産超過リター ンとしてR∗

Zを定義し、その平均、標準偏差、t値、自己相関が示してある。R∗Zの推定方法は、 Black, Jensen, and Scholes [2]を踏襲して行っている。Sharpe-Lintner型のCAPMが成立して

いるとすれば、ゼロベータポートフォリオの超過リータンはゼロとなるはずであるが、米国データ の場合、特に48-57年、57-65年において、ゼロベータポートフォリオから正のリターンが統計的

に有意な結果として得られている。この結果を踏まえ、Sharpe-Lintner型のCAPMはデータから

は支持されないとBlack, Jensen, and Scholes [2]は結論し、同時に(1)の2ファクターモデルの

優位性を主張している。

表11には、日本の株式市場データについて、FF25ポートフォリオを用いて同様の分析を行った

結果も記載している。この結果を見ると、ゼロベータポートフォリオからは2.97%という大きな

リターンが得られており、その分散の大きさにも関わらず、統計的にもゼロから有意に異なるとい うことができる。これは、Black, Jensen, and Scholes [2]と同様にSharpe-Lintner型のCAPM

を棄却するだけでなく、ベータ以外の変数によって期待リターンが説明できた可能性を強く示唆す る結果である。つまり、Black型のCAPMの主要な含意、すなわち期待リターンとベータの間に ある正の線形関係も否定する結果となっている。 次に、FF25ポートフォリオのリターンから得られる効率的フロンティアがどのような形状をし 9 (1) このモデルは, j 資産のリターン rjが,マーケッ トポートフォリオのリターン rMと,マーケッ トとの共分散がゼロとなるゼロベータポート フォリオのリターン rzの二つの変数によって 定まり,また rzの係数はマーケットに対する ベータから 1 -

CAPMの成立についてさらに考察を深めるため、Black, Jensen, and Scholes [2]が導入した 2ファクターモデルと、ゼロベータポートフォリオのリターンの性質を確認しておこう。 Sharpe-Lintner型のCAPMの成立が疑われるなか、Black, Jensen, and Scholes [2]は次のような2ファ

クターモデルを提案した。 rj= rz(1− βj) + rMβj+ wj. (1) このモデルは、j資産のリターンrjが、マーケットポートフォリオのリターンrMと、マーケット との共分散がゼロとなるゼロベータポートフォリオのリターンrzの二つの変数によって定まり、 またrzの係数はマーケットに対するベータから1− βjとして定まるというものである。この2 ファクターモデルの理論的根拠はBlack [1]によって与えられており、安全資産利子率による借入 や貸付ができなくても、危険資産の空売りが可能であれば、マーケットポートフォリオのリターン が効率的フロンティア上に位置するというCAPMの基本的な性質は維持されることが示されて いる。

表11では、Black, Jensen, and Scholes [2]のTable 5の結果を一部抜粋し、同時に日本の株式

市場データを用いて同様の分析を行った結果を示している。ここではrzの対安全資産超過リター ンとしてRZ を定義し、その平均、標準偏差、t値、自己相関が示してある。R∗Zの推定方法は、 Black, Jensen, and Scholes [2]を踏襲して行っている。Sharpe-Lintner型のCAPMが成立して

いるとすれば、ゼロベータポートフォリオの超過リータンはゼロとなるはずであるが、米国データ の場合、特に48-57年、57-65年において、ゼロベータポートフォリオから正のリターンが統計的

に有意な結果として得られている。この結果を踏まえ、Sharpe-Lintner型のCAPMはデータから

は支持されないとBlack, Jensen, and Scholes [2]は結論し、同時に(1)の2ファクターモデルの

優位性を主張している。

表11には、日本の株式市場データについて、FF25ポートフォリオを用いて同様の分析を行った

結果も記載している。この結果を見ると、ゼロベータポートフォリオからは2.97%という大きな

リターンが得られており、その分散の大きさにも関わらず、統計的にもゼロから有意に異なるとい うことができる。これは、Black, Jensen, and Scholes [2]と同様にSharpe-Lintner型のCAPM

を棄却するだけでなく、ベータ以外の変数によって期待リターンが説明できた可能性を強く示唆す る結果である。つまり、Black型のCAPMの主要な含意、すなわち期待リターンとベータの間に ある正の線形関係も否定する結果となっている。 次に、FF25ポートフォリオのリターンから得られる効率的フロンティアがどのような形状をし 9 として定まるというもので ある。この 2 ファクターモデルの理論的根拠は Black [1] によって与えられており,安全資産利 子率による借入や貸付ができなくても,危険資 産の空売りが可能であれば,マーケットポート フォリオのリターンが効率的フロンティア上に 位置するという CAPM の基本的な性質は維持 されることが示されている。

表 11 で は,Black, Jensen, and Scholes [2] の Table 5 の結果を一部抜粋し,同時に日本の株 式市場データを用いて同様の分析を行った結果 を示している。ここでは rzの対安全資産超過 リターンとして R*zを定義し,その平均,標準 偏差, t 値,自己相関が示してある。 R*zの推定 方法は, Black, Jensen, and Scholes [2] を踏襲し て行っている。 Sharpe-Lintner 型の CAPM が成 立しているとすれば,ゼロベータポートフォリ オの超過リータンはゼロとなるはずであるが, 米国データの場合,特に 48-57 年, 57-65 年に おいて,ゼロベータポートフォリオから正のリ ターンが統計的に有意な結果として得られてい る。 こ の 結 果 を 踏 ま え, Sharpe-Lintner 型 の CAPM はデータからは支持されないと Black, Jensen, and Scholes [2] は結論し,同時に (1) の 2 ファクターモデルの優位性を主張している。 表 11 には,日本の株式市場データについて, FF25 ポートフォリオを用いて同様の分析を 行った結果も記載している。この結果を見ると, ゼロベータポートフォリオからは 2.97% とい う大きなリターンが得られており,その分散の 大きさにも関わらず,統計的にもゼロから有意 に異なるということができる。これは, Black, Jensen, and Scholes [2] と 同 様 に Sharpe-Lintner 型の CAPM を棄却するだけでなく,ベータ以 外の変数によって期待リターンが説明できた可 能性を強く示唆する結果である。つまり, Black 型の CAPM の主要な含意,すなわち期待リター ンとベータの間にある正の線形関係も否定する 結果となっている。 次に,FF25ポートフォリオのリターンから 得られる効率的フロンティアがどのような形状 をしていたのかを確認し,マーケットポートフ ォリオの特徴について見ておこう。図2は, 1977年 9月から 2011年 9月までの FF25ポートフ ォリオリターンの標本平均と標本共分散を計算 し,平均標準偏差平面において,平均分散分析 の効率的フロンティアを描いたものである。接 点ポートフォリオ (tangent),FF25ポートフォリ オを等加重で保有した 1/Nポートフォリオ,効 表10 CAPMベータとリターン

r

j

− r

f

= γ

0

+ γ

1

β

ˆ

j

+ e

j 推定値

t

P(>

|t|)

γ

0

2.28

2.75

0.01

γ

1

-1.99

-2.32

0.03

Adj. R

2

0.16

表11 ゼロベータポートフォリオ

R

Z

σ(R

Z

)

t(R

Z

)

r(R

Zt∗

, R

∗Z,t−1

)

U.S. 1/31-12/65

0.338

4.36

1.62

0.113

U.S. 7/48-3/57

0.782

1.99

4.03

-0.181

U.S. 4/57-12/65

0.997

2.28

4.49

0.414

Japan 9/77-9/12

2.97

17.36

3.46

0.14

(

出典。米国データについては、

Black, Jensen, and Scholes [2]

Table 5

の結果を一部抜粋。

)

6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 6 7 8 9 10 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 STD/Month/percent MEAN/Month/percent (1,3) and (1,5) of FF25 tangent 図3 平均分散アプローチの難点 表 11 ゼロベータポートフォリオ 出典。米国データについては,Black,Jensen,andScholes[2] の Table5 の結果を一部抜粋。)

(11)

リスクとリターン

図 2 FF25 ポートフォリオによる効率的フロンティア

率的フロンティア上で最も分散の小さい大域的 最小分散ポートフォリオ(gmvp),時価総額加重 ポートフォリオのリターン(Value Weighted, VW), および Black, Jensen, and Scholes [2]と同じ方法 で推定されたゼロベータポートフォリオにつ いて,そのリスクとリターンも記載してい る。 図 2 から分かるように,マーケットポート フ ォ リ オ (VW) の パ フ ォ ー マ ン ス は 1/N や gmvp と比べて劣っており, FF25 ポートフォリ オを単純に等加重で保有したり,またリターン は追求せずに単にリスク量の最小化を目指すこ とによって,かえってリターンが確保できた可 能性が示唆される。また,接点ポートフォリオ のリターンは非常に大きくなっており, FF25 ポートフォリオをうまく組み合わせることに よって,リターンの向上が期待できる可能性が 示唆される。ゼロベータポートフォリオのリ ターンも大きく,先に述べた通り,マーケット リスク以外にリターンと結びついているリスク の存在が期待できる。 ただし,良く知られているように,平均分散 アプローチはその入力パラメータ,すなわち期 待リターンと共分散行列の値に対して非常に感 応度が高く,算出されるポートフォリオは正と 負に極端に大きな投資比率を示す。図 2 におい ても,接点ポートフォリオは非常に高いリター ンであるが,同時にリスク水準も極端に高く なっている。また,ゼロベータポートフォリオ についても,かなり高いリターン水準となって おり,接点ポートフォリオと同程度のリスク量 になっている。このため,これらのポートフォ リオ戦略を実際に構築できるかどうかは疑わし い。次の節以降では,効率的フロンティアの事 前把握について検証してゆく。

参照

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