教 室 の 紹 介 1.歴 史 1872年(明治 5年)粟田口青蓮院に療病院を 開設し,先きに招いたドイツ人医師ヨンケル (JunkervonLangegg)を教師として医学の教育 を始めたのが京都府立医科大学の淵源で,講義 はすべてドイツ語をもって行うことを原則とし ていた. 1880年(明治 13年),現在地に療病院を移転 すると共に翌 14年学校と病院の経営を分離し, 京都府医学校が誕生した. 1884年(明治 17年),外科から分離して第 4 番目の専門診療科として産婦人科が創設され, 初代の部長に武部隆太郎教諭が任命された. 明治 20年足立健三郎教諭,明治 28年高山尚 平教諭,明治 36年秋元隆次郎教諭,大正 3年加 治安信教授,大正 14年山田一夫教授,昭和 29 年澤崎千秋教授,昭和 33年,御就任の徳田源市 教授は大学紛争時に院長代行をされていたが心 筋梗塞にて逝去された. 1971年(昭和 46年)岡田弘二教授が就任さ れた. 岡田弘二教授は,性ステロイド代謝やその作 用機構の研究を飛躍的に行われ,ステロイド受 容体,エストロゲン代謝や臨床応用,アロマ ターゼ研究,ステロイドの悪性腫瘍への応用等 へとつながった.産婦人科感染症領域での研究 は,産婦人科領域の術後感染症や周産期感染症 を対象として基礎的,臨床的研究が行われた. ステロイド受容体による作用機構の研究は, 1987年(昭和62年)玉舎輝彦岐阜大学教授誕生 へとつながった.1992年(昭和 57年)周産期 診療部の開設.1993年(昭和 58年)附属看護 <部 門 紹 介>
女性生涯医科学(産婦人科学教室)
医 学 フ ォ ー ラ ム
専門学校に助産学科を再開設.1988年(昭和 63年)体外受精,胚移植が開始された.1991年 (平成 3年)には第 43回日本産科婦人科学会を 会長として開催された. 1995(平成 7年)本庄英雄教授が就任された. エストロゲンの代謝やその臨床応用の研究がエ ストロゲンによる更年期障害,高脂血症,動脈 硬化,骨粗鬆症,アルツハイマー病などの予防 といった中高年女性の qualityoflifeの向上を目 指した研究をされた.1996年(平成 8年)顕微 受精,受精卵の凍結保存が倫理委員会で承認さ れた.1999年(平成 11年)臨床の場は産科と 婦人科と分かれて運営することになった.本庄 教授は婦人科診療部長を勤められ,産科は山本 宝,保田仁介,北脇 城産婦人科助教授が診療 部長を勤められた.周産期産科外来,子宮内膜 症外来,不妊症外来,腫瘍外来さらには特に, 更年期・老年期の女性を対象としたクイーンズ コーナーを設けるなど臨床の場の専門化,さら にはこれらを支える基礎研究を行い思春期・性 成熟期・周産期・更年期・老年期までのすべて の女性が一生 brilliantwomanであることを目指 した医療を展開された. 2008年(平成 20年)北脇 城現教授が就任 された. 大学の 137年,教室の 125年の伝統を守り, さらに発展させるために,①大学が高い臨床レ ベルをもつことにより内外の信頼に応えられる ように,教室スタッフを専門性に特化するよう に配置し,周産期,腫瘍,子宮内膜症,不妊, 腹腔鏡下手術,更年期,感染症などのサブグ ループを形成し,それぞれ専門外来と研究を行 い,研究成果を国内外に発信する.②内科的な 要素や外科的な要素を有する守備範囲の広い女 性の生涯の医療をカバーする産婦人科学の診断 から治療までを一人の担当医がオーガナイズで きるよう充実した卒前・卒後教育の実践をめざ す.③若い先生方との十分な対話の中から各人 の可能性を引き出し,そしてチーム全体の総合 力を高めて行き,教室スタッフ全員を挙げて研 修医や学生諸君と積極的に交流する機会を設け て十分な対話の中から若い人材を発掘していく よう力を入れる.などのコンセプトをもって臨 床,研究,教育を実践している. 2.部門紹介 周産期診療部は昭和57年 6月11日に開設さ れ,産科部門(周産期外来,分娩室,産科病棟, 新生児室)と新生児集中治療室(NICU)の 2部 門からなり,産科部門は産婦人科が,NICUは小 児科が担当し,看護単位はそれぞれ別である. 平成 9年 11月に総合周産期母子医療センター が京都第一赤十字病院に開設され,当施設はサ ブセンターの位置づけとなった.そのため,院 内の正常・異常妊娠の周産期管理を行う以外に も京都市内,京都府・南部地域を中心に緊急母 体搬送を含めて,ハイリスク妊娠・分娩も積極 的に受け入れてきた.ヘリポートがあるので京 都府北部与謝の海病院からのヘリコプターによ る母体搬送も積極的に受け入れている.助産制 度も取り入れている. 産科部門が力を注いでいるのは,1つにはハ イリスク妊娠の管理,特に胎児発育不全や一絨 毛膜双胎児である.これらの疾患は妊娠管理が 非常に難しいとされる.また超音波診断法によ る早期の胎児先天異常の発見にも努めている. 当院には,小児内科,小児外科,小児心臓外科 も併設されているため胎児先天異常の症例の紹 介が多いというのも特徴である.疎水ネット ワークを利用して胎児遠隔診断を行っている. 京都北部,南部の遠隔病院から送られてきた胎 児画像を,当院の周産期専門医が解析し,心奇 形を中心とした胎児先天異常を早期発見しよう とする試みである. 近年の少子化の影響を受けて分娩数は減少し たが,ここ数年は年間約 300症例ほどで増減な く推移している.サービス的要素を多分に求め られる産科部門にあって,当院のようにハイリ スク妊娠の管理に特化してしまった施設が,正 常分娩数を増加させることは至難である.今 後,正常分娩数を如何に確保するかが問題であ る.当院が正常分娩を扱っていないと思ってい る方も多く,病院と協力して広報に努めること も肝要である.出産祝いとして院内レストラン・ オリゾンテでの食事を提供している.アメニ
ティーの充実も重要であるが,大学病院ならで はのサービス向上を試みている.臨床研究に協 力していただく形になるが,妊婦さんの骨密度 計測や自律神経機能検査(ストレス度チェッ ク)を無料で行っている. 帝王切開の率は約 40%となり,減少傾向にあ る.安易に帝王切開をしないように適応を見直 したことなどが理由に挙げられる.分娩は危険 が伴うものであるから,安全を第一とし,経腟 分娩症例はリスクの少ない症例に限り,基本的 に自然分娩を原則としている.分娩ゾーンには 分娩室 3室,陣痛室 1室 3床を有している.陣 痛室での家族 2人までの付き添いは可能であ る.母親教室に夫が参加することを条件に立会 い分娩を認めている.また助産師外来を,症例 限定のうえで行っている.分娩ゾーンには独自 の手術室を有し,緊急帝王切開に速やかに対処 できるようにしている.必要と判断される場合 は NICU医師の立会いも行い,母児の安全に留 意している.分娩後は母児同室も可能である. B3病棟は現在 24床を有し,うち 19床が産科病 床で 5床が婦人科病床である.病床占有率は概 ね 8割を越える.多胎妊娠,切迫早産など長期 入院を要する症例もあるが,検査入院,正常分 娩後,帝王切開後の入院は比較的短期の入院で あるため,平均在院日数は 2週間をきっている. 産科部門は 4人のスタッフが専任している.う ち 2人が周産期専門医を取得している.週 1回 のペースで周産期カンファレンスを開いて, NICU医師との医師疎通を図るとともに,産科 単独でも看護スタッフと問題事項を検討し,医 療の質の向上に心がけている.周産期医療は倫 理的にも難しい問題を多く抱えるが,各関連科 や看護スタッフとの協力下に,母児の幸福に少 しでも貢献できれば幸甚である. 女性ヘルスケアに関して,全国に先だって更 年期外来や女性外来という特殊外来を設けてき た.更年期外来は先代の本庄教授の時代にはク イーンズコーナーと銘打って閉経後女性の QOLを改善すべく努めてきた.閉経後女性に 主にエストロゲンを補充することで,更年期の 不定愁訴が改善されるばかりでなく,骨粗鬆 症,動脈硬化,アルツハイマー病の発症が抑制 されることが期待される.基礎研究としてエス トロゲンによる神経細胞の保護作用に取り組 み,エストロゲンによるアルツハイマー病発症 抑制を世に広く喧伝してきた.エストロゲンに よるアルツハイマー病治療も試みたが,期待し た成果は得られなかった.エストロゲンによる 治療はエビデンスも多く,効果的な確立された 治療であるのだが,本邦では,エストロゲンに よる治療は乳癌や性器出血のため患者さんから 受け入れられにくい.今後もエストロゲンによ る治療の啓蒙や抗加齢効果についての検討を進 めていく予定である.ジヒドロエピアンドロス テンジオン(DHEA)やメラトニンなどサプリ メントの効果も検討したいと考えている. 更年期障害を客観的に評価するために,心拍 変異動解析をとりいれるなどの新しい臨床的試 みを行っている.更年期障害の治療には,エス トロゲンの補充だけでなく,漢方療法やサプリ メントなど患者様の要望に沿った治療を試みて いる. 婦人科腫瘍グループは,婦人科臓器に発生す る腫瘍性病変の診断・治療を専門としている. 婦人科臓器は,外陰・腟・子宮・卵巣・卵管と 幅広い臓器を含んでおり,腫瘍の発生母地とな る臓器によって個別の専門的治療が必要とな る.また,悪性腫瘍の診療ばかりではなく,子 宮頸部異形成などの前がん病変の診療などにも 積極的に取り組んでいる.昨今,婦人科腫瘍の 一部においては若年女性や未産婦の増加が報告 されており,少子化に悩む本邦においては由々 しき事態であると考えている.また,がん治療 における生活の質(QOL)の保持といった視点 も重要視されている.将来的には,がん発病の 予防,がん検診などの更なる普及,妊孕性(妊 娠の可能性)・機能温存を志向する,より低侵 襲な治療などの開発が急務である.もちろん, 腫瘍の治療においては根治性を損なうことが あってはなりない.個々の症例に対してグルー プ内で十分なディスカッションを行い,エビデ ンスにもとづいた診療を提供しようとスタッフ 全員が心掛けている.実際の診療にあたって
は,病態を分かり易く,かつ詳しく説明し,患 者さんと相談しながら治療法を選択している. 悪性腫瘍の治療というのは,手術・抗がん剤 などの化学療法・放射線治療といった積極的治 療,そして疼痛や不安などの随伴症状を和らげ ることを主とする緩和治療が柱になる.した がって,がん診療においては他の科との連携が 大切で,大きな手術を必要とするようなケー ス,例えば子宮・卵巣以外の臓器を切除する必 要がある場合は,消化器外科や泌尿器科と共同 して手術にあたる.子宮頸がんでは放射線治療 を選択することも多く,放射線科医との連携は 欠かせない.さらには,がんによる痛みや不安 を取り除くため,ペインクリニックや緩和ケア チームと随時相談しています.大学病院という 特徴を生かした,集学的な診療を提供して行き たいと考えている. がん治療の目指すところが「がんの治癒」で あることはいうまでもない.それに並ぶ大きな 目標といえば,「患者さんの社会復帰」だと考え る.積極的に外来化学療法を取り入れ,不要な 入院生活を省くことで,日常生活を損なわずに 治療を受けられるよう配慮している.外来化学 療法により,日帰りでの抗がん剤治療が可能に なっている. 新規の治療の開発・研究・確立のためには, 他施設や関連病院との共同研究や連携は欠かせ ない.婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構や関西 臨床腫瘍研究会,医師主導型臨床試験などの多 くの施設と共同して行う臨床研究に積極的に参 加しているが,それは臨床試験への参加ががん 診療の質を上げるとされているからある. 診療や研究と同様に,若手医師の教育にも力 を注いでいる.次代の担い手を育てていくこと も大学人に求められていると考えている.婦人 科腫瘍医として必要なスキルや知識を身につけ て頂くために,手術手技の指導や治療前症例検 討,放射線科や病理部との合同カンファレン ス,学会発表や論文作成,抄読会などの機会を 出来るだけ多く提供するように心がけている. 2012年度の取扱い症例数は,子宮頸がん(進 行がんのみ):25例,子宮体がん:19例,卵巣 がん:14例であり,関連病院などからの紹介が 年々増えつつあるのが現状である.今後も地域 の医療施設から信頼いただけるような部門を維 持すべく努力していきたいと思う. 子宮内膜症,生殖内分泌,不妊症が主なテー マで,子宮内膜症は,性成熟期女性の約 10%に 発生し,その 90%に月経痛,50%に不妊症をき たすといわれている慢性疾患であり,近年,患 者は増加している.ARTを含む不妊症治療,腹 腔鏡下手術,卵管鏡下卵管形成術,薬物療法等 を行なっている. 3.研 究 最終的に臨床へフィードバックが可能なトラ ンスレーショナル研究を行うことをモットーと している.教室の伝統である内分泌研究を軸に 各分野でオリジナリティの高い研究を目指して いる.近年,研究を志向する医局員は増加しそ れぞれが意欲的に取り組んでいる.その成果は 徐々に出始めており,英文雑誌発表他さまざま な国内外の学会で高得点演題に選ばれている. ①生殖内分泌グループ 子宮内膜症の発症進展機序に関して,さまざ まな遺伝子の遺伝子多型やそのサイトカインが その発生や病態に関与することをこれまで明ら かにしてきた.最近は局所のステロイド産生に 関わる遺伝子を制御することで新たな治療法の 確立を目指している.また,腹水および末梢血 中の糖鎖抗原解析を行い子宮内膜症の早期診断 法を研究している. ②腫瘍グループ ホルモン依存性腫瘍である子宮体癌のエスト ロゲン伝達機序解明を目指している.すなわち エストロゲンやプロゲステロン受容体の制御因 子の機能解析を行い,妊孕能を温存しうる子宮 体癌ホルモン療法への応用を目指している.ま た,末梢血中の miRNA解析を行うことで早期 発見および再発の早期診断法の確立を模索して いる.さらに,難治例とされる子宮肉腫に対す る分子標的治療の開発も行っている. ③更年期グループ ホルモン補充療法(HRT)の際にエストロゲ ンとともに併用されるプロゲスチンの心血管イ
ベントへの影響について研究している.動脈硬 化発症リスクを軽減しかつ卵巣欠落症状を改善 しうる新たな HRTの臨床応用を探索している. ④感染症グループ 子宮頸管炎,切迫早産とマイコプラズマ・ウ レアプラズマとの関連に関する研究,抗菌薬に 対する咽頭常在性ナイセリア属の薬剤感受性測 定による淋菌薬剤耐性化傾向予測の検討,クラ ミジア子宮頸管炎患者におけるクラミジア直腸 炎の診断と治療などについて検討している. 4.教室スタッフの紹介 北脇 城 教授 :昭56年 本学 岩破一博 准教授 :昭54年 川崎医大 野口敏史 准教授 :昭58年 愛知医大 岩佐弘一 講師 :平 3年 本学 楠木 泉 講師 :平 3年 自治医大 澤田守男 講師(学内):平 8年 本学 藤澤秀年 助教 :昭63年 本学 辻 哲朗 助教 :平 2年 関西医大 黒星晴夫 助教 :平 9年 長崎大 辰巳 弘 助教 :平 9年 本学 安尾忠浩 助教 :平 12年 本学 森 泰輔 助教 :平 13年 大阪医大 藁谷深洋子 助教 :平 14年 滋賀医大 片岡 恒 助教 :平 20年 本学 沖村浩之 助教 :平 22年 本学