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Microsoft Word - 固定資産税相当額 _1_.docx

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1 租税法務学会 報告レジュメ 平成 25 年 5 月 11 日 不動産の取得に際して売主へ支払った固定資産税等相当額は、取得した当該不動産の取得 価額に算入すべきであるとした事例(平 21 年 3 月 1 日∼平 22 年 2 月 28 日の事業年度の法 人税の更正処分・一部取消し)平成 24 年 7 月 5 日裁決 茂垣 志乙里 Ⅰ事案の概要及び争点 1.事案の概要 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が土地及び建物の取得に際して売主 に支払った固定資産税等に相当する金額を損金の額に算入したことについて、原処分庁 が、当該金額については当該土地及び建物の取得価額に算入すべきであるとして法人税 の更正処分を行ったのに対し、請求人が同処分の一部の取消しを求めた事案である。 2.争点 本件固定資産税等相当額は、請求人の本件不動産の取得価額に算入すべきか否か。 Ⅱ関係法令の要旨及び基礎事実 1.関係法令の要旨 (1) 法人税法第 22 条《各事業年度の所得の金額の計算》第 3 項は、内国法人の各事業 年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めが あるものを除き、次に掲げる額とする旨規定し、また、同条第 4 項は、次に掲げる額は、 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定し ている。 イ 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額 ロ 上記イに掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償 却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 ハ 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの (2) 法人税法施行令第 54 条《減価償却資産の取得価額》第 1 項第 1 号は、購入した減 価償却資産の取得価額は、次に掲げる金額の合計額である旨規定している。 イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他 当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額) ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額 (3) 法人税基本通達 7−3−16 の 2《減価償却資産以外の固定資産の取得価額》は、減 価償却資産以外の固定資産の取得価額については、別に定めるもののほか、法人税法施 行令第 54 条の規定及びこれに関する取扱いの例による旨定めている。 (4) 地方税法第 343 条《固定資産税の納税義務者等》第 1 項は、固定資産税は、固定

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2 資産の所有者に課する旨規定し、当該所有者について、同条第 2 項は、土地又は家屋に ついては、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記 又は登録されている者をいう旨、同条第 3 項は、償却資産については、償却資産課税台 帳に所有者として登録されている者をいう旨規定している。また、地方税法第 359 条《固 定資産税の賦課期日》は、固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の 1 月 1 日とする旨規定している。 2.基礎事実 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっ てもその事実が認められる。 (1) 請求人は、平成 22 年 2 月 5 日付で、売主との間で、「土地」及び「建物」欄に記 載した土地及び建物(以下、これらを併せて「本件不動産」という。)を主たる信託財 産とする不動産信託受益権売買契約(以下「本件受益権売買契約」という。)を締結し た(以下、本件受益権売買契約に係る契約書を「本件受益権売買契約書」という。)。 なお、本件受益権売買契約書には、要旨次のとおり記載されている。 イ 売主は、請求人に対し、平成 22 年 2 月 18 日又は請求人と売主との間で別途合意す る日(以下、これらの日を「クロージング日」という。)において、平成 17 年 2 月 25 日付の、本件不動産を主たる信託財産とし、当初委託者を H 社、受託者を G 信託銀行と する不動産管理処分信託契約(以下「本件信託契約」という。)に基づく信託受益権(以 下「本件受益権」という。)を一括で売り渡し、請求人は、これを買い受ける(第 2 条第 1 項)。 ロ 請求人は、売主に対して、本件売買代金を次のとおり支払う(第 3 条第 2 項)。 (イ) 本件受益権売買契約締結と同時に、売主の指定する銀行口座へ振込みの方法で○ ○○○円を手付金として支払う。なお、当該手付金は、次の(ロ)の支払と同時に、無利 息にて本件売買代金に充当される。 (ロ) クロージング日に、売主の指定する銀行口座へ振込みの方法で○○○○円を支払 う。なお、支払った金員は、その支払と同時に本件売買代金に充当される。 ハ 本件受益権は、本件売買代金の支払と同時に、売主から請求人に移転する(第 4 条第 1 項)。 ニ 請求人は、本件受益権の移転後直ちに、クロージング日付で、自らの責任と負担に おいて本件信託契約を解約し、本件信託契約の受託者である G 信託銀行から本件不動産 の交付を受けてその所有権を取得しなければならず、また、G 信託銀行をして、信託終 了による本件不動産の所有権移転登記及び信託登記の抹消登記の申請手続きを行わせ なければならない(第 5 条第 1 項)。 ホ 本件受益権に係る一切の費用(本件不動産に対して賦課される平成 22 年度の固定 資産税及び都市計画税(その起算日は、平成 22 年 1 月 1 日とする。以下、固定資産税

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3 及び都市計画税を併せて「固定資産税等」という。)、管理費等、水道光熱費、各種負 担金等の費用並びに信託報酬を含む。)は、クロージング日をもって区分し、その前日 までに相当する部分は売主の負担、その当日以降に相当する部分は請求人の負担とする (第 14 条第 1 項)。 ヘ 本件信託契約に係る収益(本件不動産より生ずる収益(賃料及び共益費等)を含む。) については、本件信託契約及び宛名名義のいかんに関わらず、クロージング日をもって 区分し、その前日までに相当する部分は売主の収益、その当日以降に相当する部分は請 求人の収益とし、その詳細は、請求人及び売主が別途協議の上、決定する(第 15 条)。 (2) 請求人は、平成 22 年 2 月 18 日付で、売主との間で、上記(1)のホ及びヘの定めに 基づき、本件売買代金及び本件受益権に係る費用並びに本件信託契約に係る収益の精算 について合意し、「精算に関する確認書」と題する書面を取り交わした(以下、この取 り交わした書面を「本件確認書」という。)。 なお、本件確認書には、請求人及び売主は、クロージング日時点で、本件確認書に添 付された精算計算書(以下「精算計算書」という。)記載のとおりの債権債務があるこ とを確認し、請求人は、クロージング日に、売主に対して当該債権債務を相殺した後の 精算額○○○○円を振込みにより支払う旨記載されている。 そして、精算計算書には、上記精算額○○○○円の内訳として、本件売買代金などの 金額の他、建物の各室の賃貸料及び袖看板の使用料に係る請求人帰属分の精算金の額○ ○○○円、請求人が負担すべき公租公課精算金として、本件不動産に係る土地、建物及 び償却資産の固定資産税等の精算金の額、当該建物及び当該償却資産の固定資産税等の 精算金に係る消費税等の額並びにその合計金額○○○○円(以下、この合計金額を「本 件固定資産税等相当額」という。)が、それぞれ記載されている。 (3) 請求人は、平成 22 年 2 月 18 日付で、G 信託銀行との間で、不動産管理処分信託 契約解除合意書を取り交わして本件信託契約を解除した。 (4) 本件不動産は、平成 22 年 2 月 18 日付で、信託財産引継を原因として G 信託銀行 から請求人へ所有権移転登記を経由した。 (5) 請求人は、本件売買代金の内訳に従い、総勘定元帳の土地勘定に平成 22 年 2 月 5 日に○○○○円、同月 18 日に○○○○円を、建物勘定に同日に○○○○円をそれぞれ 計上した。 (6) 請求人は、平成 22 年 2 月 18 日に、本件確認書に基づき、債権債務を相殺した後 の本件固定資産税等相当額を含む精算額○○○○円を振込みにより売主に支払い、本件 固定資産税等相当額を租税公課勘定に計上して本件事業年度の損金の額に算入した。 Ⅲ当事者の主張 1.原処分庁の主張

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4 本件固定資産税等相当額は、次の理由から、本件不動産の取得価額に算入すべきであ る。 イ 地方税法第 343 条第 1 項等の各規定によれば、固定資産税等は、その賦課期日であ る毎年 1 月 1 日現在の固定資産の所有者に対して課されるものであり、賦課期日後にそ の固定資産の所有者となった者が当該固定資産に係る当該年度の固定資産税等の納税 義務を負うことはないから、本件不動産の買主である請求人が本件固定資産税等相当額 を負担したとしても、請求人が納税義務を負うことはなく、請求人が本件不動産に係る 固定資産税等そのものを負担したものとは認められない。 ロ 本件固定資産税等相当額は、本件受益権売買契約書の定めにより生じる債権債務関 係に基づいて売買当事者間で授受されるものであり、その授受は、本件不動産の売買の 条件の一つであるから、本件固定資産税等相当額は、本件不動産の購入の代価の一部で あると認められ、法人税法施行令第 54 条第 1 項第 1 号の規定により本件不動産の取得 価額に算入すべきものである。 2.請求人の主張 本件固定資産税等相当額は、次の理由から、その全額を本件事業年度の損金の額に算 入すべきである。 (1) 請求人の負担した本件固定資産税等相当額は、請求人が地方税法上の納税義務 者として支払う固定資産税等そのものではないものの、請求人と売主は、本件受益権売 買契約書に基づいて本件不動産の所有権の移転日をもって、その年度の固定資産税等を 所有期間であん分し、固定資産税等の負担を公平に分担したものであり、地方税法上の 納税義務者でないという理由で損金の額に算入しないというのは明らかに誤りである。 (2) 不動産取得に係る租税公課は、別段の定めがあるものを除き、取得価額を構成 しないと考えるのが相当である。 また、法人税法施行令第 54 条第 1 項第 1 号の規定は、減価償却資産の購入に直接要 した費用を指すものであり、所有期間に対応して請求人と売主との間で公平に分担した 本件固定資産税等相当額のような間接経費を取得価額に含めることは、貸借対照表上に 時価以上の過大な資産を計上することになる。 Ⅳ審判書の判断 1.法令解釈等 基本通達 7−3−16 の 2 は、減価償却資産以外の固定資産の取得価額については、法 人税法施行令第 54 条及びこれに関する取扱いの例による旨定めているところ、この取 扱いは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、減価償却資産以外の固定 資産の取得価額に関しても減価償却資産に関する同法施行令の規定及びこれに関する

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5 取扱いが準用されてしかるべきであることを留意的に定めたものであると解され、当審 判所においても相当と認める。 2.当てはめ 上記のとおり、請求人は、本件受益権売買契約書等に基づき、平成 22 年 2 月 18 日ま でに本件売買代金の全額を売主に支払い、同人から本件受益権を取得するとともに、本 件受益権の原契約である本件信託契約を解除し、本件信託契約の受託者である G 信託銀 行から信託財産の引継ぎとして本件不動産の所有権を取得していることからすると、請 求人は、本件受益権売買契約及びそれに基づく不動産管理処分信託契約解除により、本 件売買代金を支払って本件不動産を取得しているものと認められる。 ところで、地方税法第 343 条第 1 項等の規定によれば、固定資産税等は固定資産の所 有者に対して課されるものであり、その賦課期日は毎年 1 月 1 日であることからすると、 固定資産税等の納税義務者は、賦課期日現在において当該固定資産を所有している者で あると解されるところ、同日後に当該固定資産の所有者に異動が生じたからといって課 税関係に変動が生じるものではなく、同日後に当該固定資産の所有者となった者が納税 義務を負うことはないから、当該固定資産の売買の当事者間において売買後の期間に対 応する固定資産税等、すなわち未経過分の固定資産税等相当額が授受されたとしても、 買主において当該未経過分の固定資産税等相当額について地方税法上の固定資産税等 の納税義務に伴う負担とみることはできない。 そうすると、請求人が負担した本件固定資産税等相当額は、本件不動産に対して賦課 される平成 22 年度の固定資産税等をクロージング日すなわち本件不動産の引渡日以降 に相当する部分は請求人が負担する旨の本件受益権売買契約書の定めに基づいて売主 に対して支払われたものであるから、上記のとおり、地方税法上の固定資産税等の納税 義務に伴う負担ではなく、本件受益権売買契約書の定めにより請求人と売主との間に生 じる債権債務関係に基づいて固定資産税等の相当額として売買当事者間で授受された ものであって、また、本件不動産の売買に伴って授受されたものであり事後費用とはい えないことからすれば、本件固定資産税等相当額は、本件各減価償却資産に係るものに ついては法人税法施行令第 54 条第 1 項第 1 号の規定により、また、減価償却資産以外 の固定資産すなわち本件不動産のうち土地に係るものについては基本通達 7-3-16 の 2 の定めにより、本件不動産の購入の代価の一部であると認めるのが相当である。 したがって、本件固定資産税等相当額は、本件不動産の取得価額に算入すべきである。 3.請求人の主張について 請求人は上記Ⅲ2.(2)のように主張する。しかしながら、上記 2.のとおり、本件固定 資産税等相当額は、売買条件の一つとして請求人が売主へ支払ったものであって、本件 不動産の購入の代価の一部であり、本件不動産の取得価額に算入すべきであるから、請 求人の主張には理由がない。

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6 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、こ れを不相当とする理由は認められない。 Ⅴ検討・・・裁決に反対 1.本裁決の意義と判断構造 本件は、法人税法上の固定資産の取得価額に、不動産の受益権売買契約によりあん分し たいわゆる未経過固定資産税等が含まれるかどうかが争われた。 不動産の売買契約書は当事者間の権利・義務等を明らかにし安全確実な売買の成立を目 的として作成され1、本件のように固定資産税等の精算に関する条項を設けていることが一 般的である。 審判所はまず、本件信託契約が不動産売買と同様の効果をもたらすことを確認している。 その上で、本件において負担した未経過固定資産税等が単なる固定資産税等相当額として 購入代価を成すものであり、固定資産に取得価額に算入すべきものであると判断している。 その論拠は、地方税法 343 条 1 項及び 343 条 2 項等は固定資産税等は固定資産の所有者 に課することとされているが、その所有者とはその年の賦課期日、すなわち 1 月 1 日に登 記簿等に登記又は登録されている者に課するとしている。したがってその年中に所有者の 変更があっても納税義務者は変更されることはなく、新たな所有者は主に慣習によって固 定資産税等の税額をあん分して負担することにより固定資産税等相当額を支払っているに 過ぎないというものである。 平成 24 年 3 月 13 日にも、本件と同様に未経過固定資産税等相当額に関する裁決が行わ れている。平成 24 年 3 月裁決の請求人は、複数の建物取得の際 1 件の建物以外の建物は事 業の用に供しない予定であるため零評価により取得しているが、事業の用に供していない 建物について未経過固定資産税等を負担しているため、これらの建物に係る未経過固定資 産税等は法人税法上開業費として一時に損金に算入することができると主張した。しかし、 審判所は「請求人が本件譲渡契約において取得の目的としているのは、本件建物であると 認められ、また、請求人が負担すべき本件未経過固定資産税等相当額に、請求人が資産計 上していない建物に係る未経過固定資産税等相当額を含んでいるとしても、それは、請求 人が本件建物を取得するに当たり、売買当事者間で合意した取引条件として負担すべき金 額の算定の根拠に過ぎない。」とし、「譲受人が未経過固定資産税等相当額を負担すること は、租税公課としての固定資産税等の負担ではなく、飽くまでも固定資産税等相当額を売 買の取引条件として負担するものであることから、譲受人にとって未経過固定資産税等相 当額は、譲受けに係る資産の購入の代価を構成するものとして、固定資産である減価償却 資産及び土地等の取得価額に含まれることになる。」と判断を下している。 本件とは事案の概況や契約の形態も異なっているが、審判所は最終的にあん分した未経 過固定資産税等が租税公課に該当する固定資産税等ではないことを根拠に、固定資産の取 得価額に含めるという判断をしている。

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7 しかし本来は法人税法上において固定資産の取得価額を定める法人税法施行令(以下「施 行令」という。)54 条 1 項 1 号に基づく解釈が行われるべきである。従って本裁決は、法人 税法上の固定資産の取得価額の範囲を法解釈により検討することが必要であると考えられ るのである。 2.固定資産取得価額の法構造 裁決でも示されているように、本件の関係法令として挙げられるのは、法人税法 22 条《各 事業年度の所得の金額の計算》3 項、及び施行令 54 条《減価償却資産の取得価額》1 項 1 号である。 法人税法 22 条 3 項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金 の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の収益に係る売上 原価等の額及び当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当 該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く)の額であるとし、同条 4 項では その額は一般に公正妥当な会計処理の基準2に従って計算されるものとする旨規定している。 さらに施行令 54 条 1 項 1 号は、購入した減価償却資産の取得価額には、当該資産の購入 代価のみならず、引取運賃、購入手数料などの購入のために要した金額を加算し、さらに 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額も計上することを規定している。 ところで本件では土地についても取得価額が争われているが、法人税基本通達 7-3-16 の 2 により減価償却資産以外の固定資産の取得価額については、施行令 54 条 1 条 1 項の規定 及びこれに関する取扱いの例によることにしている。 ここに固定資産税等が施行令 54 条 1 項 1 号に言う「購入のために要した金額」に含まれ るかについて言及する。 固定資産税等は固定資産の価格を課税標準として課されることになっていることから固 定資産の所有の事実に着目して課される財産税の性質を有するといえる3 すなわち、固定資産税等は固定資産の所有に対して課税されるのであって、「購入のため に要した金額」とは解されないため、固定資産税等の納税義務者に該当した場合には固定 資産税額等は固定資産の取得価額を構成せず、法人税法上損金として算入することができ ると解釈できる。 しかし、本件のように期中において売買を理由により固定資産の所有者が変更となり、 契約により 1 年分の固定資産税等の金額をあん分して譲受人が負担した場合には、その負 担した金額は固定資産税等ではなく、固定資産税等相当額として「購入のために要した金 額」に該当し購入代価を構成するべきものであると判断されているのである。 本稿では、固定資産税等の台帳課税主義による問題と、固定資産税等相当額が「購入の ために要した金額」に該当するかという問題について検討を行う。 3.固定資産税等の台帳課税主義

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8 (1)固定資産税等の納税義務者 上記の通り固定資産税等は、固定資産の所有に担税力を認めて課税するという趣旨があ る4 しかし、「固定資産税の納税義務者は賦課期日における固定資産の所有者であり、その所 有者は土地または家屋については土地登記簿もしくは土地補充課税台帳または建物登記簿 もしくは家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録されている者をいい(地方税法 343 条 2 項)、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者を いう(同 3 項)。」5 すなわち真の所有者でなく形式的な名義人にすぎない者であっても、賦課期日において 各台帳に登記、登録されている者は固定資産の所有者として納税義務を負うものとされる。 これは、「一般に課税上真実の所有者を個別に追求して納税義務者を決定することを求め るのは課税庁に非常に困難を強いることになるので、徴税の便宜の観点から、徴税義務を 円滑、迅速に行うための課税技術上の措置として採用された」6と解されている。 法人税法において固定資産税等(相当額)を固定資産の取得価額を構成するかという問 題は、新規に固定資産を取得した場合ではなく、本件のように期中において所有者が変更 した場合に限られる。すなわち固定資産税等が台帳課税主義を採用することによって真の 所有者に納税義務が課されることはないという固定資産税等制度のあり方に起因している のである。 (2)固定資産税等の台帳課税主義 固定資産税等の納税義務者の規定には例外が定められている。 例えば名義人が賦課期日前に死亡したとき等はその賦課期日において現に所有している 者を納税義務者とする規定(地方税法 343 条 2 項)や、土地補充課税台帳や建物補充課税 台帳には真実の所有者が登録されるべきであると解されているという点7を考慮すると、必 ずしも課税上の便宜という見地からその形式性を貫くべきという考えだけではなく、納税 の義務は真の所有者が正当に負うべきであって、実体適合的な課税を図るべきという趣旨 が相反していることがわかる。 原則的に台帳課税主義の形式を重視する固定資産税等制度に対し、真の所有者に対し固 定資産税相当額の不当利得返還請求を認める昭和 47 年 1 月 25 日最高裁判決8がある。 当事案は、原告が賦課期日において真の所有者と登録名義人が異なる事実があり、真の 所有者は固定資産税を不当に免れたのであって、その利得を返還すべきであると主張した のに対し、最高裁判所が「真実は土地、家屋の所有者でないものが、・・・略 同税の納税義 務者として課税され、右土地、家屋の真の所有者はこれにより同税の課税を免れたことに なり、・・・略 不当に、右納付税額に相当する利得をえたものというべきである。」と原告 の主張を認容した。 この昭和 47 年判決は、賦課期日において登録名義人が真の所有者と異なることに対し判 断されたものであるが、当然に年の中途で所有者に変更が生じた場合にもこの判決の射程

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9 範囲が及ぶとする考え方もある9 昭和 47 年判決は「固定資産税等課税制度が台帳課税主義を採る以上、その表見課税主義 の限界に対し、・・・略 固定資産税等の性格を踏まえた上で、負担につき判示している」10 要な判決であったが、その後の判決は一様に形式的な名義人に課税するものとの理解を徹 底するものであり、不当利得返還請求が認められる判決は出ていない11。最近では平成 23 年 2 月 7 日に下級審判決12が下されているが、昭和 47 年判決とは違い競売不動産の売買で あることを理由に不当利得返還請求は否認されている13 ただ、固定資産税等の台帳課税主義による不当利得の返還請求の是非が問われることは あっても、台帳課税主義による不公平感は課税の便宜により正当化され、実際私人間にお いて負担の調整を行われていることなどから制度そのものを直ちに違憲であるとまでは言 えないとされている14 しかし、台帳課税主義を貫く根拠が、今まで言われてきたとおり「すべての不動産につ いてその真実の所有者を判定させることは不可能に近い。また、賦課期日経過後に所有権 が移転した場合に月割りないし日割りで課税をしなおすことも、実際問題としては手数が かかり困難である」15ことであるならば、現代社会における徴税システムの進化に伴い台帳 課税主義の意義に関する議論は違った結論が導き出されることも想定される。所有に課税 を行う固定資産税等制度の趣旨への適合を考えると、必ずしも便宜性を絶対的なものとす るのではなく何らかの提案によって真の所有者に課税を行うことを模索することも必要で はないかと考えられる16 4.固定資産税等相当額が「購入のために要した金額」に該当するか (1)固定資産の取得価額 固定資産の取得価額は施行令 54 条 1 項 1 号により、購入代価に引取運賃や関税等その 他購入のために要した費用を加算することとされているが、ここでいう「購入のために要 した費用」には、不動産取得税、特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの、 登録免許税等の公租公課等(法人税基本通達(以下「基通」という。)7-3-3 の 2)のほか、 取得に際して支払う立退料(基通 7-3-5)や、土地とともに取得した建物等の取壊費用等(基 通 7-3-6)を含むと解されている。 一方において基通 7-3-3 の 2 は不動産取得税等の一定の公租公課等は固定資産の取得価 額に算入しないことができるという取扱いを示している17 しかし、固定資産税等は 7-3-3 の 2 に例示されている公租公課等には該当しない。なぜ なら前述の通り固定資産税等は所有に課税を行う税であり、上記のような取得に関連した 費用の例示とは明らかに異なる支出であって、固定資産の取得価額を構成せず法人の損金 の額に算入すべき費用であると言えるのである。 前述のように固定資産税等が台帳課税主義を採用しその納税義務者は賦課期日に登記簿 等に登記又は登録されている者であると定めている現状を鑑みれば、本裁決が「新たな所

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10 有者は主に慣習によって固定資産税等の税額をあん分して負担することにより固定資産税 等相当額を支払っているに過ぎない」とする論旨は妥当であると考える。 ところが本件では、審判所は固定資産税等であれば取得価額を構成しないが、契約によ る固定資産税等の精算額である固定資産税等相当額は固定資産税等では無いことを理由に 直ちに「購入のために要した費用」に該当すると判断している。固定資産税等相当額がい かに固定資産の取得価額に算入する費用に該当するのかという解釈は行われていない。審 判所は施行令 54 条 1 項 1 号を基にこの点について厳密な解釈が行うべきであると考えられ るのである。 (2)固定資産税等相当額が損金として算入できる可能性 本件において請求人は、「精算に関する確認書」を取り交わし、本件確認書に基づき賃料、 共益費等の収益と、固定資産税等相当額のほか、管理費等、水道光熱費等の経費をクロー ジング日をもって区分し精算する旨の契約を行っている。すなわち、請求人に帰属すべき 収益と、それに対応する本件固定資産に係る経費を契約によりあん分しているものと解釈 できる。 このことから見ても、固定資産税等相当額は、売主が 1 年分負担した固定資産税等の経 費を契約上未経過分としてあん分したに過ぎず、固定資産税等相当額を直ちに固定資産の 取得価額に加算すべき「購入のために要した金額」と言い切れないと考えられるのである。 審判所は、固定資産税等相当額が事後費用とはいえないことも売買に伴って支出された 費用である根拠である旨を述べているが、前述の通り「購入のために要した費用」は「購 入と同時に支出した費用」ではなく、購入による資産の異動に必然的に発生する費用であ ると解釈することが妥当であろう。 そのように考えると、固定資産税等相当額は購入に関連して支出した費用ではあるが、 水道光熱費等と同様、支出期間が中途になったことによる請求人に帰属する収益に対応す る経費の調整であって、法人税法上損金として計上する費用と解することができるのでは ないだろうか。 5.結論 以上の検討により、本件における未経過固定資産税等が固定資産税等ではないことを理 由に直ちに法人税法上の固定資産の取得価額に含むとした審判所の解釈は租税法律主義の 下是認できるものではない。 従って、「請求人が負担した本件固定資産税等相当額は、・・・略 本件受益権売買契約書 の定めにより請求人と売主との間に生じる債権債務関係に基づいて固定資産税等の相当額 として売買当事者間で授受されたものであって、また、本件不動産の売買に伴って授受さ れたものであり事後費用とはいえないことからすれば、本件固定資産税等相当額は、本件 各減価償却資産に係るものについては法人税法施行令第 54 条第 1 項第 1 号の規定によ り、・・・略 本件不動産の購入の代価の一部であると認めるのが相当である。」とした本裁

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11 決の判断には反対である。 上記の検討のように請求人が固定資産税等の納税義務者でないことは地方税法上明白で ある。固定資産税等の性質について主に論ずるよりも、審判所はなぜ固定資産税等相当額 は施行令 54 条 1 項 1 号の取得価額を構成すると解釈できるのかについて言及すべきである。 現在までも同様の判断を下した裁決が複数存在する18のは、審判所が地方税法の納税義務 者に関する判断を重視するあまり、個々の事案における契約の形態や法人税法上の解釈に おいて請求人の請求に明瞭な判断を下していないことに起因するとも考えられる。 本件では契約書において賃料等の収益とそれに対応する経費をあん分して精算を行って いるため、固定資産税等相当額を含む経費は請求人に帰属する収益に対応する費用として 損金に算入すべきであるという主張も成り立つと考えられるのである。 申告納税制度の下においては、租税法の第一次的解釈権は納税者にあり19、租税行政庁と 解釈・適用を巡る紛争が生じた場合には、審判所は納税者及び租税行政庁の行った解釈を 租税法規に従い整理することで、双方の主張に明確な判断とその根拠を示す必要がある。 本稿における検討を通して、未経過固定資産税等の取扱いについて今一度法人税法の解 釈を踏まえ検討されるべきではないかと考える。 【関係法令等】 法人税法 22 条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損 金の額を控除した金額とする。 2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき 金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は 役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事 業年度の収益の額とする。 3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき 金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。 一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額 二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費 以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの 4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥 当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。 法人税法施行令 54 条《減価償却資産の取得価額》 減価償却資産の第 48 条から第 50 条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得

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12 価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ各号に定める金額とする。 1.購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額 イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法 第 2 条第 1 項第 4 号の 2(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のため に要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額) ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額 (固定資産税の納税義務者等) 第 343 条 固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権 の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について 同様とする。)に課する。 2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家 屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については、当該家屋に係る建物の区分所 有等に関する法律第二条第二項 の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とす る。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は 登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登 録されている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第 348 条第 1 項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋 を現に所有している者をいうものとする。 3 第 1 項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録され ている者をいう。 4 市町村は、固定資産の所有者の所在が震災、風水害、火災その他の事由によつて不明で ある場合においては、その使用者を所有者とみなして、これを固定資産課税台帳に登録し、 その者に固定資産税を課することができる。 (都市計画税の課税客体等) 第 702 条 市町村は、都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土 地区画整理事業に要する費用に充てるため、当該市町村の区域で都市計画法第 5 条の規定 により都市計画区域として指定されたもの(以下この項において「都市計画区域」という。) のうち同法第七条第一項に規定する市街化区域(当該都市計画区域について同項に規定す る区域区分に関する都市計画が定められていない場合にあつては、当該都市計画区域の全 部又は一部の区域で条例で定める区域)内に所在する土地及び家屋に対し、その価格を課 税標準として、当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。当該都市 計画区域のうち同項に規定する市街化調整区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対し て都市計画税を課さないことが当該市街化区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対し

(13)

13 て都市計画税を課することとの均衡を著しく失すると認められる特別の事情がある場合に は、当該市街化調整区域のうち条例で定める区域内に所在する土地及び家屋についても、 同様とする。 2 前項の「価格」とは、当該土地又は家屋に係る固定資産税の課税標準となるべき価格 (第 349 条の 3 第 10 項から第 12 項まで、第 23 項、第 24 項、第 26 項又は第 28 項の規定 の適用を受ける土地又は家屋にあつては、その価格にそれぞれ当該各項に定める率を乗じ て得た額)をいい、前項の「所有者」とは、当該土地又は家屋に係る固定資産税について 第 343 条(第 3 項、第 8 項及び第 9 項を除く。)において所有者とされ、又は所有者とみな される者をいう。 法人税法基本通達 (固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示) 7−3−3 の 2 次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するも のであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。(昭 50 年直法 2−21 「19」により追加、昭 55 年直法 2−8「二十一」、平 23 年課法 2−17「十四」により改正) (1) 次に掲げるような租税公課等の額 イ 不動産取得税又は自動車取得税 ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの ハ 新増設に係る事業所税 ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用 (2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更し たことにより不要となったものに係る費用の額 (3) 一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得すること とした場合に支出する違約金の額 (減価償却資産以外の固定資産の取得価額) 7−3−16 の 2 減価償却資産以外の固定資産の取得価額については、別に定めるもののほ か、令第 54 条《減価償却資産の取得価額》の規定及びこれに関する取扱いの例による。 なお、資本的支出に相当する金額は当該固定資産の取得価額に加算する。(昭 55 年直法 2 −8「二十一」により追加、平 19 年課法 2−7「四」により改正) 1 加瀬昇一「土地の取得に際して売主に支払った固定資産税等に相当する金額(2001 年(平 成13 年)9 月 3 日裁決」「桜税会」裁決事例研究会第 125 回例会討議 税務弘報 2003 年 8 月154 頁。 2 中小会計要項では、Ⅱ各論 8 固定資産(2)において、「固定資産は、原則として、取得原価 で計上する。」とされ、その解説には「固定資産の取得価額は、購入金額に引取費用等の付 随費用を加えて計算します。」とされている。

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14 3 金子宏『租税法[第 17 版]』(2012 年 4 月)577 頁。 4 金子宏「固定資産税の性質と問題点−租税法教養講座−」税研(1993 年 7 月)6 頁。 5 金子宏・前掲注 3・584 頁。 6 田中治「固定資産税における台帳課税主義」シュトイエル 300 号(1987 年 3 月)75 頁。 7 固定資産税務研究会『固定資産税逐条解説』地方財務協会(2010 年 6 月)43 頁。 8 最高裁第三小法廷 1972 年(昭和 47 年)1 月 25 日判決、判例時報 659 号 53 頁ほか。 9 山田二郎「真実の所有者に対する不当利得返還請求権」別冊ジュリスト 79 号租税判例百 選(第二版)有斐閣(1983 年 3 月)120 頁。 10 加瀬昇一・前掲注 1・160 頁。 11 田中治・前掲注 6・92 頁。 12 大阪地裁 2011 年 2 月 7 日判決、判例時報 2122 号 103 頁ほか。 13 林仲宣・高木良昌・谷口智紀「平成 23 年分地方税判例年間」月刊税別冊付録(2012 年 4 月)10 頁。 14 最高裁昭和 30 年 3 月 23 日判決民集 9 巻 3 号、金子宏・前掲注 3・584 頁、松沢智「固 定資産税の賦課期日」税経通信39 巻 15 号(12 月)271 頁。 15 金子宏「租税法律主義の意義」別冊ジュリスト 79 号租税判例百選(第二版)有斐閣(1983 年3 月)11 頁。 16 田中治教授は、「例えば・・・関係者からの実態上の権利関係を証明する申出があった場合 には、個別に真実の権利者を確認し、納税義務者を当該真の権利者に変更することを認め る特別の手続の導入が考えられる」とされており、このようなしくみを採用することは資 産の所有に担税力を認めて課税するという固定資産税の賦課の正当化根拠に最も適合する と考えられると述べられている(田中治・前掲注6・95 頁)。 17 この通達が存在している理由は、「もともとこれらの租税公課等は一種の事後的費用であ るうえに、その性格も流通税的なものないしは第三者対抗要件を具備するための費用であ って、必ずしも固定資産の取得原価そのものとはいいきれない面がある。」ためであるとさ れている(森文人編著『法人税基本通達逐条解説【六訂版】』税務研究会出版局(2011 年 4 月)527 頁。)、法令解釈通達として許容され得るためには、法令の不完備を補完する内容に 留まるべきである。通達は、取扱いの変更などの場合事前に予測が立ちにくく租税行政庁 において使い分けが行われやすい(増田英敏『リーガルマインド租税法[第 3 版]』成文堂 (2011 年 6 月)45 頁)。通達による執行に裁量が介入した場合には、予測可能性を著しく 害する結果となると考えられる。通達の適用により税額の増減を選択により定める内容は、 法令の補完としての機能を超えて存在するものであり、法令の解釈を逸脱していると考え られる。 18 2001 年(平成 13 年)9 月 3 日、2005 年(平成 17 年)4 月 19 日(非公表)、2008 年(平 成20 年)3 月 24 日、2012 年(平成 24 年)3 月に同様の判断が下された裁決が確認できる。 19 増田英敏・前掲注 17・53 頁。

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