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a b c d 図 1. レンバチニブ投与前の CT 所見 a,b:2010 年 1 月 c,d:2015 年 7 月 : 右肺門部および右傍咽頭間隙リンパ節転移 一方, 血液透析患者に対するレンバチニブの有効性 安全性を検討した報告は未だなく, 今回われわれは血液透析中の甲状腺癌患者に対してレンバ

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Academic year: 2021

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値),ハザード比0.21(99%信頼区間=0.14~0.31))こと が示された[1]。この結果を受けて本邦でも2015年3月よ り根治切除不能なRAI抵抗性の甲状腺癌患者に対してレン バチニブの保険適用が承認され,以降レンバチニブの有効 性・安全性について多くの報告がなされている。特に腎機 能に関しては,中山らが腎機能障害を有する甲状腺癌患者 に対してレンバチニブを継続投与可能であった1例を報告 している[2]。また菅沼らは甲状腺癌患者におけるレンバ チニブの腎機能への影響を検討しており,レンバチニブの投 与前後で腎機能に明確な差はなかったと報告している[3]。 背 景 SELECT試験でRAI抵抗性分化型甲状腺癌におけるレン バチニブの投与は無増悪生存期間を優位に延長させる(p <0.001,レンバチニブ18.3カ月 vs プラセボ3.6カ月(中央 別冊請求先:〒305-0005 茨城県つくば市天久保2-1-1 筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科 松尾知平 E-mail address:[email protected]

症例報告

進行甲状腺癌にレンバチニブを使用した維持透析患者の1例

筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科*,筑波大学医学医療系乳腺内分泌外科**

松尾 知平*

池田 達彦** 河村千登星*

佐々木啓太*

高木 理央*

星   葵*

周山 理沙*

田地 佳那*

市岡恵美香*

井口 研子** 坂東 裕子** 原  尚人**

Lenvatinib therapy in a patient with metastatic thyroid carcinoma undergoing

hemodialysis: a case report

Department of Breast, Thyroid and Endocrine Surgery, University of Tsukuba Hospital*, Department of Breast and Endocrine Surgery, Faculty of Medicine, University of Tsukuba**

Tomohei Matsuo*, Tatsuhiko Ikeda**, Chitose Kawamura*, Keita Sasaki*, Rio Takagi*, Aoi Hoshi*, Lisa Suyama*, Kana Tachi*,

Emika Ichioka*, Akiko Iguchi**, Hiroko Bando** and Hisato Hara**

根治切除不能な放射性ヨウ素内用療法(RAI)抵抗性の甲状腺癌患者に対してレンバチニブの保険適 用が承認されたが,血液透析患者に対する適切な投与方法は不明確であり,有効性や安全性についても 未だ報告はされていない。 今回われわれは血液透析中の根治切除不能な甲状腺癌患者に対してレンバチニブを使用した1例を経 験した。本症例では過去の文献を踏まえレンバチニブの初回投与量を14mg/日とした。有効性について はday139の時点で腫瘍縮小率42%と治療効果を認めた。一方,安全性についてはGrade3の手足症候群・ 下痢・高血圧,Grade1・2の気管支出血・肺感染症・肝機能障害・血小板数減少・悪心・疲労感を認め たが適宜休薬・減量を行いレンバチニブの継続投与が可能だった。本症例の詳細な検討に安全性や初回 投与量に関する文献的考察を加え報告する。

Key words: レンバチニブ(lenvatinib),血液透析(hemodialysis),甲状腺癌(thyroid carcinoma)

195-199,2017 内分泌甲状腺外会誌 34(3):

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一方,血液透析患者に対するレンバチニブの有効性・安 全性を検討した報告は未だなく,今回われわれは血液透析 中の甲状腺癌患者に対してレンバチニブを使用した症例を 経験したため文献的考察を加え報告する。 症 例 患 者:78歳。女性。 既往歴:40歳時,子宮筋腫に対して手術。63歳時,緑内 障に対して硝子体手術。 併存疾患:糖尿病性腎症で2014年2月より血液透析中。 両眼糖尿病網膜症(福田分類 A1/A1)。左下肢閉塞性動 脈硬化症。左足趾潰瘍。高血圧。骨粗鬆症。 生活歴・家族歴:飲酒・喫煙なし。その他特記事項なし。 現病歴:2007年に甲状腺乳頭癌に対して甲状腺全摘およ び右頸部リンパ節郭清術(D2a)を施行し,病理結果は pT3N1bM0 pStageIVAだった。2009年に胸部CTで多発肺 転移を認めたが,当時放射性ヨウ素内用療法を実施可能な 施設への入院が困難であり,微小転移で自覚症状もないこ とから経過観察とした。2011年に左頸部リンパ節転移を認 め左頸部リンパ節郭清術(D2a)を施行した。2015年7月 に血清サイログロブリン値が3,571ng/mLと上昇し頸胸部 CTで左上内深頸リンパ節・右傍咽頭間隙・上縦隔・両側 肺門リンパ節転移と多発肺転移の増大を認めた(図1)。 同年11月に131-Iシンチグラフィ(13mCi)で転移巣に集 積を認めずRAI抵抗性と判断した。無治療では肺門部や右 傍咽頭間隙リンパ節転移の増大・浸潤により止血困難な気 管支出血や気道閉塞などの致死的合併症をきたす可能性が 高いと考えレンバチニブの使用を検討した。透析患者にお けるレンバチニブの使用について腫瘍内科・腎臓内科・皮 膚科・血管外科と協議の上,①有効性・安全性が証明され ていないこと,②他の有効性と安全性が証明されている代 替治療がないこと,③臨床試験よりも有害事象が増強して a 図1 . レンバチニブ投与前のCT所見 a,b:2010年1月 c,d:2015年7月:右肺門部および右傍咽頭間隙リンパ節転移

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出現する可能性があること,④高血圧の悪化により透析に 支障が出る可能性があること,⑤下肢の血流低下や足壊疽 が悪化し下肢切断のリスクが高まる可能性があること,⑥ 気管支出血・心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など致死的な合併 症をきたす可能性があること,⑦治療継続可能であれば癌 の進行や症状の発現を遅らせられる可能性があることなど のリスク・ベネフィットを患者・御家族に十分に説明した 結果,レンバチニブの使用を希望され入院となった。 現 症:PS1。左側頸部に疼痛を伴った腫瘤を触知した。 皮膚浸潤は認めなかった。左下肢冷感・疼痛・感覚異常を 認めた。左足背動脈触知不良だった。左第5趾外側足底に 小豆大の潰瘍を認め,左第1趾尖部の米粒大の潰瘍を認め た。 血液検査所見:血清サイログロブリン値4,992ng/mL, 抗サイログロブリン抗体(−)。 治療経過:2015年11月にレンバチニブを初回投与量 14mg/日で開始した。Day30の頸胸部CTで多発リンパ節 転移,多発肺転移は全体的に縮小を認めた。有害事象によ り休薬することなくday39に退院となった。Day45に血清 サイログロブリン値が95ng/mL(図2)と著明な低下を認 め た。Day70に 手 足 症 候 群Grade3の た め 休 薬 と し た。 Day84に手足症候群がGrade1に改善したため,レンバチニ ブを10mg/日に減量し再開した。Day119に下痢Grade3の ため再度休薬とした。Day139に頸胸部CTで更に転移巣の 縮小を認めた(図3)。Day161にレンバチニブを10mg/日 で投与再開し,以降レンバチニブによる有害事象での休薬 はなく経過している。 有効性に関してはday139の時点で腫瘍縮小率42%であ り,RECIST ver.1.1に基づく治療効果判定はPRだった。 安全性に関してはGrade3の有害事象として手足症候 群・下痢・高血圧を認めたが,各々適切な休薬・減量を行 いレンバチニブの継続投与が可能だった。その他Grade1・ 2の有害事象として気管支出血・肺感染症・肝機能障害・ 血小板数減少・悪心・疲労感を認めたがいずれも保存的治 療で改善を認めた(表1)。全経過を通して血液透析前後 で変動する高血圧の管理に難渋したが,ニフェジピンL錠 を透析日:1錠・分1夕,非透析日:2錠・分2朝夕と透 析前を避けて投与することで透析を延期・中断することな く血圧コントロールが可能だった(図4)。その他の有害 事象については非透析患者と同様の管理で安全に治療継続 可能だった。 考 察 今回われわれは血液透析中の根治切除不能な甲状腺癌患 者に対してレンバチニブの投与を行った。しかし現時点で 血液透析中の甲状腺癌患者に対してレンバチニブを使用し た症例は報告されておらず,また同患者群は第Ⅲ相臨床試 験であるSELECT試験からも除外されており,薬剤の投与 方法や有効性・安全性については不明確である。そのため 医療安全の点から透析患者への安易な使用は控えるべきだ が,life threateningな病態かつ他に有効性・安全性の証明 された治療がない本症例においては,関連する各科との協 議や患者・家族への十分なインフォームド・コンセントを 行った上で使用を検討することとなった。 文献では甲状腺癌に対して既に承認されているチロシン キナーゼ阻害剤のソラフェニブにおいて少数ではあるが血 液透析中の腎細胞癌および肝細胞癌患者に対する使用報告 があり,今回われわれはこれらの報告を治療方法決定の一 助とした[4]。 一般的にチロシンキナーゼ阻害剤の代謝経路は肝代謝・糞 中排泄が80%程度であり,尿中排泄は15~20%である[5,6]。 またKennokiらによるとソラフェニブは血液透析で除去さ れないとされており,透析中はソラフェニブの血中濃度が 上昇し1日の最大血中濃度(Cmax)に達すると報告され ている[7]。しかしながら透析患者のCmaxや血中濃度-時間曲線下面積を正常腎機能患者のものと比較すると同等 ~わずかに低値を示すことが報告されており,加えて Kennokiらはソラフェニブの血中濃度と治療効果,有害事 象との間には一定の関連性はないと報告している[7, 8]。 一方,有害事象に関しては血液透析患者において頻度や 程度が悪化する傾向にある。Kennokiらは透析患者では心 血管系の合併症や血小板数減少・出血・貧血の有害事象を 多く認め,皮膚疾患や肝機能障害は透析患者で少なかった と報告している[7]。またOmaeらは長期透析患者と短期 透析患者を比較するとGrade4以上の有害事象は長期透析 患者のみで認め,症例数は少ないが長期透析は多変量解析 で独立した予後不良因子であったと報告している[9]。 このようにソラフェニブの血中濃度と有害事象との間に 関連性がないにもかかわらず,有害事象は透析患者におい て増強する傾向にある。これは透析患者で有害事象が増強 する理由がソラフェニブの血中濃度上昇ではなく,透析患 図2 . 血清サイログロブリン値の推移

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者に多くみられる動脈硬化や血管の脆弱化などの器質的素 因が大きな要因であるためと推測される。 本症例の場合,透析期間2年と短期透析患者ではあるが 閉塞性動脈硬化症や足壊疽がみられることから有害事象の リスクが高いと考えられ,われわれは初回投与量の減量が 必要と判断した。CALGB 60301では透析患者に対するソ ラフェニブの初回投与量として200mg/dayを推奨してお り[10],他の報告では減量開始時の初回投与量として Grade3 手足症候群 休薬・対症療法で改善。 下痢 休薬・対症療法で改善。 高血圧 一過性にGrade3を認めたが,休薬はせず降圧薬で調節可能だった。 Grade2 気管支出血 Day12の透析後より右肺門リンパ節転移に伴う気管支出血が出現 した。透析時の抗凝固薬をヘパリンNaから半減期の短い低分子ヘ パリンに変更したところ症状は改善し,day34以降消失した。 肺感染 経口抗菌薬で保存的に加療し改善。 肝機能障害 経過観察で改善。 Grade1 血小板数減少 経過観察で改善。 悪心 対症療法で改善。 疲労感 対症療法で改善。 表1 . 有害事象と処置 図3 . レンバチニブ投与後のCT所見 a,b:2015年12月(day30):右肺門部リンパ節転移,右 傍咽頭間隙リンパ節転移,肺転移 c:2016年4月(day139):右肺門部リンパ節転移,肺転 移

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200mg/dayもしくは400mg/dayを選択している報告が多 いことから[5,7~9,11~13],本症例でもレンバチニブ の初回投与量を通常の半量程度に減量することとし14mg/ dayから治療開始とした。 おわりに 血液透析患者に対してレンバチニブを有効かつ安全に投 与することができた症例を経験した。また過去の文献から は有害事象や投与方法については透析中の薬物動態だけで なく患者側の素因を考慮することが重要であることが示唆 された。 一方,本症例では血液透析中のレンバチニブの薬物動態 について分析を行っていないため,薬物動態に対する血液 透析の真の影響は不明確なままである。今後血液透析患者 に対する適切なレンバチニブの使用方法を明確にするため に,初回投与量に応じた①透析日と非透析日における血中 濃度の推移,②有効性,③血中濃度と有害事象の関係性, ④器質的素因と有害事象の関連性の評価が必要と考える。  【文 献】

 1. Schlumberger M, Tahara M, Wirth LJ, et al. : Lenvatinib versus Placebo in Radioiodine-Refractory Thyroid Cancer. N Engl J Med 372 : 621-630, 2015  2. 中山博貴,菅沼伸康,山崎春彦他:腎機能障害を有する甲 状腺癌症例に対しレンバチニブを投与した1例.日内分 泌・甲状腺外会誌 33:271,2016  3. 菅沼伸康,岩崎博幸,山崎春彦他:甲状腺癌患者における 分子標的薬の腎機能への影響.日内分泌・甲状腺外会誌  33:234,2016

 4. Brose MS, Nutting CM, Jarzab B, et al. : Sorafenib in local-ly advanced or metastatic, radioactive iodine-refractory, differentiated thyroid cancer : a randomized, double-blind, phase 3 trial. Lancet 384 : 319-328, 2014

 5. Czarnecka AM, Kawecki M, Lian F, et al. : Feasibility, effi-cacy and safety of tyrosine kinase inhibitor treatment in hemodialyzed patients with renal cell cancer : 10 years of experience. Future Oncol 11 : 2267-2282, 2015

 6. Hilger RA, Richly H, Grubert M, et al. : Pharmacokinetics of sorafenib in patients with renal impairment undergoing hemodialysis. Int Clin Pharmacol Ther 47 : 61-64, 2009  7. Kennoki T, Kondo T, Kimata N, et al. : Clinical results and

pharmacokinetics of sorafenib in chronic hemodialysis pa-tients with metastatic renal cell carcinoma in a single center. Jpn J Clin Oncol 41 : 647-655. 2011

 8. Leonetti A, Bersanelli M, Castagneto B, et al. : Outcome and safety of sorafenib in metastatic renal cell carcinoma dialysis patients : A Systematic Review. Clin Genitourin Cancer 14 : 277-283, 2016

 9. Omae K, Kondo T, Kennoki T, et al. : Efficacy and safety of sorafenib for treatment of Japanese metastatic renal cell carcinoma patients undergoing hemodialysis. Int J Clin Oncol 21 : 126-132, 2016

10. Miller AA, Murry DJ, Owzar K, et al. : Phase I and phar-macokinetic study of sorafenib in patients with hepatic or renal dysfunction : CALGB 60301. J Clin Oncol 27 : 1800-1805, 2009

11. 広重 佑,渡辺晃太,植田浩介他:血液透析中の進行性腎 癌に対して分子標的治療薬による逐次治療を施行した1 例.西日泌尿 76:93-98,2014

12. Ishii T, Hatano E, Taura K, et al. : Sorafenib in a hepato-cellular carcinoma patient with end-stage renal failure : A pharmacokinetic study. Hepatol Res 44 : 685-688, 2014 13. Masini C, Sabbatini R, Porta C, et al. : Use of tyrosine

ki-nase inhibitors in patients with metastatic kidney cancer receiving haemodialysis : a retrospective Italian survey. BJU Int 110 : 692-698, 2011

図4 . コントロール前後の血圧の推移(横軸※は透析日) 左:コントロール前 右:コントロール後

参照

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