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目 次 はじめに第 1 章聴覚障害に関して 1 Q 1 きこえにくい子ども達は どのようにきこえているでしょうか? 2 Q 2 聴覚障害の原因は 何でしょうか? 3 Q 3 聴覚障害の種類やきこえの程度はどの子も同じなのでしょうか? 4 Q 4 聴覚に障害があるかどうかは どのような視点でみたらよい

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目 次 ○ はじめに 第1章 聴覚障害に関して ··· 1 Q 1 きこえにくい子ども達は、どのようにきこえているでしょうか? ··· 2 Q 2 聴覚障害の原因は、何でしょうか? ··· 3 Q 3 聴覚障害の種類やきこえの程度はどの子も同じなのでしょうか? ··· 4 Q 4 聴覚に障害があるかどうかは、どのような視点でみたらよいでしょうか? ··· 5 Q 5 補聴器をつければ、なんでも聞こえるのでしょうか? ··· 6 Q 6 補聴器の基本的な扱い方で、知っておいた方がよいことは何でしょうか? ··· 7 Q 7 人工内耳の基本的なことで、知っておいた方がよいことは何でしょうか? ··· 8 Q 8 FM補聴システムとは、何でしょうか? ··· 9 Q 9 片耳がきこえにくい場合、きこえ方はどのような状態でしょうか? 支援はどうしたらよいでしょうか? ··· 10 Q10 発音ときこえは、関係するでしょうか? ··· 11 第2章 きこえにくい子への支援に関して ··· 12 Q11 きこえが気になる子がいた場合、どうすればよいでしょうか? ··· 13 Q12 きこえにくい子への話しかけ方は、どのようにすればよいでしょうか? ···· 14 Q13 ことばが出る前の支援は、どうしたらよいでしょうか?(幼児期) ··· 15 Q14 ことばの育ちについて、どのようなことに配慮すればよいでしょうか?(学齢期) ·· 16 Q15 心の育ちについて、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 17 Q16 コミュニケーションをスムーズにとるためには、どうすればよいでしょうか? ···· 18 Q17 軽度難聴や人工内耳の場合、かなり聞こえているように感じます。 支援は必要でしょうか? ··· 19 Q18 学級や学年のきこえる子ども達には、どのように伝えればよいのでしょうか? ··· 20 Q19 通級の場合、学級担任としてどのようなことに気をつければよいでしょうか? ··· 21 Q20 保護者との連携は、どのようにしていけばよいでしょうか? ··· 22 第3章 学校(園)生活の支援に関して ··· 23 Q21 教室等での座席は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 24 Q22 授業中の話し方等は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 25 Q23 国語は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 26 Q24 音楽は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 27 Q25 体育は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 28 Q26 外国語活動や英語は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 29 Q27 集会のとき、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 30 Q28 校外学習のとき、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ··· 31 Q29 グループ(班)活動のとき、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ···· 32 Q30 緊急時の対応について、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? ···· 33 <実践例の紹介コーナー> ··· 34 <参考文献> ··· 36 <作成にかかわった人達> ··· 37 編集後記 ··· 38

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はじめに

幼稚園・小学校・中学校・高等学校等で、多くのきこえにくい子ども達が学校(園)生 活を送っています。しかし、1つの学校(園)には一人だけという場合がほとんどです。 「きこえにくい」って、どんなきこえ方なのだろう? どのように接したらよいのだろう? ・・・・・・と、戸惑ってしまったり、聞こえている場面があると、きこえにくい ことを忘れて接したりすることがあります。きこえにくい子の人数が少ないこともきこえ にくさについての理解を難しくしていると思われます。 「千葉県聴覚障害教育ネットワーク推進連絡協議会(以下、うさぎねっと※)」では、 『きこえのQ&A』を作成して千葉県内の幼稚園・小学校・中学校・高等学校等に配布し、 かかわる人達がきこえにくい子を理解するための手がかりにしてほしいと考えました。 まず、「うさぎねっと」に参加している人達全員で、わからないことや知りたいことは 何だろうと考え、Q(クェッション)として表しました。その後、参加者の中の医療関係者 やきこえにくい子の療育や教育に関係する人達で、A(アンサー)を考えました。 ここに、そのようにして作り上げた『きこえにくい子のためのサポートブック—きこえ のQ&A—』をお届けします。きこえにくい子ども達にかかわる多くの方々に読んでいた だき、理解のある環境が広がっていくことを「うさぎねっと」参加者全員で心から願って います。 ※ 千葉県聴覚障害教育ネットワーク推進連絡協議会(うさぎねっと)とは、平成23 年度から年に3回開催している会です。参加者は、病院関係、療育関係、教育委員会 関係、学校関係の方々です。聴覚障害教育に関する情報交換を行い、千葉県における 聴覚障害教育の推進・充実を図るとともに、よりよい体制づくりをめざしています。

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2 きこえにくい子ども達は、どのようにきこえているでしょうか? 音が耳に入って脳で感じ取るまでの経路のどこかに障害があるときこえにくくなります。 その経路のどこに障害があるかによって、伝音(でんおん)難聴、感音(かんおん)難聴、混合 難聴の3つに大きく分けられます(Q2参照)。きこえ方も障害部位によって変わってき ますが、大きく3つの特徴があります。 ①小さく聞こえる、小さい音が聞こえない 全体的に音量が小さく聞こえます。耳をふさいで聞いたり、ささやき声を聞いたりして いるときの感覚です。とても集中して聞かないと聞き逃してしまったり、周りがざわざわ していると聞こえなかったりします。また、小さい音(エアコンの送風音、携帯電話のバ イブ音、ページをめくる音、足音など)は聞こえておらず、それらの音の存在自体知らな い子もいます。 難聴の程度(補聴器をした場合でも)にもよりますが、小さい声、遠くの声、見えない ところからの声は聞こえていないことがあります。他の人なら聞こえるような声で呼んで も振り向かず、少しずつ声を大きくして何度目かにやっと振り向くような場合、本人には 最後の聞こえた呼びかけだけが存在したのであって、最初の何回かは聞こえていません。 本人には「聞こえなかった」という意識はないのです。他の場面でも本人や周囲が気付か ないところで聞きもらしている可能性があります。 ②歪んで聞こえる 音を聞き分けるための情報が部分的に欠如し、音の違いがわかりにくくなります。靄が かかったような、こもったような感じで、聞き間違いが多くなります。例えば「ちゅうし ょく」ということばを聞いた時、音がよく似た「夕食・給食・入浴・就職」などの他の言 葉と区別がつきにくくなります。特に、母音部分はわかっても子音部分を聞き間違えるこ とがよくあります。感音難聴、混合難聴に多く、音を大きくしてもなかなか改善されませ ん。 ③大きな音は不快に聞こえる 補充現象(リクルートメント現象)といって、音を少し大きくしただけで急にものすご く大きくなったように感じ、音が響いて不快に感じることがあります。感音難聴、混合難 聴に多く、補聴器で音を大きくしたくても不快感が強く、調整するのが難しいことがあり ます。 障害部位により程度の差はありますが、上記①~③の特徴を併せ持っている場合が多く、 「補聴器をつけて音を大きくすればよく聞こえる」というように簡単にはいきません。補 聴器をつけていても聞き取りにくさはあり、聞き間違いも生じます。限られた音の情報で 何とか聞き取ろうと、一生懸命集中し て聞いているので、とても疲れます。 聴覚に障害がある子どもたちが少しで も楽に、聞きやすい環境を作ってあげ ることが必要です。 Q 1

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3 聴覚障害の原因は、何でしょうか? ①難聴の種類 難聴は、伝音(でんおん)難 聴、感音(かんおん)難聴、混 合難聴の3つに大きく分けら れます。伝音難聴は、音が伝 わっていく過程の伝音経路の 障害によって生じた難聴で、 外耳(がいじ)、中耳(ちゅう じ)に問題があります。感音難 聴は、伝わった振動が内耳(な いじ)の感覚細胞を刺激し、そ の興奮が聴神経を伝わって大 脳で音として認識されるまで の過程に障害が生じた難聴で、 内耳・聴神経から脳のいずれ かに問題があります。混合難 聴は、この伝音難聴と感音難 聴が混在して起こったもので す。 ②伝音難聴の原因 先天性のものとして外耳道(がいじどう)閉鎖症、耳小骨(じしょうこつ)奇形などがあり、 後天性のものとしては急性中耳炎、滲出(しんしゅつ)性中耳炎、真珠腫(しんじゅしゅ)性 中耳炎、鼓室(こしつ)硬化症、耳(じ)硬化症などがあります。特に滲出性中耳炎は、耳鼻 咽喉科では比較的多く見られる疾患であり、両側性(両耳)の滲出性中耳炎だけでも日常生 活で支障の見られる難聴となることがあります。 ③感音難聴の原因 先天性感音難聴の原因の約半数には遺伝子が関与しているといわれています。現在まで に難聴の原因遺伝子は100種類ほど見つかっており、それぞれに発症時期・進行の仕方 や難聴以外に伴う症状が異なります。遺伝子が関与する難聴のうちの70%を占めるのは 常染色体劣性遺伝で、両親には難聴がありません。他に、症候群性難聴、胎児期の感染症 による難聴(風疹・サイトメガロウイルスなど)、内耳奇形などがあります。原因不明の ものも少なくありません。 後天性感音難聴として、外傷(脳や聴神経などの損傷)、幼少期の感染症の既往(髄膜 炎、麻疹、水痘など)などがあります。小児に見られる一側性(片耳)難聴の原因として、 流行性耳下腺炎(おたふく)後の難聴、原因不明の突発性難聴もあります。 出典 城間将江ら(1996) 人工内耳装用児と難聴児の学習 Q 2

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4 聴覚障害の種類やきこえの程度はどの子も同じなのでしょうか? 聴覚障害の種類やきこえの程度は、子どもによってそれぞれ異なります。 ①聴覚障害の種類 聴覚障害は、耳から脳に音が伝わる経路の中で、どの部分が原因かによって大きく二つ に分けられます。図のように、外耳、中耳(音を伝える部分)が原因で起こるものを「伝音(で んおん)難聴」、内耳やその奥(音を感じる部分)が原因で起こるものを「感音(かんおん) 難聴」といいます。また、それらが両方起こっているものを「混合難聴」といいます。 伝音難聴は、軽度~中等度の難聴になります。音が小さく聞こえるため、きこえの状態 に合わせ音を大きくしてくれる補聴器がとても役に立ちます。 感音難聴は、軽度~重度まできこえの程度も様々です。音が小さく聞こえるだけでなく 歪んで聞こえたり、聞き取りが難しかったりします。少し大きな音がとてもうるさく感じ てしまうこともあります。補聴器は役に立ちますがはっきりとしたきこえにはなりません。 また、両方の耳が聞こえにくい両側性難聴や、左右のどちらかだけが聞こえにくい一側 性(いっそくせい)難聴があります。両側性難聴でも左右できこえ方は同じとは限りません。 ②きこえの程度 きこえの程度は、ささやき声や小さな声での会話が聞き取りにくい「軽度難聴」、普通 の声での会話が聞き取りにくい「中等度難聴」、大きな声の会話が聞き取りにくい「高度 難聴」、耳元の大声でも聞き取りにくい「重度難聴」と分けられます。これは目安なので、 聴力検査をするとより詳しく分かります。 さらに、音の高さによってもきこえの程度はそれぞれ異なります。低い音は良く聞こえ るけれど高い音は聞こえにくい、どの高さの音も同じくらいのきこえである、低い音が特 に聞こえにくいなど、一人一人きこえ方は違います。定期的に医療機関で聴力検査を行い、 その結果を把握して、それぞれの子に合った支援方法を考えることが重要です。 出典:リオン株式会社 福祉日誌 2013 出典 福祉日誌 2014 リオン株式会社 Q 3

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5 聴覚に障害があるかどうかは、どのような視点でみたらよいでしょうか? きこえにくい子は、以下のような様子が見られます。きこえの程度や種類、言語力など によって異なりますが、よく見られる特徴を挙げます。 ①きこえの様子・コミュニケーションの特徴 次のような様子が見られると、聴覚に障害があるかもしれません。 ・距離が離れた場所や後方からの呼びかけに対して、反応が乏しい。 ・聞き返しが多い。 ・2、3人での会話になると通じにくい。 ・顔や口元をよく見ている。 ・質問に対して適切な回答でない。 ・相手の話を聞かないで、一方的に自分の話ばかりする。 ②言葉の遅れ・学習の特徴 語いに関しては、知っていることばの数が少ないことが多くみられます。また、表現が 変わるとわからないことがあります。(例:『お米』はわかっても『米』はわからない、 『ごはん』はわかっても『料理』はわからない) 発音に関しては、特に多いのはサ行が難しいことです。また聞こえた通りに発音するの で様々な誤りが生じます(Q10参照)。話し方において、抑揚が乏しかったり、声が高 くなったり低くなったりすることもあります。 文字に関しては、聞こえた通りに書くため、書き誤りが生じます。学習面では、算数の 計算はできても言語力が乏しいために文章題でつまずくことがあります。文法を獲得する ことも難しいようです。特につまずきやすいのは、助詞です。 ③行動の特徴 言葉のみでは指示に従えないことがあります。見えたものに次々に反応するため、落ち 着きがなく見えることがあります。コミュニケーションが苦手で、人とかかわることを避 けようとするため、視線が合いにくいことがあります。その結果、人への関心が薄く見え てしまうことがあります。目で見て判断しようとするため、また一側性難聴の場合は方向 感がつかみにくいため、キョロキョロすることがあります。集団場面では周りの様子を見 てから判断するため、行動が遅れることがあります。 このような行動から、『聴覚障害』であっても『多動』『自閉傾向』と誤られてしまう ことがあります。 以上のようなことが多くなると、成 功経験が不足し、情緒不安定で自信を 持てなくなることもあります。発達・ ことばの遅れやコミュニケーションに 支障がある子は、聴覚障害が原因の場 合もあるので、医療機関や聾学校に相 談してみましょう(Q11参照)。 Q 4

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6 補聴器をつければ、なんでも聞こえるのでしょうか? 補聴器は年々技術が向上していますが、どんな場面・状況でも、何でも聞き取れるもの ではありません。[きこえを補う機器]であり、[完璧なきこえを手に入れる道具]では ないのです。「補聴器をつけているから聞こえている」と誤解されることが多いのが現状 です。 聴覚障害には様々なきこえのタイプがあります(Q3参照)。 原則、良い方の耳の平均聴力レベルが30デシベルを超えれば補聴器適応と考え、幼少 期はコミュニケーション能力の向上および言語習得のため、両耳につけることを勧めてい きます。しかし、補聴器をつけたからといって、きこえる人と同じようなきこえが得られ るというわけではありません。 補聴器は1~2メートルの範囲にいる人の会話を聞き取ることを目的として開発された 機器です。そのため、補聴器をつければ20〜40デシベル程度になり、会話が聞き取り やすくなります。しかし、補聴器は相手の声だけでなく、その場の環境音も同時に大きく します。ざわざわと周りがうるさかったり、話し手の声が小さかったり、たった2~3メ ートル離れただけでも言葉としては聞き取りにくくなったりします。 補聴器をつけてもきこえる人と同じように聞こえないからといって、補聴器をつける意 味がないととらえてはいけません。特に子どもの場合は言語獲得期であるため、この時期 に補聴器をつけて聞く力を育てていかなければ、音声言語によるコミュニケーション能力 を向上させていくことができないのです。また、聞こえにくい中でも、さまざまな生活音 や音楽等の音を感じることで、豊かな心の育ちにつながることも大切なことだと考えてい ます。 Q 5

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7 補聴器の基本的な扱い方で、知っておいた方がよいことは何でしょうか? 補聴器は、基本的には聞き取りにくい小さな音を大きくして聞こえやすくする機器で、 一人一人のきこえの状況に合わせて調整(フィッティング)して使います。子どもの聴力 は変化することが多く、定期的にきこえの状況を測定し(最低でも1年に1回)、きこえ に合わせて、補聴器を常に最適な状況に保つように調整し直すことが欠かせません。また、 補聴器は精密機器であり、その特徴を知りメンテナンスを心がけることが大切です。 【補聴器の構成】 補聴器(耳かけ型)は、基本的に、音を調整する本体と、 その音を耳に届けるためのイヤモールドとチューブで構 成されています。 【本体のメンテナンス】 補聴器は精密機器ですので湿気や水分を嫌います。湿 気の原因には汗や結露があり、プールや入浴、洗濯等で 水に濡らしてしまう事故も心配されます。対策は下表のとおりです。 【電池の管理】 補聴器の電池は、小さくても大きな電力が 得られ、最後まで一定の電圧を保つことがで きる空気電池を使用します。空気中の酸素と 反応して電気を作ります。寒さや乾燥により 消耗することと、最後は急に電圧が低下して しまうことに注意が必要です。予備電池の用 意と毎日の電圧チェックは欠かせません。 【イヤモールドの手入れ】 イヤモールドは、子どもの耳にぴったりと 合わせて作られていますので、成長に合わせ て作り替える必要があります。転倒やボール の衝突などで耳に衝撃が加わったときにはイヤモールドで外耳道をけがしやすいので、耳 穴の内部まで確認する必要があります。また、耳垢などにより汚れますので、毎日掃除を することが大切です。 【チューブの交換】 チューブは。月日の経過とともに変色し硬くなります。一定の期間ごとに補聴器購入店 で交換する必要があります。 原 因 対 策 汗 塩 分 を 含 ん だ 汗 は 補 聴 器 の ス イ ッ チ の す き 間 な ど か ら 内 部 に 入 り 込 み 、故 障 を 引 き 起 こ し ま す 。汗 が 補 聴 器 に 入 り 込 ま な い よ う に 、補 聴 器 カ バ ー を つ け る こ と も 有 効 で す 。埃 や 多 少 の 衝 撃 に も 効 果 が あ り ま す 。 プ ー ル 入 浴 補 聴 器 を つ け た ま ま 、プ ー ル や お 風 呂 に 入 っ て し ま っ た ら 、水 分 を よ く ふ き 取 り 、乾 か し ま す 。 水で濡らし て し ま っ た ら 、 専 門 業 者 に よ る 点 検 を 受 け て く だ さ い 。 結 露 結 露 は 気 温 差 が あ る と 発 生 し ま す 。冬 だ け で な く 夏 で も 注 意 が 必 要 で す 。チ ュ ー ブ や イ ヤ モ ー ル ド に 水 滴 が つ い て い た ら 要 注 意 。補 聴 器 を 使 わ な い と き は 、乾 燥 剤 入 り 密 閉 ケ ー ス に 入 れ て 保 管 す る よ う に し て く だ さ い 。 補聴器を耳 栓 に し て し ま わ な い た め に きこえにくさがある子は、補聴器自体の音の変化に気づきにくいです。日頃 から、身近でかかわる担任の先生や保護者が、子どもと一緒に補聴器をチェッ クしてあげてください。 ・毎日音を聞いて、故障していないか確認する。 ・電池チェッカーで毎朝電池残量を確認する。 ・イヤモールドやチューブを見て、汚れや水分が付着していないか確認する。 Q 6

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8 人工内耳の基本的なことで、知っておいた方がよいことは何でしょうか? ①補聴器との違い 補聴器は音を大きくして耳に伝えますが、人工内耳は内耳に挿入された電極から直接聴 神経を刺激して脳に音を伝えます。一番の違いは、手術で体内装置を埋め込む必要がある ということです。そのため、補聴器では効果が十分でないと判断された場合にのみ手術の 適応となります。手術の時の入院は1~2週間程度で、その後、音を最も聞きやすい状態 に調整(マッピング)するため、何度も医療機関に通います。また、人工内耳を通して聞 く音は自然な音とは異なります。音を覚える(覚え直す)ために、長期間にわたる聞き取 りの練習が必要になります。 ②生活上の注意 人工内耳で音を聞くためには、体内に埋め込まれた機器と体外装置(耳にかけている部 分)を磁石でくっつけて使います。耳の上後方、皮膚のすぐ下に体内装置と磁石が埋め込 まれているので、運動をするときは、その部分を激しくぶつけないよう注意が必要です。 水泳や入浴はできますが、機械が濡れないように体外装置をはずす必要があるため、人工 内耳は働かず、きこえにくい状態になります。また、ごく稀ですが、埋め込んだ体内装置 の不具合や露出により、再手術が必要になる場合もあります。 人工内耳をつけて聞きやすくなると、普段の会話には支障がないくらいまで上手に話せ るようになる子もいます。周囲も「難聴」であることを忘れがちですが、聞きにくさがあ ることに変わりはありません。聞き取りやすい環境を整えたり、話し方を工夫したりする などの対応は補聴器をつけている子と変わらず必要になります。 宇佐美真一(2006)きこえと遺伝子 より 改変 きこえる人の聴力 スピーチバナナ(会話音声範囲) 重度難聴者 人工内耳術後6ヶ月の聴力 重度難聴者 補聴器をつけたときの聴力 重度難聴者 補聴器や人工内耳を使わない ときの聴力 Q 7

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9 FM補聴システムとは 何でしょうか? ①FM補聴システム FM補聴システムは、 FM電波を利用して補聴器や人工内耳をつけている子のきこえを 補聴するシステムです。 FMのラジオ放送と同じ仕組みで、先生の声を送信機からFM電波で飛ばし、それを受 信機で受信します。話し手の声を聞き取りやすくするシステムです。話し手と聞き手が離 れていても、すぐそばで話しているように音声を届けることができます。 授業中の教室には、椅子を引く音、おしゃべりの声など、きこえにくい子にとっての騒 音があふれています。FM補聴システムを使用することで、その騒音に影響されず、離れ ていても顔を合わせて話すように音声が届きます。それにより、きこえにくい子の騒音下 での聞きとりの向上、授業への興味・関心の高まりが期待できます。 補聴器あるいは人工内耳の本体にFM受信機を装着します。FM受信機はかなり小さく、 補聴器だけの場合と見分けにくくなっています。FM送信機は、首からかける本体にピン マイクが付いているタイプのもの等があります。 多くのFM受信機には、3つのモードがありますので、 使用場面に応じて使い分けをします。 ・FM送信機(マイク)からの音だけを聞くモード ・補聴器の内蔵マイクを通して周囲の音を聞くモード ・FM送信機(マイク)からの音と周囲の音を両方聞 くモード ②FM補聴システムを使うときの注意点 FM電波の有効範囲は30~70メートルであるため、その距離の内にある他の電波を 拾う可能性があります。学校内にFM補聴システムを使用する子どもが複数いる場合は、 周波数を変更して混線しないように配慮する必要があります。 FM補聴システムは、学校生活のさまざまな場面で活用します。 ・きこえる子が発表するときにFM送信機(マイク)を活用 ・担任の先生、専科の先生が活用 ・全校集会や学年集会で話す人が活用 ・クラブ、委員会活動のときに話す人が活用 等 きこえにくい子が自分から先生に「マイクをお願いします」と言って毎回お願いするこ とは、なかなか難しいものです。きこえにくい子の情報を保障することはとても大切なこ とです。先生から「マイクを使うよ」と声かけの配慮をし、FM送信機(マイク)は当然 使うものとして意識して活用していきましょう。 ③次世代補聴システム 新しい補聴システムとして、Wi-Fi や Bluetooth のようなデジタル無線方式によるシス テムも登場しました。FM補聴システムと比べて、受信機と送信機との周波数を合わせる 操作等は不要なので扱いやすく、語音明瞭度が大きく改善されるとの報告もあり、今後の 発展及び普及が期待されます。 Q 8

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10 片耳がきこえにくい場合、きこえ方はどのような状態でしょうか? 支援はどうしたらよいでしょうか? ①きこえ方の状態 片耳がきこえにくい一側性(いっそくせい)難聴ですと、補聴器をつけていない場合が 多いので、周りから気づかれにくいですが、本人は、きこえにくい状態にあります。 騒音が大きい場所ではさらに聞き取りにくくなります。また、きこえが良い方の耳から 主に音が入りますので、音の方向性がわからないことや、聞こえない耳の方向からの音に 気づきにくいということもあります。 そのため、周りからは、「注意が散漫」「都合のよいことだけ聞いている」などと言わ れることがあります。聞こえにくい方から近づく、自転車や車の音に気づくのが遅れて、 危険な場面も考えられます。 ②配慮・指導支援方法 話しかけるときは、きこえが良い耳の方向から話しか けましょう。 教室では、右図のような座席位置が望ましいです。 グループでの話し合い等でも、聞こえやすさを考えた 位置につけるように配慮してください。また、周囲は不 要な雑音を出さず、静かな環境を心がけてほしいです。 椅子や机の足にカバーをすることも効果的です。 静かな環境は、きこえにくい子にとっては、とても必 要な配慮ですが、他の子どもたちにとっても、うれしい 環境です。 周囲の配慮だけでなく、一側性難聴の子自身も、話を 聞くときは、自分のきこえやすい位置に自分で移動した り、周囲の人に自分の耳のことを知ってもらったり、話しかけ方などのお願いをしたりす ることができるような力がつくとよいです。 ③その他の配慮事項 きこえが良い方の耳が風邪や中耳炎等にかかり、聴力が一時的に落ちると、きこえにく さはさらに増します。病気の予防と、病気になったらすぐに耳鼻科を受診して、早めに治 療することをお勧めします。 望ましい座席位置 (左耳が聞こえにくい場合) 中央の先生の声や、クラス の友達の声が聞きやすい 場所が望ましい Q 9

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11 (音の 大 きさ) ← 小 大 → (音の髙さ) ←低 髙→ 発音ときこえは、関係するでしょうか? 発音はきこえが大きく影響しています。 きこえにくい子は、発音が不明瞭で、 はっきりしない話し方になる場合があり ます。 例えば、右のような子は中等度難聴で、 低音が高音よりよく聞こえます。母音は 聞こえても子音は聞こえにくくなります ので、話し声がはっきりとは聞こえず、 正しい日本語の発音で話すことができに くくなります。 すなわち、「カラス(karasu)」が子音の 脱落により「ああう(aau)」と聞こえるので、 「ああう」と発音しているのです。 母音は比較的聞き取りやすいですが、子音は聞き取りにくいため、曖昧な発音になった り、間違って覚えてしまったりすることがあります。 また、自分の発音に自信がないために、もごもごと口 ごもってしまったり、相手にうまく伝えられず諦めてし まったりすることもあります。 きこえにくい子にとっては、耳だけでは不十分なとこ ろは視覚を活用して、話し手の口を見てその意味を理解 する方法として、読話(どくわ)(Q21参照)を学習す ることも必要ですし、聞き手に理解してもらえるように できるだけはっきりと話す練習も必要です。 まずは子どもの話したい意欲を損なわないように、じっくり向き合ってたくさん話を聞 いてあげてください。その中で、子どもの言語獲得のために次のようなことに配慮して指 導していきましょう。 ○聞きとれなかった発音については、わかったふりをして進めてしまうと内容を 誤解して取ってしまったり、後にトラブルにつながったりします。わかりにく かった発音については聞き返したり、ゆっくり言い直しをさせたりする等、確 認をしましょう。 ○例えば「セロハンテープ」を「てろあんてーぷ」、「すこし」を「つこし」な どと聞こえたとおりに間違って覚えている場合もあります。子どもの実態によ っては、文字で確認することも必要になり、その都度正しい言葉をおさえてい きましょう。 ○助詞が正しく使えないこともあります。正しい文章表現を確認し言い直しをさ せることも、時には必要となるでしょう。 Q10

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13 きこえが気になる子がいた場合、どうすればよいでしょうか? 聞き返しや聞き誤りが多い、指示した内容を理解していない、遠くから呼んでも気づか ない、発音が不自然、ことばの遅れがある…など、「聞こえているのかな?」と気になる お子さんがいるかもしれません。(きこえにくい子の特徴はQ4参照) まずその子に難聴があるのか、どの程度の難聴なのかを確認する ことは重要です。 可能であれば、小児の難聴に詳しい医師がいて、年齢に合った検 査ができる病院に行ってもらうのが良いでしょう。就学前・小学校 低学年の小さい子や、発達に遅れなどがある子の場合は、大人用の 聴力検査では正確な結果が出ない場合があります。病院に子どもの 聴力検査や難聴の診断ができるかどうかを問い合わせてください。 聾学校等や療育機関には、きこえにくい子について詳しい先生が いて、教育相談を行っています。きこえにくい子への対応や今後の 方向性等についてアドバイスをもらえたり、必要があれば子どもに合った病院を紹介して くれたりするでしょう。また、聾学校等や市町村によっては、地域で「きこえの相談会」 を行っています。保護者だけでなく、先生方からの相談も行っていますので、活用してみ ましょう。日時や会場など詳しいことは教育委員会に問い合わせてください。 難聴があった場合、病院では、その種類や程度に応じて、治療や補聴器をつけることに 向けた支援を行っていくことになります。しかし、難聴がわかって補聴器さえつければよ いというわけではありません。補聴器をつけても、きこえる人のようにはっきりと聞こえ るようにはならず、聞き取れないことで、ことばの発達や教科学習に遅れが出ることもあ ります。また、コミュニケーションがうまくいかなかったり、補聴器をつけている仲間が 周りにいなかったりと不安を抱える子もいますので、心の支援も必要となります。聾学校 等の専門的な支援を受けることを検討し、担任・担当者間で連携をとることが重要です。 聴覚障害の有無や程度を確認し支援に繋げるまでの間にもできることがあります。話し 手が話し方を少し工夫するだけで、きこえにくい子に伝わりやすくなります。 ・聞き取りやすいように、はっきりと大きめの声で話す。 ・口元を見せて話す。 ・きこえにくい子の聞こうとする姿勢を作ってから話す。 ・できるだけ静かな状況で話す。 ・文字や身振りなど、見て分かる情報も取り入れる。 ・表情を見てわかっていないような時は、もう一度話す。 ・座席を前寄りにする。(一番前は、他の子の様子が見られず状況がわからない ため、2列目が良い。左右差がある子は、きこえの良い側が話し手の方を向 いているようにする。) Q11

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14 きこえにくい子への話しかけ方は、どのようにすればよいでしょうか? 「補聴器や人工内耳をつけているから聞こえているのでしょう」と思っている人が多く います。ところが、補聴器をつけても、はっきり聞こえるようになるわけではありません。 そこで、きこえにくい子に話しかけるときには、次のような配慮が必要です。 話しかけ方 ①きこえにくい子と向かい合って話してください。 後方からの話しかけは、聞き取ることが困難です。 ②きこえにくい子が視線を話し手に向ける等、 聞く姿勢になってから、話してください。 軽く肩をたたいたり手を振ったりして、子ど もの注意を話し手に向けてから話してくださ い。「聞こう」という気持ちを持って、相手 に注意を集中して、初めて聞き取ることがで きます。 ③口形をはっきり見せてください。 きこえにくい子は、言葉を理解するのに、口形を重要な手掛かりとしています。 ④表情や身振りをつけて、豊かに表現してください。 きこえにくい子は、相手が何を伝えようとしているのか、表情や体の動き全体を見て判 断します。 ⑤やや大きめの声で、ややゆっくり、はっきりと、話してください。 「ゆっくり」と言っても、一音一音切るのではなく、自然なリズムとイントネーション で話してください。 ⑥言葉で言っても子どもが理解できないときは、目で見てわかる手段を使ってください。 幼児なら、物や写真を見せたり、身振りを使ったりすることが有効です。小学生以上な ら、文字で書くと理解しやすくなります。 Q12

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15 ことばが出る前の支援は、どうしたらよいでしょうか?(幼児期) 医療機関で難聴と診断され、初めて療育機関を訪れた子と保護者に対し、次のようなね らいで指導を開始します。 ①補聴器をいつもつけることができる 最初は、補聴器をつけるのを嫌がる子もいます。その子が好きな遊び、例えばシャボン 玉や、車、楽器、音の出るおもちゃ等を使って、楽しく遊びます。補聴器をつけていると きに楽しく音や声を聞く経験をしていく中で、だんだん補聴器をつけている時間が長くな ります。少し慣れてきたら、「朝起きて、洋服を着替える時に補聴器をつける」という習 慣をつけることも大切です。 ②親子関係を作る 親子がスムーズに意思疎通ができ、子ども自身が身振りや手話・言葉などを獲得してい けるように、遊びを通して支援を行います。難聴の程度にもよりますが、きこえにくい子 が言葉を聞き分けることはとても難しいので、まず、大人が言葉と一緒に身振りを使って 話しかけます。子どもの興味や気持ちに十分共感しながら、一緒に遊ぶことが大切です。 「通じ合えた」という経験の積み重ねが、親子の信頼関係を育み、コミュニケーション関 係はより活発になっていきます。 ③周囲の音や音声に気づき、興味・関心を持つ きこえにくい子が言葉を聞き分けら れるようになるためには、まず周囲の 音や音声に気づき、興味を持つことが 第1歩です。そのためには、音の出る おもちゃや楽器で遊び、音が聞こえた 時に大人が耳元に手を当て、「聞こえ たね!」と表します。また、日常生活 の中のいろいろな音(掃除機の音や、 電子レンジの「ピピ」、電話のベル、 玄関のチャイム等)に注意を向け、聞かせていくことも大切です。子どもは音の意味がわ かるようになると、自分から気づいて積極的に反応するようになります。 ④保護者が難聴について理解し、子どもの障害を受容する きこえにくい子の療育を考えるうえで、保護者支援はとても重要です。まずは、難聴が わかってショックを受けている保護者の話をよく聞き、受け止めることが大切です。担当 者は、療育の中で、保護者にきこえにくい子のきこえ方や補聴器の役割、今後の言葉の獲 得の見通しなどを説明します。そして、一緒に遊びながら、具体的な関わり方を助言して いきます。また、障害の受容を図るため、同じきこえにくい子を持つ保護者同士の交流や、 先輩の体験談を聞く機会を設けていきます。 Q13

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16 ことばの育ちについて、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? (学齢期) 小学校に入学すると、教科学習が始まりますので、保護者や教師は子どもの教科の学習 成績や、教科で使う言葉に意識がいくのは当然です。しかし、小学校入学以前に覚えた言 葉は、耳で聞いただけで覚えたものがほとんどで、聞き間違えて覚えている言葉がありま す。文字を覚え、自分で書けるようになったときに、間違えて覚えたまま書いていること で、初めて間違いがわかることがあります。 また、当然知っているだろうと思われる言葉を知らないという場合や、助詞の間違いが みられることもあります。 文字を覚えてからでも、集中して聞いた言葉はわかっても、注意を向けていない周りの 言葉や音が自然に耳に入ることは難しいです。誰でも知っている言葉やフレーズ、歌等を 知らず、友達との話に入れない、ついていけないということもあります。特に、子ども達 が好きなテレビのコマーシャルには、字幕がついたものが少ないということもあり、入り づらいようです。また、自分で、本やインターネットなどから情報をどんどん取り入れら れるようになっても、新出語や特殊な読み方をする言葉などで、ふりがなをふっていない ものについては、自己流で読んだまま覚えているということもみられます。 聞いただけの言葉は曖昧であるので、普段から文字で確認するようになると間違いが少 なくなります。文字は、小学校になってから覚えるのではなく、幼児期から早めに覚えた 方が言葉を間違えて覚えることが少なくなります。自分の経験を絵日記や日記に文字で書 くことで、経験した場面やその時に使った言葉を確認し、記憶に残すことができます。日 記を使った言葉の学習で、語いや言葉の概念を広げることもできます。 日常会話の中で使う慣用句は、聞き逃したり、 場の状況理解が不十分だったために、聞こえても 意味がわからなかったりすることも考えられます。 文字通りの意味でとらえていることもあるので、 意識的に学習した方が効果的です。 普段から相手の話をよく聞いて、人とのコミュ ニケーションを積極的にとる態度、わからないこ とがあったら、そのままにせず、聞いたり、調べ たりする姿勢が大事です。 人とのコミュニケーションの中で、生きた言葉 が使えるようになることが、言葉が育つために必要です。 Q14

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17 心の育ちについて、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? きこえにくい子は、きこえにくさから不安感が強くなり、母親への依存心が強い傾向が みられることがあります。また、幼少期から周りの人々に支援を受けて生活してきている こともあり、支援を受けることに対する感謝の気持ちを持ちにくい子もいます。 また、きこえにくいことで、周囲の状況判断が難しく、相手が好意的に行ったことにつ いて理解できずに、お礼を言ったり謝ったりすることができないこともあります。コミュ ニケーション上の暗黙のルールやマナーに気づかない、知らないことで、自己中心的にな りやすく、相手の気持ちを考えることが難しい場合もあります。 その一例・・・ ① きこえにくい子の鉛筆が、机から落ちたことに気づいて拾ってくれた隣の 席の子に、「なんで、鉛筆取るの?」 きこえにくい子は、鉛筆が落ちた音に気づかなかったので、隣の席 の子がとったと思った。 ② 目の前に、誰かの鉛筆が落ちていた。気がついているのに拾わないきこえ にくい子に、どうして拾わないのか聞くと、「だって、自分のじゃないから」。 鉛筆を拾って「これ誰の?」と周りの友達に尋ねてみるという、普 段クラスの友達が行っていることに気づいていなかったので、やら ない。 このようなことが起こる場合もあり、相手に不快な思いをさせてしまって、人間関係が うまくいかなくなってしまうこともありますので、小さい時から、ルールやマナーを教え ることがとても大切です。普段から、自分から挨拶でき、相手に何かしてもらった時は、 「ありがとうございます」とすぐに言えるような習慣をつけると良いでしょう。 時には、ソーシャルスキルトレーニング(SST)といって、日常でよくある行為につ いて絵や写真を使って、どのように対処したらよいか、そのような行為をしたときには何 と言ったらよいかなどを学習することも効果的です。 きこえにくい子は、いつも周りの人から支援を受ける だけではなく、きこえにくい時には支援を受け、それ以 外では自分も周りの人にしてあげられることをするとい う気持ちを持つことができると、自己肯定感も高まり、 自信がつきます。 また、「人」にはさまざまな感情があり、言葉の表現 の仕方もたくさんあります。「雲一つない青空でさわや かだね」「算数の問題が解けて、すっきりしたね」等、 その都度、きこえにくい子の気持ちを表現したり引き出 したりして、気持ちの言語表現を育てていきましょう。 Q15

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18 コミュニケーションをスムーズにとるためには、 どうすればよいでしょうか? 初めてきこえにくい子と接する先生方は、その子の言うことがわからなかったり、自分 の語りかけが相手に正しく伝わっているのかと不安に思ったり、さまざまな問題に直面し ます。重要なのは時間をかけてじっくりと「語り」「聞く」ことです。 きこえにくい子は、発音が明瞭でないことがあり、慣れている家族でもわからないこと があります。うまく発音できない音の聞き取りはもっと難しいので、「わからなくて困る」 のは、子どもも同じです。 子どもの話のわかりづらさ、教師の話の伝わりづらさは、子どもの聴力の程度、社会経 験、それによって培われた言語力によって、さまざまです。時間をかけてかかわっていく と、次第にわかり合えるようになってきます。 もう一つ重要なのが「文脈」です。そのときの話題が何なのかがわかると、急に話が見え てきてスムーズに伝わります。「キーワード」を文字やジェスチャーなどで伝えると効果 的です。 音声だけではわかりづらいレベルのきこえにくい子は、小さいころから読話(どくわ) の練習を行います(Q21参照)。読話とは、話し手の唇の動きをもとに、補聴器を通し て聞こえてくる音や話し手の表情、雰囲気、文脈などを総合的にとらえ、言葉を読み取る 方法です。話し手は次のことに気をつけてください。 ・口をはっきりと動かす。 ・意味のまとまりごとに区切る(1音ずつ区切ると、わかりにくい。) ○こ ん に ち は ×こ・ん・に・ち・は ・自然なリズムで、ややゆっくり。 子どもは全神経を集中し、さまざまな感覚を組み合わせて話を聞こうとします。読話す る子は、耳からの刺激と目からの刺激の両方を活用し、脳でそれを認知しています。先生 方も五感をフルに使って、表情やジェスチャー、 文字等、さまざまな工夫が必要です。 次のような方法もあります。 <筆談> 文字が書ける年齢ならば可能。 漢字力により効果に差が出る。 ひらがなでどんどん書く。 キーワードや名詞だけでもよい。 空書きも可。 <ノートテイク> 支援員等の体制が取れるとよい。 難聴学級等の担当者が可能な範囲で行う場合もある。 <手話・指文字> できるスタッフをどれくらい確保できるかが問題。 きこえにくい子は必ずしも手話を使うとは限らない。 Q16

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19 軽度難聴や人工内耳の場合、かなり聞こえているように感じます。 支援は必要でしょうか。 軽度難聴の子も人工内耳の子も、支援は必要です。日常生活の中では聞こえているよう に見えます。しかし、きめ細かく観察をしてみると、問題を抱えているケースもよくあり ます。軽度難聴だからといって、あなどってはいけません。子どもが聞こえているように 見えるのは、一生懸命、周囲のことを把握しようと努力しているからです。 軽度難聴のきこえは、耳を指でふさぐ、ヘッドホンをする、水の中に潜った状態、騒音 の中での会話等…のような状態です。その時は、どのような聞こえ方でしょうか?音とし て何か言っている、何か聞こえるということはわかりますが、どのようなことを言ってい るか、何の音か、聞き取りにくくありませんか。 声が小さかったり、話し手が見えなかったりする場合には、より聞こえにくくなります。 騒音下や遠くからの話を聞き逃すこともたくさんあります。また、サ行音やキャキュキョ など小さいヤユヨのつく音(拗音)などを聞き間違うこともあります。軽度難聴の子には、 静かな環境で学習を支援したり、悩み事の相談にのったりという個別での指導が有効であ ることが多いです。例えば、何を言っているのか、何の音なのか、絵や文字でヒントを示 すことで、理解しやすくなります。 人工内耳の場合も同様です。人工内耳にしてきこえがよくなっても、聞こえている人た ちのように聞こえている訳ではありません。「おはようございます。」という言葉の中に 音の高さや大きさがあり、それが聞こえている人と同じ状態で聞こえているわけではない のです。「おはようございます。」と入ってくる音から何を意味しているのか考えて、言 葉として理解します。人工内耳をつけたとしても、軽度難聴と同じ状態です。また、精密 機器を頭部につけていることから、頭部への衝撃などには細心の注意が必要です。言葉や 聞き取りの学習や安全面での支援などが必要です。 どちらの場合も、静かな環境での本人の 聞こうとする意識が高い等の条件が整った ときにはよく聞き取れますが、そうではな いときは、聞き漏らすこともあり、周囲の 人達のきこえの状態への理解が難しくなり ます。また、本人自身のきこえにくさに関 する理解(障害認識)も難しくなりがちで、 きこえにくいことを隠したがる場合もあり ます。そのため、本人のきこえにくさを見 つめる障害認識の学習や、周囲の人達の理 解を得るための難聴理解授業等の取り組み が必要になります(Q18参照)。 Q17

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20 学級や学年のきこえる子ども達には、どのように伝えればよいのでしょうか。 学級や学年のきこえる子ども達に、きこえにくい子のきこえにくさについてはっきりと 伝えることがとても大切です。どのように接したらよいか、きこえる子ども達に具体的に 示していくことが、対等な人間関係を築くための基本になります。補聴器をつけていない 軽度難聴や片耳だけきこえにくい一側性(いっそくせい)難聴の場合にも必要なことです。 もし、きこえにくいことを伝えないで学校(園)生活を送っていたらどうなるでしょう。 ・呼んだのに返事をしないで無視をする。 ・いつも隣の席の私を見て真似している。見ないでほしい。 ・話しているとき、とんちんかんなことを言う。 ・ぼーっとしている。 ・持ち物や宿題の忘れ物が多い。 等々 このようなことが積み重なり、友達関係が悪くなってしまうこともあります。 きこえの教室等では、学級や学年のきこえる子ども達に自ら伝える難聴理解授業の取り 組みを、きこえにくい子の実態に合わせて行っています。きこえにくい子ども達の学校生 活が過ごしやすくなるように環境を整えていくことと併せて、きこえにくい子自身が自分 のきこえを見つめて理解し、どのように話しかけてほしいか等を自ら伝えていく力を培っ ていくことをねらっています。 どのようなことを伝えているのか、いくつか挙げます。 ○きこえにくい子にとって補聴器はとても大切なものであること ○補聴器をつけてもきこえる子達と同じようには聞こえないこと ○静かなところで1メートルぐらいの距離が聞こえやすいこと ○口を見せて、はっきりと、やや大きめの声で話すとよいこと ○周りを見て行動していること 等々 「きこえにくいこと」を伝えることで、子ども達なりに「きこえにくいこと」を理解し、 子ども同士でかかわり方を考えることができます。それは人間関係に大きく影響します。 自ら伝えると、きこえる子ども達の心に響き、話し方のこつを大人以上に早くつかんで接 していくことでしょう。手話や指文字に興味を持ち、覚えて、きこえにくい子とコミュニ ケーションを盛んにとっているきこえる子もいるほどです。 また、きこえの教室等の担当者が集会等で全校の子ども達に伝えたり、朝の会に各クラ スをまわって伝えたりしている学校もあります。学級や学年の子ども達が知っているだけ では、縦割り班の活動や委員会・クラブ活動等で困った場面が起こる可能性もあります。 全校に伝えることも大切なことです。 このように、学級や学年、そして全校に伝えることはとても重要なことですが、きこえ にくい子本人や保護者に確認をしてから行うようにしましょう。きこえの教室等の支援を 受けている場合は、その担当者と連携をとり、ともに行っていくとよいでしょう。どこに もかかわっていない場合は、近くのきこえの教室等や聾学校に相談してみましょう。また、 千葉聾学校では「難聴理解授業題材集」を作成し配布しているので、問い合わせるとよい でしょう。 Q18

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21 通級の場合、学級担任としてどのようなことに気をつければよいでしょうか? ①明るい声かけ きこえの教室等に通級しているきこえにくい子は、朝1校時に通級してから遅れて登校 してくる場合や、授業や帰りの会等を抜けて通級する場合があります。きこえにくい子は、 どきどきしながら途中から教室に入ったり出たりしています。 そんな緊張を吹き飛ばすように、明るく元気に「お 帰りなさい。待っていたよ。」「行ってらっしゃい。 頑張ってね。」と声をかけてください。学級のきこえ る子ども達とともに声をかけると、自分だけ違う行動 をすることに抵抗が少なくなるでしょう。廊下で出会 う先生方からも同様の声かけがあると、さらによいで しょう。そして、通級していて学級にいないときに学 習した内容や大事なお知らせは、必ずきこえにくい子 にも伝える配慮が必要です。 ②連絡ノート きこえの教室等の担当者は、連絡ノートに、通級の学習内容やきこえにくい子の様子、 配慮してほしいこと等、担任の先生に知らせたいことを記してきこえにくい子に託します。 渡すタイミングが難しく、うまく渡せない子もいます。登校してきたら、きこえにくい子 が渡しやすいように声をかけるとよいでしょう。 そのノートには、担任の先生からも学習内容や学級でのきこえにくい子の様子等を書い て、きこえの教室等の担当者に知らせましょう。必要に応じて、校内の関係する先生方に も回し、専科の先生が様子を記入するのもよいことです。このノートは保護者も読み、家 庭での様子を書く場合もあります。通級の連絡ノートを活用して、きこえにくい子にかか わる人達で情報を共有することが大切です。 ③おたより きこえの教室等では、担任の先生や保護者向けにおたよりを発行しています。きこえの 教室等の取り組みやきこえにくい子の様子、補聴器の情報や配慮してほしいこと等を定期 的にお知らせしています。きこえにくい子が「通級のおたよりです。読んでください。」 と渡しましたら、受け取って一言声をかけましょう。きこえにくい子と担任の先生とのふ れ合いの場でもあります。そのおたよりは、担任の先生だけでなく、学校中に回覧して共 通理解するとよいでしょう。 また、学級だよりや学年だより、学校だより等も、きこえにくい子を通じて、きこえの 教室等担当者にも渡して連携をとりましょう。きこえの教室等担当者は、学級だより等を 読むことで、きこえにくい子の学級や学校の様子を知ることができます。 Q19

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22 保護者との連携は、どのようにしていけばよいでしょうか? 保護者との連携を密にとることを心がけましょう。 保護者と機会をとらえて話をするようにします。保護者の不安な気持ちを受け止め、信 頼関係を深めることが大切です。 きこえにくい子について理解を深めるために、下記の内容について保護者から訊いてお きましょう。 ・きこえの程度 ・今までの相談歴や教育歴 ・配慮してほしいこと ・補聴器やFM補聴システム、人工内耳等 ・ことばの育ちの様子 ・心の育ちの様子 ・人とのかかわり方の様子 等 特に、配慮してほしいことについては、入学(入園)時に、担任の先生だけでなく、管理 職やコーディネーターの先生等とともに、学校(園)としてどのようにしていくか相談する とよいでしょう。保護者の思いを受け止めながら、学校(園)として今できること、努力し てできること、難しいことを具体的に話し合います。家庭として努力していくことも確認 し合いましょう。 子どもの連絡帳を活用して、学校(園)での様子(学習の様子、友達とのかかわり、気づ いたこと等)を伝えます。家庭での様子も連絡帳に書いてもらうとよいでしょう。連絡帳、 電話、面談等で定期的に連絡をとっていくことが大切です。 保護者は、集団生活ができているかどうかとても心配しています。「いつもよりきこえ にくい。ぼんやりしている。」と感じたときは連絡帳等で伝えます。保護者が学校(園)に 来校(来園)したときには、できる限り声をかけ、頑張っていることや気になることを伝え るとよいでしょう。 保護者と協力して育てていきましょう。 Q20

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24 教室等での座席は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? 教室では、先生の話をよく聞くことができる場所に座 るようにします。前から1番目か2番目で、中央か窓寄 りの、日光でまぶしくならないところがよいでしょう。 2番目に座ると、前の友達の様子を見ながら先生の話を 聞くことができるので、指示の内容が分かりやすくなり ます。また、窓寄りの席の方が、先生の口元が陰になら ないので、口形を見ながら聞いているきこえにくい子に は、聞きやすくなります。 先生との距離が遠くなればなるほど聞き取りにくくな るので、なるべく教室の前方の座席がよいです。 コの字型の座席配置も、きこえにくい子にとっては授 業に参加しやすいです。友達の発言の際に、誰が発言し ているかがわかり読話(どくわ※ Q16参照)しやす いからです。 特別教室でも、前方で、先生の顔がよく見える位置に 座るようにします。 教室の座席については、本人の様子を見ながら、本 人と相談して決めるようにするとよいでしょう。中・ 高学年になると座席を固定されることが負担になる場 合もあります。自分から前に座りたいと言う子もいま す。本人にとって聞きやすい位置を、一緒に考えると よいでしょう。 集会や運動場では、場面に応じて本人に位置を確認してください。身長順に並ぶと後ろ になってしまうこともありますので、その場合には、端の方で前列に並ぶようにします。 屋外では声が届きにくいので、注意を促してから話すようにすると、わかりやすくなりま す。FM補聴システムを使用している場合には、後ろでも聞き取れることがありますが、 テーマを先に伝えたり紙に書いたものを提示したりするだけでも内容の予想ができ、聞き 取りやすくなります。また、集会の後、学級に戻ってから集会で話されたことについて話 し合ったり確認したりすることによっても、より理解が深まります。 ※読話(どくわ) 口の動きを読み取って、話の内容を理解することです。日本語には、口の動きが同じ言葉 がたくさんあり、読話だけで話を理解することは難しいですが、手がかりとしては有効です。 Q21

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25 授業中の話し方等は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? きこえにくい子への話し方は、口を見せてはっきりと話します。言葉を一音一音区切る のではなく、自然な区切り方で少し大きめの声でゆっくり話すことを心がけます。 補聴器は、1メートル程度の範囲での音声や周りの音を聞き取れるように調整してあり ます。それ以上離れた場合にはきこえにくいということを知っておくことが大切です。横 や後ろからの話しかけには気づきにくいので、前に回るか肩を叩いて合図をし、視線を合 わせてから話すようにします。 板書をしながら話すと、口元が見えない上に声も届きにくい ため、先生が話すときには顔を見せて話しましょう。また、子 どもがノートを書いているときや作業をしているときには指示 が聞き取れないことが多いので、注目させてから話をするよう にします。きこえにくい子は、何かをしながら聞くということ ができないので、なるべく聞くことと他の活動を分けると、授 業が受けやすくなります。 教科書の内容以外の話をするときには、テーマを板書してから 話す等、何の話かわかる手立てがあると内容が伝わりやすくなり ます。 他の子が発表するときには、はっきり指名して誰が話すかがわ かるようにします。また、後方の座席の子が発表した意見は聞き 取りにくいので、板書したり先生が復唱したりするとよいでしょ う。誰の意見かネームプレートを黒板に貼って示す先生もいます。 座席順に音読したり算数の練習問題を答えたりする場合、きこ えにくい子は、自分の番がいつくるか、どの場所かよくわからな い等不安になることが多くあります。きこえにくい子の近くで、 読んでいる場所や問題を指さすとわかりやすくなります。また、 算数等の答えを書いた紙を渡す等、別に示す必要があります。 FM補聴システムの活用も、きこえにくい子によっては効果 的です。FM補聴システムは、FM電波を使ってFM送信機(マ イク)から音声を直接補聴器や人工内耳に届けることができます。話し手との距離が遠く ても周りの音に影響されずに音声を聞くことができま す。しかし、聴力の程度によって、FM補聴システム を活用しても、音がしていることはわかっても音声と して聞き取れないこともあります。FM補聴システム を活用しても、きこえにくい子への話し方等の配慮を 十分にする必要があることを頭に入れておきましょう (Q8参照)。 Q22

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26 国語は、どのようなことに配慮すればよいでしょうか? きこえにくい子は、きこえにくいために、新しい言葉を知る機会が少なく、また、やり とりの機会も少ないために、語いや文法、理解や表現などさまざまな面において言葉の発 達が遅れがちです。きこえにくい子の言葉の知識を増やし、表現力を育てるためには、意 図的な働きかけが必要です。 学級経営の一環として「学級読書の取り組み」「ノートや作文、通信による交流」「3 分間スピーチ」「漢字や単語の継続的な小テスト」などの取り組みは、きこえにくい子に とって、とても有効です。 その際、きこえにくい子は、助詞を正しく使用することや受動文の習得が困難なこと、 日常生活の中で自然に獲得するような「耳がいたい」などの慣用句も文字のとおりに受け 取りやすいこと、作文が羅列的な記述になりやすく、文と文との関係を意識した構成が難 しいなどの傾向をもっていることを知っておき、場をとらえてお手本となる言い方を示す と言語の獲得につながります。 学習指導や学級作りの中で行なわれている取り組みを、きこえにくい子に対してより丁 寧に行うことが、きこえにくい子の学力向上につながります。 国語の授業の中では、音読や聞き取りテストでの配慮が必要です。他の子どもが音読し ているとき、聞こえていないことが多くあります。読んでいる箇所を指で示す配慮が必要 になります。補聴器は、電子音が聞き取りにくく、聞き取りテストでは、CDからの聞き 取りは、とても困難なことが多いです。別室の静かな場所で、最も聞き取りやすい先生の 肉声で行うのがよいです。 濁音や促音などの聞き分けが難しいため、言葉や漢字を誤って覚えることがあります。 できる限り板書を活用し、目に見える支援が大切です。文字と発音とを対応させながら言 葉を理解させ、漢字は読みがなを書いて確認するとよいです。物語や説明文の読解では、 気持ちや様子が書かれている部分に線を引かせることも効果的です。 漢字の理解は、文章の読解や自分の考えをまとめ る大きな手助けになります。「こうすいりょう」と 聞いた時、「降水」の漢字が思い浮かび「降る」と わかれば、授業内容の理解が高まります。低学年の うちから、いろいろな漢字や熟語に親しませるよう にするとよいです。また、辞書を使う習慣を身につ けることも必要です。視覚的な補助のある「ことば 絵辞典」などの活用は低学年の子に効果的です。 言葉の知識を増やしていくことは聞き取りの向上 につながり、書き言葉の力がついてくることで考える力がつき、コミュニケーションの改 善にもつながることが期待されます。また、国語の学習を基盤にして、他教科の理解も深 まっていきますので、国語の学習には大切な要素がたくさん含まれています。 Q23

参照

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