稲 作 情 報
No.7
発行日:平成25年7月26日 発 行:仙北地域振興局農業振興普及課~草丈長く、茎数・葉色はほ場間差大きい~
~減数分裂期の低温に注意!深水管理を~
Ⅰ 気象および生育状況(7月25日現在)
(1)気象経過(アメダスポイント大曲) (2)水稲定点調査結果 7月25日の調査の「あきたこまち」の生育は、草丈は78.9cm(平年比107%)で長く、 茎数は447本/㎡(平年比97%)でやや少なく、葉数は12.0葉(平年差-0.2葉)で平 年並、葉色は37.8(平年比101%)で平年並となっています。茎数、葉色のほ場間差が大 きい状況です。 多くのほ場で減数分裂期となっており、生育の進んでいるほ場では、走り穂が見られています。 6/10 6/25 7/5 7/15 7/25 9/15 本年 23.5 39.8 51.3 69.6 78.9 平年 25.1 38.1 52.1 63.2 73.8 81.1 前年 25.0 32.5 43.9 55.0 68.2 79.4 20 30 40 50 60 70 80 90 ・ ・・ ・・ E ・ b・ キ ・i・ ・・ ・・ j 草丈・稈長の推移 6/10 6/25 7/5 7/15 7/25 8/20 9/15 本年 152 448 579 539 447 平年 155 440 514 505 463 434 434 前年 154 390 583 582 536 451 451 100 200 300 400 500 600 700 ・ s・ ・・ E ・ ・・ ・・i・ {・ ^・ u・j 茎数・穂数の推移 6/10 6/25 7/5 7/15 7/25 8/20 本年 5.6 8.5 10.0 11.2 12 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0 14.0 ・ t ・ ・ 葉数の推移 6/25 7/5 7/15 7/25 本年 42.8 42.0 41.8 37.8 33.0 35.0 37.0 39.0 41.0 43.0 45.0 47.0 ・ t・ F ・ i SP A D ・ l・j 葉色の推移 定点調査結果 草 丈 茎 数 葉 数 葉 色 cm 本/㎡ 葉 SPAD502 本 年 78.9 447 12.0 37.8 平 年 値 73.8 463 12.2 37.5 平年比・差 107% 97% -0.2 101% 前 年 値 68.2 536 11.5 37.6 前年比・差 116% 83% 0.5 101% あきたこまち10地点Ⅱ 今後の管理について
1 水管理について
(1)気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水、出穂期から開花期にかけては湛水管理、その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが、気象変動に対応した水管理を心がけましょう。 ①減数分裂期の低温 減数分裂期(葉耳間長±0cm、出穂期10日前頃)は、最も低温に弱く、日平均気温が20℃以下 (最低気温17℃以下)では障害不稔が発生するおそれがあるので、低温時は深水管理(15㎝以 上)により幼穂を保護します。ただし、かんがい水温が気温より低い場合は逆効果になるので 注意が必要です。 ②出穂期以降の高温 出穂後の20日間の平均気温が27℃(最低気温が23℃)を超える場合は、白粒等の発生による 品質低下のおそれがあるので、気温が30℃以上になる日は、夜間はかん水、日中は落水し、地 温を下げ、根の活力維持に努めましょう。また、フェーン現象等で乾燥した風が強い日は、湛 水状態を保ち、蒸散による稲体の水分消耗を軽減しましょう。 一般的な水管理方法 (2)カドミ米対策について カドミウム含有米が発生する恐れがある地域では、出穂期前3週間、出穂後3週間の計6週間 は湛水管理を徹底しましょう。土壌表面が空気に触れ酸化状態となると、土壌中のカドミウムが 吸収されやすくなるため、湛水状態を維持してカドミウムの吸収を抑制します。 2 出穂期予測 7月24日までのアメダス地点の平均気温に発育モデルを用いて、「あきたこまち(中苗)」の 出穂期を予測しました。 平均気温から予測すると、出穂期は平年より早いと見込まれます。 透水性付与 溝掘り (高温時かけ流し) 間断かん水 浅水 間断かん水 落水 中干し 移 植 活 着 期 有 効 茎 確 保 6/30 幼 穂 形 成 期 減 数 分 裂 期 7/31 出 穂 期 早期茎数確保 稲体強化 登熟良化 還元防止 (根の活力維持) (低温障害) 深水 浅 水 低温時深水 8/31 出穂 日 後 以 降 30 (高温時かけ流し)出穂期の予測(中苗)
5月20日
5月25日
5月30日
6月5日
大 曲
8月1日
8月3日
8月7日
8月11日
角 館
8月2日
8月5日
8月8日
8月12日
田沢湖
8月7日
8月9日
8月13日
8月17日
7月25日以降の気象が平年並で経過すると仮定して試算
ア メ ダ ス 地 点移 植 日
3
幼穂形成期の栄養診断
幼穂形成期の栄養診断では、定点ほ場はⅣ型、Ⅴ-2型、 Ⅵ型に分類され、生育過剰や籾数過多も懸念される生育相 でした。減数分裂期の追肥、ムラ直しができる圃場もあり ましたが、すでに減数分裂期に入っていますので、実施す る場合は早急の対応が必要です。なお、減数分裂期を過ぎ てからの追肥は食味が低下するので避けましょう。 また、倒伏軽減剤の対応が必要な圃場では、生育ステー ジにあった剤を選定しましょう。 主な倒伏軽減剤 使用時期 薬剤名 10a当たり使用量 使用回数 使用方法 出穂20~7日前 スマレクト粒剤 2~3kg 1回 湛水均一散布 出穂10~2日前 ビビフルフロアブル 75~100ml、散布量50~150㍑ 1回 茎葉均一散布減数分裂期の理想生育量
上 限
理 想
下 限
上 限
理 想
下 限
上 限
理 想
下 限
上 限
理 想
下 限
75
74
72
454
437
420
12.5
12.3
12.1
39
38
37
上 限
理 想
下 限
上 限
理 想
下 限
生育量=草丈×㎡茎数33.5
32.1
30.8
13.0
12.3
11.7
栄養診断値=生育量×葉色草丈(cm)
茎数(本/㎡)
葉数
葉色(SPAD502)
生育量(×10
3)
栄養診断値(×10
5)
Ⅲ 病害虫対策
1
斑点米カメムシ類
平成25年7月11日に秋田県病害虫防除所から「平成25年度農作物病害虫発生予察情報 注意報第2 号」が発行されました。 管内でも休耕田等の雑草地を中心に発生が見られますので、十分な防除対策をとりましょう。(1)薬剤防除
①1回目散布 出穂期10日後頃に、スタークル剤等の残効性の高い剤を必ず散布しましょう。 粒剤は粉剤や液剤に比べ効果が劣るため、農薬飛散による周辺農作物への影響が懸念さ れる場合のみ使用します 【本田茎葉散布剤】 散 布 時 期 薬 剤 名 濃 度 散布量(10a) スタークル粉剤DL - 3kg 出穂期 アルバリン粉剤DL - 3kg 10日後頃 スタークル液剤10 1,000倍 150㍑ スタークルメイト液剤10 【本田湛水散布剤(粒剤)】 散 布 時 期 薬 剤 名 濃 度 散布量(10a) 出穂期 スタークル粒剤 - 3kg 7~10日後 アルバリン粒剤 - 3kg ②2回目散布 本年は病害虫防除所から斑点米カメムシ類多発の「注意報」が出されていますので、2 回目の薬剤散布を基本としてください。2回目散布は出穂後24日後にキラップ剤を散布し ます。 【本田茎葉散布剤】 散 布 時 期 薬 剤 名 濃 度 散布量(10a) 出穂期 キラップ粉剤DL - 3kg 24日後頃 キラップフロアブル 2,000倍 150㍑(2)水田周辺の草刈り
①農道・畦畔の草刈り 出穂期10~15日前まで、地域一斉に草刈りをしましょう。8月には出穂期10日後頃の茎葉 散布剤の散布後に草刈りを行い、アカスジカスミカメの増殖源となるイネ科雑草の除去に 努めましょう。その後、草刈りをする場合は、収穫2週間前以降に行います。2
いもち病
病害虫防除所によると、本年の全般発生開始期は平年並の7月8日(平年7月6日)と推測さ れます。巡回でも平年並みに発生が確認されていますので、ほ場を巡回し、発生状況に注意 しましょう。 (1)これまで育苗施設内外の衛生管理や適正な育苗期防除・葉いもち防除を行い、葉いもちの 発生が全く認められず、周辺の発生田からの伝染の影響がないほ場では、穂いもち防除の必 要はありません。 ただし、常発地帯や隣接ほ場が多発している場合は出穂期~7日後にラブサイド剤の茎葉 散布を行いましょう。 (2)葉いもちの発生が見られるほ場では出穂7~15日前にコラトップ粒剤5の散布を行うか、 出穂直前と穂揃期にラブサイド剤またはビーム剤の茎葉散布を行います。3
フタオビコヤガ(イネアオムシ)の防除
葉色の濃い水田や、山沿いの水田で集中加害を受ける場合があります。 発生が多い場合は、トレボン粉剤DL等で防除しましょう。 薬 剤 名 希釈倍数・散布量(10a) 散布時期 トレボン粉剤DL 3kg 茎葉散布 パダン粉剤DL 3~4kg 第3世代 ロムダン粉剤DL 8月上旬 MR.ジョーカーEW 2,000倍・100㍑4
紋枯病
穂ばらみ期~出穂期の発病株率が15%以上の場合は、防除が必要となります。 防除は出穂前に防除に重点を置き、出穂以降は多発が予想される場合のみ防除をします。 散布時期 薬 剤 名 粉 粒 液 水 ゾ フ 希釈倍数・散布量 備 考 (10a) バリダシン ○ ○ 粉剤DL 3~4kg ア)出穂直前の防 出穂直前 バシタック ○ ○ ○ 液剤 1,000倍 除に重点をおく ~穂揃期 ゾル 800~1,000倍 イ)多発が予想さ 水和剤 1,000倍 れる場合は出穂 モンカット ○ ○ ○ フロアブル 1,500倍 以降にも散布す モンセレン ○ ○ る 出穂5 リンバー ○ 4kg ア)前年多発生し ~15日前 た圃場で使用す 出穂10 モンガリット ○ 4㎏ る ~20日前 注)粉:粉剤DL、粒:粒剤、液:液剤、水:水和剤、ゾ:ゾル、フ:フロアブル 注)いもち病防除で嵐プリンス箱粒剤6(50g/箱または25g/箱)あるいは嵐ダントツ箱粒剤 (25g/箱)を使用した場合、紋枯病の防除も兼ねる。草刈り機等での農作業事故に注意しましょう!
~ 次回発行予定は8月下旬 ~【時期別・主要作業別指導事項】 月・旬 作業の種類 主 な 事 項 水管理の適正化 ○幼穂形成期から出穂までは間断かん水とする。 ○7月下旬(減数分裂期)は低温に弱いので、低温時(日平均気温20 ℃以下、最低気温17℃以下)には深水管理(15cm以上)を徹底する。 ○出穂期から開花期(約10日間)は湛水状態とし、その後は再び間断 かん水とする。 ○出穂後に気温が30℃以上になる日は、可能であればかけ流しかん水 をするが、地域の用水量が少ない場合は、夜間にかん水し昼間は落 水管理を行う。 ○落水時期は出穂後30日以降とし、早期に落水しない。 カドミウム含有米 ○カドミウム含有米の発生が懸念される地域では、出穂3週間後まで の発生が懸念され は常時湛水管理とする。 る地域での水管理 7月下旬 生育・栄養診断、 ○ほ場毎に生育・栄養診断に基づき追肥の量を決定する。 倒伏診断の実施 ○倒伏が予想される場合は、倒伏軽減剤を適正に使用する。 ~ ○減数分裂期(葉耳間長±0cm)を過ぎてからの追肥は行わない。 8月中旬 斑点米カメムシ類 ○イネの出穂の10日前までに草刈りを行い、斑点米カメムシ類の本田 防除 侵入量を低下させる。 ○出穂期10日後頃にスタークル・アルバリン剤、出穂期24日後頃にキ ラップ剤の茎葉散布剤を用いた2回防除を実施する。 ○8月には出穂後10日後頃の茎葉散布剤の散布後に畦畔・農道の草刈 りを行い、増殖源の除去に努める。 穂いもち防除 ○ほ場の検診を十分に行い、適切な穂いもち防除を実施する。 フタオビコヤガ(イ ○多発生したほ場については防除する。 ネアオムシ)防除 紋枯病の防除 ○穂ばらみ期~出穂期の発病株率が15%を超える場合は、薬剤防除を 行う。防除は出穂前の防除に重点を置く。 農薬飛散防止と安 ○農薬散布時は、周辺作物への飛散防止対策の一層の徹底を図る。 全使用 ○散布前に使用農薬のラベル等を熟読し、使用法を厳守する。 ○健康管理や服装・装備等に留意し、涼しく風のない時間帯に散布す る。 ○農薬散布後は、防除用具の洗浄を必ず行う。 ○防除履歴を必ず作成する。