岡山市 岡山大学創立
50 周年記念館(平成 25 年 9 月 26 日~9 月 27 日)
Abstracts Presented at the Meeting of the Kansai Division
Okayama, September 26–27, 2013
(1) 山田祥子・宍戸穂高・玉置大介・秋光和也・五味剣二 イネジャスモン酸シグナル制御因子OsJAZ8 の制御 下にある転写因子の解析 Yamada, S., Shishido, H., Tamaoki, D., Akimitsu, K. and Gomi, K.: Analysis of Osjaz8-Mediated Transcription Factor on Jasmonate Signaling in Rice. これま で,イネ白葉枯病抵抗性におけるOsJAZ8 が介するジャス モン酸(JA)シグナル伝達機構の重要性について明らかに してきた.本研究ではOsJAZ8 が制御する JA シグナル伝 達機構の更なる解明のため,先のマイクロアレイ解析にお いてOsJAZ8 依存的な発現様式を示した転写因子の一つを OsJAZ8-Mediated Transcription Factor 1(JMTF1)と命名し 解析を試みた.JMTF1 は MYB ファミリーに属し,JA によっ て強く誘導されていた.しかしYeast two-hybrid 法による 解析で,JMTF1 は OsJAZ8 を含むすべての OsJAZ タンパク 質 と の 直 接 的 な 相 互 作 用 は 見 ら れ な か っ た こ と か ら, JMTF1 は OsJAZ8 の間接的制御下で機能していることが示 唆された.さらにJMTF1 が保有する DNA 結合ドメインは ある特定のMYB consensus motif を認識していることが明 らかとなった.以上の結果から,JMTF1 は特定の MYB consensus motif と結合し,OsJAZ8 が介在する JA シグナル 伝達機構において重要な役割を持つ可能性が示された.
(香川大農) (2) 玉置大介・宍戸穂高・山田祥子・秋光和也・五味 剣二 イネにおいてジャスモン酸シグナル制御因子OsJAZ8 と相互作用する転写因子の解析 Tamaoki, D., Shishido, H., Yamada, S., Akimitsu, K. and Gomi, K.: Analysis of a OsJAZ8-Interacting Transcription Factor in Rice. 最近の我々の研究 により,イネ白葉枯病抵抗性においてOsJAZ8 を介した ジャスモン酸(JA)シグナルが重要な役割を果たしている ことが明らかとなっている.本研究では,OsJAZ8 を介し たJA シグナル経路を詳細に解析するために,OsJAZ8 と直 接相互作用する転写因子を探索した.まずイネのJA 誘導 性遺伝子群の中から,JAZ-interacting domain(JID)を持つ 転写因子を探索したところ1 つの遺伝子を見出した.この 遺 伝 子 はYeast two-hybrid 法により OsJAZ8 と JID 依存的
に相互作用することが示されたので,我々はこの遺伝子を OsJAZ8 INTERACTING GENE 1(JIGEN1) と 命 名 し た. JIGEN1 は JA 処理により発現が誘導される一方で,JA 非 感受性を示すOsJAZ8∆C 過剰発現イネでは JA による発現 誘導は示さなかった.またGFP 融合タンパク質を用いた 解析の結果,JIGEN1 は核に局在した.加えて,ゲルシフ ト解析により,JIGEN1 は G-BOX の配列に特異的に結合 することが示された.以上の結果から,JIGEN1 は OsJAZ8 を介したJA シグナル経路において重要な転写因子である 可能性が示された. (香川大農) (3) 谷口しづく・細川 - 篠永有美・玉置大介・山田祥子・ 秋光和也・五味剣二 イネにおけるジャスモン酸応答性揮 発性物質の白葉枯病抵抗性における役割の解析 Taniguchi, S., Hosokawa-Shinonaga, Y., Tamaoki, D., Yamada, S., Akimitsu, K. and Gomi, K.: Role of a Jasmonate-Induced Volatile in Resistance to Rice Bacterial Blight in Rice. 当研究室ではこ れまで,ジャスモン酸(JA)シグナルがイネ白葉枯病抵抗 性において重要な役割を担っていることを明らかにしてい る.また,JA は植物揮発性物質の生産に関与することが 明らかとなりつつある.そこで,JA 応答性揮発性物質の 白葉枯病抵抗性における役割を調べた.その結果,JA に よってイネに蓄積する揮発性物質を複数同定した.本研究 では,その中でもコントロールでは検出されなかった,モ ノテルペンであるリナロールに着目した.リナロールは白 葉枯病菌に対する抗菌活性はなかったが,曝露処理すると 白葉枯病抵抗性を誘導した.また,リナロール合成酵素遺 伝子(OsLIS)過剰発現イネは白葉枯病に対して抵抗性を 示し,多くの抵抗性関連遺伝子が恒常的に発現していた. さらに,JA 非感受性組換えイネにおいては,JA によって 誘導されるOsLIS の発現やリナロールの蓄積が見られな かった.以上のことから,リナロールはJA によって誘導 される白葉枯病抵抗性においてシグナル物質として重要な 役割を担っていることが示唆された. (香川大農) (4) 出雲直也・植出悠紀・野﨑美沙・大川ちはる・石川 敦司 シロイヌナズナのイネいもち病菌に対する非宿主抵
抗性におけるMPK6 と AtRbohF の関与 Izumo, N., Uede, Y., Nozaki, M., Okawa, C. and Ishikawa, A.: MPK6 and AtRbohF Contribute to Nonhost Resistance to Magnaporthe oryzae in Arabidopsis thaliana. イネいもち病菌が引き起こ すイネいもち病は,イネに大きな被害をもたらす重要な病 害である.イネいもち病は植物-植物病原菌相互作用研究 のモデル系となっているが,他の植物におけるイネいもち 病菌に対する非宿主抵抗性については未だよく分かってい ない.我々は,シロイヌナズナpen2 mpk6 変異体において, イネいもち病菌に対する侵入抵抗性と侵入後抵抗性が pen2 変異体に比べて低下することを見いだした.さらに 我々は,シロイヌナズナpen2 atrbohF 変異体において,イ ネいもち病菌に対する侵入後抵抗性がpen2 変異体に比べ て著しく低下することも見いだした.これらの結果から, MPK6 と AtRbohF は,シロイヌナズナのイネいもち病菌 に対する非宿主抵抗性において正の制御因子として機能し ていることが示唆された. (福井県立大生資) (5) 安達広明1・石濱伸明2・中野孝明3・宮川典子4・ 吉岡美樹1・八丈野孝5・白須 賢2・吉岡博文1 複数の WRKY 型転写因子は抵抗性遺伝子に依存した活性酸素生 産に関与する Adachi, H., Ishihama, N., Nakano, T., Miyagawa, N., Yoshioka, M., Yaeno, T., Shirasu, K. and Yoshioka H.: Multiple WRKY Transcription Factors Are Involved in R Gene-Mediated ROS Burst. 植物免疫応答のシグナル伝達 において,MAPK カスケードが主要な役割を果たしてい る.ベンサミアナタバコのMEK2-SIPK/WIPK カスケード の下流では,NADPH オキシダーゼである NbRBOHB に依 存した活性酸素種(ROS)の生産が誘導される.これまで に,SIPK/WIPK の基質としていくつかの WRKY 型転写因 子が単離され,WRKY8 を含む 4 つの WRKY の疑似リン酸 化変異体を単独で高発現させると,NbRBOHB 遺伝子誘導, ROS 生産や細胞死が亢進される.一方,これらの WRKY を同時にノックダウンすることで活性型MEK2 誘導によ るROS 生産および細胞死が抑制された.今回,flg22 によっ て誘導されるROS 生産は,4 つのWRKY 遺伝子を同時に ノックダウンしても抑制されなかったが,Avr3a/R3a 誘導 によるNbRBOHB プロモーター活性や ROS 生産は,これ らのWRKY に依存することが見いだされた.これらの結 果は,MEK2-SIPK/WIPK カスケードの下流で機能する 4 つのWRKY が,ETI(effector-triggered immunity)におけ るROS 生産を正に制御することを示している.
(1名大院生農・2理研PSC・3住友化学・
4JA 全農営岐セ・5愛媛大農)
(6) 白石佑太郎・吉岡美樹・安達広明・吉岡博文 リ ン酸化修飾によるNADPH オキシダーゼの活性化には複 数のCDPK が関与する Shiraishi, Y., Yoshioka, M., Adachi, H. and Yoshioka, H.: Multiple CDPKs Are Involved in the Activation Process of NADPH Oxidase via Phosphorylation. NADPH オキシダーゼである StRBOHB は,ジャガイモの 塊茎組織において発現し,CDPK によって直接リン酸化さ れることで活性酸素種(ROS)を生成すると考えられてい る.葉組織において発現するStRBOHC,およびベンサミ ア ナ タ バ コ の オ ル ソ ロ グ あ るNbRBOHB は,いずれも StRBOHB と同様のリン酸化モチーフを保持している.今 回,StRBOHC と NbRBOHB に対する CDPK の役割につい て調べた.活性型NbCDPK5 と両 RBOH とをベンサミア ナタバコ葉に共発現させると,いずれの場合においても激 しいROS の生成が誘導された.In vitro でリン酸化が確認 されたStRBOHC と NbRBOHB のセリンをアラニンに置 換すると,NbCDPK5 によって誘導される ROS 生成は顕 著に抑制された.さらに,NbCDPK5 と同じグループ I に 属する3 つの CDPK を同時にサイレンシングすると,病害 応答性MAPK,INF1,Avr3a/R3a 誘導による ROS 生成が抑 制されることを見いだした.以上の結果から,NbCDPK5 を含む複数のCDPK が,NADPH オキシダーゼの活性化に 関与しているものと考えられた. (名大院生農) (7) 吉岡美樹1・白石佑太郎1・山口公志2・川崎 努2・ 吉岡博文1 イネのOsRLCK185 は NADPH オキシダーゼ で あ るOsRBOHI を介して活性酸素生成を誘導する Yoshioka, M., Shiraishi, Y., Yamaguchi, K., Kawasaki, T. and Yoshioka, H.: OsRLCK185 Induces ROS Burst via Rice NADPH Oxidase, OsRBOHI. イネの免疫反応には,receptor-like cytoplasmic kinase(RLCK)である OsRLCK185 が重要 な役割を担っており,これを抑制したイネでは,病原糸状 菌の構成成分であるキチンによって誘導されるMAP キ ナーゼ活性や,活性酸素種(ROS)の生成が抑制される. これまでに,葉組織で発現するジャガイモやベンサミアナ タバコのNADPH オキシダーゼである StRBOHC および NbRBOHB が,病害応答による ROS を生成することを報告 してきた.今回,原形質膜に局在するOsRLCK185 による ROS の生成誘導機構を探るため,これら RBOH のオルソ ログであると考えられるイネのOsRBOHI を単離した.イ ネをキチンやペプチドグリカンで処理すると,処理後3 時 間までにOsRBOHI 遺伝子発現が誘導されることを確認し た.さらに,OsRLCK185 と OsRBOHI とをベンサミアナタ バコ葉で共発現させると,顕著なROS 生成が確認された. 以上のことから,OsRLCK185 は OsRBOHI を介して ROS
生成を誘導する可能性が考えられた.
(1名大院生農・2近大農) (8) 三田村梨帆1・野元美佳2・森 毅1・時澤睦朋3・ 秋光和也1・山本義治4・多田安臣5 一酸化窒素が活性化 するジャスモン酸シグナル伝達機構の解明 Mitamura, R., Nomoto, M., Mori, T., Tokizawa, M., Akimitsu, K., Yamamoto, Y. and Tada, Y.: Elucidation of Molecular Mechanism by Which Nitric Oxide Activates Jasmonate Signaling. 植物が病原菌感 染時に誘導するサリチル酸(SA)やジャスモン酸(JA)を 介した抵抗性反応において,一酸化窒素(NO)は必須の シグナル伝達物質として機能するがその制御メカニズムは 十分に解明されていない.本研究では,NO の初期認識機 構を解明するために,シロイヌナズナの野生型植物(Col-0) に,NO 供与体である GSNO を経時的に処理し,マイクロ アレイ解析を行った.NO により有意に発現上昇した遺伝 子群には,JA 応答性遺伝子が数多く確認された.次に, シスエレメント予測プログラムを用いて,NO 応答性転写 因子結合モチーフの同定を試みた結果,JA 応答に関与す るERF,AP2 転写因子結合モチーフである GCC-box,JA 応答性転写因子であるMYC2 結合モチーフ等が確認され た.NO 処理により,JA シグナルのリプレッサーである JAZ と MYC2 の結合が抑制されることから,NO は COI1-JAZ-MYC2 モジュールを介して遺伝子発現を制御すること が示唆された. (1香川大農・2愛媛大院連合農・ 3岐阜大院連合農・4岐阜大応生・5香川大総セ) (9) 石川和也1・山口公志1・井上健人1・坂本一明1・ 村口由一郎1・北野詩織1・小川まどか1・津下誠治2・川崎 努1 植物免疫におけるOsPUB44 の機能解析 Ishikawa, K., Yamaguchi, K., Inoue, K., Sakamoto, K., Muraguchi, Y., Kitano, S., Ogawa, M., Tsuge, S. and Kawasaki, T.: OsPUB44 Functions as a Positive Regulator of PTI in Rice. これまで に我々は,イネのPAMPs 誘導抵抗性を強く阻害するエフェ クターであるXoo3222 の宿主ターゲットとして OsPUB44 を同定している.さらに,Xoo3222 は OsPUB44 の U-box ドメインに特異的に存在する3 個のアミノ酸と結合するこ とで,OsPUB44 と特異的に結合し,そのユビキチンリガー ゼ活性を阻害することも明らかにしている.本発表では, 植物免疫におけるOsPUB44 の機能について解析を行っ た.OsPUB44-RNAi 発現抑制体を作出し,PAMPs の一種 であるペプチドグリカンの処理により誘導される防御応答 遺伝子の解析を行った.その結果,OsPUB44-RNAi 発現抑 制体ではこれら防御応答遺伝子の発現が顕著に抑制されて いた.このことから,OsPUB44 はペプチドグリカンによっ て誘導されるイネの防御応答を正に制御することが示唆さ れた.さらに,酵母ツーハイブリッドスクリーニングによ り得たOsPUB44 のターゲット因子の解析も含めて,イネ の植物免疫におけるOsPUB44 の機能について報告する. (1近畿大農・2京都府大院生命) (10) 大津美奈・柴田裕介・森 仁志・川北一人・竹本 大吾 ベンサミアナタバコの核膜孔複合体タンパク質 Nup75 は MAPK の発現制御を介して防御応答を調節する Otsu, M., Shibata, Y., Mori, H., Kawakita, K. and Takemoto, D.: A Nuclear Pore Complex Protein, Nup75, Regulates Defense Responses via Expression of a Specific MAPK in Nicotiana benthamiana. これまでに,核膜孔の構成タンパ ク質であるNup75 がベンサミアナタバコの疫病菌抵抗性 に必須であること,NbNup75 サイレンシング株において エチレン生成を介して誘導されるファイトアレキシンの蓄 積が抑制されることを明らかにした.今回,抵抗性に関与 するMAPK 遺伝子の発現への NbNup75 サイレンシングの 影響を調べた.ベンサミアナタバコにジャガイモ疫病菌由 来のエリシターであるINF1 を処理すると,エチレン生成 誘導に関与するNbWIPK の発現が INF1 処理 1 時間後およ び12 時間後に増加しており,二層性の発現誘導が認めら れた.また,NbNup75 サイレンシング株における一層目 のNbWIPK 発現誘導は,対象株と同程度であったのに対 して,二層目の発現量はNbNup75 サイレンシング株での み顕著に減少していた.これらの結果から,NbNup75 は 防御応答初期の応答には関与せず,MEK2 活性化から二層 目のNbWIPK の発現誘導に至る情報伝達を調節する因子 の核膜孔での輸送を制御しており,エチレン生合成を介し たファイトアレキシン生成誘導の調節に関与すると推定さ れた. (名大院生農) (11) 末本遥香1・福永 聡1・石川敦司2・高野義孝1 シロイヌナズナpen2 変異体への不適応型炭疽病菌の侵入 後における植物ディフェンシンの発現誘導 Suemoto, H., Fukunaga, S., Ishikawa, A. and Takano, Y.: Induced Expression of Plant Defensin in Arabidopsis pen2 Mutant after Invasion of Non-adapted Anthracnose Pathogen. クワ炭疽病菌に対す るシロイヌナズナの非宿主抵抗性は侵入前および侵入後の 防御機構によって成立している.このうち,侵入前抵抗反 応時に植物ディフェンシン遺伝子(PDF)の発現誘導が伴 い,さらに本発現誘導にはEDR1 と呼ばれるキナーゼ遺伝 子が関与することを明らかにしている.今回,侵入前抵抗 性に欠損を示すpen2 変異体を用いて,侵入後の PDF 遺伝 子の発現を調査した.その結果,クワ炭疽病菌の侵入後に pen2 変異体において PDF1.2a 遺伝子がより強く誘導され ることを見出した.本結果は,PDF1.2a が侵入後抵抗反応
時に強く誘導される可能性を示した.現在,PDF1.2a プロ モーターとGFP の融合遺伝子をpen2 変異体に導入してお り,今後,クワ炭疽病菌の侵入前および侵入後におけるそ のGFP 蛍光パターンを調査し,PDF1.2a の本発現誘導につ いて組織レベルで解析していく予定である.また,pen2 ein2 および pen2 coi1 変異体では,クワ炭疽病菌の侵入後に
おいてPDF1.2a の顕著な発現誘導は見られず,EIN2 およ びCOI1 が侵入後の PDF 誘導に関わることが示唆された. (1京大院農・2福井県大生資) (12) 福元健志1・井上 恵1・松平一志1・加野彰人1・ 大谷耕平1・何森 健1・田島茂行1・重松由夫2・小原 敏明2・河西史人2・石田 豊3・市村和也1・多田安臣1・ 五味剣二1・秋光和也1 希少糖の植物への作用(30): D-Allose 処理により HXK 依存的に発現制御されるオー キシン関連遺伝子の選抜 Fukumoto, T., Inoue, M., Matsudaira, K., Kano, A., Ohtani, K., Izumori, K., Tajima, S., Shigematsu, Y., Ohara, T., Kasai, F., Ishida, Y., Ichimura, K., Tada, Y., Gomi, K. and Akimitsu, K.: Effects of Rare Sugars to Plants (30): Screening of the Auxin-Related Genes Regulated by Hexokinase-Dependent Sugar Phosphorylation of D-allose. 我々は希少糖 の植物病害防除場面での利用を目指し,D-allose の植物へ の作用機構の解析を行っている.これまでに,希少糖の一 つであるD-allose がジベレリン(GA)シグナルを負に制御 してイネの草丈伸長を抑制することを明らかにし,D-allose 利用によるイネ馬鹿苗病の病害防除の可能性を提案してき た.また,D-allose による生長抑制作用には,HXK によ るD-allose の C6 位の糖リン酸化が必須である事を報告し, GA と拮抗作用を示す ABA のシグナルの活性化にも D-allose の糖リン酸化が関与する事を報告した.今回,シロイヌナ ズナのgin2 変異体およびその形質転換体を用いて,D-allose のリン酸化依存的に発現制御される遺伝子群をqRT-PCR 法により解析し,オーキシン関連遺伝子であるPIN3/EIR1 とARF3 の HXK 依存的な発現抑制を明らかにした. (1香川大農・2三井化学アグロ・3四国総合研) (13) 井上 恵1・加野彰人1・福元健志1・大谷耕平1・ 何森 健1・田島茂行1・小原敏明2・重松由夫2・河西 史人2・石田 豊3・市村和也1・多田安臣1・五味剣二1・ 秋光和也1 希少糖の植物への作用(31):D-Allose に誘導 されるイネ活性酸素生産酵素複合体に関する研究 Inoue, M., Kano, A., Fukumoto, T., Ohtani, K., Izumori, K., Tajima, S., Ohara, T., Shigematsu, Y., Kasai, F., Ishida, Y., Ichimura, K., Tada, Y., Gomi, K. and Akimitsu, K.: Effects of Rare Sugars to Plants (31): Study of NADPH Oxidase Complex Induced by D-allose in Rice. 希少糖の 1 つである D-allose は,イネの
植物体内でC6 位がリン酸化されて D-allose 6-phosphate (A6P)に変換され,NADPH オキシダーゼに依存した ROS の蓄積とLesion mimic 様褐色斑点の形成を伴い,白葉枯病 に対する耐病性を誘導することを報告してきた.これまで の研究で,イネNADPH オキシダーゼの中で,特にOsRbohC 遺伝子発現がD-allose 処理で誘導され,また OsRbohC の 過剰発現イネはD-allose に高感受性となった.そこで, OsRbohC の N 末端領域と相互作用するイネタンパク質の 探索に向け,yeast two hybrid 法を用いて D-allose 処理葉 より抽出したtotal RNA から作製した cDNA ライブラリー をスクリーニングして,約100 個の陽性クローンの挿入配 列を確認し,これらの中の3 つのクローンについての詳細 解析が現在進行中である. (1香川大農・2三井化学アグロ・3四国総合研) (14) 原 田 賢・ 久 保 康 之 ウ リ 類 炭 疽 菌 に お け る CoRAS2 は胞子発芽や病原性に必要であり,上流因子と
してComekk1-Cmk1 経路に関与する Harata, K. and Kubo, Y.: CoRAS2 Gene Is Required for Conidial Germination and Pathogenesis and Is Involved in Commek1-Cmk1 Signaling Pathway as an Upstream Factor in Colletotrichum orbiculare. 我々はこれまでにRas GTPase activating protein Coira1 は感 染器官の形態形成や病原性に関与し,Coras2 を介して細胞 内cAMP 内在量を制御することを報告した.今回は,Coras2 が感染器官の形態形成や病原性を制御するMAPK 経路の Comekk1-Cmk1 経路の上流因子として関与しているかを 検討した.まず人工基質上における∆coras2 株の感染器官 の形態形成や病原性について評価した.その結果,∆coras2 株は顕著な発芽欠損を示し,宿主への病原性が低下した. 次にCoRAS2 は Comekk1-Cmk1 経路の上流因子であるか を検討するために,∆coras2 株に恒常活性型 CoMEKK1 及び ∆comekk1 株に恒常活性型 CoRAS2 を導入した菌株を作出 した.人工基質上において∆coras2 株に恒常活性型 CoMEKK1 を導入した菌株は発芽,付着器を形成した一方で,∆comekk1 株に恒常活性型CoRAS2 導入した菌株は発芽欠損を示し た.以上より,CoRAS2 は Comekk1 の上流因子である可 能性が示唆された.現在,∆coras2 株における Cmk1 のリン 酸化を定量的に評価している. (京都府大院生環) (15) 深田史美・坂口 歩・久保康之 ウリ類炭疽病菌 のCoBub2/CoBfa1 は付着器分化過程における G1/S 期の進 行制御および病原性に関与する Fukada, F., Sakaguchi, A. and Kubo, Y.: CoBub2/CoBfa1 Is Involved in the Regulation of G1/ S Phase Progression during Appressorium Development and Pathogenesis in Colletotrichum orbiculare. ウリ類炭疽病菌に おける付着器形成欠損株のスクリーニングにより,出芽
酵母において核分裂終了機構を制御するSpindle position checkpoint(SPOC)の構成要素BUB2 のホモログ CoBUB2 を同定し,本遺伝子がウリ類炭疽病菌における侵入器官の形 態分化およびG1/S 期の進行に関与することを報告している. 今回,出芽酵母においてBub2 が Bfa1 と GTPase 活性化 タンパク質複合体を構成することから,BFA1 のホモログ CoBFA1 の機能解析を行った.cobfa1 破壊株は cobub2 破壊 株と同様に侵入器官の形態異常と宿主植物への病原性の低 下を示し,G1/S 期の移行時期が野生株と比較して約 2 時 間早まることを見出した.さらに,Bub2/Bfa1 複合体の下 流因子でありGTP 結合タンパク質をコードするTEM1 の ホモログCoTEM1 の破壊株を作出し,核の挙動解析を行っ た結果,cotem1 破壊株は発芽過程における隔壁形成を伴う 2 核胞子の割合が野生株と比較して増加することが認めら れた.以上より,ウリ類炭疽病菌の付着器分化過程におい てCoBub2/CoBfa1 が G1/S 期の進行に関与する可能性が示 唆された. (京都府大院生環) (16) 河下美都里・坂口 歩・久保康之・辻 元人 ウ リ類炭疽病菌のCoTEA4 は非生物的シグナルの受容を介
した付着器形成に関与する Kawashimo, M., Sakaguchi, A., Kubo, Y. and Tsuji, G.: Colletotrichum orbiculare CoTEA4 Is Involved in Appressorium Development Triggered by Abiotic Factors. ウリ類炭疽病菌における付着器形成の制御には, 人工基質上における非生物的因子および宿主植物に由来す る生物的因子の受容を介した2 つの異なる経路の関与が示 唆されている.分裂酵母TEA1 ホモログ CoKEL2 は前者に 特異的に関与している.分裂酵母においてTea1 は細胞端 にて種々のタンパク質と複合体を形成し,極性成長を制御 することが明らかになっている.今回,本菌におけるTea1 複合体構成因子Tea4,Mod5 をコードする遺伝子のホモログ CoTEA4 および CoMOD5 について機能解析を行った.cotea4 破壊株は人工基質上で側部発芽する異常付着器を形成した が,宿主植物上では正常付着器を形成した.一方,comod5 破壊株はcotea4 破壊株や cokel2 破壊株と同様にコロニー生 育にやや遅延が認められたものの,付着器形成に異常は認 められなかった.以上より,CoTEA4 は非生物的因子の受 容を介した付着器形成の制御に関与していることが示唆さ れた. (京都府大院生環) (17) 勝本真衣1・小川将興1・石本卓也1・二階堂佐紀1・ 大谷耕平1・溝淵優希1・宮本蓉子1・増中 章1・福元 健志1・柘植尚志2・山本幹博3・五味剣二1・多田安臣1・ 市村和也1・秋光和也1 ACT 毒素生合成における NRPS をコードするACTTS4 遺伝子の機能解析 Katsumoto, M.,
Ogawa, M., Ishimoto, T., Nikaido, S., Ohtani, K., Mizobuchi, Y.,
Miyamoto, Y., Masunaka, A., Fukumoto, T., Tsuge, T., Yamamoto, M., Gomi, K., Tada, Y., Ichimura, K. and Akimitsu, K.: Studies on Role of ACTTS4 Encoding NRPS for Host-Selective ACT-toxin Production. 病原糸状菌であるAlternaria alternata タンゼリン系統の持つゲノム BAC clone のシーク エンス解析を行い,ACT 毒素生産菌株ゲノムにのみ座乗 し,nonribosomal peptide synthatase(NRPS)をコードす
る遺伝子ACTTS4 に着目して機能解析を行った.ACTTS4 は3 つの機能ドメインを保有する典型的な NRPS をコード する.標的遺伝子破壊法により2 コピー破壊株を作成した ところ,ACT 毒素生産量の抑制が見られたが,ACTTS4 の 転写・ACT 毒素生産とも完全には停止しなかったため,本 遺伝子はACT 毒素生産菌ゲノムに 3 コピー以上存在する と考えられた.そこで,ACTTS4 の RNA silencing 株を作 出した結果,RNA silencing 株ではACTTS4 の転写物は検 出不可能になり,ACT 毒素生産能は欠失し,ACTTS4 は ACT 毒素生産に必須な遺伝子であることが明確になった. (1香川大農・2名大院生農・3岡大院自然科学) (18) 二階堂佐紀・大谷耕平・和泉悠利子・増中 章・ 五味剣二・多田安臣・市村和也・秋光和也 Thioesterase/ cyclase をコードする Alternaria leaf spot 病菌遺伝子の ACR 毒素生合成における役割の検討 Nikaido, S., Ohtani, K., Izumi, Y., Masunaka, A., Gomi, K., Tada, Y., Ichimura, K. and Akimitsu, K.: Role Analysis of Alternaria Leaf Spot Pathogen Gene Encoding a Thioesterase/Cyclase for the Biosynthesis of Host-Selective ACR-toxin. 宿主特異的 ACR 毒素を生産す る病原糸状菌Alternaria alternata ラフレモン系統は Alternaria leaf spot 病を引き起こすことが知られている.これまでに 本研究室では,ACR 毒素生合成遺伝子群はクラスター化 して約1.5 Mb の小型染色体上に座乗していることを明らか にしている.そこで,1.5 Mb 小型染色体をドラフトシー ケンス解析して,得られたcontig 配列から ORFs を特定し, ACR 毒素生合成経路を担う hydroxylase をコードするACRTS1 と,polyketide synthase をコードするACRTS2 を明らかにし てきた.今回,1.5 Mb 小型染色体配列から,ACR 毒素生 産菌ゲノムにのみ座乗し,全長582 bp で推定アミノ酸 194 個のthioesterase/cyclase をコードすると推定された ORF を選抜し,標的遺伝子破壊法を用いて本遺伝子の毒素生合 成における役割に関する機能解析を進めた.その結果,本 遺伝子の1 コピー破壊株で,本遺伝子の転写,毒素生産の いずれも減少し,本遺伝子がACR 毒素生合成に関与して いることが示唆された. (香川大農) (19) 大谷耕平・小川実可子・北川耕次・安田晋輔・西村 聡・三宅ちか子・多々納智・小野由紀子・多田安臣・市村
和也・五味剣二・秋光和也 ACR 毒素感受性遺伝子 ACRS mRNA 修飾に関わる複合体形成タンパク質の解析 Ohtani, K., Ogawa, M., Kitagawa, K., Yasuda, S., Nishimura, S., Miyake, C., Tatano, S., Ono, Y., Tada, Y., Ichimura, K., Gomi, K. and Akimitsu, K.: Analysis of a Protein Complex for Processing of ACR-toxin Susceptible Gene ACRS mRNA. Alternaria alternata ラフレ モン系統は宿主カンキツであるラフレモンにのみ病原性を 示し,その病原性因子は本菌の生産する宿主特異的ACR 毒素である.本毒素に対するカンキツ品種の感受化決定機 構はミトコンドリア(Mt)ゲノム内の ACR 毒素感受性遺
伝子(ACRS)mRNA の修飾であり,毒素非感受性品種で
はACRSmRNA 修飾に Mt 局在の約 30 kDa の ACRSmRNA 結合タンパク質(AmBP30)が関与すること,本タンパク 質はACRSmRNA 結合能を持つが単独では ACRSmRNA の 修飾能を持たず,Mt 内でタンパク質複合体を形成するこ とを報告してきた.抗AmBP30 抗体等による免疫沈降実 験により得られたタンパク質であるtRNA pseudouridine synthase(tRPS),Peptidyl-tRNA hydrolase(PtRH), Prolyl-tRNA synthetase(PtRS)は tRNA 修飾や合成に関与 する事が報告されている.tRPS と PtRH は AmBP30 と相 互作用を示し,deletion 解析や点変異解析により AmBP30 との相互作用を担う領域を特定した.現在,AmBP30 を中 心とした複合体による特異性決定機構に関して検討を進め ている. (香川大農) (20) 近藤日佳理1・原 歩美1・播本佳明1・山本幹博2・ 秋光和也3・柘植尚志1 イチゴ黒斑病菌のAF 毒素生合 成遺 伝 子 ク ラ ス タ ー に コ ー ド さ れ るAFT11 の機能と Alternaria alternata 病原菌における分布 Kondou, H., Hara,
A., Harimoto, Y., Yamamoto, M., Akimitsu, K. and Tsuge, T.: Function of AFT11 Encoded by the AF-toxin Biosynthetic Gene Cluster in the Strawberry Pathotype of Alternaria alternata and Its Distribution in A. alternata Pathogens. 先 に,イチゴ黒斑病菌のAF 毒素生合成に関与する 22 個の AFT 遺伝子を同定した.これら遺伝子のうち 15 個は, Alternaria alternata 病原菌のうちナシ黒斑病菌(AK 毒素生 産菌)とタンゼリンbrown spot 菌(ACT 毒素生産菌)に も相同配列が存在することから,3 病原菌の毒素に共通な 部分構造(エポキシデカトリエン酸)の生合成に関与する と推定した.また,これらのうち3 遺伝子(AFT8,AFT11 およびAFT12)が,AF 毒素生産を抑制することを見出した. 本研究では,cytochrome P450 monooxygenase をコードす るAFT11 について,3 病原菌の相同遺伝子の構造を比較 した.その結果,ナシ菌とタンゼリン菌の調査したすべて の菌株が,AFT11 と塩基配列が 90%以上一致する相同配 列を有するが,開始コドンATG が CTG に変異しており, 偽遺伝子であることが示唆された.さらに,AFT11 をナ シ菌に導入したところ,AK 毒素およびエポキシデカトリ エン酸の生産性が抑制され,Aft11 がエポキシデカトリエ ン酸またはその前駆物質を他の物質に変換する酵素である ことがさらに示唆された. (1名大院生農・2岡山大農・3香川大農) (21) 赤木靖典1・石原 亨1・柘植尚志2・難波栄二3・ 児玉基一朗1 AAL 毒素生合成における aminotransferase ALT4 の基質特異性および病原性との関連 Akagi, Y., Ishihara, A., Tsuge, T., Nanba, E. and Kodama, M.: Substrate Specificity of an Aminotransferase ALT4 and Its Relation to the Pathogenicity of the Tomato Pathotype of Alternaria alternata. トマトアル ターナリア茎枯病菌は,宿主特異的AAL 毒素を生産し, 特定のトマト品種に著しい壊死病斑を引き起こす.本毒素 は,Fusarium 属菌が生産する fumonisin の構造類縁体であ る.fumonisin は構造の違いにより FA,FB,FC および FP に大別されており,FB および FC は,マイコトキシンと しての毒性が高いことが報告されている.FB と FC の構 造的な違いはアミノ基にあり,FB はアラニン,FC はグリ シン由来である.AAL 毒素はグリシン由来のアミノ基を 有し,構造的にFC と最も類似している.これらアミノ基 の 付 加 に は,fumonisin ではFUM8,AAL 毒素では ALT4 が関与していると示唆されている.FB 生産株と FC 生産株 におけるFUM8 のアミノ酸配列アラインメントから,基 質選択性に関与すると推定される部位において相違が見出 され,ALT4 ではこの部位が FC と同一であった.ALT4 KO 株に本部位を FB タイプに変換した改変ALT4 を導入 した変異株においては,アミノ基がアラニン由来に変化し たFB タイプ AAL 毒素が新たに検出された.また,本ALT4 変異株の病原性は著しく低下した. (1鳥取大農・2名大院生農・3鳥取大医) (22) 高尾和実1・赤木靖典1・柘植尚志2・難波英二3・ 児玉基一朗1 非病原性Alternaria alternata における宿 主特異的AAL 毒素生合成遺伝子クラスター導入菌株の作
出と解析 Takao, K., Akagi, Y., Tsuge, T., Nanba, E. and Kodama, M.: Generation and Analysis of Alternaria alternata Transgenic Strains Harboring Entire ALT Cluster for Host-Specific AAL-toxin Production. トマトアルターナリア茎枯病菌(Alternaria alternata tomato pathotype,茎枯病菌)は宿主特異的 AAL 毒素を生産し,特定のトマト品種に対して病原性を示す. AAL 毒素生合成には,少なくとも 13 遺伝子からなる約 100 kb のALT クラスターが関与しており,本クラスターは 茎枯病菌のみが保有するconditionally dispensable chromosome
(CDC)に座乗している.これまでの研究から,本菌にお けるAAL 毒素生産能と病原性の獲得には,CDC の水平移 動が関与している可能性が示唆されている.一方,CDC に座乗するALT クラスターのみで毒素生産能および病原 性を付与できるかは不明である.本研究では,ALT クラ スターをlong PCR により 4 断片に分けて増幅し,毒素を 生産しない非病原性A. alternata 系統に co-transformation により導入した.その結果,13 のALT 遺伝子すべてが導 入された可能性のある変異菌株が得られた.さらに,本 ALT クラスター導入菌株においては,全ての ALT クラス ター遺伝子の発現が確認された.現在,本菌の病原性およ び毒素生産能を検討中である. (1鳥取大農・2名大院生農・3鳥取大医) (23) 春木洋平1・赤木靖典1・高尾和実1・下元祥史2・ 曵地康史3・児玉基一朗1 トマト褐色輪紋病菌における ゲノムドラフト配列に基づいた二次代謝産物生合成遺伝子 の解析 Haruki, Y., Akagi, Y., Takao, K., Shimomoto, Y., Hikichi, Y. and. Kodama, M.: Analysis of Secondary Metabolite Genes Based on Draft Genome Sequences of Corynespora casiicola Causing Corynespora Target Spot of Tomato. Corynespora cassiicola には,トマト,キュウリ,シソなどに対してそ れぞれ病原性を示す異なる寄生性グループが存在する.そ の中で,トマト褐色輪紋病菌は宿主特異的CCT 毒素を生 産し,トマト各品種に病原性を示すことが報告されている. 本研究では,C. cassiicola における二次代謝産物生合成と 病原性の関連を明らかにするため,本菌ゲノムドラフト解 析を行い,ポリケチド合成酵素(PKS)遺伝子および非リ ボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)遺伝子クラスター の同定と機能解析を試みた.ドラフトゲノムデータより, 本菌ゲノム上には少なくとも28 個のPKS 遺伝子および 6 個のNRPS 遺伝子が存在することが示唆された.さらに これら遺伝子のフランキング領域の解析により,多くの場 合,二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの存在が示され た.NRPS 遺伝子の中には,トウモロコシごま葉枯病菌に おける病原性関連NRPS 遺伝子 NPS6 などと高い相同性 を示す遺伝子が見出された.現在,遺伝子ターゲッティン グにより,これら遺伝子の機能解析を進めている. (1鳥取大農・2高知農技セ・3高知大農) (24) 島岡舞衣1・西堀由記1・神谷信孝1・藤 晋一2・ 小嶋美紀子3・榊原 均3・北野英己1・柘植尚志1 イネ ばか苗病菌のジベレリン生合成酵素遺伝子des および P450-3 はイネに対する病原力を抑制している Shimaoka, M., Nishibori, Y., Kamiya, N., Fuji, S., Kojima, M., Sakakibara, H., Kitano, H. and Tsuge, T.: The Gibberellin Biosynthetic Genes des and
P450-3 of Gbberella fujikuroi MP-C Suppress Virulence of the Pathogen to Rice Plants. イ ネ ば か 苗 病 菌 の ジ ベ レ リ ン (GA)生合成には,7 つの酵素遺伝子( ggs2,cps/ks,P450-4,P450-1,P450-2,des および P450-3)が関与し,これら 遺伝子が約18 kb のゲノム領域にクラスターとして存在す る.本菌が主に生産するGA3は生合成経路の最終産物で
ある.本研究では,イネばか苗病菌から∆P450-1 株(GA 非 生 産 株),∆P450-2 株(GA14生 産 株),∆des 株(GA1お
よびGA4生産株),∆P450-3 株(GA7生産株),∆des/∆P450-3 株(GA4生産株)を作出した.各変異株をイネ種子に接種 し,素寒天培地および培養土で育成し,経時的にイネの草 丈を観察した.その結果,∆P450-1 株だけでなく,∆P450-2 株もほとんど徒長を引き起こさなかった.一方,∆des 株, ∆P450-3 株および ∆des/∆P450-3 株は,野生株に比べ,よ り激しい徒長症状を引き起こした.以上の結果は,ばか苗 病菌では,GA3生合成の最終段階またはその前段階をそれ ぞれ触媒する酵素遺伝子P450-3,des の変異により病原力 が増強すること,すなわち両遺伝子の機能により病原力が 抑制されていることを示唆した. (1名大院生農・2秋田県大生資・3理研RCSRS) (25) Kieu Pham Thi Minh, Inoue, Y., Ba Van Vu, Ikeda, K. and Nakayashiki, H. MoSET1 Catalyzing Methylation of Histone H3 Lysine 4 in Magnaporthe oryzae Is Involved in Both Gene Activation and Suppression during Infection-Related Morphogenesis. We previously reported that knock-out M. oryzae mutants of MoSET1 (formerly MoHMT4) were severely impaired in appressorium formation and completely lost pathogenicity on the host plant wheat. Western blotting analysis revealed that MoSET1 catalyzed methylation of histone H3 lysine 4 (H3K4me). ChIP-seq analysis with anti-H3K4me2 and anti-H3K4me3 antibodies showed that H3K4me2 and H3K4me3 were enriched along coding regions. RNA-seq analysis revealed that enrichment of H3K4me2 was often but not always correlated with up-regulation of genes during appressorium formation. We also performed RNA-seq analysis of the MoSET1-KO mutant. The results indicated that a subset of genes were up-regulated while another subset of genes were down-regulated in the MoSET1-KO mutants. These results suggested that H3K4me by MoSET1 is required for proper gene expression either by positive or negative regulation during infection-related morphogenesis of the fungus.
(26) 阪田星子・兵頭 究・海道真典・三瀬和之・奥野 哲郎 Red clover necrotic mosaic virus の複製酵素タ
ンパク質p27 のアセチル化はウイルス感染に関与してい
る Sakata, S., Hyodo, K., Kaido, M., Mise, K. and Okuno, T.: Acetylation of p27 Replication Protein Is Involved in Red clover necrotic mosaic virus Infection. タンパク質のアセチ ル化は,タンパク質のリシン残基にアセチル基が付加する ことによって起こる可逆的な反応であり,post-translational modification の一つとして知られている.タンパク質がア セチル化されることによりリシンの電荷が中和されタンパ ク質の機能が変化する.近年,生体内からアセチル化され るタンパク質が多数同定され,タンパク質のアセチル化は 代謝系をはじめとして様々な経路を制御していることが明 ら か に な っ て き て い る. 今 回, 質 量 分 析 法 に よ りRed clover necrotic mosaic virus の 複 製 酵 素 タ ン パ ク 質 p27 の 157 番目のアミノ酸であるリシンがアセチル化されること が明らかとなった.このアセチル化がウイルス複製におい て必要であるかを調べるために157 番目のリシンを,恒常 的アセチル化を模倣するグルタミン,もしくは恒常的脱ア セチル化を模倣するアルギニンに置換しプロトプラストに 接種した.その結果グルタミン置換変異体のみでウイルス ゲノムの蓄積量が減少したことから,p27 のアセチル化に よりウイルス感染が制御されていることが示唆された. (京大院農) (27) 出原健吾1・関根健太郎2・八丈野孝1・山岡直人1・ 西口正通1・小林括平1 トウガラシ微斑ウイルス外被タ ンパク質変異株におけるN' 抵抗性を回避するために必須
な変異の同定 Idehara, K., Sekine, K.-T., Yaeno, T., Yamaoka, N., Nishiguchi, M. and Kobayashi, K.: Identification of Pepper mild mottle virus Coat Protein Mutations Essential for Escaping the N'-mediated Resistance. トウガラシ微斑ウイ ルス(PMMoV)の外被タンパク質(CP)遺伝子にランダ ムな変異を導入したものからNicotiana sylvestris の N' 遺伝 子による過敏感反応(HR)を回避する変異体を単離し, それらの変異CP を持つ変異体ウイルスの病原性等につい て既に報告した.これまでに得られた変異体がすべて複数 のアミノ酸置換を持っていたことから,それらのうち N'-抵抗性を回避するために必須の変異を,野生型CP 遺伝子 とのキメラ解析および部位特異的変異導入によって同定す ることを試みた.その結果,単独でN'- 依存的な HR を回 避することのできる変異が2 種類同定された.また,多く の変異体においてHR 回避に複数の変異が関与することが 示された.一方,HR の回避に必要な変異の多くは CP の 蓄積を低下させる傾向が認められたが,HR 回避に不必要 な変異のなかにもCP の蓄積を低下させるものが存在し た.このことからN' タンパク質による認識を回避するに あたり,CP 蓄積量の低下は顕著に貢献するものではなく, CP の構造変化が認識回避に重要であると考えられた. (1愛媛大農・2岩手生工研) (28) Ali, M.E., Kobayashi, K., Yaeno, T., Yamaoka, N. and Nishiguchi, M. Further Investigation on Graft-Transmission of RNA Silencing and Tobamovirus Resistance to Non-transgenic Scions of Tobacco and Tomato. Previously we reported the graft-transmission of RNA silencing of endogenous genes, NtTOM1 and NtTOM3, to non-transgenic scions from silenced, transgenic rootstocks of tobacco (Sd1) (Ali et al., 2013). Here we further investigated the graft-transmission of NtTOM1/NtTOM3 silencing using non transgenic scions of tobacco with necrotic response to tobamovirus and tomato grafted on the rootstock of Sd1. The leaves were separated from the scions and rootstocks and in-oculated with either Tobacco mosaic virus or Tomato mosaic virus (ToMV). As a result, the number of local necrotic lesions decreased in the tobacco scions compared to that in control scions. ELISA and PCR showed the lower level of ToMV accumulation in the tomato scions. These results show that RNA silencing of NtTOM1/NtTOM3 and tobamovirus resistance were transmitted from tobacco rootstock to non- transgenic scions of both tobacco and tomato. This work was supported by the Program for Promotion of Basic and Applied Researches in Bio-oriented Industry (BRAIN).
(Fac. Agric., Ehime Univ.) (29) 弓山ひかる1・竹本拓馬1・甲村浩之1・長久 逸2・ 奥 尚1 広島県内に発生するアブラナ科植物根こぶ病 菌の病原性 Yumiyama, H., Takemoto, T., Kohmura, H., Cyokyu, S. and Oku, T.: Pathogenicity of Plasmodiophora brassicae Occurred in Hiroshima Prefecture. 広島県では,特産野菜 のヒロシマナやお好み焼き用のキャベツの生産に注力して いるが,根こぶ病が大きな問題となっている.キャベツで は抵抗性品種が少なく,抵抗性ヒロシマナ品種は,2010 年に県北部の庄原市にて罹病化転落し,以後,被害は市内 数ヶ所に広がり拡大が懸念されている.これらのことから, 広島県内各地の圃場より得た根こぶ病菌のレース判別を行 うことで,その分布の実態を解明しようとした.庄原市高 町および実留町,山県郡安芸太田町,同北広島町,安芸高 田市美土里町の各種アブラナ科植物の罹病根から休眠胞子 を得た.各々を107個/g 乾土に調整した汚染土壌でハク サイ根こぶ病菌レース判別品種(Hatakeyama et al., 2004)
を栽培し,レース判別を行った.その結果,高町ヒロシマ ナ由来はレース1,高町ハクサイ由来はレース 2,美土里 町および北広島町のブロッコリー由来はレース3,北広島 町キャベツ由来,安芸太田町および実留町のハクサイ由来 根こぶ病菌は各々レース4 と判別され,広島県内には 4 レースのすべてが存在することがわかった. (1県立広島生命環境・2広島総研農技セ) (30) 鈴木啓史1・黒田克利1・辻 朋子1・村上弘治2・ 對馬誠也3 LAMP 法による土壌中のアブラナ科野菜根こ
ぶ病菌の検出 Suzuki, H., Kuroda, K., Tsuji, T., Murakami, H. and Tsushima, S.: LAMP-Based Detection of Plasmodiophora brassicae in Soil. アブラナ科野菜の栽培圃場において,根 こぶ病の発病ポテンシャルを作付け前に診断するため, LAMP 法による根こぶ病菌の簡易検出を検討した.LAMP プ ラ イ マ ー に は, 既 報 のPCR プ ラ イ マ ー(Cao, et al., 2007)の遺伝子配列を参考に,株式会社ニッポンジーンの 「LAMP プライマー設計・合成サービス」で作製した.
LAMP 反応は,等温増幅蛍光測定装置「Genie® II」で行っ た.まず,休眠胞子土壌懸濁液(土:蒸留水=1:52.5) を105~101個/ml に調整し,各懸濁液から改変塩化ベン ジル法(Li, et al., 2013)で抽出・純化した DNA を鋳型と して,65°C で LAMP 反応を行った.その結果,検出限界 は102個/ml で,反応時間は 105個/ml で 11 分 10 秒,102 個/ml で 20 分 40 秒であった.次に,三重県内 19 カ所の 現地土壌の根こぶ病発病度をセルトレイ底面給液による生 物検定(吉本ら,2001)により求め,その発病度が 21.7 以上の5 カ所の土壌から LAMP 法により根こぶ病菌が検 出できた.以上の結果から,根こぶ病の発病ポテンシャル 診断がLAMP 法により迅速・簡便にできる可能性がある. (1三重農研・2(独)近中四農研・3(独)農環研) (31) Rahman, M.Z.1, Uematsu, S.2, Motohashi, K.3, Kimishima, E.4, Suga, H.5 and Kageyama, K.6 A New Species of the Genus Phytophthora Causing a Stem Blight in White Trumpet Lily in Japan. A new disease of white trumpet lily was noticed in Kagoshima of Japan in 1987 and the pathogen was primarily identified as Phytophthora megasperma based on morphological characteristics. In this study we re-examined the lily isolates using morphological and phylogenetical analyses. The morphological characteristics significantly differed from P. megasperma sensu stricto and other related Phytophthora species. The lily isolates formed externally proliferous zoosporangia, funnel shaped oogonia and predominantly paragynous and intercalary antheridia, and showed slow growth rate of 2.6 mm/24 h. The most
distinguishable characteristics are unique colony pattern like leaves of thuja plant, and large antheridia, which are rare in Phytophthora. In the phylogenetic tree constructed based on the sequences of eight genomic regions, the rDNA LSU, EF1-α, b-tubulin, heat shock protein 90, enolase, tigA, 60S ribosomal protein L10 and coxI genes, they formed a separate monophyletic group. The results indicate that the lily isolates will be a new species.
(1Unitd. Grad. Sch. of Agric. Sci. Gifu Univ.,
2Chiba Prefectl. Agric. and Forestry Res. Cent., 3Tokyo Univ. of Agric., 4Yokohama Plant Protec. Sta., 5Life Sc. Res. Cent. Gifu Univ., 6River Basin Res. Cent. Gifu Univ.)
(32) 三宅律幸1・永井裕史1・景山幸二2 3 種類の高 温性Pythium 属菌のポインセチアに対する病原性に及ぼす
温度の影響 Miyake, N., Nagai, H. and Kageyama, K.: Effect of Temperature to Pathogenecity of Three High-Temperature-Growing Pythium Species, P. aphanidermatum, P. myriotylum, P. helicoides, Associated with Wilting and Root Rots of Poinsettia. 3 種類のポインセチア根腐病菌(Pythium aphanidermatum, P. myriotylum, P. helicoides)の,ポインセチア(品種:イタ リアンレッド)に対する病原性に及ぼす温度の影響を調査 した.根腐病菌を接種したシバ種子培地摩砕液を,かん注 処理(25 ml/ 株)により接種し,20,25,30,35°C の陽 光恒温器(16 L, 8D)に入れ管理した.つぎに遊走子濃度 と温度の組合せによる影響を調べるため,50 ml 当たり 5, 50,500,5000 個に調整した根腐病菌の遊走子懸濁液をか ん注処理(50 ml/ 株)により接種し,30°C と 35°C の陽光 恒温器(16 L, 8D)に入れ管理した.接種 7 日後に発病株 率と根の発病度を調査した.3 種類ともに 20–35°C で発病 し,温度が高くなるほど発病株率と根の発病度は高くなっ た.また,遊走子5 個 / 株では,3 種類ともに 30°C では 発病しなかったが,35°C では発病した.一方,遊走子濃 度が高くなると30°C 及び 35°C では,発病株率と根の発 病度が高くなった.これらの結果から,ポインセチア根腐 病は,温度が低くても菌量が十分であれば発病し,温度が 高くなると菌量が低くても発病の危険性が高まることが示 唆された. (1愛知農総試・2岐大流域研セ) (33) 渡辺秀樹1・村元靖典1・足立昌俊1・景山幸二2 ホウレンソウ養液栽培における高温性ピシウム病害の診断 Watanabe, H., Muramoto, Y., Adachi, M. and Kageyama, K.: Diagnosis of Pythium Diseases Caused by High-Temperature Tolerant Species in Hydroponic Culture Systems of Spinach. ホウレンソウの養液栽培において,高温性ピシウム病害に
対する施設の安全性診断を行うことを目的に,対象病原菌 および診断時期について検討した.まず,ホウレンソウ(品 種:スーパーアリーナ7)に対する 3 種ピシウム属菌(P. aphanidermatum, P. myriotylum, P. helicoides)の病原性を評 価した結果,P. helicoides は他の 2 種と比較して病原性は弱 いものの全ての種で病原性が認められた.次に,最適な診 断時期について小型栽培装置を用いて検討した.感染苗を 定植時に3%混和させた場合,循環培養液中の病原菌(P. aphanidermatum)は定植翌日から検出され,収穫時には全 体の65%が発病し,急速に病気が拡大することが明らか となった.また,循環培養液への遊走子の接種時期を3 段 階(定植9,17,21 日後)に設定して栽培した場合,定植 17 日および 24 日後の接種区では,発病株率は低く収量も ほとんど低下しなかった.以上の結果から,ホウレンソウ 養液栽培においては3 種の高温性ピシウム属菌を診断対象 とし,育苗期および定植初期の早期診断が重要であると考 えられた. (1岐阜農技セ・2岐大流域研セ) (34) 楠 幹生 キュウリモザイクウイルスサブグループ II に感染したレタスの病徴と感染時期との関係 Kusunoki, M.: Relationship between Symptoms of Lettuce Infected with Cucumber mosaic virus Subgroup II and the Infection Time. 11 月~翌年 5 月収穫のレタス作型で,定植時,生育初期 および結球開始期に,キュウリモザイクウイルスサブグ ループII を汁液接種して病徴と感染時期との関係を調査 した.11 月および 4~5 月収穫の作型では,定植時の接種 で一部が黄化萎縮症状を示したが,ほとんどが結球して外 葉にモザイク症状を示すだけで,結球部は健全であった. 一方,12~3 月収穫の作型で,11 月以降に接種した場合, 外葉は油葉症状を示し,結球はするものの,結球内部には えそ輪紋症状を示した.次に,2011,2012 年に観音寺市 のレタス圃場3 カ所で,アブラムシ類の誘殺数とえそ輪紋 症状の発生株率を調査した.2011 年の調査では,11 月の 誘殺数は多く,えそ輪紋症状の発生株率は3~20%高かっ たのに対し,2012 年の調査では,11 月の誘殺数は前年と 比べて1/8~1/4 で,発生株率は 0.1~2%と低かった.こ れらのことから,レタスでの大きな減収要因となるえそ輪 紋症状の発生は,11 月以降に感染した場合に起こり,11 月のアブラムシ類の飛来数の多少が,えそ輪紋症状の発生 量を左右すると考えられた. (香川農試病害虫防除所) (35) 浅野峻介1・平山喜彦1・仲 照史1・印田清秀1・ 松下陽介2 キクのキク矮化ウイロイドの検出方法の検討 および奈良県内における感染状況 Asano, S., Hirayama, Y., Naka, T., Inda, K. and Matsushita, Y.: Study for Detection Method and Occurence of Chrysanthemum stunt viroid in Nara
Prefecture. キクに対するキク矮化ウイロイド(CSVd) の感染が全国的に報告されている.奈良県内でもその被害 が確認されているが,詳細な感染状況は明らかになってい ない.そこで,CSVd の検出方法を検討し,県内での感染 状況を調査した.まず,松下ら(平成18 年関東部会)に よるプライマーを用いたリアルタイムRT-PCR により,キ クにおける最適な検出部位およびRNA 抽出方法を調べ た.まず,検出部位について,上位葉は下位葉と同等~ 1000 倍の CSVd 濃度であった.また,同一個体の異なる 分枝間でのCSVd の濃度差はほとんど見られなかった.次 に,RNA 抽出方法について,Qiagen RNeasy およびセパゾー ル法は,direct tissue 法より検出感度が約 100 倍高かった. 以上を踏まえて上位葉からQiagen RNeasy で RNA を抽出 し,nested PCR により県内での CSVd 感染状況を調査し た.その結果,県内キク産地14 圃場から採集した 62 個体 中26 個体から CSVd が検出された.
(1奈良農総セ・2花き研) (36) 武山桂子 愛知県におけるキュウリ黄化えそ病の 発生生態 Takeyama, K.: Curent Status of Melon yellow spot virus Disease on Cucumber in Aichi Prefecture. 本県の主要 なキュウリ生産地では,キュウリ黄化えそ病の発生が恒常 化している.そこで,防除対策の基礎資料とするため, 2011 年から 2012 年の促成長期作(10 月~翌年 6 月)に おけるメロン黄化えそウイルス(MYSV)の発生生態の調 査を行った.その結果,キュウリ黄化えそ病が発生してい る施設では,作付け終了時には施設内のミナミキイロアザ ミウマのうち11.1%がウイルス保毒虫であった.また,休 耕期間中の周辺の露地栽培のニガウリとカボチャから MYSV が検出された.定植時である 10 月上旬には露地の カボチャの残さ種子から発芽している幼苗からMYSV が 検出され,周辺で捕獲したミナミキイロアザミウマも保毒 していた.周辺の雑草21 種からは MYSV は検出されな かった.以上から,本県では施設キュウリと露地栽培のウ リ科作物およびその残さ種子から生えた幼苗が伝染環と なっている可能性が示唆された. (愛知農総試) (37) 野見山孝司1・関口博之1・富岡啓介1・大崎秀樹1・ 宮川久義1・竹原利明1・笹谷孝英2 レタスビッグベイン 随伴ウイルスによって引き起こされるレタスの根えそ症状 Nomiyama, K., Sekiguchi, H., Tomioka, K., Osaki, H., Miyagawa, H., Takehara, T. and Sasaya, T.: Root Necrosis of Lettuce Induced by Lettuce big-vein associated virus. ビッグ ベイン病の罹病レタスからは通常,レタスビッグベインミ ラフィオリウイルス(Mirafiori lettuce big-vein virus, MiLBVV) およびレタスビッグベイン随伴ウイルス(Lettuce big-vein
associated virus, LBVaV)の二種のウイルスが検出される.両 ウイルスは土壌に生息する絶対寄生菌Olpidium virulentus によってのみ媒介される.本病の病原はMiLBVV であり, LBVaV は潜在感染して発病には関与しないと考えられて いる.両ウイルスに重複感染したレタスは地上部に明瞭な ビッグベイン症状を示す以外に,根にはえそ症状を引き起 こしていた.同様のえそ症状はLBVaV 単独感染株で確認 されたものの,MiLBVV 単独感染株では認められなかった. ま た,LBVaV の 単 独 お よ び 重 複 感 染 株 の 地 上 部 重 は, MiLBVV 単独感染,無毒媒介菌感染あるいは無接種株の地 上部重よりも減少した.さらに,LBVaV 単独汚染土壌に おいてはレタスを播種しても正常に発芽できない種子が多 く,苗立ち率が低下した.以上の結果より,LBVaV 感染 がレタスの生育に影響を及ぼしていることが示された. (1近中四農研・2九沖農研) (38) Hassan, N.2, Yamagishi, N.1, Isogai, M.1 and Yoshikawa, N.1 Characterization of a New Strain of Melon necrotic
spot virus Missing p7B Isolated from Cucumber in Japan.
A virus was isolated from cucumber showing veinal chlorosis and yellowish blotch on the fruits in Miyagi Prefecture. Mechanical inoculation of the virus to several plant families revealed that the virus has narrow host range. The chlorotic local lesions were observed on inoculated leaves of Chenopodium quinoa and C. amranticolor, and symptomless infections were assessed in inoculated leaves of Nicotiana benthamiana, N. occidentalis and Zinnia elegans. Electron microscopy of virus preparations revealed isometric virus-like particles 30 nm in diameter. The coat protein migrated in electrophoresis gel as a single band of 41 kDa and RNA of the purified virus was separated by electrophoresis into one component approximately 4300 nucleotides. Sequence analysis of the cDNA of the virus showed 88% identity to Melon necrotic spot virus (designated as MNSV-Miyagi-Cu). MNSV-Miyagi-Cu had only 4 ORFs and the p7B was missed. The identities of the ORFS of p42, p89, p29 and p7A were ranged from 49~52%, 58~69%, 47~50% and 75~79%, respectively.
(1Iwate Univ. Grad. Sch. of Agric.,
2Unitd. Grad. Sch. of Agric. Sci. Gifu Univ.)
(39) 藤川奈那央1・松浦昌平2・東條元昭1 鉄コー ティング湛水直播イネにおけるPythium graminicola と P. arrhenomanes の分離頻度と発病温度の比較 Fujikawa,
N., Matsuura, S. and Tojo, M.: Comparisons between Pythium graminicola and P. arrhenomanes on Isolation Frequency and Disease-Occurring Temperature in Rice Seedlings Growing
from Direct-Sowed and Iron-Coated Seeds. Pythium graminicola(Pg)と P. arrhenomanes(Pa)は移植栽培イネ 苗の重要病原として知られるが,鉄コーティング湛水直播 栽培イネの苗腐敗症にも関与する.2010 年 5 月に広島県 世羅町と三原市の3 か所および 2013 年 6 月に呉市の 2 か 所の鉄コーティング湛水直播水田で,播種約2 週間後に苗 腐敗を起こしたイネ248 個体を採集した.それらから素寒 天 培 地 ま た はPythium 属 菌 選 択 分 離 培 地 で 計 199 の Pythium 属菌株を得た.これらを形態観察と rDNA-ITS 解 析で同定したところ,内1 つの菌株が Pg,9 つの菌株が Pa であった.そこでこれらの内,Pg の 1 菌株と Pa の 2 菌株を用い,鉄コーティングイネ(コシヒカリ)に対する 病原性を20°C と 30°C でワグネルポットと試験管での接 種実験で調べた.その結果,Pg が 30°C でのみ強い病原性 を示したのに対し,Pa は 20°C と 30°C の両方で強い病原 性を示した.このことから,広島県下の鉄コーティング湛 水直播イネからはPa が Pg よりも高頻度に分離され,Pa がより広い温度域でイネに病原性を示すことが明らかに なった. (1大阪府大院生環・2広総研農技セ) (40) 須賀晴久1・新井満大2・船坂美佳1・清水将文2・ 景山幸二3・百町満朗2 国内分離株に見られるFusarium fujikuroi の 2 系統と国外分離株との関係 Suga, H., Arai,
M., Funasaka, M., Shimizu M., Kageyama, K. and Hyakumachi, M.: Relationships of Two Japanese Lineages and Strains from Foreign Countries in Fusarium fujikuroi. これまで我々は 国内の菌株を用いた分析により,Fusarium fujikuroi はフ モニシン産生系統(F 系統)とジベレリン酸産生系統(G 系統)に分けられることを示してきた.今回,国外でイネ やコムギから分離された9 菌株(但し,分離源不明の 2 株 を含む)について,フモニシンおよびジベレリン酸の産生 能と系統特異的一塩基多型(TEF_T618G,FUM78_C41T, FUM8_G2834A,CPR_C1152A,P4504_C842T) を 調 べ る とともに,AFLP による分子系統解析を行った.フモニシ ン産生能についてはコーングリッツによる菌の培養物を 70%メタノールで抽出して ELISA に,また,ジベレリン 酸の産生能については10% ICI 培地による菌の培養液を 薄層クロマトグラフィーに用いて判定した.その結果,4 株の特徴はF 系統,4 株の特徴は G 系統と完全に一致し ていた.残り1 株はフモニシン産生遺伝子クラスター中の 一塩基多型(FUM78_C41T と FUM8_G2834A)を除く特 徴がG 系統と一致していた. (1岐大生命セ・2岐大応生・3岐大流域研セ) (41) 森田泰彰・矢野和孝 ショウガ白星病の罹病残さ からの感染 Morita, Y. and Yano, K.: Infection of Causal Fungus
of Leaf Spot of Ginger from Residual Plants. ショウガ白星 病は初作地では発病が少なく,連作するにつれて発病が多 くなる傾向があると言われている.そこで,収穫後の圃場 に残された罹病残さが次作の発病に及ぼす影響を調査し た.まず,滅菌土に罹病残さを混和したポットと混和して いないポットでショウガを栽培したところ,残さを混和し たポットでのみ発病が認められた.次に,白星病が発病し た露地圃場で,ショウガ収穫後の残さを圃場外にできるだ け持ち出した場合と土壌中に混和した場合で,次作におけ る発病状況を比較したところ,土壌中に混和した場合の発 病が多かった.これらのことから,土壌に残った罹病残さ が次作の伝染源になっていると考えられた.なお,圃場試 験において土壌くん蒸剤による土壌消毒を行うと発病程度 が低下したことから,土壌消毒により土壌中の病原菌量は 低下するものと考えられた. (高知農技セ) (42) 守川俊幸1・田村美佳1・白川 隆2 タマネギの 春まき作型確立のための各種病原菌の発病温度特性の把握 Morikawa, T., Tamura, M. and Shirakawa, T.: Temperature Characterization of Pathogenesis of Onion Pathogens for Development of Summer Harvesting Culture. 我々は,北陸・ 東北地域における春まきタマネギの作型開発を行っている が,収穫後の鱗茎腐敗が問題となっている.そこで,防除 対象とすべき病害を特定するとともに,収穫後の適切な温 度管理条件を定めるため,各種病原菌の鱗茎における発病 温度特性を調査した.その結果,発病適温が30°C 以上の 病原細菌はBurkholderia spp.,Dickeya sp.,Pantoea ananatis であった.また,多くの細菌が40°C 以上では病徴を発現 しなかったが,Burkholderia spp. は 40°C 以上でも病斑の 拡大が認められた.一方,Pectobacterium carotovorum の発 病適温は25°C 付近で,36°C 以上になると病斑拡大は停滞 した.糸状菌病では,乾腐病が28~30°C であるのに対し, 黒かび病の発病適温が35~40°C と明らかに高く,鱗茎に 高温障害を生じる44°C でも病斑が拡大した.12°C 以下で は一部の病原菌を除き病斑拡大が認められなかった.7~8 月の高温多湿期に収穫期を迎える本春まきタマネギ栽培で 注目すべき病害は,既往の主要病害に加え,Burkholderia spp.,Pan. ananatis,Dickeya sp. による細菌病,そして黒 かび病と予想される. (1富山農総セ農研・2野茶研) (43) 川口 章 モモせん孔細菌病の発病程度に影響を 与える要因のロジスティック回帰 Kawaguchi, A.: Logistic Regression of Factors to Affect the Disease Severity of Bacterial Shot Hole of Peach. 演者は平成 25 年度本大会に おいて,岡山県南部の一般栽培圃場における,モモ収穫期 にあたる7 月下旬のモモせん孔細菌病の発病程度には 6 月上旬の発病程度との関連性が高いことを報告した.今回 は,7 月下旬の発病程度に影響を与える発病要因と気象要 因について解析した.岡山県南部で過去11 年間(2002~ 2012 年)に調査した 7 地点 28~30 圃場における 5 月上旬~ 8 月中旬の発病程度に関する 315 事例,アメダスデータに 基づく4 月~6 月の温度,湿度,風速,昨年の台風の回数 を説明変数とし,7 月下旬の発病程度が中発生以上(圃場 における発病葉割合が10%以上)である圃場の割合 p の ロジット関数ln(p/(1-p)) を目的変数として,一般化線型モ デルの一つであるロジスティック回帰を行った.その結果, 前年8 月中旬の中発生レベル以上の発生圃場数のオッズ (odds),本年 6 月上旬の発生圃場数のオッズ,本年 6 月の 1 mm 以上の降雨日数の順で影響が高い要因として選抜さ れ,前年の発病程度が翌年の発病程度に強く影響を与える ことが示唆された. (岡山農研) (44) 石山佳幸1・山岸菜穂1・小松和彦2・藤永真史1 スライド凝集反応によるアブラナ科野菜黒斑細菌病の迅速 診断法 Ishiyama, Y., Yamagishi, N., Komatsu, K. and Fujinaga M.: Rapid Diagnosis of Bacterial Blight of Crucifers Using Slide Agglutination Tests. アブラナ科野菜黒斑細菌病は育 苗中の苗に発生し,罹病苗を本圃に定植することで,広範 囲な圃場で発病するため,生産現場で実施できる簡易な診 断法の開発・普及が望まれている.そこで,長野県内で分離 されたアブラナ科野菜黒斑細菌病菌(P. cannabina pv. alisalensis KB211 株)の生菌体を抗原として抗血清を作製した.得 られた抗血清を白色ラテックス粒子に感作したスライド凝 集 反 応 試 薬 を 作 製 し た. 本 試 薬 は, 黒 斑 細 菌 病 菌 が 107 CFU/ml 以上の濃度で凝集反応が認められた.さらに, 常法の組織内分離とともにスライド凝集反応により,現地 自然発病株60 検体を調査した.その結果,組織内分離で 黒斑細菌病菌が分離された検体全てで凝集反応が認めら れ,一方の分離されなかった検体では凝集反応が認められ なかった.以上のことから,スライド凝集反応法は,生産 現場におけるアブラナ科野菜黒斑細菌病の簡易で迅速な診 断方法として利用できると判断した. (1長野野花試・2佐久普小海支) (45) 石山佳幸・山岸菜穂・藤永真史 ハクサイ黒斑細 菌病に対するプロベナゾール剤の苗処理による発病抑制効 果 Ishiyama, Y., Yamagishi, N. and Fujinaga, M.: Effect of Nursery Treatment of Probenazole on Bacterial Leaf Spot of Chinese cabbage Caused by Pseudomonas cannabina pv. alisalensis. 近年,長野県では露地栽培を主体とするアブ ラナ科野菜,特にハクサイにおいて黒斑細菌病が多発生し, 問題となっている.本病は,定植後まもない時期からの発