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Microsoft Word - 埋浚協/横田氏/基調講演_修正_写真有 (1)HP最終版.docx

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港湾施設の維持管理

‐構造物の耐久性と設計・施工上配慮すべき課題‐

(日本埋立浚渫協会 港湾技術報告会(2013 年 3 月 12 日)の講演概要)

北海道大学工学研究院教授 横田 弘氏

1.はじめに 港湾空港技術研究所に在籍しているころから、港湾の維持管理、特にライフサイクルマ ネジメント(LCM)の研究を行ってきた。LCM の考え方を入れて、港湾施設あるいは社会 基盤施設のマネジメントをしなければならないが、課題は多い。本日は、そうしたことも 含めてお話をしたい。 港湾施設の劣化の状況をよく目にされていると思うが、この左上の写真は塩害で、コン クリート構造物内の鉄筋が腐食して発生する。右上・左下の 2 つの写真は凍害で、コンク リート中の水分が凍結融解を繰り返すことで生じる。右下の写真は ASR(アルカリシリカ 反応)で、ある種の骨材を使うとコンクリートのアルカリと反応して膨張する。この写真 はコンクリートの外壁であるが、階段が屋根のようになっており、雨に濡れる箇所は劣化 が進行し、濡れない箇所は健全である。同じコンクリートでも、局所的な条件の相違で劣 化の状態が変わる。港湾施設は、塩分や温度、水分の影響を受けるので、こうしたコンク リートの特徴的な劣化のすべてが起きやすい環境にある。

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2.港湾構造物のライフサイクルマネジメント 構造物はまず計画され、設計され,それに応じて施工され、維持管理される。計画時点、 すなわち構造物の必要性が認識され,計画が始まったライフサイクルは始まり、更新や撤 去をもってそれが終わる。土木構造物の場合、通常 50∼100 年、あるいはそれを超える長 いスパンになるが、その間にどうやって施設の機能や性能、信頼性を確保するのか、さら にはどうやってコストを縮減し、環境への影響を減らすか、などを考えていかねばならな い。

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そのためには、計画から維持管理を経て撤去・更新までを対象にしたLCM の考え方を港 湾施設にも活用する必要がある。従来は、設計は設計のみ、施工は施工のみ、維持管理は 維持管理のみで個別に業務が行われることが多かった。港湾施設では、施工や施工管理は 民間企業が行い、維持管理は港湾管理者が行う。このように多くの機関と人がかかわる中 で、一貫して施設をマネジメントするには、シナリオを作成し、状況に合わせ修正し、必 要な性能を確保しつつ施設の寿命を長らえていくことが必要である。 つまり、設計をする人は、維持管理がどのように行われるかを理解している必要がある し、施工する人も施設がどう設計され、将来、どのように維持管理が行われるかを理解し て作業しなければならない。この図のように、計画、設計、施工、維持管理を縦に貫く串 がシナリオと言うことになる。 LCM は、維持管理だけでなく、計画、設計、材料の提供、施工、さらには撤去を含めた 広い概念である。そして、構造物の機能や性能をいかに確保するかについての手続きのプ ロセスをまとめたものがシナリオである。設計段階では、将来のことを想定してシナリオ を作成するものの、維持管理段階では、設計時に考えられたシナリオを現状に合わせて修 正することになる。LCM シナリオは、港湾の施設の技術上の基準(技術基準)で策定する こととされている維持管理計画と似た概念である。

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設計は、未知の構造物の性能を予測して、それをきちんと確保するために行う。どちら かというとバーチャルリアリティー、仮想世界である。施工では、実際に設計で求められ る性能を確保する。次の維持管理の段階になると、現実にある構造物の性能をどう確認し 評価するかが重要になる。この段階では、仮想世界から現実世界に考え方を移行させる必 要があるが、その間には大きな壁やギャップがある。 例えば設計をする時には、構造物の荷重や材料を決めて安全率を考慮してそれらの設計 値を定める。しかし、供用中の構造物の性能がどうなっているかを精度良く把握する方法 は確立されていない。既存構造物ではこの安全率をどう考えるのか、設計で想定した強度 と実際の強度の違いをどう調べるかなど、いろいろな問題がある。発想を切り替えて、こ のギャップを埋めていくことが大事である。

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3.耐久性の照査と維持管理 設計段階で行う性能照査には、安全性や使用性に加え、耐久性の照査がある。50∼100 年 間といった設計供用期間にわたって、構造物が性能を発揮できるかを照査するわけである が、主に4 つの方法がある。つまり、「確率モデルによる方法」、「部分安全係数による手法」、 「みなし性能による方法」、「劣化防止方策による方法」である。「劣化防止方策」は、劣化 防止のために特別な方策を講じるので、耐久性は心配しなくていいという考え方である。

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コンクリートの桟橋上部工やケーソンを例に耐久性の照査を見ていくと、「確率モデル」 は高度な設計概念で、設計変数の分布形状がわからないと計算ができない。現実的には材 料、寸法、荷重等のばらつきをすべて把握できていないので、一般的には「部分安全係数」 を活用して照査が行われている。劣化の原因となる塩化物イオン濃度を計算し、構造物の 設計供用年数の間に塩化物イオン濃度が限界値を超えないことを照査する。 以前の技術基準には「みなし規定」が使われていた。例えば、水セメント比の最大値が 55%、最小かぶりが 7cm という値を満足していれば、その構造物は必要な耐久性を満足し ていると見なすことができる、というものである。現行の技術基準でも、防波堤や重力式 岸壁のケーソンは、水セメント比が50%以下で、かぶりが 7cm 以上であれば、一般の条件 では耐久性は問題ないとされている。 耐久性の照査が満足できない場合には、最初から塩害を生じさせないために、劣化防止 方策としてエポキシ樹脂塗装や電気防食等を行う。 このように、どの程度の耐久性のレベルに対して、十分なデータがあるのか。さらには 将来どのように維持管理するかということを考慮して、耐久性の照査方法が選択されるべ きである。 部分安全係数による照査は、説明したとおり、劣化の進行を設計の時点で予測し、照査 する方法である。このグラフは横軸がコンクリート表面からの深さ、縦軸がコンクリート 中に含まれる塩化物イオン濃度を示している。コンクリートの外部から塩化物イオンが入 ってくるので、コンクリートの表面から深くなるほどその濃度は減ってくる。そういった 現象を考慮して、技術基準ではコンクリート1 ㎥当たり 2.0kg、コンクリート標準示方書で は1.2kg を超えないことを耐久性(塩害)の照査では確認する。 したがって照査の際には、①どれくらいの塩化物イオンが供給されるのか、②コンクリ

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ート中にどれくらいのスピードで塩化物イオンが移動するのか、③鉄筋がコンクリートの 表面からどれくらい離れた位置にあるか、の 3 つがわかればよい。ただ、この 3 つのパラ メータは、当然ばらつく。ばらつきの分布形状がわかれば確率モデルを使って計算できる が、現状では難しいので、2.0kg/m3あるいは1.2kg/m3等の一定の数字を限界値として与えて、 確定論的に照査が行われている。 この限界値は、腐食発生限界塩化物イオン濃度と呼ばれているが、ばらつきを考慮して かなり安全側の値となっている。実際の鉄筋の腐食発生限界塩化物イオン濃度はもっと高 い。もし、塩化物イオン濃度や限界塩化物イオン濃度のばらつきを数値化することができ れば、発生限界値を超える確率が計算で、腐食が発生するのは平均的には何年後などと表 現することができる。 設計時には安全側のことを考えておかなければならない。そのため、設計で用いる腐食 発生限界塩化物イオン濃度は小さめの値を使っていると理解している。したがって、その ままの方法で耐久性の照査を行うと、非常に早い時期に構造物の寿命が来てしまうことに なる。

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設計時には設計の考え方があるのでやむを得ないが、設計と現実を混同している方が少 なくない。塩化物イオン濃度がコンクリート標準示方書の 1.2kg/m3、技術基準の 2.0kg/m3 に達した瞬間に、この構造物は寿命に達したのではないか心配される方がいるが、そうで はない。これらの値は設計で用いている仮想の数値であり、現実とはギャップがある。 これは港湾空港技術研究所での試験結果である。塩化物イオン濃度 2.0kg/m3 が一つの下 限値になっていて、これを超えると腐食が発生している事例がある。ところが、6kg/m3 で まったく腐食していない事例、10kg/m3近くになってもほとんど腐食が進行していない事例 もある。これが実際の構造物で起こっていることである。また、海中では腐食がまったく 生じていない。このように、多様な原因によって構造物の寿命が決まってくる。このあた りを理解してもらえると、維持管理に対する見方も変わってくると思う。

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4.性能に着目した点検診断と評価 構造物は、点検・診断によって健全かどうかが判断される。通常、一般点検と呼ばれる 目視点検によって、劣化度や健全度を判断する。港湾施設では、一般に 2 年に 1 回程度の 頻度で行われるが、目視だけでよくわからない場合や、日ごろ見えないところについては 詳細点検を行う。詳細点検では、いろいろな技術を駆使してコンクリート内部の状況等を 詳細に調べ、定量的に構造物の状態を示す。このように、目視鉄拳と詳細点検の両者をも って、構造物の評価を行っている。

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目視点検は便利であるが、点検者の技量や主観によって結果が左右される欠点がある。 一方、詳細点検はコストがかかるため、いつでもどこででもできるわけではない。本来は、 評価の目的と方法に応じて、取得すべき情報(データ)を選定する必要がある。目視点検 のような簡単なレベルの点検では、それに見合った評価しかできない。簡単な点検方法(P Level)、中間的な点検方法(I Level)、高度な点検方法(A Level)に分けると、簡単な点検 方法が目視点検となる。中間的な点検方法では、材料の特性値や作用の特性値を決めなけ ればならない。高度な点検方法では、これらパラメータの空間的分布をきちんと評価しな ければならない。 目視で得られた結果だけで、数値解析を行うことは難しいので、別の方法で得た基礎的 な知見からある程度類推し、目視した外観と構造物の性能を関連づけることで、間接的に 性能を評価することになる。一方、データを密に取り、塩化イオン濃度のばらつきなどを 調べれば数値解析ができ、説得力のある評価結果を出すことが可能だ。だが、コストがか かる上、本当かなと疑問を持つような結果が出ることもある。何を目的とするのかで、お のずと点検方法が決まることになる。 劣化が進行すると、構造物の耐力、変形性能、剛性等が低下する。ここまで性能が低下 したらNG だという限界値を決めておき、そこに達する前に補修が行われる必要がある。設 計の際には,安全性や使用性の照査が数値を用いて行われているので、これらの数値と劣 化状態との関係がわかっていれば,性能限界を決めることは可能である.しかし,設計で 考える数値と現実の数値には乖離がある。そのため劣化の状態を変状限界とするには,性 能限界に対応する劣化状態に安全率のようなものを加味して定める必要がある。そうする ことで,例えば鋼材が露出する、あるいは腐食ひび割れが入る前に補修することで,必要 性能は確保されているということが示されることになる。

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目視点検には個人差があり、主観的になり易いのが欠点である。そのため,現在の港湾 の施設の維持管理技術マニュアルでは、「劣化度」というグレードを使って構造物の状態を 評価することにしている。目視は経済的で、自らやろうと思えばできないことはない。研 修などを受けて知識と経験を積めば、十分可能である。いろいろな問題はあるが、現実的 に港湾構造物で実行可能な唯一の枠組みは目視点検であると考えている。 この表は、コンクリート標準示方書において、外観上の劣化の程度と構造物の性能との 関係を示したものである。これぐらいの劣化の状態になったら、性能もこれぐらいに低下 しているという関係を見つけておくと、性能に着目しなくても外観のグレードだけで維持 管理ができることになる。例えば、この表で「加速期前期」の状態になると、腐食ひび割

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れや錆汁が見られるが、使用性については、腐食に起因する変位・変形や振動による性能 の低下が考えられる。一方、安全性は若干下がるかもしれないといった状態である。 桟橋上部工は、このような判定基準を使っている。スラブ、はり、ハンチについて、劣 化状態に応じてa、b、c、あるいは d と判断されるが、それぞれを性能とリンクさせておく と、a の段階で補修する、b の段階で補修する、などと判断できるようになる。 なぜ、性能を考えなければならないかというと、技術基準の2007 年版で性能設計法が導 入されたからである。表面上の不具合だけを見て診断するのは、技術基準の趣旨とは整合 しない。本来は、構造物がどれくらいの性能を持っているかを診断し、評価しなければな

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らない。そうしないと、設計から維持管理までの流れの中で、一貫して性能を確保すると いうことが達成できなくなる。 設計において性能が照査され、構造物の仕様が決められているのであれば、維持管理も 性能に着目して行わなければならない。見た目の劣化度の診断が保有性能の診断につなが るべきである。 劣化度の異なるコンクリート部材をたくさん切り出してきて、保有耐荷力を実験的に調 べた結果がある。港空研の加藤さんが論文として発表しているが、この図で劣化度 d は劣 化していない状態、劣化度a は劣化が進行し、見た目でも危ないなと思われる状態である。 劣化度c で設計時の耐荷力を下回っているものがある一方、劣化度 a では半分程度しか耐荷 力が残っていない部材もあれば、逆に必要な耐荷力を上回っている部材もある。非常にば らつきがあり、劣化度から性能を診断するには、このようなばらつきをどう考えるかが重 要である。

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このように耐荷力にばらつきが出るのは、劣化の判定基準が十分ではないのも一つの要 因である。先ほどの桟橋上部工の劣化度a∼d の判定基準を見ても、性能に関するすべての 変状が対象となっていないとか、鉄筋の腐食が常に表面の変状として現れるわけではない とか、いくつか問題がある。また、構造物のどの部分が劣化しているかも重要である。加 えて,点検する人の技術レベルの問題もある。 こうしたことを考えると、確率論的に耐荷力の評価を行うことが不可欠である。耐荷力 のばらつきについて、ワイブル分布にあてはめて極値統計を考えてみると、図のように劣 化のグレードごとに線が引ける。

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グレードa の線を見ると 95%の非超過確率で耐荷力比が 0.4 ぐらいになっている。つまり, 桟橋のスラブで劣化度a と判定されたら、95%の非超過確率で耐力が 35%くらい残っている ということになる。劣化度b と判定されれば、95%の非超過確率で 65%くらいの耐荷力が残 っていることになる。 このように,劣化の状態(グレード)に応じて、どれくらいの耐荷力が期待されるのか がある程度わかるようになる。構造物の重要度や使い方によって縦軸の確率を選定し、性 能を判断することができるようになる。ただし、現在は桟橋上部工を対象としたものしか わかっていないので、これ以外の港湾施設についてもこのような調査研究が必要である。

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5.予測と対策の要否判定 現在の劣化状態や性能がわかると、将来これらがどうなるかを予測することになる。2 つ のアプローチが考えられ、設計段階で耐久性照査に使われている理論的アプローチの方法 と、実際に劣化がどう進行したかをモデルに置き換え、マルコフモデルあるいは生存確率 モデルを使う方法である。 前者の理論的な手法の一つである塩化物イオン濃度を使った方法では、塩化物イオン濃 度がどれだけ侵入するかを計算できれば、何年で鉄筋腐食が生じるのかがわかる。しかし, その場合の最大の問題は、ばらつきの評価である。

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桟橋のスラブから長さ150cm、幅 40cm、高さ 30cm の部材を切り出してきて、そこから 30 本の小径コアを抜き、それぞれの位置でどれくらいの塩化物イオン濃度が侵入している のかを調べた。右側の図で 1 つのプロットは、コア 1 本から得られる見かけの拡散係数と 表面塩化物イオン量を示している。たかだか長さ150cm、幅 40cm の範囲であっても、場所 によって大きなばらつきがある。実験だから 30 本もコアを抜いて調べることができたが、 実際の構造物の点検で抜けるコアは 1∼2 本である。たまたま抜いた 1∼2 本から得られる データが、このようなばらつきのどこに位置するものであったかによって、予測結果が大 きく変わることになる。 このようなデータを使って、塩化物イオン量が 2.0kg/m3 に蓄積されるまでに必要な年数 (腐食寿命年数)を予測した事例がこの図である。元のデータがばらつくので、腐食寿命 予測の結果もばらつくことになる。この結果では、累積確率密度が 50%、すなわち平均腐 食寿命は約40 年である。超過確率 0.5%だと腐食寿命年数は 19 年程度である。30 本もコア を取ればこのようにばらつきがわかるが、1∼2 本のデータでは、予測結果が確率的にどの 位置にあるのかがわかりにくい。

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一方、理論的なアプローチをとらなくても、おおよそ寿命があと何年かを予測できれば よいというのがマルコフモデルである。劣化の進行状況を確率モデルに置き換えて予測す る手法であるが、どれくらいの確率で劣化が進行しているかを表す遷移確率 Pxさえわかれ ば、マトリックス計算をするだけなので非常に簡単である。 この図は、国土交通省港湾局の協力を得て、日本全国約320∼330 の係留施設の劣化度の 進行状況を調べ、逆算して遷移率を求めた結果である。当然、使っている材料や設置場所 の環境条件などで劣化の進行状況は一様ではない。Pxが大きければ劣化の進行が速く、小 さければ劣化の進行は遅い。日本全国を平均的に見てみると、重力式と矢板式の遷移率は それぞれ同程度で0.08 程度になっている。つまり、日本全体の平均では、これらの構造物

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のうち8%程度が毎年劣化度が進行していくということを意味している。桟橋の劣化は少し 進行が速くて、0.094 という結果が出ている。 先ほどと同様、確率モデル(ここでは対数正規分布)に置き換えて、例えば非超過確率 90%にある遷移率はいくらかを計算したところ、矢板式では 0.16、桟橋式では 0.17 となっ た。新設の構造物等のように遷移率が全くわからなくても、我が国で通常の方法で設計さ れ整備された係留施設であれば、0.16 や 0.17 という遷移率を使えば、だいたいの劣化の進 行傾向を予測することができる。

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個別の構造物でデータを蓄積し,劣化度a の部材が全部材の何%、劣化度 b が何%など、 劣化度毎の部材数の割合が得られるので、これを使って代表劣化度を求める。 従来のマニュアルでは、部材の劣化度を用いて構造物(施設)全体の総合評価を行い、A からD の 4 段階の指標で表現する。その場合,劣化の指標は、階段状となり、4 段階しかな いので、細かな評価をするのが難しい。そこで、劣化度に重みを付けて連続した数字に置 き換え、代表劣化指標DP を計算してはどうかと提案している。劣化度 a は4点、c は 1 点 というように重み係数を用いてDP を出す。DP4.0 が最大値となり、代表的な劣化の進行が 1.0 から 4.0 まで連続した数値を用いて評価できるようになる。 こうやって計算した場合のばらつきについて検討する。同じ代表劣化度でも、初期段階

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にあるデータで得られた場合、中期段階で得られた場合、後期段階で得られた場合が考え られ、これに応じて寿命予測に誤差が生じる。つまり、劣化度c と判断されても、極端な場 合、昨日までは劣化度d で今日 c になったばかりのこともあれば、今は劣化度 c だが明日に でも劣化度 d になる部材もあると考えられる。そのばらつきを定量化することが必要であ る。 ばらつきを定量化した一例として、DP が 2.5 に達する時点を予測する場合と、3.0 の場合 で寿命(対策推奨年)予測の誤差の程度を紹介する。この図のように、平均値で見ると、 DP が 2.5 の場合はおおよそ 22∼25 年、3.0 の場合は 32∼37 年で対策が必要となる、つまり 寿命(対策推奨年)に達することが予想される。

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誤差は、劣化速度が大きくなる、つまり遷移率が大きくなるほど少なくなる。遷移率が 0.2 あるいは 0.25 を超えると誤差はほとんど生じない(1 年程度以下)。しかし、あまり劣 化速度が速くない場合は、代表劣化度D の場合で 8 年ぐらい、劣化度 C で 11 年ぐらいの誤 差が出ることがわかる。いずれもDP が 2.5 に達する時点を予測した場合の誤差である。現 時点では、これくらいの分析ができるまでになっている。 最初の設計時点で耐久性に関して種々の予測を行い、50∼100 年程度の設計供用期間で問 題ないかどうか照査がされているが、これまで述べたように、これと同じやり方を用いて 維持管理での予測に適用することは難しい。誤差も大きくなる。したがって、設計時に考 えている方法と、維持管理時に考えている方法の乖離を小さくし、ギャップを埋めなけれ ばならない。

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例えば、鉄筋コンクリート部材の場合、Fick の拡散式を用いて、塩化物イオン濃度の蓄 積を計算し、これが腐食発生限界量に達すると劣化度がc になる。劣化度 c の段階から鉄筋 の腐食が進むことになるが、腐食量が50mg/cm2になると腐食ひび割れが入る.その後は鉄 筋の腐食が図のように計算され、腐食断面減少率が1%になったら劣化度 b、5%になったら a というようになる。このように、物理的な指標と劣化度を結びつけることで、劣化度の評 価を連続した数値に置き換えることができる。それによって、どれくらいの外見上の変状 が見られたら物理的にどの程度劣化が進行し、それがどのような状態に達してら補修をす ればよいかががわかることになる。 種々の検討の結果、鉄筋コンクリート構造物の場合、DP が 2.0 未満で行う補修は予防保

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全、2.1∼3.5 程度で行う補修は事後保全である考えている。限界とな変状等に応じて DP の 値を変えることで、よりきめ細かな補修等の対策の検討が可能となる。 補修を行う時点の劣化指標、つまり限界DP を変化させると、補修工法や補修の適用範囲 も異なってくる。それに応じてライフサイクルコスト(LCC)も変化する。一例であるが、 限界DP を変化させて LCC がどの程度変化するかを調べてみた。感覚的に少し早いかもし れないが、予防保全ならDP を 2.0、事後保全なら DP を 2.6 程度にすると LCC が最も小さ くなることがわかる。このように、LCC を最適にするという観点からも、限界となる DP を設定するのも有望でないだろうか。 このような種々の検討が進み、LCM のシステムに導入できれば、港湾施設のマネジメン トとしては非常によいと思っている。また、マニュアルのようなものが書けないかを検討 しているところである。

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また、最近の流れとして、部材の重要度に応じて維持管理の対応を変えるということも 検討されている。構造物にとって重要な部材もあれば、そうではない部材もある。この図 は縦軸が部材の重要度、つまり、この部材が壊れることで構造物全体にどの程度影響を与 えるかという度合いを示したもので、横軸が劣化の状態を示したものである。このマトリ ックスを使いながら、補修の優先順位(H が高い、L が低い)を設定することは維持管理の 合理化に寄与するので、このような手法を導入することも必要であろう。 (スライドNo.38 が時間の制約で講演では割愛した。)

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6.おわりに 最後に、構造物を長寿命化させるには、いい設計、いい施工、いい維持管理をすること が重要であり、構造物の長寿命化を実現できるマネジメントの方向を考えていきましょう ということを申し上げた。そのためには技術開発や人材育成も必要となる。また、維持管 理等における意思決定の説明責任も重要視されている。こういったマネジメントを取り入 れながら、責任技術者を育成し、専門家による支援体制を整える必要がある。また、日本 の将来を考えると、少子高齢化や成熟社会というキーワードが出てくるが、そういった中 で維持管理はどうあるべきかが重要であると考えている。 本日はご清聴どうもありがとうございました。 <質疑応答> Q:講演の内容は港湾構造物のマネジメントにとって重要なことである思うが、今後の 問題として、設計や発注の段階で構造物ごとの維持管理マニュアルを作成する考えはある のか。 A:構造物毎の維持管理マニュアル、すなわち維持管理計画は、現行の技術基準におい ても設計時に施設の設置者が定めることとなっている。設計時点で、維持管理をどうする か、何年毎にどこを点検すればよいか、設計の予測では何年後に劣化が生じて補修が必要 になるのか、ということを示すことになっている。この趣旨に基づいてきちんと示してい ただければ、かなり効率的に維持管理が行えるはずである。 (文責:協会事務局)

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