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特徴量の経年変化解析に基づく個人識別手法の検討

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「画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)」 2011 年 7 月

特徴量の経年変化解析に基づく個人識別手法の検討

原田 健希

田副 佑典

前島 謙宣

森島 繁生

‡ †‡早稲田大学理工学術院 〒169-8555 東京都新宿区大久保 3-4-1

E-mail: †{snowstorm.223@akane, the-brave-w@ruri, maejima@aoni}.waseda.jp, ‡[email protected] あらまし 本稿では,特徴量の経年変化を解析し,その結果に基づき特徴量に重みづけを行うことで,経年変 化を考慮した個人識別手法を提案する.顔認証分野では,個人内分散が小さくかつ個人間分散の大きい特徴量に大 きな重みを与えるのが一般的であるが,登録時と認証時の画像に年齢差がある場合には,却って識別性能を低下さ せる要因になる.提案手法では,「経年変化の影響を受けにくい特徴量」に加え,「経年変化に伴い一定の割合で変 化する特徴量」も識別に用いる.各年齢における特徴量の平均値を用いて,年齢に対する相関係数を求める.相関 係数の高い特徴量に対して,経年変化の影響を軽減するような補正を行う.13 サンプルを用いた評価実験を通じ て,一様な重みづけをした場合と比較し,1 位照合率が 46.2%から 76.9%に向上したことを確認した. キーワード 顔認証,個人識別,特徴量,経年変化,顔グラフ

1. はじめに

近年,社会の情報化が進み,個人の扱う情報が以前に も増して機密性の高いものとなりつつある.そのため, 他人からの不正なアクセスを制限し,重要な個人情報を 保護するという観点から,所有者本人を特定するシステ ムの必要性が増加している.現在,個人識別は暗証番号 によって本人確認を行う方法がもっとも普及している. しかしながら,暗証番号は他人に解読されやすく,また 本人自身が忘れてしまう恐れがあるといった問題がある. そこで,暗証番号に置き換わる個人識別手法として,生 体情報(バイオメトリクス)を用いた個人識別に関心が集 まっている. バイオメトリクスを用いた個人識別手法には,顔画像, 指紋,虹彩,声紋,筆跡などを照合するものが挙げられ る.中でも,顔画像を用いた個人識別は,認証する度に 顔を撮影することから,利用者の顔画像をそのまま履歴 画像として使用することが可能であり,不正抑止効果が 高い.また,登録・認証時に装置に触れる必要がなく, 心理的な抵抗感が少ない.更に,被撮影者が認証動作を 必要としない監視カメラの映像から認証を行う「受動型 認証」への応用も期待されている. 一方で,顔認証は照明変化・表情変化に加えて経年変 化に弱く,とりわけ登録時と認証時の年齢差によって生 じる顔の変化によって識別性能が低下するという問題点 がある[1][2].例えば,空港などでの出入国審査の際に, IC 旅券に収納された顔画像による顔認証(IC 旅券が本人 のものであるかを確認する仕組み)が,日本をはじめと する各国で計画されているが[3],経年変化によって IC 旅券の登録時の顔と現在の顔に大きな差異が生じる場合, 識別できなくなる恐れがある.識別性能の低下を防ぐ為 には,IC 旅券に登録される顔画像を定期的に更新する 必要があるが,もし登録時と認証時に年齢差が生じた場 合でも識別可能なシステムを構築することができれば, 登録画像を定期的に更新する手間を省くことができると 考えられる.更に,数年前に行方不明になった人物を当 時の写真を手掛かりに自動で特定する行方不明者捜索支 援ツールや,長年にわたり逃走を続ける指名手配犯を監 視カメラの映像から特定する犯罪捜査支援ツール等,更 なる需要の増加と応用範囲の拡大が期待できる. 顔認証は,入力された顔画像が持つ膨大な情報の中か ら,個人を識別するのに必要な情報を取り出し,その情 報を基に個人識別を行う手法が一般的である.個人を識 別するのに必要な情報は「特徴量」と呼ばれ,識別性能 を左右する極めて重要なファクターとなる. 顔認証に利用される特徴量の代表例として,顔の各部 位の相対的な位置関係・大きさ・面積等を表す幾何学的 特徴量や[1][4],Gabor 特徴量等の各部位領域における 色情報に基づく特徴量があげられる[5][6].しかし,こ れらの特徴量は,同一人物であっても成長および老化に 伴い変化してしまうと考えられ,顔認証の識別性能を低 下させる大きな要因となる. 経年変化を考慮した個人識別手法は,経年変化の影響 を受けにくい特徴量を識別に用いる手法と現在の顔画像 を基に年齢の異なる同一人物の顔を合成する手法が挙げ られる. 前者の代表例として,臼井らは適合性フィードバック を用いた「経年変化の影響を受けにくい特徴量」による 人物画像検索手法を提案している[1].この手法は,1 枚 の顔画像を入力とし,顔の経年変化を含む人物画像コレ クションの中から入力画像と同一人物を検索することを 目的としている.まず,入力顔画像と人物画像コレク ションから取り出された顔画像のそれぞれから Gabor

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特徴量,顔グラフ特徴量を抽出する.次に特徴量毎に類 似度を算出し,類似度の高い上位数枚の画像を検索結果 として提示する.ユーザは検索された画像に対して,入 力画像における人物と同一であるかどうかを判定する. システムはこの判定結果に基づいて,入力画像の追加と 特徴量の再重みづけを行い,検索結果を更新する.この ようなフィードバックを繰り返すことによって,検索性 能の向上を果たしている.しかしながら,再重みづけを 行うには,検索された画像を用いる必要があり,多くの 画像を検索するには数回にわたるユーザのフィードバッ クが必要となる.また,最初に検索された画像が入力画 像と同年代のものである場合,重みづけにより却って異 なる年齢の画像を検索することができなくなる恐れがあ る. 後者には,2 次元画像に年齢操作を加える手法[8][9] と 2 次元画像を 3 次元モデルに復元してから年齢操作を 加える手法[10]がある.これらの手法は精度よく合成可 能な部分には有効だと考えられるが,合成に大きな誤差 の伴う部分に関しては,識別性能を低下させてしまうと 考えられる. そこで本研究では,臼井らが用いた「経年変化の影響を 受けにくい特徴量」に加え,「経年変化に伴い一定の割 図 1. 本研究の流れ 合で変化する特徴量」も使用することで識別性能を向上 させることを目的とする.そのためには,あらかじめ経 年変化の影響を受けにくい特徴量と受けやすい特徴量を 把握しておく必要がある.そこでまず,特徴量の各成分 について,年齢-特徴量グラフを作成し,相関係数に基 づき,経年変化の影響を受けやすい特徴量と受けにくい 特徴量とに分類する.続いて,経年変化の影響を受けや すい特徴量のうち,一定の割合で変化していくものに対 して,経年変化の影響を軽減するような補正を行った. この補正により,経年変化に伴い一定の割合で変化する 特徴量を効果的に用いることで,経年変化に対応した個 人識別手法を提案する.本研究の流れを図 1 に示す.

2. 経年変化データベースの構築

本研究では,経年変化による影響に焦点を当てるため, 撮影時の年齢が既知であり,正面を向いた無表情な 4~29 歳の人物の顔画像を収集し,データベースを構築 した.本章では,上記条件を満たす顔画像の収集方法に ついて述べる. 経年変化データベースとしては,各個人の様々な年齢 の顔画像が多数含まれているのが理想的である.そこで まず,アルバムや卒業写真,証明写真等,日常生活の中 で撮影された同一人物の経年変化を含む画像を,研究室 メンバーを主とする 26 人分収集した.各画像における 撮影時の年齢は本人の申告によるものとした.しかしな がら,卒業写真やアルバムは表情や顔向きの変動を伴う 画像が非常に多い.撮影環境の統一された画像としては 運転免許証やパスポートの証明写真が挙げられるが,個 人情報を含むことから多くの人物の画像を収集するのは 容易ではない.そこで,経年変化の解析用のデータ数を 確保するため,インターネットを用いてウェブ上に蓄積 されている画像のうち,撮影時の年齢が記載されている ものを収集した.同一人物の画像は含まれていないが, 年齢毎に多くの顔画像を収集することで,万人に共通す る特徴量の経年変化を取り出すことができると考えた. この 2 つの方法によって全 394 枚の画像を収集し,経年 変化データベースを構築した.年齢別に見た顔画像デー タの内訳を図 2 に示す. 図 2. 年齢別に見た顔画像データの内訳 17% 13% 9% 36% 25% 4~9歳 10~14歳 15~19歳 20~24歳 25~29歳 経年変化解析に基づく特徴量の分類 特徴量の抽出 評価 経年変化に伴い 一定の割合で変化 年齢 特 徴 量 経年変化の影響を 受けにくい 年齢 特 徴 量 補正 年齢 特 徴 量

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3. 特徴量の抽出

顔認証は,画像から識別に有効な情報,すなわち特徴 量に基づいて行う手法が一般的であることは先に述べた. 本研究では,個人識別に有効な特徴量として顔グラフ特 徴量を用いた.本章では,顔画像から特徴量を抽出する 手法について述べる. 3.1. 特徴点の検出 本研究では,特徴量抽出の際に,顔の各部位を簡潔に 表す特徴点を利用する.特徴点は顔の部位(目・鼻・ 口・輪郭)を含む 89 点から構成される[7].特徴量を抽出 する際には,顔の部位を表すのに最も重要だと考えられ る 27 点を使用した.まず,各顔画像から自動で検出さ れた特徴点を初期配置点とする.配置された特徴点に検 出誤差が見られる場合には,手動で特徴点の再配置を行 う.顔画像に特徴点を配置した例を図 3 に示す. 3.2. 顔画像の正規化 それぞれの顔画像は異なる環境の下で撮影されたもの であり,顔の大きさや位置が異なる.そこで,すべての 顔画像から同じような条件の下で特徴量を抽出する為に, 本研究では両目間距離を基準として,顔画像の正規化を 行う.正規化の流れを図 4 に示す. まず,顔領域のサイズを正規化する.両目内側を表す 特徴点間の距離が 80pixel となるように画像の拡大また は縮小を行う.この処理により,すべての顔画像におい て両目内側間の距離が統一される. 次に,顔の傾きを正規化する.両目内側を表す 2 つの 特徴点を結ぶ直線が水平となるように画像を回転する. 最後に,上記の処理によって正規化された画像から顔 領域を切り出す.両目内側を表す 2 つの特徴点の中心座 標が(256, 153)となるように,512pixel×512pixel のフ レームを作成し,顔領域を切り出す.これらの処理によ り,全ての顔画像において,両目内側の特徴点が同一の 位置に配置される. 図 4. 正規化の流れ 3.3. 特徴量の抽出 顔グラフ特徴量の抽出には,正規化の際に検出した特 徴点を使用する.隣接する 2 つの特徴点を結ぶ直線の距 離を 1 つの特徴量とし, 66 次元の特徴ベクトルFを作 成する.

j

番目の特徴量を

f

jと表すと,特徴ベクトル Fは次のように表される. 顔グラフの例を図 5 に示す.

f

0

,

f

1

,

,

f

65

F

(1) 図 3. 特徴点 図 5. 顔グラフ

4. 経年変化解析に基づく特徴量の分類

経年変化を考慮した顔認証において,顔の成長や老化 とともに特徴量が変化してしまうことが,識別性能を低 下させる大きな問題点であることは先に述べた.特徴量 の経年変化を把握することができれば,経年変化の影響 を軽減するような補正を施すことによって,年齢差のあ る画像からでも本人を識別することができ,識別性能の 低下を防ぐことができると考えられる. そこで本章では,4~29 歳を含む様々な人物の顔画像 394 枚を用いて,顔グラフ特徴量の各成分における年齢 と特徴量との関係を解析し,経年変化の影響を受けにく い特徴量と,経年変化に伴い一定の割合で変化する特徴 量に分類する. 4.1. 年齢-特徴量グラフの作成 顔グラフ特徴量の各成分に対して,横軸を年齢,縦軸 を特徴量とした年齢-特徴量グラフを作成する.顔画像 から抽出される特徴量の平均が 0,標準偏差が 1 となる ように標準化する.標準化された各人物の特徴量を年齢 毎に分け,各年齢における平均値を算出し,グラフ上に プロットする.平均を取ることにより,各年齢における 個人間分散の要素をグラフから排除することが可能とな る. また,本研究では,正面を向いて撮影された顔画像の みを対象としているが,撮影された環境がそれぞれ異な るため,画像には多少の顔の向きや表情の変動が含まれ てしまう.そこで,様々な環境で撮影された画像から抽 出された特徴量の平均を取ることによって,顔向きの変 動による誤差も互いにキャンセルし合うと考えられる. 年齢-特徴量グラフの例を図 6 に示す.(a)のグラフで は,年齢に関係なく-0.5~0.5 の間に位置しており,経年 変化の影響を受けにくい特徴量ということができる.一 方(b)では,年齢が増加するに従い,特徴量の数値も増 加していることから,経年変化に伴い一定の割合で変化 する特徴量と捉えることができる.

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(a) 経年変化を受けにくい特徴量の例 (b) 経年変化に伴い一定の割合で変化する特徴量の例 図 6. 年齢-特徴量グラフ 4.2. 相関係数の算出 本節では,年齢と特徴量の関係を数値として表すため, 相関係数を求める.経年変化の影響を受けやすい顔グラ フ特徴量には,図 6(b)のように 4~15 歳までは線形に増 加し,15 歳以降は変化が見られないものが多数見られ た.そこで本研究では,4~15 才の領域において経年変 化に伴い一定の割合で変化する特徴量と経年変化の影響 を受けにくい特徴量に分類する.4~15 才特徴量と年齢 との相関係数をそれぞれ式(2)により求める.

 

 

        15 4 2 , 15 4 2 15 4 , a j j a a a j j a j f f a a f f a a r (2) 相関係数別に見た特徴量の個数を図 7 に示す.相関係 数の絶対値|𝑟𝑗|の大きい,経年変化の影響を受けやすい 特徴量が多数存在していることが見て取れる.これらの 特徴量の経年変化による影響を軽減することで,年齢差 のある画像に対しても識別可能になると考えられる. 相関係数に基づき,それぞれの特徴量を以下の 3 つの グループに分類する.

c

1,

c

2は 0.0~1.0 の間の定数であ り,

c

1

c

2を満たす. 1 0 rjc … 経年変化の影響を受けにくい 2 1 r c cj  … 経年変化に伴い不規則に変化 1 2 rjc … 経年変化に伴い一定の割合で変化 図 7. 相関係数別に見た特徴量の個数

5. 特徴量の補正

本章では,c2rj 1を満たす経年変化の影響を受 けやすい特徴量に対して,その影響を軽減するような補 正を行う.まず補正に用いるための傾きsjを最小二乗 法により求める. 2 1 1 2 , 1 , 1 1 ,           

     n j i n i j i n i j i n i i n i j i i j a f n f a f a n s (3) 傾きsjに基づき,年齢aiの人物iにおける特徴量 fi,j を式(4)に基づき補正する.            ) 1 ( ) 0 ( 2 , 2 , , j i j j i j j i j i r c a s f c r f f (4) 各年齢における顔グラフを補正した結果を図 8 に示す. 青,緑,赤の色の顔グラフはそれぞれ 5, 10, 15 才におけ る平均を示す.(a)は補正前,(b)は補正後の顔グラフを 表す.補正前は顔グラフに年齢差が見られるが,補正後 は重なっている部分が増加し,経年変化の影響を軽減で きていることが見て取れる. (a) 補正前 (b) 補正後 図 8. 顔グラフにおける補正前後の比較

6. 評価実験

本章では,人物捜索支援システムを想定し,未成年時 に撮影された画像から現在の本人の画像を特定するとい う評価実験を行った.未成年時(4~15 歳)と成年時(20~29 歳)に撮影された画像を 13 人分用意し,26 枚のサンプ ルデータを用いて,本手法における経年変化の影響を受 ける特徴量に対する補正の有効性を検証する.

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6.1. 実験方法 本研究では,3 つの評価実験を行った.本節では,実 験方法に関して全実験に共通する部分について述べる. まず,未成年時の画像 13 枚の中から,登録データRを 1 枚選び,成年時の画像を入力データIk(k1,2, ,13) とする.登録データRとそれぞれの入力データIkとの 距離を算出する.距離に基づき,入力データを昇順に並 び替え,順位付けを行う.この処理を 13 人分繰り返す. 1 位照合回数(本人の順位が 1 位となる回数)及び順位平 均(本人の順位の 13 人分の平均値)に基づき識別性能を 評価する. 6.2. 補正の有効性に関する評価実験 経年変化に伴い一定の割合で変化する特徴量に対する 補正の有効性を確認する為,c2rj 1を満たす特徴 量のみを用いて,識別実験を行う.補正適用前後での識 別 性 能 を 比 較 す る . 補 正 前 後 の 距 離 D(R,Ik) , ) , (R Ik D をそれぞれ以下の式により定義する. 2 ) min( ) max( ) , (

            j j j I j R j j k f f f f w I R D k (5) 2 ) min( ) max( ) , (

                 j j j I j R j j k f f f f w I R D k (6) R j

f

,

f

j

Rは,それぞれ入力データI における補正前 後の

j

番目の顔グラフ特徴量を表し,同様に Ik j f , Ik j f は,登録データIkの補正前後の

j

番目の顔グラフ特徴 量を表す.wj

j

番目の特徴量に与える重みを表す.          ) 1 ( 1 ) 0 ( 0 2 2 j j j r c c r w (7) 結果を図 9 に示す.補正後のほうが,1 位照合回数は 多く,順位平均は低くなっていることから,補正によっ てc2  rj 1を満たす特徴量の識別性能が改善されて いることがわかる.また,c2 0.70において 1 位照合 回 数 , 順 位 平 均 が 最 も 改 善 さ れ た こ と か ら , 1 0.70 rj  を満たす特徴量に補正を加えるのが最も 効果的だと考えられる. 図 9. 閾値c2と識別性能の関係 6.3. 閾値𝒄𝟏による識別性能の変化に関する評価実験 次に,経年変化の影響を受けにくい特徴量を分類する ための最適な閾値 1 c を決定するため,0 rjc1を満た す特徴量のみを用いて識別実験を行った.式(5)に,下 記に示すような重みを与える.          ) 1 ( 0 ) 0 ( 1 1 1 j j j r c c r w (8) 1 c を 0.05~0.25 まで変え,1 位照合率および順位平均 を比較する. 結果を図 10 に示す.c1 0.15では,c10.10に比 べて識別に用いる特徴量が増加しているにも関わらず識 別性能が低下している.相関係数が 0.1 以上には経年変 化に伴い変化し,識別性能を低下させるような特徴量が 含まれると考えられる.本実験により,経年変化の影響 を受けにくい特徴量を分類するための相関係数の閾値は, 10 . 0 1 c が最適だと考えられる. 図 10. 閾値c1と識別性能の関係 6.4. 重みの与え方に関する評価実験 最後に,全特徴量を用いた場合,経年変化の影響を受 けにくい特徴量のみを用いる場合,更に経年変化の影響 を受けにくい特徴量と経年変化に伴い一定の割合で変化 する特徴量双方に重みづけを行った場合の 3 つの識別性 能を比較する.それぞれについて,以下のような重みを 与えることにより,識別に用いる特徴量を選択した. (ア) 全特徴量を用いる場合              ) 1 ( ) ( ) 0 ( 1 1 1 2 2 1 1 j j j j r c c r c c r w (9) (イ) 経年変化の影響を受けにくい特徴量のみを用いる 場合              ) 1 ( ) ( ) 0 ( 0 0 1 2 2 1 1 j j j j r c c r c c r w (10) (ウ) 経年変化の影響を受けにくい特徴量と経年変化に 伴い一定の割合で変化する特徴量を併用する場合 0 1 2 3 4 5 6 7 0 2 4 6 8 10 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 順位平均 (位 ) 1 位照合回数 (回 ) c1 1位照合回数 順位平均 0 1 2 3 4 5 6 7 0 2 4 6 8 10 0.6 0.7 0.8 0.9 順位平均 (位 ) 1 位照合回数 (回 ) c2 1位照合回数(補正前) 1位照合回数(補正後) 順位平均(補正前) 順位平均(補正後)

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              ) 1 ( ) ( ) 0 ( 1 0 2 2 1 1 j j j j r c c r c c r s s w (11) ここで,式(11)における

s

は 0~1 の定数であり,0.1 ず つ変化させて識別性能の最も良いパラメータを実験的に 求めた.また,実験(1), (2)からc10.10,c20.70と した. 結果を表 1 に示す.まず,(ア)と(イ)の結果について 考察する.(ア)よりも(イ)のほうが,1 位照合回数が多 くなり,経年変化の影響を受けにくい特徴量のみを用い ることにより識別性能が改善されることがわかる.しか しながら(イ)では順位平均は高くなっている.実際, (ア)では 1 位照合できていた人物が,(イ)では順位が大 幅に上がるサンプルも見られた.これらのサンプルは未 成年時の画像の年齢が比較的高く,成年時の顔形状の差 が小さかったために,c1rj 1を満たす特徴量も識 別時に有効に働いていたのに対し,(イ)による特徴量の 選択によって,却って他人との距離が小さくなってし まったと考えられる. 更に(ウ)では,(ア), (イ)よりも 1 位照合回数および順 位平均が向上している.経年変化の影響を受けにくい特 徴量と経年変化に伴い一定の割合で変化する特徴量を併 用するのが最も効果的であることが分かる.また,最適 なパラメータ

s

は 0.7 であった.パラメータ

s

と識別結 果の関係を図 11 に示す. 表 1. 実験(3)の結果 1 位照合回数(回) 順位平均(位) (ア) 6/13 2.15 (イ) 8/13 2.38 (ウ) 10/13 1.84 図 11. パラメータ

s

と識別結果の関係

7. 結論

本研究では,顔グラフ特徴量の各成分に関して,加齢 に伴う特徴量の変化を解析した.また,「経年変化の影 響を受けにくい特徴量」に加え,「経年変化に伴い一定 の割合で変化する特徴量」に対し,経年変化を軽減する ような補正を施して使用することで経年変化を考慮した 個人識別手法を提案した.評価実験を通じて,補正の有 効性を確認し,識別性能を向上させることができた. 本研究で作成した年齢-特徴量グラフでは,特徴量の 各年齢の平均値に不規則なばらつきがみられ,経年変化 の影響を受けるか否かを判別することができない特徴量 が多かった.データベースを拡充することによって,性 別や体型別に見た特徴量の経年変化の違い等,より正確 な解析を行っていく予定である.更に,顔グラフ特徴量 だけでなく他の特徴量の経年変化を解析していく必要が ある.

謝 辞

本研究は, 文部科学省の平成 22 年度科学技術戦略推 進費による「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策 技術等を実用化するプログラム」の一環として実施され ました.

文 献

[1] 臼井篤志, 新田直子, 馬場口登,“適合性フィードバッ クを用いた顔の経年変化を含む人物画像検索,”信学技報, vol.108, no.484, pp.217-222, March.2009.

[2] 中井義, 荒川薫,“経年変化を含む顔画像による個人認証 の一手法, ”電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論 文集基礎・境界, 174, Sept.2008. [3] 湯浅秀一, 和田山豊, 藤井明宏, “実用化が進む生体認証 技術,”沖テクニカルビュー, 73, 3, pp.62-65, July.2006. [4] 萩原栄一, 増田功, “パターンマッチングを主体にした 顔画像による個人 ID ,”信学技報, 88-46, 1988.

[5] L.Wiskott, J.M.Fellous, N.Kruger, and C.vonder Malsburg, “Face Recognition by Elastic Bunch Graph Matching,” IEEE Trans. PAMI, vol.19, no.7, pp.775-779, 1997. [6] LIU. C, “Gabor Feature Based Classification Using the

Enhanced Fisher Linear Discriminant Model for Face Recognition,” IEEE Trans. on Image Processing, vol.11(4), pp.467-476, 2002. [7] 森島繁生, “フューチャーキャストシステム『三井・ 東芝館』,”映像情報メディア学会誌, Vol. 59, No. 4, pp.522(36)-524(38), 2005. 4. [8] 山口真美, 尾田政巨, “正面顔画像のカージオイド変換 が年齢認知に及ぼす影響について,”電子情報通信学会論 文誌 A, Vol.J80-A No.8, pp.1250-1259, 1997. [9] 中川雅通, 宗績敏彦, 角義恭,“骨格モデルを用いた顔画 像の年齢変化シミュレーション,” 電子情報通信学会論 文誌. A, 基礎・境界 vol.J80-A(8), pp.1312-1315, 1997. [10] K. Scherbaum et al, “Prediction of Individual Non-Linear

Aging Trajectories of Faces,” EUROGRAPHICS 2007, pp.285-294, 2007. 0 1 2 3 4 5 6 7 0 2 4 6 8 10 12 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 順位平均 (位 ) 1 位照合回数 (回 ) s 1位照合回数 順位平均

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