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ライフデザイン学・人間環境デザイン学への思い

著者

米田 郁夫

著者別名

YONEDA Ikuo

雑誌名

ライフデザイン学研究

8

ページ

9-10

発行年

2012

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00010317/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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ライフデザイン学・人間環境デザイン学への思い

―ニーズの連鎖を生む生活支援機器のススメ―

人間環境デザイン学科 米 田 郁 夫  齢をとると月日の流れが速く感じられるというが、東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン 学科での7年の歳月は本当にあっという間であった。まさに「烏兎匆匆」である。しかし、時の流れ が速く感じられたのはあながち齢の所為だけではない。初めて経験する大学教員の職務をこなすため に、これまでとはまったく違って感じられる時間の流れと常に競走していたからだとも思う。ライフ デザイン学・人間環境デザイン学という新しい学問領域に関われる歓びだけでなく、正直のところ、 常に不安と緊張に押し潰されそうになっていたことも確かである。とくに、どのような講義をすれば よいのか思い悩み、そして常に講義の「ネタ」づくりに追いかけられていた思いが強い。いろいろな ものを授業ネタとして集める貪欲な自分がいたのを昨日の出来事のように思い出す。  一方で、東洋大学への転職は、自分の歩んだ道そしてこれから歩む道についてきちんと考えるきっ かけにもなった。恥ずかしながら東洋大学に赴任して初めて知った学祖井上円了先生の「諸学の基礎 は哲学にあり」という教えは心に響いた。もちろん円了先生の「哲学」の域までは到底到達できては いないが、それまで自分が

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年間携わってきた生活支援機器デザインの意味、在り方について自分な りに考えをまとめたいと思うようになった。 我が愛する東洋大学を去るにあたり、人間環境デザイン学・生活支援機器デザインへの思いを述べ てみたい。  人類は、

600

700

万年前にチンパンジーの系統から分かれて、知力を発達させ道具をつくり使うこ とにより厳しい環境の中を生き抜いた。そして、道具だけでなく、機械をつくり、建物をつくり、ま ちをつくり、社会システムをつくって、生活を営んでいる。つまり、われわれは人工的な環境の中で 生活している。 もはや、人間は人工的な環境なくして生きていくことはできない。言い方を換えると、人工的な環 境がきちんとデザインされていれば、快適な生活を送ることができる。このことは、当然のことなが ら、障害のある人たちの生活を技術的に支援するうえでも当てはまる。否、当てはめなければならな い。 障害のある人たちが使う生活支援機器と一般の機器とはデザインの仕方は少し異なる。一般の機器 の場合は、ユーザーがある程度機器に合わせて使うことができるが、生活支援機器は、ユーザーの身 体条件やニーズに適合していなければほとんど使い物にならない。 私は、若い頃、障害のある人たちのニーズを自分で勝手に想定して、まったく使い物にならない生 活支援機器なるものを作っていた。そのことを反省して、その後は、当事者に加わってもらって、一 緒に生活支援機器を作るようにした。そうすると、少しずつ成果が出るようになった。天井走行型移 乗用リフト、環境制御装置、重度の障害がある人たちのための電動車いす制御システム

(

多様入力コ ントローラ

)

、介助用電動車いす、電動式立位移動補助機器、6輪型歩行器などを開発・実用化する

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10 ことができた。 当事者の方たちと一緒に生活支援機器づくりをしていると、いろいろなことを教えられる。とりわ け、生活支援機器によって当初のニーズが満たされるとまた新たなニーズが出てくるということには ハッとさせられる。例えば、初めて電動車いすが使えるようになった当初は屋内だけで使っていたが、 慣れてくると自宅の周りの「散歩」、少し「足」を伸ばして公園、ショッピング、その次は乗り物に乗っ てどこかに行ってみたい、そしてインターネットにもチャレンジしたいというようにニーズがどんど ん広がる。ニーズの連鎖である。このようなことは、生活支援機器の在り方を示唆しているように思 われる。 生活支援機器の開発に一緒に取り組んだ障害のある当事者、セラピスト、地域福祉を担うソーシャ ルワーカーや福祉専門職の人たちと伴にニーズの連鎖を実感したときの達成感は私の大きな宝物に なっている。 障害のある人たちの医学的な「障害」は存在するかも知れないが、生活支援機器も含めて「環境」 をきちんとデザインすれば、生活機能上の「障害」は克服することができると考えたい。 今でも、いろいろな研究者が生活支援機器の研究開発に取り組んでいる。しかし、いまだに、明ら かに論文を書くためだけとしか思えないような研究も見受けられる。当事者の方たちのことを思うと 大変悲しいし、怒りを覚えることもある。それだけに、人間環境デザイン学科への期待は非常に大き いものがある。これまでとは一味も二味も違う素晴らしいデザインが創出されることを楽しみにした い。 最後にライフデザイン学部の皆様には大変素晴らしい時間をいただいたと思っています。大変お世 話になりありがとうございました。心より感謝、感謝、…です。

参照

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