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「伝統」を生きる

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Academic year: 2021

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「伝統」を生きる

本年は、滋賀大学経済学部創立80周年にあたります。これを機に記念講演などが開かれていること は、学内に掲示されたポスターなどでご存じのことと思います。 史料館においても一連の行事にあわせて記念展を開催いたします。日頃は展示することのない資料 なども開陳していますので、往時を偲ぶとともに未来への礎ともなるものとして思索を巡らせていただ ければ幸いです。 一口に「80年」といっても、現在の平均寿命に相当する年月ですから、人が一生の間で多くの喜怒哀 楽を経験するように、彦根高等商業学校から滋賀大学経済学部への歴史にも多くの出来事がありまし た。学校制度の改編は、その最たるものでしょう。そして、この学舎に集った学生たち個々人にも、それ ぞれの歴史があったはずです。後世に生きる私たちは、ただ遺物を通じて来し方を追憶できるに過ぎ ません。 彦根高等商業学校の学生たちは、「士魂商才」を建学の精神として学窓で学び、社会に羽ばたいて 行きました。その後身である滋賀大学経済学部は、今、新しい時代の精神として「グローバル・スペシャ リスト」たらんことを学生に期待していることは、ご存知の通りです。そこには、社会に有為たる人材を 送り出すことを共通の理念とする「伝統」が反映されています。 しかし、「伝統」とは必ずしも守旧すべきことではありません。「伝統」とは、ある特定の目的意識をもっ て「創造」されるものであることは、E・ホブズボウム等が指摘した通りでしょう。「伝統」は、それゆえに、 時代と共に変質されていくことは当然なのです。それが全面的に良いことなのか悪いことなのか、とい う価値判断を下すことは適切ではありません。守るべきものなのか、それとも変えるべきなのかは、ま さしく歴史的な流れのなかで考えられるべきことなのでしょう。時間は止まってはくれませんから、その 時々の社会のなかで、あり得べき姿を構想する想像力が必要なのです。それは、一朝一夕に学修でき るものではありませんし、他人から教えられるものでもありません。自分自身が苦闘しながら試行錯誤 を繰り返して、ようやく体得できるものなのだと思います。 (史料館長 宇佐美英機)

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