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町並みの評価に潜在する既存住宅のストック化の可能性 【論文】

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Academic year: 2021

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1.研究目的と方法

 本研究は日本の中古住宅市場の脆弱性の原因と課題を解 明するための長期継続研究の一部である。  問題の背景「スクラップ&ビルド」の克服  戦後日本の住宅政策は劣悪な住宅事情の改善を優先し、 積極的に住宅建設を推進してきた。しかし、それは新築住 宅中心の住宅市場を拡大し、地価の騰貴性を強めながら土 地の所有権が移転する時に住宅を更新する、いわゆる「ス クラップ&ビルド」型の負の住宅供給基盤をも構築した。 その結果、建築年数の長さをマイナス要因とする市場評価 が住宅の寿命を支配し、耐久性を高めるために必要な所有 者の管理意欲が疎外された。その結果、既存住宅に内在す る社会財の価値に無関心な世論を形成し、既存住宅の妥当 な経済的評価基準が定まらないまま、住宅情報の信頼性を 阻害してきたのである。  しかしながら今日にいたって、建築系廃棄物による環境 負荷の減少を強く求められ、耐用年数を西欧諸外国並に引

町並みの評価に潜在する既存住宅のストック化の可能性

 古都子*・足立智也子**

The Feasibility of Extending the Stock of Existing Housing Latent

in the Evaluation of Cityscapes

Kotoko YAMASAKI*, Chiyako ADACHI**

*Faculty of Education, Shiga University

**KUSATSU Elementary School

 Aim: This study investigated the influence of landscape evaluation on housing service life to attain full growth over time, and considers the possibility of extending the stock of urban housing.

Results: The floor-space ratio is on a strong upward trend in suburban residential areas due to the rebuilding of housing over a relatively short period, leading to a decline in the quality of the landscape. Although the circulation of existing housing would be expected to curtail rebuilding, the extremely low turnover volume and the poor quality of the housing unfortunately means that no such curtailing effect is seen.

 However, since landscape quality is gradually gaining acceptance and increasing the value of assets, the attachment of importance to landscape preservation is beginning to take root. Residents have two images of fine landscapes; those that represent visual concepts, and those reflecting the individuality that results from achieving full growth over a period of time. The former type corresponds to the concept of residential area development and creates a high level of resident satisfaction, while the latter is a cause of dissatisfaction because the desired landscape is not yet a reality. Residential areas with the former characteristics tend to be new, and cannot be said to be reflected in the market for existing housing at present. Consequently, there is an urgent need to set standards for the economic assessment of landscape quality.

Keywords: Landscape evaluation, housing service life, Existing house, Attachment of landscape, Landscape preservation

論文

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き上げる必要性が高まっている。そればかりでなく生活基 盤である住環境が常時変動することは、住様式の定着を妨 げ、成育環境への帰属意識を喪失し、アイデンティティの 形成に弊害をもたらしている。今や環境・生活の両面から、 良質の住宅ストックを安定的に供給、管理する住宅政策を 打ち出すには遅すぎたきらいがある。  本研究では住宅の耐用年数を延長するために社会的な管 理支援の仕組みを導入することに着目している。たとえば ①担保評価や、売買評価・損害保険等に既存住宅の残存性 能を反映して維持管理の評価を高めることや、中古住宅の 購入にも新築住宅と同様の諸税優遇措置を適用するなどの 経済的支援、②工務店や建築専門家が居住者の住宅管理技 術を指導するための仕組みづくり、③住宅情報の信頼性の 向上と公開など、公平・公正を実現する市場整備、④住宅 の資産評価において時間の経過と共に増す成熟性を付加す る可能性などである。これらの支援を有機的に構成すれ ば、所有権を移転するかどうかにかかわらず維持管理に伴 う費用を生涯家計設計に位置づけることができる。筆者は この仕組みを社会的管理と名付け1)、その仕組みを構想す る一連の研究を継続してきた。  研究目的  本研究では中古住宅市場の脆弱性を改善するために中古 (既存)住宅市場の評価構造を変えることによって住宅の 耐用性や居住空間の質に及ぼす効果を図るものである。本 報では住宅地の景観形成における「まち並みが成熟するの に要する時間」に向けられる評価がどのように住宅の寿命 観へ影響を及ぼすかを検証する。そしてその結果を通して 日本の都市住宅のストック化の可能性を考察する。  研究方法  本研究の方法は質問紙の留置自記法によるアンケート調 査を採用した。  調査対象地:本研究では2003年調査(住宅の寿命観と中 古住宅需要に関する日米比較調査2) ∼3)と同様に開発年度と 地域の多様性が得られることに留意して、1960年∼2000年 の間に郊外に一戸建を中心に開発された住宅地を対象にし た。  対象の選定はまず①前回調査で、回収した封筒に氏名が 明記された回答者全員とした。前回は高槻市6住宅地、茨 木市8住宅地、大津市4住宅地であったので、さらに②大 津市・草津市で計5団地追加し前回同様に票本数に見合う エリアを悉皆抽出した。  調査方法:①については配票・回収共に郵送調査である。 ②については調査員が現地におもむき、調査票をポスティ ングし、郵送で回収する方法を採用した。  調査の概要は、対象地の開発時期を表1、表2に示して いる。坂本以外は大規模郊外住宅開発団地であるが、坂本 地区は農地がミニ開発で連単的に開発された地域である。 分析には SPSS 統計ソフトを使用した。  既報のレビュー  本研究では既研究の知見に階層性を加えた再考察を試み るので、戸建て住宅居住者の日米比較調査から得られた知 見をレビューしておく。  ①住宅の需要意識にあるストック(資産)観  日米の住宅資産意識を比較すると、日本は生涯にわたっ て住み続けられる価値(「終の棲家」)を重視し、米国は 「投資性」を重視する傾向が強い。これは米国が土地と住 宅の一体登記であるという住宅概念の基本的違いに加え、 市場における中古住宅率が8割を占め、活発な売買の下で 既存住宅の経済的評価が定着していることの反映である。 そのために米国人は売却を念頭に住宅を選択・購入してい る。日本には中古住宅に対して「投資性」への期待はなく、 「終の棲家」を取得するまでの「仮の宿」と見なす。「仮 の宿」意識は米国にはみられない日本の中古住宅需要の特 徴である。  ②住宅市場における既存住宅の保全・情報のあり方と、 表1 調査の概要 該当 対象数 対象 外 農家 他 借家 回収率 % 回収 数 空き家を除 く配票数) 208 4 4 54.4 212 390 日 吉 台 補 充 分 73 29 24 5 31.5 102 324 坂 本 269 9 9 66.2 278 420 若 草 197 2 2 47.4 199 420 青 山 124 2 2 49.0 126 257 大 平 72 0 86.7 72 83 大 津 前 回 高槻・茨木 132 106 80.3 0 106 1,049 46 24 22 54.0 1,095 2,026 総 計 表2 平均建築年数(年)・居住年数(年) 合計 茨木高槻 大津 大平 青山 若草 坂本 日吉台 19.2 28.3 20.5 24.3 4.5 19.5 23.1 23.1 平 均 値 10.2 13.0 8.6 9.8 1.9 2.1 10.4 5.7 標準偏差 18.8 32.7 22.2 26.4 4.6 17.0 20.4 21.1 平 均 値 11.0 12.4 9.4 8.2 2.1 5.1 10.6 7.2 標準偏差 1,033 104 71 123 194 264 71 206 件 数

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中古住宅需要の関係  日本の中古住宅の需要に「仮の宿」意識が生じる主要な 理由の一つが中古住宅の質に対する低い評価である。これ は住宅市場における既存住宅の商品情報のあり方にある。 米国では不動産市場の透明性が確保され、既存住宅の売買 当事者が公平な取引条件下に置かれる仕組みがある。した がって需要者は中古住宅市場の売買のリピーターになるこ とによって学習の機会が生まれる。しかし日本では市場に おける情報の非対称性が中古住宅の安全性、設備性能の信 頼性を低めている。そのことは住宅の安全性確保に払う関 心・行動と既存住宅の不安感との間の相関性及び、「仮の 宿」意識と中古戸建住宅の不安感との間に相関として表れ ていた。そればかりでなく日本では自分が所有する住宅の 性能に対する信頼も低く、それが、さらに住宅情報の信頼 性を低める作用をする。日本の持家所有者は再度中古住宅 市場に参入するよりも、建て替えながら同一土地に住み続 けることに価値を置くことが明らかになった。したがって ストックが増えたとしてもその流動性がない。  ③耐用性を左右する愛着意識の内容  日米共に住宅に対する愛着と住宅の満足度との間に相関 が見られたが、内容は日米全く逆の傾向を示した。日本で は新築、中でも建て替えた住宅に対する愛着が強く、中古 に対する愛着が弱い。また建築年数が長い住宅に対する不 満が大きく、それが古い住宅に対する愛着を低めることに 寄与していた。一方、米国は建築年数が短い住宅への執着 が弱く、古い住宅により強い愛着と評価を示す傾向がみら れた。これらのことは、居住者の住宅に対する資産観を形 成し、住宅の寿命観に影響を与え、住宅保全意識と相関し ていた。  ④住宅の寿命観の形成  日本では既存住宅に対する財産価値の喪失観が中古住宅 の普及に関する阻害要因になり、建て替えおよびその指向 を促進することが明らかになった。そこで本研究では住宅 の寿命観という新しい概念を導入し、寿命観と既存住宅の 評価の相関性を明らかにした。  寿命観は住宅取得時の「住宅予測余命」と「予定居住年 数」、そしてその差「期待差」によって数値化し、それと 住宅の更新状況、将来指向等の変数で構成した。日本は米 国に比べて、住宅の「予測寿命」が極めて短い。しかし、 同一敷地内での「予定居住年数」は長く、建て替え指向が 日本の特徴である。  日本の寿命観が短い要因に住宅の劣化に対する住居観の 根強さがある。劣化によるストックの品質への不安が投資 の信頼を下げている。米国でも劣化の懸念はあるが、寿命 観を左右する決定的な因子ではない。なお今後の建て替え 指向は日本の25%に昇り、米国の2.9倍に当たる。日本の建 て替え指向は特に相続住宅や中古住宅等既存住宅の取得者 の約半数に達した。つまり土地所有権の移転が建て替えの きっかけになる。  ⑤住宅の耐用年数  日本の都市住宅の耐用年数については諸説があるが、約 30年と言われてきたが、その値は滅失住宅の耐用年数の平 均値であり、残存住宅が考慮されていない2)。そこで本研 究では建て替え前の滅失住宅の寿命と現存住宅の「予測耐 用年数」から寿命の中央値を日本が41年で、米国が99年の 値を算出した。  ⑥既存住宅が早期に建て替えられる理由  日本では中古住宅を購入後に建て替えるまで平均年数は 9.3年である。建て替えは新築住宅においても、残存耐久性 能があるにもかかわらず建築後約15年建て替えが活発にな る。日本で早期に建て替えが起きる2大理由は「好みの間 取りにしたい」、「家族の変化に対応」である。「規模の拡 大」の理由は1970年以前に建築された住宅では大きいが、 漸減している。  ⑦既存住宅の評価と建て替え  需要者は中古戸建住宅には当面の建設費がかからないの で土地取得の有利性を認めているが、住宅の満足度が低 く、中古住宅需要者は当初から建て替え予定者が多い。つ まり、日本の中古住宅市場は建て替え市場と裏腹である。 米国では現住宅の不満はリフォームの活用と、より質の高 い中古住宅への転居で対応する。  ⑧既存住宅地の経済評価  アメリカでは「住宅選択の重視項目は1にも、2にも、 3にもロケーション」と言われるほど住宅の経済評価にお いて既存住宅地のロケーションの優位性が認められた。こ の場合のロケーションは交通上の立地性ではなく「成熟し た景観」、「居住者の階層性」、「校区」が3大要素である。日 本でも土地価格に対して同様の傾向が見られるが、中古住 宅には影響が少ない。  以上の既報を通して、日米の住宅需要の相違から日本の 既存住宅の問題点が明確になった。住宅は最も高価な必須 生活財であるにもかかわらず、日本人の意識は経年的に資 産価値の減衰を容認する。また住宅更新率、住宅の寿命観 と既存住宅評価の相関性が高く、日本の住宅の短命さを裏

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付けた。米国では住宅を長期にわたる資産と見なし、投資 的に価値を増幅させる。しかも、米国では古い住宅に投資 価値が高い市場が形成されている。また、米国では住宅の 売買を通した投資が活発であり、その社会環境整備、特に情 報の対称性の確保に対する整備が進んでいる。以上である。

本研究の結果及び考察

2.住宅のストック化の考察

 対象住宅地の概要  回答者は男性が過半数であった。郊外住宅地の開発経過 年数に伴う高齢化(表3)、高齢者の単身世帯化とそれによ る住宅継承問題が確認された(表4)。  ストックの変遷  現居住者が当該住宅地に来住した時点での住宅取得は中 古住宅(既存住宅の購入)が12.2%を占める。既存住宅の 供給は開発後10年を経過すると、中古住宅のみならず、相 続の形でも見られるようになり所有者の移転が始まる。住 宅が中古化する平均建築年数は約10年、建て替えられた住 宅の更新までの年数は18.8年である。この間が中古住宅が 市場性を持つ年数であり、中古住宅市場の幅が狭いことを 表している。  表5は建築年数別の面積と容積率の平均値を表している が、延床面積は15年を境にして近年ほど大きくなる傾向が ある一方、敷地面積にはそのような傾向がなく、その結果、 容積率が近年ほど大きくなる。  住宅階層による住宅ストックの把握  住宅階層指標の作成  現地での建て替えは全体の7.9%に止まるが、中古住宅だ けに限ると10.2%に達した。また住宅の更新時には延床面 積は拡大するが、敷地面積は変化しないか、あるいは分割 される。したがって、住宅の更新は容積率の上昇を招く (図1)ことが明らかである。  このような傾向を踏まえると、住宅の階層を表すには延 床面積、敷地面積を同時に反映する指標が必要になる。そ こで、本研究では新たなパラメーター「住宅階層」を次の 手順で作成した。まず、延床面積と、敷地面積を変数にし た主成分分析のケース得点を求め、その値が大きい順に5 表3 回答者の年齢 平均 合計 70以上 60∼ 50∼ 40∼ ∼39歳 59.9 207 32 76 75 18 6 日 吉 台 100.0% 15.5% 36.7% 36.2% 8.7% 2.9% 56.5 265 36 62 109 41 17 若 草 100.0% 13.6% 23.4% 41.1% 15.5% 6.4% 45.4 195 8 18 23 76 70 青 山 100.0% 4.1% 9.2% 11.8% 39.0% 35.9% 61.1 122 27 46 33 11 5 大 平 100.0% 22.1% 37.7% 27.0% 9.0% 4.1% 60.9 143 41 41 34 19 8 大 津 100.0% 28.7% 28.7% 23.8% 13.3% 5.6% 69.5 104 56 35 10 1 2 茨木高槻 100.0% 53.8% 33.7% 9.6% 1.0% 1.9% 57.5 1036 200 278 284 166 108 合 計 100.0% 19.3% 26.8% 27.4% 16.0% 10.4% 表4 開発年度別家族型 合計 親子 傍系他 数世代 核家族 夫妻 単身 196 3 0 20 146 24 3 約 1 0 年 100.0% 1.5% .0% 10.2% 74.5% 12.2% 1.5% 266 14 0 17 153 69 13 約 2 0 年 100.0% 5.3% .0% 6.4% 57.5% 25.9% 4.9% 503 15 5 78 172 192 41 25年以上 100.0% 3.0% 1.0% 15.5% 34.2% 38.2% 8.2% 965 32 5 115 471 285 57 合 計 100.0% 3.3% .5% 11.9% 48.8% 29.5% 5.9% 57.44 58.14 60.2 58.82 51.09 65.33 67.15 平均年齢 表5 建築年数別平均延床面積・敷地面積、容積率 容積率(%) 敷地面積() 延床面積() 63.4 219.4 135.4 5年以内 75.6 193.5 138.5 6年∼ 73.7 221.3 142.9 11年∼ 58.9 214.2 123.0 16年∼ 63.5 191.9 118.3 21年∼ 65.1 187.5 117.0 26年∼ 61.0 212.3 117.9 31以上 63.8 204.9 124.9 合計 図1

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等分類し5、4、3、2、1の階層を設定した。それを面 積階層と称する。表6は面積階層と延床面積、敷地面積、 建築年数、年齢の平均値を表示している。建築年数は階層 1のみが他の階層に比べて明らかに長いことが注目され る。回答者の年齢は階層1、5で高く、階層の中間層では 年齢が低い。高齢層に面積階層1が多いのは古い時代に開 発されたまま継続して居住している層があることによる。  ところで、面積階層は敷地面積と延床面積から作成した ので、同一の敷地面積の場合には延床面積が大きいほど順 位が高くなる。つまり面積階層は住宅地の高密度化を是認 した値であるともいえる。したがって、町並み全体に対す る寄与も含めた階層が必要である。そこで面積階層と容積 率(容積率が低い方が寄与率が高い)によって同様の手法 で町並階層を作成した。町並階層については延床面積との 関係が弱まり、敷地面積との関係が強まった。建築年数、 年齢の平均値は面積階層と同様の傾向がある(表6)。  住宅ストックの階層性  面積階層と住宅供給形態及び現住宅の種類との関係を分 析したところ、注文住宅は面積・町並階層共に高階層ほど 多く、中古住宅は面積階層が低い階層ほど多いことが明ら かである(χ2検定によって0.0%水準で有意差が認められ た)。質の高い住宅が中古住宅市場にあまり参入しない市 場の階層性が検証された(図2)。  一方図3では建て替えた住宅のみを住宅階層別に表した が、建て替えは面積階層を上げる効果が極めて高い一方町 並階層を低める傾向があることを指摘できる。  表7は住宅の耐用年数を左右する<現住宅の将来、将来 計画、住宅の愛着>の3指標のカテゴリー別に現住宅の平 均予測耐用年数を表している。3指標とも予測耐用年数が 最長の値を示したカテゴリーの数値は48年強である。中で も「自分が住まなくなった後も残したい」では50年に達し た。最短は「現住宅の愛着がない」の38.6年で、「強い愛着 がある」との差が9.33年ある。なお、後述するが現住宅の愛 着と現住宅の将来との間には相関がある。また将来の建て 替え指向も予測耐用年数が短い。この二つのカテゴリーは 標準偏差の幅が狭いことも共通している。 表6 住宅階層別延床面積 敷地面積 建築年数 年齢の 平均値 年齢 居住年数 建築年数 敷地面積 延床面積 60.13歳 22.68年 24.33年 153.70 93.72 1 面 積 階 層 56.36 18.33 19.61 189.15 108.25 2 55.64 15.69 17.24 197.97 118.38 3 56.85 17.24 16.74 208.60 136.07 4 60.31 20.82 17.71 280.46 167.80 5 59.88 22.54 22.78 145.27 116.91 1 町 並 階 層 57.61 19.30 19.39 186.51 126.37 2 54.88 16.20 17.12 198.54 117.03 3 55.91 16.43 17.12 209.16 117.35 4 60.84 20.01 19.07 288.69 145.81 5 57.81 18.87 19.09 205.77 124.67 合計 図2 図3 表7 現住宅の将来、将来計画、住宅の愛着と予測耐用年数 標準偏差(年) 平均値(年) 度数 11.98 41.77 88 転居指向 将 来 計 画 10.23 39.84 90 建て替え指向 18.33 46.27 98 増改築指向 16.58 48.16 403 永住志向 16.82 44.32 214 分からない 17.35 48.07 472 強い愛着 愛 着 の 有 無 13.89 43.12 364 少し 9.20 38.60 62 あまりない 15.84 45.41 898 合計 18.14 48.93 374 残したい 住 宅 の 将 来 13.80 43.45 310 自分が住めればよい 10.23 39.84 90 建て替えたい 9.63 41.43 23 その他 17.10 44.91 119 わからない 16.07 45.47 916 合計

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 このように3指標は予測耐用年数との相関が高いことが 分かる。これにストック化指標そのものである予測耐用年 数と、建て替えの有無を加えて以上の5指標を住宅のス トック化指標と見なすことができる。  図4は面積階層別に住宅の将来を表したものである。 「自分が住まなくなった後も残したい」は面積階層が高く なるにつれて増加し、反対に「自分が住めればよい」は階 層が低い方が多い。  表8は面積階層別に現住宅の予測耐用年数を表した。階 層1を除くと、面積階層が低いほど予測耐用年数も短く、 両者の間には正の順位相関関係がみられる。将来について はどの階層も永住指向が最も多いが、階層が低いほど転居 指向、建て替え指向が増加する。このことは町並階層との 関係でも然りである(図5)。  ところで、現住宅に対する愛着と面積階層とは相関があ る(表9)。そこで愛着の内容を図6に表した。愛着を感じ る最も多い理由は「自分が建てた」(65.5%)、「丈夫な建物 である」(40.0%)、「長年住んだ」(36.1%)、「こまめに手入 れをしてきた」(31.5%)、「間取りを考えた」(30.0%)など である。住宅の質を示す項目では面積階層間で差が見られ る。特に階層5の回答率は際だって多いことが特徴であ 図4 表8 面積階層別平均予測耐用年数(単位年) 合計 5 4 3 2 1 45.25 49.51 46.24 43.38 41.85 44.95 平均値 839 173 172 168 158 168 件 数 *** 一元配置分析による平均値の有意差検定0.000 表9 面積階層別現住宅の愛着の有無 合計 5 4 3 2 1 51.5 64.1 52.2 48.3 45.7 47.2 強 い 41.2 32.6 45.1 40.0 44.7 43.8 少 し あ る 7.3 3.3 2.7 11.7 9.6 9.1 あまりない 907 181 182 180 188 176 合計 母数 単位:下段の数字を母数とした% 図5 図6 面積階層別愛着の理由 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0%

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る。良質住宅にストック化の可能性が見られることを示唆 している。  以上、住宅のストック化指標と住宅階層の関係を見てき たが、いずれの指標においても住宅階層間で有意差が認め られた。その関係を表10にまとめた。

3.良い町並みのイメージ

 町並み評価  本調査では現住宅地の町並み評価に関して町並みに関心 の有無、現在の町並みが気に入っているかどうか(以下「町 並み好感度」とする)、町並みに対する愛着の3つの質問を した(以上を総称して町並み意識とする)。町並みの関心、 「町並み好感度」、町並みの愛着のいずれも高い結果と なった。町並みに対する関心は性差が認められ男性の方が 女性よりも高い。しかし、それ以外の回答者の立場や、居 住条件との間で差がでなかった。「町並みの好感度」は居住 年数間で差が認められたが、これは住宅地の影響によると 考えられる。  町並階層による町並み意識の違いを見たところでは、町 並みの愛着の有無は階層による違いが認められなかった が、「町並みの好感度」と関心は町並階層が高いほど高くな ると言う結果が得られた(表11、表12)。すなわち、「町並 みの好感度」には住宅地の性格が反映していると考えられ る。町並みの愛着と現住宅の愛着度との間には順位相関係 数0.451(危険率0.000)の高い正の相関が認められている。  良い町並みの構成要素  良い町並みのイメージ  回答者は上記のように、現在の町並みに高い関心を示し たが、回答者は町並みをどのように捉えているのだろう か。本調査では表13のカテゴリーを選択肢にして、回答者 が抱く良い町並みのイメージを複数回答で尋ねた。最も回 答が多い項目は「緑が多い」である。以下50%以上の回答 があった項目は「落ち着き」、「敷地のゆとり」、「静けさ」、 「調和」であり、さらに「統一性」も含めて調和に関する 項目は4割以上の支持がある。表では各種変数との間のク ロス集計をχ2検定した有意水準を表している。それによ ると「人の気配」、「建築時期が同じ」以外のほとんどの項 表10 住宅階層と住宅のストック化指標の関係 建て替え経験 耐用年数 現住宅の愛着 住宅の継承指向 永住指向 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 面積階層 0.001 0.001 0.002 0.007 町並階層 表11 町並階層別「町並みの好感度」*** 合 計 あまり気に 入らない まあ気に 入っている とても気に 入っている 102 15 76 11 1 100.0% 14.7% 74.5% 10.8% 141 8 103 30 2 100.0% 5.7% 73.0% 21.3% 172 5 117 50 3 100.0% 2.9% 68.0% 29.1% 158 6 107 45 4 100.0% 3.8% 67.7% 28.5% 111 7 75 29 5 100.0% 6.3% 67.6% 26.1% 684 41 478 165 合 計 100.0% 6.0% 69.9% 24.1% *** 印はχ2検定による有意水準 ***>0.0% 表12 町並み意識3指標の特性 町並階層 住宅の種類 居住年数 性別 年齢 * *** 町 並 み の 関 心 *** *** 「町並みの好感度」 ** ** *** ** 町 並 み 愛 着 度 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0% 表13 良い町並みのイメージ 単位;上件数、下% 合計 他 単調 でない 変化が ある 路地 歴史性 同時期 の建築 個性的 道路と 庭の 一体感 まちの 骨格 人の 気配 統一感 全体バ ランス 周辺の 調和 静けさ 敷地の ゆとり 落ち 着き 緑が 多い 1029 33 80 118 137 138 159 234 298 323 404 453 545 598 645 756 787 度数 100.0 3.2 7.8 11.5 13.3 13.4 15.5 22.8 29.0 31.5 39.3 44.1 53.1 58.2 62.8 73.6 76.6 % *** *** *** ** * *** ** 年齢 *** ** *** *** *** ** *** 性別 ** *** ** * *** 町並階層 *** *** * *** *** *** ** *** *** *** *** *** 町並みの関心 * * *** * ** * * ** ** 町並みの愛着 * ** ** * ** 町並みの好感度 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0%

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目は町並みの関心度によって有意差が認められた。一方町 並階層による差が見られる項目は多くないが、「敷地のゆ とり」、「変化に富む路地」、「まちの骨格」、「単調でない」 の項目において差が認められた。これらは形態的要素であ ることが注目される。反対に町並階層の間で有意差がない 「静けさ」や、「変化」など雰囲気に関する項目は年齢や 性別による差異がある。  現在の「町並みの好感度」の構成要素  次に表14のカテゴリーを選択肢にして、現在の町並みに 抱く「町並みの好感度」を構成する要素を質問し、複数回 答で尋ねた。緑の量、街路樹、垣根など、樹木の緑に関す るものが上位を占めた。また山川、昆虫、空など、自然も 重要な構成要素である。それに比べると、住宅の色や屋根 の形、軒揃えなどの形態に関する回答は少ない。町並みの 構成要素に関しても男女間で差がみられた。男性は、町並 みを物質的・側面的に捉える傾向があり、外観や町並みの 調和などを重視する。一方、女性は人間関係などを重視す る傾向にあり、近隣関係や人通りなどを要素として捉えて いた。  表15は町並み構成要素の回答を「植物」「建物」「庭」「道 路」「自然」の5大分類して各分類内での回答数を平均し、 町並みの愛着別、「町並みの好感度」別に表している。愛 着、「町並みの好感度」共に高いほど回答数も高い。換言す ると、現在の町並みに肯定的な人ほど多くの構成要素に よって町並みを認識しているといえる。同様に、植物、自 然に関する項目を「まちの緑」、「自然の緑」、「自然一般」 に再分類し考察したところ、「自然の緑」は、「町並みの好 感度」に無関係であるが、「街の緑」は「町並みの好感度」 が高い人ほど回答数が多くなった。住宅地内の緑は「町並 みの好感度」の重要な要素である。  町並みの骨格のイメージ  「まちの骨格」は住宅地計画に不可欠である。良いまちの イメージの中で「まちの骨格がしっかりしている(「まち の骨格」)」の選択が29%あったので、これと、他のカテゴ 表14 町並み構成要素 単位;上件数、下% 空の 大きさ 道路 の花 星空 花壇 芝生 野鳥 昆虫 ・蛍 街路灯 住宅 の形 山・川 庭の花 垣根 石垣 庭の 手入 歩道 バラ ンス 街路樹 緑の量 171 194 197 213 239 261 267 300 327 348 361 364 401 420 482 495 22.8 25.9 26.3 28.4 31.9 34.8 35.6 40.1 43.7 46.5 48.2 48.6 53.5 56.1 64.4 66.1 合計 由緒 普遍 住宅 道路 標識 屋根 歴史性 大木 電柱 埋設 人通り 門 新住宅 水 軒揃え 紅葉樹 農地 住宅 の色 6467 26 36 52 59 65 68 88 104 106 111 114 115 147 167 169 863.4 3.5 4.8 6.9 7.9 8.7 9.1 11.7 13.9 14.2 14.8 15.2 15.4 19.6 22.3 22.6 表15 町並みの愛着別町並み構成要素数 町並みの愛着、「町並みの好感度」別町並み構成要素数 自然 道路 庭 建物 植物 自然 道路 庭 建物 植物 1.90 1.28 2.07 1.38 2.77 とても気に入っている 2.23 1.34 2.02 1.44 2.86 愛着が強い 1.72 1.01 1.60 1.14 2.26 まあ気に入っている 1.72 1.03 1.73 1.19 2.30 ややある 1.13 0.96 1.22 0.67 1.62 あまり気に入っていない 1.32 0.91 1.37 0.96 2.06 何とも言えない 1.73 1.07 1.69 1.17 2.34 合 計 1.31 0.93 1.17 0.73 1.80 愛着なし 表16 良い町並みのイメージ 単位;% 単調で ない 変化があ る路地 歴史性 同時期 の建築 個性的 道路と庭 の一体感 人の 気配 統一感 全体バ ランス 周辺 の調和 静けさ 敷地の ゆとり 落ち 着き 緑が 多い 12.5 15.2 16.6 18.3 24.9 32.9 40.5 55.0 62.6 68.9 56.7 74.4 80.3 85.8 % まち の骨 格 ** * ** ** *** ** *** *** *** *** *** ** *** 相関 0.363 0.23 0.248 0.259 0.416 0.352 0.281 0.419 0.476 0.441 0.327 0.248 0.36 係数 5 12 11 10 4 7 9 3 1 2 8 11 6 相関順位 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0% 表17 町並みの骨格と、町並みの構成要素との順位相関係数 軒揃え 屋根 垣根・石垣 花壇・芝生 住宅の形 歩道 空の大きさ 街路灯 街路樹 住宅の色 緑の量 0.06 0.09 0.10 0.13 0.14 0.14 0.14 0.15 0.15 0.17 0.18 相 関 係 数 0.1057 0.0163 0.0043 0.0002 0.0002 0.0001 0.0001 0.0000 0.0000 0.0000 0.0000 有 意 確 率 755 755 755 755 755 755 755 755 754 755 755 N

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リーとの間の重複回答を算出し、相関の順位によって回答 者が抱く「骨格」のイメージを分析した(表16、表17)。上 位3位までが調和に関係する。4、5位に個性や変化に関 する項目が入る。  骨格の構成要素になる「緑」、「道路と庭の一体計画」、「敷 地のゆとり」は相関は認められるが、順位は低い。同カテ ゴリーと町並みの構成要素との間の相関を算出したとこ ろ、相関係数が上位に上がっている項目は色に関する項目 で、これに比べて、形態に関する項目はやや低い結果であ る。具体的な「骨格」のイメージは弱く、形態を説明する 表現に至っていない。以上町並み意識と町並み構成要素の 認識との関係を考察した。これによると、意識が高い人の 方が町並みを構成している要素を多くあげることが確認さ れた。さらに緑だけに絞った場合には「町の中の緑」にお いてその傾向が顕著であった。  町並み意識の相互関係  町並み意識を表す3つの指標についてスピアマンの順位 相関係数をとり、どのような関係が成り立っているか調べ た。その結果、町並みの愛着と他の2変数とは相関が高い が、「町並みの好感度」と町並みの関心との間では相関が見 られなかった。相関が高かった町並みの愛着別「町並み好 感度」と、町並みの関心を表18、表19にしておく。これら を通して、町並みに対する愛着が重要なキー概念になるこ とを指摘できる。  町並み像の型分類  良い町並みのイメージをコレスポンデンスによって分類 した。図7はコレスポンデンスによる次元1と2の値を利 用した散布図である。全項目において回答有りが次元1の 左に、無回答は右の下(第4象限)に集まった。次元1の さらに左方向は、敷地道路、個性、骨格、バランス、人な どを表す言葉が多く、右方向に位置しているカテゴリーの 中では落ち着き、静寂、緑がある。この傾向から、次元1 は形態と雰囲気を分ける軸とみられる。同様に次元2の上 方向は個性、変化、歴史、人が並び、下方向は開発当時の 住宅、静けさ、統一などが並ぶ。これらの散布傾向から次 元2は上方向が時間の経過などから生まれる多様性を、下 方向は同質性・安定性を表す軸とみることができる。以上 の次元1、次元2を中央値でクロスして得られた4つの象 限を使って第1象限から左回りに「無規制型」、「時間熟成 型」「形態規制型」「初期郊外型」の4つの型に分類し「町 並み像」と名称した(図7参照)。 「町並み像」の特徴  図8は住宅地毎に「町並み像」得点をプロットしている。 開発年度、開発当初の団地計画、開発後の長期経過による 空き家化、空き地化の状況などによる住宅地の特徴と一致 した。すなわち、若草、青山は1人契約の建築協定や地区 計画つきで土地の販売をした住宅地であるが、その通りに 「形態規制型」に位置した。坂本は田園地帯にあり、水田 が徐々にミニ開発されてきた地域で、「無規制型」に位置し 表18 町並みの愛着別「町並み好感度」 合 計 あまり気に 入らない まあ気に 入っている とても気に 入っている 順位相関係数 =0.479*** 162 3 66 93 愛 着 強 い 町  並  み  の  愛  着 100.0% 1.9% 40.7% 57.4% 22.5% 7.3% 13.0% 54.1% 374 4 297 73 や や あ る 19.5% 79.4% 1.1% 100.0% 51.9% 9.8% 58.6% 42.4% 134 18 113 3 何 と も 言 え な い 2.2% 84.3% 13.4% 100.0% 18.6% 43.9% 22.3% 1.7% 50 16 31 3 あまりない 6.0% 62.0% 32.0% 100.0% 6.9% 39.0% 6.1% 1.7% 720 41 507 172 合 計 23.9% 70.4% 5.7% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 上段は実数、中段横の%、下段縦の% P=0.000 表19 町並みの愛着別まち関心 合 計 あまり無い ややある 強くある 順位相関係数 =0.336 251 4 66 181 町並み愛着 強 い 町  並  み  の  愛  着 100.0% 1.6% 26.3% 72.1% 25.0% 9.1% 12.4% 42.0% 518 17 314 187 や や あ る 36.1% 60.6% 3.3% 100.0% 51.5% 38.6% 59.1% 43.4% 172 11 114 47 何 と も 言 え な い 27.3% 66.3% 6.4% 100.0% 17.1% 25.0% 21.5% 10.9% 65 12 37 16 あまりない 24.6% 56.9% 18.5% 100.0% 6.5% 27.3% 7.0% 3.7% 1006 44 531 431 合 計 42.8% 52.8% 4.4% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 上段は実数、中段横の%、下段縦の% P=0.000

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た。大平は建て売り住宅を中心に開発されて以来40年以上 経過した住宅地である。現在では空き家や空地が目立ち始 めており、宅地が個別に売買され、建て替えが進行し、そ して土地の細分化も進んでいる。日吉台は約30年前に郊外 に開発された良好な住宅地で、現在は空き家、空き地が目 立ち始め、建て替えも進行しているが、比較的土地の細分 化は進んでいない。そのことを反映して、次元1には反応 しなかった。「時間熟成型」に位置した高槻・茨木と大津 は開発年度が混在している集団である。  ところで、対象の特性を示す各種変数と「町並み像」の 関係を見たところ、表20に示した変数において5%水準未 満で有意差が認められた。しかし、これらの変数は全て住 宅地の特性を表している。したがって、これらの変数によ 図7 「町並み像」の概念 多様性・時間経過 第1象限 無規制型 第2象限 時間熟成型 雰囲気 形 態 第4象限 初期郊外型 第3象限 形態規制型 安定性・同質性 交点(0.14,-0.06)各次元の中央点 住宅地別平均値 次元2 次元1 0.060 0.005 日 吉 台 −0.275 −0.011 若 草 0.362 0.176 坂 本 −0.223 −0.110 青 山 0.177 0.265 大 平 0.407 −0.117 大 津 0.251 −0.130 茨木高槻 図8 住宅地の町並み像得点 表20 各種変数間における「町並み像」の特性 住宅の 種類 延床 面積 敷地 面積 居住 年数 建築 年数 年齢 * * *** *** *** * 「町並み像」 *** *** *** *** *** *** 住宅地 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0% 表21 住宅地選択理由 分類 % 件数 順位 住宅地選択理由 住宅地計画 48.9 489 4 宅 地 の 安 全 性 住宅地計画 43.7 437 5 住 宅 地 計 画 住宅地計画 15.5 155 14 歩 行 者 安 全 住宅地計画 42.5 425 6 広 い 道 路 緑化・成熟性 61.5 614 2 静 か 緑化・成熟性 6.4 64 16 町 並 み 成 熟 緑化・成熟性 24.1 241 10 街 路 樹 が 良 い 緑化・成熟性 38.1 381 7 豊 富 な 樹 木 自然環境 60.5 604 3 日 照 自然環境 18.4 184 12 眺 め 自然環境 64.8 647 1 自 然 環 境 都市施設 30.8 308 8 交 通 至 便 都市施設 18.7 187 11 買 物 至 便 都市施設 17.2 172 13 校 区 が 良 い 経済性 4.1 41 19 値 上 期 待 経済性 29.5 295 9 価 格 妥 当 地縁・血縁 5.4 54 18 知 人 近 く 地縁・血縁 10.0 100 15 身 内 近 く 地縁・血縁 6.1 61 17 故 郷 100.0 998 合 計      平均順位 地縁・血縁 経済性 都市施設 自然環境 緑化・成熟性 住宅地計画 16 14 11 5.3 8.8 7.2

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る反応は住宅地と「町並み像」との関係を投影したものと 見なすことができる。  このように、「町並み像」には住宅地の特性が色濃く投影 されていることから、住宅地の選択理由に遡って「町並み 像」の形成を検証する必要がある。  住宅地選択理由と「町並み像」  住宅地選択理由は表21に示した選択肢による多重回答方 式で質問した。選択肢は①住宅地計画、②緑化・成熟性(時 間の経過)、③周辺の自然環境、④周辺の都市施設、⑤経済 性、⑥地縁・血縁に分類ができる。このうち、前2者は住 宅地のデザイン的因子であるのに対して他は外的因子であ る。住宅地選択理由の中で最も回答率が高い項目は「自然 環境」である。以下「静か」、「日照」、「宅地の安全性」、 「住宅地計画」までが上位5位である。大分類毎の平均順 位を見ると、「自然環境」、「住宅地計画」、「緑化・成熟性」、 「都市施設」、「経済性」、「地縁性」となり、町並み構成要 素に対する反応と相似している。  さて、「町並み像」と住宅地の選択理由の関連についてで あるが、図9は各選択肢毎に算出した「町並み像」の次元 1、次元2の固有値の平均値をプロットしたものである。 これによると「町並みの成熟度」、「歩行者の安全性」、「豊 富な樹木」など住宅地内の構造に由来し、町並みを積極的 に評価した選択肢は第3象限すなわち「形態規制型」のよ り外縁部に散布した。反対に、立地、経済性、血縁・地縁 など住宅地の社会的条件に由来する選択肢は「時間熟成型」 と関連する散布をした。住宅地選択理由を「自然的環境」 「住宅地計画」、「緑化・成熟性」、「都市施設」、「経済性」、 「地縁・血縁」の6分類して「町並み像」別に図10に表し た。「形態規制型」においては「住宅地計画」、「緑化・成 熟性」が他のタイプより有意に多いことを示した。つまり、 「形態規制型」は現住宅地の入居時点で「町並み像」が明 確であったいえる。  「町並み像」と町並み評価  「町並み像」は町並みに対する関心度、愛着度、「町並み の好感度」のどの変数とクロス集計をしても明確な差異を 示した。中でも町並みの関心度とは高い相関が認められた (図11)。  図12は「町並み像」の座標上に町並み意識の各カテゴリー の固有値の平均値をプロットしたものである。この図には 極めて興味深い傾向が見られる。まず、「町並みの好感度」 については、「特に気に入っている」が最も下に、「まあ気 に入っている」が原点近くに、そして「気に入っていない」 が次元2の上方に位置している。次元1に対する反応の幅 が狭く上から下へ、次元2を急勾配の直線上にプロットさ れた。現在の開発方針は当初に完成されている「安定」を 好ましいと思う人には受け入れられるが、住みながら完成 図9 図10 図11

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させていく時間に伴って成熟する多様性を好む人のニーズ には十分対応していない状況にある。町並みの関心につい ては、強い関心があるから、あまり関心がないまで、左斜 め下から、右斜め上まで、ほぼ一直線上にあり、次元1と、 次元2に対して1次式の反応を示した。つまり町並みには 総合的な視野から関心が払われていると見ることができ る。最後に、町並みの愛着は愛着が強いが左下を基点にし て原点を中心に左下から右上へ円弧を描くような動きをし ている。つまり、次元1のプラス側は居住者の参加意識が 弱く特徴が薄いが故に、愛着の対象になりにくいことを表 している。その結果、強い関心と、強い愛着と、「町並みを 気に入っている」の3カテゴリーは比較的接近して「形態 規制型」の中にプロットされた。「まあ気に入っている」、 やや愛着がある、やや関心があるは原点付近に固まってい る。あまり関心がない、あまり愛着がない「気に入らない」 は「無規制型」の上方に位置し、関心がないは単独で「無 規制型」の外縁部に位置した。さらに、町並みの評価は右 上から左下へ方向性を持つ。しかしながら一方では変化・ 個性に対する評価があることによって、同調性・安定性に 対しては強い反応を示していない。  その関係を整理して表22に表した。「形態規制型」は町並 みに対する関心が強く、また現状に対して満足している様 子がみられるが、「時間熟成型」は町並みに対する居住者の 関心に現状が応えられていない。「無規制型」は町並み意識 の3変数のいずれも消極的意識と相関し、町並みの保全に 対して関心が薄い。

4.良い町並みから期待される効果

 町並みの意識が町並みの認知に及ぼす影響  本調査では、居住者とまちとの出会いの事例に表出とコ ミュニケーションを使ってまちの認知度を取り上げ、その 傾向をとらえた。  表出物の認識  同じ街路から見られる表出物をどれだけ認識しているか は町並みの関心の度合いの具体的な指標になる。(注:表出 物とは外から認識できる物のうち好ましい評価が与えられ る物の総称である)。本調査では、一般に庭にある物13項 目を選択肢にして、そのうち自宅にある物、近所にあり眺 めるのを楽しみにしている物をそれぞれ複数回答で尋ね た。「町並みの好感度」、町並みの愛着別に平均したのが表 23である。回答者全体の平均は自宅が3.0、近所が3.6個で ある。認識数が最も多いのは自宅も、近所も町並みに強い 愛着を持つ場合である。「町並みの好感度」が高い場合も近 似している。そして、最も少なく回答した「町並みが気に 入らない」との間で1.5の開きが見られた。  以上から、町並みに対する意識が肯定的であるかどうか と表出の認識の間の関係を認められた。  町並み意識とコミュニケーションの傾向  コミュニケーションについては住宅地の中で挨拶する人 を9種類あげ、複数回答で尋ねた(表24)。この場合もまち に対する意識との間で有意差が認められた。「通勤途上」、 「子どもの関係」での出会いは町並み意識と相関しないが、 「散歩で出会う人」「両隣」「向い」「裏隣り」の隣人につ 図12 表22 町並みの評価項目と「町並み像」の関係 時間熟成型 スプロール型 初期郊外型 形態規制型 高/低 高/低 中 高 町並階層 強い あまりない ややある 強い 町並関心 強い あまりない まあまあ 強い 愛着度 あまり気に 入らない 気に入らな い 中 間 気に入って いる 「町並みの 好感度」 表23 「町並みの好感度」・愛着度別表出認識数 全体 町並みの愛着 「町並みの好感度」 なし 何とも 言えない やや ある 強い ない まあ まあ とても気に 入っている 3.0 2.3 2.6 3.0 3.8 2.0 3.0 3.5 自宅 1.7 1.8 1.5 1.6 1.8 1.4 1.6 1.7 3.6 2.8 3.0 3.6 4.3 2.8 3.5 4.2 近所 2.2 2.1 2.1 2.0 2.2 2.2 1.7 2.1 上は平均値、下は標準偏差

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いては「町並みが気に入っている」回答者が多い。町並み の愛着が強いと回答した人は上記に加えて「サークル」「自 治会等」などコミュニティ活動による出会いがある。  町並み意識と町並みの効果  回答者の99%に良い町並みが効果を生み出すことを認め られている。具体的な効果の内容として回答が多かった項 目は「気持ちがよい」、「治安が良い」であり、6割の回答 があった。図13は良い町並みの効果の内容と「町並みの好 感度」の関係を表している。町並みが「特に気に入ってい る」は効果を表す全ての項目において、他よりも高い回答 率を示した。中でも「資産価値が上がる」「住宅地の人気 が出る」の項目は有意差が認められた。表25は町並みに対 する関心別に効果を表しているが、同じく関心が高い方が 沢山の効果をあげており、関心の度合いとの間で有意な差 が認められる。同じく、「資産価値が上がる」、「住宅地に人 気が出る」という効果は町並みに関心が高い回答者では 40%見られ、関心が低い回答者との間で大きな差が見られ た。「近所つきあい」は愛着の強さ間で0.0%の有意差が認 められた。  図14によると、町並みの効果に対する認識は「町並み像」 との間で明らかに差が認められる。特に、「時間熟成型」で は「気持ちがよい」、「治安がよい」、「散歩が楽しい」、「近 所付き合いがよい」のコミュニティ生活に対する効果が他 に比べて多い。一方、「形態規制型」は「住宅地の人気が 出る」、「資産価値が上がる」の資産管理に関連した2項目 の回答率が他よりも多く45%に達した。この2項目は「初 期郊外型」、「無規制型」では回答が少なく「町並み像」の 違いによって0.1%水準未満の有意差が認められた。「形態 規制型」の多くが良い町並みが不動産価値に投影されるこ とを肯定していることに留意したい。 表24 あいさつをする人の種類 町並みの愛着 「町並みの好感度」 合計 件) 0.083 0.001 739 両 隣 0.035 0.017 677 向 い 0.058 0.047 603 同 一 通 0.416 0.018 522 裏 隣 0.004 0.645 507 自 治 会 等 0.012 0.000 417 散 歩 の 出 会 い 0.740 0.696 355 子 供 の 関 係 0.001 0.488 216 サ ー ク ル 0.134 0.557 112 通勤での出会い 図13 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0% 表25 まちまみの関心と良い町並みの効果の関係 合 計 あまり無い ややある 強くある 592 23 295 274 散歩が楽 しい 64.5% 56.1% 52.3% 59.5 797 31 405 361 気持ちが よい 84.9% 77.0% 70.5% 80.1 622 20 318 284 治安がよ い 66.8% 60.5% 45.5% 62.5 * 362 14 165 183 近所つき あい 43.1% 31.4% 31.8% 36.3 *** 330 5 153 172 資産価値 が上がる 40.5% 29.1% 11.4% 33.2 * 328 5 162 161 住宅地の 人気 37.9% 30.8% 11.4% 33.0 3 1 2 0 無 効 果 995 44 526 425 合 計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0% 図14 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0%

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 町並み育成の誘導策  本調査では表26の選択肢を用意して良い町並みを育てる 上でどのような誘導策が効果的であるかを質問した。それ と町並み意識との関係を見たところ、町並みの関心、町並 みの愛着が強いほどどの項目も回答率が高いことがわかっ た。また、町並み意識が高い人は、「居住者の能力」「合意 形成」「管理規則」などのコミュニティ管理の必要性をあ げている。  図15、図16は町並みの誘導策と「町並み像」の関係を表 したものである。図16では全ての項目の次元1の平均値が マイナスになり「時間熟成型」と「形態規制型」との間で 相関した。「時間熟成型」は「形態規制型」より「居住者 能力」、「愛着を持つ」の項目が多く人的条件を重視してい る。さらに「時間熟成型」の外周部に「樹木の伐採の許可 制」が位置していることは、時間をかけて成長した街路樹 を住宅地の共有資産と見なす注目すべき特徴である。これ に対して、「形態規制型」は「住宅地の財産化」などの資 産管理に対して反応しているのが特徴である。これらに比 べると、「無規制型」、郊外開発団地型は全ての項目で回答 が少ないが、特にコミュニティ管理に関して差が目立つ。  以上、町並みに対する関心と、町並みを良くすることに 対する反応を現在の町並みの条件を通して考察してきた。 散歩や、庭づくりなどの私的に働きかけることが町並みに 対する関心を生む、そして現在の町並みに対して肯定的で ある場合にはコミュニティへ活動も積極的になる傾向をと らえることができた。  近年に開発される郊外住宅地では景観計画が個性化の特 徴の一つになって来ている。それは、一人契約による建築 協定や地区計画の手法で購入者に周知され、住宅地の価格 に反映させている。したがって、居住者は居住地の景観に 思い入れを持ち、経済評価に反映することに関心を示して いることが把握できた。このことは既存住宅の耐用年数の 延長や継承にどのような効果をもたらすのであろうか。本 報はその点に言及しておく必要がある。  住宅階層と住宅のストックの考察  「町並み像」の階層性  「町並み像」の階層性について図17に表した。図によれば 「形態規制型」は明らかに階層が高くなるにつれて比率が 表26 町並みの関心の度合いと有意確率 好感度 愛着 関心 合計 あまり 無い やや ある 強く ある *** *** 615 23 299 293 居住者能力 61.9 51.1% 57.2% 68.8% *** *** 334 8 154 172 合意形成 32.6 17.8% 29.4% 40.4% *** *** *** 326 5 148 173 管理規則 32.8 11.1% 28.3% 40.6% *** *** 442 14 210 218 住宅地の財 産化 51.2% 40.2% 31.1% 44.5 * 134 5 59 70 地価に反映 13.5 11.1% 11.3% 16.4% *** ** 289 8 135 146 各庭の整備 29.1 17.8% 25.8% 34.3% * 101 7 46 48 伐採の許可 制 11.3% 8.8% 15.6% 10.2 *** * 729 30 368 331 愛着を持つ 73.3 66.7% 70.4% 77.7% * 34 0 16 18 町並み育成 他 4.2% 3.1% .0% 3.4 994 45 523 426 合 計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0% 図15 町並み育成の誘導策の町並み像プロット図 図16 * 印はχ2検定による有意水準,*> 5%,**> 1%,***>0.0%

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上がり、反対に「無規制型」は階層が下がるにつれて比率 が上がる。この2タイプは町並みの階層と高い相関があ る。このことから建築協定は高階層において町並みを形成 する手法として受け入れられるが、低階層には受け入れに くいタイプと言うことができるだろう。一方、「時間熟成 型」は「無規制型」よりも回答が少ないが、比較的高階層 と、低階層に多く凹型の分布をした。中でも最高の5階層 だけは「無規制型」よりも回答率が高く、時間の経過を放 置するのではなく、時間の経過が町並みの熟成に寄与する ことに期待を持っていると言えるだろう。反対に階層1は 「時間熟成型」が多いとはいえ、「無規制型」が4割も存 在し、「町並み像」を共有する水準にはない。「初期郊外型」 は中位で多い凸型の分布をして「時間熟成型」とは相反す る傾向を見せた。つまり、階層の中位では標準が好まれ前 者のような個性や多様性への評価が低いということを示し ているといえるだろう。  住宅ストック化に向けて良い町並みの影響  最後に良い町並みが住宅のストック化に及ぼす影響につ いて分析し、町並みが住宅の寿命を延ばす可能性に言及す る。  前述したように良い町並みの効果は肯定された。効果の 及ぶところは雰囲気による快適性への効果が多く「資産価 値が上がる」については3割程度に留まり、決して多くは なかったが、町並みに関心がある人や、「形態規制型」で は45%の支持が得られた。本項ではこの効果に着目した。 図18では町並みに対する愛着の度合いによって「資産価値 が上がる」効果の回答者を表している。強い愛着がある方 が回答者が多い。  表27は「資産価値が上がる」効果の回答者と非回答者別 に回答者が現在居住している住宅に住まなくなった後の希 望とをクロスしたものである。これによると、「資産価値 が上がる」の回答者の方が「自分が住まなくなった後も残 したい」と言う回答が多い。ところで、図19によれば住宅 の将来に対する希望は明らかに愛着が強い方が残したいと 答えている。これは住宅に対する愛着も町並みに対する愛 着も然りである。したがって、住宅に対する評価が住宅の 図17 図18 町並みの愛着度 住宅地の財産化 表27 「資産価値が上がる」効果の回答と住宅の将来 合 計 わから ない その他 建て替 えたい 自分が住め ればよい 残し たい 310 38 2 29 104 137 回 答 者 100.0 12.3 0.6 9.4 33.5 44.2 658 95 21 72 222 248 非回答者 100.0 14.4 3.2 10.9 33.7 37.7 図19 * 印はχ2検定による有意水準,*> 5%,**> 1%,***>0.0% 図20

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継承を支持していると言えるので、「資産価値が上がる」効 果が積極的に認められているといえるだろう。一方、転居 指向者だけを取り出した図20において、「資産価値が上が る」効果が住宅市場における町並みの評価をを支持したこ とは注目に値する。  町並み像が既存住宅の継承に対してもつ意味  既存住宅の耐用性を高めるために中古市場を育てる必要 がある。そのために求められる条件を①中古住宅の価格に 反映させる要因、中古住宅市場を強化するための条件の2 つの変数で求め、それと「町並み像」との間の相関性を取っ た。表28は中古住宅が普及するために中古住宅の価格にど のような要素を反映する必要があるかを尋ねた回答を同じ く町並み像による差異を示したものである。この関係にお いても全ての項目において0.00%水準の有意水準で町並み 像による差異が認められた。「町並み」、「治安」、「緑」は 既述してきた町並みに関わる項目である。これに注目した のが図21である。「形態規制型」は全ての項目で最も回答率 が高く、次には「時間熟成型」が続く。この2つの型の間 には「町並み」に差が認められる。  一方「無規制型」は最も回答率が低く、「形態規制型」 の回答率の1/2程度しかなかった。どの項目の回答率も 町並み像による差異が極めて明確である。  図22は中古住宅市場整備に求められる条件を質問し、そ れと町並み像との関係を図示したものである。  これも全ての項目において、0.0%の有意水準で町並み像 による差異が認められた。「時間熟成型」の方が「形態規 制型」よりも幾分回答率が高くなったが問題にするほどで はない。以上の2つの変数が「町並み像」とこのように高 い相関性を持ったことは既存住宅の市場価値に町並みを反 映させることの妥当性が支持される可能性を示唆してい る。以上、本報では住宅地の景観形成に向けられる評価が どのように住宅の寿命観に影響を及ぼすかを検討し、そし てその結果を通して日本の都市住宅のストック化の可能性 を考察してきた。

5.結論

 まず、本報の結果を以下に要約する。 1.住宅の短期建て替えは宅地の高率利用化を促進する。 その結果一般には開発後の年数が経つにつれて、住宅地の 面積階層は上昇するものの、町並階層は下降する。そのた 表28 町並み像別中古住宅の価格に反映するのが好ましい事項 合計 緑 町並み 治安 公共サ ービス 校区 日当 たり 植裁 敷地 面積 住宅 面積 価格 安全性 間取 材料 施工 技術 手入れ 214 97 145 155 85 53 173 70 148 117 58 161 102 141 139 167 時 間 熟成型 78.0 65.0 65.9 47.7 75.2 27.1 54.7 69.2 32.7 80.8 24.8 39.7 72.4 67.8 45.3 283 140 216 212 106 62 225 94 195 160 64 208 133 168 175 213 形 態 規制型 75.3 61.8 59.4 47.0 73.5 22.6 56.5 68.9 33.2 79.5 21.9 37.5% 74.9 76.3 49.5 202 58 108 115 37 28 140 36 114 84 29 95 80 78 87 127 初 期 郊外型 62.9 43.1 38.6 39.6 47.0 14.4 41.6 56.4 17.8 69.3 13.9 18.3% 56.9 53.5 28.7 274 53 113 134 35 29 158 32 122 91 33 146 85 94 121 176 無 規 制 型 64.2 44.2 34.3 31.0 53.3 12.0 33.2 44.5 11.7 57.7 10.6 12.8% 48.9 41.2 19.3 973 348 582 616 263 172 696 232 579 452 184 610 400 481 522 683 合 計 図21 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0% 図22 * 印はχ2検定による有意水準 *> 5%,**> 1%,***>0.0%

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めに良好な町並みの形成のためには容積率の上昇問題を解 決することを避けて通れない。一方、住宅の流動は建て替 えの抑制の可能性を持つが、現在の住宅ストックの流動性 は極めて低く、また流通している中古住宅の階層性が低い ために建て替えの抑制効果は出ていない。つまり現状の中 古住宅市場のままでは良質の住宅のストックができること は期待できないのである。 2.現在の居住者の町並みの意識は相当に高い。その居住 者に良い町並みのイメージを求めたところ、「全体が統一 され調和している」ことであった。そのイメージを構成す る要素には自然を中望・遠望する環境、まちの中での緑の 3要素が不可欠であった。これに対してまとまりのある住 宅地計画や形態に対するイメージは弱かったが、それが住 宅販売のコンセプトになっていた住宅地では認識が高かっ た。 3.ところで「樹木の緑」は一般的には住宅地外周辺を取 り巻く緑が評価されており、住宅地内の「緑」を評価の対 象にあまり取り上げていない。しかし、町並階層が高い場 合には住宅地の中の「緑」を町並みの構成要素にあげるも のが多く、現在居住している住宅地をモデルにしているこ とが分かる。したがって、よい町並みを計画することに よって、居住者の町並み像を育てることが可能である。 4.町並みのとらえ方には男女差が明確であった。また、 男性は町並みを物質的・側面的に捉える傾向があり、外観 や町並みの調和などを重視する。一方女性は町の中の人間 関係などを重視する傾向があり、近隣関係や人通りなどを 構成要素として捉えている。男性はまちづくり活動に積極 的である。 5.町並みの愛着と「町並みの好感度」、あるいは町並みの 愛着と町並みの関心は相関が高いが、「町並みの好感度」と 関心とは相関が見られなかった。これらを通して、町並み に対する愛着が重要なキー概念になることを指摘できる。 「町並みの好感度」、愛着が高い回答者の方が住宅地にお ける出会いが豊かである。また、町並み活動も、自宅周辺 だけにとどまらず、自治会、まちづくり活動へと発展して いる。この流れは正の循環を生み出す源と考えられる。 6.町並み像からみた現住宅地の評価  本回答者の町並み像を分類したところ、現住宅地の特性 が色濃く投影された。しかし、その一方、町並みに対する 愛着と町並み像は相関し、かつ愛着は居住年数を経るに 従って強まる傾向にある。したがって、居住者の町並み像 の形成は住宅地選択時に始まるとはいえ、その後の愛着の 誕生と発達が町並み像を完成させるといえる。 7.「町並み像」には明確な階層性が見られる。「形態規制 型」は明らかに高階層に、反対に「無規制型」は低階層と 対応する。このことから建築協定は高階層において町並み を形成する手法として受け入れられるが、低階層には受け 入れにくいタイプと言うことができるだろう。一方、「時 間熟成型」は高階層と、低階層に多い凹型分布を示した。 同タイプは「形態規制型」と同様に町並みに関心が高いが、 好感度は必ずしも高くはなかった。つまり、現在の住宅地 の計画が居住者と共に形成して行くには柔軟性に欠けてい ると言うことを表している。 8.良い町並みが住宅のストック化に及ぼす影響について 分析し、町並みが住宅の寿命を延ばす可能性をみたとこ ろ、良い町並みの効果が肯定され、効果の及ぶところは雰 囲気による快適性にある。「資産価値が上がる」効果は全体 では3割程度に留まっていたが、町並みに関心がある人 や、「形態規制型」では半数弱の支持が得られた。本報では この効果に着目した。また「資産価値が上がる」効果は自 分が現住宅に住まなくなった後も現住宅を残したいと言う 希望と相関し、かつ明らかに愛着が強い回答者と相関し た。これは住宅に対する愛着も町並みに対する愛着も然り である。したがって、住宅に対する評価が住宅の継承を支 持していると言えるので、「資産価値が上がる」効果が積極 的に認められているといえるだろう。一方、転居指向者に おいて、「資産価値が上がる」効果が高く、住宅市場にお ける町並みの評価を支持したことは注目に値する。 9.既存住宅の耐用性を高めるために中古市場を育てる必 要がある。そのために求められる条件を①中古住宅の価格 に反映させる要因、中古住宅市場を強化するための条件の 2つの変数で求め、それと「町並み像」との間の相関性を 取ったところ、全ての項目が「町並み像」と高い相関性を 持った。そのことは既存住宅の市場価値に町並みを反映さ せることの妥当性が支持される可能性を示唆したものであ る。  以上が本報で得られた結果の要約である。  既存住宅の継承の条件  現在の優れた町並みに資産価値を上げる効果があること が認められつつあり、町並みの存続を重視する芽が着実に 育っている。優れた町並みの概念には開発時に付加された 形態的コンセプトと、時間の中で円熟していく個性の2つ の型が存在する。建て替えはどちらの型の町並みの維持の

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妨げになるが、特に円熟する時間を必要とする後者の妨げ になる。現在の町並みの評価においては前者のイメージを 持つ居住者は現在居住する住宅地の開発コンセプトと一致 しており、満足度が高いが、後者のイメージを持つ居住者 は時間による良い町並みの円熟性が実現しないという不満 を持っている。また前者をコンセプトにした住宅地が出現 し始めた歴史が浅く、現在の中古住宅市場に反映されてい るとはいえない。したがって、今後これらの住宅地におけ る既存住宅の何らかの変更が活発になる時期までに、優れ た町並みを維持してきた質的価値の経済評価を用意してお くことが求められる。それが確率されれば良質の住宅が中 古化する条件整備の第1歩になるだろう。  建築協定等の役割  ところで、青山や若草団地は建築協定(1人協定)が結 ばれていた。両団地では良い町並みを育てるために「管理 規則をつくる」ことを肯定する意見が多かった。一方本稿 では触れなかったが、既報では住宅の建て替えや転居指向 を促す要因は間取りなど個人の嗜好が大きく、その結果町 並みの変化を余儀なくされることを明らかにしている8) この2側面から成熟した町並みを育てるためには住宅地の 作られる当初から入居者の町並みへの関心を高める仕組み を用意することがポイントになることが分かる。それは居 住者に共有意識を持たせることになり、個人の嗜好に影響 を与える結果が得られる。  一方、転居指向者に「資産価値が上がる」効果を支持さ れた。これは、既報において、アメリカの中古住宅市場が ロケーションの経済価値を非常に重視し、それが故に町並 みの変化に関心を示していることを指摘したことと共通す る認識が育ってきていることを示唆している。日本におい ても、当初から景観を付加価値にした開発事例が増えてき ており、その経済評価を維持する指向が見られると言える。 謝辞:本調査では多義にわたる質問にも係わらず、高い回 答率を得ることができた。これは全て回答者の支援 によるものであり、ご協力に深く謝意を表する。ま た、当時の4回生加藤智恵美さん他多くの関係者の 支援に感謝する。  本研究は科学研究費基盤研究(C)課題番号17560548「既 存住宅市場の評価構造が住宅の耐用性・居住空間の質に及 ぼす効果の日韓比較研究」の補助金を受けている。

参考文献

1) 山古都子,住居の社会的管理に向けて,都市文化社,1998 2) 山古都子,住宅の耐用年数を左右する住宅の期待と建て替 えに関する日米比較研究,都市住宅学,48号,pp.115-126, 2005 3) 山古都子,住意識から見た住宅の耐用年数の考察,日本建 築学会計画系論文集,第595号,pp.181-188,2005 4) 山古都子(2002),住宅の耐用年数を高め・既存住宅評価を 確立するために必要な住宅情報のあり方に関する調査研究, 第一住宅建設協会報告書 5) 山古都子,住宅の寿命観と中古住宅需要に関する日米比較 研究,日本建築学会計画系論文集,第562号,pp.245-252,2002 6) 山古都子,住宅の寿命観と住宅保全に対する関心との相関 性に関する日米比較研究,日本建築学会計画系論文集,第567 号,pp.111-118,2003 7) 山古都子,日米比較から見た日本の中古戸建住宅需要特性, 都市住宅学,41号,pp.54-65,2003 8) 山古都子,中古戸建住宅の質の保全と住宅の資産観に関す る日米比較研究,都市住宅学,42号,pp.110-120,2003 9) 山崎福寿,中古住宅市場の機能とコスト,住宅土地経済, pp.10-19,1997 10) 建設省住宅局住宅政策課,米国における中古住宅流通市場に 関する調査報告書,1999 11) 建設省住宅宅地審議会中間答申,資料,2000 12) 老沼志朗,中古住宅流通市場の問題点と今後の課題,都市住 宅学,30号,pp.49-55,2000 13) 松村秀一他,変えられるか「中古住宅観」流通市場の未整備 の中で,すまいろん,55号,pp.7-49,2000 14) 松本光平,中古住宅市場の活性化に向けて,住宅, Vol.50, No.8,pp.6-10,2001 15) 青木留美子他,全国統計調査からみた中古市場の実態,都市 住宅学, 35号,2001 16) 堤洋樹他,1980年以降における木造専用住宅の寿命の推移, 2004

参照

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