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走査型電子顕微鏡 : 画像解析法による金銅資料の解析

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(1)

金銅資料の解析

齋 藤

1. はじめに 2.実  験 3.結果と考察 4. ま とめ 論文要旨  米国フリーア美術館所有の古代中国の金銅仏像資料などを走査型電子顕微鏡一画像解析法によって分析 した。青銅部分及び鍍金部分の元素マッピング分析を行って青銅中の銅,スズ,鉛の分布,金めっき層中 の金,水銀の分布を調べた。得られた結果は次の通りである。 1.北魏の資料は青銅中の鉛粒子が比較的小さく,大きさはほぼ同じである。また均一に分散している。  金めっき層は1∼2または3∼5μmで,均一である。 2.北斉(∼惰)の資料は,金めっき層が1∼3μmと薄く,また多孔質であるという特徴がみられる。 3.唐の資料は,金めっき層が緻密であり,北魏,北斉の資料に比べて厚い。 4. 6∼7世紀朝鮮のものといわれる資料は,金めっき層が中国の資料に比べて厚く,また多孔質で不規  則な形をしている。 5、青銅の錆中では,銅の濃度が相対的に低く,スズや鉛の濃度が相対的に高くなっているのが観察され  た。また,  a.錆中でスズのみの濃度が高くなっているもの  b.錆中でスズと鉛の濃度が高くなっているもの  の2種類のものがあった。 6.金めっき層中には2∼10μmの大きさのブロックが存在している。水銀は各ブロックの中央部付近に  より高濃度で分布している。このことから,水銀は,ブロックの表面付近ではほとんど蒸発している  が,内部にいくほど蒸発しないで残っていることがわかった。

(2)

1. はじめに

 金銅とは,銅・銅合金に鍍金を施したものをいう。鍍金は金属製品(銅,青銅,真鍮,銀など) の表面に薄い金の膜をつける技法である。古代のアジアではこの技法は広く行われていた。自然 科学的な立場からみると,鍍金に用いられた技術の特徴や,地域,時代ごとの相違などを明らか にするためには,金めっき層の厚み,均一性,緻密性,化学組成などを調べる必要がある。  古代において,鍍金はしばしば水銀を利用して行われた。例えば,代表的な方法である「アマ ルガム法」では,金一水銀合金を金属製品本体上に塗布し加熱して水銀を蒸発させ,金の薄膜を つくるという方法をとる。このような場合,金めっき層には水銀が残留していると考えられる。 しかし,金めっき層中の水銀の分布状態はこれまで不明確であった。  青銅の表面に金めっきを施した資料の場合は,青銅の部分の金属組織を調べることも重要であ る。「青銅」とは,本来銅とスズの合金のことであるが,銅一スズ合金中ではその濃度比や鋳造 技術に対応してさまざまな形態のミクロ偏析などが観察される。また,古代においてはより安価 な鉛を青銅に混入して体積を増やすことがしばしぽ行われたが,その場合,鉛の濃度がある程度 以上高くなると,銅一スズ合金とは完全な固溶体をつくらなくなるため,青銅中で鉛が偏析する。 これも濃度や技術に対応して,マクロ偏析として観察される。以上のことから,青銅中の銅,ス ズ,鉛の分布状態を調べることによって,冶金学的な情報が得られることになる。  本研究では,米国スミソニアン研究機構フリーア美術館所有の古代中国の資料と,比較として 6∼7世紀朝鮮のものとされている金銅資料をX線マイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡で        〔1.2〕 分析し,マトリックス,鍍金層などの金属組織を観察した。また元素マッピング分析を行い,マ トリクッス中の銅,スズ,鉛の分布,金めっき層中の金,水銀の分布を調べた。

2.実

(1)試  料

 古代中国のものおよび朝鮮のものとされている青銅鍍金8資料から採取した9片の分析を行っ た。資料のリストと化学分析結果を表1に示した(資料中,19、81については,銘が異常に多く, 記載内容が正しいかどうかやや不審がある)。古代中国の資料はいずれも米国スミソニアン研究 機構フリーア美術館所有資料であり,朝鮮のものとされる資料は仏国Joseph P. Carroll氏蔵の ものである。資料の底部を少し切りとってエポキシ樹脂中に埋め,研磨後カーボン蒸着して測定 試料とした。資料の年代については図1に示した{なお,資料11.133Aは北斉∼晴(6世紀末) の資料であるが,本報告中では北斉に製作された資料19.81と一緒にして考察を行った}。また, 中国の鍍金資料の写真を図2∼8に示した。  104

(3)

世糸己 魚羊朝 中国 4   東晋 (五胡十六国時代) ゴヒ魏 5 宋 (南北朝時代) 斉 梁 西魏 東魏 6 陳 ヨヒ周 づヒ斉 β青 7   一   8   一  9 唐 魏 北 B O 9 3 5 1 1 8 1 8 ユ E

M

C 2 9 3 5 ユ ユ゜ 8 1 8 1 E

M

* ︶ 惰 ∼ ︵ 斉 北 Dユ 9 8 5 19 8 1 8 E E 3 9 3 5 ー ユ  ・ 8 1 8 1 E

M

 M 唐 19 0 4 12 0 0 6 E−

M

A

6

A

3 2 0 4 ユ 2 9 5 7 1 E

M

8 2 5 ユ ー 8 1 8 1 E

M

6 B B 3 3 3 8 2 4 5 8 1 E

V

M

C B 3 3 3 8 2 4 5 8 1 E ▽

M

図1 分析を行った青銅渡金資料の年代(*について    は本文参照)

欝磯

裟覇 図2 資料11.130の写真

(4)

表1分析を行った青銅鍍金資料 試料番号 ME88159 B ME88159 C ME88159D ME88159 E MEOO101 ME79242A ME88158A ME84233B ME84233C 資料番号  11.130  11.132  19.81  11.133A  16.249  15.106  11.123 V15.83B V15.83B 資 料 名 な  ど 北魏(6世紀前半) 二仏並坐像 北魏(煕平3(518)年) 観音菩薩立像 北斉(太寧元(561)年) 観音菩薩立像* 北斉∼惰(6世紀末) 如来立像 唐(8世紀) 天王立像 唐(8世紀) 舎利容器 唐(8世紀) 観音菩薩立像 6∼7世紀朝鮮とされている仏像 同 上 化学分析値(%) Cu    Sn    Pb

0[09

0∨8ρ0

7770∨

ρ

04

0 1  11  14  11 1∼2

38

0 2  12  6  10 1∼2 * 本文参照 図3 資料11.132の写真 図6 資料16.249の写真 106 図4 資料19.81の写真 羅.。 図5 資料11.133Aの写真 図7 資料15.106の写真

(5)

(2)装  置

 30∼1,000倍の反射電子像の撮影及び金,銅,スズ,鉛の元 素マッピング分析には,日本電子製走査型電子顕微鏡JSM−820 と,Si(Li)検出器ECON4付x線マイクロアナライザーPhilips PV9550を組み合わせた装置(SEM−EDS)を測定に使用した。 また,より高倍率の反射電子像の撮影および金,水銀の元素マ ッピングは,日本電子製波長分散型X線検出器(WDS)付 EPMAを使用した。測定条件は表2,3にまとめた。

馨難灘

図8 資料11.123の写真 表2 装置の測定条件(SEM−EDS) 走査型電子顕微鏡 EDSによるマッピング 加速電圧 ビーム径 全X線強度 :20kV :1μm :3,000 cps 測定元素 ピクセル 測定時間 :Au, Cu, Sn, Pb :512×400、点 :40ミリ秒/点 表3 装置の測定条件(EPMA)

EPMA

WDSによるマッピング 加速電圧 ビーム径 プローブ電流 :15kV :0.04μmまたは0.07μm :1×10−7A 測定元素 ピクセル 測定時間 :Au, Hg :500×400,点 :20ミリ秒/点 (3) 測定方法  青銅部分の金属組織の観察は,30倍および150倍の反射電子像をポラロイドフィルム(タイプ 552)で撮影して行った。また金めっき層の組織や厚さなどの観察は1,000倍(金めっき層が厚い ときは500倍)の反射電子像によって行った。  元素マッピング分析については,150倍の倍率で銅,スズ,鉛,金の分布を調べ,3,300倍また は6,000倍の倍率で金めっき層中の金,水銀の分布を調べた。元素分布のデータは,それぞれカ ラーでCRT画面上に表示した。図9は,マッピング分析法の概略図である。分析スポット(ピ クセルまたは最小分析単位)を順次分析する。各スポットで得られた特性X線の強度を,各元素 ごとにあらかじめ決められた色の明るさの違いに変換し,カラーディスプレイ上に表示する。デ ータ取り込み時間は512×400点の分析スポットを各スポット40ミリ秒で測定した時,およそ160 分であった。       107

(6)

分析スポット 512スポット■一㊨一 … } } … … … ロ     コ ェ   コ  ピ コ 回二⋮一  ロ  ロ コ    国口⋮⋮⋮⋮° 画 ロ ロロ⋮⋮⋮⋮          

 ⋮=

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ロ⋮⋮二

回 口 口 口 ロ ロ ロ ロ=⋮ 回 口 口 口 ロ ロ ロ ロ ロロ一 回 ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロロロ口口口口口ロロロロロ 回ロロロロロロロロロロ 回口口口ロロロロロロロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロロロロロロロロロロロロロロロ口ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ

竃叩器口器

511

1024

1023

1025

1026

⊥ ︾餐XOO寸■‘ll曹7 口ロロロロロロロ[コロー一一一…一・ 口ロロロロロロロー一一一一一一一一一 口口〔]口口口[コ……一一一一 ロロロロロロ……一一一 口口口口口ロー……… 口口ロロロ……一一一 口ロロロ……… 口ロー一……… ロ………一一 図9 マッピング分析法の概略図

512

513

514

金めっき層中の金と水銀の分布は2試料についてのみ行った。この測定は500×400点の分析ス ポットを,各スポット20ミリ秒でデータ取り込みを行った。

3.結果と考察

(1)青銅および金めっき層の金属組織

図10∼27は,走査型電子顕微鏡および元素マッピング分析による各試料の観察結果である。白 黒の写真は走査型電子顕微鏡による反射電子像で,a, b, cはそれぞれ30倍,150倍,1,000倍 (または500倍)で撮影したものである。またカラー写真は150倍における元素分布のマッピング 分析結果で,黄,青,緑,マゼンタはそれぞれ金,銅,スズ,鉛を表している。

a.北  魏

一 ME88159B,11.130(図10 a・b・c,図11) 鉛が比較的小さな粒状になって均一に分散している。各粒子はほぼ同じ大きさ(5∼30μm)で ある。青銅中には所々に亀裂や穴が存在している。 金めっき層は均一で,1∼2μmの厚さである。 一 ME88159C,11.132(図12 a・b・c,図13) 鉛が比較的小さな粒状になって均一に分散している。各粒子はほぼ同じ大きさ(5∼20μm)で ある。青銅中には亀裂や穴があるが,前記試料よりその数は少ない。 金めっき層は均一で3∼5μmの厚さである。層の表面は粒状な状態である。 108

(7)

  図10ME88159B,11.130の反射電子像      図12 ME88159C,11.132の反射電子像      a:×30 b:×150 c:×1,000       a:×30 b:×150 c:×1,000  b.北斉(∼惰) − ME88159 D,19.81(図14 a・b・c,図15)  鉛は不均一に分散している。鉛粒子の大きさはさまざまで,5∼70μmである。金めっき層の 下には錆がある。また鉛の一部は酸化して金めっき層の上をおおっている。  金めっき層は多孔質で1∼3μmの厚さである。 − ME88159 E,11.133A(図16 a・b・c,図17)  この試料については化学組成は測定されていないが,青銅の金属組織から推定すると鉛の濃度 は5∼10%程度である。鉛の粒子はME88159D,19.81と比べて小さく(5∼30μm),均一に分散

(8)

   図14ME88159D,19,81の反射電子像     図16 ME88159 E,11.133Aの反射電子像      a:×30 b:×150 c:×1,000      a:×30 b:×150 c:×1,000 している。金めっき層のすぐ下だけではなく,青銅の内部にも錆が存在している。  金めっき層は多孔質で1∼3μmの厚さである。

 c.唐

一 MEOO101,16.249(図18 a・b・c,図19)  鉛は不均一に分散している。鉛粒子の大きさはさまざまで,5∼60μmである。10∼30μm程 度の比較的大きな穴が多数存在する。金めっき層の下には錆が存在している。  金めっき層は緻密で均一である。厚さは8∼10μmである。 − ME76252A,15.106(図20 a・b・c,図21)  110

(9)

  図18MEOO101,16.249の反射電子像      図20 ME76252A,15.106の反射電子像      a : ×30  b : ×150  c : ×1,000      a : ×30  b : ×150  c : ×1,000  10∼70μmの鉛粒子が均一に分散している。金めっき層の下には錆がある。  金めっき層は緻密で均一である。厚さは1∼4μmである。 − ME88158A,11.123(図22 a・b・c,図23)  5∼30μmの鉛粒子が均一に分散している。金めっき層の下には錆がある。  金めっき層は緻密で,青銅との境界は不規則な形状をしている。厚さは2∼8μmである。  d. 6世紀∼7世紀の朝鮮 一 ME84233B, V15.83B(図24 a・b・c,図25)  鉛粒子の大きさは5∼80μmとさまざまである。青銅中には所々に穴がある。

(10)

ピ》ち∴∴○論、一ふよンニ2

  図22ME88158A,1ユ.123の反射電子像    図24 ME84233B, V15.83 Bの反射電子像      a:×30 b:×150 c:×1,000      a:× 30b:×150 c:×500  金めっき層の厚さは中国の資料よりも厚く,10∼32μmである。また,多孔質であり,不規則 な形状をしている。 − ME84233 C, V15.83 B(図26 a・b・c,図27)  この試料は,上記と同一の資料から採取したものである。しかし,金属組織からみて,この部 分では,上記の試料の部分よりも鉛の濃度が低いと推定される。  金めっき層の厚さは10∼30μmである。組織は多孔質で非常に不規則な形状をしている。 112

(11)

(2)各グループにおける鍍金資料の

   特徴  北魏(図10∼13)  青銅中の鉛粒子は比較的小さく,大きさは ほぼ同じである。また均一に分散している。

金めっき層は1∼2または3∼5μmで,均

一である。こうした金属組織の観察結果から 考えて,これらの鍍金資料はかなり高い技術 で作製されたと考えられる。  北斉(∼惰)(図14∼17)  青銅の金属組織については,2つの資料で あまり共通の特徴はない。この時代に作製さ れた他の資料を調査し検討する必要がある。 しかし,金めっき層については,ともに1∼ 3μmと薄く,また多孔質であるという特徴 がみられる。これらの鍍金資料は北魏とは異 なった技術で作製されたと考えられる。  唐(図18∼23)  金めっき層はいずれも緻密であり,北魏や 北斉の資料に較べて厚い。この鍍金資料は北 魏とも北斉とも異なった技術で作製されたと 考えられる。  6世紀∼7世紀の朝鮮(図24∼27)  金めっき層は中国の資料に較べてはるかに 厚く,また多孔質で不規則な形状をしている。       図26ME84233C, V15.83 Bの反射電子像        a:×30 b:×150 c:×500 この資料を作製した技術は中国ほど高くなかったと考えられる。同一資料からサンプリングした にもかかわらず,2試料中の鉛の濃度の推定値は異なっている。これは,濃度がある程度高いと き鉛は銅一スズ合金と完全な固溶体をつくらず,また鉛は比重が高いので,その分散がマクロ的 に不均質になりやすいためであると考えられる。

(3)青銅中に観察された2種類の錆について

 図28∼33は金,銅,スズ,鉛の元素マッピング分析結果をそれぞれ元素別に表示したものであ る。色分けは(1)の図と同じである。        113

(12)

 元素マッピング分析の結果,錆が形成されている部分では,銅の濃度が相対的に高くなり,鉛 やスズの濃度が相対的に低くなっていることがわかった。これは,スズや鉛に較べて銅のほうが イオン化して水に溶出しやすいためであろうと思われる。本研究の資料では,錆の部分でスズの みの濃度が高くなっている場合と,スズと鉛の両元素の濃度が高くなっている場合の2種類があ った。  青銅の錆の部分における元素の挙動は次のとおりである。 1. スズのみの濃度が高くなっている資料    ME88159 B,11.130 (北魏:図28)    ME76252A,15.106 (唐 :図29)    ME88158A,11.123 (唐 :図30) 2. スズ,鉛とも濃度が高くなっている資料    ME88159 D,19.81 (北斉:図31)    ME88159 E,11.133A (北斉∼階:図32)    MEOO101,16.249 (唐 :図33) (4) 金めっき層中の金と水銀の分布  MEOO101,16.249(図34 a・b・c)及びME84233 B, V15.83 B(図35 a・b・c)の2つ の資料について,金めっき層中の金,水銀の分布を調べた。図34a,35 aは走査型電子顕微鏡で 撮影した金めっき層部分の反射電子像である。いずれにおいても,2∼10μmの大きさのブロッ クが存在していることがわかる。図34b,35 bは各試料中の水銀の分布を表している。これをみ ると,水銀は金めっき中に存在する各ブロックの中央部付近により高濃度で分布していることが       わかる。このことから,水銀は,ブロック       の表面付近ではほとんど蒸発してしまって       いるが,ブロックの内部にいくほど蒸発し       ないで残留していることがわかる。        図34c,35 cは各試料中の金の分布を表       している。これをみると,金めっき層は,       青銅との境界付近の部分では,金の濃度が       低くなっていることがわかる。これは,こ       の境界付近で,金一水銀アマルガムが青銅       を一部溶かし込んだためであろうと考えら 図34金めっき層の分析結果(MEOO101,16.249:×  れる。    6,000)    a:反射電子像 b:金の分布 c:水銀の分    布(b.・は巻末カラーページ参照)  114

(13)

図35金めっき層の分析結果(ME84233 B, V15.83 B ×   3,300)    a:反射電子像 b:金の分布 c:水銀の分布    (b.cは巻末カラーページ参照)

4. ま とめ

 米国フリーア美術館所有の古代中国の金銅仏像資料などを走査型電子顕微鏡一画像解析法によ って分析した。青銅部分および鍍金部分の元素マッピング分析を行って青銅中の銅,スズ,鉛の 分布,金めっき層中の金,水銀の分布を調べた。得られた結果は次のとおりである。  ①北魏の資料は青銅中の鉛粒子が比較的小さく,大きさはほぼ同じである。また均一に分散   している。金めっき層は1∼2または3∼5μmで,均一である。  ②北斉(∼惰)の資料は,金めっき層が1∼3μmと薄く,また多孔質であるという特徴が   みられる。  ③唐の資料は,金めっき層が緻密であり,北魏,北斉の資料に較べて厚い。  ④6∼7世紀朝鮮のものといわれる資料は,金めっき層が中国の資料に較べて厚く,また多   孔質で不規則な形をしている。  ⑤青銅の錆中では,銅の濃度が相対的に低く,スズや鉛の濃度が相対的に高くなっているの   が観察された。また,    ⑧錆中でスズのみの濃度が高くなっているもの    ⑤錆中でスズと鉛の濃度が高くなっているもの   の2種類のものがあった。  ⑥金めっき層中には2∼10μmの大きさのブロックが存在している。水銀は各ブロックの中   央部付近により高濃度で分布している。このことから,水銀は,ブロックの表面付近ではほ   とんど蒸発しているが,内部にいくほど蒸発しないで残っていることがわかった。       刀5

(14)

 これらの結果から,ここで用いた分析法が鍍金製作技術を明らかにする上で極めて有用である ことがわかった。  本研究は国際学術研究「東アジア地域の古文化財(青銅器および土器・陶磁器)の保存科学 的研究」の一つとしても実施した。 謝辞  本論文の資料はスミソニアン研究機構のPaul Jett氏から提供されました。また中国資料の名称などに ついては,東京国立博物館浅井和春氏にご教示をうけました。感謝いたします。 参考文献 〔1〕Taguchi, I and Hamada, H:「Development of New Compute卜Aided Microanalyzer and Its   Application to Iron and Steel Analysis」Anal. Sci.,1,119(1985) 〔2〕 田口 勇:「歴史試料の非破壊化学分析」応用物理,57,1163(1988)       (国立歴史民俗博物館情報資料研究部) 116

(15)

    Electron Microscope−Element Mapping Analysis SAIToH Tsutomu   Gilt bronze specimens from ancient Chinese Buddhist images, in the Freer Gallery of Art, Smithonian Institution, U. S. A., were analyzed by a scanning electron microscope with an energy dispersive X−ray spectrometer. This lnicroscope was also used for element mapping analysis. Distribution of copper, tin, and lead in bronze and that of gold and mercury in gold layer were observed. The followings are the results obtained. 1.      °       ’    With the objects from Northern Wel Dynasty, lead particles m bronze are rela・   tively small. They are dispersed uniformly in bronze matrix. Gold layers are thin,   1−20r 3−5μm thick, and uniform. 2.With the objects from Northern Ch’i Dynasty(to Sui Dynasty), gold layers are   thin with thickness of 1−3μm for each sample and porous. 3.With the oblects from T’ang Dynasty, gold layers are dense and thicker than those   in Northern Wei and Northern Ch’i Dynasties. 4.With the objects said to be frmo Korea, A. D.6to 7 C., gold layers are much   thick, porous and of irregular shape comparing with the objects from China. 5. In the rust of bronze, concentration of coPPer decreases and that of tin or lead   increase relatively. Elemental behaviors in bronze rust were observed in Objects in   which only tin is concentrated in rust, and objects in which tin and lead are   concentrated in rust. 6.In gold Iayer, there are blocks sized 2−10μm wide. Mercury is concentrated near   the center part in each block. These results show that mercury near the surface of   block had vaporized, and that at the deep area in block mercury had not vaporized   completely.

(16)

図11ME88159B, ll.130の元素分布(D

   (黄一金,1‘「一銅,緑一スズ,マゼンター鉛:測定場所と倍率は図3bと同じ)

図13 ME88]59C,11.132の元素分布

(17)
(18)

図19 MEOOIO1,16.2工9の元素分布(1)

   (黄一金,青一銅,緑一スズ,マゼンター鉛:測定場所と倍率は図11bと同じ)

図21NIE76252A,15.106の元素分布(1)

(19)
(20)

図27 ME8ユ233C, V]5.83Bの元素分布

   (黄一金,11∫一銅、緑一スズ,マゼンター鉛 i則7]三」易}i斤とイ音斗…は「刈19bと「ii]じ)

図28 ME88159B,1Ll30の元志分布(2)

(21)
(22)

図31 MESSI59D、 lg.81の元素分イll(2)

    {黄 金,占『一銅、緑一スλ,マゼンター鉛 沮|1∫L」易μ斤とイ1㌃咋㌶ま1ツ17b、 8ヒ6i]じ)

図32 NIE8s159E、 ll./:33A7)厄志分6元(2)

(23)
(24)

21」m ∩rea 図.oo o.〔〕3 0.43 2.6ワ 1〔ヨ.14 1ワ.45 18.80 9.97 4.白ヨ 2.72  1.日ヨ  1.77  1.44  L42  1.26 25.34 ∩)e. Samp. Date EIem. Scan× Y D. Count5 203 189 17ワ ユ66 154 14ヨ li∋1 129 109 9? 86  74 63  51 4〔∋      102 No. 16.249 11一自PR−90     ∩u   Bearn 520 400 Time 臼CC.∪. P.Cuγ 1.ε〕7E−a7∩ 卜1ax.    2〔ヨ3 .卜1in. 日.臼4um 臼.臼4um   2日m5 15.〔ヨkU o

2um

∩rea o.〔〕o a.臼〔〕  1.81  1.58 4.28 4.38 9.1B 7.1〔ヨ 1目.95 6.64 8.18 4.85 7.97 5,44 6.41 2い2ヨ ∩ve. Samp. Date EIem. Scan× Y D.T’ Count5

77目853目853臼8531

44322221111

      12 No. 16.249 11−∩PR−9日     Hg   Beam 5臼0 42胞  1me ∩oc.り. P.Cur l.07E一ε〕7∩ 門ax.     47 卜1寸n. 臼,ε〕4um O.目4um   2〔∂m5 15.9kU 臼 図34 金めっき層の分析結果(MEOO101,      上:金の分布、下:水銀の分布 16.249  ×6000)

(25)

口.口1 口.08 口.引 ヨ.68 11.56 1ε.65 1ワ.ヨヨ 13.69 旧.B2 6.ヨ4 2.ヨ8 2.21 1.52  1.62 12[.91 ∩)e. Samp. Date Elem. 5can× Y D. ∩cc. P.Cur nax.  2臼目  189  177  1日B  l54  14ヨ  131 ・ 12②   匝〕9   ヨ〔   日6   74   63   51   42[      1〔ヨ9 No.  15.8ヨ 11一自PP一ヨ臼     臼u   巳e∂rrI 5臼〔ヨ   〔i〕.(≡〕7 」」「「1 4〔ヨ〔ハ  〔3.ε〕? urrl Tlme    ε[〕m5   リ.  15.臼 kり    1.[〕E〕E−E|? 臼 卜11r‘. 【 〕 ロ ココ 1 臼一

5um

5urrI ∩rεa 日.〔うo 口.{ヨ臼 臼.29 0.ヨ5 1.36 1.81 5.28 5.64 11.72 9.22 14.29 9.61 14.70 9.四 7.63 9.01 ∩ve. Samp. Date Elem. Scan× Y D. 自cc. P.Cur Nax. Count5

5508530853目白531

44322221111

      11 卜b. 15.83 11−∩PR−9〔ヨ     Hg   Beam 5臼〔3 40目 Time   リ.    1. N|rl. 2〕.ε〕7 um 日.臼7um   2〔ヨm5 15.臼kリ 臼臼E−07臼 45 口 図35 金めっき層の分析結果(ME84233 B, V15.83B:×3300) ヒ:金の分布,下:水銀の分布

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