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バクテリアに広く分布する光応答型転写調節蛋白LitRの機能と役割

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Academic year: 2021

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日本大学・生物資源科学部

日本大学生物資源科学部 平成 11 年 日本大学農獣医学部応用生物科 写 真 応用生物科学科・助手 学科卒業 博士(生物資源科学) 平成 16 年 日本大学大学院生物資源研究科 高野英晃 応用生命科学専攻博士後期課程終了 平成 16 年 日本大学生物資源科学部・助手

バクテリアに広く分布する光応答型転写調節蛋白

LitR の機能と役割

はじめに

環境中に普遍的な一般細菌(ここでは非光合成型の細菌を意味する)の光応答は、 全くと言っていいほど調べられてこなかった。我々が独自に見出したLitR蛋白は、 一般細菌の複数の光応答現象に関わると同時に、新規なタイプの光受容体であると 予想されている。 この発見の発端となった放線菌は、土壌に生息し複雑な形態分化と多様な二次代謝産 物を生産することでよく知られる産業微生物である。我々は、遺伝的取り扱いのモデル 株 Streptomyces coelicolor A3(2)において、その二次代謝産物の一つであるカロテノ イドの生産が光によって誘導されることを見出した。カロテノイドは微生物から高等植 物まで幅広い生物によって生産され、光照射により生じる有害活性酸素分子種の消去剤 として機能する。光によるカロテノイド生産の誘導は一般細菌において知られる現象で あるが、その分子メカニズムはグラム陰性細菌であるMyxococcus xanthusにおいてのみ 研究されてきた。M. xanthusにおける光応答の分子メカニズムは複雑で、すでに多くの 制御遺伝子群が同定されているが、光受容の分子機構は未だ明らかでない。一方、我々 はグラム陽性細菌S. coelicolor A3(2)が示す光誘導性カロテノイド生産は、その生合 成遺伝子クラスター(crt)の上流にコードされている MerR 型転写調節蛋白 LitR によっ て中心的に制御されていることを明らかにした。LitR は、その C 末端領域に結合するコ バラミン分子の青色光吸収に伴ってプロモーター領域への結合様式が変化し、その結果、 RNA ポリメラーゼがリクルートされてlitSの転写を開始に導くと予想される。こうして 転写が誘導されるlitSは ECF ファミリーのσ因子をコードしており、crtの特異的な転 写を司ることが明らかになっている(図1および業績1,2)。

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litS litA litB crtEIBV crtYTU E LitS litR litQ

Blue light

LitR

+

carotenoids crt 本研究では、LitR による光応答転写制御メカニズムの詳細な解析ならびに新規な光誘 導性遺伝子・菌群の探索を進め、一般細菌におけるLitR の共通役割の解明と光応答 性現象の多様性の評価を目的とした。 図 1 S. coelicolor A3(2) のLitRを介 し たカ ロ テノイド光誘導生産機構 青色光の受容により不活性化 したLitR 蛋白がプロモータ ーから解離する。それに伴っ て発現するσLitSRNA ポリメ ラーゼホロ酵素crt遺伝子群 の転写・発現を誘導し、カテ ノイド生産が開始する。

1.LitR の多様な分布とその普遍的な役割

微生物ゲノムを用いた調査から、我々はこの litR に相同な遺伝子がグラム陽 性・陰性を問わず、一般細菌に広く分布することを見出した。このlitR相同遺伝 子には隣接してカロテノイド生合成遺伝子クラスター、光回復酵素、植物型光受 容体などの光関連遺伝子がコードされていた。このlitR保持菌群における特徴的 な共通性はコバラミン生合成遺伝子群の高度な保存性が認められたことである。 これは、先に述べたコバラミンと LitR の関連を示唆している(図2および業績3)。 Thermus thermophilusは国内の温泉から単離された好熱性細菌であり、光依存 的なカロテノイド生産を示すグラム陰性細菌である。本菌もlitR相同遺伝子を有 し、それはカロテノイド生合成遺伝子クラスターに隣接してコードされている。 我々は遺伝生化学的な解析を進め、この LitR 相同蛋白が本菌の示すカロテノイド の光誘導性生産においても中心的な制御因子であることを明らかにした。本菌由 来の組み換え LitR 蛋白は非常に安定で種々の試験管内実験が可能であり、本蛋白 が自身のプロモーター領域に結合し、そこから始まる転写に対して負の制御因子 として作用することを証明した。また、本蛋白はコバラミンに特異的な吸収波長を 示した。この LitR とコバラミンの相互作用は、本蛋白の推定立体構造に理論上コバラ ミン分子が結合可能なポケットが存在したことから支持された。このコバラミン生合 成遺伝子はlitR・カロテノイド遺伝子群と同じく、巨大プラスミド上にコードされ、 その遺伝子破壊株はカロテノイドの構成的な生産を引き起こした。この結果はコバラ

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Pseudomonas putida litR2 Shewanella oneidensis Pseudomonas aeruginosa Pseudomonas syringiae litR3 PSPT01122 Vibrio parahaemolyticus PA4659 SO3385 VPA1472 S treptomyces coelicolor A3(2) Streptomyces avermitilis Nocardia farcinica Thermus thermophilus (plasmid pTT27) Myxococcus crt litR litS litQ crt TTP0056 SAV1214 nfa30640 S68197 litR1 sbp1 sbp2 litS ミンが LitR の正常な機能に必須なリガンドであることを示している。 このように放線菌とT. thermophilusにおける役割の共通性は、LitR 蛋白が一般細 菌における光誘導性カロテノイド生産の普遍的制御因子であることを強く示唆してい る(投稿準備中)。 図2 グラム陰性・陽性細菌に広く保存されたlitR様遺伝子

他の放線菌S. avermitilis、Nocardia farcinica、好熱性細菌 Thermus thermophilus に おいてもlitR 様遺伝子は crt クラスターや光回復酵素と組で保存されていた。一方、 Pseudomonas や Vibrio 属細菌では、属に関係なく光回復酵素を含む同一オペロンとしてコ ードされていた。

2.DNAマイクロアレイ解析による新規な光誘導性遺伝子群の発見

Pseudomonas putidaは難分解性の化合物に対する高い代謝能を有することで知 られるグラム陰性の土壌細菌である。本菌には、上記菌群とは対照的にカロテノ イド生合成遺伝子が保存されていないが、複数の litR 相同遺伝子(litR1-3)がコ ードされている。本菌で進めたタイリングアレイによる網羅的な転写解析は、予 想していた以上に多い約50個の光誘導性遺伝子群の存在を明らかにした。その

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光誘導性遺伝子群にはlitR1や光回復酵素などに加え、これまでにその光誘導性が知 られていない葉酸合成遺伝子、機能未知遺伝子群、フェニル酢酸分解遺伝子群などが 含まれていた。その一方、litR2・litR3はその光誘導性は認められないものの、興味 深いことにそれに隣接して植物型光受容体のホモログが保存されていた。この結果は、 光よって誘導される遺伝子群がカロテノイド以外にも存在し、一般細菌には多様な光 応答性遺伝子群が存在し、光応答機構も個々の細菌において異なることを示唆してい る(投稿準備中)。

3.自然界からの新規な光応答性細菌の単離と同定

ゲノム解読株は任意に選択されたものであり、それを利用した特定の遺伝子の 多様性評価には制限がある。そこで自然界より光に応答した表現形を示す細菌群 の単離・同定を進めた。土壌より約2000株の細菌を単離し、それらを明・暗 の条件下で培養することでその表現形を比較した。驚いたことに、その中で光応 答してカロテノイド様黄色色素生産を示す細菌群は全体の約1割を占め、16S rRNA 配列による細菌種の同定の結果、主要な菌群はBacillus属とPseudomonas属細菌で あり、特にBacillus megateriumが高頻度で単離された。これら菌群におけるカロ テノイドの光応答現象は報告がなく、これは新規性の高い現象と言える。この中 で、有用性細菌として知られるB. megateriumの解析を進めた結果、litR相同遺伝 子ならびコバラミン生合成遺伝子の存在が認められた。光応答性の細菌が高頻度 で単離されたこの結果は、一般細菌の光応答現象が普遍的であると同時に、litR の広範囲な分布を示唆している。 以上の証拠は、光という普遍的環境因子に対する応答メカニズムが一般細菌に広 く備わっているという新事実を示し、LitR 蛋白がその光センシングの普遍的制御因子 であることを強く示唆している。これまでに知られているカビや植物から見つかった 青色光受容体の光吸収はフラビンを介していることに対し、LitR は光センサーにコバ ラミンを利用する新しい型の光受容体である可能性が極めて高い。また、ここで見つ かった新規な光誘導性遺伝子・菌群の存在は、光シグナルで発現する微生物機能の潜 在的な多様性を暗示している。 (研究業績)

1) Takano H, Obitsu S, Beppu T, Ueda K. (2005): J. Bacteriol. 187:1825-32. 2) Takano H, Asker D, Beppu T, Ueda K. (2005): J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 33:88-93.

参照

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