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児童養護施設での遊戯療法における関係性についての事例研究
一対象児の愛着に焦点を当てて一
学 校 教 育 専 攻
教育臨床コース
安 固 有 加 里
1.問題と目的
近年,児童養護施設入所児の増加に伴い,入
所理由として虐待を体験する子どもの割合が大
きくなっている。筆者が勤務していた福組茄設
での子どももまた,虐待をはじめ,親子関係に
問題を抱える子どもが多かった。そうした子ど
もの特徴として3 対人関係に問題を抱え,人間
関系の築きにくさが顕著にみられ,対応に頭を
抱えることが多かったO
幼児期に虐待や愛↑静峰などの深し傷つきの
体験をもった子どもは,
r
基本的信頼感Jの獲得
を阻害され,人への愛着や信頼感を形成するこ
とが難しく,不信感や警戒心を抱きやすく,対
人間でのトラブルが生以寸いとされる犠,
2001 ;坪井, 2001)0 Bowlbyをはじめ,
Kl
ein
やF泊rb白rn,Winnico枕などの愛着に関する関
係理論や多くの臨床研究などからも心に深い傷
つき体験をもっ子どもたちの根底には,虐待の
有無にかかわらず,愛着に関する問題をはらん
でいることが指摘されてきた。
では,こうした子どもがどのようにして対人
関係を築いていくのか,どのような関わりから
愛着形成を衝尋したり修正していくのかについ
て検討したいと考えた。
そこで,本研究では,児童養護施設において,
筆者が関わる対人関係に問題を抱えた女児との
遡鋭寮法の面協品程を通して,愛着形成の段階
に基づく関係性の変化やその捉え方について検
討することを目的とした。
指導教員 小 坂 浩 嗣
2.事伊j
i
対象児}
A。小学校 6年生女児。初めての心理療民
[主訴
1
(施設職員より)
施設では,同学年や年上からは相手にしても
らえない一方,年下との遊びでは自己中心的で,
意地悪することもあり,思うような遊ひミ相手が
いない。職員に叱られることも多く, Aにとっ
ての居場所や発散できるといった場がほしし、
[生育歴及び問題歴]
障害を有した両親の養育能力不足が理由で,
Aの乳児院への入所を勧めるが,両親は拒否。
Aの就学を機に,地元の小学校に障害児学級が
ないことを理由に両親同意で, Aが6歳の時に
当施設に入所。 10歳時の知育巨木食査の結果より,
療育事援を申請し,現在は障害児学級に在籍。
{面接方法}
児童養護施設内のフ。レイルーム(以下,'PR
と略記する)で,週
1
回
5
0
分の雌嫌法面接。
X年4月からX年 10月までの全25回の面接
を行なった。
{面接総圏
全25回の面接を3期に分けてまとめた。
第1期 探 り 合 い の 時 期 (#1--#5)
Aはおもちゃの転導性が激しく遊びが定まら
ず, PRを探索していた。次第に一つの遊び、に
時間をかけるようになった。また, Aはセラピ
スト(以下,官1と略記する)に対して奴隷の
ように指示的,支配的に関わったoThもまた,
4
ウ
t
A
の様子をうかがったり,
A
や
PR
,施設に慣
れようとした時期で、あった。
第2期葛藤する不安定な時期 (#6-#15)
生活環境も含め,セラピー中にAの落ち着か
なさ,不安定さが続いた。官1に甘える反面,
攻撃的な関わりが向けられた。 Aは,セラピー
に対して「大好きJf:嫌しリと両極の言葉を発し
たりと,心の不安定が読み取れた時期で、あった。
第3期 Thとの関係を求める時期(#16-#25)
枠や制限について,一譲歩したり交渉ができる
ようになってきたO また,官1に関心を向ける
ような質問をしたり,別れを意識する発言もみ
られ始めた時期で、あったo
3.考襲警
A
とThの探り合いについて
入所してからセラピーを受けられずにいたA
は疎外感や孤立感を抱いており,これまでの愛
着と分離の葛藤から,養育者と
Th
を“良い外
的対象"と“悪い外的対象"に分裂させ,心の
安定化を図ろうとしていた。過去キ明在の日常
生活で支配されていた
A
は,孤独感や見捨てら
れ感,理不尽さへの怒りを抑圧しており,官1
に支配的に関わることでそうしたAの悪い自
己イメージを官1に排出して投影し,恐れや不
安を軽減しようとしたと捉えた。
葛藤する不安定な
A
について
甘えと攻撃的な行動を繰り返す
A
は,甘えさ
せてくれる良い官1と制限を加える悪い恒1と
いう分裂した内的対象を併存させるが,次第に
葛藤する思いを明1に向けたり,折り合いをつ
ける発言が関かれるなど,関係性の安定を図ろ
うとする行動であると捉えた。
Thとの関係を求める
A
について
官1と他児との関わりを気にして良い自己を
官1に示し,特別な愛情を独占しようと愛着確
認行動がみられ始めF 次第に恒1の生活などに
興味を示し,母親転移の関係から
τ
1
1
という一
人の人間として捉えるようになってきたと考え
た。制限引辛に対して不安や不満などをコント
ロールで、きなかったAがp譲歩したり妥協案で
交渉するなど, A自身も“良し」悪い"自己イ
メージを統合し始めたのかもしれないD 官1と
の別れに不安を抱きつつも,身体櫛虫を求める
行動によって,官1との関係性を内面化させ, A
なりに受け入れようとしていると推察された。
A
とThとの関係について
Aは 官1に対して見捨てられ不安や愛されな
いことへの恐怖を回避しようと愛着希求行動を
とり,官1は
移感情を生じさせた丸o次第にAの攻撃に破壊さ
れずに“生き残る"官1が, Winnicottの“ほど
良い母親"としてAに内在化されたのだろう。
官1は, Aの行動に隠れた思いを内省し, Aに
伝え返すように心がけ,官1が“良しトー悪い"
をもっ一人の人間であることを内面化させるよ
うな関わりを試みた。 Aは,これまでの関係と
は違う対人関係のパターンをセラピーにおいて
体験することで,攻撃と甘えとし、うAなりの愛
着行動パターンの鎮静化につながり,そうした
関わりを重ね, A ~士i前者的に安定し,引1 との
関係が安定とていったと考察した。
4. 今後の課題
子どもの瑚卒を深めるために,生活場面で、の
社会的サポートと心理面接場面での情僻句なサ
ポートをリンクさせる態勢を整えることが求め
られる。また,施設児や心に根深い問題を抱え
る子どもにとつては,長期的な関わりを通して,
安定した関係が形成され
地よい体験を重ねることが必必、要でで、あり,物的,
人的,制度的環境整備が求められている。
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