Title
Action Mechanism of Vitamin B_6 in the Biosynthesis of
Polyunsaturated Fatty Acids( 内容の要旨 )
Author(s)
余, 青柏
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第038号
Issue Date
1995-03-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2379
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(国籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 余 青 柏 (中華人民共和国) 博士(農学) 農博甲第38号 平成7年3月14日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 岐阜大学
Action Xechanism of Vitamin B6in the Biosynthesis of Polyunsaturated Fatty Acids
主査 岐 阜 大 学 教 授 柘 植 治 人 副査 岐 阜 大 学 助教授 早 川 享 副査 岐 阜 大 学 教 授 中 村 征 副査 静 岡 大 学 教 授 竹・内 久 副査 信 州 大 学 教 授 黒 沢 辰 志 夫 直 論 文 の 内 容 の 要 旨 必須栄養の一つであるビタミンB6は、アミノ酸代謝に関与する多くの酵素、すなわち ビタミンBも依存性酵素の補酵素として、重要な役割を演じている。同様に、グリコーゲ ンの代謝におけるグリコーゲンホスフォリラーゼもビタミンBb依存性酵素の一つである が、脂質代謝における当該ビタミンの関与には未解明の部分が多い。以前から、ビタミン B6欠乏時には、脂質代謝系が障害を受けることを、多くの研究者が指摘してきたところ であるが、直接的な代謝との関わりについては全く解明されていないのが現状であった。 本論文は、哺乳動物の高度不飽和脂肪酸生合成系におけるビタミンB6の関与を証明す るために、動物実験を行うことにより、関与の形態を解析したものである。すなわち、ウ イスター系堆ラットを実験材料として選び、70%カゼインからなるビタミンB6欠乏食を 与えた場合の、n-6系高度不飽和脂肪酸の一つで、必須脂肪酸に属するリノール酸(18: 2n-6)からアラキドン酸(20:4n-6)への転換に関与する酵素系の活性および生体に蓄積し た脂質成分を分析した。
すなわち、①ビタミンB6欠乏飼料で飼育した実験群と、 ②ビタミンB6を通常程度含有する対照群、および ③②の飼料を用いて①とペアフィーディングした対照群 からなる実験系を設け、5週間飼育し、飼育中の変化と共に飼育期間終了後、18:2n-6の 不飽和化反応に関与する酵素活性等の変動を比較した。 その結果、ビタミンB6欠乏時には、肝臓ミクロソームにおける18:2n-6 の不飽和化 反応(△6-desaturase)が著しく低下する事実を認め、同時に肝臓ミクロソーム中の脂質 組成においては、ホスファチジルエタノールアミン(PE)含量の著しい増加とホスファチジ ルコリン(PC)含量の有意な低下を認めた。そして、その直接的な原因はミクロソーム中の PC含量の低下が関係し、NII)H-CytOChro皿e b5 reductase(ECl.6.2.2)の低下よりも △6-desaturase活性そのものの低下が有意であることを示した。すなわち、desaturase活 性は、その埋め込まれているミクロソーム膜中のPC含量と強い相関性があることを示し た。したがって、ビタミンB6欠乏は18‥2n-6 の不飽和化に影響を与え、その結果、 20:4n-6生合成の低下を引き起こすものと推定した。 っいで、ビタミンB6欠乏時にミクロソーム中のPC含量が低下する原因の検討を行い、 ビタミンB6欠乏時には、CDP-コリン経路(Eennedy pathYay)のコリンホスフォトランス フエラーゼ(EC2.7.8.2)活性が有意に低下すると共に、段階的なメチル化経路(Green-ber?pathYay)においてもPE一メチルトランスフエラーゼ(EC2・1・1・17)の基質である S-アデノシルメチオニン(Sll)の濃度低下と呼応したS-アデノシルホモシステイン(Sl田 濃度の著しい上昇が、ミクロソーム中のPCの合成阻害の引き金となっていると予測した。 すなわち、ビタミンB6欠では、メチオニン代謝系で関与するどタミンB6依存性酵素、 シスタチオニンーβ-シンクーゼ(EC4.2.1.22)及びγ-シスタチオナーゼ(EC4.4.1.1) の活性低下によるSAEの蓄積と結果的なPE-メチルトランスフエラーゼの完全な阻害であ ることを、in vitroの実験系を用いて酵素レベルで確認した。このことが、PC生合成を阻 害する直接的な原因であることを突き止めた。 結果的に、ビタミンB6がメチオニン代謝とコリンの利用に影響を与えることにより間 接的に肝臓ミクロソームのPC生合成が影響を受け、その結果18:2n-6 の不飽和化反応を 触媒する△6-desaturase活性が低下し、最終的に18‥2n-6から20:4n-6への生合成が障害 されることを示した。
-84-また、上記の研究を遂行するためには、SA‡とSA且の生体内濃度を知る必要があった。 従来の方法は大変繁雑で、信頼性に乏しい方法であったが、紫外部吸収(254nm)を検出手 段として採用し、イソクラティツク肝LC法により、動物体内におけるSIXとSAHの濃度を 非常に簡便に、かっ、効率良く定量する方法を新規に開発し、ビタミンB6欠乏動物の臓 器中に存在するSAlとSAⅡの濃度変化を分析する方法を提案した。 (文献) (1)Q.-B.She,et al.Biosci.Biotech.Biochem.,58,457-463(1994). (2)Q∴B.She,et al.Biochm.Biophys.Res.Commun..205,1748-1754(1994). (3)Q.-B.She,et al.Biosci.Biotech.Biochem.,59,163-167(1995). 審 査 結 果 の 要 旨 本論文は、哺乳動物における必須栄養素の一つビタミンB6 が欠乏した際に、脂質代謝 がいかなる影響を受けるかを、実際にビタミンB(,欠状態とした飼料を与えラットを飼育 することにより、酵素レベルで検討したものである。 その成果を総括すると、ビタミンBbがメチオニン代謝とコリンの利用に影響を与える ことにより、間接的に肝臓ミクロソームのホスファチジルコリン生合成系が影響を受け、 その結果、リノール酸(18:2n-6)の不飽和化反応を触媒する△6-デサチエラーゼ活性が低 下し、最終的にリノール酸→アラキドン酸への生合成が障害されること、及び、こうした 動物実験を遂行するにあたり、ネックとなる極く微量にしか存在しない生体成分の定量法 を新規に開発した成績が記載されている。 以上の研究成果は、ビタミンB6欠乏が、生体の代謝に及ぼす広範囲の影響のうち、特 に不明の点の多かった脂質代謝に焦点を絞り、脂肪酸の不飽和化反応との関連を明らかに した点で意義深いものである。 特に、最近栄養学上問題になっているn-6系とn-3系の脂肪酸の競合の問題におけ るビタミンB6欠乏の影響、ひいては、リビッドバイオファクターであるプロスタグラン ジン、トロンボキサン、プロスタサイクリン等のアラキドン酸から誘導される多くの生理 活性物質の生合成と、それらの活性の修飾におけるビタミンB6 の代謝的役割の重要性を 示唆するものであり、脂質栄養に関する基本的な問題に迫るものであり、今後大いに発展 する分野である。 また、従来、ホスファチジルコリンの生合成系を研究する場合、放射性同位元素を用い
た繁雑な反応系の多くの酵素活性を測定する必要があったが、その内の一つの酵素反応、 PE-メチルトランスフエラーゼ(EC2.1.1.17)の活性測定に、基質の一つ、S-アデノシ ルメチオニン(SAl)とその代謝産物S-アデノシルホモシステイン(SAⅡ)を、簡単な前処 理で、迅速かつ正確に同時定量できる肝LC法を開発し、通常の実験室で本酵素の活性測定 を可能としたばかりでなく、ビタミンb欠乏時の代謝変動の指標として、肝臓中のSA暮/ SAEの濃度比が重要であることを報告している。 S-アデノシルメチオニンやS-アデノシルホモシステインは、生体におけるメチル基の 供与体として、核酸やタンパク質等の修飾に関与するバイオファクターであり、これらの 簡易な定量法を開発したことは、各方面に大きなインパクトを与えるものと予想できる0 以上の成果は、日本農芸化学会の発行する英文誌、Biosci.Biotech.8iocheD・(通称 B.B.B)及び国際的に評価されているアメリカの速報誌 Bioche皿・Biophys・Res・Comun・ (通称B.B.R.C.)に既に掲載されている。 これらの知見は、ビタミンB6研究に新しい学問領域を提供すると共に、脂質代謝生化 学の分野から見ても大変重要な知見であり、審査委員会は全員一致して農学博士の学位に 相当すると認めた。