230 氏名(生年月日)
本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(82) ホシ ノ ヨシ ノリ星野恵則(昭和2
医学博士 乙第1008号平成元年3月17日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
連句療法の経験 一青年期境界例を中心に一 (主査)教授 柴田 収一 (副査)教授 鎮目 和夫,教授 小山 生子論 文 内 容 の 要 旨
目的 青年期境界例患者に対する精神療法として,わが国 の伝統的詩型である連句を用いた治療を開発し,その 治療機序について考察する. 対象 2例の青年期境界例患者.境界例以外の精神科患者 2例(心因痛及び遷延性うつ病)を比較対照例とした. 方法 歌仙あるいは半歌仙形式の連句の付合を,患者一治 療者一対一の個人療法の形で行なうことによって,境 界例患者の連句表現の特徴を見いだし,さらに,その 特徴を治療上の工夫に役立てる. 結果 対照例と比較して,境界例患者の付句案には,形式 の逸脱が目立つことがあり,奇妙な語法や,標語的, 決まり文句的表現が散見され,表現内容も狭い範囲の 事柄に集中する傾向があり,また,前句の余田をうま く捉えられず,前句の内容や表現に全面的に引きずら れたり,逆に,前句を全く無視したりするものがかな り多く認められたが,とりわけ特徴的と思われたのは, 両例の治療経過の途中で気が付かれた,形式も表現も 一見整っているように見えながら,その実,内実や実 感がない,いわぽ「as if的」な付句案や,表現とイメー ジがずれている「ひとりよがり的」な付句案であった. そのような「as if的」「ひとりよがり的」な付句案を, 患者と話し合いつつ,連句の式目に添いながら,患者 の実感を伴い,しかも,前句の余情を汲む形に,かな り大幅に直してゆくことを繰り返すことが,治療上一 層有効であり,その結果,患者は2例とも家庭内での 精神的不安定さが軽減し,さらに社会生活上も現実的 適応が可能になった. 考察 吉増は,境界例人格を未成熟人格として捉えなおし, L.Klagesの性格学に依拠しつつ,記述的立場から,そ の性格の素地となる条件として,精神的拘束性の不足, 解放性の不足,自己未知性,真の感情的基盤を持った 関心の欠如などをあげている.連句の付合では,その 都度,それ以前に詠まれた句を配慮しつつ,しかも発 展的な自分のイメージを出してゆくことが要請される が,それを繰り返してゆくことは,自らを拘束しつつ 解放してゆくことに他ならない.また,前句と響き合っ てひとつの情趣を生み出してゆく連句の各句には,確 かな,しかもひとりよがりでない感情的基盤が要請さ れ,そのような感情的基盤が希薄な「as if的」「ひとり よがり的」な句案は,上述のように,患者自身の納得 のゆく形で感情的裏付けを持った句に直される.そし て,この感情的裏付けは,その句のあとに治療者の句 が付けられること,すなわち,その句が他者によって 認められ生かされることで,より強固なものとなり得 る.さらに,このような,句の共作的訂正の過程と, 自らの句が後続句によって認められ生かされることと は,未知であった自己に少しずつ目を開かされること でもある. 結論 一1120一231 共作的訂正の技法を加えた連句は,境界例をはじめ とする自立化,社会化過程での問題を中心とする青年 たちの治療の, る. ひとつの有用な手段になると考えられ