緊急時対応も考慮した気象情報を用いた服装情報提示システムの検討
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(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2014-IOT-27 No.6 Vol.2014-SPT-11 No.6 2014/10/9. 域へ向かう支援者の服装決定や,外の状況に依存するボラ. る.当該研究では,天気が確率的にしか予測できない場合. ンティア活動などの行動決定指針になる.さらに,災害発. におけるスケジュールの決定手法である.当該研究の観光. 生後の支援物資として服装を配送する際に,どのような服. 案内のように,気象情報は,一般人の行動と密接な関係に. 装を送ればいいか,ということの決定指針になる. 以上よ. ある.一般の人に対しても効果的に気象情報を提示すれば,. り,服装情報が身近に利用できる気象情報であり,かつ,. 日々の行動に役立てることが可能である.しかし,当該研. 災害発生時にも利便性が高い.. 究の場合も気象の情報は晴れか雨か曇りかの 3 つの状態で. 服装情報の提示システムはすでにいくつか存在する.日. あり,実際のどの程度の気象かは考慮していない.これは,. 本気象協会の服装指標,おしゃれ天気や今日の重ね着など. 気象庁が出す公式の気象情報が,このような一意の情報し. が挙げられる.服装指標とは,10 段階ごとに 0 から 100 ま. か与えないためである.. での服装の数値が提示されるシステムである.服装指標は,. このような公式の気象情報を改善するため.情報共有を. 数値データのみであるためどのような服装にすればいいの. 用いて気象情報の精度を上げる研究が存在する.Katarina. かがわかりづらい.おしゃれ天気や今日の重ね着などは,. ら[4]は,気象情報の共有に関する研究を行っている.当該. 本日着るべき服装が実際に提示される.. 研究では,2008 年 10 月から 2011 年 4 月までの期間に気象. しかし,これらの既存の服装情報提示システムは,正し. 情報の共有サービスを運用した.気象情報共有サービスで. い服装情報が出ているとは言い難い.正しい服装情報とは,. は,利用者が気象情報をテキストや写真データで送信する. 身に着ける服装と提示される服装情報が一致する状態を指. ことで,より詳細な気象情報が閲覧可能である.送信され. す.正しくない服装情報が提示される事例として,寒い日. る気象情報は,雲の量,風の状態や地面の状態などである.. に半そでを提示されることや,暑い日に長そでを提示され. 525 人が利用登録を行い,700 以上の気象情報の送信が行. るなどの現実と剥離した結果が出ることである.. われた.ユーザから気象情報を得ることで,特定地域の詳. 本研究では,既存の服装情報を算出する式が正しくない. 細な気象情報を得ることが可能である.ユーザからの気象. のではないかという仮定に基づき,既存の服装情報を算出. 情報によって,公式から得られる気象情報を改善する効果. する式の課題を明らかする.課題を明らかにするために調. がある.. 査実験のためのシステムを開発し,調査を実施した.調査. 本研究では,気象情報を処理し気象情報そのものを可視. の結果について述べるとともに,結果を考察する.. 化して提示するわけでない.当該研究では,気象情報の提. 2. 関連研究. 示は,既存のメディアと同じく,天気の状態,雨の量や気 温などである.本研究では,ユーザが直感的に気象を理解. 本章では,気象情報処理に関して述べるとともに,気. できるように服装情報を提示する.そのため,天気の状態. 象が人間に及ぼす直接的や間接的な影響を研究する生気象. を直接観測して情報を送信するのでなく,天気の状態によ. 学に関して述べる.最後に,既存研究と本研究との違いを. って変化する生活情報である服装情報を送信する.服装情. まとめる.. 報を送信することで,天気の状態を知るだけではわからな. 2.1 気象情報可視化に関する気象情報処理. い,体感の気温を直感的に理解することができる.. 気象情報処理において,気象そのものを可視化する研究 が数多くなされている. 膨大な気象情報の効果的な提示は,主に気象の専門家に. 2.2 気象そのものでない可視化に関する気象情報処理 気象情報を可視化する手法として,災害の状況を取得 する手法が数多くなされている.その中でも,災害発生時. 対して行われている.片山ら[2]は,気象画像のデータから. に SNS から情報を収集し,状況をつかむ研究が特に多い. 専門家が必要とする気象情報を得ることが可能なデータベ. [5][6][7].震災発生時には,Twitter や Facebook などの. ースの構築を行っている.専門家が必要とする気象情報と. SNS が,コミュニケーション手段として利用された.特. は,台風の移り変わりや特定日時と同様の雲のパターンな. に Twitter の利用は,震災発生後に最大で 10 倍近くのツイ. どである.気象情報は,検索することによって,気象画像. ートを記録した[8].このように災害発生時には SNS が活. を取得することが可能である.当該研究は,専門家に対し. 用されることが知られているため,ツイートを分析して必. て気象情報の提示を行うが,本研究では一般人に対して服. 要な情報を得る研究が多い.しかし,これらの研究は一般. 装情報を提供する.. 人が直感的に理解できる情報とは言い難い.当該研究の対. 気象情報を用いて,一般に利用されるコンテンツを改善. 象は,政府や役人などの意思決定を行うための可視化であ. する研究もなされている.武ら[3]は天気変化を考慮した観. るためである.そのため,詳細な情報得るというよりは,. 光スケジュール群を算出するアルゴリズムを提案している.. 大まかな全体把握をするための情報となる.また,SNS. 当該研究では,天気のよって左右される,観光における旅. を用いた既存の研究の対象を,災害以外の気象に広げる場. 行者の満足度を最大にするアルゴリズムを提示する.観光. 合は,ツイートが常に集まる保証がない.地震などの災害. スケジュールを決める場合に,天気情報は重要な要素とな. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. 2.
(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2014-IOT-27 No.6 Vol.2014-SPT-11 No.6 2014/10/9. 発生のイベントによって,一般人はツイートを行うためで. 報を提示することで,一般の人が必要とする情報を提示で. ある.. きるものと考える.. 災害の状況の効果的な可視化として,岩倉ら[9]は,地. 気象の可視化ではないが,膨大な気象情報の理解を自. 震の揺れの可視化を行っている.日本地図上に地震の揺れ. 然に行う研究もなされている.仁科ら[16]は,情報を気配. を 3D 表示するものである.また,村崎ら[10]は,災害情. として伝える「アンビエントシステム」を利用した,音に. 報の可視化と意思伝達を行うシステムを開発している.災. よる天気情報の伝達を提案している.膨大な情報によっ. 害時の被害状況や救助の有無などが独自のユーザインタフ. て,ユーザに負担が掛からず,情報をストレスなく伝達す. ェースから確認可能である.しかし,これらの災害に特化. ることが可能となる.天気情報の音は,川や風などの自然. したシステムであると日常的に使用されないため,災害時. の音や動物の鳴き声などである.当該システムは可視化で. に有効に活用されない.本研究では,日常的に利用可能な. はないが,音による気象の自然な認識を目的としている.. 気象情報の共有システムを構築する.. 気象の音は,生活音や季節音であり,本研究と着眼点が近. センサから得られた気象情報から可視化を行う研究も 数多くなされている.高岡ら[11]は Live E!プロジェクト [12]の一環としてデジタル百葉箱を用いた気象可視化アプ. い.本研究では,音ではなく目に見える可視化を行う. 2.3 生気象学 気象が人間に及ぼす直接的や間接的な影響を研究する. リケーションの開発を実施した.同様に,岡田ら[13]も. 生気象学といい,気象情報から服装情報を得る研究もなれ. Live E!を用いて,気象可視化のアプリケーションを開発. ている.. している.当該研究は,Live E!による独自の気象観測を. 生気象学によって服装情報を提示するサービスとして. 行っており,センシングデータから得た,気温,湿度や雨. 世界の歩き方[22]がある.当該サービスでは世界各国の服. 量などをグラフィカルに Google Map 上に表示している.. 装を気象情報から算出し提示している.服装の算出は clo. 本研究との違いは,可視化が直感的に理解できるものであ. 値と気温の関係からなされる.clo 値[17]とは,衣類の暖. るかである.センサから得られた気象情報から,気温,湿. かさの単位であり,どの程度の気温ならどの程度の服装が. 度や雨量などが地図上で数値として理解できるが,実際の. いるのか目安になる.. 状況が理解しにくい.その地域が,どの程度寒いのか暑い. 世界の歩き方は平常時に特化したサービスだが,災害. のか体感的なことがわかりづらい.本研究では,服装情報. 時の備蓄用衣料として最適な服装を求める研究を小柴ら. を提示することでユーザが直感的に理解しやすい気象の可. [18]は行っている.このように,被災地域の課題として服. 視化を行う.. 装情報が存在することがわかる.現在の気候に適した服装. 直感的に理解しやすい気象の可視化として,3D による 気象の可視化が行われている.新井ら[14]は,気象情報を 3D で表示する可視化システムを構築した.3D 表示するこ. を求めることは,被災地域でも備蓄や援助のために重要と なる. clo 値と気温の関係に関して,田村[19]らは大規模な街. とで,台風,嵐や低気圧などの大まか全体像が判明する.. 角観察による衣服調査を行った.対象人数は 1 万人以上,. 元々は,航空用のシステムであり,気象状態を 3D 化する. 現在の衣服の状態と現在の気温を取ることで,衣服と気温. ことで航空機の運用に役立てるシステムであった.当該研. との相関関係を調査している.本調査では,clo 値と気温. 究では,航空用のシステムを,一般や教育現場に利用しよ. に関しては,相関関係が強いことがいわれている.しか. うという試みである.直感的な気象情報の取得は可能であ. し,細かな状況に関して議論がなされておらず,また,調. るが,情報が大局的になりすぎてしまう.本研究では,情. 査に関して疑問が残る.当該調査は,目視によって衣類を. 報を共有することで特定地域の情報を得ることが可能であ. 調査し,上着の中に来ている服装を予想しているため,詳. る.したがって,個人が特定地域の気象を直感的に理解す. 細な服装が不確かである.さらに,現在着ている服装と着. ることが可能である.. るべきだった服装に相違がでる.例えば,前日が暑かった. さらに,気象情報の可視化としては,菊池ら[15]は三次. ために,寒い日でも半そでを着ている人は,現在着ている. 元仮想現実による雲の準リアルタイム視覚化の研究を行っ. 半そでが服装として調査されてしまう.すなわち,服装の. ている.GMS-5(ひまわり 5 号)の雲画像を用いて,雲を三. 傾向を調査することは可能であるが,実際に適した服装が. 次元表示する.表示された 3D モデルは,独自開発したア. 判明するわけではない.. プリケーションからアクセス可能である.当該研究では,. 2.4 考察. アーカイブにあるデータへのアクセスは多いが,作成した. 現在の情報処理では,気象の実体の可視化や気象の知覚. 雲の 3D モデルにはアクセスが少ないことが指摘されてい. 化に関する研究が主である.生気象学のように,気象から. る.当該研究から,雲の直接的な視覚化を一般人が求めて. 人間の影響を研究する分野はあまりなされていない.服装. いないことがいえる.本研究では,気象情報として服装情. に限って言えば,様々なサービスが WEB 上で閲覧可能で あるが,ユーザが期待する服装を提供できているか根拠は. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. 3.
(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 1. Vol.2014-IOT-27 No.6 Vol.2014-SPT-11 No.6 2014/10/9. clo 値の一覧. Table 1. は,現在の気温をセンサから直接取得する必要性があった.. Clo Value.. 2 つ目として,従来の街角観察による衣類調査では,細か clo 値. 着衣. な服装情報を得ることが困難であることが挙げられる.例. 靴下. 0.01. パンツ(トランクス). 0.1. 半そで. 0.1. 長そで. 0.16. Y シャツ. 0.29. 3.2 調査方法. ジャケット. 0.34. 3.2.1 算出式. ジーンズ. 0.24. ハーフパンツ. 0.08. 表 2 Table 2. えば,重ね着の枚数や肌着の種類などの情報を得ることが できない.以上の点を考慮し,web を用いたシステムを実 装した.. 既存の服装情報の算出方法に関して述べる.既存の服装. clo 値と気温の関係. Relationship between Clo Value and Temperature .. clo 値. 気温(℃) (条件:湿度 50% 風速 0.1m/s). 体感気温(℃). 情報の算出方法は,衣類の暖かさの単位である clo 値と体 感気温の関係によって決定される. まず,clo 値の詳細に関して述べる.clo 値とは ISO9920 で定義されている国際的な服装の単位である.1clo を,湿度 50%,風速 0.1m/s,気温 21.2℃の大気中で,白. 0.3. 19.3. 18.2. 0.5. 23.4. 21.3. 1.0. 25.2. 22.7. 人標準男子の快適状態を継続できるのに必要な被服と定義 している.1clo の服装を求める場合,個々の服装の clo 値. 不明瞭である.本研究では,システムを構築する上で,正. を足すことで求めることができる.個々の服装と clo 値の. しい服装の提供に関して主眼を置いて論議する.. 関係を示す表の一部を表 1 に示す.約 1clo は,表 1 から. 服装情報を正しさに関して,生気象学での服装の調査 では,適した服装を提示できていない.なぜなら,調査に. 求めると,靴下,パンツ,ジャケット,Y シャツ,半そで とジーンズの組み合わせである.. おいて,目視による確認のため詳細な服装情報を得ること. 次に,clo 値と気温の関係を表 2 に示す.表 2 は,日本. ができないことが挙げられる.また,実際に着ていきたか. 人男子学生の clo 値と気温に関して調査した奥窪ら[20]の. った服装ではなく,現在の服装であるため,ユーザに適し. 研究をもとに作成した.clo 値は,0.3clo 以下がほぼ裸体. た服装であるかが不明瞭である.. になること,夏季の服装が 0.5clo 程度で冬季が 1clo 程度. 上記より,本研究では,既存の clo 値を用いた服装情報. になることから 0.3clo,0.5clo と 1.0clo で区切る.また,. を算出する式が正しくないのではないか,という仮定に基. 表 2 の条件として,湿度 50%,風速 0.1m/s が加味され. づき調査を実施する.考慮した点は,被験者が現在の服装. る.この条件により,気象情報を取得しても気温から正確. に関して,内部の衣服に関しても回答可能なことと現在の. な clo 値をとることは困難になるため,湿度と風速を加味. 気象に適した服装を回答することである.仮定に基づき調. した体感気温を用いることとする.つまり,湿度 50%で. 査を進め,現在の服装情報算出の式に何に問題があり,ど. 風速 0.1m/s の体感気温を算出することで,気温,湿度と. のようにすべきかを考察していく.. 風速が判明すれば clo 値を求めることが可能となる.一般. 3. 調査実験 本章では,調査実験の概要と調査方法について述べる. 3.1 調査概要. に用いられる湿度と風速を利用した体感気温の式である NET (net effective temperature)[21]を用いた.上記の式より 求められる体感気温を表 2 中の右に示す. 以上より,気象情報から体感温度を算出することで clo. 本調査では,既存の服装情報を算出する式が正しくない. 値,すなわち服装情報を算出することが可能となる.被験. のではないか,という仮定に基づき,仮定が正しいのかど. 者が送信する服装情報から clo 値を求め,気象情報から体. うかの実験を行った.調査実験する上で,既存の服装情報. 感気温算出し,表 2 から得られる clo 値を比較すること. の算出の式に関する調査と web を介する服装情報の調査の. で,服装情報の算出式が正しいのかが判断できる.. ためのシステム実装の 2 つを実施した.実装したシステム. 3.2.2 システム. は,web を介して現在の気象情報を取得し,服装情報の算. 実装したシステムのモデル図を図 1 に示す.被験者はま. 出式を用いて服装情報に変換する.また,服装情報を被験. ず,WEB 上からシステムにアクセスする.WEB サイトで. 者が入力することで服装情報から算出された服装情報と比. はユーザ登録を行う.ユーザ登録時には,年代(10 代~60. 較することが可能である.. 代以上)と性別を入力してもらう.ユーザ登録後は,任意. 実験にあたり,調査のためのシステムを実装した.従来. の日に服装情報を提供する.服装情報を提供されたとき,. の従来の街角観察による衣類調査を用いなかった理由は 2. 被験者の位置情報をもとにシステムは気象情報を WEB 上. 点ある.1 つ目として,web を利用することで現在の気象. から取得する.今回,OpenWeatherMap[22]の API を利用. 情報を簡単に取得できることが挙げられる.従来の手法で. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. 4.
(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2014-IOT-27 No.6 Vol.2014-SPT-11 No.6 2014/10/9. 表3. 被験者. Table 3 ①Webアクセス・ 服装情報提供. 気象情報 サイト. ③気象情報送信. 本システム. ②アクセス (気象情報の取得)④ユーザの服装情報と 気象情報の保存. 図 1. システムモデル図. Figure 1. ~0.3clo. 被験者は WEB サイトの質問を投稿するページにアクセ 取得され,変更がある場合は GoogleMap を用いて位置情報 を変更することが可能である.被験者は,現在の天気に適. 6名. 8名. 21.3℃以上 (0.5clo~0.3clo). 1名. 1名. 1名. 18.3℃以上 (1.0clo~0.5clo). 0名. 0名. 4名. 18.3℃未満 (~1.0clo). 0名. 0名. 2名. 合計. 6名. 7名. 15 名. 表 4 Table 4. 半身の衣類,重ね着の枚数と下半身の衣類を選択する.上 半身の衣類は,半そでか長そでどうか,下半身の衣類は, 半ズボンか長ズボンかを選択する.重ね着に関しては 1~5 まで数値を選択する.例えば,T シャツ 1 枚なら重ね着は 1 枚,Tシャツと長袖なら 2 枚となる.すべての選択が完 了したら,送信ボタンを押す.. 服装を絶対に変えない被験者 Subject Who Did Not Change Clothes. 温 度 ℃. 湿 度 %. 風 速 m/s. 21. 94. 5. 13. 半そで. 23. 99. 1. 20. 半そで. 30. 66. 5. 24. 半そで. 体感 気温 ℃. 表 5. した服装を選択する.つまり,現在被験者が来ている服装 ではないということである.質問項目は 3 つからなり,上. ~1.0clo. 5名. System Model.. スすることで服装情報を提供できる.位置情報は自動的に. ~0.5clo. 22.7℃以上 (~0.3clo). して気象情報を取得している.取得した気象情報は,前節 で求めた式から clo 値を算出しデータを保存しておく.. 選んだ服装の clo 値と体感気温 Clo Values and Effective Temperatures. Table 5. 上半身の 衣類. 下半身の 衣類. clo 値. 2. 長ズボン. 0.55. 2. 長ズボン. 0.55. 2. 長ズボン. 0.55. 重 ね 着. 服装を変える被験者. Subject Who Seldom Change Clothes.. 温 度 ℃. 湿 度 %. 風 速 m/s. 体感 気温 ℃. 上半身の 衣類. 29. 74. 1. 25. 半そで. 21. 94. 5. 13. 半そで. 34. 56. 3. 28. 半そで. 下半身の 衣類. clo 値. 1. 長ズボン. 0.45. 2. 長ズボン. 0.55. 1. 長ズボン. 0.45. 重 ね 着. い人は 10 名のうち 8 名であり,大多数が服装を変更しな い.該当被験者のうちの 1 人のデータを表 4 に示す.該当. 本調査は 2014 年 7 月 25 日~8 月 8 日に実施し,被験者. 被験者のように,どのような気温,湿度や温度に対しても. は岩手県立大学の男子学生 10 名(21 歳~24 歳)である.被. 服装を変更しない被験者がほとんどである.一方,服装を. 験者は任意の日に服装情報をシステムに送信する.. 変える被験者は,前日の服装から大きく服装を変更せず,. 4. 調査結果. 重ね着などで小さく対応することが結果から判明した.該. 本章では,調査結果を記すとともに,既存の服装情報を 算出する式が被験者の服装と一致しないことを記す.また, 考察として,服装情報の算出のために,被験者に及ぼす気 象の心理的要因を考慮する必要性があることが判明した. 4.1 結果 データ 28 件のうち 18 件が気象情報から算出した服装情 報と被験者の服装情報が一致しない結果となった.調査結 果を表 3 に示す.表中の横が選択した服装の clo 値を表 し,縦が体感気温を表す.一致した場所は赤字で示してい る.特に一致しない状況は,体感気温が 22.7℃以上のと き,被験者は 0.55clo の服装を選択することである. 0.55clo は,長ズボンと半そでに重ね着で半そでを着てい る状態である.0.5clo 程度は長ズボンに長そでを着ている 服装と同等の clo 値であり,厚着の服装である.今回の被 験者の場合,長ズボンと半そでの中に半そでを重ね着する 被験者が多い結果となった.また,絶対に服装を変えない 人がほとんどであり,服装を変更する人は服装を少し変更 することで対応することが判明した.服装を絶対に変えな. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. 当被験者のうちの 1 人のデータを表 5 に示す.該当被験者 は,夏場の時期に寒い日が到来しても,半そでから長そで に変更することはなく重ね着で対応している.この傾向は, もう一人の服装を変更する被験者にも同じことがいえた. 4.2 考察 既存の服装情報を算出する式では,正しく被験者に合っ た服装情報は得られない.なぜなら,現状の服装情報を算 出する式では,夏場において突如寒い日が到来すると冬の 服装を勧めてくるためである. したがって,被験者の傾向から,日々の服装を決定する 場合,前日までの服装が考慮すべきだということが判明し た.夏の暑い日が続いた場合,1 日だけ寒い日が到来して も,長そでなどの冬の服装にすることはない.服装を変更 する場合には,前日までの服装と大きくは変わらないが, 重ね着など小さく対応する.すなわち,過去の気象状況を みて,暑い日が続いている状況で寒い日が来た場合は,前 日までの気象を加味して服装を算出する必要性がある.ど の程度の過去の気象を参照すべきかは,今後検討する必要 性がある.. 5.
(6) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 以上の考察より,気象情報から服装情報を算出する際に, 被験者の気象が及ぼす心理的要因を加味する必要性がある ことを発見した.本研究の心理的要因とは,日々の気象に よって被験者が感じる主観的な要因である.現状の生気象 学で扱う心理的要因は,気象以外の周りの風景や音などの よって被験者の生理的状況が変化するというものであった [23].調査では,夏の時期に男子大学生は大きく服装を変更 しないが,突如寒い時期が来た場合には小さく服装を変更 するという主観的な要因があることが判明した.今後は, 調査を続け,主観的要因の傾向を調査し,気象情報から服 装情報を算出する新たな式を定義する予定である. 4.3. 今後の予定. 今後は,被験者数の増加,被験者の属性の増加と質問の 再検討を行う.今回,被験者 10 名の男子大学生で現状のデ ータ数が 30 程度である.今後は被験者数を増加し,データ 数を増やす.また,被験者が男性かつ大学生であったため, ほかの属性の場合に傾向が変わることが予想される.例え ば女性であれば,男性より服装を日々変えることが予測で き,新たな主観的要因が判明する可能性がある.属性を増 やすにあたり,質問項目を再検討する必要性がある.上記 の女性の場合,スカートやワンピースなどの女性特有の服 装があるためである.今回,質問項目は簡便なものとした が,より詳細に調査するにあたり,服装の種類を増やす必 要性がある. また,緊急時利用も考慮したシステム実装を実施する予 定である.平常時には服装情報を提示し,緊急時には物資 支援や被災地域の状況が判断できるように実装する.. 5. おわりに 本研究では,既存の気象情報から服装情報を算出するシス テムの課題を明らかするとともに、緊急時対応も考慮した 新たな服装情報を算出するシステムを検討した.既存の服 装情報を算出する式を求め,システムを構築するとともに 調査実験を実施した.調査結果から,半数以上が算出した 服装情報と被験者の服装が一致しない結果であった.結 果および考察から気象情報から服装情報を算出する際に, 被験者の気象が及ぼす心理的要因を加味する必要性がある ことが判明した.今後は質問項目の再検討をした上で,被 験者数を増加させ,女性に対しても調査を行う予定であ る.最終的には,服装情報提示システムを作成し,緊急時 にも利用可能にする.. 参考文献 1) 災害対応直後から利用できる情報システムの構築を目指して, http://www.er-software.net/article/pdf/Review201109.pdf (最終アクセス日: 2014 年 9 月 16 日). 2) 片山幸治,小西修: 知識発見支援のための気象画像データベー スの構築, 情報処理学会論文誌. データベース, 40(5), pp.69-. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. Vol.2014-IOT-27 No.6 Vol.2014-SPT-11 No.6 2014/10/9. 78(1999). 3) 武兵, 村田佳洋, 柴田直樹, 安本慶一, 伊藤実: 天気変化を考 慮した観光スケジュール群の探索アルゴリズム, 情報処理学会研 究報告,数理モデル化と問題解決研究報告, (3), pp.1-6 (2009). 4) Katarina Elevant: Who Wants to" Share Weather"? The Impacts of Off-Line Interactions on Online Behavior, 47th Hawaii International Conference (HICSS), pp. 1884-1893(2014). 5) Liza Potts, Joyce Seitzinger, Dave Jones and Angela Harrison:Tweeting disaster: hashtag constructions and collisions, Proceedings of the 29th ACM international conference on Design of communication, pp.235-240 (2011) 6) Vieweg, Sarah, Hughes, Amanda L., Starbird, Kate and Palen, Leysia: Microblogging During Two Natural Hazards Events: What Twitter May Contribute to Situational Awareness, Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems, pp. 1079--1088 (2010) 7) Cameron, Mark A., Power, Robert, Robinson, Bella and Yin, Jie: Emergency Situation Awareness from Twitter for Crisis Management, Proceedings of the 21st International Conference Companion on World Wide Web, pp. 695--698 (2012) 8) 震災時における Twitter の利用状況について, http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc143c 00.html (最終アクセス日: 2014 年 5 月 12 日). 9) 岩倉寛幸, 木村朝子, 柴田史久, 田村秀行: 地震による揺れの効 果的可視化方法, 電子情報通信学会, 327(2007). 10) 村崎大輔, 藁科光徳, 小池英之, 荒川淳平, 上田真史, 竹内郁 雄: 災害情報可視化システムの開発、 日本地震工学会論文集, 9(2), pp.88-101(2009). 11) 高岡詠子, 村上稔典: デジタル百葉箱を用いた気象可視化ア プリケーションの開発, 電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユ ビキタス・センサネットワーク, 108(138), pp.33-38(2008). 12) Live E!プロジェクト, http://www.live-e.org (最終アクセス日: 2014 年 5 月 12 日). 13) 岡田拓也, 今井正和: Live E! データ可視化アプリケーショ ンの開発, 電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットア ーキテクチャ, 109(351), pp.79-84(2009). 14) 新井直樹, 瀬之口敦: 気象情報の見える化の試み: 気象情 報可視化ツール Wvis の開発と可視化事例, 天気, 58(9), pp.835839(2011). 15) 谷誠, 菊池時夫: GMS-5 衛星画像と気象記録の統合データ ベース構築の試み. 高知大学理学部紀要 情報科学, 24, pp.115-122 (2003). 16) 仁科圭三郎, 上岡英史: 音を用いた気象情報に関するアンビ エントシステム, 電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバ イルマルチメディア通信, 109(441), pp.19-24 (2010). 17) ISO 9920:Ergonomics of the thermal environment - Estimation of the thermal insulation and evaporative resistance of a clothing ensemble (1995) 18) 小柴朋子, 吉川可奈,田村照子: 災害時備蓄用救援衣料の提案 とその評価, 人間-生活環境系シンポジウム報告集, 34, pp.121122(2010) 19) 田村照子: 気候と衣服, 日本生気象学会雑誌, 49(2), pp.6170(2012) 20) 奥窪朝子: 着衣量との関係からみた快適環境温度 -個人要因 を踏まえた快適条件の設定-, 大阪教育大学家政学研究会, 25, pp25-38(1982) 21) Li PW, Chan ST:Application of a weather stress index for alerting the public to stressful weather in Hong Kong, Meteorological Applications 7, pp.369-375(2000) . 22) OpenWeatherMap, http://openweathermap.org/ (最終アクセス日: 2014 年 9 月 16 日). 23) 伴野明, 山本修平:心理的要因による体感温度への影響の数 値評価法, 電気学会論文誌E, 133(6), pp.190-198(2013). 6.
(7)
図
関連したドキュメント
TABLE I~Iv, Fig.2,3に今回検討した試料についての
・総務部は、漏洩した個人情報の本人、取引先 などへの通知、スポーツ庁、警察、 IPA などへの届 出、ホームページ、
1外観検査は、全 〔外観検査〕 1「品質管理報告 1推進管10本を1 数について行う。 1日本下水道協会「認定標章」の表示が
「系統情報の公開」に関する留意事項
【原因】 自装置の手動鍵送信用 IPsec 情報のセキュリティプロトコルと相手装置の手動鍵受信用 IPsec
Google マップ上で誰もがその情報を閲覧することが可能となる。Google マイマップは、Google マップの情報を基に作成されるため、Google
〔概要〕 広報「ひらかた」、水道局ホームページ ほかマスメディアを活用し、事業の情
鋼板中央部における貫通き裂両側の先端を CFRP 板で補修 するケースを解析対象とし,対称性を考慮して全体の 1/8 を モデル化した.解析モデルの一例を図 -1